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【発明の名称】 駆動装置
【発明者】 【氏名】中村 剛

【氏名】佐治 伸仁

【要約】 【課題】差動排気シールの排気面の面積を大きくした場合であっても、装置の構造物の剛性を上げなくともよい駆動装置を提供する。

【解決手段】X軸ステージ2の筐体1との対向面に設けられた凸部4と嵌合する凹部3をプロセス室Pを有する筐体1に設けると共に、凹部3の底面3aおよび側面3bに差動排気シール5を設ける。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 開口を介して外部と連通したプロセス室を有する筐体と、前記開口を塞いだ状態で前記筐体の外壁面に沿って相対的にスライド可能なスライダと、前記筐体と前記スライダとの間隙をシールする差動排気シールとを備えた駆動装置において、前記差動排気シールが、前記筐体と前記スライダとの複数の対向面中の互いに交差する少なくとも2つの面に設けられてなる駆動装置。
【請求項2】 前記差動排気シールは、前記スライダのスライド方向に直交する断面における前記対向面が略コ字状であり、前記筐体に設けられた複数のシール領域と、各シール領域に隣接して形成され吸引ポンプに連通する溝部とを有し、前記複数のシール領域のうち最も内側のシール領域に隣接する溝部は、前記断面においては前記2つの面の交差部に形成されている請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】 前記最も内側のシール領域に隣接する溝部は、前記断面において両側面に設けられてなる請求項2の駆動装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、外部環境から隔離されたプロセス室内でワークを駆動することが可能な駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】半導体製造装置などにおいては、真空や特殊ガス雰囲気に維持したプロセス室内で、ワークをステージに載置して移動させて加工処理することが行われている。ここで、プロセス室内に駆動装置を設けると、その可動部に補給する潤滑剤などが飛散してプロセス室内を汚染するおそれがある。
【0003】このような問題に対して、たとえば米国特許第4191385号には、一体型負圧密封式ガス軸受組立体が開示されている。かかる従来技術においては、軸受ブロック上に2次元方向に移動可能な可動部を設け、さらに軸受ブロックと可動部との間にプロセス室を形成し、差動排気シールによりプロセス室と外部とを密封することによって、プロセス室を負圧環境に維持したまま、その内部で可動部上に載置したワークの処理を行えるようにしている。従って、ワークを駆動する駆動部をプロセス室外に設置することができ、それによりプロセス室の汚染を抑止でき、また駆動部のメンテナンスも容易に行えるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】また、上記従来技術において差動排気シールの吸引力の極小化を図るべく、図12〜図14に示すような駆動装置も考えられる。図12はこの駆動装置の断面図であり、図13は、図12の駆動装置をXIII-XIII線で切断して矢印方向に見た(但しスライダを取り除いた状態で示す)図であり、図14は、図13の駆動装置をXIV-XIV線で切断して矢印方向に見た図である。
【0005】これらの図面に示す駆動装置では、プロセス室Pをもつ筐体201のスライダ(可動部)202に対向する側の面に、差動排気シール203が設けられている。差動排気シール203は、筐体201に形成された長孔207(スライダ202側から伸延した円筒軸208が挿入されている)の周囲に沿って延在するトラック状となっている。このトラック状の部分の可動部202と対向する面203aが排気面として機能する。さらに、差動排気シール203は、3本のトラック状の溝部204、205、206を具備しており、溝部204、205は、差動排気シール203の内部通路を介して、筐体201に形成された連通路210に連通している。連通孔210は、不図示の吸引ポンプに接続されている。一方、溝部206は筐体201の両端と連通することにより大気圧に開放されている。そして、図13で排気面203aの外側には、多数の静圧気体軸受部212が設けられている。
【0006】図12〜図14で説明した技術においては、空気を噴出することによって軸受ブロックとスライダ202とを非接触に隔置する静圧軸受212を用いている。かかる静圧軸受212は、その反発力と差動排気シール203の吸引力とが釣り合うことで軸受として機能している。
【0007】そして、このような構成において、差動排気シール203の排気面203aの面積((長孔の幅+シール面幅×2)×円筒軸のストローク)は、円筒軸208のストローク、つまり長孔207の長さに応じて変化する。ところが、差動排気シール203の吸引力は、その排気面203aの面積が増加するにつれて大きくなる(例えば、長孔の幅50mmでシール面幅40mmの場合には、円筒軸208のストロークが100mm伸びることにより吸引力は1300Nも大きくなる)。そのため、円筒軸208のストロークを大きくして差動排気シール203の排気面203aを増大させる場合には、スライダ202と筐体201との間に配置される軸受などの装置の構造物の剛性を上げる必要が生じる。
