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【発明の名称】 高速増殖炉
【発明者】 【氏名】戸田 幹雄

【氏名】神島 吉郎

【氏名】佐藤 充

【氏名】関 雄次

【氏名】三原 隆嗣

【要約】 【課題】鉛ビスマス等を用いた冷却材を低流速で循環させることによって、腐食を抑制すること。

【解決手段】冷却材として鉛または鉛ビスマスを用いた高速増殖炉であって、炉心1で発生する核分裂エネルギーによって冷却材を加熱し、加熱されて原子炉容器2内における全冷却材の平均温度よりも温度が高くかつ平均密度よりも密度が低くなった高温冷却材を、自然対流によって原子炉容器2上部側に上昇させ、原子炉容器2上部側に備えられた蒸気発生器4において、高温冷却材と水との熱交換を行い、水を蒸気に転換するとともに、高温冷却材を冷却し、冷却されて原子炉容器2内における全冷却材の平均温度よりも温度が低くかつ平均密度よりも密度が高くなった低温冷却材を、自然対流によって炉心1まで下降させることによって冷却材を原子炉容器2内で自然循環させて炉心1を冷却する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 冷却材として鉛または鉛ビスマスを用いた高速増殖炉であって、原子炉容器下部に備えられた炉心に装荷された核燃料の核分裂により発生する核分裂エネルギーによって前記冷却材を加熱し、加熱されて前記原子炉容器内における全冷却材の平均温度よりも温度が高くかつ平均密度よりも密度が低くなった高温冷却材を、自然対流によって原子炉容器上部側に上昇させ、前記原子炉容器上部側に備えられた蒸気発生器において、前記高温冷却材と水との熱交換を行い、前記水を蒸気に転換するとともに、前記高温冷却材を冷却し、前記高温冷却材が冷却されて前記原子炉容器内における全冷却材の平均温度よりも温度が低くかつ平均密度よりも密度が高くなった低温冷却材を、自然対流によって前記炉心まで下降させることによって前記冷却材を前記原子炉容器内で自然循環させて前記炉心を冷却するようにしたことを特徴とする高速増殖炉。
【請求項2】 請求項1に記載の高速増殖炉において、前記蒸気発生器は、その内部に前記水を流通させることによって、その外部を前記自然対流により流れる前記高温冷却材と前記水との熱交換を行う複数の伝熱管を備えてなり、前記伝熱管を前記原子炉容器の内周に沿って配置するヘリカルコイル型の蒸気発生器としたことを特徴とする高速増殖炉。
【請求項3】 請求項1または請求項2に記載の高速増殖炉において、原子炉容器下部側の前記冷却材を加熱し、加熱されて前記原子炉容器内における全冷却材の平均温度よりも温度が高くかつ平均密度よりも密度が低くなった高温冷却材を、自然対流によって前記原子炉容器上部側に上昇させる加熱手段を備えたことを特徴とする高速増殖炉。
【請求項4】 請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の高速増殖炉において、自然対流によって前記原子炉容器上部側に上昇した高温冷却材を空冷する空冷手段を備えたことを特徴とする高速増殖炉。
【請求項5】 請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の高速増殖炉において、前記原子炉容器または前記原子炉容器の内部に配置する構造物をCr鋼材で製造したことを特徴とする高速増殖炉。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、冷却材として鉛または鉛ビスマスを用いた高速増殖炉に係り、更に詳しくは、冷却材を自然循環させることによって、冷却材循環用のポンプを不要とした高速増殖炉に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来主流の高速増殖炉は、冷却材としてナトリウムが使用されている。ナトリウムは水と接触すると爆発的な化学反応を生じる物質であることが知られている。したがって、図4の系統概要図に示すように、蒸気発生器15の伝熱管破損が生じても、原子炉内を循環し放射性を帯びたナトリウムと水とが接触し爆発反応を引き起こすことが無いように、1次ナトリウム系ループ12の他に、2次ナトリウム系ループ13が設けられている。
