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【発明の名称】 復水処理システムおよびその運転方法
【発明者】 【氏名】津田 悟

【要約】 【課題】フィルタエレメントの種類を変更した場合にも、原子炉水中のFe、Ni、Coの濃度バランスの均衡を保ち、炉水の放射能濃度を従来運用と同レベルに可能とする、沸騰水型原子力発電所における復水処理システムおよびその運転方法を提供する。

【解決手段】復水器の後段に配置された復水濾過装置と、該復水濾過装置の後段に配置された復水脱塩装置と、復水濾過装置をバイパスするラインおよび該バイパスラインに設けられた復水濾過装置バイパス弁を備えた、沸騰水型原子力発電所における復水処理システムの運転方法において、前記バイパス弁を、前記バイパスラインにおける流量調整状態で、常時開弁あるいは適時に開弁して復水を処理することを特徴とする復水処理システムの運転方法、および復水処理システム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 復水器の後段に配置された復水濾過装置と、該復水濾過装置の後段に配置された復水脱塩装置と、復水濾過装置をバイパスするラインおよび該バイパスラインに設けられた復水濾過装置バイパス弁を備えた、沸騰水型原子力発電所における復水処理システムの運転方法において、前記バイパス弁を、前記バイパスラインにおける流量調整状態で、常時開弁あるいは適時に開弁して復水を処理することを特徴とする復水処理システムの運転方法。
【請求項2】 前記バイパスラインにおける流量を、原子炉への給水中の鉄分の濃度あるいは原子炉水中の鉄分の濃度に応じて調整する、請求項1の復水処理システムの運転方法。
【請求項3】 前記バイパスラインにおける流量を、原子炉水または原子炉への給水中の鉄とニッケルの濃度比に応じて調整する、請求項1の復水処理システムの運転方法。
【請求項4】 前記復水濾過装置にプリーツフィルタエレメントを使用する、請求項1ないし3のいずれかに記載の復水処理システムの運転方法。
【請求項5】 前記復水濾過装置に、フィルタエレメントと、復水を濾過しないでそのまま通過させるスルーエレメントを混在させる、請求項1ないし4のいずれかに記載の復水処理システムの運転方法。
【請求項6】 前記復水濾過装置に複数の濾過塔を使用し、そのうちの1塔を待機塔として使用する、請求項1ないし5のいずれかに記載の復水処理システムの運転方法。
【請求項7】 復水器の後段に配置された復水濾過装置と、該復水濾過装置の後段に配置された復水脱塩装置と、復水濾過装置をバイパスするラインおよび該バイパスラインに設けられた復水濾過装置バイパス弁を備えた、沸騰水型原子力発電所における復水処理システムにおいて、前記バイパス弁を、前記バイパスラインにおける流量調整状態で、常時開弁あるいは適時に開弁する、バイパス弁調整手段あるいはバイパス弁制御手段を有することを特徴とする復水処理システム。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、復水処理システムおよびその運転方法に関し、とくに、沸騰水型原子力発電所における復水濾過装置の運用を改良した、復水処理システムおよびその運転方法に関する。
【0002】
【従来の技術】沸騰水型原子力発電所での復水の浄化処理においては、通常、復水器の後段に設けられた復水濾過装置により濾過処理が行われ、続いてその後段に設けられた復水脱塩装置により脱塩処理が行われている。復水濾過装置には、従来から、濾材の表面に粉末イオン交換樹脂等の濾過助剤をプリコートしたプリコート型フィルタエレメントや、中空糸膜を多数本束ねた中空糸膜型フィルタエレメントが用いられている。
【0003】プリコート型フィルタエレメントの場合には、濾過助剤を使用するので、濾過塔再生時に使用済み濾過助剤が放射性廃棄物として発生する。そこで、近年建設された沸騰水型原子力発電所では、放射性廃棄物低減の目的で、中空糸膜型フィルタエレメントが採用されている。しかし、依然として既設の沸騰水型原子力発電所ではプリコート型フィルタエレメントを使用する復水濾過装置が多く用いられているので、放射性廃棄物の低減が大きな課題として残されている。
【0004】この課題に対し、近年、濾過助剤を必要とせず、既存設備に対しても互換性を有するノンプリコート型フィルタエレメントとして、プリーツフィルタエレメントが採用されてきており、放射性廃棄物の低減に大きな効果を上げている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、単にプリコート型フィルタエレメントに代えてプリーツフィルタエレメントを使用して濾過すると、次のような問題が生じることが判ってきた。