【0008】そこで、本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑み、差動排気シールの排気面の面積を大きくした場合であっても、装置の構造物の剛性を上げなくともよい駆動装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するために、本発明の駆動装置は、開口を介して外部と連通したプロセス室を有する筐体と、前記開口を塞いだ状態で前記筐体の外壁面に沿って相対的にスライド可能なスライダと、前記筐体と前記スライダとの間隙をシールする差動排気シールとを備えた駆動装置において、前記差動排気シールが、前記筐体と前記スライダとの複数の対向面中の互いに交差する少なくとも2つの面に設けられてなる。
【0010】
【作用】本発明の駆動装置は、開口を介して外部と連通したプロセス室を有する筐体と、前記開口を塞いだ状態で前記筐体の外壁面に沿って相対的にスライド可能なスライダと、前記筐体と前記スライダとの間隙をシールする差動排気シールとを備えた駆動装置において、前記差動排気シールが、前記筐体と前記スライダとの複数の対向面中の互いに交差する少なくとも2つの面に設けられてなるので、差動排気シールの吸引力が交差する二方向に分かれて働くことになる。従って、吸引力が一方向だけに働いている場合よりも、装置の構造物に加えられる一方向に働く吸引力の大きさが減少することになり、差動排気シールの排気面の面積を大きくした場合であっても、差動排気シールの排気面が一平面の場合(吸引力が一方向だけに働く場合)と比べて、装置の構造物の剛性を上げなくともよくなる。
【0011】更に、前記差動排気シールは、前記筐体に設けられた複数のシール領域と、各シール領域に隣接して形成され吸引ポンプに連通する溝部とを有し、前記複数のシール領域のうち最も内側のシール領域に隣接する溝部は、前記2つの面の交差部に形成されていると、最もシール性が問題となる交差部に、溝部(差圧室)を配置することで、外部から侵入する気体を効率よく排気することができる。この点の詳細については、図15,16を参照して後述する。
【0012】ここで、差動排気シールとは、スライダと筐体の排気面との微小な間隙にある気体を排気することにより、スライダと筐体との対向面間が非接触の状態で、対向面を挟む両側の雰囲気(例えば大気圧と高真空)を一定の状態に保つように機能するものをいう。以下に述べる実施の形態においては、排気面を有する部材を差動排気シールという。
【0013】本発明において、差動排気シールは、前記筐体と前記スライダとの複数の対向面中の互いに対向する一対の面にそれぞれ設けられていることが好ましい。これにより、対向する一対の面に働く吸引力どうしが打ち消し合うことになるので、装置の構造物に加えられる吸引力の大きさがより減少する。ここで、一対の面は、必ずしも平行に対向している必要はない。
【0014】なお、本発明において、差動排気シールは、筐体側に設けてもよいし、スライダ側に設けてもよい。
【0015】また、本発明の駆動装置は、差動排気シールに吸引力を発生させるような差圧がプロセス室とプロセス室外との間に存在する場合だけでなく、差動排気シールに吸引力を発生させるような差圧がプロセス室とプロセス室外との間に存在しない場合(例えば、プロセス室が1気圧のN2雰囲気の場合)、差動排気シールに反発力を発生させるような差圧(負圧)が高圧のプロセス室とプロセス室外との間に存在する場合、および、プロセス室とプロセス室外との間の差圧が変化する場合(例えば、ゲートバルブを開閉する場合)のいずれの場合にも適用することが可能である。
【0016】また、本発明において、筐体とスライダとの互いの対向面は、平面であってもよいし、曲面であってもよい。
【0017】また、本発明において、差動排気シールと共に、転がり軸受や静圧軸受を用いることができる。
【0018】また、本発明において、スライダを貫通して開口からプロセス室に臨む導入軸が、導入軸の軸方向にスライド可能にスライダに支持されていることが好ましい。これにより、スライダを筐体に対して相対的にスライドさせ且つ導入軸をスライダに対して(スライダのスライド方向とは交差する方向に)スライドさせることで、導入軸に支持されたワークをプロセス室内において2次元駆動することができる。このとき、導入軸とスライダとの間隙は、差動排気シールによってシールされていてよい。
【0019】ここで、本発明の駆動装置の原理について、図1〜図4に基づいて説明する。図1は、本発明の一例としての駆動装置に用いられ得る筐体の部分的な斜視図であり、図2は、図1の筐体を具備した駆動装置の模式的なX方向中央の断面図である。図3は、本発明の別の一例としての駆動装置に用いられ得る筐体の部分的な斜視図であり、図4は、図3の筐体を具備した駆動装置の模式的なX方向中央の断面図である。又、図15は、本発明の更に別の一例としての駆動装置に用いられ得る筐体の部分的な斜視図であり、図16は、図15の筐体を具備した駆動装置の模式的なX方向中央の断面図である。図2,4,16は、スライダを含めて示している。
【0020】図1および図2に示す駆動装置では、開口6を介して外部と連通したプロセス室Pを有する筐体1と、開口6を塞いだ状態で筐体1の外壁面に沿って相対的にスライド可能なスライダ(X軸ステージ)2との対向面が凹凸面となっている。なお、スライダ2には、開口6からプロセス室内に突出する不図示のバー(例えば、軸体)が設けられる。このバーがスライダ2と共にX軸方向に移動することにより、プロセス室内に運動を伝達する。但し、移動させたいワークが小さい場合、直接ワークをスライダ2に固定するようにしてもよい。これらのことは、後述の図3,4,15,16の場合も同様である。すなわち、筐体1は、そのスライダ2側の面が中央に凹みを有する凹部3となっている。そして、凹部3の底面3aおよび平行に対向する2つの側面3bには、筐体1とスライダ2との間隙をシールするために、不図示の吸引ポンプと接続されたトラック状の2つの溝部7、8が形成された差動排気シール5(図2には簡略化して描かれている:底面3aおよび2つの側面3bからなる排気面をもつ)が開口6を取り囲むように設けられている。図1および図2に示す例では、開口6の幅が底部3aの幅よりも小さく、溝部7は底面3a内だけに設けられており、溝部8は底面3aと側面3bとの両方にかけて設けられている。
