| 【発明の名称】 |
放射性物質拡散予測システム |
| 【発明者】 |
【氏名】久保田 龍治
【氏名】岩重 健五
【氏名】笠野 利夫
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| 【要約】 |
【課題】放射性物質の濃度や線量当量の予測精度をより向上させることにある。
【解決手段】大気中に放出された放射性物質の拡散状況を予測して任意の地点における放射性物質の濃度及び線量当量を予測する放射性物質拡散予測システムにおいて、放射性物質の粒径に基づいて沈降する速度を評価し、それに基づいて沈着場所を算出する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】大気中に放出された放射性物質の拡散状況を予測して任意の地点における放射性物質の濃度及び線量当量を予測する放射性物質拡散予測システムにおいて、放射性物質の粒径に基づいて沈降する速度を評価し、それに基づいて沈着場所を算出することを特徴とする放射性物質拡散予測システム。 【請求項2】放射性物質の放出源として半球状の放射性雲形状或いはきのこ雲形状を選択し、選択された形状に基づいて放射性物質の拡散状況を予測することを特徴とする放射性物質拡散予測システム。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、大気中に放出された放射性物質の濃度や線量を予測する放射性物質拡散予測システムに関する。 【0002】 【従来の技術】原子力発電所等から大気中に放射性物質が放出されるような万一の緊急時に、放出された放射性物質の移流拡散の状況と予測線量当量を計算するシステムとして、SPEEDI(System for Prediction of Environmental Emergency Dose Information)システムが知られている。このSPEEDIシステムについては、「緊急時環境放射線モニタリング指針」(原子力安全委員会,平成4年)に記載されている。 【0003】SPEEDIシステムは、平常時には、各地方公共団体のテレメータシステムの気象観測情報と気象庁のアメダス情報を1時間毎に受信し、6時間先までの風向・風速の統計的予測等を行う。 【0004】そして緊急時には、平常時に予測した気象情報,地形情報及び放出源情報(ファックスで送信されてくる施設名や発生時刻等)に基づいて、最長6時間先までの風速場,大気中の放射性物質の濃度及び予測線量当量を計算する。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】上述した従来技術では、放出された放射性物質の挙動は大気の挙動と全く同一として計算が行われる。しかしながら、放出される放射性物質には直径が10μm以上ある大粒径の物質が含まれることもあり、このような大粒径の物質は大気と比較して挙動が遅いために大気の流線から外れてしまう。また、大粒径の物質は湿分中では粒径が成長するが、上記従来技術では粒径の成長について考慮されていない。そのため、上述の従来技術では放射性物質の濃度や線量当量を正確に計算できない可能性がある。 【0006】更に上述の従来技術では、放出源を点源としているが、高温・高圧の熱流体の放出に伴う放射性雲は直径が100m程度の半球の形状であり、この放出源の相違によって放射性物質の濃度や線量当量の計算に誤差が生じる可能性がある。 【0007】本発明の目的は、放射性物質の濃度や線量当量の予測精度をより向上させることにある。 【0008】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明では、大気中に放出された放射性物質の拡散状況を予測して任意の地点における放射性物質の濃度及び線量当量を予測する放射性物質拡散予測システムにおいて、放射性物質の粒径に基づいて沈降する速度を評価し、それに基づいて沈着場所を算出する。 【0009】具体的には、以下の計算アルゴリズムを用いる。 【0010】粒子の沈降速度Upは、(数1)で表わされるストークスの法則に従う球形粒子の終端速度Wpを用いて与える。
【0011】ここで、ρp ,dは粒子の密度及び直径、ρg,μgは気体の密度及び粘性係数、gは重力加速度である。 【0012】湿分中における粒子成長については、吸湿性の粒子に対する湿度効果として、(数2)を適用する。
【0013】ここで、de は平衡粒径、d0 は初期粒径、ρ0 は粒子の密度、ρw は水の密度、iはvan't Hoff因子、Mw は水の分子量、Ms は粒子の分子量、RHは相対湿度である。湿分中における粒子成長は相対湿度95%以上で顕著に表れるため、計算においては大気中に拡散した吸湿性の粒子が高湿度領域に入った際に粒径の成長が考慮される。その際の粒径は(数2)より求められ、粒子と水の混合物の密度を用いて(数1)から沈降速度が評価される。 【0014】 【発明の実施の形態】本発明の好適な一実施例である放射性物質拡散予測システムについて図面を用いて説明する。 【0015】図1は、本実施例の放射性物質拡散予測システムの構成を示す。本実施例では、図1の破線の範囲を1台のパソコンで実現し、外部からのデータはネットワークを介してオンラインでパソコンのデータベースに取り込む。