【0006】すなわち、プリーツフィルタエレメントは、濾過助剤をプリコートしたプリコート型フィルタエレメントに比べ、復水中の主に酸化鉄からなる懸濁物質除去性能に優れているため、プリコート型フィルタエレメントからプリーツフィルタエレメントに変更すると、濾過水中に含まれる酸化鉄濃度が低下する。
【0007】ところがこのように酸化鉄濃度が低下すると、原子炉に送られる供給水中の酸化鉄量が従来運用よりも減少し、従来運用で均衡していた原子炉水中のFe、Ni、Coに代表される金属物質の濃度バランスが崩れ、原子炉水中のNi、Coイオン濃度が上昇し、その結果、放射性核種であるCo−58、Co−60の濃度が上昇してしまうことが懸念される。すなわち、復水濾過装置に中空糸膜型フィルタエレメントを適用した沸騰水型原子力発電所において、原子炉水中のCo−58、Co−60のイオン濃度が上昇し、原子炉水が接する原子炉再循環系統の配管線量率が上昇した事例があり、その要因について調査したところ、原子炉への給水の鉄濃度が大幅に低下しており、原子炉水中のFe、Ni、Co濃度のバランスが崩れたことが原因であることが判明した。原子炉水中では、NiやCoは鉄酸化物と反応しフェライト(Mo・Fe203:MはNiまたはCo)を形成し、燃料被覆管表面等に付着する。ここでFeが不足すると、余ったNi、Coイオンが原子炉水中に溶解し、それらの原子炉水中における濃度が上昇する。放射性核種であるCo−58、Co−60も、このようなNi、Coイオンと同様の挙動を示すため、これが原子炉水中の放射能濃度上昇をもたらしたものと考えられている。このような放射性核種濃度の上昇は、炉水の放射能濃度の上昇を引き起こすので、プラント定検時の作業に支障を来すおそれが生じる。
【0008】そこで本発明の課題は、このような問題に着目し、フィルタエレメントの種類を変更した場合にも、原子炉水中のFe、Ni、Coの濃度バランスの均衡を保ち、炉水の放射能濃度を従来運用と同レベルに可能とする、沸騰水型原子力発電所における復水処理システムおよびその運転方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明に係る復水処理システムの運転方法は、復水器の後段に配置された復水濾過装置と、該復水濾過装置の後段に配置された復水脱塩装置と、復水濾過装置をバイパスするラインおよび該バイパスラインに設けられた復水濾過装置バイパス弁を備えた、沸騰水型原子力発電所における復水処理システムの運転方法において、前記バイパス弁を、前記バイパスラインにおける流量調整状態で、常時開弁あるいは適時に開弁して復水を処理することを特徴とする方法からなる。
【0010】この復水処理システムの運転方法においては、上記バイパスラインにおける流量を、原子炉への給水中の鉄分の濃度あるいは原子炉水中の鉄分の濃度に応じて調整することが好ましい。また、バイパスラインにおける流量を、原子炉水または原子炉への給水中の鉄とニッケルの濃度比に応じて調整することもできる。
【0011】このような方法においては、既設の沸騰水型原子力発電所において、上記復水濾過装置に、従来のプリコート型フィルタエレメントに代えてプリーツフィルタエレメントを使用することが可能となる。また、装置上可能であれば、中空糸膜型フィルタエレメントを使用することも可能である。
【0012】また、復水濾過装置のバイパスを上記バイパスラインのみに担わせることも可能であるが、復水濾過装置自身にバイパス機能を持たせることも可能である。たとえば、復水濾過装置に、フィルタエレメントと、復水を濾過しないでそのまま通過させるスルーエレメントを混在させ、スルーエレメントにバイパス機能を持たせることが可能である。この場合、バイパス流量のうちの一部をスルーエレメントによりほぼ一定の割合で通水し、残りのバイパス流量を上記バイパス弁を備えたバイパスラインに通水し、バイパス弁の調整によりバイパス流量全体を調整するようにすればよい。
【0013】さらに、上記復水濾過装置が複数の濾過塔を有する場合、そのうちの1塔を待機塔として使用することができる。
【0014】本発明に係る復水処理システムは、復水器の後段に配置された復水濾過装置と、該復水濾過装置の後段に配置された復水脱塩装置と、復水濾過装置をバイパスするラインおよび該バイパスラインに設けられた復水濾過装置バイパス弁を備えた、沸騰水型原子力発電所における復水処理システムにおいて、前記バイパス弁を、前記バイパスラインにおける流量調整状態で、常時開弁あるいは適時に開弁する、バイパス弁調整手段あるいはバイパス弁制御手段を有することを特徴とするものからなる。