【0021】また、スライダ2は、筐体1側の面が凸部4となっている。凸部4の幅および高さは、凹部3の幅および深さとそれぞれ実質的に同じ(厳密には、相対移動のため両者間にシールのための微小すきまが形成されるように管理される。以下「実質的に同じ」という場合、同様の意味である。)であって、凸部4は凹部3と嵌合する。なお、図1に示すように、凹部3の底面3aと側面3bとの境界隅部であって溝部8の両側部分には、セラミック製のものあるいは接着剤を盛って固化してなるものなどからなるシール材9が配置されている。シール材9は、スライダ2の凸部4の角部が面取り加工されているので、凹部3との間に断面略三角形状のすきまが生じ、差動排気シール5の性能に影響することから、この部分のすきまを極小化するためのものである。
【0022】このように、図1および図2に示す例では、差動排気シール5が、筐体1とスライダ2との対向面であって互いに直交する2つの面(底面3aおよび側面3b)に設けられているので、差動排気シール5の吸引力が直交二方向に分かれて働く。これにより、吸引力が一方向だけに働いている場合よりも、駆動装置の構造物に加えられる吸引力のうち、図1のY方向(底面3aに垂直な方向)に作用する成分の大きさが減少する。すなわち、本例の場合、吸引力のうち、一部は2つの側面3bに作用する成分となるため、Y方向には作用せず、その分、駆動装置の構造物に加えられるY方向(図1参照)の吸引力の大きさが減少することになる。従って、従来例に比較し装置の構造物の剛性を上げなくとも、開口6の長さを大きくすることが可能になる。
【0023】他方、図3および図4に示す駆動装置では、開口16を介して外部と連通したプロセス室Pを有する筐体11と、開口16を塞いだ状態で筐体11の外壁面に沿って相対的にスライド可能なスライダ(X軸ステージ)12との対向面が凹凸面となっている。すなわち、筐体11は、そのスライダ12側の面が中央に凹みを有する凹部13となっている。そして、凹部13の底面13aおよび平行に対向する2つの側面13bには、筐体11とスライダ12との間隙をシールするために、不図示の吸引ポンプと接続されたトラック状の2つの溝部17、18が形成された差動排気シール15(図4には簡略化して描かれている:底面13aおよび2つの側面13bからなる排気面をもつ)が開口16を取り囲むように設けられている。図3および図4に示す例では、開口16の幅が底部13aの幅とほぼ同じであり、溝部17、18は共に底面13aおよび側面13bの両方にかけて設けられている。
【0024】また、スライダ12は、筐体11側の面が凸部14となっている。凸部14の幅および高さは、凹部13の幅および深さとそれぞれ実質的に同じであって、凸部14は凹部13と嵌合する。なお、図3に示すように、凹部13の底面13aと側面13bとの境界隅部であって溝部17、18の両側部分には、セラミック製のものあるいは接着剤を盛って固化したものなどからなるシール材19が配置されている。
【0025】このように、図3および図4に示す例では、差動排気シール15が、筐体11とスライダ12との対向面であって互いに直交する2つの面(底面13aおよび側面13b)に設けられているので、差動排気シール15の吸引力が直交二方向に分かれて働く。これにより、吸引力が一方向だけに働いている場合よりも、駆動装置の構造物に加えられる吸引力の大きさが減少する。本例では、図1および図2の場合とは異なり、溝部17を底面13aおよび側面13bに形成することでY方向(図2参照)に加えられる吸引力を極小化しているので、駆動装置の構造物に加えられる吸引力の大きさのY方向成分はより一層小さくなっている。特に、本例の場合、スライダ12の移動可能なストロークを大きくすべく開口16の長さを増したとき、プロセス室内に運動を伝達する不図示のバーと、その動きを許容するための開口16に対して、開口16の幅とシールの幅とは実質的に同一であるため。ストローク増大による吸引力の増大が最も抑制される。従って、装置の構造物の剛性の増大を抑えつつ、開口16の長さを大きくすることが可能になる。
【0026】ここで、図1において、底面3aにおける溝部7の内側のシール領域を3cとし、底面3a、側面3bにおける溝部7,8に挟まれたシール領域を3dとし、溝部8の外側のシール領域を3eとする。又、図3において、底面13a、側面13bにおける溝部17の内側のシール領域を13cとし、溝部17,18に挟まれたシール領域を13dとし、溝部18の外側のシール領域を13eとする。図1に示す構成においては、シール領域3cには、シール材9が配置されていないため、この観点からは、シール領域13cにシール材19を配置した図3の構成よりも、スライダ2との間隙を小さく維持しやすいので、シール性能を確保しやすいという利点がある。
【0027】但し、図1の構成は、図3の構成に比べると、シール領域3c及びシール領域3dの一部で底面3aを構成し、そのY方向面積が大きくなるため、スライダ2をY方向に引きつける力がその分だけ大きくなり、それを支持するためスライダ2の軸受容量は、図3の構成に比べると大きくする必要がある。又、図1の構成において、溝部7,8に挟まれたシール領域3dは、底面3a、側面3bにまたがって折れ曲がり、相手側のスライダ2に面取り部があるため、底面3aと側面3bとの交差部にシール材9が配置されてはいるものの、他のシール領域が厳密にすきまが微小にされているのに比べると、この部分はシール性能が若干劣るという課題もある。
