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【発明の名称】 運転限界最小臨界出力比の評価方法、システムおよびプログラム
【発明者】 【氏名】フランシス・トマス・ボルジャー

【氏名】イェンス・ジョージ・ムンテ・アンダーセン

【氏名】チャールズ・リー・ヘック

【氏名】ジェームズ・コートニー・ショー

【要約】 【課題】核沸騰水型原子炉(BWR)炉心設計の熱力学モデリング及び性能評価のための方法及びシステムを提供する。

【解決手段】単一のオペレータの過失又は設備の誤作動などにより生じる原子炉中の過渡的条件を生成する異常事象(AOO)をシミュレーションするに際し、多次元的方法を使用する。臨界出力比(ΔCPR/ICPR)の変化における総称の過渡的偏り及び不確定性に基づいて、燃料棒臨界出力比(CPR)のヒストグラムが生成される。最終的に、原子炉の運転限界最小臨界出力比(OLMCPR)が、過渡的条件中の沸騰遷移(NRSBT)を生じる燃料棒の本数を表す確率計算のヒストグラムから評価される。ヒストグラムを使用して、USNRC規定に従った原子炉炉心設計のOLMCPRが統計的に実証される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 設計上の制約及び運転条件を示す1つ以上のパラメータ量により記述される沸騰水型原子炉(BWR)の運転限界最小臨界出力比(OLMCPR)を仮定の運転事象と過渡事象に対する臨界出力比(ΔCPR/ICPR)の変化における所定の変換とのコンピュータシミュレーションを使用して直接評価する方法において、a)BWRのクラス、運転事象及び燃料の種類に対するポテンシャルΔCPR/ICPRの確率分布P(ΔCPR/ICPR)を決定する過程と、b)前記パラメータ量を公称値へと初期化する過程と、c)原子炉運転の安定状態初期条件を決定する過程と、d)BWR炉心における複数の燃料棒に対する運転事象をシミュレーションする過程と、e)前記過程(a)で取得された前記確率分布を使用して前記過程(d)でシミュレーションされた前記各燃料棒に対する最小臨界出力比(MCPR)を計算する過程と、f)前記過程(e)で取得された前記各MCPR値に対するポテンシャルMCPR値の確率分布P(MCPR)を決定する過程と、g)前記過程(f)からの前記各確率分布に対してMCPR<1.0である場合、MCPRに対する値に対応する確率分布の部分を合計することによって、沸騰遷移(NRSBT)を生じる燃料棒の総本数に対する値を計算する過程と、h)前記パラメータ量のうちの1つ以上を摂動させ、NRSBTに対する別の値を再計算する過程と、i)前記過程(c)から(h)を所定回数の摂動に対して繰り返す過程と、j)前記過程(g)から(h)において計算されたNRSBT値のヒストグラムを展開する過程と、k)前記過程(j)において編集された前記NRSBT値のヒストグラムから、NRSBT分布の中心傾向に基づいて、公称NRSBT値を計算する過程と、l)前記公称NRSBT値に対する信頼区間を計算する過程と、m)最大限界運転事象のシミュレーションに対して、規定の信頼水準における前記公称NRSBT値が、所定のカットオフ値未満のままであるように、初期最小MCPRとして前記原子炉に対するOLMCPRを選択する過程と、n)前記過程(l)で選択された前記OLMCPRを運転制御パラメータとして適用することによって前記BWRの運転を遂行する過程とから成る方法。
【請求項2】 前記運転事象は、予想される運転時の異常事象(AOO)と関連付けられた過渡事象である請求項1記載の方法。
【請求項3】 予想される運転時の異常事象をシミュレーションするために、原子炉の熱水力学及び出力の多次元モデリングが使用される請求項2記載の方法。
【請求項4】 前記パラメータ量は、原子炉プラント状態値又はモデリングパラメータに対応する請求項1記載の方法。
【請求項5】 前記過程(d)において、前記運転事象は、複数本の燃料棒に対して同時にシミュレーションが行われる請求項1記載の方法。
【請求項6】 前記パラメータ量のうちの1つ以上の摂動過程は、モンテカルロ統計分析法を使用して達成される請求項1記載の方法。
【請求項7】 原子炉の予想される運転時の異常事象中に複数の燃料棒に対して熱運転特性を同時にシミュレーション/評価するための規則と原子炉プラント運転状態値及び/又は燃料棒モデリングパラメータを表す1つ以上のパラメータ量のデータベースとを内部に記憶した記憶メモリ及び入出力装置を含むコンピュータを具備する沸騰水型原子炉(BWR)の運転限界最小臨界出力比(OLMCPR)を決定するためのシステムにおいて、前記コンピュータは、(i)前記原子炉に対して予想される運転時の異常事象をシミュレーションし、(ii)前記予想される運転時の異常事象に対する臨界出力比(ΔCPR/ICPR)値のポテンシャル変化の所定の確率分布P(ΔCPR/ICPR)に基づいてシミュレーションされる各燃料棒に対して最小臨界出力比(MCPR)を判定し、(iii)各MCPR値に対してポテンシャルMCPR値の確率分布P(MCPR)を計算し、(iv)シミュレーションされた全ての燃料棒に対してMCPR<1.0である場合、MCPRに対する値に対応する確率分布の部分を合計することによって、沸騰遷移(NRSBT)を生じる燃料棒の本数に対する値を計算し、前記パラメータ量の1つ以上を摂動させた後にNRSBTに対する更なる値を繰り返し計算し、(v)全ての摂動に対して計算されたNRSBT値のヒストグラムを展開し、(vi)最大限界運転事象のシミュレーションに対して、前記過程(v)から判定された前記ヒストグラムの分析から判定される様に、規定の信頼水準における前記公称NRSBT値が、所定のカットオフ値未満のままであるように、最小MCPRから前記OLMCPRを選択するようにプログラムされるシステム。
【請求項8】 シミュレーションされた前記運転事象は、予想される運転時の異常事象(AOO)と関連付けられた過渡事象である請求項7記載のシステム。