図1に示すように、平常時には、気象庁の2日先までの20kmメッシュの気象予測データ(風向,風速,気温,降水量、等)である気象庁GPV(Grid Point Value)データ15を午前9時と午後9時の1日2回受信し、施設周辺気象予測計算モデル3にて500m以下の詳細なメッシュで質量保存則を満たすように内挿して最大51時間先までの各メッシュの風向・風速の予測計算の処理を行う。予測結果は予測気象結果20として格納される。 【0016】一方、放射性物質が大気中に大量に放出されるような緊急時には、平常時において500m以下の詳細なメッシュで予測された気象情報,地形図データ9,放射線モニタ等で計測された施設内放射線モニタデータ18,モニタリングポスト等で計測された施設周辺放射線モニタデータ19に基づいて、最長51時間先までの風速場,大気中放射性物質の濃度及び予測線量当量の計算を行う他、気象庁のAMeDASデータを用いて過去の再現計算も行う。 【0017】以下、緊急時における動作について説明する。 【0018】緊急時には、まず風速場計算モデル4において風向及び風速を計算する。この計算は予測計算と再現計算から成る。予測計算では、3次元計算領域全体を計算用セル(直方体の小要素)に分解し、予測気象結果20と地形図データ9を用いて山や丘のような地形の高低を考慮した上で質量保存則を満たすように、各セルの最大51時間先までの風向・風速計算を行う。一方、再現計算では、40分前の気象が送信される気象庁AMeDASデータ2(地上の風向,風速,降雨等で約20kmに1ヶ所)を1時間毎に受信し、またドップラーソーダや排気筒の風速・風向計で計測された高所の風向・風速や露場で計測された地上の風向・風速等の施設内気象観測データ16及び施設周辺で計測された地上の風向・風速である施設周辺気象観測データ1を受信し、これを地形メッシュ上の位置(緯度,経度)と高度に合致する点での風向・風速として取り込んで境界条件とすることで、対象とする領域全体の質量保存則を満たすようにして過去の風向・風速場を再現する。予測及び再現された結果は、それぞれ3次元予測風速場10及び3次元再現風速場17として保存される。 【0019】次に、濃度計算モデル5にて濃度計算が行われる。濃度計算モデル5では、アルファ線,ベータ線,ガンマ線等の施設内放射線モニタデータ18とI−131,Kr−85,Pu−240等の核種組成比率データ21から単位時間当りの放出源総量と組成から成る放出条件を導出し、これを経度,緯度,高度から決まる放出点として3次元予測風速場10である最大51時間先までの風速場の結果を用い、風による移流と大気の乱れによる放射性物質の拡散を数千個の個々の仮想粒子の動きに置き換えて計算する。この結果から計算用セルごとに、放射性物質の最大51時間先までの大気中平均濃度と地表蓄積量の予測計算を行う。その結果はそれぞれ空間濃度分布7及び沈着量8として保存される。また、濃度計算モデル5では、気象庁AMeDASデータ2による風速場の計算結果である3次元再現風速場17を用いて再現計算も行う。ここで、沈着量の計算は前述の(数2)で示した成長した粒径を用いて、降水量に応じた物質の沈降や(数1)を用いた重力による沈降を計算する。この計算結果として地図上に空間濃度分布や沈着量分布を等値線図やコンター図として出力する。なお、施設周辺放射線モニタデータ19と核種組成比率データ21からも単位時間当りの放出源総量と組成から成る放出条件を導出して、この放出条件を放出点として上述と同様に計算してもよい。このように、本実施例では、核種組成比率データ21と施設内放射線モニタデータ18や施設周辺放射線モニタデータ19とに基づいて、核種がもつエネルギとモニタ値を比較することで、総量を推定して計算することができる。 【0020】次に、本実施例では、線量計算モデル6にて線量を計算する。濃度計算の結果をもとに、核種の半減期やエネルギ等のデータである核種物理定数データ22を用いて地上における最大51時間先までの吸収線量率,外部被曝による実効線量当量,吸入による甲状腺線量当量などの予測計算を行うと共に、再現計算も行う。得られた結果は、外部被曝線量12及び内部被曝線量13として保存されると共に、地図上に外部被曝線量や内部被曝線量の等値線図やコンター図として出力される。なお、線量計算モデル6においては、各計算用セルの内部で放射性物質の平均濃度を均一と仮定し、核種組成比率データ21を考慮し、評価地点で最大30核種による線量率などの予測計算を行う。 【0021】図2は図1の濃度計算モデル5における計算の流れを示す。まず、図1の風速場計算モデル4の計算結果である3次元予測風速場10又は3次元再現風速場17と地形図データ9を用いて、図2の大気拡散解析用空気メッシュ生成S11で3次元空間のメッシュを生成する。 【0022】次に、放出源から放出される物質の初期化S12を行う。この初期化では、よう素,希ガスの他,粒子状核種の放出も想定される場合には、粒子状核種のデータベース31から、放出が予想される核種の密度,粒径を選択する。放射性物質は排気筒又は建屋から直接放出される形態があり、これはファックス等で伝送されてくる情報を見て、ユーザが以下の通り手入力する。