【0028】これに対し、図3の構成は、底面13aの面積が小さいため、差動排気シールの吸引力による、スライダをY方向に引きつける力が比較的小さくなるという利点がある。しかしながら、シール領域13c、13d、13eとも、底面13a、側面13bにまたがって折れ曲がっており、スライダ12に面取り部があるため、底面13aと側面13bとの交差部にシール材19を配置する構成であるものの、かかる交差部で小さなスキマを形成するのが困難であることから、他のシール領域に比べると、この部分のシール性能は若干劣る。図15,16に示す構成は、図1、2の構成に比べて吸引力を小さくでき、かつ、図1、2および図3、4の構成に比べて高いシール性能を得られるものである。
【0029】図15および図16に示す駆動装置では、開口26を介して外部と連通したプロセス室Pを有する筐体21と、開口26を塞いだ状態で筐体21の外壁面に沿って相対的にスライド可能なスライダ(X軸ステージ)22との対向面が凹凸面となっている。すなわち、筐体21は、そのスライダ22側の面が中央に凹みを有する凹部23となっている。そして、凹部23の底面23aおよび平行に対向する2つの側面23bには、筐体21とスライダ22との間隙をシールするために、不図示の吸引ポンプと接続されたトラック状の2つの溝部27、28が形成された差動排気シール25(底面23aおよび2つの側面23bからなる排気面をもつ)が開口26を取り囲むように設けられている。図15および図16に示す例では、開口26の幅が底部23aの幅よりも小さく、溝部27、溝部28とも底面23aと側面23bとの両方にかけて設けられているが、溝部27のうち、X方向に延在する部分は、丁度底面23aと側面23bとの交差部に位置するように設けられている。
【0030】また、スライダ22は、筐体21側の面が凸部24となっている。凸部24の幅および高さは、凹部23の幅および深さとそれぞれ実質的に同じであって、凸部24は凹部23と嵌合する。ここで、図15において、底面23aにおける溝部27の内側のシール領域を23cとし、底面23a、側面23bにおける溝部27,28に挟まれたシール領域を23dとし、溝部28の外側のシール領域を23eとする。ここで、溝部27は、図16に示すごとく、ちょうど底面23aと側面23bとの交差部に沿うようにして形成されており、従って最も内側のシール領域23cは、底面23a側のみに形成されていることになる。シール領域23d、23eにおいては、凹部23の底面23aと側面23bとの境界隅部に、セラミック製のものあるいは接着剤を盛って固化してなるものなどからなるシール材29が配置されている。シール材29は、スライダ22の凸部24の角部が面取り加工されているので、凹部23との間に断面略三角形状のすきまが生じ、差動排気シール15の性能に影響することから、この部分のすきまを極小化するためのものである。
【0031】このように、図15および図16に示す例では、図1及び図2の例と同様に、シール領域23cは底面23aにのみ形成されているので、かかるシール領域23cのシール性能を高く維持することができる。又、溝部27,28に挟まれたシール領域23dとスライダ22との間隙に侵入した気体は、それより内側におけるシール領域23cとスライダ22との間隙が小さく一様であることから、溝部27を介して外部に排気されやすいという利点もある。更に、図15等の構成は,図1の構成に比較すると、底面23aのうち、開口26に沿ってX方向に延在する部分には、シール領域23c、23d、23eのうち、23cのみとなるので、その分、底面23aの面積を小さくすることができ、それの分Y方向の吸引力を小さく抑えることができる。
【0032】加えて、図1における溝部7,8に挟まれたシール領域3dのX方向に延在する部分は、底面3aと側面3bの交差部にまたがっていて、スライダ2の凸部に面取り部があるため、シール領域3d中に比較的間隙の大きな部分が生じることになり、従って間隙の管理が難しいが、図15における溝部27,28に挟まれたシール領域23dは、その開口26に沿ってX方向に延在する部分は、底面3aには形成されておらず、側面3b側に形成されているため、そして、溝部27のX方向に延在する部分は、底面23aと側面23bとの交差部に形成されているため、底面23aと側面23bの交差部にまたがった部分はわずかであり、そのためシール材29の長さも短くて済むので、間隙の管理が比較的容易となっている。しかも、これより内側の部分には溝部27があり、溝部27には排気のための吸引力ポンプにからの排気通路が連通されている。それにより、シール領域23dとスライダ22との間の間隙における気圧を効果的に下げることができる。又、それに付随して最も内側のシール領域23cとスライダ22との間の間隙における気圧を更に下げることができ、その分容量が低い吸引ポンプを用いることができ、コスト低減に寄与する。
【0033】なお、上述の例で用いたシール材9、19、29は、排気系コンダクタンスの問題から配置されているが、ポンプの性能や、目的とするシール性(例えば要求されるプロセス室内外の圧力差)、すきまの大きさなどによっては配置する必要はない。例えばスライダ2,12,22,の凸部の角部に面取り部がない場合は、当然シール材9,19,21は不要である。
【0034】図15,16の例で、この面取り部がない場合には、溝27のうち、X方向に沿う部分については、図17あるいは図18のように配置してもよい。面取り部がない場合では、3つの場合を比較すると、側面23b側のみに段差のある図17の構成が、差動排気シールによる吸引力のY方向成分を押さえるという見地から最も好ましい。面取り部を有する場合は、図16の構成が最も好ましい。