【請求項9】 予想される運転時の異常事象をシミュレーションするために、燃料棒の熱水力学及び原子炉出力の多次元モデリングが使用される請求項7記載のシステム。
【請求項10】 前記過程(i)において、前記予想される運転時の異常事象は、複数本の燃料棒に対して同時にシミュレーションが行われる請求項7記載のシステム。
【請求項11】 沸騰水型原子炉(BWR)の運転限界最小臨界出力比(OLMCPR)を決定するためのコンピュータ読取可能媒体上で実施されるコンピュータプログラムにおいて、前記運転事象に対する臨界出力比(ΔCPR/ICPR)の変化の所定の確率分布を使用して、前記原子炉における運転事象中に原子炉熱水力学及び出力の多次元シミュレーションを行う第1の命令シーケンス手段と、前記第1の命令シーケンス手段に結合され、前記第1の命令シーケンス手段から取得される様な各燃料棒に対する最小臨界出力(MCPR)の統計的評価に基づいてOLMCPR値を直接計算し、且つ、所定の原子炉プラント状態値及び燃料棒モデリングパラメータの摂動から計算される予想NRSBT(沸騰遷移を生じる燃料棒の本数)値のヒストグラムを展開する第2の命令シーケンス手段とを含むコンピュータプログラム。
【請求項12】 前記原子炉熱水力学及び出力の多次元シミュレーションを行う手段は、複数の燃料棒に対して同時に過渡的運転時の異常事象のシミュレーションを行う請求項11記載のコンピュータプログラム。
【請求項13】 沸騰水型原子炉(BWR)の運転限界最小臨界出力比(OLMCPR)を評価する方法において、コンピュータにより実行可能な以下の過程:a)前記原子炉において使用される複数の核燃料棒の各々に対して最小臨界出力比(MCPR)を設定する過程と、b)臨界出力比(ΔCPR/ICPR)の変化の所定の確率分布に基づいて、沸騰遷移を生じる燃料棒の総本数(NRSBT)に対する値を計算する過程と、c)1つ以上の原子炉プラント状態値及び/又は燃料棒モデリングパラメータを摂動させ、NRSBTに対する値を再計算する過程と、d)所定回数の摂動に対して前記過程(c)を実行する過程と、e)前記過程(b)、(c)及び(d)において判定されたNRSBT値のヒストグラムを展開する過程と、f)最大限界運転事象のシミュレーションに対して、前記過程(e)から判定された前記ヒストグラムの分析から判定される様に、規定の信頼水準における前記公称NRSBT値が、所定のカットオフ値未満のままであるように、最小MCPRから前記OLMCPRを選択する過程とから成る方法。
【請求項14】 前記過程(b)におけるNRSBT値の計算過程は、以下の過程:前記過程(a)で設定された各MCPR値に対して、種々の運転及び設計上の不確定性から生じる予想MCPR値の範囲を示す確率分布P(MCPR)を決定する過程と、各燃料棒に対してMCPR<1.0である値に対する前記確率分布を統合し、全燃料棒に対する統合結果を合計する過程とにより達成される請求項13記載の方法。
【請求項15】 前記過程(c)における1つ以上の原子炉プラント状態値又はモデリングパラメータの前記摂動は、前記値及びパラメータの無作為に生成された変量を使用して達成される請求項13記載の方法。
【請求項16】 燃料設計及び/又は炉心構成が、運転限界最小臨界出力比(OLMCPR)を評価するためのプロセスにより判定される前記原子炉の運転限界に依存する沸騰水型原子炉の核燃料炉心に対して、OLMCPRを評価し且つ沸騰水型原子炉を運転することを目的とし、結果的に前記原子炉の運転限界を向上させる改良されたプロセスにおいて、(a)臨界出力比(ΔCPR/ICPR)の前記変化の所定の確率分布に基づいた原子炉における過渡的運転時の異常事象の複数のコンピュータシミュレーションに対応するNRSBT(沸騰遷移を生じる燃料棒の本数)値のヒストグラムをコンピュータシステムのメモリ中に展開し、前記シミュレーションは、前記原子炉に対する複数の異なるパラメータ量に対する1本以上の燃料棒に対する臨界出力比(CPR)に対する値を供給する過程と、(b)NRSBT分布の中心傾向に基づいて、前記過程(a)において展開されたNRSBT値の前記ヒストグラムから前記コンピュータシステムにより統計的に判定された公称NRSBT値を選択する過程と、(c)前記公称NRSBT値に対する信頼水準を選択する過程と、(d)限界過渡的運転時の異常事象のシミュレーション中に、前記公称NRSBT値が、所定のカットオフ値未満のままであるように、最小CPRからOLMCPR値を選択する過程と、(e)前記過程(d)において選択された前記OLMCPRを運転制御パラメータとして適用することによって、前記沸騰水型原子炉運転を遂行する過程とから成る方法。
【請求項17】 前記ヒストグラムは、過渡的運転時の異常事象の多次元モデリングを使用して、前記シミュレーションから取得されたCPRデータを記憶するためのメモリを含むデータ処理システム上で展開される請求項16記載の方法。
【請求項18】 燃料棒設計及び/又は炉心構成が、運転限界最小臨界出力比(OLMCPR)を評価するためのプロセスにより判定される前記原子炉の運転限界に依存する沸騰水型原子炉の核燃料炉心に対して、OLMCPRを評価し且つ沸騰水型原子炉を運転することを目的とし、結果的に前記原子炉の運転限界を向上させる改良されたプロセスにおいて、コンピュータにより実行可能な以下の過程:(a)前記過渡的運転時の異常事象に対する臨界出力比(ΔCPR/ICPR)の前記変化の所定の確率分布に基づいた原子炉における過渡的運転時の異常事象の複数のコンピュータシミュレーションに対応するNRSBT(沸騰遷移を生じる燃料棒の本数)値のヒストグラムをコンピュータシステムのメモリ中に展開し、前記シミュレーションは、前記原子炉に対する複数の異なるパラメータ量に対する1本以上の燃料棒に対する臨界出力比(CPR)に対する値を供給する過程と、(b)NRSBT分布の中心傾向に基づいて、前記過程(a)において取得されたNRSBT値の前記ヒストグラムから公称NRSBT値を計算する過程と、(c)前記公称NRSBT値に対する信頼水準を選択する過程と、(d)過渡現象のシミュレーション中に、前記公称NRSBT値が、所定のカットオフ値未満のままであるように、前記初期最小MCPRとして前記原子炉に対するOLMCPRを選択する過程と、(e)前記過程(d)において選択された前記OLMCPRを運転制御パラメータとして適用することによって、沸騰水型原子炉運転を遂行する過程とから成る方法。
