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【発明の名称】 原子炉内配管検査装置
【発明者】 【氏名】高林 順一

【要約】 【課題】原子炉内の狭隘部となっているヘッダと円環状配管との溶接部およびその近傍に対して前面的に非破壊検査を実施し、割れ等の欠陥の有無を正確に検査できるようにする。

【解決手段】原子炉の炉内に突出するヘッダ5aと、炉壁内面に沿って配置される円環状配管5bとの連結部分を炉内にて検査する原子炉内配管検査装置である。原子炉の上方から炉内に吊下され、ヘッダ5aを基準として位置決め固定される固定手段12と、この固定手段12に設けられ、円環状配管5bの軸方向および周方向に沿う走査を行なうスキャナ手段13と、このスキャナ手段13に支持され、円環状配管5bとヘッダ5aとの連結部を非破壊検査する検査ヘッド14とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 原子炉の炉壁を貫通し、または炉内に突出するヘッダと、このヘッダに連結され、炉壁内面に沿って配置される円環状配管との当該連結部分を、炉内にて検査するための原子炉内配管検査装置であって、前記原子炉の上方から炉内に吊下され、前記ヘッダを基準として位置決め固定される固定手段と、この固定手段に設けられ、前記円環状配管の軸方向および周方向に沿う走査を行なうスキャナ手段と、このスキャナ手段に支持され、前記円環状配管と前記ヘッダとの連結部を非破壊検査する検査ヘッドとを備えたことを特徴とする原子炉内配管検査装置。
【請求項2】 請求項1記載の原子炉内配管検査装置において、固定手段は、ヘッダの炉内中心側の表面に向って配置される基体と、この基体から突出し、前記ヘッダの上下面に当接して前記基体を当該ヘッダに着脱可能に固定するクランプ機構と、前記基体に設けられ、前記ヘッダの炉内中心側の表面に吸着できる吸着盤を有する吸着機構とを備えたことを特徴とする原子炉内配管検査装置。
【請求項3】 請求項1または2記載の原子炉内配管検査装置において、スキャナ手段は、固定手段に送り機構を介して円環状配管の軸方向に沿う移動を行なう軸方向移動体と、この軸方向移動体に回転機構を介して支持され、前記円環状配管の外周面に沿って移動する周方向移動体とを備えたことを特徴とする原子炉内配管検査装置。
【請求項4】 請求項3記載の原子炉内配管検査装置において、周方向移動体は円環状配管の外径より若干大径な円弧状のレールであり、このレールの一端側が軸方向移動体に回転機構を介して支持されるとともに、このレールの他端側が前記管状配管の炉壁側外周面まで回動可能とされ、かつ前記レールの他端側の内周面には、前記円環状配管の外周面との間に配置される肉薄な検査ヘッドが組み込まれていることを特徴とする原子炉内配管検査装置。
【請求項5】 請求項1から4までのいずれかに記載の原子炉内配管検査装置において、検査ヘッドは超音波探傷用センサ、渦電流探傷用センサまたは外観観察用カメラからなる検査子を有し、この検査子は、ヘッダと円環状配管との連結部である二つの円筒形状が交差する三次元的形状の溶接線の全幅を観察し得る設定とされていることを特徴とする原子炉内配管検査装置。
【請求項6】 上記請求項5記載の超音波探傷用センサは、複数の微細振動子を組み合わせたアレイ型探触子とし、前記各微細振動子は、励起タイミングのコントロールによりヘッダおよび円環状配管の材料中に入射する超音波の屈折角を任意に設定できるものであることを特徴とする原子炉内配管検査装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば沸騰水型原子力発電プラントにおける炉心スプレイスパージャ、炉心スプレイライン、給水スパージャ等の原子炉内配管におけるヘッダと円環状配管との連結部分全体の非破壊検査を可能とした原子炉内配管検査装置に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば沸騰水型原子力発電プラントの停止期間中に、原子炉圧力容器内の点検を行う場合、原子炉圧力容器内を満水状態とし、原子炉ウェルの上方に据え付けられている燃料交換機上より点検器材を吊り下ろし、目的部位に接近させるのが通常の手段である。
