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【発明の名称】 光ディスク及びその情報再生装置
【発明者】 【氏名】柳澤 琢麿

【氏名】野本 貴之

【氏名】和田 泰光

【氏名】横川 文彦

【氏名】大沢 誠一

【要約】 【課題】より短波長の再生用光ビームでかつ、より高い開口数の光学系を用い、従来のDVDに比して高密度にデータを記録できる次世代の光ディスク及び情報再生装置を提供する。

【解決手段】情報が所定のトラックピッチでピットの列として記録された情報記録層と情報記録層上に形成された光透過層とを備え、対物レンズによって光透過層を介して情報記録層に照射される光ビームにより情報の再生が行われる光ディスクであって、トラックピッチをTP、最短ピット長をTmin、光ビームの波長をλ、対物レンズの開口数をNAとしたとき、0.194(λ/NA)2≦TP×Tmin≦0.264(λ/NA)2の関係を満たし、トラックピッチが0.280〜0.325μmの範囲で、ピットの幅が120nm以下である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 情報が所定のトラックピッチでピットの列として記録された情報記録層と前記情報記録層上に形成された光透過層とを備え、対物レンズによって前記光透過層を介して前記情報記録層に照射される光ビームにより情報の再生が行われる光ディスクであって、前記トラックピッチをTP、最短ピット長をTmin、前記光ビームの波長をλ、前記対物レンズの開口数をNAとしたとき、0.194(λ/NA)2≦TP×Tmin≦0.264(λ/NA)2の関係を満たし、前記トラックピッチが0.280〜0.325μmの範囲で、ピットの幅が120nm以下であることを特徴とする光ディスク。
【請求項2】 前記ピットの底部幅が40nm以上であることを特徴とする請求項1記載の光ディスク。
【請求項3】 前記光ビームは波長λ=400〜415nmであり、前記対物レンズの開口数NAは0.78〜0.86であることを特徴とする請求項1又は2記載の光ディスク。
【請求項4】 情報が所定のトラックピッチでピットの列として記録された情報記録層と前記情報記録層上に形成された光透過層とを備えた光ディスクを回転自在に支持する手段と、光ビームを射出する光源、光ビームを前記光ディスクの前記光透過層を介して情報記録層上に向け集光する対物レンズ、該光ビームを前記対物レンズに導く照射光学系、並びに、光検出手段を含み前記対物レンズを介して前記情報記録層からの反射光を前記光検出手段へ導く検出光学系、前記光検出手段からの出力に基づき前記光ディスクに記録されている情報を再生する手段と、を備える情報再生装置であって、前記光ディスクは、前記トラックピッチをTP、最短ピット長をTmin、前記光ビームの波長をλ、前記対物レンズの開口数をNAとしたとき、0.194(λ/NA)2≦TP×Tmin≦0.264(λ/NA)2の関係を満たし、前記トラックピッチが0.280〜0.325μmの範囲で、ピットの幅が120nm以下であることを特徴とする情報再生装置。
【請求項5】 前記ピットの底部幅が40nm以上であることを特徴とする請求項4記載の情報再生装置。
【請求項6】 前記光源は波長λ=400〜415nmの青色半導体レーザであり、前記対物レンズの開口数NAは0.78〜0.86であることを特徴とする請求項4又は6記載の情報再生装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、情報をピットの列の形態で記録した光ディスク及び光ディスクを装填してこれから光ビームを用いて情報を再生する情報再生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、高密度に情報を記録する光ディスクとして、DVD(Digital Versatile Disc)が開発されている。このDVDは、波長650nmの光ビームを開口数NA=0.6の光学系により光ディスクに照射して、片面で2.6MBのデータを記録できる。このDVD片面で約1時間の映像信号を記録することができる。
【0003】ところで、家庭用のビデオテープレコーダでは基本の録画時間が2時間程度なので、ビデオテープレコーダと同様の使い勝手を光ディスク及び演奏装置すなわち情報再生装置で確保するためには、さらに多くのデータを光ディスクへ記録可能にする必要がある。また光ディスクの特徴であるランダムアクセス機能等を有効に利用して編集等の処理を実行可能にするためには、映像信号を3時間程度記録することが必要になる。
