トップ :: G 物理学 :: G21 核物理;核工学




【発明の名称】 放射性溶液タンク底部のスラッジ回収装置
【発明者】 【氏名】永里 良彦

【氏名】安孫子 庄助

【氏名】田村 梅男

【氏名】疋田 敬一

【氏名】古川 隆之

【氏名】渡辺 慎一

【要約】 【課題】濃縮ウラン溶解槽のごとき放射性溶液タンクの底部に堆積した不溶性残渣等の放射性スラッジを、水で希釈することなくそのまま直接的に効率よく回収することができるスラッジ回収装置を提供する。

【解決手段】放射性溶液タンク内へ挿入して底部スラッジを吸引するフレキシブルな吸引ホース10と、吸引ホースからのスラッジを水分と分離して捕集するフィルタ22を内蔵する中間ポット20と、中間ポット内を真空とするためのエゼクタ真空ポンプ32を有する吸引装置30と、吸引装置のエゼクタ真空ポンプに圧縮空気を供給する空気圧縮機40とからなる。放射性溶液タンクがセル内に設置されている場合においては、吸引ホース、中間ポットおよび吸引装置をセル内に設置し、空気圧縮機をセル外に設置し、空気圧縮機からの圧縮空気供給管41をセル壁50を貫通させて吸引装置と接続する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 放射性溶液タンク内へ挿入して底部スラッジを吸引するフレキシブルな吸引ホースと、前記吸引ホースからのスラッジを水分と分離して捕集するフィルタを内蔵する中間ポットと、前記中間ポット内を真空とするためのエゼクタ真空ポンプを有する吸引装置と、前記吸引装置のエゼクタ真空ポンプに圧縮空気を供給する空気圧縮機とからなることを特徴とする放射性溶液タンク底部のスラッジ回収装置。
【請求項2】 前記中間ポットは、その上部で前記吸引ホースおよび前記吸引装置からの吸引配管と接続され、その底部にスラッジから分離される水分の排水バルブが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の放射性溶液タンク底部のスラッジ回収装置。
【請求項3】 前記吸引装置は、前記空気圧縮機からの圧縮空気により作動するエゼクタ真空ポンプと前記真空ポンプにより内部空気が吸引されるドラム部とからなり、前記ドラム部と前記中間ポットとが吸引配管により接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載の放射性溶液タンク底部のスラッジ回収装置。
【請求項4】 前記吸引ホースは、タンク内へ挿入される先端から所定の距離を隔てた上方に複数の空気孔が穿設されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射性溶液タンク底部のスラッジ回収装置。
【請求項5】 放射性溶液タンクがセル内に設置されている場合において、前記吸引ホース、前記中間ポットおよび前記吸引装置をセル内に設置し、前記空気圧縮機をセル外に設置し、前記空気圧縮機からの圧縮空気供給管をセル壁を貫通させて前記吸引装置と接続することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の放射性溶液タンク底部のスラッジ回収装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、濃縮ウラン溶解槽のように、放射線の線量が高く人が直接アクセスすることができない放射性溶液タンク等の底部に堆積している放射性スラッジを回収するための装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】例えば、原子炉での使用済核燃料の再処理工場における溶解工程においては濃縮ウラン溶解槽のごとき高放射性溶液を収容するタンクが使用されている。かような高線量の放射性溶液を収容するタンクにおいても、長期間使用する場合には、タンクの底部に不溶性残渣等の高放射性スラッジが沈殿して堆積する。タンク底部に堆積するスラッジを回収するために、タンク内に水を供給し、スラッジと水の混合物をポンプを用いてタンクから吸い上げ、スラッジをろ過回収する操作を繰り返し行う方法、いわゆる液置換方式が従来から採用されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記した従来の液置換方式によるスラッジ回収方法は、高放射性スラッジを直接回収するものではなく、タンク内のスラッジを水で希釈したものを取り出すため間接的な回収であり、さらには、濃縮ウラン溶解槽の場合、吸い上げ高さが約6m程度に達するため、スラッジの回収効率が低く、結果的に多量の高放射性廃液が発生するという問題があった。、【0004】そこで本発明は、放射性溶液タンクの底部に堆積した不溶性残渣等の放射性スラッジを、水で希釈することなくそのまま直接的に効率よく回収することができるスラッジ回収装置を提供することを目的としてなされたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明の放射性溶液タンク底部のスラッジ回収装置は、放射性溶液タンク内へ挿入して底部スラッジを吸引するフレキシブルな吸引ホースと、前記吸引ホースからのスラッジを水分と分離して捕集するフィルタを内蔵する中間ポットと、前記中間ポット内を真空とするためのエゼクタ真空ポンプを有する吸引装置と、前記吸引装置のエゼクタ真空ポンプに圧縮空気を供給する空気圧縮機とからなることを特徴とするものである。
