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【発明の名称】 原子炉の換気設備
【発明者】 【氏名】草野 裕朗

【氏名】宮川 武尚

【要約】 【課題】原子力発電所の原子炉内における構造物修繕工事により、運転階に拡散する放射性物質の収集捕獲の効率を向上する。

【解決手段】フィルタユニット1は、下流側にはファン2を備え、これらを入口側風道管3及び出口側風道管4で接続して浄化装置を形成し、浄化装置と原子炉8aとの間に作業用排気風道管6を接続し、ファン2を起動させ、原子炉8a等の内部に存在する放射性物質が、空気流14となりフィルタユニット1を通過して除去し、汚染が室内に拡散することなく、局所的な浄化を達成できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 原子炉建屋内に配置された原子炉及び原子炉ウェル等を収納する複数の原子炉区域と、前記原子炉建屋内の給気ダクトからの空気及び原子炉区域内の雰囲気を外部に排気する排気ダクトと、前記原子炉区域の周辺区域に供給した前記給気ダクトからの空気を浄化する浄化装置と、この浄化装置の下流側の前記排気ダクトに空気を排気するファンとを備えた原子炉の換気設備において、前記浄化装置の上流側に入力弁を有する複数の風道管を設け、前記風道管を修繕する前記原子炉区域に接続して前記入力弁を開き、前記原子炉区域内と連通する前記排気ダクトを閉じ、前記給気ダクトの弁を操作し前記原子炉建屋内が負圧になるように前記浄化装置の風量を調整し、前記修繕中の前記原子炉区域の雰囲気を、前記浄化装置より前記ファンと連通する前記排気ダクトに排気することを特徴とする原子炉の換気設備。
【請求項2】 前記浄化装置に入力弁を有する前記風道管の各々を前記原子炉区域に接続し、前記修繕する前記原子炉区域の前記入力弁を開き前記浄化装置に接続することを特徴とする請求項1に記載の原子炉の換気設備。
【請求項3】 前記排気ダクトが使用不能の場合には、前記ファンと前記排気ダクトとの間の風道管に分岐路を連通し、前記浄化装置と連通する前記排気ダクト側に設けた弁を閉じ、前記分岐路のバイパス弁を開いて、前記浄化装置からの雰囲気を前記分岐路より前記上流側の風道管に流し再循環することを特徴とする請求項1に記載の原子炉の換気設備。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、原子力発電設備における原子炉内の構造物を修繕する時の工事用に使用する換気設備に関する。
【0002】
【従来の技術】原子力発電所については、発電設備の健全性を維持するため、定期検査中に原子炉内の構造物における修繕が実施される。この際の留意事項としては、機器内部に含まれる放射性物質が雰囲気として拡散することに対し、室内作業員に対する被爆防護を達成させることが重要である。
【0003】室内作業員の被ばく防護については、防護服の着用等で作業中の防護が可能であるが、作業に伴う周辺雰囲気への汚染物質の拡散については、作業エリアの養生等、状況に応じた対応を図っている。
【0004】特開昭55−62399号公報や特開平6−230181号公報には、原子力発電所で、放射能汚染された雰囲気を有する室内の雰囲気をファンで吸い込んでフィルタに通す放射性物質の浄化設備が掲載されている。
【0005】このような公報に掲載された技術では、定期検査時における原子炉内の構造物の修繕が実施される際に、その原子炉が設置されている原子炉建屋の運転階に原子炉内の構造物を修繕する時に発生する雰囲気が拡散する。その拡散されてしまった後にファンで吸い込んでフィルタに通すことになる。
【0006】原子炉内における構造物の修繕工事では、原子炉の水張り時の構造物において水中切断作業及び水抜き後の構造物の据付作業等における作業内容がわかれており、それぞれ非常に高い放射性物質が発生するため、このような拡散後の放射性物質のフィルタによる収集捕獲は効率が悪く、かつ室内作業員の被爆防護が図れない。
