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【発明の名称】 磁性薄膜メモリ、記録方法および再生方法
【発明者】 【氏名】寺本 洋二

【氏名】平井 匡彦

【要約】 【課題】構造が単純であり、所望しないメモリセルに誤って情報が書き込まれることを防止した信頼性の高い磁性薄膜メモリを提供する。

【解決手段】磁性体素子1aaに情報書込み時に、横方向配線3aおよび縦方向配線4aに電流を流すと磁性体素子1aaに合成磁界が発生し磁化の方向が変化する。このとき、バリスタ素子2aaにより磁性体素子1aaに電流が流れないので、他の配線に意図しない電流が流れない。また、情報を読み出すとき、横方向配線3aと縦方向配線4aの間にバリスタ素子2の臨界電圧と磁性体素子1の臨界電圧の和よりも大きな電圧を印加すると磁性体素子1aaに電流が流れ、それによって得られる抵抗値の磁化の方向による差で読み出された情報を判断することができる。このとき、他の磁性体素子1ではバリスタ素子2により意図しない電流が流れない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 磁性体の磁化の方向によって情報を記憶する磁性薄膜メモリであって、少なくとも1つの薄膜磁性体素子と少なくとも1つのバリスタ素子とが直列接続された少なくとも1つのメモリセルが、少なくとも1つの横方向配線と少なくとも1つの縦方向配線とからなる単純マトリクス構造の電極配線に接続されてなる構成であることを特徴とする磁性薄膜メモリ。
【請求項2】 前記薄膜磁性体素子は、第1の磁性層と該第1の磁性層よりも保磁力の小さい第2の磁性層とで絶縁層が挟まれてなり、前記第2の磁性層の磁化の方向で前記情報を記憶することを特徴とする、請求項1記載の磁性薄膜メモリ。
【請求項3】 前記バリスタ素子はZnO系の材料によるセラミックスバリスタであることを特徴とする、請求項1記載の磁性薄膜メモリ。
【請求項4】 前記バリスタ素子は2つのツェナーダイオードが逆向きに直列接続されてなることを特徴とする、請求項1記載の磁性薄膜メモリ。
【請求項5】 前記バリスタ素子により意図しない電流が流れるのを防止することで、所望の前記薄膜磁性体素子のみを選択して前記情報を書込み、また読み出すことを特徴とする、請求項1記載の磁性薄膜メモリ。
【請求項6】 前記電極配線のみを用いて前記情報を書込み、また読み出すことを特徴とする、請求項1記載の磁性薄膜メモリ。
【請求項7】 前記第1の磁性層はNiCoPt合金であることを特徴とする、請求項2記載の磁性薄膜メモリ。
【請求項8】 前記第2の磁性層はFiFe合金であることを特徴とする、請求項2または7記載の磁性薄膜メモリ。
【請求項9】 前記第1の磁性層はNdxFe100-xの垂直磁化膜を主成分とすることを特徴とする、請求項2記載の磁性薄膜メモリ。
【請求項10】 前記第2の磁性層はGdxFe100-xの垂直磁化膜を主成分とすることを特徴とする、請求項2または9記載の磁性薄膜メモリ。
【請求項11】 磁性体の磁化の方向によって情報を記憶する磁性薄膜メモリであって、マトリクス状に設けられ、電流が流れたときに得られる抵抗値で、記憶している前記情報を表す複数の薄膜磁性体素子と、前記薄膜磁性体素子と直列接続されてメモリセルを構成し、前記薄膜磁性体素子に意図しない電流が流れるのを防止する複数のバリスタ素子と、前記マトリクスの横方向に互いに平行に設けられ、前記マトリクスの横方向にある前記メモリセルの一方の端子に接続されており、前記情報を書き込むべき前記メモリセルに接続されていれば所定の電流が流れて該メモリセルの前記薄膜磁性体素子に磁界を印加する少なくとも1つの横方向配線と、前記マトリクスの縦方向に互いに平行に設けられ、前記マトリクスの縦方向にある前記メモリセルの他方の端子に接続されており、前記情報を書き込むべき前記メモリセルに接続されていれば所定の電流が流れて該メモリセルの前記薄膜磁性体素子に磁界を印加し、前記横方向配線から印加された磁界との合成磁界で前記薄膜磁性体素子の磁化の方向を変化させ、前記情報を読み出すべき前記メモリセルに接続されていれば該メモリセルに接続された前記横方向配線との間に、前記バリスタ素子の臨界電圧と前記薄膜磁性体素子の臨界電圧の和より大きな電圧を印加して前記薄膜磁性体素子に電流を流す、少なくとも1つの縦方向配線を有することを特徴とする磁性薄膜メモリ。