【0003】1次ナトリウム系ループ12には、このループ内においてナトリウムを循環させるための1次循環ポンプ16が備えられている。この1次循環ポンプ16によって冷却材であるナトリウムが1次ナトリウム系ループ12内を循環する。この1次ナトリウム系ループ12は、原子炉容器17、中間熱交換器18に導かれており、これによって、原子炉容器17内の炉心19で発生した熱が、1次ナトリウム系ループ12を循環するナトリウムによって除去される。一方、このナトリウムは、炉心19において加熱された後に、中間熱交換器18に導かれる。そして、中間熱交換器18において、2次ナトリウム系ループ13内を循環するナトリウムによって冷却され、再び原子炉容器17側に導かれる。
【0004】一方、2次ナトリウム系ループ13にもまた、このループ内においてナトリウムを循環させるための2次循環ポンプ21が備えられている。この2次循環ポンプ21によって冷却材であるナトリウムが2次ナトリウム系ループ13内を循環する。この2次ナトリウム系ループ13は、中間熱交換器18、蒸気発生器15に導かれており、これによって、中間熱交換器18において、1次ナトリウム系ループ12内を循環するナトリウムが、2次ナトリウム系ループ13内を循環するナトリウムによって冷却される。これによって、2次ナトリウム系ループ13内を循環するナトリウムは、中間熱交換器18において加熱された後に、蒸気発生器15に導かれる。そして、蒸気発生器15において、水ループ22内を循環する冷却水によって冷却され、再び2次ナトリウム系ループ13内を循環する。
【0005】この水ループ22には、このループ内において水を循環させる給水ポンプ23が備えられている。この給水ポンプ23によって水がこのループ22内を循環する。この水ループ22は、蒸気発生器15、タービン25に導かれており、これによって、蒸気発生器15において、2次ナトリウム系ループ13内を循環するナトリウムが、水ループ22内を循環する水によって冷却される。一方、水ループ22内を循環する水は、蒸気発生器15において加熱され蒸気となってタービン25に導かれ、タービン25の回転に供される。そして、この蒸気によってタービン25が回転することによって発電される。
【0006】上述したように、冷却材としてナトリウムを用いた高速増殖炉では、2次ナトリウム系ループ13を設けることによって、仮に蒸気発生器15の伝熱管に破損が生じても、ナトリウムと水との反応による圧力上昇や反応物生成によって炉心の健全性が損なわれないような対策が講じられている。
【0007】このように、冷却材としてナトリウムを用いた高速増殖炉プラントでは、2次ナトリウム系ループ13が設置されており、この2次ナトリウム系ループ13を削除することが経済的に有利なプラントとなる。その有望な概念として、冷却材をナトリウムに代えて、鉛または鉛ビスマス(以下、「鉛ビスマス等」と称する)を用いる高速増殖炉が検討されている。鉛ビスマスとは、鉛(Pb)とビスマス(Bi)との共晶合金であって、鉛にビスマスを加えると融点が低くなるので、冷却材としての取り扱いが容易になる。図5は、これまで検討された鉛ビスマス等を冷却材として用いた高速増殖炉の原子炉容器の構成例を示す断面図である。
【0008】この種の高速増殖炉では、冷却材として用いられている鉛ビスマス等は、炉心19で発生した熱によって加熱される。加熱された冷却材は密度が減少するので原子炉容器17内部の上部側に備えられた蒸気発生器15まで上昇する。そして、蒸気発生器15では、図示しない伝熱管を介して、冷却材と水との熱交換がなされ、冷却材は水によって冷却される一方、水は冷却材によって加熱されて蒸気となってタービンに供給される。
【0009】蒸気発生器15において冷却された冷却材は、ポンプ27によって駆動され、再び炉心19側に戻される。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような従来の鉛ビスマス等を冷却材として用いた高速増殖炉では、以下のような問題がある。
【0011】すなわち、鉛または鉛ビスマスは腐食性の強い金属である。また、この腐食速度は、鉛ビスマス等の流速が高い部位において促進される。したがって、鉛ビスマス等の流速が最も高い部位であるポンプ27、特にインペラ(図示せず)においては、腐食が激しく、頻繁に交換する必要が生じる。