【請求項19】 設計上の制約及び運転条件を示す1つ以上のパラメータ量を有することを特徴とする沸騰水型原子炉(BWR)の運転限界最小臨界出力比(OLMCPR)を許可要件への対応性のために統計的に実証する方法において、(a)コンピュータが沸騰水型原子炉に対するOLMCPR値を決定するようにプログラムし、前記コンピュータが少なくとも、(i)原子炉における過渡的運転時の異常事象の複数のシミュレーションに対応するNRSBT(沸騰遷移を生じる燃料棒の本数)値のヒストグラムを展開し、前記シミュレーションは、前記過渡的運転時の異常事象に対する臨界出力比(ΔCPR/ICPR)の変化の所定の確率分布に基づいて、前記原子炉に対する前記パラメータ量における複数の無作為に選択された変量に対して1本以上の燃料棒に対する臨界出力比(CPR)に対する値を供給し、(ii)NRSBT値の前記ヒストグラムから公称NRSBT値を計算し、(iii)過渡現象のシミュレーション中に、前記公称NRSBT値が、所定のカットオフ値未満のままであるように、最小MCPRに対応する前記原子炉に対するOLMCPRを選択するようにプログラムされる過程と、(b)表示、記録又は記憶させるために前記OLMCPR値を出力装置に供給する過程とから成る方法。
【請求項20】 運転限界最小臨界出力比(OLMCPR)値を有することを特徴とする核燃料炉心を有する沸騰水型原子炉を制御する際に使用するための前記OLMCPR値を決定する方法において、(a)コンピュータを使用して、沸騰水型原子炉の運転中に発生する可能性のある過渡的運転時の異常事象を前記異常事象の所定の分布に基づいてシミュレーションする過程と、(b)1本以上の燃料棒に対する臨界出力比(CPR)に対する値を提供する沸騰水型原子炉における過渡的運転時の異常事象のコンピュータシミュレーションからNRSBT値のヒストグラムを展開する過程と、(c)NRSBT分布の中心傾向に基づいて、前記過程(a)において取得されたNRSBT値の前記ヒストグラムから公称NRSBT値を決定する過程と、(d)前記公称NRSBT値に対する信頼水準を選択する過程と、(e)過渡現象のシミュレーション中に、前記公称NRSBT値が、所定のカットオフ値未満のままであるように、前記初期最小MCPRとして前記原子炉に対するOLMCPRを選択する過程とから成る方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一般的に、原子力炉心運転を評価する方法に関し、特に、沸騰水型原子炉(BWR)の効率の向上及び運転の向上を実現するように、運転限界最小臨界出力比(OLMCPR)を決定する改良された方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】沸騰水型原子炉(BWR)は、制御された核分裂反応により発電を行う。図1に示す様に、簡易BWRは、核燃料炉心及び水を含む原子炉室101を含む。生成された蒸気が、パイプ102を介してタービン103に移送される。タービン103で発電が行われ、水はパイプ104を介して炉心に戻る。図2に示す様に、炉心201は、原子炉炉心内に一定の方法で配列された約500の燃料棒の束202から成る。図3に示す様に、各束301は、約100本の燃料棒302を含む。燃料棒は、炉心中の水により囲まれる。核反応により生成された熱は、燃料棒から炉心の中を循環する水へと伝えられ、水の一部は沸騰する。炉心において生成された熱は、安全で効率的な原子炉運転を維持するために慎重に制御される。
【0003】沸騰水型原子炉には、基本的に、原子炉の温度限度を定義する際に考慮されなければならない電熱の3つのモード(i)核沸騰、(ii)遷移沸騰、(iii)膜沸騰がある。「核沸騰」は、伝熱の好適で効率的なモードであり、BWRは、このモードで運転されるように設計されている。「遷移沸騰」は、燃料棒上の伝熱表面の蒸気ブランケッティングが発生すると急激に上昇し、蒸気ブランケットが冷却流により一掃されると核沸騰温度まで下降し、その後再度上昇する不安定な燃料棒クラッディングの表面温度により明示される。更に高い燃料棒/束運転出力では、「膜沸騰」が生じ、その結果、燃料棒クラッディング温度が上昇する。膜沸騰におけるクラッディング温度と、場合によっては、遷移沸騰における温度ピークは、燃料棒のクラッディングの弱体化と加速腐食を生じるような値に到達する恐れがある。燃料棒の過熱は、核沸騰から膜沸騰への遷移の開始として保守的に定義される。原子炉炉心及び燃料棒設計に対する従来の基準は、多様な設計及び運転時の「不確定性」を受容する「限界」が、炉心の耐用期間中、常に、最大限界運転条件と遷移沸騰条件との間で維持されるように定義される。
【0004】遷移沸騰の開始は、沸騰遷移が発生する蒸気の質、すなわち、「臨界性」に対する相関により予測することができる。蒸気の質の測定は容易に行うことができ、蒸気の質は、その他の要素のうち、任意のマスフロー量、出力レベル、圧力及び束のフロー外形に対して、沸騰限界(沸騰長さ)からの距離を測定する機能である。「臨界出力」は、蒸気の臨界性を生じる束の出力として定義される。従って、「臨界出力比」(CPR)は、臨界出力対当該の原子炉条件における束の運転出力の比として定義される。CPRは、通常の運転条件と沸騰遷移を生じる条件との関係を表す。CPRは、通常、原子炉の設計及び運転を評価するのに使用される。原子炉の安全で効率的な運転を保証するには、CPRは炉心中の燃料集合体の全体に対して、規定値より高く維持される。原子炉運転限界は、従来、炉心中の最大限界燃料束集合体に関して、「最小臨界出力比」(MCPR)として定義される。原子炉運転限界は、MCPRに関して説明されることが多い。