【請求項12】 磁性体の磁化の方向によって情報を記憶する磁性薄膜メモリに情報を記録するための記録方法であって、予め、少なくとも1つの横方向配線と少なくとも1つの縦方向配線とからなる単純マトリクス構造の電極配線と、第1の磁性層と該第1の磁性層よりも保磁力の小さい第2の磁性層とで絶縁層が挟まれてなる薄膜磁性体素子にバリスタ素子が直列接続されてなる少なくとも1つのメモリセルを備え、該メモリセルを前記電極配線に接続しておき、前記電極配線に正、または負の電流を流すことにより、前記第2の磁性層の磁化の方向を変化させて前記情報を記録することを特徴とする記録方法。
【請求項13】 磁性体の磁化の方向によって情報を記憶する磁性薄膜メモリに情報を記録するための記録方法であって、予め、少なくとも1つの横方向配線と少なくとも1つの縦方向配線とからなる単純マトリクス構造の電極配線と、第1の磁性層と該第1の磁性層よりも保磁力の小さい第2の磁性層とで絶縁層が挟まれてなる薄膜磁性体素子にバリスタ素子が直列接続されてなる少なくとも1つのメモリセルを備え、該メモリセルを前記電極配線に接続しておき、前記電極配線に、前記第2の磁性層の磁化の方向が変化し前記第1の磁性層の磁化の方向が変化しないだけの磁界を生じる電流を流して前記情報を記録することを特徴とする記録方法。
【請求項14】 磁性体の磁化の方向によって情報を記憶する磁性薄膜メモリから情報を読み出すための再生方法であって、予め、少なくとも1つの横方向配線と少なくとも1つの縦方向配線とからなる単純マトリクス構造の電極配線と、第1の磁性層と該第1の磁性層よりも保磁力の小さい第2の磁性層とで絶縁層が挟まれてなる薄膜磁性体素子にバリスタ素子が直列接続されてなる少なくとも1つのメモリセルを備え、該メモリセルを前記電極配線に接続しておき、前記第2の磁性層の磁化の方向によって異なる前記薄膜磁性体素子の抵抗値により前記情報を読み取ることを特徴とする再生方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、不揮発性メモリに関し、特に、磁性薄膜を用いたメモリに関する。
【0002】
【従来の技術】磁性薄膜メモリ(MRAM)は、電源を断っても記憶した情報を失わない、無限回数の書換えが可能である、放射線の入射に対して耐性を有するなど、半導体メモリと比較して様々な利点を有している。特に近年では、異方性磁気抵抗を用いた磁性薄膜メモリに比べて大きな出力を得ることが可能なトンネル磁気抵抗効果を利用した磁性薄膜メモリ(以下、TMRメモリと称す)が注目されている。
【0003】TMRメモリは、複数のビット線(BL)と複数のワード線(WL)とが互いに交差するようにマトリクス状に配線された交点にTMRセルが配置された構成である。任意のビット線およびワード線に電流を流すことで所望の交点にあるTMRセルに合成磁場を発生させることができ、合成磁場でTMRセルの磁性電極スピンを反転させることができる。TMR効果によりTMRセルの抵抗値は磁性電極スピンの方向に依存して変化する。TMRメモリはTMRセルの磁性電極スピンの方向によって情報を記憶するメモリである。なお、一旦反転した磁性電極スピンは印加電圧をゼロに戻しても維持される。
【0004】図8は、TMRメモリの基本的なメモリセルの構成を示す構造図である。TMRメモリを構成するメモリセルをTMRセルと呼ぶこととする。
【0005】図8を参照すると、TMRセル90は、相対的に保磁力の大きな磁性層91と保磁力の小さな磁性層92とで絶縁層91を挟み込んだ形状である。磁性層91,92には、電気的特性を取り出すための電極がそれぞれ設けられている。電源3によって2つの電極間に電圧を印加したときに流れる電流は磁性層91と磁性層92の磁化の方向関係に依存した値となる。また、TMRセル90の抵抗値は印加電圧と電流を測定することで得られる。