【0003】ところで、原子炉内構造物である例えば炉心スプレイスパージャは、原子炉圧力容器の炉壁を貫通し、または炉内に突出するヘッダと、このヘッダに連結され、炉壁内面に沿って配置される半周に亘る円環状配管とを溶接により連結し、これを2組、炉内の周方向全体に亘って配置した構成となっている。そして、この炉心スプレイスパージャは、炉心シュラウドの上部胴に例えば上下2段構成として隣接配置で据え付けられており、しかも上部胴の上側にはシュラウド上部リングが覆い被さり、下側には上部格子板が設置されている。
【0004】このため、炉心スプレイスパージャの周囲部分は極めて狭隘な空間となっており、上述した点検器材の吊り下ろしによる接近は、極めて困難となっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】炉心スプレイスパージャは上述したように、炉心シュラウドの上部に配置されて特に放射線照射を多く受ける炉内構造物である。そのうちでも、最近の観察により、ヘッダと円環状配管との溶接部が脆化の影響を受け易いと考えられ、当該部分の健全性確認の必要性が認められている。
【0006】ところが、上述の如く炉心スプレイスパージャのヘッダと円環状配管との溶接部の周囲は狭隘空間で点検器材の接近が困難であり、通常手段では原子炉圧力容器の中心側からから接近できる範囲しか点検することができなかった。
【0007】したがって、従来の技術においては、接近可能な範囲における原子炉内の中心側の面(正面)における表面に対してのみ、水中TVカメラを使用した遠隔目視検査による点検が行える状況であり、その点検により一部についても万一欠陥が発見されたとしても、他の部位、特に円環状配管の炉壁側(背面側)の溶接部までに亘る全体の詳細な状況確認を実施することは極めて困難であった。
【0008】なお、炉心スプレイスパージャ以外の炉内配管、例えば炉心スプレイライン、給水スパージャ等についても、その周囲は狭隘な空間となっており、炉心スプレイスパージャの場合と略同様の問題があった。
【0009】本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、炉心スプレイスパージャ等の炉内配管の健全性確認について、正面側からの接近によりパイプと炉心シュラウドや上部格子板等の障害物との狭隘な隙間を通過させて確実に検査手段を接近させ、遠隔自動にて背面側までに亘って全体的に連続した検査が実施できる原子炉内配管検査装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するために、請求項1に係る発明では、原子炉の炉壁を貫通し、または炉内に突出するヘッダと、このヘッダに連結され、炉壁内面に沿って配置される円環状配管との当該連結部分を、炉内にて検査するための原子炉内配管検査装置であって、前記原子炉の上方から炉内に吊下され、前記ヘッダを基準として位置決め固定される固定手段と、この固定手段に設けられ、前記円環状配管の軸方向および周方向に沿う走査を行なうスキャナ手段と、このスキャナ手段に支持され、前記円環状配管と前記ヘッダとの連結部を非破壊検査する検査ヘッドとを備えたことを特徴とする原子炉内配管検査装置を提供する。
【0011】なお、給水スパージャの場合には、円環状配管がティ継手により連結されるが、本明細書においては、このようなティ継手等も含めてヘッダ配管と表現する。
【0012】請求項2に係る発明では、請求項1記載の原子炉内配管検査装置において、固定手段は、ヘッダの炉内中心側の表面に向って配置される基体と、この基体から突出し、前記ヘッダの上下面に当接して前記基体を当該ヘッダに着脱可能に固定するクランプ機構と、前記基体に設けられ、前記ヘッダの炉内中心側の表面に吸着できる吸着盤を有する吸着機構とを備えたことを特徴とする原子炉内配管検査装置を提供する。
【0013】請求項3に係る発明では、請求項1または2記載の原子炉内配管検査装置において、スキャナ手段は、固定手段に送り機構を介して円環状配管の軸方向に沿う移動を行なう軸方向移動体と、この軸方向移動体に回転機構を介して支持され、前記円環状配管の外周面に沿って移動する周方向移動体とを備えたことを特徴とする原子炉内配管検査装置を提供する。
【0014】請求項4に係る発明では、請求項3記載の原子炉内配管検査装置において、周方向移動体は円環状配管の外径より若干大径な円弧状のレールであり、このレールの一端側が軸方向移動体に回転機構を介して支持されるとともに、このレールの他端側が前記管状配管の炉壁側外周面まで回動可能とされ、かつ前記レールの他端側の内周面には、前記円環状配管の外周面との間に配置される肉薄な検査ヘッドが組み込まれていることを特徴とする原子炉内配管検査装置を提供する。