【0012】このため、腐食速度を緩和するために、鉛ビスマス等が流通する配管を太径化すること等によって冷却材の圧力損失を低減させるための対策を講じ、鉛ビスマス等の流速を所定値(例えば2m/秒)以下に抑えなければならないという問題がある。
【0013】本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、鉛または鉛ビスマスを冷却材として用いた高速増殖炉において、自然循環で循環する冷却材によって炉心を冷却するようにし、もって、腐食進行の遅い低流速を実現するとともに、冷却材を循環させるためのポンプを省略することが可能な高速増殖炉を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、本発明では、以下のような手段を講じる。
【0015】すなわち、請求項1の発明では、冷却材として鉛または鉛ビスマスを用いた高速増殖炉であって、原子炉容器下部に備えられた炉心に装荷された核燃料の核分裂により発生する核分裂エネルギーによって冷却材を加熱し、加熱されて原子炉容器内における全冷却材の平均温度よりも温度が高くかつ平均密度よりも密度が低くなった高温冷却材を、自然対流によって原子炉容器上部側に上昇させ、原子炉容器上部側に備えられた蒸気発生器において、高温冷却材と水との熱交換を行い、水を蒸気に転換するとともに、高温冷却材を冷却し、冷却されて原子炉容器内における全冷却材の平均温度よりも温度が低くかつ平均密度よりも密度が高くなった低温冷却材を、自然対流によって炉心まで下降させることによって冷却材を原子炉容器内で自然循環させて炉心を冷却する。
【0016】請求項2の発明では、請求項1の発明の高速増殖炉において、蒸気発生器は、その内部に水を流通させることによって、その外部を自然対流により流れる高温冷却材と水との熱交換を行う複数の伝熱管を備えてなり、伝熱管を原子炉容器の内周に沿って配置するヘリカルコイル型の蒸気発生器とする。
【0017】請求項3の発明では、請求項1または請求項2の発明の高速増殖炉において、原子炉容器下部側の冷却材を加熱し、加熱されて原子炉容器内における全冷却材の平均温度よりも温度が高くかつ平均密度よりも密度が低くなった高温冷却材を、自然対流によって原子炉容器上部側に上昇させる加熱手段を備える。
【0018】請求項4の発明では、請求項1乃至3のうちいずれか1項の発明の高速増殖炉において、自然対流によって原子炉容器上部側に上昇した高温冷却材を空冷する空冷手段を備える。
【0019】請求項5の発明では、請求項1乃至4のうちいずれか1項の発明の高速増殖炉において、原子炉容器または原子炉容器の内部に配置する構造物をCr鋼材で製造する。
【0020】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0021】本発明の実施の形態を図1から図3を用いて説明する。
【0022】図1は、本発明の実施の形態に係る高速増殖炉の原子炉容器の構成の一例を示す断面図である。
【0023】すなわち、本発明の実施の形態に係る高速増殖炉は、冷却材として鉛または鉛ビスマス(以下、「鉛ビスマス等」と称する)を用い、この冷却材を、ポンプを用いることなく、自然循環させることによって炉心1を冷却する。したがって、冷却材が低流速で原子炉容器内を循環する環境を実現することができ、かつ、ポンプを省略することができることから、鉛ビスマス等による腐食速度を低減するとともに、炉内構造を簡素化し、機器の交換やメンテナンスの手間を低減することが可能な高速増殖炉である。
【0024】本発明の実施の形態に係る高速増殖炉は、図1に示すように、原子炉容器2の内部に、炉心1、蒸気発生器4、炉心1の出力を調整する制御棒駆動系5、崩壊熱除去コイル6を少なくとも備えており、冷却材を強制循環させるためのポンプを備えていない。なお、原子炉容器2の内部には、上記構成要件の他に炉心出力、温度、放射線等の運転パラメータを測定するための計装機器等をも備えているが、ここではこれらの記載は省略している。また、原子炉容器2の外には、断熱材3、加熱パネル7、じゃま板8を備えている。
