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【発明の名称】 磁気転写方法
【発明者】 【氏名】西川 正一

【氏名】臼杵 一幸

【氏名】青木 理史

【要約】 【課題】マスター担体からスレーブ媒体にサーボ信号のような情報信号の磁気転写を行う磁気転写方法におけるマスター担体とスレーブ媒体間の付着物による密着不良による信号抜けの範囲を小さくして信号品質を高める。

【解決手段】情報を担持したマスター担体3とスレーブ媒体2とを密着させて転写用磁界を印加して磁気転写を行うについて、マスター担体3と接触するスレーブ媒体2の背面には押圧支持部材5の押圧面5aとの間に、密着圧力印加時にスレーブ媒体2表面形状に追従変形し、マスター担体3からスレーブ媒体2の引き剥がし時に圧力印加前の表面性に復元する弾性特性を有する材料による弾性部材4を介在させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 情報信号が担持されたマスター担体とスレーブ媒体とを密着させて転写用磁界を印加して磁気転写を行う磁気転写方法において、前記スレーブ媒体の片面と前記マスター担体の情報担持面を接触させ、スレーブ媒体の背面には押圧支持部材の押圧面との間に、密着圧力印加時にスレーブ媒体表面形状に追従変形し、マスター担体からスレーブ媒体の引き剥がし時に圧力印加前の表面性に復元する弾性特性を有する材料を介在させることを特徴とする磁気転写方法。
【請求項2】 前記弾性特性を有する材料のヤング率は、5.0×10-5Pa以上、3.0×1010Pa未満の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の磁気転写方法。
【請求項3】 前記磁気転写時の印加圧力が、9.8×10-5Pa以上、4.9×10-3Pa未満の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気転写方法。
【請求項4】 前記弾性特性を有する材料の厚さが、0.1mm以上、6mm未満の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気転写方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、情報が担持されたマスター担体からスレーブ媒体へ磁気転写する磁気転写方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】磁気転写方法は、マスター担体とスレーブ媒体を密着させた状態で、転写用磁界を印加してマスター担体に担持した情報(例えばサーボ信号)に対応する磁気パターンの転写を行うものである。この磁気転写方法としては、例えば特開昭63−183623号公報、特開平10−40544号公報、特開平10−269566号公報等参照に開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記磁気転写方法による磁気転写時に、マスター担体とスレーブ媒体間に付着物が存在し、この付着部の付近でマスター担体とスレーブ媒体間に空間が発生して密着不良があると、磁気転写が起こらない領域が生じる。磁気転写が起こらないとスレーブ媒体に転写された磁気情報に信号抜けが発生して信号品位が低下し、記録した信号がサーボ信号の場合にはトラッキング機能が十分に得られずに信頼性が低下するという問題があった。
【0004】具体的には、図3に模式的に示すように、磁気転写時には、マスター担体3の情報担持面とスレーブ媒体2の磁気記録面とを接触させ、スレーブ媒体2の背面を押圧支持部材5で押圧密着させた状態で、図示しない磁界生成手段により転写用磁界を印加してサーボ信号等の情報を磁気的に転写記録するものである。しかし、上記マスター担体3またはスレーブ媒体2の表面に付着物P(粒子)が付着していると、マスター担体3とスレーブ媒体2間に密着圧力を印加した際に、押圧支持部材5の押圧面5aは剛体で平坦であることで付着物Pの周辺でマスター担体3とスレーブ媒体2間に隙間が発生し、この密着不良により付着物Pを中心とした略円形の広い信号抜け範囲Dで、マスター担体3の表面の磁性体による微細凹凸パターンに対応したスレーブ媒体2への磁気パターンの転写が行えずに転写不良、信号抜けが発生している。特に上記信号抜け範囲Dは付着物Pの大きさ(直径d)に対する比率が大きい広い範囲となっている。なお、上記付着物Pは、スレーブ媒体2の製造過程で発生する粉塵、塵埃がその表面に付着しているのが主な原因であることが分かった。