【0015】請求項5に係る発明では、請求項1から4までのいずれかに記載の原子炉内配管検査装置において、検査ヘッドは超音波探傷用センサ、渦電流探傷用センサまたは外観観察用カメラからなる検査子を有し、この検査子は、ヘッダと円環状配管との連結部である二つの円筒形状が交差する三次元的形状の溶接線の全幅を観察し得る設定とされていることを特徴とする原子炉内配管検査装置を提供する。
【0016】請求項6に係る発明では、上記請求項5記載の超音波探傷用センサは、複数の微細振動子を組み合わせたアレイ型探触子とし、前記各微細振動子は、励起タイミングのコントロールによりヘッダおよび円環状配管の材料中に入射する超音波の屈折角を任意に設定できるものであることを特徴とする原子炉内配管検査装置を提供する。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、本実施形態は沸騰水型原子炉の原子炉圧力容器内に設けられる炉心スプレイスパージャを検査対象とする炉心スプレイ検査装置として実施した場合について説明する。
【0018】まず、図1〜図5によって検査対象となる原子炉内配管構造を説明する。
【0019】図1は、沸騰水型原子炉の定期検査時における原子炉圧力容器内の状況を示す概略図であり、図2は、図1のA部、すなわち炉心周囲部分を拡大して示す図である。
【0020】これらの図1および図2に示すように、定期検査時には原子炉圧力容器1の上部蓋、気水分離器等の所要の機器が取外され、原子炉圧力容器1内には、炉心シュラウド2、ジェットポンプ3、上部格子板4、炉心スプレイスパージャ5、給水スパージャ6、炉心支持板7、炉心スプレイライン8等が存置されている。原子炉圧力容器1内は、その上方の原子炉ウェル1aとともに炉水9により満水状態とされ、上方のオペレーションフロアに設置した燃料交換機10から、吊下具10aを介して各種点検基材が機器が吊り下ろされる。
【0021】図3は図2のB部、すなわち炉心スプレイスパージャ5部位をさらに拡大して示す図であり、図4は同部分を示す斜視図である。図5は、図4のC部、すなわち炉心スプレイスパージャ5のヘッダ5aと円環状配管(以下、本実施形態においては「パイプ」と称する)5bとの連結部分を拡大して示す図である。
【0022】これらの図に示すように、炉心スプレイスパージャ5は、炉心スプレイライン8に連結されて炉内に突出するヘッダ5aと、このヘッダ5aに連結され、炉壁内面に沿って配置される半周に亘るパイプ5bとを溶接部(溶接線)5dによって連結した構成とされている。ヘッダ5aの正面には平坦なカバープレート5eが設けられている。また、パイプ5bには多数のノズル5cが配設されている。この半周の炉心スプレイスパージャ5が2組、炉内の周方向全体に亘って配置され、この全周分のものが炉心シュラウド2の上部胴2bに例えば上下2段構成として、互いに隣接配置で据え付けられている。上部胴2bの上側には、シュラウド上部リング2aが覆い被さり、下側には上部格子板4が設置されている。
【0023】炉心スプレイスパージャ5は、人がアクセスできる燃料交換機10上から約20m下の水中に位置し、上述したようにシュラウド上部リング2aと上部格子板4とに挟まれた狭隘な位置にある。したがって、従来の点検器材では炉内中心側の面(正面)からアクセスできるだけであり、パイプ5bの背面側まで含めた全周にわたって当該点検器材を接近させることは困難な構造となっている。
【0024】さらに、この炉心スプレイスパージャ5の設置部位は、図示しないが燃料集合体の直上であるため、非常に強い放射線照射を受けており、特にその溶接部5dの近傍は放射線照射による材料劣化に伴う応力腐食割れ(SCC)の感受性が高くなっている。そのうえ、ヘッダ5aとパイプ5bとの溶接部5dに関しては、点検基材を接近させる空間が少ないうえ、その形状も三次元的に湾曲しているため、従来では欠陥発生の有無の確認を実施することが非常に困難な場所となっている。
【0025】次に、図6〜図14によって、炉心スプレイ検査装置11の構成および作用について説明する。図6および図7は炉心スプレイ検査装置11の全体構成を示しており、図6は炉心スプレイスパージャ5への装着状態を示す側面図であり、図7は図6の平面図である。