【0004】更に、高密度再生専用光ディスクが市場から要求されつつある。BS(broadcasting satellite)デジタルテレビ放送で提供されるデジタルHDTV(digital high definition television)の転送レートは20〜24Mbpsになると予想される。このデジタルHDTV映像を映画一本分程度(約2時間半=150分)を記録するためには、(20〜25Mbps)/8(ビット)/1000×150(分)×60(秒)=22.5〜27GB(ギガバイト)が必要である。基本的に、情報再生装置の再生能力は、対物レンズのNAと読み取り光ビームの波長λを用いて、NA/λによって決定される。従って、NAを大きくし、λを小さくすることで光ディスクの記録再生密度を向上させることができる。現在のDVDでは、λ=650nmかつNA=0.6で、光ディスク表面と反射記録面(情報記録層)との間の厚さ(以下、光透過層厚と呼ぶ)が0.6mmの光ディスクシステムを用いている。
【0005】例えば、日本国特許第2704107号では、再生用光ビームの波長をλ[μm]、対物レンズの開口数をNAとしたとき、トラックピッチが(0.72〜0.8)×λ/NA/1.14μm、ピットの幅すなわち上部幅が(0.3〜0.45)×λ/NA/1.14μm、ピットの底部幅すなわち下部幅が(0.2〜0.25)×λ/NA/1.14μmである光ディスクを、開示している。かかる光ディスクによって、上記トラックピッチ範囲の下で特定ピット形状を選ぶことにより、隣接トラック間のクロストーク量を抑えている。
【0006】かかる従来技術ではトラックピッチやピット幅を決定する際に、図1に示すように、単一周波数のピットの列を仮定し、再生用光スポットがトラック中心から一定量変移した位置を走査した時に得られる光検出器の出力信号の基本周波数成分の信号振幅をクロストークとし評価していた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】さらにデータを高密度に記録すべく、例えば、λ=405nmかつNA=0.85を想定して、上記の従来光ディスクの特定ピット形状を単純に換算すると、トラックピッチTP=0.301〜0.334μm、ピットの上部幅Wm=125〜188nm、ピットの下部幅Wi=80〜100nm、となる。このような従来技術で規定された光ディスクを再生すると、トラックピッチとピット幅の関係が最適値からずれるために、RF信号特性の優劣を示すクロストーク信号振幅及びメイン信号振幅が実用上問題にならない−9dBを上回ってしまい、充分なシステムマージンが確保できない問題がある。
【0008】そこで、本発明は以上の点を考慮してなされたもので、本発明は、より短波長の再生用光ビームでかつ、より高い開口数の光学系を用い、従来のDVDに比して高密度にデータを記録できる次世代の光ディスク及び情報再生装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の光ディスクは、情報が所定のトラックピッチでピットの列として記録された情報記録層と前記情報記録層上に形成された光透過層とを備え、対物レンズによって前記光透過層を介して前記情報記録層に照射される光ビームにより情報の再生が行われる光ディスクであって、前記トラックピッチをTP、最短ピット長をTmin、前記光ビームの波長をλ、前記対物レンズの開口数をNAとしたとき、0.194(λ/NA)2≦TP×Tmin≦0.264(λ/NA)2の関係を満たし、前記トラックピッチが0.280〜0.325μmの範囲で、ピットの幅が120nm以下であることを特徴とする。
【0010】本発明の光ディスクにおいては、前記ピットの底部幅が40nm以上であることを特徴とする。本発明の光ディスクにおいては、前記光ビームは波長λ=400〜415nmであり、前記対物レンズの開口数NAは0.78〜0.86であることを特徴とする。
【0011】本発明の光ディスク情報再生装置は、情報が所定のトラックピッチでピットの列として記録された情報記録層と前記情報記録層上に形成された光透過層とを備えた光ディスクを回転自在に支持する手段と、光ビームを射出する光源、光ビームを前記光ディスクの前記光透過層を介して情報記録層上に向け集光する対物レンズ、該光ビームを前記対物レンズに導く照射光学系、並びに、光検出手段を含み前記対物レンズを介して前記情報記録層からの反射光を前記光検出手段へ導く検出光学系、前記光検出手段からの出力に基づき前記光ディスクに記録されている情報を再生する手段と、を備える情報再生装置であって、前記光ディスクは、前記トラックピッチをTP、最短ピット長をTmin、前記光ビームの波長をλ、前記対物レンズの開口数をNAとしたとき、0.194(λ/NA)2≦TP×Tmin≦0.264(λ/NA)2の関係を満たし、前記トラックピッチが0.280〜0.325μmの範囲で、ピットの幅が120nm以下であることを特徴とする。