【0005】原子力発電工学では、原子炉の設計及び運転に固有の種々の「不確定性」及び許容限度と組み合わされた原子炉の過渡事象の発生により、遷移沸騰が一定期間、局所的に燃料棒に発生する可能性があることが広く認識されている。従って、MCPR運転限界は、従来、the United States Nuclear Regulatory Commission(USNRC)設計基準要件に従って設定される。この要件では、単一のオペレータの過失又は単一の設備の誤作動により生じた過渡現象は、炉心運転状態における不確定性を考慮に入れて、99.9%を超える燃料棒が、これらの過失や誤作動の際に沸騰遷移を回避することが予期されるように制限される。安全限界最小臨界出力比(SLMCPR)は、現在のUSNRC要件の下では、沸騰遷移を生じる燃料棒が0.1%未満であるMCPRとして定義される。対応するOLMCPRは、MCPRが一定の統計的信頼度までSLMCPR以上であるように炉心運転条件を記述する。
【0006】i.理想の方法原則として、OLMCPRは、限界の予想される運転時の異常事象(AOO)に対して、炉心中の燃料棒のうちの0.1%未満が沸騰遷移を生じることが予期されるように直接計算することができる。この方法は、Shaug等による米国特許第5,912,933号に記載される。これに関係するプロセスは、図4に示される。図4は、燃料棒のCPR値401対特定のCPR値における燃料棒の本数402のヒストグラム400を示す。CPR値は、通常、燃料束と関連付けられるが、実際は、束中の限界燃料棒を指す。束中の各燃料棒は、局所出力分布(TIP不確定性)及び束内の燃料棒の相対位置(R係数)により判定されるCPR値を有する。束中の任意の1本の燃料棒の最小CPRは、束全体に対するCPRの特徴を示すのに使用される。
【0007】任意の燃料棒に対するCPR401は、その判定における不確定性を反映する関連の確率分布関数(PDF)を有する。PDFは、実験に基づいて判定され、実験臨界出力比(ECPR)分布410として示される。従って、公称CPR値411が1.0である場合、予想される実際のCPR値のPDF410は、0.90から1.10の範囲である。燃料棒のCPR値における可変性は、初期の燃料棒条件、すなわち、原子炉運転状態におけるパラメータの測定値(炉心出力)及び抽出されたパラメータのモデリング(出力分布)における不確定性によるものである。
【0008】CPR値に対する過渡事象の影響を考慮するために、最小燃料棒のCPRに対する許容公称CPR値405をより大きいCPR値、すなわち、1.25にずらすことによって、CPR値に安全限界がもたらされる。従って、最小CPR燃料棒に対するECPRヒストグラム分布403は、CPRヒストグラム全体がCPR値1.20よりも高く、CPR値1.0よりは更に高くなるようにずらされる。更に、最小CPR燃料棒以外の燃料棒に対する公称CPR値407は、最小CPR燃料棒の1.25などの公称CPR値より高い。
【0009】燃料棒の運転における過渡現象中、燃料棒のCPRのヒストグラム407は、CPR値を下げるために左にずらされ、ヒストグラム408になる。このずれにより、過渡現象中の「公称」CPR値406は、例えば、1.05などの点にある。この場合、最小CPR値には、過渡現象中に到達する。限界燃料棒は、初期燃料棒条件における不確定性と「過渡的不確定性」の双方を含む関連PDF404を有するであろう。過渡現象中の臨界出力比の最大変化(ΔCPR409)は、過渡現象のモデリングにおける不確定性、すなわち、物理モデル及びプラントパラメータの双方を含む。
【0010】理想的には、この過渡現象ΔCPR409及び関連するOLMCPRは、図5に示す様に生成される。以下で説明を行う。
【0011】ステップ1:プラントを運転するための各パラメータを使用する1組の基準炉心運転条件により、ブロック501に示す様に、OLMCPRに等しい炉心のMCPRが生成されると想定する。
【0012】ステップ2:炉心出力、炉心流量、炉心圧力などのブロック506に示す通常の束のCPRを予測するパラメータを使用して、ブロック502に示す様に、炉心中の各束に対するMCPRを決定する。
【0013】ステップ3:各束内の燃料棒配置及び燃料棒出力などのブロック507に示す各束のCPRを個々の燃料棒のCPR値に変換するパラメータを使用して、ブロック503に示す様に、炉心中の各束に対するMCPRを決定する。
【0014】ステップ4:ブロック508に示す上述の式1及び2により生成されたECPR確率分布を使用して、ブロック504に示す様に、沸騰遷移を生じる炉心中の各燃料棒の確率を合計することによって、炉心中のNRSBTのパーセンテージを決定する。この合計は、式3により示される。
【0015】
【数1】

【0016】
【数2】

【0017】
【数3】

【0018】ステップ5:ブロック505に示す様に、設定回数のモンテカルロ統計試行に対して、ブロック506及び507に示すパラメータを変化させる。ステップ2から4までの全ての試行からの統計を編集して、NRSBTの確率分布を生成する。
【0019】ステップ6:ブロック509に示す様に、NRSBTのパーセンテージの値を0.1%と比較する。パーセンテージが0.1%よりも大きい場合、ブロック510に示す様に、USNRC規定への対応性のために、炉心パラメータを異なる初期条件にリセットする。ステップ1及びブロック501と同様に、新規の初期条件により、OLMCPRが生成されるものとする。NRSBTの判定が再開され、NRSBTの値が0.1%に等しくなるまで繰り返される。同様に、パーセンテージが0.1%未満の場合、炉心パラメータはリセットされ、炉心をより効率よく又は廃棄物を低減して運転するために、NRSBT値が増加される。
【0020】ステップ7:NRSBTのパーセンテージが0.1%に等しい場合、炉心のMCPRに等しいOLMCPRの予想値は、ブロック511に示す様に、USNRC規定に従う。従って、運転炉心条件は、予想パラメータとして設定される。
【0021】計算上の難点及び効率的なアルゴリズムを考案する必要性により、上記で概略を説明した理想プロセスについては、以下で説明を行なわない。現在認可済のプロセス及びOLMCPRを決定する新規の方法を以下の章で説明する。