【0007】また、前記原子炉建屋の室内にある換気設備が停止した場合、従来の設備では発生した放射性物質を含んだ雰囲気を処理できなくなるため、修繕作業を停止する必要があることから修繕作業の効率が悪くなる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】原子炉内の構造物には長期の運転により機器表面に非常に高い放射性物質が残留してしまう。これにより、当該物質の拡散寄与が大きい炉内構造物の修繕を想定した場合、当該物質が運転階に拡散する可能性がある。
【0009】本発明の目的は、上記実状に鑑みなされたものであり、効率よく当該物質を含んだ雰囲気を処理できると共に、修繕作業効率の向上が行え得る原子炉の換気設備を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、風道管を修繕する原子炉区域に接続して入力弁を開き、原子炉区域内と連通する排気ダクトを閉じ、給気ダクトの弁を操作し、原子炉建屋内が負圧になるように浄化装置の風量を調整し、修繕中の原子炉区域の雰囲気を、浄化装置より前記排気ダクトに排気し、修繕作業時の雰囲気が周辺環境への汚染拡大になるのを抑制できる。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明の実施される具体的手段は、フィルタ等を内蔵するフィルタユニットより成る浄化装置と、浄化装置の下流側に備えたファンと、これらを接続する風道管を備え、前記風道管を原子炉内等に挿入し、浄化装置により原子炉内等の空気を換気設備の排気ダクトへ導くものである。
【0012】また、原子炉の換気設備において、複数の浄化装置用入口の入口側風道管に開閉自在の入口弁を備え、この入口側風道管を原子炉内の構造物を修繕する工事の作業内容に応じた原子炉内に挿入或いは吸入先を切り替えできることを特徴とするものである。
【0013】更に、ファンと排気ダクトとの間に分岐管を設け、分岐管を浄化装置の入口側風道管に接続して、空気及び雰囲気などを再循環することにより、原子炉建屋室内における換気設備を停止した時においても、浄化装置の運転を継続して行えるので、当該物質除去効率及び修繕作業効率の向上並びに周辺環境への汚染拡大を抑制できることを特徴とするものである。
【0014】以下、前述の記載に基いて本発明の実施例を図1ないし図5を参照して説明する。本発明は、修繕作業内容及び前記原子炉建屋室内換気設備の運転状況により実施例が異なるので、それに応じて実施例を説明する。
(実施例1)図1及び図2は、本発明の第1実施例に係る原子炉内における構造物を修繕する工事用換気設備の要部説明図である。図1と図2とは原子力発電設備における原子炉建屋内の概略平面図と概略断面図に分けて図示している。
【0015】本発明の第1実施例は、原子炉内の構造物における修繕工事のうち原子炉内を水で満たした水張り時の水中切断作業を実施した場合を示すものである。
【0016】1はフィルタユニット、1aは活性炭フィルタ、2はファン、3は浄化装置100用の入口側風道管、4は浄化装置用の出口側風道管、5は出口側風道管4の途中より分岐した分岐管、6は作業用排気風道管、7aは入口側風道管3に設けた入口弁、7bは出口側風道管4に設けた出口弁、7cは分岐管5に設けたバイパス弁である。
【0017】8aは原子炉、8bは原子炉ウェル、9及び10は給気ダクト及び排気ダクト、11及び12は給気ダクト9及び排気ダクト10と連通する換気口及び排気口、13aは給気ダクト9に設けられた給気ダクトダンパ、13bは原子炉8a及び原子炉ウェル8bと排気ダクト10との間及び出口側風道管4とに設けられた排気ダクトダンパ、14は空気流、15は養生シート、16は水中切断装置である。
【0018】原子炉建屋A内には、屋内を換気する室内換気設備の一部分を構成する給気ダクト9や排気ダクト10が装備されている。室内換気設備は正常な新鮮空気が給気ダクト9を通して給気口11から原子炉建屋A内に給気される。尚、原子炉建屋A内は運転階である。