【0012】本発明の情報再生装置においては、前記ピットの底部幅が40nm以上であることを特徴とする。本発明の情報再生装置においては、前記光源は波長λ=400〜415nmの青色半導体レーザであり、前記対物レンズの開口数NAは0.78〜0.86であることを特徴とする。
【0013】上記の課題を解決するため、本発明者は、λ=405nm近傍,NA=0.85近傍のシステムとして適当な評価方法を考案し、それを用いて光ディスクシステムとしてより安定になるトラックピッチ及びピット幅の範囲を知見した。その結果、トラックピッチを0.280〜0.325μmかつピットの幅を120nm以下にする必要があることが分かった。このような光ディスクを再生すると、RF信号特性の優劣を示すクロストーク信号振幅/メイン信号振幅の値が実用上問題にならない−9dB以下になり、安定したシステムが実現できる。
【0014】
【発明の実施の形態】まず、本発明の基本的な考え方を説明する。発明者は、幅の狭いピットを作製するために電子ビームレコーダー(以下EBRと略す)を利用して光ディスクを製造した(Y.kojima, H.Kitahara, 0.Kasono, M.Katsumura and Y.wada: "HighDensity Mastering Using Electron Beam", Jpn.J.Appl.Phys.37 (1998) p2137-2143)。また、光学シミュレーションにより本発明の光ディスクシステムに最適なトラックピッチ及びピット幅を求めた。
【0015】光ディスクチルトがある場合に発生するコマ収差W31は以下の式で与えられる。
【0016】
【数1】

ここで、nは光ディスク基板の屈折率、Dthは光ディスク基板の厚さ、NAは開口数、Dtiはディスクチルト角、λは光ビームの波長である。従来のDVDでは、再生用光ビームが透過する基板の厚さが0.6mmであったために光ディスクの光ビームの光軸に対する傾き(いわゆるチルト)、特にラジアル方向のチルトによって生じるコマ収差がシステムの再生マージンを決定していた。ラジアルチルト特性が最も厳しいシステムの場合、クロストークが充分小さくなるようにトラックピッチ及びピット幅を最適化する必要があった。
【0017】本発明の光ディスクシステムで、光ディスクチルトによって生じるコマ収差を検討すると、図2に示すように、0.1mmの光透過層厚を用いた場合、今回の光ディスク(NA,λ)=(0.85,405nm)と従来のDVD(NA,λ)=(0.60,650nm)と比較して光ディスクチルトによって生じるコマ収差W31は小さくなっている。
【0018】一方、デフォーカス時の波面収差W20は以下の式で与えられる。
【0019】
【数2】

上記式から分かるように同じデフォーカス量Ddefに対して発生する収差量W20は、今回の光ディスク(NA,λ)=(0.85,405nm)とすることで、従来のDVDの(NA,λ)=(0.60,650nm)の時の約3.8倍になる(図3参照)。つまり、本発明の光ディスクシステムではデフォーカス特性がシステムの再生マージンを決定することになる。デフォーカス時には、クロストークが増加すると共に符号間干渉(接線方向のクロストークと解釈できる)も増加する。従って、デフォーカス特性が厳しい光ディスクシステムでは、クロストークと同時に符号間干渉が充分小さくなるようにトラックピッチ及びピット幅を最適化する必要がある。
【0020】通常、符号間干渉はメイン信号振幅を大きくすることで抑えることができる。そこで、本発明ではトラックピッチやピット幅を決定する際の計算モデルを次のように設定した。
(1)トラックピッチTPと最短ピット長Tminとの積が一定(すなわち記録密度が一定)という条件を付加する(以下、単にTP×Tminと記述する)。
【0021】(2)トラック中心からトラック間へ変移した再生用光スポットから得られる信号振幅を評価量とせずに、評価量をクロストーク信号振幅/メイン信号振幅とする。
(3)メイン信号を計算する際には、図4に示すように、最短ピット長のピットをトラック上に単一周期で配置した場合の値を用いる。最も符号間干渉が発生しやすい厳しい条件であるからである。また、クロストーク信号を計算する際には、図5に示すように、最長ピット長のピットをトラック上に単一周期で配置した場合の値を用いる。最もクロストークが発生しやすい厳しい条件であるからである。クロストーク信号振幅はトラック上からちょうどトラックピッチだけ離れた位置を再生ビームが走査した時の信号振幅とする。なお、ピットの断面形状はその側面の斜面幅が零、すなわち上面から底面へ傾斜が90度であるとする。ピットの断面斜面の角度がある場合は後述する。