【0006】TMRセルに記憶された情報を読み出す方法としては、従来から様々な方法が提案されており、それによってTMRメモリの構成も異なる。従来のTMRメモリの構成としては、例えば、日本応用磁気学会誌20、369(1996)に示されたようなTMRセルをマトリクス状に複数個配置したものがある。この構造を有するメモリはメモリセル数が増加すると、所望しないTMRセルに回り込み電流が流れ、信号レベルの低下を招く。そこで、J.Appl.Phys.81(8)3758(1997)に示されたような各TMRセルにFETをそれぞれ設けたもの、米国特許第5640343号に示されたような各TMRセルにダイオードをそれぞれ設けることにより、回り込み電流を回避する方法が考えられている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ビット線およびワード線がそれぞれ2本で1組となっており、各2本づつのビット線とワード線の交点にTMRセルが配置された構成の従来のTMRメモリや、各TMRセルにFETをそれぞれ設けた構成の従来のTMRメモリは、構造が複雑であり形成プロセスが煩雑になり、また、セル面積が大きく大容量化や小型化が難しい。
【0008】また、各TMRセルにダイオードをそれぞれ設けた構成の従来のTMRメモリは構造が単純で小型化が可能であるが、ビット線とワード線とが兼用されているため回り込み電流の影響を受ける。これにより書込み電流がTMRセルに流れ、意図しない誤った情報が他のTMRセルに書き込まれることがある。
【0009】本発明の目的は、構造が単純であり、所望しないTMRメモリセルに誤って情報が書き込まれることを防止した信頼性の高い磁性薄膜メモリ、およびその記録方法、再生方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため本発明の磁性薄膜メモリは、磁性体の磁化の方向によって情報を記憶する磁性薄膜メモリであって、少なくとも1つの薄膜磁性体素子と少なくとも1つのバリスタ素子とが直列接続された少なくとも1つのメモリセルが、少なくとも1つの横方向配線と少なくとも1つの縦方向配線とからなる単純マトリクス構造の電極配線に接続されてなる構成である。
【0011】したがって、薄膜磁性体素子に直列接続されたバリスタ素子で、書込み時に横方向配線と縦方向配線の間にかかる電圧によって薄膜磁性体素子に電流が流れるのを防止することができるので、書込み時に意図しない電流が流れて情報を書き込もうとする以外の薄膜磁性体素子の磁化が変化してしまうことがない。
【0012】本発明の実施態様によれば、薄膜磁性体素子は、第1の磁性層と第1の磁性層よりも保磁力の小さい第2の磁性層とで絶縁層が挟まれてなり、第2の磁性層の磁化の方向で前記情報を記憶する。
【0013】本発明の実施態様によれば、バリスタ素子はZnO系の材料によるセラミックスバリスタであってよい。
【0014】本発明の他の実施態様によれば、バリスタ素子は2つのツェナーダイオードが逆向きに直列接続されてなる構成であってよい。
【0015】本発明の実施態様によれば、バリスタ素子により意図しない電流が流れるのを防止することで、所望の薄膜磁性体素子のみを選択して情報を書込み、また読み出す。
【0016】本発明の実施態様によれば、電極配線のみを用いて情報を書込み、また読み出す。
【0017】本発明の実施態様によれば、第1の磁性層はNiCoPt合金であってよい。
【0018】また、第2の磁性層はFiFe合金であってよい。
【0019】本発明の他の実施態様によれば、第1の磁性層はNdxFe100-xの垂直磁化膜を主成分としてよい。
【0020】また、第2の磁性層はGdxFe100-xの垂直磁化膜を主成分としてよい。
