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【発明の名称】 筒形プレストレスト・コンクリート製格納容器
【発明者】 【氏名】渡部 征男

【氏名】伊庭 力

【氏名】日野 寿子

【要約】 【課題】バットレスと基礎版との境界部の応力集中を抑制し、境界部およびその近傍領域の補強を無くせて、設計、施工が容易な筒形プレストレスト・コンクリート製格納容器を提供する。

【解決手段】地盤Gに固設されたコンクリート製の基礎版5と、該基礎版5上に立設固定されたコンクリート製の筒体3とを備え、該筒体3の内部に埋設された緊張材によって圧縮力が付与された筒形プレストレスト・コンクリート製格納容器1である。前記筒体3内にその周方向に沿って埋設された緊張材を定着するための、該筒体外周面から外方に突出形成されたバットレス9の下端9aと、前記基礎版5との間が縁切りされている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 地盤に固設されたコンクリート製の基礎版と、該基礎版上に立設固定されたコンクリート製の筒体とを備え、該筒体の内部に埋設された緊張材によって圧縮力が付与された筒形プレストレスト・コンクリート製格納容器において、前記筒体内にその周方向に沿って埋設された緊張材を定着するための、該筒体外周面から外方に突出形成されたバットレスの下端と、前記基礎版との間が縁切りされていることを特徴とする筒形プレストレスト・コンクリート製格納容器。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は筒形プレストレスト・コンクリート製格納容器に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、原子炉施設としての高度な安全性が要求される格納容器には、プレストレスト・コンクリートにて製造された格納容器(以下、PCCVとも記す)が使用されている。このプレストレスト・コンクリートは、そのコンクリート内部にPC鋼材などの緊張材(以下、テンドンとも記す)を多数配置して、これら緊張材に張力を付与して予めコンクリートに圧縮力を与えておくことによりその強度を向上させたものであり、高度の安全性を保証している。
【0003】このPCCVとしては、図3に示すような例えば円筒体状の側壁3を備えた筒形のものが一般的である。かかる筒形PCCV1は、地盤Gに固設された基礎版5と、この基礎版5の上面に一体的に立設された円筒体状の側壁3と、この側壁3の上端面に一体的に固設されたドーム部7とから構成され、これら構成部位のコンクリート内部には前述したテンドンや鉄筋が埋設されている。
【0004】これらの構成部位の内、前記側壁3のコンクリート内部には、同図中の側壁の拡大破断図に示すように、鉛直方向に、および水平な円周方向に、各々多数のテンドン11、13と鉄筋21、23が配設されている。この内、前記水平な円周方向に配されたテンドン13(以下、フープテンドンと記す)の両端は、側壁3の外周面に、その円周方向の適宜間隔に突出形成されたバットレス9に定着され、該定着された両端の間に位置するコンクリート4に円周方向の圧縮力を付与するようになっている。つまり、前記フープテンドンの張力がバットレス9を介して圧縮力に変換されて側壁3に伝達されるようになっていて、いわば、該バットレス9は、フープテンドンと側壁3との間で荷重を伝達する荷重伝達部材として機能している。
【0005】このバットレス9の形状は、側壁3の外周面から突出して高さ方向に延在した略直方体であり、前記外周面に対して垂直な側面9bからは前記フープテンドン13の端部(図示なし)が突出している。そして、このフープテンドン13の端部が、支圧板などのテンドン定着手段13aによって前記側面9bに定着されている。
【0006】また、図4に、図3中のIVa−IVa線矢視の側断面図およびIVb−IVb線矢視図を示すが、このバットレス9の下端9aは基礎版5に一体的に固定されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このバットレス9と基礎版5とは、これらの形状の相違に起因した大きな剛性差があるので、PCCVに地震荷重が作用した際に生じる変位量がバットレス9と基礎版5とで大きく異なり、この時には、この変位量差のために、特に両者の境界部、すなわち前記バットレス9の下端9aに大きな応力が作用する。
【0008】現状、これには主に境界部およびその近傍領域9cを補強して対応している。具体的には前記境界部およびその近傍領域9cの鉄筋密度を大きくしている。しかしながら、かかる高い鉄筋密度の補強領域の設計、施工は難しく、工期の長期化、および施工コストの上昇を招いている。
【0009】本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、筒形プレストレスト製格納容器のバットレスと基礎版との境界部の応力集中を抑制し、境界部およびその近傍領域の補強を無くして、設計、施工が容易な筒形プレストレスト・コンクリート製格納容器を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するために請求項1に示す発明は、地盤に固設されたコンクリート製の基礎版と、該基礎版上に立設固定されたコンクリート製の筒体とを備え、該筒体の内部に埋設された緊張材によって圧縮力が付与された筒形プレストレスト・コンクリート製格納容器において、前記筒体内にその周方向に沿って埋設された緊張材を定着するための、該筒体外周面から外方に突出形成されたバットレスの下端と、前記基礎版との間が縁切りされていることを特徴とする。