【0025】このような本発明の実施の形態に係る高速増殖炉では、炉心1で発生した熱を冷却材が受熱する。炉心1で熱を受熱した冷却材は、原子炉容器2の内部の全冷却材の平均温度よりも温度が高くなり、かつ平均密度よりも密度が低くなるため、図中矢印に示すように、原子炉容器2上部側に向かって上昇し、蒸気発生器4に流入する。そして、蒸気発生器4の図示しない伝熱管を介して、水との熱交換を行うことにより蒸気を発生させる。ここで発生された蒸気は、図示しないタービン設備に供給され、タービンの回転に供されるようにしている。
【0026】一方、冷却材は、上述したように蒸気発生器4において蒸気を発生させる一方、蒸気発生器4において自身は熱を奪われ、冷却されるので、原子炉容器2の内部の全冷却材の平均温度よりも温度が低くなり、かつ平均密度よりも密度が高くなるため、図中矢印で示すように原子炉容器2下部に向かって自重によって下降する。このように原子炉容器2下部に下降した低温の冷却材は、再び炉心1で加熱されると、再び原子炉容器2上部側に向かって上昇し、蒸気発生器4まで流入する。
【0027】上述するような炉心1における加熱による上昇、蒸気発生器4における冷却による下降を繰り返すことによって、冷却材は、原子炉容器2内を自然対流で循環する。この自然循環時における駆動力(自然循環力)は、高温部(炉心1近傍)の冷却材と低温部(蒸気発生器4近傍)の冷却材との密度差、および炉心1と蒸気発生器4との伝熱中心差を乗算したものである。自然循環流量は、一巡の圧力損失とこの自然循環力がバランスした時に発生する。
【0028】冷却材の密度差は、炉心1近傍の高温部と、蒸気発生器4近傍の低温部との温度差に比例する。したがって、炉心1に冷却材が入る部位における冷却材温度と、炉心1から冷却材が出る部位における冷却材温度との差である炉心出入口温度差を大きし、一巡の圧力損失を小さくすることによって、炉心1と蒸気発生器4との伝熱中心差を小さくすることが可能となる。
【0029】蒸気発生器4の上部には、崩壊熱除去コイル6を備えている。外部電源喪失時等によって、蒸気発生器4に蒸気発生用の水を供給することができない場合には、蒸気発生器4は冷却材を冷却することができない。崩壊熱除去コイル6は、図示しない空気冷却器を備えており、蒸気発生器4の冷却機能が喪失した場合には、蒸気発生器4に代って冷却材を空気によって冷却する。なお、崩壊熱除去コイル6によって冷却材を冷却した場合の自然循環力は、炉心1と崩壊熱除去コイル6との伝熱中心差に、高温部(炉心1近傍)の冷却材と低温部(崩壊熱除去コイル6近傍)の冷却材との密度差を乗算したものとなる。
【0030】メンテナンス時及び運転開始時の場合には、炉心1で発生する崩壊熱が非常に小さくなるので、上述した炉心出入口温度差が小さくなり、自然循環がしずらくなる。このため、原子炉容器2の下方に加熱パネル7を設置している。この加熱パネル7は、原子炉容器2の下部を加熱する。これによって、原子炉容器2の下部近傍の冷却材が加熱され、上述したように原子炉容器2内の全冷却材の平均密度よりも密度が低くなるので冷却材が上昇し始める。このようにして上昇した冷却材は、崩壊熱除去コイル6に流入する。そして、崩壊熱除去コイル6がこの冷却材を冷却することによって冷却材が自然循環するようになる。このように、メンテナンス時及び運転開始時の場合などにおいて、加熱パネル7を用いて冷却材を加熱した場合には、崩壊熱除去コイル6を用いて冷却材を冷却する。
【0031】また、断熱材3は、原子炉容器2の周囲を覆い、原子炉容器2からの熱放出を阻止している。更に、原子炉容器2の下部側であって、原子炉容器2と断熱材3との間の下部にはじゃま板8を設けており、加熱パネル7で加熱した熱い空気が上部に移行することを阻止している。これによって原子炉容器2の下部の冷却材を効率良く加熱するようにしている。
【0032】従来技術において述べたように、鉛ビスマス等を冷却材として用いる場合、腐食抑制の観点から流速を小さくする必要がある。本発明の実施の形態による高速増殖炉は、上述したように、自然循環により運転流量を確保することによって低流速を実現しているが、また以下のような対策も講じている。すなわち、原子炉容器2内における冷却材に対する圧力損失を低減させ、更に流速を低下させるようにしている。