【0021】本発明の他の磁性薄膜メモリは、磁性体の磁化の方向によって情報を記憶する磁性薄膜メモリであって、マトリクス状に設けられ、電流が流れたときに得られる抵抗値で、記憶している情報を表す複数の薄膜磁性体素子と、記薄膜磁性体素子と直列接続されてメモリセルを構成し、薄膜磁性体素子に意図しない電流が流れるのを防止する複数のバリスタ素子と、マトリクスの横方向に互いに平行に設けられ、マトリクスの横方向にあるメモリセルの一方の端子に接続されており、情報を書き込むべきメモリセルに接続されていれば所定の電流が流れてメモリセルの薄膜磁性体素子に磁界を印加する少なくとも1つの横方向配線と、マトリクスの縦方向に互いに平行に設けられ、マトリクスの縦方向にあるメモリセルの他方の端子に接続されており、情報を書き込むべきメモリセルに接続されていれば所定の電流が流れてメモリセルの薄膜磁性体素子に磁界を印加し、横方向配線から印加された磁界との合成磁界で薄膜磁性体素子の磁化の方向を変化させ、情報を読み出すべきメモリセルに接続されていればメモリセルに接続された横方向配線との間に、バリスタ素子の臨界電圧と薄膜磁性体素子の臨界電圧の和より大きな電圧を印加して薄膜磁性体素子に電流を流す、少なくとも1つの縦方向配線を有している。
【0022】本発明の記録方法は、磁性体の磁化の方向によって情報を記憶する磁性薄膜メモリに情報を記録するための記録方法であって、予め、少なくとも1つの横方向配線と少なくとも1つの縦方向配線とからなる単純マトリクス構造の電極配線と、第1の磁性層と第1の磁性層よりも保磁力の小さい第2の磁性層とで絶縁層が挟まれてなる薄膜磁性体素子にバリスタ素子が直列接続されてなる少なくとも1つのメモリセルを備え、メモリセルを電極配線に接続しておき、電極配線に正、または負の電流を流すことにより、第2の磁性層の磁化の方向を変化させて情報を記録することを特徴とする。
【0023】本発明の他の記録方法は、磁性体の磁化の方向によって情報を記憶する磁性薄膜メモリに情報を記録するための記録方法であって、予め、少なくとも1つの横方向配線と少なくとも1つの縦方向配線とからなる単純マトリクス構造の電極配線と、第1の磁性層と第1の磁性層よりも保磁力の小さい第2の磁性層とで絶縁層が挟まれてなる薄膜磁性体素子にバリスタ素子が直列接続されてなる少なくとも1つのメモリセルを備え、メモリセルを電極配線に接続しておき、電極配線に、第2の磁性層の磁化の方向が変化し第1の磁性層の磁化の方向が変化しないだけの磁界を生じる電流を流して情報を記録することを特徴とする。
【0024】本発明の再生方法は、磁性体の磁化の方向によって情報を記憶する磁性薄膜メモリから情報を読み出すための再生方法であって、予め、少なくとも1つの横方向配線と少なくとも1つの縦方向配線とからなる単純マトリクス構造の電極配線と、第1の磁性層と第1の磁性層よりも保磁力の小さい第2の磁性層とで絶縁層が挟まれてなる薄膜磁性体素子にバリスタ素子が直列接続されてなる少なくとも1つのメモリセルを備え、メモリセルを電極配線に接続しておき、第2の磁性層の磁化の方向によって異なる薄膜磁性体素子の抵抗値により情報を読み取ることを特徴とする。
【0025】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0026】図1は、本発明の一実施形態のTMRメモリの回路構成を示す構成図である。
【0027】図1を参照すると、本実施形態のTMRメモリは2×3のマトリクス状にTMRメモリセルが設けられたものであり、横方向配線3a,3bと縦方向配線4a,4b,4cと磁性体素子1aa,1ab,1ac,1ba,1bb,1bcとバリスタ素子2aa,2ab,2ac,2ba,2bb,2bcを有している。
【0028】磁性体素子1aaとバリスタ素子2aa、磁性体素子1abとバリスタ素子2ab、磁性体素子1acとバリスタ素子2ac、磁性体素子1baとバリスタ素子2ba、磁性体素子1bbとバリスタ素子2bb、磁性体素子1bcとバリスタ素子2bcでそれぞれTMRメモリセルを構成している。