【0019】一方、原子炉建屋A内の雰囲気は排気口12から吸い込んで排気ダクト10に通して浄化設備100を通して主排気筒から外界へ排気される。
【0020】原子炉8a内の構造物を修繕する工事用の換気設備は、フィルタユニット1、その下流側にはファン2を備え、浄化装置100には入口側風道管3及び出口側風道管4とに接続している。フィルタユニット1には、主に活性炭フィルタ1aが内蔵されている。
【0021】原子炉8a内に水Wを満たした水張り時の水中切断作業においては、水中作業で発生する放射能を含んだガスが直接運転階に拡散しないように養生シート15により原子炉ウェル8bを覆い、浄化装置100の入口側風道管3の1つに接続した作業用排気風道管6を、養生シート15付近に挿入する。
【0022】また、入口側の入口側風道管3のもう1つに作業用排気風道管6を接続し、運転階の任意の場所に設置する。残りの入口側風道管3の弁7aは閉止させファン2を起動させる。
【0023】浄化装置100を運転する際には、排気ダクト13bを閉止し、給気ダクトダンパ13aを操作し、給気風量が浄化装置の風量と同等となるように調節する。又はファン2で吸引する分、浄化装置100の風量が給気ダクト9の風量より多少多くなる場合がある。要するに給気ダクトの弁を操作し、原子炉建屋内が負圧になるように浄化装置の風量を調整する。
【0024】これにより、水中作業で発生する放射能を含んだガスが、空気流14となりフィルタユニット1を通過して除去されることから、汚染が室内に拡散することなく、局所的な浄化が達成できると共に、修繕する原子炉区域及び原子炉建屋内が負圧になっているから、これらの区域から他の区域に汚染が拡散するのを防止することができる。
【0025】また、排気ダクト13bを閉止することにより、運転階の空気は全て浄化装置にて処理されるため、排気ダクトから排気筒を経て汚染空気が放出することを防止できる。更に、換気ダクト9は通常通りの換気を継続でき、運転階の作業性を向上させることができる。
【0026】このことから、原子炉内における構造物修繕工事のうち原子炉内を水張りした時の水中切断作業に適した浄化方法を提供できる。尚、本実施例においては、浄化装置1の入口側風道管3を3ヶ備え、うち2ヶ使用しているが、入口弁7aにより作業に応じた風量の調整が可能である。
【0027】また作業用排気風道管6は定期点検する原子炉区域と浄化装置100との間に取り外し自在に設けられているから、定期点検後は取り外した作業用排気風道管6及び浄化装置100を原子炉建屋外に移動して、原子炉建屋内を有効に利用することができる。尚、作業用排気風道管6は入口側風道管3を原子炉8a及び原子炉ウェル8b等まで延長すれば省略しても良い。
(実施例2)図3及び図4は、本発明の第2実施例に係る原子炉内の構造物修繕工事用換気設備の要部を説明する図である。図中、図1及び図2と同一符号は同符号を付して、再度の説明を省略する。
【0028】本発明の第2実施例は、原子炉内における構造物修繕工事のうち原子炉内の水抜き後の据付作業を実施した場合の運転方法を示すものである。
【0029】原子炉内の水抜き後の据付作業においては、原子炉8a、原子炉ウェル8bにおいて作業が必要となるため、浄化装置100の入口側風導管3の1つに作業用排気風道管6を接続し、原子炉8aに挿入する。
【0030】また、入口側風道管3のもう1つに作業用排気風道管6を接続し、原子炉ウェル8b内に挿入し、残りの入口側風道管3を換気用の作業用排気風道管6に接続し、運転階の任意の場所に設置しファン2を起動させる。
【0031】浄化装置を運転する際には、実施例1と同様に排気ダクト13bを閉止し、給気ダクトダンパ13aを操作し、給気風量が浄化装置の風量と同等となるように調節する。
【0032】これにより、原子炉8a及び原子炉ウェル8bの内部に存在する放射性物質が、空気流14となりフィルタユニット1を通過して除去されることから、汚染が室内に拡散することなく、局所的な浄化が達成できる。14aは浄化後の空気の流れである。