【0022】ii.USNRC認可の方法現在のプロセスでは、OLMCPR判定は、図6に示す様に主に2つのステップに分けられる。炉心中の燃料棒の0.1%未満がこの値で沸騰遷移を生じることが予期される様に、理想プロセスに類似したプロセスを使用することによって、最初にSLMCPRの判定を行う。言い換えると、炉心中のMCPRがSLMCPRよりも大きい場合、炉心中の燃料棒の99.9%が、沸騰遷移を回避することが予期される。次に、最大限界過渡事象及びSLMCPRから予期されるMCPRの最大変化(ΔCPR95/95)を合計することによって、OLMCPRが確立される。
【0023】図6は、図4と同様であるので、その構成要素の一部のみ以下で説明する。ヒストグラム600は、特定のCPR値における燃料棒の本数602、対その対応するCPR値601を示す。ヒストグラム608は、例えば、1.05などの値に最小CPR燃料棒607を有し、この値は、SLMCPR603と等しい。限界燃料棒分布606は、限界CPR燃料棒607の判定における不確定性を示す。理想プロセスと同様に、SLMCPR603は、NRSBTが0.1%に等しい場合に判定される。
【0024】しかしながら、理想プロセスとは異なり、現在のプロセスは、各束内の出力分布及び各燃料棒に沿った出力分布などの特定のパラメータを十分に予測/測定することができない。また、SLMCPRを計算する際の不確定性により、OLMCPRをSLMCPRと等しくすることもできない。従って、誤差係数ΔCPR95/95605が、SLMCPR603に加算され、OLMCPR609が判定される。ΔCPR95/95605は、SLMCPR603の計算における固有の限界を保守的に訂正する。
【0025】現在認可済のプロセスを使用することで、OLMCPR609が図7に示す様に生成される。以下で説明を行う。
【0026】ステップ1:プラントを運転するための各パラメータを使用する1組の基準炉心運転条件により、ブロック701に示す様に、SLMCPRに等しい炉心のMCPRが生成されると想定する。
【0027】ステップ2:炉心出力、炉心流量、炉心圧力、束出力などのブロック706に示す通常の束のCPRを予測するパラメータを使用して、ブロック702に示す様に、炉心中の各束に対するMCPRを決定する。このプロセスステップでは、束出力を予測する際の不確定性が大きく、計算に偏りが生じる。
【0028】ステップ3:各束内の燃料棒配置及び燃料棒出力などのブロック707に示す各束のCPRを個々の燃料棒のCPR値に変換するパラメータを使用して、ブロック703に示す様に、炉心中の各束に対するMCPRを決定する。各燃料棒出力は測定が困難であり、不確定性を束出力分布不確定性と組み合わせることにより、SLMCPRの実際の計算における不確定性が増加する。
【0029】ステップ4:ブロック708に示す上述の式1及び2により生成されたECPR確率分布を使用して、ブロック704に示す様に、沸騰遷移を生じる炉心中の各燃料棒の確率を合計することによって、炉心中のNRSBTのパーセンテージを決定する。この合計は、上述の式3を使用して行われる。
【0030】ステップ5:ブロック705に示す様に、設定回数のモンテカルロ統計試行に対して、ブロック706及び707に示すパラメータを変化させる。ステップ2から4までの全ての試行からの統計を編集して、NRSBTの確率分布を生成する。
【0031】ステップ6:ブロック709に示す様に、NRSBTのパーセンテージの値を0.1%と比較する。パーセンテージが0.1%よりも大きい場合、ブロック710に示す様に、USNRC規定への対応性のために、炉心パラメータを異なる初期条件にリセットする。ステップ1及びブロック701と同様に、新規の初期条件により、SLMCPRが生成されるものとする。NRSBTの判定は、NRSBT値が0.1%に等しくなるまで繰り返される。同様に、パーセンテージが0.1%未満の場合、炉心パラメータはリセットされ、炉心をより効率よく運転するために、NRSBT値が増加される。
【0032】ステップ7:NRSBTのパーセンテージが0.1%に等しい場合、炉心のMCPRに等しいSLMCPRの予想値は、ブロック711に示す様に、炉心が運転される限界である。
【0033】ステップ8:本プロセスは、ブロック702及び703に示す様に、ステップ2及び3における比較的不確定なシミュレーションを含むので、CPRの変化は、95%の信頼区間、ΔCPR95/95において評価される。OLMCPRは、SLMCPRにΔCPR95/95を線形加算したものに等しい。OLMCPRの結果値は、USNRC規定に従う。
【0034】OLMCPRの直接計算及び現在使用される非常に保守的な概算方法における困難が動機となって、本発明者等は、BWR設計の評価及びOLMCPRの計算において従来使用されるプロセスのうちの幾つかに対してより綿密な調査を行なった。例えば、以下に記載するのは、理想の方法を使用して直接OLMCPRを計算する機能を制限するものとして、本発明者等により識別される最も顕著な要因のうちの2つを手短に説明した簡潔な一覧である。
【0035】1.各AOOを評価するのに必要な複数の計算は、非常に煩わしいものであろう。NRSBTの統計的に適切な推算を確立するためには、各AOOに対して約100回の試行を行なわなければならない。現在使用可能な設備は、必要な時間枠の範囲内で所要数の過渡的計算を行うことの妨げとなる固有の限界を有する。
【0036】2.現在使用可能な設備は、局所出力分布(TIP不確定性)又は燃料束内の燃料棒の相対位置(R係数)をシミュレーションすることができない。各燃料棒の束内でのバラツキは、正確なNRSBTを計算するのに必要不可欠である。バラツキの影響を推算する正確な方法がない場合、OLMCPRの直接計算は、必然的に不正確になる。
【0037】