【0015】上記のような本発明に係る復水処理システムおよびその運転方法においては、とくに従来プリコート型フィルタエレメントが使用されてきた沸騰水型原子力発電所の復水濾過装置に、プリーツフィルタエレメントを、場合によっては中空糸膜型フィルタエレメントを使用するに際し、意図的に、復水濾過装置に対して一部の復水をバイパスさせ、濾過しないで後段に送ることで、炉水中のFeの濃度が低下しすぎることを抑制し、それによってFe、Ni、Co濃度バランスの均衡を保ち、結果的に放射性核種であるCo−58、Co−60の濃度の上昇を抑えて、炉水の放射能濃度の上昇を従来運用と同レベルに抑えるようにしている。プリコート型フィルタエレメントを使用しないで済むことから、使用済みの濾過助剤が放射性廃棄物として発生することを回避でき、炉水の放射能濃度の上昇を抑えることができることにより、プラント定検時における問題発生のおそれも除去できる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の望ましい実施の形態を、図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施態様に係る復水処理システムおよびその運転方法を適用した、沸騰水型原子力発電所における機器系統図を示している。図1において、1は原子炉、2は原子炉再循環系、3は原子炉冷却材浄化系を示しており、原子炉1で生成された高圧水蒸気が高圧タービン4の駆動に使用され、湿分分離加熱器5を経た後低圧タービン6の駆動に使用され、両タービンにより駆動される発電機7にて発電が行われる。低圧タービン6で使用された水蒸気は復水器8で海水等を用いて冷却される。
【0017】復水器8の後段には、復水濾過装置9が配置され、その後段に復水脱塩装置10が配置されており、復水器8からの復水が低圧復水ポンプ11により、復水濾過装置9、復水脱塩装置10へと順に通水される。図1には、復水濾過装置9、復水脱塩装置10ともに各々一つの装置として表示してあるが、後述の図3〜図6に示すように、通常、復水濾過装置9には複数の濾過塔が並設されており、復水脱塩装置10には複数の脱塩塔が並設されている。
【0018】復水濾過装置9に対しては、該復水濾過装置9をバイパスするライン12が設けられており、このバイパスライン12に復水濾過装置バイパス弁13が設けられている。このバイパス弁13は、バイパスライン12における流量を調整した状態で、常時開弁あるいは適時に開弁される。
【0019】復水濾過装置9の各濾過塔内には、本実施態様では図2に示すようなプリーツフィルタエレメント14が多数配置されている。前述したように、中空糸膜型フィルタエレメントを配置することも可能である。また、図示は省略するが、濾過塔内に、復水を濾過しないでそのまま通過させるスルーエレメントを配置し、上記プリーツフィルタエレメントや中空糸膜型フィルタエレメントと混在した形態で配置し、復水の一部を各フィルタエレメントで濾過するとともに、残りの復水を濾過しないでスルーエレメントをそのまま通過させるようにすることも可能である。但しこの場合にも、バイパスライン12におけるバイパス流量をバイパス弁13で調整するものとする。
【0020】復水脱塩装置10で脱塩処理された復水は、高圧復水ポンプ15により低圧給水加熱器16に送られ、給水ポンプ17により高圧給水加熱器18を介して原子炉1へと戻される。このとき、必要に応じて、一部の給水が冷却材浄化系3へ、さらにはそれを介して原子炉再循環系2へと供給される。
【0021】上記のような復水処理系において、本発明に係る復水処理システムの運転方法は次のように実施される。図3と図5、図4と図6を参照し、従来の運用方法と比較しながら説明する。
【0022】まず、図5は、従来の復水濾過装置101の運用を示しており、復水濾過装置101は、複数の濾過塔102と、バイパスライン103およびバイパス弁104を備えている。このバイパス弁104は、開閉弁からなり、濾過塔再生時には開弁されるが、復水濾過処理時には、図示の如く閉じられている。
【0023】このような系において、本発明に係る運転方法では、図3に示すように運用される。図3において、復水濾過装置9には、複数の濾過塔21が並設されているとともに、バイパスライン12およびバイパス弁13が設けられている。このバイパス弁13は、前述の如くバイパスライン12におけるバイパス流量を調整可能な弁からなり、復水濾過処理時に、常時あるいは適時に、流量調整状態で開弁される。