【0033】全体の圧力損失のうち、炉心1が最も大きなウェイトを占める。したがって、本発明の実施の形態では、炉心1の圧力損失を低減させるために、冷却材の流路断面積を増大させている。炉心1は、図2にその断面を示すような燃料集合体9を複数規則的に装荷してなる。この燃料集合体9には、一定のピッチPで燃料ピン10(外径d)を規則的に配置しており、冷却材は、燃料ピン10と燃料ピン10との間隙を流れる。したがって、燃料ピン10のピッチPと、燃料ピン10の外径dとの比である(P/d)を大きくすることによって圧力損失は低減する。また、圧力損失は、冷却材の流路長さに相当する炉心1の高さを低くすることによっても低減する。なお、図2では、燃料集合体9に配置される燃料ピン10を代表的に記載したものであって、実際には、各軸線Lの交点を中心として燃料ピン10を万遍なく配置している。
【0034】したがって、本発明の実施の形態に係る高速増殖炉では、燃料ピン10のピッチPと、燃料ピン10の外径dとの比である(P/d)を、従来の鉛ビスマス等を冷却材として用いた高速増殖炉よりも大きくするとともに、炉心1の高さを従来の鉛ビスマス等を冷却材として用いた高速増殖炉よりも低くすることによって圧力損失を低減している。
【0035】なお、(P/d)を大きくすると圧力損失が小さくなり冷却材の流速を低下させることが可能となる一方、冷却材と、燃料ピン10の被覆管11との間の熱伝達率が低下し、被覆管温度が高くなるために(P/d)の上限値には制約がある。このため、燃料ピン10の単位長さ当たりの発熱量である燃料線出力を、強制循環時の燃料線出力の約1/3である約70W/cmに低減するとともに、冷却材の炉心出口温度を従来のナトリウム冷却炉の550℃よりも低下させて約490℃としている。これによって、燃料ピン10における被覆管11の最高温度を約650℃に抑えるとともに、同時に鉛ビスマス等による被覆管11の腐食を抑制するようにしている。
【0036】図示していないが、従来の高速増殖炉では炉心1の下部には、炉心1に装荷された燃料に供給する冷却材の流路を配分するためのオリフィス等による炉心流路調整機能を備えている。従来技術による高速増殖炉のようにポンプ27によって冷却材の強制循環を行っている場合には、この炉心流炉調整機構による圧力損失の効果が大きかった。本発明の実施の形態のように冷却材を自然循環させる場合には、高発熱の燃料集合体9には自然に冷却材が多く流れる効果があるため、炉心流炉調整機構は不要となる。その結果、圧力損失は更に小さい。
【0037】一方、燃料増殖比の観点からは、(P/d)を大きくすると冷却材対燃料の体積比が増加するので、冷却材による中性子減速効果が大きくなり、増殖比が減少するので、この観点からも(P/d)の上限値には制約がある。しかしながら、中性子減速効果が増加する効果は、酸化物燃料に代えて窒化物燃料を用いることによってある程度改善することが可能である。例えば、炉心燃料取出平均燃焼度を約15万MWd/tとする場合、従来の酸化物燃料に代えて窒化物燃料を用いることにより、増殖比は約1.2と良好な燃料増殖比を維持することができる。なお、同様の(P/d)を、ナトリウムを冷却材として用いた高速増殖炉に適用した場合には、仮に酸化物燃料の代わりに窒化物燃料を用いても、ナトリウムの中性子減速効果が鉛ビスマス等よりも大きいことから、増殖比は約1.12しか得られない。
【0038】炉心1に次いで圧力損失が大きいのは蒸気発生器4である。蒸気発生器4は、図3の断面図に示すように、原子炉容器2の内周側を一周するヘリカルコイル型を採用している。なお、図3の断面図は、図1に示すA−A方向に沿った矢視図である。ヘリカルコイル型の蒸気発生器4は、冷却材の流路面積を大きくとれ、圧力損失を低減する。また、蒸気発生器4の一周の伝熱管長さを、原子炉容器2の一周の長さとほぼ同等に確保できるので、例えば図5に示すように、原子炉容器2の円周部に蒸気発生器4を数基設置したものと比較して原子炉容器2の半径、および蒸気発生器4の高さの両方の小型化が可能となる。このため、自然循環力を決定する要因の1つである炉心1と蒸気発生器4との伝熱中心差が高く要求されても、原子炉容器2の高さをさほど高くしなくても済む。
【0039】原子炉容器2および蒸気発生器4等の主要機器の材料は、強度が高く、かつ耐腐食性の高いCr鋼材(例えば12Cr鋼)を採用している。
【0040】次に、以上のように構成した本発明の実施の形態に係る高速増殖炉の作用について説明する。