【0026】この炉心スプレイ検査装置11は基本的に、原子炉圧力容器1の上方から炉内に吊下され、炉心スプレイスパージャ5のヘッダ5aを基準として位置決め固定される固定手段12と、この固定手段12に設けられ、パイプ5bの軸方向および周方向に沿う走査を行なうスキャナ手段13と、このスキャナ手段13に支持され、パイプ5bとヘッダ5aとの連結部である溶接部5dを非破壊検査する検査ヘッド14とを備えている。
【0027】固定手段12は、ヘッダ5aの炉内中心側の表面(正面)に向って配置される基体15と、この基体15から突出し、ヘッダ5aの上下面に当接して基体をヘッダ5aに着脱可能に固定するクランプ機構16と、基体15に設けられ、この基体15をヘッダ5aのカバープレート5eの表面に吸着させる吸着機構17とを備えて構成されている。
【0028】図8は、固定手段12のクランプ機構16を拡大して示す側面図であり、図9はクランプ機構16の駆動構造および作用を示す説明図である。
【0029】前記の図7およびこれらの図8、図9示すように、クランプ機構は、基体15の一側面の上部に設けられた左右1対の固定爪18と、同じく基体15の一側面の下部に設けられた1本または左右1対のクランプ爪19とを有している。固定爪18は、ヘッダ5aとその両側に連結されたパイプ5bとの2箇所の溶接部5d間隔に対応する間隔で平行に基体15に固定された平行棒状のものである。また、クランプ爪19は複数の上向きの爪部19aを有しており、一端が水平な支点軸20を介して基体15に回動可能に支持されている。このクランプ爪19が、基体15に設けた駆動機構、例えばエアシリンダ21に連結され、遠隔操作走査にエアシリンダ21の駆動により、図9に示すように上下方向に駆動できるようになっている。
【0030】そして、図8に示すように、クランプ機構16の固定爪18をヘッダ5aの上面に当接させた後、エアシリンダ21の駆動によりクランプ爪23を上向きに回動させてヘッダ5aを下側から挟み込むことにより、基体15をヘッダ5aに取り付けた状態とし、これにより基体15ひいては装置全体を炉心スプレイスパージャ5に位置決め固定できるようになっている。
【0031】図10は吸着機構17の構成を示す拡大図であり、図11(A)〜(E)は吸着機構17の動作を示す作用説明図である。
【0032】この吸着機構17は、ヘッダ5aのカバープレート5eに吸着できる吸着盤22を基体15に進退可能に設けたものである。すなわち、基体15に上下1対の水平な往復動作機構、例えばエアシリンダ23,24を設け、下側配置のエアシリンダ23の駆動ロッド23aの先端を吸着盤22の中心位置である頂部に連結するとともに、上側配置のエアシリンダ24の駆動ロッド24aの先端を吸着盤22の周縁部に連結してある。
【0033】そして、図11に示すように、両エアシリンダ23,24により吸着盤22を引き戻した状態から(同図(A))、両エアシリンダ23,24により吸着盤22をカバープレート5e側に押し出して一端強く圧着させ(同図(B))、この後、吸着盤22の周縁部をカバープレート5eに圧着させたまま、下側のエアシリンダ23を引き戻し方向に駆動して、吸着盤22の中心部のみを所定距離だけ引き戻すと(同図(C))、吸着盤22はヘッダ5aのカバープレート5eにしっかりと吸着される。これにより、装置全体をヘッダ5a側に引き寄せ、装置前後方向の位置決め固定を行なうことができる。
【0034】なお、検査終了後等の装置回収時においては、例えば各エアシリンダ23,24による吸着盤22の押し付け力を弱め(同図(D))、この後、上側のエアシリンダ24により吸着盤22の周縁部を引き戻す一方、下側のエアシリンダ23により吸着盤22の中心部を押し出し方向に作動させれば(同図(E))、吸着盤22の周縁部がめくれるため、吸着力がなくなり容易に取り外すことが可能となる。
【0035】図12および図13はスキャナ手段13の構成を拡大して詳細に示しており、図12は側断面図であり、図13は一部断面とした図12の平面図である。