【0029】横方向配線3a,3bと縦方向配線4a,4b,4cとは互いに直交している。磁性体素子1aaとバリスタ素子2aaが横方向配線3aと縦方向配線4aの間に直列に接続されている。同様にして、磁性体素子1abとバリスタ素子2abが横方向配線3aと縦方向配線4bの間に、磁性体素子1acとバリスタ素子2acが横方向配線3aと縦方向配線4cの間に、磁性体素子1baとバリスタ素子2baが横方向配線3bと縦方向配線4aの間に、磁性体素子1bbとバリスタ素子2bbが横方向配線3bと縦方向配線4bの間に、磁性体素子1bcとバリスタ素子2bcが横方向配線3bと縦方向配線4cの間に直列に接続されている。磁性体素子1aa,1ab,1ac,1ba,1bb,1bcは、それぞれ対応する交点の付近で直上、直下、または直横に配置されている。
【0030】なお、磁性体素子1aa,1ab,1ac,1ba,1bb,1bcとバリスタ素子2aa,2ab,2ac,2ba,2bb,2bcはマトリクスにおけるアドレスを示してそれぞれを区別する必要がないときには、単に磁性体素子1、バリスタ素子2と称することとする。
【0031】また、例えば、図中のα点とβ点との間に印加された電圧をVαβと、横方向配線3aの電圧をV3aと、縦方向配線4aの電圧をV4aと称することとする。さらに、横方向配線3aの電流をI3aと、縦方向配線4aの電流をI4aと称することとする。
【0032】図2を参照すると、磁性体素子1は、相対的に保磁力の大きな磁性層11と保磁力の小さな磁性層12とで絶縁層13とで構成された薄膜磁性体であり、磁性層11と磁性層12で絶縁層13を挟み込んだ形状に積層されている。
【0033】磁性層11は、例えば、NiCoPt、NiCoTa、NiCoZr、NiCoなどの合金層の面内磁化膜や、NdxFe100-x、TbxFe100-xなどを主成分とする垂直磁化膜である。なお、xは垂直磁化膜の元素組織における元素数を示しており、ここでは10〜35程度が好ましい。また、さらにCo等の元素を加えてもよい。さらに、磁性層11の膜厚は5〜30nm程度が好ましい。
【0034】磁性層12は、例えば、NiFeなどの面内磁化膜やGdxFe100-xなどの垂直磁化膜である。なお、ここではxは10〜35程度が好ましい。また、さらにCo等を加えてもよい。さらに、磁性層12の膜厚は5〜35nm程度、保磁力は0.5〜50e程度が好ましい。
【0035】また、磁性層11は磁性層12よりも十分に強い保磁力を有し、磁性層11が磁化反転を開始する磁界強度は、磁性層12の磁化反転が十分に飽和する磁界強度よりも大きいことが望ましい。
【0036】絶縁層13は、絶縁性を有するものであればよく特に限定されないが、Al23やSiO2などの酸化物が好ましい。絶縁層の厚さは1〜10nm程度が好ましい。
【0037】次に、本実施形態のTMRメモリの書込み時の動作について説明する。本実施形態のTMRメモリは各磁性体素子1の磁性層12の磁化を特定の方向にすることで情報を記憶する。
【0038】TMRメモリを磁気シールドする前に、磁性層11,12の磁化の方向を面に水平方向、あるいは垂直方向に揃えておく。また、書込みを行わないとき横方向配線3a,3bと縦方向配線4a,4b,4cに電流は流れていないので磁界は発生していない。
【0039】図3は本実施形態のTMRメモリの構成を示す模式図である。本実施形態のTMRメモリの横方向配線3a,3bおよび縦方向配線4a,4b,4cと各磁性体素子1aa,1ab,1ac,1ba,1bb,1bcの位置関係は図3に示すようになっている。
【0040】したがって、図4を参照すると、横方向配線3aに電圧V3aを印加すると電流I3aが流れて磁性体素子1aa,1ab,1acに磁界H3aが発生し、縦方向配線4aに電圧V4aを印加すると電流I4aが流れて磁性体素子1aa,1baに磁界H4aが発生する。磁性体素子1aaには磁界H3aと磁界H4aの合成磁界Haaが発生していることになる。ここでは合成磁界Haaは磁性層11の保磁力よりも弱く、磁性層12の保磁力よりも強い値となるように設定されているので、磁性体素子1aaでは磁性層12のみが合成磁界Haaの方向に磁化される。