【0022】このモデルを用いて(NA,λ)=(0.85,405nm)、TP×Tmin=0.044μm2の場合、トラックピッチ(track pitch)(μm)及びピット幅(nm)を変化させたときのクロストーク信号振幅/メイン信号心振幅(dB)の変化をシミュレーションにより求め、評価した。TP×Tmin=0.044μm2は(1,7)RLL変調の場合には直径12cmの光ディスクに約27GBのデータを記録することに相当する。これは、前述したようにHDTV映像を2時間30分記録するのに十分な密度である。
【0023】そのシミュレーション結果を、図6の3次元グラフに示す。図からトラックピッチ0.24〜0.36μmでピット幅10〜190nmの範囲でトラックピッチ0.3μm及びピット幅10〜40nm近傍で底値を示す分布が確認できる。同様に、図7にシミュレーション結果の等高線グラフを示す。クロストーク信号振幅/メイン信号振幅が−8〜−9dB(メイン信号に対してクロストーク信号が約1/3)以下であれば実用上ほとんど問題が無いと考えられる。一般に広いピット幅の方がメイン信号の絶対振幅が大きくとれるためにS/Nの抑制に有利になる。一般に広いトラックピッチの方がトラッキングサーボにとって有利である。つまり図7においてクロストーク信号振幅/メイン信号振幅が−9dB以下で、さらに、できるだけ右上方が望ましい。
【0024】以上のことから、実用上問題が無いと思われるトラックピッチとピット幅を選ぶと図7におけるAに示す太線内すなわちトラックピッチ0.27〜0.325μmとピット幅120μm以下の範囲になる。次に、TP×Tminの値を大きくした場合(つまり記録容量を小さくした場合)について確認計算を行った。
【0025】TP×Tminが0.050μm2及び0.060μm2の場合のシミュレーション結果を、図8及び図9の3次元グラフに示す。これら3次元グラフから、クロストーク信号振幅/メイン信号振幅の値の低いトラックピッチ及びピット幅の範囲の分布が拡がることが分かる。同様に、図8及び図9にそれぞれ対応する図10及び図11の等高線グラフから明らかなように、TP×Tminを大きくしても、図10及び図11におけるAに示す太線内すなわちトラックピッチ0.27〜0.325μmとピット幅120μm以下の範囲であればクロストーク信号振幅/メイン信号振幅の値は小さく維持できることが分かる。つまり、TP×Tmin=0.044μm2の時(記録容量27GB相当)の選択範囲に限定しておけば、TP×Tminを大きくした場合(つまり記録容量を小さくした場合)は全く問題ないことが分かる。
【0026】ここで、TP×Tminの値を(λ/NA)2用いて表すと、TP×Tmin=0.44μm2〜0.060μm2の範囲は、0.194(λ/NA)2〜0.264(λ/NA)2となる。以上のことから、TP×Tmin=0.194(λ/NA)2〜0.264(λ/NA)2の場合には、トラックピッチ範囲が0.270〜0.325μmでかつピット幅範囲が120nm以下とすることで、クロストークと符号間干渉とを実用上問題が無い程度に小さく抑えることができる。(1,7)RLL変調を用いると、上記範囲は直径12cmの光ディスクに約27.1〜19.9GBのデータを記録することに相当する。
【0027】次に、開口数NA及び光ビーム波長λが変化した時の影響を検討した。この際、TP×Tminは前述の検討で最も厳しい条件であった0.194(λ/NA)2とした。開口数NAが0.78及び0.86の場合すなわち(NA,λ)=(0.78,405nm)及び(NA,λ)=(0.86,405nm)の場合のシミュレーション結果を、図12及び図13の3次元グラフに示す。また、光ビーム波長λが415nm及び400nmの場合すなわち(NA,λ)=(0.85,415nm)及び(NA,λ)=(0.85,400nm)の場合のシミュレーション結果を、図14及び図15の3次元グラフに示す。これら3次元グラフから、クロストーク信号振幅/メイン信号振幅の値の低いトラックピッチ及びピット幅の範囲の分布が開口数NA及び光ビーム波長λが変化してもほぼ満たされることが分かる。同様に、図12〜図15にそれぞれ対応する図16〜図19の等高線グラフから明らかなように、特に、図16に示すNA=0.78にした時に、トラックピッチの下限を0.27μmから0.28μmへ狭める必要があることが分かる。それ以外は前述のトラックピッチ及びピット幅の範囲で問題ないことが分かる。