【0036】これらの図12および図13、ならびに前述した図6〜図8に示すように、スキャナ手段13は固定手段12の両側部に位置して1対、対象的に配置されている。各スキャナ手段13は、パイプ5bの軸方向に移動可能な軸方向移動体としてのケース体25をそれぞれ有し、これらのケース体25は基体15の両側方に延びる上下配置のガイドシャフト26,27によって支持されている。各ガイドシャフト26,27は炉心スプレイスパージャ5のパイプ5bの曲率に対応して湾曲している。そして、下側配置の各ガイドシャフト26にはラック26aが一体的に組込んであり、このラック26aが基体15に設けた軸方向駆動モータ28に図示しないピニオンを介して噛合され、これにより軸方向駆動モータ28の駆動により下側配置のガイドシャフト26がパイプ5bの軸方向に移動し、これにより各ケース体25が同時に移動するようになっている。なお、上側の各ガイドシャフト27は角棒状の案内専用とされている。
【0037】軸方向駆動モータ28の近傍には、軸方向駆動距離検出器29が設けられ、この軸方向駆動距離検出器29によりガイドシャフト26の進退距離、ひいては各ケース体25の移動距離を知ることができる。この検出器29で検知した移動量に基づき、検査ヘッド14の溶接線5dに対応する位置を求めることができる。これにより検査部位と検査ヘッド14の位置との関係を正しく検知し、図示しない制御装置により演算することができる。この演算結果に基づいて軸方向各駆動モータ28を制御することにより、ヘッダ5aとパイプ5bとの円筒形状同士が重なる三次元曲線形状の溶接線5dに沿う検査ヘッド14の移動を正確に行なうことが可能となる。
【0038】そして、ケース体25には図12および図13に示すように、検査ヘッド14をパイプ5bの外周面に沿って移動するための周方向移動体として、パイプ5bの外径より若干大径な円弧状、例えば半月状レール30が設けられている。この半月状レール30は例えば1対のレールエレメント31,32により構成され、これらのレールエレメント31,32は図示しないリンク機構により伸縮可能に組合せて構成された多段式レール31となっている。このうち、先端側のレール32の最先端側の内周面に検査ヘッド14がパイプ5bの外周面との間に配置される肉薄な構成として組み込まれている。
【0039】また、基端側のレールエレメント31の内周側には、レール回転用の送り機構として、周方向駆動33モータおよびギア機構34が設けられている。ギア機構34の回転部には、周方向駆動距離検出器35が設けられ、前述した軸方向検出器29と同様に、周方向移動距離を検出して検査ヘッド14の移動を正確に行なえるようになっている。
【0040】そして、例えば、周方向駆動モータにより前段のレールエレメント31を繰り出すと、次段のレールエレメント32および検査ヘッド14が順次に繰り出される。これにより、パイプ5bに対して上側半周分以上と下側半周分以上とを1つの周駆動モータ33により回転させ、検査ヘッド14をパイプ5bの全周囲に亘って送り出すことが可能となっている。
【0041】なお、図14は検査ヘッド14の構成例を示している。この検査ヘッド14は、例えば超音波探傷用センサといて構成されており、超音波探傷試験(UT)の実施により溶接線5dの健全性検査を行なえるようにしてある。すなわち、この検査ヘッド14は超音波探触子41をジンバル機構42およびスプリング43を介してホルダ44に保持したものである。このような構成により、ジンバル機構42が常にスプリング43によって検査面に押し付けられる構造となっている。この超音波探触子41は、炉心スプレイスパージャ5のヘッダ5aとパイプ5bとの連結部である二つの円筒形状が交差する三次元的形状の溶接線の全幅を観察し得る設定とされている。
【0042】すなわち、本実施形態の検査ヘッド14は狭隘な部位を検査対象とするため、前記の如く肉薄な構成とすることから、通常用いられるものより幅の狭い振動子で構成している。このように、幅の狭い超音波探触子41を適用することにより、発進される超音波の指向角が広がる。したがって、溶接部5dの三次元的湾曲のため溶接線と超音波探触子41との位置関係が直交状態とならない部位でも、この超音波の広がりによってカバーされ、亀裂状欠陥の有無を確実に検出することができる。
【0043】なお、超音波探傷用センサ41は、複数の微細振動子を組み合わせたアレイ型探触子とすることが望ましい。この場合、各微細振動子は、励起タイミングのコントロールによりヘッダ5aおよびパイプ5bの材料中に入射する超音波の屈折角を任意に設定することができる。このように、超音波探触子41を、微細な振動子の組み合わせ構成とし、それぞれの探触子を電気的にタイミングを変えて励起させることで、発振される超音波の角度を可変できるアレイ型探触子とすれば、より詳細な検査が可能となる。