【0041】また、磁界H3aと磁界H4aは磁性層12の保磁力よりも弱い値に設定されているので、磁性体素子1aa以外の磁性体素子の磁性層の磁化の方向は変化しない。
【0042】さらに、図5に示すように、バリスタ素子2は印加電圧が所定の臨界電圧以下のとき抵抗値が非常に大きな値となり電流がほとんど流れず、印加電圧が臨界電圧を超えると急激に抵抗値が小さくなり電流が流れるという特性を有している。したがって、α点とβ点との間の電圧Vαβをバリスタ素子2の臨界電圧よりも低く設定しておけば磁性体素子1aaには電流が流れない。よって、横方向配線3aおよび縦方向配線4a以外の配線に回り込みによる意図しない電流が流れないので磁性体素子1aa以外の素子の磁化が誤って変化してしまうことがない。
【0043】一方、横方向配線3aに電圧−V3aを印加すると電流−I3aが流れて磁性体素子1aa,1ab,1acに磁界−H3aが発生し、縦方向配線4aに電圧−V4aを印加すると電流−I4aが流れて磁性体素子1aa,1baに磁界−H4aが発生する。磁性体素子1aaには磁界−H3aと磁界−H4aの合成磁界−Haaが発生するので、磁性体素子1aaは合成磁界−Haaの方向に磁化される。
【0044】例えば、磁性体素子1が合成磁界Haaの方向に磁化されたとき“1”が記憶され、合成磁界−Haaの方向に磁化されたときに情報“0”が記憶される。
【0045】次に、本実施形態のTMRメモリの磁性体素子1の情報の書込み時の動作について説明する。
【0046】図6は、磁性層11,12の外部印加磁界Hに対する磁化Mの変化の特性と、外部印加磁界Hに対する抵抗MRの変化の特性を示す説明図である。
【0047】図6を参照すると、磁性体素子1に磁界H1を印加すると磁性層11,12の磁化は同一方向となる。この状態から磁界H2を通過し、磁界0の状態にまで変化させても磁性層11,12の磁化の方向は変化せず、互いに同一方向である。
【0048】さらに、印加する磁界Hを磁界H3にまで変化させると磁性層12の磁化のみが反転し、磁性層11と磁性層12の磁化が互いに逆方向となる。磁性層11と磁性層12の磁化が互いに逆方向のとき抵抗MRの値は大きくなる。例えば、このとき磁性体素子1に情報“1”が記憶される。
【0049】この後に、印加する磁界Hを磁界H2にまで変化させると磁性層12の磁化は再び反転し、磁性層11と磁性層12の磁化が互いに同一方向に戻る。磁性層11と磁性層12の磁化が互いに同一方向のとき抵抗MRの値は小さくなる。例えば、このとき磁性体素子1に情報“0”が記憶される。
【0050】図7に示すように、印加する磁界Hを磁界H2と磁界H3の間で変化させることでTMRメモリに情報“1”または情報“0”を書込み、また、書き換えることができる。2値の情報は磁界ゼロの状態でも抵抗MRの値として記憶されており、これを電圧に変換すれば書き込まれた情報を取り出すことができる。
【0051】次に、本実施形態のTMRメモリの読み出し時の動作について説明する。
【0052】例えば、磁性体素子1aaに記憶された情報を読み出す場合、横方向配線3aと縦方向配線4aの間にバリスタ素子2の臨界電圧と磁性体素子1の臨界電圧の和よりも大きな電圧を印加すると磁性体素子1aaに電流が流れる。このとき、他の磁性体素子1ではバリスタ素子2の臨界電圧を超えないので、意図しない電流が流れることはない。
【0053】磁性体素子1aaの磁性層11と磁性層12の磁化が同一方向か反対方向かで異なる抵抗MRの値によって、各配線の抵抗やバリスタ素子が有する内部抵抗を考慮しても電圧Vαβの値に十分な差(磁気抵抗効果)が生じるので情報“1”または“0”を判断することができる。
【0054】磁性体素子1と直列にバリスタ素子2を設け、書込み時に横方向配線3と縦方向配線4の間にかかる電圧Vαβをバリスタ素子2の臨界電圧よりも小さな値としているので、書込み時に磁性体素子1に意図しない電流が流れず、情報を書き込もうとする以外の磁性体素子1の磁化が誤って変化してしまうことがなくTMRメモリの信頼性が向上する。