【0033】このことから、原子炉内における構造物修繕工事のうち原子炉内の水抜き後の据付作業に適した浄化方法を提供できる。尚、作業が終了した場合は浄化装置100のファン2を停止させ、給気ダクトダンパ13a及び排気ダクト13bを従来の開度に復旧させた後、作業用排気風道管6を取り外し浄化装置の撤去を行う。
(実施例3)図5は、本発明の第3実施例に係る原子炉内における構造物の修繕工事用換気設備の要部説明図である。図中、図1ないし図4と同一符号は同符号を付して、再度の説明を省略する。
【0034】本発明の第3実施例は、原子炉内における構造物修繕工事のうち原子炉内の水抜き後の据付作業を実施している時、室内換気設備が停止した場合の運転方法を示すものである。14aは浄化後の空気の流れである。
【0035】この場合、浄化装置100により、原子炉8a及び原子炉ウェル8b等の内部空気が吸引されフィルタユニット1を通過して放射性物質を除去することができるが、室内換気設備が停止しているため、排気ダクト10は排気できないことから、分岐管5に設けたバイパス弁7cを開放し、浄化装置用の出口側風道管4の出口弁7bを閉鎖し、ファン2を運転し、運転階に浄化装置100で浄化後の空気を再び入口側風道管3に流し、再循環路を形成する運転に切り替えることにより、浄化装置100を連続して運転することができると共に、修繕作業の継続が可能となる。
【0036】更に、このとき給気ダンパ13aを閉止し、運転階の空気の流れを隔離することにより、周辺環境への悪影響を確実に抑制できると共に、修繕作業の効率向上を図ることができる。
【0037】前述のように、本発明の実施例によれば、フィルタ等を内蔵するフィルタユニットと、それに導く風道管、及びフィルタユニットの下流側に備えたファンとこれらを接続する風道管を備えて浄化装置を形成させ、浄化装置用の入口側風道管を原子炉内等に挿入する構成としたので、原子炉内に存在する放射性物質、又は有害物質を効率的に除去できると共に、運転区域及び定期点検区域の汚染を他の区域に及ぼすことがない。
【0038】また、前記原子炉内における構造物の修繕工事用換気設備において、浄化装置用の入口側風道管に開閉自在の弁を複数個備え、挿入先或いは吸入先を切り替えできることができる構成にしたので、作業用途に応じて前述の物質を除去できる。
【0039】更に、原子炉の建屋室内における浄化装置の下流側風道管に分岐管を設け、分岐管及び下流側風道管に開閉自在の弁を備え、この弁を制御して浄化装置の排気風量を調整することにより、原子炉建屋室内の換気設備が停止時においても、浄化装置の運転を継続し、除去効率の向上並びに周辺環境への汚染拡大を抑制できる構成としたので、除去効率並びに修繕作業の効率の向上を図ることが期待できる。
【0040】従って、本発明は、原子力発電設備の定期点検等において、原子炉機器等の分解により拡散、又は機器内部に残留する放射性物質を、活性炭などを内蔵するフィルタユニット等で構成される浄化装置を用いて除去し、除去効率を向上させることができる。また、定期点検している区域及び運転階区域を負圧にすることにより、これらの区域からの汚染が他の区域に及ぼすのを防止できる。
【0041】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、定期点検等を行っている原子炉区域内に存在する放射性物質、又は有害物質を効率的に除去できると共に、運転区域及び定期点検区域の汚染を他の区域に及ぼすことがない。
【出願人】 【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
【出願日】 平成13年3月2日(2001.3.2)
【代理人】 【識別番号】100068504
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 勝男 (外1名)
【公開番号】 特開2002−257970(P2002−257970A)
【公開日】 平成14年9月11日(2002.9.11)
【出願番号】 特願2001−58439(P2001−58439)