【発明の概要】BWR運転の評価のために使用される従来の基準に内在する保守性の度合いが過剰であるため、BWRの運転限界の実質的な向上は、OLMCPRを決定するための他の方法を使用することによって実現が可能である。発明者等は、原子炉の許容運転限界の実質的な向上と、運転効率の向上、燃料生成量の増加及び/又は燃料消耗の低減とを可能にするOLMCPRを決定するための数学的に適切な方法を開発した。例えば、特定の原子炉又は原子炉設計が、必要以上に保守的な評価方法を使用することによって従来は実現されていた運転限界よりも上の運転限界を実際に有することを実証することにより、向上した出力レベルでの運転又は燃料の使用を抑えた同等の出力レベルでの運転が可能になる。従って、OLMCPRの計算/実証を行うのに、沸騰水型原子炉の運転限界が実質的に向上するより数学的に適切な方法が、ここでは提示される。
【0038】簡潔には、本発明の改良された方法は、原子炉の設計上の制約及び運転条件を示す選択されたパラメータ量における一定範囲の変量に対して、「沸騰遷移」温度での運転を生じる原子炉燃料棒の本数のヒストグラムを生成することに基づく。また、BWRの種類に固有の各種の過渡事象に対して臨界出力比(ΔCPR/ICPR)の変化の所定のPDFを使用する炉心運転モデリング法が、原子炉における「予想される運転時の異常事象(AOO)」(簡潔な出力過渡現象を生じる運転時の異常事象など)中にBWR熱水力学及び中性子動力学をシミュレーションするために使用される。基本的に、本発明では、NRSBTのPDFを予測する際に、沸騰遷移(NRSBT)を生じる燃料棒の本数に影響する可能性のある全てのモデルパラメータ及び原子炉プラントパラメータが考慮される。NRSBTは、次に、最初にSLMCPRに対する値を計算する必要無しに直接OLMCPRを決定するために、統計的に評価される。この方法を使用して、本発明は、安定状態のSLMCPR及び過渡的運転時の異常事象による臨界出力比(ΔCPR)の変化を同時且つ個別に評価することによって得られる値の組み合わせからOLMCPRを決定する従来の「間接的な」方法と比較して、過渡的条件に対するヒストグラムの統計分析から原子炉のOLMCPRの直接評価を達成する。
【0039】
【発明の実施の形態】以上の方法は、本発明の他の目的及び利点と同様、添付の図面と関連させながら、本発明の好適な実施例の以下の詳細な説明を綿密に検討することによって、より完全に理解されるであろう。
【0040】沸騰水型原子炉(BWR)核炉心の運転限界最小臨界出力比(OLMCPR)を決定する実際の方法がここでは開示される。この実際の改良により、炉心に対する運転限界の向上が実現され、炉心の運転及び/又は構成が効率的で費用効果の優れたものになる。これは、このような目的で従来使用されているプロセスよりも、核原子炉のUSNRC認可要件への対応性を実証することに対してのより直接的なアプローチである。メモリを有するコンピュータと種々の入出力装置又は表示装置とを含み、BWRにおける過渡的運転中事象のシミュレーションを実行し、原子炉プラント初期状態条件とその他の重要なパラメータとに関連する全ての固有の「不確定性」を含む1つ以上の反応ヒストグラムの編集及び表示を続けて行うために特にプログラムされたデータ処理システムが開示される。
【0041】過渡事象中の臨界出力比の変化(ΔCPR/ICPR)における総称的な偏りを計算するために使用される方法は、結果の確率分布関数(PDF)を使用することでSMLCPRを最初に計算しなくてもOLMCPRをより正確に予測する。多くの要素を考慮に入れた実験試行を何度も行うことにより、過渡的ΔCPR/ICPRが形成され、ΔCPR/ICPRにおける標準偏差が、各過渡事象に対して判定される。公称初期条件から開始する過渡事象に対する公称ΔCPR/ICPRも判定される。過渡現象における最小点に対する個々の燃料棒のCPR値のヒストグラムが、初期CPR値及び過渡的ΔCPR/ICPR不確定性値を無作為に引くことによって形成される。初期臨界出力比(ICPR)は、ΔCPR/ICPRの共通無作為値によりMCPRに変換される。NRSBTのパーセンテージは、試行の度にこのMCPR値より計算される。NRSBTのパーセンテージが0.1%よりも大きい場合、初期運転条件は変更され、プロセスはNRSBTが0.1%に等しくなるまで繰り返される。
【0042】NRSBT分布ヒストグラムは、統計的方法を使用して分析され、分布の「中心傾向」が判定される。通常、平均値又はメジアンが、中心傾向を定量化するための統計量として使用される。この統計量の値は、ここでは、公称値として定義される。以下の説明では、平均値が公称値として選択される場合の例が挙げられるが、本発明は、この選択に限定されるものではない。メジアン値又はその他の中心傾向用の統計量を公称値として使用する場合も、本発明の一部と考えられる。
【0043】中心傾向を定量化するために使用される統計量の公称値における不確定性は、公称値に対する「信頼区間」として表される。信頼区間は、その区間が公称値を含む確率が指定の確率(通常、50%以上)であるように定義される。例えば、その区間が平均値を含む確率が95%である場合、平均値に対する95%の信頼区間が定義される。この信頼区間を確立するのに使用される指定確率は、「信頼水準」と呼ばれる。
【0044】過渡現象中の沸騰遷移率は、統計上、(1)炉心中の単一の燃料棒が沸騰遷移を生じる確率、あるいは、(2)炉心中の全ての燃料棒のうち、沸騰遷移を生じることが予想される分率として定量化される。各試行でのNRSBT値は、個々の燃料棒が過渡現象中に1.0未満のCPR値を有する確立を合計することによって判定されるので、このような統計的関係が成り立つ。また、各NRSBT分布に対する公称値も、本発明では、炉心中の全燃料棒に対する初期の燃料棒のCPR値の分布と関連付けることが可能である。本プロセスにより、炉心中の全燃料棒に対する最小初期MCPR値と、燃料棒が過渡現象中に沸騰遷移を生じる確率及び信頼水準との間である関係を確立することができる。炉心に対する最小初期MCPR値は、このようにAOO過渡現象中に沸騰遷移を生じない燃料棒の本数に対するUSNRC設計の基準要求値により確立される確率及び信頼水準を使用して判定される場合、定義上では、対応性を実証するのに必要な最小運転限界MCPRになる。