【0028】以上の結果をまとめると次のようなことが分かる。NA=0.78〜0.86でかつλ=400〜415nmを用いたシステムにおいて、TP×Tmin=0.194(λ/NA)2〜0.264(λ/NA)2の範囲では、トラックピッチ=0.280〜0.325μmでかつピット幅=120nm以下の範囲とすることで、クロストークと符号間干渉を実用上問題が無い程度に小さく抑えられる。
【0029】一方、再生専用光ディスク製造において、そのピットを描画するにはレーザビームレコーダー(以下LBRと略す)を用いていたが、LBRではピット幅=200nm程度のピットしか描画できない。しかし、EBRを用いれば、上記ピット幅を実現することができる。EBRを用いて作製したピットはLBRで作製したピットよりも、ピット斜面部の幅をかなり狭くすることができる。しかしながら、前述の検討で用いたモデルのように厳密には、ピットの上部幅(開口幅)と下部幅(底部幅)を同じにすることはできない。
【0030】そこで、ピットの上部幅を固定した時にピットの下部幅が狭くなってしまうことの影響を検討した。図20は、本発明の光ディスクにおけるピット形状を説明するための図である。この場合、ピット10の周縁は下り勾配の傾斜部となっており、底部はほぼ平坦となっている。11はピット10の光ディスク半径方向(トラック幅方向)の断面、12は光ディスク円周方向(トラック方向)の断面であり、Wmはピット10の上部開口のトラック幅方向の長さ(上部幅)、Wiはピット10の底部のトラック幅方向の長さ(下部幅)である。(NA,λ)=(0.85,405nm)かつTP×Tmin=0.194(λ/NA)2とし、図20に示すように、ピットの上部幅Wmを100nmに固定して、ピットの下部幅Wiを0〜100nmに変化させた。この光ディスクは、トラックピッチ=0.30μmかつ最短ピット長=0.147μmの光ディスクが対応する。
【0031】このシミュレーション結果を、図21のグラフに示す。図から分かるように、ピットの上部幅が固定されていれば、メイン信号振幅Main(Tmin)及びクロストーク信号振幅CrossTalk(Tmax)が同様に変化するので、ピットの下部幅が狭くなってもクロストーク信号振幅/メイン信号振幅の値(CrossTalk/Main)はほとんど変化しないことが分かる。
【0032】つまり、前述のトラックピッチ及びピット幅の範囲は、ピットの下部幅の値に依存せずに有効であることが分かる。しかしながら、ピットの下部幅をあまり狭くすると、再生専用光ディスク製造におけるピット描画時のバラツキが生じて、再現性のよいピット形状が得にくくなる。すなわち、原盤作成上凹部側面の傾斜角度の制御がレジスト材料の種類、膜厚分布、現像条件により変化する故に、難しくピット凹部の底部が形成されない場合が生じる。
【0033】以下に、ピットの下部幅を狭くすると安定したピットを形成することが難しい理由を詳述する。EBRによる光ディスクのマスタリングにおいては、原盤上にレジストを塗布し、これを回転させ、原盤上に電子ビームを照射して露光を行い、その後、レジストを現像することによって露光部にピットに相当する凹部を形成する。
【0034】図22及び図23の原盤断面の模式図に示すように、ピット凹部は通常、深さ方向に角度を持って形成される。この角度はレジストの種類だけでなく露光強度分布や現像プロセス等によっても変化するため、精密にコントロールするのが難しく、ある程度のバラツキを生じることは避けられない。図22及び図23はいずれもピット深さ64nmでピットの上部幅は110nmとして凹部側面の傾斜が変化した場合を表している。
【0035】図22は、側面傾斜が角度75度を中心に±10度変化した様子を示す。ピットの下部幅は側面傾斜が角度75度のとき76nmであり、65度では50nm,85度では99nmと傾斜に応じて変化する。一方、図23は側面傾斜が角度50度を中心に±10度変化した様子を示す。側面の傾斜角度が50度のときピットの下部幅は2.6nmとほぼ三角形状の断面になるため、傾斜角度が60度の場合はピットの下部幅が36nmとなるが、40度の場合は必要な64nm(λ/6.25)の深さまでピットが形成されていない。以上から、原盤製造においてピットの下部幅をあまり狭くすると、必要な深さのピットを安定して作製することが難しくなる。
【0036】原盤から作製したスタンパを用いて樹脂を射出成形する工程も、ピット幅が狭くなるに従い難しくなる。その限界を実験で調べた結果、ピットの深さ60nm(λ/6.66)で傾斜角度がほぼ90度のとき、最小幅は40nmであった。従って、ピットの下部幅は40nm以上で、ピットの上部幅がそれ以上であれば成形は可能と考えられる。以上より、ピットの下部幅を40nmと仮定して原盤断面を考えてみる。この場合は61度であり、それを中心に傾斜が士10度ばらついた場合を想定すると図24のようになる。このようにピットの下部幅が40nmの場合は製造のバラツキで傾斜が10度緩くなっても凹部の底が浅くなることはない。