【0055】次に、本実施形態のTMRメモリの具体例を示す。
【0056】保磁力の異なる磁性層11,12の間に絶縁層13を設けて積層された多層膜が磁性薄膜メモリ素子として用いられ、磁性薄膜メモリ素子と少なくとも1つのバリスタ素子が1対の電極配線間に直列に接続された構成の薄膜を形成した。
【0057】基板としてはSi基板上に熱酸化法によって約1000ÅのSiO2膜を形成したものを用いた。また、バリスタ素子としてはZnO系のバリスタ材料を用いた。
【0058】まず、電極として基板上に5nmのTiを成膜した後に50nmのPtを成膜した。この成膜は50Wで2mTorrのArガス中という条件を設定してRFマグネトロンスパッタ法で行った。次に、ゾルゲル法によりバリスタを形成した後、機械研磨により表面を平滑化した。バリスタの膜厚は1000nmとした。
【0059】さらに、NiCoPt合金(Ni39%、Co59%、Pt2%)で膜厚20nmの磁性層11と、Al23の絶縁層13と、NiFe合金(Ni80%、Fe20%)で膜厚25nmの磁性層12を成膜し、その後に電極としてTi(5nm)とPt(50nm)を成膜した。この成膜はRFマグネトロンスパッタ法で行った。また、これらの成膜は同一の装置で連続的に行った。
【0060】その後、通常のフォトリソ技術を用いて5μm×5μmのメモリ素子をマトリクス状に作製した。
【0061】このメモリ素子の各磁化の状態での抵抗MRの値を測定したところ、25%の磁気抵抗効果を得ることができた。
【0062】次に、本実施形態のTMRメモリの他の具体例を示す。
【0063】保磁力の異なる磁性層11,12の間に絶縁層13を設けて積層された多層膜が磁性薄膜メモリ素子として用いられ、磁性薄膜メモリ素子と少なくとも1つのバリスタ素子が1対の電極配線間に直列に接続された構成の薄膜を形成した。
【0064】基板としてはSi基板上に熱酸化法によって約1000ÅのSiO2膜を形成したものを用いた。また、バリスタ素子としてはZnO系のバリスタ材料を用いた。
【0065】まず、電極として基板上にTi(5nm)とPt(50nm)を成膜した。この成膜は50Wで2mTorrのArガス中という条件を設定してRFマグネトロンスパッタ法で行った。次に、ゾルゲル法によりバリスタを形成した後、機械研磨により表面を平滑化した。バリスタの膜厚は1000nmとした。
【0066】さらに、NdxFe100-xで膜厚20nmの磁性層11と、Al2O3の絶縁層13と、GdxFe100-xで膜厚30nmの磁性層12を成膜し、その後に電極としてTi(5nm)とPt(50nm)を成膜した。この成膜はRFマグネトロンスパッタ法で行った。また、これらの成膜は同一の装置で連続的に行った。
【0067】その後、通常のフォトリソ技術を用いて5μm×5μmのメモリ素子をマトリクス状に作製した。
【0068】このメモリ素子の各磁化の状態での抵抗MRの値を測定したところ、5%の磁気抵抗効果を得ることができた。
【0069】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、以下のような効果を有する。
【0070】書込み時に横方向配線と縦方向配線の間にかかる電圧により薄膜磁性体素子に電流が流れるのをバリスタ素子で防止することができるので、情報を書き込もうとする以外の薄膜磁性体素子の磁化が変化することがなく、磁性薄膜メモリの信頼性が向上する。
【出願人】 【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
【出願日】 平成12年8月10日(2000.8.10)
【代理人】 【識別番号】100088328
【弁理士】
【氏名又は名称】金田 暢之 (外2名)
【公開番号】 特開2002−56666(P2002−56666A)
【公開日】 平成14年2月22日(2002.2.22)
【出願番号】 特願2000−242861(P2000−242861)