【0035】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。まず、本発明の第1の実施の形態について、図5〜図8に基づいて説明する。本実施の形態は、静圧軸受支持構造で一軸方向移動の場合について、図3および図4で説明した例を適用したものである。図5は、本発明の第1の実施の形態の駆動装置のX軸ステージを外した状態での平面図であり、図6は、図5の駆動装置をVI-VI線で切断して矢印方向に見た図であり、図7は、図5の駆動装置をVII-VII線で切断して矢印方向に見た図であり、図8は、図5の駆動装置をVIII-VIII線で切断して矢印方向に見た図である。
【0036】図5〜図8に示すように、X軸ステージ50の筐体60との対向面には、X方向に伸延したほぼ直方体状のリブ55が設けられている。そして、リブ55のX方向中央からは、円筒軸(導入軸)80がY方向に突出している。円筒軸80の先端部は、後述する長孔62からプロセス室Pに臨んでいる。
【0037】一方、プロセス室Pを有する筐体60のX軸ステージ50との対向面には、図5中上下にX方向に伸延した2本のリブ64、65が配置されていると共に、2本のリブ64、65の間にはこれらと平行に伸延した凹部66が設けられている。凹部66の幅および深さは、X軸ステージ50のリブ55の幅および高さとほぼ同じである。凹部66は、底面66aと、互いに平行に対向した2つの側面66bとを具備している。凹部66の底面66aの中央には、プロセス室Pと外部とを連通する長孔62が設けられている。
【0038】凹部66の底面66aおよび側面66bには、筐体60とX軸ステージ50との間隙をシールする差動排気シール70(差動排気シール手段)が設けられている。差動排気シール70は、筐体60に形成された凹部66内において長孔62の周囲に沿ってこれを取り囲むように底面66aおよび側面66bにトラック状に延在している。このトラック状の部分のX軸ステージ50と対向する面が差動排気シール70の排気面(底面66aおよび側面66bからなる)として機能する。さらに、差動排気シール70は、3本のトラック状の溝部71、72、73を形成しており、溝部71、72は、差動排気シール70の内部通路74、75をそれぞれ介して、筐体60に形成された連通路76、77に連通している。連通孔76、77は、不図示の吸引ポンプに接続されている。また、溝部73は、溝部78、79を介して筐体60の両側と連通することにより大気圧に開放されている。溝部71、72、73は、底面66aおよび側面66bの両方にかけて設けられている。なお、凹部66の底面66aと側面66bとの境界隅部であって溝部71、72の両側部分には、セラミック製のものあるいは接着剤を盛って固化してなるものなどからなるシール材(図示せず)が配置されている。
【0039】また、筐体60のリブ64、65の内側面(Z軸に垂直な面)と、2つのリブ64、65および凹部66とに挟まれた面(Y軸に垂直な面)には、多数の静圧軸受ポケット68(表面絞り)が配置されている。静圧軸受ポケット68は、エア通路69から供給された空気を噴出し、その力で筐体60を浮かせた状態にして摩擦力ゼロに近い状態で筐体60を支持することを可能としている。
【0040】凹形状の排気面のうち、溝部71、72を除く部分は、凹部66の外側の筐体60がX軸ステージ50と対向している部分に比べ、X軸ステージ50側にわずかに突出している。そして静圧軸受ポケット68により、この突出部分と、これに対向するX軸ステージ50の筐体60と対向する面(対向シール面:リブ55の表面を含む)とが、外側の部分に比べ十分に小さな間隔を隔てて対向するように設定されている。
【0041】次に、本実施の形態の動作について説明する。X軸ステージ50は、そのリブ55を凹部66に嵌合させることにより、静圧軸受ポケット68(静圧軸受)による反発力と差動排気シール70の吸引力とのバランスにより、低フリクション状態で筐体60に対して支持されているので、不図示の外部駆動源によりボールねじなどを用いて駆動されることで、筐体60に対してX軸方向に移動可能となっている。このとき、円筒軸80は、X軸ステージ50と共にX軸方向に移動するが、筐体60の(本発明の開口に該当する)長孔62は、かかる円筒軸80のX軸方向移動を許容するようになっている。言い換えると、X軸ステージ50は、長孔62の長手方向長さに規定される範囲内で、筐体60に対してX軸方向に相対移動可能となっている。
【0042】この際、排気面を有する差動排気シール70は、不図示の吸引ポンプからの吸引力に基づき、筐体60の連通路76、77を介して、リブ55の頂面および側面を含むX軸ステージ50との対向面(対向シール面)との間の空気を吸引しているので、X軸ステージ50と筐体60との間の間隙を介して、外部より空気や異物がプロセス室P内に侵入することを防止できる。従って、ワークの加工処理のため、筐体60内のプロセス室Pを負圧環境にしたような場合にも、差動排気シール70により、外部からの空気の侵入を阻止できるので、プロセス室Pの負圧環境を維持でき好ましい。また、プロセス室P内がガスで満たされている場合も、このガスが差動排気シールによって回収されるため、プロセス室P外に漏れるのを防ぐことができる。
【0043】さらに、本実施の形態によれば、X軸ステージ50を、筐体60の外部から駆動しているので、プロセス室P内に駆動系を設ける必要がなく、プロセス室P内の汚染などを防止できると共に、駆動系のメンテナンスが容易となる。また、差動排気シール70の吸引力は、図面に示すトラック状の範囲に限られるので、たとえ筐体60を大型化しても差動排気シール70の全長は長くならず、従って静圧軸受ポケット68の支持反力は変わらない。しかも、X軸ステージ50の筐体60と対向する面のうち、排気面より外側の部分の受ける力は大気圧と等しくなるので、X軸ステージ50の表裏面に働く圧力分布を考えると、表裏で差圧が存在するのは、排気面から内側の限られた部分となる。従って、静圧軸受ポケット68が支持すべき力は、この限られた面積の差圧の総和に抗する力でよいから小さくて済む。