【0037】以上の実験を繰り返した結果から、光ディスクにおけるピットの下部幅は40nm以上が必要があることが分かった。これまでの検討を全てまとめると、次のようなことが分かる。NA=0.78〜0.86,λ=400〜415nmを用いたシステムにおいて、TP×Tmin=0.194(λ/NA)2〜0.264(λ/NA)2の範囲では、トラックピッチ=0.280〜0.325μmかつピットの幅=120nm以下かつピットの下部幅=40nm以上にすれば、クロストークと符号間干渉を実用上問題が無い程度に小さく抑えた再生専用光ディスクを安定して製造することができる。ピットの幅はピットの最大幅である。
【0038】図25は、本発明による光ディスク情報再生装置装置の再生光学系のモデルであり、実施形態の一例の光ピックアップ装置を備えた光学式記録再生装置の概略を示す。光ピックアップは、波長が400nm〜415nm好ましくは405nm付近の短波長の青を射出する青色半導体レーザLD1を備えている。光ピックアップは、偏光ビームスプリッタ13、コリメータレンズ14、1/4波長板15及び2群対物レンズユニット16を備えている。以上の光照射光学系によって、半導体レーザLD1からのレーザビームは、コリメータレンズ14で平行光ビームにされ、偏光ビームスプリッタ13を経て、1/4波長板15を透過して、対物レンズユニット16によって、その焦点付近に置かれている光ディスク5に向けて集光され、光ディスク5の情報記録面のピット列上で光スポットを形成する。
【0039】以上の光照射光学系に加えて、光ピックアップはさらに検出レンズ17など光検出光学系を有しており、対物レンズユニット16、1/4波長板15及び偏光ビームスプリッタ13は光検出光学系にも利用されている。光ディスク5からの反射光は、対物レンズユニット16で集められ1/4波長板15を介して偏光ビームスプリッタ13によって検出用集光レンズ17に向けられる。検出レンズ17で集光された集束光は、例えば、シリンドリカルレンズ、マルチレンズなどの非点収差発生素子(図示せず)を通過して、光検出器の受光面19中心付近に光スポットを形成する。
【0040】また、光検出器の受光面19は復調回路30及びエラー検出回路31に接続されている。エラー検出回路31は対物レンズユニットのトラッキング制御及びフォーカス制御用のアクチュエータ26を含む機構を駆動する駆動回路33に接続されている。光検出器は、その受光面19中心付近に結像された光スポット像に応じた電気信号を復調回路30及びエラー検出回路31に供給する。復調回路30は、その電気信号に基づいて記録信号を生成する。エラー検出回路31は、その電気信号に基づいてフォーカスエラー信号や、トラッキングエラー信号や、その他サーボ信号などを生成し、アクチュエータの駆動回路33を介して各駆動信号を各アクチュエータに供給し、これらが各駆動信号に応じて対物レンズユニット16などをサーボ制御して駆動する。
【0041】次に、本発明による光ディスクの構造については、上記の如く規定されたエンボスピットを有するポリカーボネイトやアクリルなどの透光性の樹脂からなる円形基板の一方の面に、アルミニウムなどの反射膜が被着され、これらの上に光透過層が0.1mmの厚さで形成されている。光透過層側から読み取りが行われる。また、基板側を対向させて、熱硬化型など接着層により貼り合わせ両面ディスクとすることもできる。光ディスクの中央にはクランピングのための芯孔が開けられており、その周囲にクランピングゾーンが設けられている。
【0042】
【発明の効果】以上説明したように、本発明による光ディスクは、再生されるRF信号特性の優劣を示すクロストーク信号振幅/メイン信号振幅が実用上問題にならない−9dB以下に低減できるようなトラックピッチ及び幅の最適なピット形状を有するため、充分なシステムマージンが確保でき、DVDに比較して情報記録密度を飛躍的に高めることができる。
【出願人】 【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
【出願日】 平成12年8月11日(2000.8.11)
【代理人】 【識別番号】100079119
【弁理士】
【氏名又は名称】藤村 元彦
【公開番号】 特開2002−56539(P2002−56539A)
【公開日】 平成14年2月22日(2002.2.22)
【出願番号】 特願2000−244637(P2000−244637)