【0024】このバイパスライン12における流量は、原子炉1内に保有される水、または最終的に原子炉1に供給される給水中の鉄分の濃度、あるいは給水中の鉄(Fe)とニッケル(Ni)の濃度比に応じて調整される。濾過塔21内にスルーエレメントを混在させる場合にも、同様に調整を行えばよい。
【0025】すなわち、鉄分の濃度が低くなりすぎないように、復水の適当な量を復水濾過装置9に通すことなくバイパスさせるのである。鉄分の濃度を所定量以上に保つことで、原子炉水中でのFe、Ni、Coの濃度バランスが崩れることが防止されるから、原子炉水中で鉄酸化物とNi、Coとが適当に反応してフェライトを形成し、余剰のNi、Coイオンが多量に原子炉水中に溶解することが回避される。放射性核種であるCo−58やCo−60も同様の挙動を示すから、原子炉水中にこれら放射性核種のイオンが多量に残存する状態になることが防止され、原子炉水中の放射能濃度の上昇が抑制される。このような運用は、原子炉への給水中の鉄分の濃度を監視し、その値に応じてバイパス弁13の開度を調整することにより行うことが可能であり、鉄分の濃度を適時にあるいは連続的に検出し、その検出値に応じてバイパス弁13を自動抑制し、バイパス流量を自動制御することも可能である。
【0026】また、上記のようなFe、Ni、Coの濃度バランスは、FeとNiの濃度比によっても検出できる。すなわち、Ni/Feの濃度比が、予め定めた基準値以下となるようにバイパスライン12におけるバイパス流量を調整あるいは制御するようにすれば、濃度バランス上Feが少なくなりすぎることを防止でき、原子炉水中における、放射性核種であるCo−58やCo−60の濃度の上昇を抑制でき、放射能濃度の上昇を抑制できる。
【0027】したがって、上述の如く、バイパス弁13を流量調整状態で常時あるいは適時に開弁することにより、プリーツフィルタエレメントや中空糸膜型フィルタエレメントを使用して復水濾過装置9の酸化鉄除去性能が向上されるとともに濾過助剤が放射性廃棄物として発生しないようにされたとしても、原子炉水中におけるFe、Ni、Coの濃度バランスが適正に保たれ、原子炉水中の放射能濃度レベルが従来運用と同等のレベルに保たれるようになる。その結果、放射能濃度の上昇を伴うことなく、従来使用していたプリコート型フィルタエレメントを、プリーツフィルタエレメントや中空糸膜型フィルタエレメントに代えることができるようになる。
【0028】図4と図6に別の運用方法を示す。図6は従来の運用方法を示しており、復水濾過装置101の複数の濾過塔102のうちの1塔を待機塔111として濾過処理を行う場合を示している。この場合には、待機塔111は入出口が閉じられて濾過処理に対しては系外塔とされ、バイパスライン103のバイパス弁104は、図5に示したのと同様、復水濾過処理時には図6に示したように閉じられている。
【0029】本発明に係る運転方法では、図4に示すように運用される。すなわち、濾過処理を行う各濾過塔21に対し、バイパス弁13は、常時あるいは適時に、バイパスライン12における流量調整状態にて開弁される。したがって、図3に示した運用と同様に、Fe、Ni、Coの濃度バランスの均衡が適切に保たれ、原子炉水中の放射能濃度の上昇が抑えられる。
【0030】また本運用では、待機塔22を設けておくことにより、複数塔から構成される復水濾過装置9のうちの1塔が逆洗される時においても、各濾過塔21による復水処理流量を変化させることなく、安定した運用が可能となる。
【0031】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の復水処理システムおよびその運転方法によれば、沸騰水型原子力発電所において、復水濾過装置のフィルタエレメントとしてプリコート型フィルタエレメントに代えてプリーツフィルタエレメントや中空糸膜型フィルタエレメントを使用した場合にも、原子炉水中のFe、Ni、Coの濃度バランスの均衡を適切に保つことができ、放射性核種が多量に残存することを防止して、炉水の放射能濃度を従来運用と同レベルに保つことが可能となる。また、プリコート型フィルタエレメントを使用しなくても済むから、濾過助剤が放射性廃棄物として発生することも回避可能となる。
【出願人】 【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
【出願日】 平成13年3月30日(2001.3.30)
【代理人】 【識別番号】100091384
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 俊光
【公開番号】 特開2002−296389(P2002−296389A)
【公開日】 平成14年10月9日(2002.10.9)
【出願番号】 特願2001−99487(P2001−99487)