【0044】特に、本実施の形態によると、筐体60に設けた凹部66の底面66aおよび側面66bが差動排気シール70の排気面となるので、筐体とX軸ステージとの接触面が互いに凹凸のない平面(排気用の溝部を除く)である場合と比較して両者のY方向の対向面積が減ると共に、差動排気シール70の吸引力が直交二方向に分かれて働く。これにより、吸引力が一方向だけに働いている場合よりも、駆動装置の構造物に加えられる吸引力のうちY方向に作用する成分の大きさが減少する。すなわち、本実施の形態の場合、吸引力のうち、一部は、2つの側面66bに作用する成分となり、Y方向には作用しないため、その分、駆動装置の構造物に加えられるY方向の吸引力の大きさが減少することになる。従って、装置の構造物の剛性を上げなくとも、開口62の長さを大きくすることが可能になる。これにより、差動排気シール70の吸引力によるシール機能を維持しつつY方向の吸引力を低下させることができる。そのため、X軸ステージの差動排気シールの排気面が、吸引力がY方向のみに作用する平面状(排気用の溝部を除く)である場合に比較して、駆動装置の構造物に高い剛性のものを用いる必要がなくなる。
【0045】また、本実施の形態では、差動排気シール70の溝部71、72、73を長孔62に隣接して筐体60の側に設けたが、X軸ステージ50の側に溝部を設けることも考えられる。しかしながら、この場合、X軸ステージ50の移動可能な全範囲において、長孔62に正対する方向(図5に相当する向き)から見た場合、排気面が長孔62を囲んでいるように排気面を形成する必要がある。そのため、円筒軸80の可動範囲となる(長孔62+円筒軸80ストローク)分の長さを有する排気面が必要になる。
【0046】なお、上述した第1の実施の形態において、プロセス室P内外の圧力差が変化するような場合には、吸引力の変化による高さ寸法の変化が小さい高剛性を有する転がり要素を転がり軸受として用いることで、状況に応じて差動排気シール70のギャップ幅が変化するのを防止することができる。
【0047】以上、本発明の第1の実施の形態について説明したが、上述の実施の形態には様々な変更・改良が可能である。例えば、排気面の溝部71、72、73は3列にしたが、これに限定されず、吸引ポンプの性能、プロセス室内外の差圧の大きさ、等に応じ、1列、2列あるいは4列以上としても良い。また、排気面と対向シール面との隙間の大きさも吸引ポンプ等の性能との兼ね合いで決まるもので、数μmから数100μmまで適宜選択可能である。さらに、軸受としては、実施の形態に示す静圧軸受ポケット68に限らず、各種の軸受を用いることができ、たとえばリニアガイドや他の転がり案内軸受(クロスローラガイド等)を用いてもよい。また、静圧軸受としては、多孔質型などの別タイプのものを用いてもよい。
【0048】又、差動排気シール70と筐体60とは一体でも別体でも良い。さらに、排気面の外周に沿って、少なくとも両端部すなわち本実施の形態では円弧部分の外側に大気と連通する溝を設ける代わりに、排気面を筐体60の外側の部分より突出させても良い。又、長孔62、排気面、排気面の溝部71、72、73の形状も、図5〜図8の形状に限定されない。例えば、図1および図2で説明したように長孔62の幅を凹部66の幅より狭くし、溝部71が底面66aのみに形成された構成であってもよい。同様に、図15、図16の説明に準じた構成、図17に準じた構成、あるいは図18に準じた構成としてもよい。また、筐体60とX軸ステージ50との互いの案内対向面は、本実施の形態のように平面だけで構成されていてもよいし、曲面を含んでいてもよい。
【0049】加えて、本実施の形態においては、筐体60を固定部とし、X軸ステージ50を移動部としているが、これとは逆に、X軸ステージ50を固定部として、筐体60を移動部とすることもできる。また、導入軸80を本実施の形態のように固定するのではなく、導入軸80がX軸ステージ50に対してY軸方向にスライド可能に支持されていてもよい。これにより、2軸方向の制御が可能となる。また、筐体60およびX軸ステージ50の向きは、図面に示されたものに限らず、任意の向きであってよい。
【0050】次に、本発明の第2の実施の形態について、図9〜図11に基づいて説明する。図9(a)は、本発明の第2の実施の形態の駆動装置の正面図であり、図9(b)は側面における断面を示す図であり、図10(a)〜(c)は、それぞれ、図9の駆動装置に用いられるX軸ステージの平面図、(筐体110と対向する面を示す図)、正面図、及び(a)のA−A線断面図である。図11(a)〜(d)は、それぞれ、図9の駆動装置に用いられる筐体の斜視図、平面図、そのB−B線断面図、および、(c)のC−C断面図である。本実施の形態では軸受としてリニアガイドを用いていると共に、X軸ステージを貫通した導入軸がX軸ステージに対してその移動方向と直交する方向にスライド可能となっている。