【0006】上記した構成の本発明の装置における好ましい実施態様においては、前記中間ポットは、その上部で前記吸引ホースおよび前記吸引装置からの吸引配管と接続され、その底部にスラッジから分離される水分の排水バルブが設けられている。
【0007】また前記吸引装置は、前記空気圧縮機からの圧縮空気により作動するエゼクタ真空ポンプと前記真空ポンプにより内部空気が吸引されるドラム部とからなり、前記ドラム部と前記中間ポットとが吸引配管により接続されている。
【0008】さらにまた前記吸引ホースは、タンク内へ挿入される先端から所定の距離を隔てた上方に複数の空気孔が穿設されている。
【0009】放射性溶液タンクがセル内に設置されている場合においては、前記吸引ホース、前記中間ポットおよび前記吸引装置をセル内に設置し、前記空気圧縮機をセル外に設置し、前記空気圧縮機からの圧縮空気供給管をセル壁を貫通させて前記吸引装置と接続する。
【0010】
【発明の実施の形態】以下に図面に示す実施例を参照して本発明を詳述する。図1は本発明の装置の基本的概念を示すものであり、セル内に設置されている濃縮ウラン溶解槽(図示せず)の底部に堆積した高放射性スラッジを回収するためのものである。このスラッジ回収装置は、フレキシブルな吸引ホース10と、中間ポット20と、吸引装置30と、空気圧縮機40とから構成されており、吸引ホース10と中間ポット20と吸引装置30はセル内に配置され、空気圧縮機40のみセル外に設置されている。
【0011】吸引装置30は、ドラム部31とエゼクタ真空ポンプ32とからなり、ドラム部31頂部にパッキン33を介して被せられた蓋34の上にエゼクタ真空ポンプ32が載置されている構造を有している。エゼクタ真空ポンプ32は、図2および図3に示したように、市販のバキュームクリーナの吸引機構を用いてセル内で使用できるように改造したものであり、4つのエジェクタボックス32aにそれぞれ収納されたエジェクタパイプ32bを備えている。
【0012】空気圧縮機40から圧縮空気供給配管41(圧力計42を具備している)を介して供給された圧縮空気は、エゼクタ真空ポンプ32の圧縮空気入口35から集合管36を経て各エジェクタパイプ32bへ導入され、末広ノズル32cからセル内空間に噴出させる。このとき、ドラム部31に開口する吸気管37からドラム部31内の空気が随伴流として吸引され、ドラム部内を真空とする。エゼクタ真空ポンプ32に供給される圧縮空気の圧力を例えば約60kPAとした場合には、ドラム部31内にもたらされる真空は約4×10-4Pa程度となる。内部を真空とされたドラム部に開口する吸引管38を吸引配管39を介して中間ポット20内部と接続することにより、中間ポット20内部の空気が吸引されて真空状態とすることができる。
【0013】中間ポット20は、内部にフィルタ22を内蔵する胴部21と、胴部21頂部にパッキン23を介して被せられた蓋24とを有する構造を有し、胴部21内の上部空間には、吸引装置30からの吸引配管39と吸引ホース10基端が接続されている。フィルタ22としては、例えばステンレス鋼(SUS304)製のフィルタ孔径約200μm程度の金属製フィルタが好ましく使用できる。吸引ホース10から輸送されてくるスラッジ−空気混合物がフィルタ22を通って自重落下する過程で、スラッジは水分から分離・捕集され、水分は中間ポット20底部の排水バルブ25から抜き出される。
【0014】なお、中間ポット20内部の空気は吸引配管39により吸引装置30へ吸引されるが、フィルタ22を自然落下するスラッジおよび水分を吸引装置30へ吸引するだけの吸引空気流速は得られないため、吸引配管39を介して吸引装置30へ吸引されるのは空気だけであり、通常はスラッジや水分が同伴されることはない。フィルタ22は、遠隔操作により容易に中間ポット20から取り出すことができ、スラッジろ過速度が低下した時点で新たなフィルタと遠隔操作で交換される。中間ポット20内部の真空状態は真空計26により監視する。
【0015】吸引ホース10は、その基端が中間ポット20内上部空間に開口して取り付けられており、その先端が濃縮ウラン溶解槽内へ挿入できるようになっている。そして基端部と先端部以外の実質的部分は、合成ゴムのごときフレキシブルは材質からなるホース(例えば直径約45mm)から構成され屈曲自在とされている。フレキシブルな部分は、図4に示したようにその外周に凹凸11が形成されており、この凹凸により強度的に補強できるとともに、濃縮ウラン溶解槽内への挿入、抜き出しに際してホース外周に紐等を掛ける場合の紐脱落防止の機能も果たす。