【0045】一面において、本発明は、後述する様に本発明の改良された方法に従ってBWR炉心運転条件をシミュレーションし、原子炉のOLMCPRの計算/統計的実証を行うために特定のルーチンを実行するようにプログラムされたデータ処理装置を含むシステムである。
【0046】図8は、本発明による原子炉炉心過渡的応答の多次元シミュレーションとBWR原子炉炉心に対するOLMCPRの直接評価とを行うことを意図したデータ処理システムの一例のブロック図を示す。システムは、中央処理装置(CPU)801、記憶メモリ802、ユーザインタフェース入出力装置803、及び、場合によっては、1台以上のディスプレイ804を必然的に含む。記憶メモリ802は、原子炉プラント状態情報と、パラメータ値と、後述の本発明の改良された方法に従って炉心運転条件の多次元シミュレーションを実現し、OLMCPRの評価を行うためのルーチンとから構成されるデータベース(不図示)を含む。
【0047】各種のAOO、各クラスのBWRプラントの型、各種の燃料に対して統計調査が行われ、ΔCPR/ICPRにおける総称の過渡的偏り及び不確定性が判定される。モデル及びプラントパラメータを無作為に変動させて、(100のオーダでの)十分な回数の試行が公称条件で開始される。ΔCPR/ICPRに寄与する初期条件(炉心出力など)における不確定性も、摂動に含まれる。データを利用して過渡的ΔCPR/ICPRにおける偏り及び標準偏差が判定される。
【0048】本発明のプロセスのフローチャートが、図9に示される。ブロック909は、OLMCPRの計算を通して一定であり、各種の原子炉及び各種の燃料に対する個々の過渡事象に対するΔCPR/ICPRは、プロセスが使用される前に判定されなければならない。図10は、ある特定種類のAOOに対するΔCPR/ICPRの結果グラフを示す。ヒストグラム1000は、各燃料棒に対する結果のCPR1001を有する試行回数1002、対その対応するCPR1001値を示す。PDF1003は、過渡事象前のCPRの分布を表す。各CPR値は、個々のΔCPR/ICPR1006値に従って変化する。過渡的CPR値の集合により、過渡事象中のPDF1004が生成される。公称ΔCPR/ICPR1005は、PDF1003の公称CPR値とPDF1004の公称CPR値との間の差違であるように定義される。OLMCPRの計算は、以下の通りである。
【0049】ステップ1:プラントを運転するための各パラメータを使用する1組の基準炉心運転条件により、ブロック901により示す様なOLMCPRに等しい炉心のMCPRが生成されると想定する。
【0050】ステップ2:炉心出力、炉心流量、炉心圧力、束出力などのブロック907に示す通常の束のCPRを予測する各パラメータを使用して、ブロック902により示す様に、炉心中の各束に対するICPRを決定する。
【0051】ステップ3:各束内の燃料棒配置及び燃料棒出力分布などのブロック908に示す個々の燃料棒のCPR値を変更するパラメータを使用して、ブロック903に示す様に、炉心中の各束に対するICPRを決定する。
【0052】ステップ4:図10に表す適切な過渡現象のグラフから無作為に引いた個々のΔCPR/ICPR1006値を使用して、MCPR値が、式4によるICPRの対応する値に対して予測される。図11では、このプロセスは、ずれ1109により表される。ヒストグラム1100は、特定のCPR値1102における燃料棒の本数、対その対応するCPR値1101を示す。ヒストグラム1107は、無作為に選択されたΔCPR/ICPR1006値を使用して過渡現象中にヒストグラム1108に変換される。最小CPR値1105は、最小CPR値1106になり、最小CPR燃料棒のPDF1103は、最小CPR燃料棒1104になる。
【0053】
【数4】

【0054】ステップ5:PDF1104として示され、ブロック910で説明されるECPR確率分布を使用して、ブロック905に示す様に沸騰遷移を生じる炉心中の各燃料棒の確率を合計することによって、炉心中のNRSBTのパーセンテージを決定する。
【0055】ステップ6:ブロック906に示す様に、設定回数のモンテカルロ統計試行に対してブロック907及び908に記載のパラメータを変化させる。ステップ2からステップ5までの全ての試行からの統計を収集して、NRSBTの確率分布を生成する。
【0056】ステップ7:ブロック911に示す様に、NRSBTのパーセンテージの値を0.1%と比較する。ブロック912に示す様に、パーセンテージが0.1%よりも大きい場合、USNRC規定に従うために、炉心パラメータを異なる初期条件にリセットする。ステップ1及びブロック901と同様に、新規の初期条件により、OLMCPRが生成されるものとする。NRSBTの判定が再開され、NRSBTの値が0.1%に等しくなるまで繰り返される。同様に、パーセンテージが0.1%未満の場合、炉心パラメータはリセットされ、炉心をより効率よく運転するか、あるいは、廃棄物の削減を行うために、NRSBTの値が増加される。
【0057】ステップ8:NRSBTのパーセンテージが0.1%に等しい場合、炉心のMCPRに等しいOLMCPRの想定値は、ブロック913に示す様に、USNRC規定に従う。従って、運転炉心条件は、想定パラメータとして設定される。
【0058】OLMCPRの上述の推算に対しては、2つの想定が行われる。まず、図11では、ずれ1109として、また、図9ではブロック904として示されるステップ4を実行する際に、ΔCPR/ICPRからの無作為抽出は、初期条件における摂動に対して差し支えないものと発明者等は想定する。従って、ΔCPR/ICPRにおけるバラツキは、初期条件における摂動とは無関係であるか、あるいは、負の相関を有する必要があり、その結果、相互作用により個々の影響が減少する傾向がある。次に、ステップ4を実行する際に、ΔCPR/ICPRにおける過渡的変化は、全ての燃料棒に適用されるものと発明者等は想定する。