放出される箇所が排気筒である場合には、フィルタを通過した後の核種が放出されるので、粒径は1μmとするが、建屋から直接放出される場合には、核種はそのまま放出されるので、核種の物理的な粒径を選択する。また、配管破断のような形態がファックス等で伝送されてくる場合には、高温,高圧の熱流体も同時に放出されるので、この熱流体が断熱膨張して熱平衡状態で決まる半球形状の放射性雲の直径を用いた体積源をデータベース32から選択する。更に、放射線源がきのこ雲形状の場合は、それを体積源データベース32から選択する。これらの体積源については、その形状の表面及び内部に均一に仮想粒子を配置して、これを時刻t=0として初期化する。この初期化を終了後、図2の流れに沿って計算する。まず、粒子番号n=1について、時刻tの粒子n=1の位置における風速・風速変動等を内挿し、風速変動,気象条件に依存する拡散速度を計算する。次に、降雨や霧等の影響を考慮して、(数2)による物質の成長を計算し、次に(数1)により沈降速度を計算する。以上より、時刻がΔt進んだ時の粒子n=1の位置を(数3)より求める。 【0023】 X(t+Δt)=X(t)+Δt(Uw+Ud+Up) …(数3) なお、(数3)においてUw は風速、Ud は乱流変動又は大気安定度、Up は沈降速度である。次にn=2について同様に計算を行い、nが数千個まで計算を繰り返す。そして、時刻tにおける濃度分布の計算が終了した後、これをファイルに出力し、次に時刻Δt後のt+Δtでの計算を行うというように、逐次計算を進める。そして、求めたい時間までの最終的な計算結果として、核種毎の空間濃度や沈着量を地図上の分布図として出力する。本実施例では、気象データは気象庁AMeDASデータ2の他、気象庁GPV(Grid Point Value)データ15を用いるので、約2日先までの予測計算ができる。更に、施設内気象観測データ16や施設周辺気象観測データ1を用いるので気象計算の精度が向上する。そして、計算結果をCRT画面に表示する。このCRT画面には、空間濃度,地表沈着量を表示すると共に、地図上にも表示する。また、同時に体積源の形状も地図上に表示する。 【0024】また、本実施例では、風向と風速が急変する場合に、1時間前と1時間後の風向と風速を用いて評価した移流拡散の結果は急激に変化し、実気象と著しく異なる結果となることが予想されるので、1時間毎の気象情報をそのまま使用しないで、以下のような内挿を行う。具体的には、気象情報は1時間毎であることから、1時間毎の風向・風速のベクトル量U60(t1 )と次の1時間後のベクトル量U60(t1 +60)を用いて、(数4)のような重み付を行い、時間についての内挿を行う。
【0025】ここで、t=10分,20分,…,50分である。 【0026】更に、本発明では、10物質以上が同時に放出される場合にも対応できるようにした。具体的には、放出される物質の移流拡散では、破断口から放出される箇所に応じて、その破断した配管,容器の物質の組成比は決っている。そこで、30の物質から成る単位量を同時に計算して、放出された物質の風下側でのガンマ線等の測定値と比較して、組成比はそのままでそのガンマ線等の値が単位量の何倍に相当するかを計算することで放出源総量を推定できるようにした。 【0027】以上説明した本実施例によれば、直径が10μm以上の大粒径の物質の拡散を計算できるので、このような大粒径の物質が放出点近傍に沈着し、拡散の影響が遠方に及ばないことが評価できる。 【0028】更に、100μm程度の雨が降る場合には、放出された物質が放出点近傍に沈着することから、拡散の影響が遠方に及ばないことが評価できる。 【0029】また、粒子の成長は相対湿度が95%以上で顕著に表れる。一方、熱流体が断熱膨張した半球状の放射性雲は相対湿度がほぼ100%であることから、粒径が成長し、放出点近傍に沈着するので、拡散の影響が遠方に及ばないことが評価できる。 【0030】 【発明の効果】本発明によれば、放射性物質の濃度や線量当量の予測精度をより向上させることができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000005108 【氏名又は名称】株式会社日立製作所 【識別番号】390023928 【氏名又は名称】日立エンジニアリング株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年6月19日(2000.6.19) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100075096 【弁理士】 【氏名又は名称】作田 康夫
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| 【公開番号】 |
特開2002−6076(P2002−6076A) |
| 【公開日】 |
平成14年1月9日(2002.1.9) |
| 【出願番号】 |
特願2000−187504(P2000−187504) |
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