【0016】図4に示したように、吸引ホース10先端から所定の距離a(図示の例では90mm)を隔てた上方に、複数の空気孔12(例えば直径約6mm×12個)が周方向に穿設されている。かような空気孔12は、吸引ホース10先端がスラッジ中に埋没した場合でも連続したスラッジ吸引が行えるようにするために設けられている。
【0017】すなわち、本発明のスラッジ回収装置によれば、従来の液置換方式のようにスラッジを水で希釈せずにスラッジのままスラッジ−空気混合物として吸引、輸送するものであるため、吸引ホース10先端が完全に埋没してしまうと空気の吸引が遮断されてしまい、スラッジ−空気混合物として吸引、輸送が不可能となってしまう。図4に示したように、吸引ホース先端から所定距離上方に空気孔12を穿設しておくことにより、吸引ホース先端がスラッジ内に埋没しても、空気孔から空気を吸引できるため、スラッジ−空気混合物として吸引ホース10内を吸引、輸送することが可能となる。
【0018】なお、空気孔12が埋没してしまう程にスラッジ内に吸引ホース10先端部を挿入した場合には、スラッジの吸引が不可能となるが、かような状態は吸引ホース10の振動やぶれが発生することにより確認できるため、振動やぶれが生じないように吸引ホース10のスラッジ内への挿入深さを調節すればよい。
【0019】また図4の例では、吸引ホース10先端両側が傾斜b(図示の例では約15°)を形成するように切欠されている。吸引ホース10先端の一方の側の傾斜にあわせてスラッジと接触させれば、他方側の傾斜部分はスラッジ内に埋没することなく空気を吸引できるから、スラッジの吸引をより効果的に行いやくすなる。
【0020】図1に示した例では、濃縮ウラン溶解槽がセル内に設置してあるため、吸引装置30、中間ポット20および吸引ホース10はセル内に配置し、空気圧縮機40のみをセル外に配設している。そして、空気圧縮機40と吸引装置30とを接続する圧縮空気供給配管41は、セル壁50の貫通孔51を通じて伸びており、貫通孔51と配管41との間隙は遮蔽プラグ52により遮蔽されている。
【0021】なお、濃縮ウラン溶解槽底部に堆積しているスラッジに対して、要すれば図示しないホースを用いて高圧水を吹き付けスラッジを流動化することにより、より効果的なスラッジ回収を行うことができる。この高圧水は、スラッジとともに吸引ホース10を介して中間ポット20へ吸引され、排水バルブ25から排出されて濃縮ウラン溶解槽へ戻される。
【0022】前述したように、中間ポット20から吸引配管39を介して吸引装置30へ吸引されるのは空気だけであり、通常はスラッジや水分が同伴されることはないが、万一スラッジや水分が吸引装置30のドラム部31へ移行した場合には、ドラム部31内部を洗浄する必要があり、この洗浄液を排出するための排水バルブ31aをドラム部31底部に設けておくことが望ましい。
【0023】図1に示した本発明の装置を使用して濃縮ウラン溶解槽底部に堆積したスラッジを回収した場合、吸引ホース10先端部がアクセスできる範囲のスラッジは、比較的大きな金属片(溶解処理後に残る燃料被覆管断片等、例えば直径約1cm×長さ約3cm)も含めてすべて回収することができた。これに対して従来の液置換方式による回収では、スラッジの回収量は僅かであり、上記寸法程度の比較的大きな金属片は回収できなかった。
【0024】また、本発明のスラッジ回収装置においては、スラッジを水で希釈しないため、従来の液置換方式に比べて高放射性廃液の発生量が大幅に低減され、作業時間も短縮化された。
【0025】さらに、本発明の装置を約5年間スラッジ回収作業に供しているが、吸引装置30と中間ポット20を分離して設置する構造であるため、エゼクタ真空ポンプ32の閉塞等による性能低下は生じておらず、十分な耐久性を有していることが実証された。
【0026】
【発明の効果】以上の説明からわかるように本発明の放射性溶液タンクのスラッジ回収装置によれば、タンク底部に堆積した放射性スラッジを水で希釈することなく直接吸引するようにしたため、効率よく放射性スラッジを回収でき、従来の液置換方式のように多量の放射性廃液を発生させるという問題も生じない。
【0027】また、吸引ホースはその先端近傍に空気孔を穿設した構造としたため、空気孔から吸引される空気とスラッジとが混合したスラッジ−空気混合系でホース内を輸送される結果、スラッジ中の含まれる比較的大きい金属片等も効果的に吸引、回収することが可能となる。
【出願人】 【識別番号】000224754
【氏名又は名称】核燃料サイクル開発機構
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
【出願日】 平成12年11月13日(2000.11.13)
【代理人】 【識別番号】100067046
【弁理士】
【氏名又は名称】尾股 行雄 (外1名)
【公開番号】 特開2002−148390(P2002−148390A)
【公開日】 平成14年5月22日(2002.5.22)
【出願番号】 特願2000−345361(P2000−345361)