【0044】これらの検査を実施するに当たっては、インジケーションの評価を正しく実施するために、検査部位と超音波探触子41との位置関係を正しく検知している必要がある。
【0045】これに対し、本実施形態では前述したように、軸方向周駆動モータ28と周方向駆動モータ33の近傍にそれぞれ設置した軸方向および周方向駆動距離検出器29、35によって検知した移動量を演算し、それに基づいて検査ヘッド14の溶接線5dに対する位置を求めることを可能としている。そこで、本実施形態では演算結果に基づいて、各駆動モータ28、33を制御することにより、正確に三次元曲線形状の溶接線5dに沿って検査ヘッド14によるスキャンが可能となる。
【0046】また、超音波探傷試験(UT)用センサに代えて、渦電流探傷試験(ECT)用センサを適用することもできる。渦流探傷用センサとすれば、センサが欠陥と直交しなくとも、欠陥上を横切って通過することによって欠陥を検出できるため、通常用いられるECTセンサでの対応も可能となる。
【0047】以上の構成を有する本実施形態の炉心スプレイスパージャ検査装置11を据付ける場合には、まずオペレーションフロア上の燃料交換機10等によって炉内に吊り下ろし、炉心スプレイスパージャ5に接近させる。そして、固定手段12をヘッダ5aに取り付けた状態にして、装置全体を位置決めする。
【0048】この位置決めに当たっては、まずクランプ機構16の固定爪18をヘッダ5a上に載せ、エアシリンダ21によりクランプ爪19を作動させてヘッダ5aを挟み込む。この後、吸着機構17のエアシリンダ23,24を同時に押し出し方向に作動させて吸着盤22をヘッダ5aのカバープレート5e表面に押し付ける。次に、エアシリンダ23を引くことで吸着盤22の中心を引き、吸着盤22をヘッダ5aにしっかり吸着させる。この後、エアシリンダ24を吸着盤22引き戻し方向に作動させることにより、装置全体をヘッダ5a側に引き寄せ、装置の前後方向の位置決めを完了する。
【0049】このようにして装置装着することにより、装置は炉心スプレイスパージャ5にヘッダ5aを基準として正しく位置決めされ、炉心スプレイスパージャ5のパイプ5b正面にスキャナ手段13がセットされる。
【0050】この状態で、軸方向駆動モータ28および周方向駆動モータ33を起動させれば、検査ヘッド14が溶接線5dに沿って周方向に移動し、前述した溶接状態の健全性検査を実施することができる。
【0051】なお、以上の本実施形態ではUT、ECT方式を適用し、電気信号の変化により欠陥の有無を検知しているため、感覚的には全体像が捕らえにくい。そこで、そのような場合には、外観観察用カメラからなる検査子を適用してもよい。この場合には、検査ヘッド14をカメラのような視覚情報を得られる物で構成するることにより、通常実施される外観検査(VT)が可能となり、全体の視覚的状況の確認が行なえる。
【0052】但し、当該検査部位は上述したように、狭隘であるうえ高放射線領域であるため、通常用いられる小型のカメラでは耐放射線の問題に対応困難である。このため、本発明ではファイバースコープを用いることが望ましい。これにより、狭隘部でも放射線の影響なくVTが可能となる。さらに、ファイバースコープによる視認位置の移動量と、映像上の移動に伴う相対位置の変化量を画像処理して計算することにより、視差を用いた方法で検査対象個所の三次元的情報を得ることも可能である。例えば、超音波探触子の代わりにファイバースコープを取り付ける場合には、外観形状を目視確認しながら欠陥の有無を検査できるとともに、検査ヘッド位置情報と一定距離視野範囲が移動したときの画像ずれとにより、画像処理によって検査範囲全体の三次元形状を再現し、欠陥の開口幅等のサイズを検知することができる。
【0053】以上のように、本実施形態によれば、通常の定期検査で取外す機器を取外した後に、炉水を保持した状態で炉心スプレイスパージャ検査装置11を炉心スプレイスパージャ5の正面に吊下げ、クランプ機構16の固定爪18およびクランプ爪19によりヘッダ5aに着座保持させるとともに、吸着機構17を作動させてカバープレート5eに吸着させることで、装置全体をヘッダ5bに引き寄せ位置決めさせることができる。そして、この後スキャナ手段13を作動させることにより検査ヘッド14を障害物との狭隘な隙間を通過させながらヘッダ5aとパイプ5bとの溶接線5dに沿って移動させることで、ヘッダ5aとパイプ5bとの溶接部およびその近傍に対して非破壊検査を実施し、割れ等の欠陥の有無を正確に検査することができ、炉心スプレイスパージャ5の健全性を確認することができ、ひいては原子炉安全性向上に寄与することができる。