【0051】第1の移動部であるX軸ステージ(スライダ)90は、後述するように、中央に円形の開口91を有し、開口91内には差動排気シール(第2の差動排気シール手段)92が設けられている。なお、図9(b)および図10(b)では、差動排気シール92、後述する静圧軸受93および差動排気シール120を簡略化して示している。X軸ステージ90の開口91内には、第2の移動部である円筒軸(導入軸)100が挿通されている。円筒軸の先端部は、X軸ステージ90を貫通して後述する矩形の長孔112から筐体110内のプロセス室Pに臨んでいる。円筒軸100は、シール面であるその周面の一部が開口91内に設けられた差動排気シール92に包囲されている。また、円筒軸100は、図9(b)中、差動排気シール92よりも下方において静圧軸受93によって支持されている。これにより、円筒軸100とX軸ステージ90との間隙がシールされると共に、円筒軸100はX軸ステージ90に対して非接触的に支持され、摩擦などの抵抗なく、X軸ステージ90に対して図9(b)中上下に相対的にスライド移動可能となっている。詳細を図10(c)に示す。差動排気シール92は開口91の内周面に設けられ、円筒軸100と微少スキマを介して対向する排気面を備える。さらに差動排気シール92は、前記排気面に設けられた円環状の溝部92a、92b、更に内部通路92c、92d、及び、これらを介して溝部92a、92bに連通されるとともに不図示の吸引ポンプに接続される連通孔92e、92fを備える。また、静圧軸受93は多孔質体でなり、開口91に内嵌される軸受本体93a、不図示の給気ポンプから軸受本体93aにエアを供給するエア通路93b、及び軸受本体93aから排出されるエアを外部へ導く排気通路93dを備える。
【0052】図9(a)、図9(b)、図10(a)〜(c)に示すように、X軸ステージ90の筐体110との対向面には、図9(b)中左右に2本のガイドレール94が配置されている(ボルトにより固定)と共に、2本のガイドレール94の間にはこれらと平行に伸延したほぼ直方体状のリブ95が一直線上に設けられている。そして、リブ95の中央には、X軸ステージ90を貫通する開口91が設けられている。
【0053】一方、図9(a)、図9(b)、図11(a)〜(d)に示すように、筐体110のX軸ステージ90との対向面には、X軸ステージ90のリブ95の幅とほぼ同じだけ離隔した互いに平行な2つのリブ114、115が設けられている。そのため、2つのリブ114、115の間は、リブ95の幅とほぼ等しい幅を有する凹部116となっている。凹部116は、底面116aと互いに平行に対向する2つの側面116bとを具備している。凹部116の底面116aの中央には、矩形の長孔112が設けられている。
【0054】また、筐体110のX軸ステージ90との対向面には、図9(b)中左右3個ずつで合計6個の断面がコ字状のベアリング118が配置されている(ボルトにより固定)。かかるベアリング118は、X軸ステージ90に配置された2本のガイドレール94に、ベアリング118内を循環する不図示の多数の転動体を介して係合しており、ガイドレール94に沿って図9(b)の紙面垂直方向に滑動自在となっている。これらベアリング118、ガイドレール94及び多数の転動体で転がり案内軸受の一種であるリニアガイドが構成される(第1の軸受)。
【0055】図9(b)および図11(a)において、凹部116の底面116aおよび側面116bには、筐体110とX軸ステージ90との間隙をシールする差動排気シール120(第1の差動排気シール手段)が設けられている。図11(a)〜(d)に示すように、差動排気シール120は、筐体110に形成された凹部116内において長孔112の周囲に沿ってこれを取り囲むように底面116aおよび側面116bに延在するトラック状となっている。このトラック状の部分のX軸ステージ90と対向する面120aが差動排気シール120の排気面として機能する。さらに、差動排気シール120は、2本のトラック状の溝部121、122を形成しており、溝部121、122は、差動排気シール120の内部通路123、124を介して、筐体110に形成された連通路125、126に連通している。連通孔125、126は、不図示の吸引ポンプに接続されている。溝部121、122は、底面116aおよび側面116bの両方にかけて設けられている。なお、凹部116の底面116aと側面116bとの境界隅部であって排気面120aの溝部121、122以外の部分には、リブ95の不図示の面取り部とのスキマを極小化するため、セラミック製のものあるいは接着剤を盛って固化してなるものなどからなるシール材127が配置されている。
【0056】凹形状の排気面120a(溝部121、122を除く)は、その外側の筐体110がX軸ステージ90と対向している部分に比べ、X軸ステージ90側にわずかに突出している。そして前記リニアガイド(第1の軸受)により、この突出部分と、これに対向するX軸ステージ90の面(対向シール面)とが、外側の部分に比べ十分に小さな間隔を隔てて対向するように設定されている。
【0057】次に、本実施の形態の動作について説明する。図9(a)において、左右方向をX軸方向とし、上下方向をY軸方向とする。X軸ステージ90は、リブ95を凹部116に嵌合させるとともに、ガイドレール94とベアリング118と多数の転動体とで構成されるリニアガイド(第1の軸受)により低フリクション状態で筐体110に対して支持されているので、不図示の外部駆動源によりボールねじなどを用いて駆動されることで、筐体110に対してX軸方向に移動可能となっている。このとき、円筒軸100は、X軸ステージ90と共にX軸方向に移動するが、筐体110の(本発明の開口に該当する)長孔112は、かかる円筒軸100のX軸方向移動を許容するようになっている。言い換えると、X軸ステージ90は、長孔112の長手方向長さに規定される範囲内で、筐体110に対してX軸方向に相対移動可能となっている。