【0011】上記発明によれば、バットレスの下端と基礎版とを縁切って互いの拘束を解いたので、地震荷重、温度荷重などが格納容器に作用しても、これらの境界部に、互いの剛性差に起因した変位量差によって大きな応力が生じることはない。よって、前記境界部およびその近傍領域の鉄筋密度を大きくして補強する必要はない。
【0012】尚、上記のようにバットレスの下端と基礎版との縁切りが可能なのは以下の理由による。バットレスの本来機能は、周方向に沿って配された緊張材の端部を定着して、該緊張材の張力を圧縮力に変換して筒体に伝達する荷重伝達である。この荷重伝達部材として機能するには、バットレスは筒体および緊張材と接合されていれば良く、バットレスが基礎版と接合されている必要は全くない。よって、バットレスの下端と基礎版との間を縁切りしても何ら不具合はない。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施形態を添付図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態である筒形PCCVの全体外観を示す斜視図であり、図2(a)は、図1中のIIa−IIa線矢視の側断面図を、図2(b)は、同図1中のIIb−IIb線矢視図を各々示す。但し、図2中にあっては、鉄筋、テンドンは記載していない。
【0014】また、本実施形態に係る筒形PCCV1の主たる構成は、図3に示す前述の従来例のものとほぼ同じであるので、同一の部材には同一の符号を付して、主にその相違点について説明する。
【0015】図1および図2に示すように、筒形PCCV1の円筒体たる側壁3の外周面には、直方体状のバットレス9が外方に突出形成されている。このバットレス9は、側壁3の円周方向に適宜間隔で、図示例では120°刻みに3カ所形成されている。尚、このバットレスは3箇所に限るものではなく、PCCVの仕様に応じて適宜数が設定され、2箇所若しくは4箇所以上の場合もある。
【0016】このバットレス9には、側壁3の内部にその円周方向に沿って配設されたフープテンドンの一端が定着され、また、他端は、前記バットレス9の隣のバットレス9に定着されている。そして、これが3つのバットレス9の間でなされて、側壁3には、その全円周に亘って円周方向の圧縮力が付与されるようになっている。また、このフープテンドンは、バットレス9の高さ方向に亘って適宜間隔に複数設けられていて、該側壁3には、その高さ方向に亘っても前記円周方向の圧縮力が付与されている。
【0017】このバットレス9の中で、前記フープテンドンが配されない下端9aは、図2に示すように、側壁3の外周面が露出するまで矩形状に切り欠かれている。そして、バットレス下端面9dと基礎版上面5dとの間には空間が設けられ、これらは完全に縁切りされている。よって、該バットレス9と基礎版5とが互いに拘束することはなく、PCCV1に地震荷重が作用しても、前記バットレス9と基礎版5との剛性差に起因した変位量差によってこれらに応力が生じることはない。したがって、鉄筋密度を大きくするなどの補強は必要ない。
【0018】尚、上記のようにバットレス9の下端9aと基礎版5との縁切りが可能なのは以下の理由による。バットレス9の本来機能は、側壁3内を円周方向に沿って配されたフープテンドンの端部を定着して、該フープテンドンの張力を圧縮力に変換して側壁3に伝達する荷重伝達である。この荷重伝達部材として機能するには、バットレス9は側壁3およびフープテンドンと接合されていれば良く、バットレス9が基礎版5と接合されている必要は全くない。よって、バットレス9の下端9aと基礎版5との間を縁切りしても何ら不具合はない。
【0019】尚、本実施形態においては、筒形のPCCVとして円筒形のPCCVを示したが、側壁が筒形であればこれに限るものではなく、その横断面形状が、楕円や矩形状であっても良い。
【0020】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1に示す発明によれば、バットレスの下端と基礎版との境界部およびその近傍領域の鉄筋密度を大きくするなどの補強を要しないので、その設計、施工が著しく容易となる。そして、これによって著しい工期短縮、および施工コストの削減を図ることができる。
【出願人】 【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
【出願日】 平成12年11月6日(2000.11.6)
【代理人】 【識別番号】100071283
【弁理士】
【氏名又は名称】一色 健輔 (外3名)
【公開番号】 特開2002−148380(P2002−148380A)
【公開日】 平成14年5月22日(2002.5.22)
【出願番号】 特願2000−338185(P2000−338185)