【0059】実証分析により、ΔCPR/ICPRは、炉心出力、炉心流量、炉心圧力、給水温度及び燃料棒ピーキング係数(R係数)における不確定性により影響されないことが示される。このうち、現在認可済のプロセスにおいて最も重要なパラメータの1つは、炉心出力である。このパラメータは、実際、ICPRに対する影響に相反する影響を生じる。出力が増加すると、ICPRは減少するが、ΔCPR/ICPRも減少する。これにより、現在認可済のプロセスを介して抽出された値よりもMCPRが高くなるであろう。別の保守的な要素は、公称ΔCPR/ICPRの故意の使用である。現在認可済のプロセスに対して行われている様に、寄与する束の数が最大になるように炉心が限界燃料棒パターンに合せて調節される場合、ΔCPR/ICPRは4%低下する。
【0060】
【表1】

【0061】表1は、臨界ICPR値における不確定性のΔCPR/ICPRに対する影響を示す。列101は、ΔCPR/ICPRに影響する臨界パラメータ量の一覧を示す。列102は、関連するPDFの標準偏差に対応する各パラメータの不確定性のパーセンテージの一覧を示す。(は、パラメータ量における不確定性に対応するPDFの標準偏差である。列103は、各パラメータの1つの標準偏差の変更に対応するΔCPR/ICPRの変化の一覧を示す。
【0062】ΔCPR/ICPRは、現在認可済のプロセスにおける他の未知のパラメータに影響されない。軸方向出力分布も、現在認可済のプロセスにおける局所出力分布(TIP不確定性)計算の一部である。軸方向出力形状における大規模な変化(束の底部のほぼ2倍の高出力)に対して、ΔCPR/ICPRに対する影響は、2%未満であり、TIP不確定性と比較してこの値はあまり重要ではない。
【0063】もう1つの検証すべき想定は、一定値のΔCPR/ICPRを様々なICPR値において燃料棒に適用できるということである。上述の様に、過渡的MCPR分布は、式4を使用してICPR分布を変換することによって得られるであろう。
【0064】この想定を更に検証するために、1組の計算が行われた。モデルにおける不確定性と同様に、炉心出力及びチャネル圧力低下における不確定性を初期条件として含む過渡事象に対して基準計算が行われた。炉心出力及びチャネル圧力低下の不確定性が選択されたのは、これらの不確定性が、唯一、現在認可済プロセス両立型であり、総称の不確定性確率分布関数を生成する際に変化させられるためである。様々過渡現象中のMCPR分布は、98回の過渡的計算を介して炉心中の2つの燃料束のために生成された。2つの束はICPR値において非常に近接しており、同一のΔCPR/ICPR値を有する。
【0065】変換プロセスを検証するために98回のモンテカルロ計算が行なわれ、その計算では、炉心出力及び圧力低下のみが変化させられ、初期運転状態においてICPRのPDFが生成された。図12は、ヒストグラム1200を示し、このヒストグラムは、ある特定のCPRにおける燃料棒の本数1202、対その対応するCPR1201値である。PDF1203は、炉心出力及び圧力低下を変化させるモンテカルロ計算を使用して形成されたICPR分布である。PDF1205は、本発明の変換のプロセスが適用された後の対応する過渡的MCPR分布である。PDF1204は、基準ICPR分布である。PDF1206は、現在認可済のプロセスを適用する場合の過渡的MCPR分布である。PDF1205及びPDF1206は、MCPRの最確値と各分布の関連する標準偏差の双方において非常に類似する。2つの結果のMCPR分布間には非常な類似性があるので、本発明のプロセスを使用する変換は有効である。
【0066】以上、(1)ΔCPR/ICPRが、ICPRに影響する不確定性に対して無関係であるか、あるいは、共分散が、無関係を想定することが保守的なほどであることと(2)過渡的MCPR分布が、このアプローチを使用して過渡的ΔCPR/ICPR不確定性を燃料棒のICPR分布に適用することによって決定することができることを実証してきた。
【0067】本発明のプロセスの一例が図13により示される。図13において、ヒストグラム1300は、ある特定のCPR値の燃料棒の本数1302、対その対応するCPR値1301を示す。PDF1303は、全ての不確定性を適用した1組約98回のICPR試行からの結果のICPR値を示す。98回の新規の試行が行われ、ICPR値をMCPR値に変換するために特定の過渡事象に対するΔCPR/ICPR分布が生成された。このΔCPR/ICPR分布は、図13には示されていない。ΔCPR/ICPR分布は、本発明のプロセスを使用してICPRのPDF1303に適用され、MCPRのPDF1304が得られた。NRSBTが、本発明のプロセスを使用して判定され、OLMCPRは1.26であると判定された。一方、現在認可済のプロセスを使用して、SLMCPRは1.10であると判定された。従って、ここに記載されたプロセスは、現在認可済のプロセスの第1段階よりも保守的である。しかし、最終的には、現在認可済のプロセスは、誤差係数がSLMCPR値に加算された後で、必要以上に保守的な値を生成し、これにより、本発明のプロセスよりも不必要に大きいOLMCPR値が得られる。
【0068】後述の改良された方法は、非常に正確な計算と複数回の繰り返しを必要とするシミュレーションルーチンを処理することが可能な高速データ処理システムを使用して実現されるのが好ましいが、本発明は、特定の種類のコンピュータ又はデータ処理システムに限定されない。十分な容量且つ高速の記憶メモリ及び統計データ分析/縮約を実現するためのプログラム可能な計算機能を有する総称のデータ処理システムを利用して本発明が実現されても良い。
【出願人】 【識別番号】301068310
【氏名又は名称】グローバル・ニュークリア・フュエル・アメリカズ・エルエルシー
【出願日】 平成13年12月28日(2001.12.28)
【代理人】 【識別番号】100093908
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 研一
【公開番号】 特開2002−257973(P2002−257973A)
【公開日】 平成14年9月11日(2002.9.11)
【出願番号】 特願2001−398803(P2001−398803)