【0058】この際、排気面120aを有する差動排気シール120は、不図示の吸引ポンプからの吸引力に基づき、筐体110の連通路125,126を介して、X軸ステージ90のリブ95の頂面および側面(対向シール面)との間の空気を吸引しているので、X軸ステージ90と筐体110との間の間隙を介して、外部より空気や異物がプロセス室P内に侵入することを防止できる。従って、ワークの加工処理のため、筐体110内のプロセス室Pを負圧環境にしたような場合にも、差動排気シール120により、外部からの空気の侵入を阻止できるので、プロセス室Pの負圧環境を維持でき好ましい。また、プロセス室P内がガスで満たされている場合も、このガスが差動排気シールによって回収されるため、プロセス室P外に漏れるのを防ぐことができる。一方、円筒軸100の下端は、X軸ステージ90上に設置された駆動源(不図示)に接続されており、円筒軸100をY方向に駆動するようになっている。
【0059】このように、本実施の形態によると、X軸ステージ90と円筒軸100とを互いに交差する方向に駆動することができるので、円筒軸100の先端に支持されたワークをプロセス室P内において2次元的に位置決めすることができるようになる。さらに、上述した第1の実施の形態による効果も得ることができる。
【0060】また、本実施の形態によると、筐体110に設けた凹部116の底面116aおよび側面116bに差動排気シール120の排気面120aが設けられているために、筐体とX軸ステージとの接触面が互いに凹凸のない平面(排気用の溝部を除く)である場合と比較してY方向の対向面積が減ると共に、差動排気シール120の吸引力が直交二方向に分かれて働く。これにより、吸引力が一方向だけに働いている場合よりも、駆動装置の構造物に加えられる吸引力のうちY方向に作用する成分の大きさが減少する。すなわち、本実施の形態の場合、吸引力のうち一部は、2つの側面116bに作用する成分となり、Y方向には作用しないので、駆動装置の構造物に加えられる吸引力のうち図9(a)のY方向(底面116a(図11(a))に垂直な方向)に作用する成分の大きさが減少することになる。従って、装置の構造物の剛性を上げなくとも、開口112の長さを大きくすることが可能になる。これにより、差動排気シール120の吸引力によるシール機能を維持しつつY方向の吸引力を低下させることができる。そのため、X軸ステージの差動排気シールの排気面が、吸引力がY方向のみに作用する平面状(排気用の溝部を除く)である場合に比較して、駆動装置の構造物に高い剛性のものを用いる必要がなくなる。
【0061】なお、本実施の形態は、例えば以下のように設計変更が可能である。まず、円筒軸100の軸受としては、転がり軸受(玉軸受、ころ軸受など)を用いることもできる。また、軸部材としての円筒軸100に回転駆動機構を設ければ、外部より、円筒軸100を任意に相対回転させることができ、それにより3軸の駆動装置を構成することができるが、相対回転を阻止したい場合には、軸部材として断面が矩形などの多角形状の軸や、楕円状の軸あるいはスプライン軸などを用いると、別個に相対回転阻止手段などを設ける必要がないため好ましい。
【0062】又、長孔112、排気面、排気面の溝部121、122の形状も、図9〜図11の形状に限定されない。例えば、図1および図2で説明したように、長孔112の幅を凹部116の幅より狭くし、溝部121が底面116aのみに形成された構成であってもよい。同様に、図15、図16の説明に準じた構成、図17に準じた構成、あるいは図18に準じた構成としてもよい。また、筐体110とX軸ステージ90との互いの接触面は、本実施の形態のように平面だけで構成されていてもよいし、曲面を含んでいてもよい。さらに、凹部116の底面116aと側面116bとを直交させず、両側面116bを傾斜させ、例えば断面台形状の凹部とし、リブ95についてもこれに対応した断面台形状となるようにしても、吸引力のY方向成分を減少させることができる。
【0063】加えて、本実施の形態においては、筐体110を固定部とし、X軸ステージ90を移動部としているが、これとは逆に、X軸ステージ90を固定部として、筐体110を移動部とすることもできる。また、導入軸100を本実施の形態のようにスライド可能にするのではなく、導入軸100がX軸ステージ90に対して固定されていてもよい。これにより、1軸方向のみの制御が可能となる。また、筐体110およびX軸ステージ90の向きは、図面に示されたものに限らず、任意の向きであってよい。
【0064】また、転がり軸受としては、スラスト方向のみ支持するタイプを用いてもよい。従って、剛性の高い円筒状のコロを転動体とするタイプにしてもよい。
【0065】
【発明の効果】本発明の駆動装置は、開口を介して外部と連通したプロセス室を有する筐体と、前記開口を塞いだ状態で前記筐体の外壁面に沿って相対的にスライド可能なスライダと、前記筐体と前記スライダとの間隙をシールする差動排気シールとを備えた駆動装置において、前記差動排気シールが、前記筐体と前記スライダとの複数の接触面中の互いに交差する少なくとも2つの面に設けられてなるので、差動排気シールの吸引力が交差する二方向に分かれて働くことになる。従って、吸引力が一方向だけに働いている場合よりも、装置の構造物に加えられる吸引力の大きさが減少することになり、差動排気シールの排気面の面積を大きくした場合であっても、装置の構造物の剛性を上げなくともよくなる。
【出願人】 【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
【出願日】 平成13年12月6日(2001.12.6)
【代理人】 【識別番号】100107272
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 敬二郎 (外1名)
【公開番号】 特開2002−257965(P2002−257965A)
【公開日】 平成14年9月11日(2002.9.11)
【出願番号】 特願2001−372159(P2001−372159)