【0041】鉛または鉛ビスマスは腐食性の強い物質であり、鉛ビスマス等を冷却材として用いた場合、特に、ポンプのインペラ等、流速の高い部位において腐食が促進される。しかしながら、本発明の実施の形態に係る高速増殖炉では、燃料ピン10のピッチPと燃料ピン10の外径dとの比(P/d)を大きくすること、および冷却材の流路面積が大きいヘリカルコイル型の蒸気発生器4を採用することによって冷却材の圧力損失を低減しているので、冷却材が自然循環によって原子炉容器2内を循環する。これによって、鉛ビスマス等の低流速による循環が実現され、腐食進行が抑制される。また、冷却材を強制的に循環させるためのポンプも不要となるために、構造が簡素化される。
【0042】また、ヘリカルコイル型の蒸気発生器4は、一周の伝熱管長さを、原子炉容器2の一周の長さとほぼ同等に確保できるので、例えば図5に示すように、原子炉容器2の円周部に蒸気発生器4を数基設置したものと比較して原子炉容器2の半径、および蒸気発生器4の高さの両方が小型化される。すなわち、自然循環力を決定する要因の1つである炉心1と蒸気発生器4との伝熱中心差が高く要求された場合であっても、原子炉容器2の高さをさほど高くする必要が無い。
【0043】更に、原子炉容器2および蒸気発生器4等の主要機器の材料には、例えば12Cr鋼のようなCr鋼材を用いているので、高い強度、耐腐食性が実現される。
【0044】また、原子炉の運転開始時には、炉心1の発熱が無く、冷却材は炉心1によって加熱されないが、代わりに、加熱パネル7によって加熱され、原子炉容器2内を上昇し、崩壊熱除去コイル6に流入する。そして、崩壊熱除去コイル6によって空冷され、その後、原子炉容器2内を下降することによって自然循環が引き起こされる。
【0045】崩壊熱除去コイル6は、外部電源喪失時等によって、蒸気発生器4に蒸気発生用の水を供給することができない場合に冷却材を冷却するバックアップとしての使用が可能である。
【0046】上述したように、本発明の実施の形態に係る高速増殖炉においては、鉛または鉛ビスマスを、自然循環作用を利用し、低流速で循環させることによって炉心1を冷却することができるので、鉛または鉛ビスマスによる腐食進行を抑制することができる。また、これによって、冷却材を強制的に循環させるためのポンプは不要となり、原子炉容器2内の構造を簡素化することができる。更に、ヘリカルコイル型の蒸気発生器4の採用によって、原子炉容器2の外径、および高さを小型化することができる。
【0047】このように、構造の簡素化、機器の寿命の延伸化、プラントサイズの小型化を実現する経済的に優れた高速増殖炉を実現することが可能となる。
【0048】また、外部電源喪失時等によって、蒸気発生器4による冷却材の冷却機能が喪失した場合であっても、バックアップとして、崩壊熱除去コイル6を用いて冷却材を空冷することができ、しかも圧力損失が小さいため冷却材の自然循環流量が大きくとれることから、本発明の実施の形態に係る高速増殖炉は、安全性にも優れている。
【0049】以上、本発明の好適な実施の形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明はかかる構成に限定されない。特許請求の範囲の発明された技術的思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0050】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、鉛または鉛ビスマスを冷却材として用いた高速増殖炉において、自然循環で循環する冷却材によって炉心を冷却する。以上により、鉛または鉛ビスマスによってもたらされる腐食の進行が遅い低流速を実現するとともに、冷却材を循環させるためのポンプを省略することが可能となり、経済的に優れた高速増殖炉を実現することができる。
【出願人】 【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
【識別番号】000224754
【氏名又は名称】核燃料サイクル開発機構
【出願日】 平成13年3月2日(2001.3.2)
【代理人】 【識別番号】100058479
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 武彦 (外5名)
【公開番号】 特開2002−257967(P2002−257967A)
【公開日】 平成14年9月11日(2002.9.11)
【出願番号】 特願2001−58572(P2001−58572)