【0054】また、原子炉内構造物である上部格子板4とシュラウド上部リング2aとの間の狭隘な空間に位置する炉心スプレイスパージャ5に対して、その炉心スプレイスパージャ5のヘッダ部形状を利用して装置全体の固定を実施し、その固定位置より炉心スプレイスパージャ5のパイプ5bの軸方向に移動するとともに、パイプ5bの周方向に沿って検査ヘッド14を回転させることにより、円筒形状であるヘッダ5aに同じく円筒形状であるパイプ5bが接続されている複雑な三次元曲線形状の溶接部5dのほぼ全周に対してスキャンさせることが可能となり、炉心スプレイスパージャ5の健全性確認を容易、かつ確実に行なえる。
【0055】特に、スキャナ手段13には、炉心スプレイスパージャ5のパイプ5bの軸方向に沿って検査ヘッド14を移動させることができる送り機構と、周方向に沿って検査ヘッドを移動させることができる回転機構を有し、炉心シュラウド2とパイプ5bとの間の狭隘な環境下においても複雑な三次元曲線形状を持つ溶接部5dに沿って、ほぼ全周に渡りスキャンすることができる。
【0056】さらに、スキャナ手段13における回転機構を、炉心シュラウド2と炉心スプレイスパージャ5のパイプ5bとの間を通過できる十分薄い構成の半月板状レール30とし、このレール先端に同様に薄く構成した検査ヘッド14が組み込んで、その半月板状レール30をパイプ5bの曲率に沿って送り出す構成としたことにより、パイプ5bの一方向から接近させるだけで、炉心シュラウド2とパイプ5bとの間の狭隘な隙間を通過してパイプのほぼ全周にわたって検査ヘッドをスキャンさせることができる。
【0057】なお、本実施形態においては、スキャナ手段13の送り機構に設けられた軸方向移動距離検出器29からの信号と、回転機構に設けられた周方向移動距離検出器35からの信号とを演算して、検査ヘッド14の位置を検出して制御することにより、正確に三次元曲線形状の溶接線5dに沿って検査ヘッド14をスキャンさせることができる。
【0058】さらに、本実施形態によれば、固定手段12を、炉心スプレイスパージャ5のヘッダ5aの上面に乗る固定爪18と、固定爪着座後にヘッダ5aを下側より押さえるクランプ爪19とからなるクランプ機構16と、ヘッダ5aの正面に対して吸着盤22を押し付けて吸着固定する吸着機構17とを有する構成としたことにより、装置全体を前後方向のずれなく、ヘッダ中心に芯出し位置決めさせることができる。
【0059】なお、炉心スプレイスパージャ5にはヘッダ5aの代りに継手部としてティーを用いるタイプも存在するが、本発明は前記同様の構成のままで、このように継手部をティータイプとした炉心スプレイスパージャ、あるいはティー構造を有する給水スパージャ6にも適用することができる。この場合には、溶接は単純な円形状であるため、吸着機構を円筒面での吸着を可能な構造とするのみで、本発明をそのまま適用することができる。すなわち、炉心スプレイライン8のヘッダ8aとパイプ8bとの溶接部は、炉心スプレイスパージャ5と同様の円筒形状と円筒形状との組み合せによる三次元的な湾曲を持つため、サイズは異なるが本発明をそのまま適用することができる。
【0060】
【発明の効果】以上で詳述したように、本発明によれば、原子炉内の障害物のない正面側より装置を吊下げて設置し、検査ヘッドを障害物のある狭隘な隙間に通過させながら、ヘッダと円環状配管との溶接線に沿って移動させることにより、ヘッダと円環状配管との溶接部およびその近傍に対して非破壊検査を実施し、割れ等の欠陥の有無を正確に検査することができる。したがって、炉心スプレイスパージャその他の原子炉内配管の健全性を確認することができ、ひいては原子炉の安全性向上に寄与することができる。
【出願人】 【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
【出願日】 平成12年11月14日(2000.11.14)
【代理人】 【識別番号】100078765
【弁理士】
【氏名又は名称】波多野 久 (外1名)
【公開番号】 特開2002−148385(P2002−148385A)
【公開日】 平成14年5月22日(2002.5.22)
【出願番号】 特願2000−346723(P2000−346723)