【0005】本発明はこのような問題に鑑みなされたもので、磁気転写における信号抜けの範囲を小さくして信号品質を向上するようにした磁気転写方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決した本発明の磁気転写方法は、情報信号が担持されたマスター担体とスレーブ媒体とを密着させて転写用磁界を印加して磁気転写を行う磁気転写方法において、前記スレーブ媒体の片面と前記マスター担体の情報担持面を接触させ、スレーブ媒体の背面には押圧支持部材の押圧面との間に、密着圧力印加時にスレーブ媒体表面形状に追従変形し、マスター担体からスレーブ媒体の引き剥がし時に圧力印加前の表面性に復元する弾性特性を有する材料を介在させることを特徴とするものである。
【0007】前記弾性特性を有する材料のヤング率は、5.0×10-5Pa以上、3.0×1010Pa未満の範囲が好ましい。前記磁気転写時の印加圧力が、9.8×10-5Pa以上、4.9×10-3Pa未満の範囲であることが好適である。また、前記弾性特性を有する材料の厚さが、0.1mm以上、6mm未満の範囲にあることが望ましい。
【0008】なお、上記磁気転写方法としては、最初にスレーブ媒体をトラック方向に直流磁化し、このスレーブ媒体と転写する情報に対応する微細凹凸パターンに磁性層が形成された磁気転写用マスター担体とを密着させてスレーブ媒体面の初期直流磁化方向と略逆向きの方向に転写用磁界を印加して磁気転写を行うものが好ましい。前記情報としてはサーボ信号が好適である。
【0009】
【発明の効果】上記のような本発明によれば、転写情報を有するマスター担体とスレーブ媒体とを密着させて転写用磁界を印加して磁気転写を行う際に、スレーブ媒体をマスター担体に押圧する押圧支持部材の押圧面とスレーブ媒体との間に、密着圧力印加時にスレーブ媒体表面形状に追従変形し、マスター担体からスレーブ媒体の引き剥がし時に圧力印加前の表面性に復元する弾性特性を有する材料を介在させたことにより、圧力を印加した際に弾性特性を有する材料が付着物の形状に変形し、付着物の周囲におけるマスター担体とスレーブ媒体間の隙間の形成範囲を狭くすることができ、信号抜けの発生範囲を小さくして転写信号品位を高めることができる。
【0010】前記弾性特性を有する材料のヤング率は、ヤング率が5.0×10-5Pa以上、3.0×1010Pa未満の範囲にあり、5.0×10-5Pa未満では、付着物に対して弾性特性を有する材料は変形するが、荷重除去後に弾性特性材料の表面が復元せず、次回以降のマスター担体とスレーブ媒体の完全な密着をとることができない。また、ヤング率が3.0×1010Pa以上では、付着物形状に弾性特性を有する材料が順応して変形しないため、付着物の周囲に広く空間が発生する。また、スレーブ媒体の表面性、マスター担体の耐久性の点からも好ましい。
【0011】前記磁気転写時の印加圧力が、9.8×10-5Pa以上、4.9×10-3Pa未満の範囲とし、または、弾性特性を有する材料の厚さが、0.1mm以上、6mm未満の範囲とすることで、さらに良好な磁気転写特性を確保することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の一つの実施の形態にかかる磁気転写方法の転写状態を示す図である。図2は本発明に係る磁気転写方法の基本態様を示す図であって、(a)は磁場を一方向に印加してスレーブ媒体を初期直流磁化する工程、(b)はマスター担体とスレーブ媒体とを密着して反対方向に磁界を印加する工程、(c)は磁気転写後の状態をそれぞれ示す図である。なお、各図は模式図でありその厚み等は実際の寸法とは異なる比率で示している。
【0013】図1において、磁気転写時には、マスター担体3の情報担持面に対してスレーブ媒体2の磁気記録面を接触させ、スレーブ媒体2の背面には押圧支持部材5の押圧面5aとの間に、弾性特性を有する材料による弾性部材4を介在させて密着圧力を印加し、このマスター担体3とスレーブ媒体2との密着状態で、図示しない磁界生成手段により転写用磁界を印加してサーボ信号等の情報を磁気的に転写記録する。
【0014】前記弾性部材4の材料は、ヤング率が5.0×10-5Pa以上、3.0×1010Pa未満の範囲にあり、密着圧力印加時にスレーブ媒体2の表面形状に追従変形し、マスター担体3からスレーブ媒体2の引き剥がし時に圧力印加前の表面性に復元する特性を備えている。
【0015】また、磁気転写時の印加圧力は、9.8×10-5Pa(5.0kgf/cm2)以上、4.9×1-3Pa(0.1kgf/cm2)未満の範囲である。マスター担体3とスレーブ媒体2との密着を確保するためには、両者に対する印加圧力を高めることが有効であり、9.8×10-5Pa未満の印加圧力では十分な密着性を確保することができず、信号抜けが多数発生することになる。圧力を高めるにしたがって信号抜けは著しく減少するが、4.9×10-3Pa以上の圧力を加えると、マスター担体3自体が破損、あるいはマスター担体3とスレーブ媒体2間に存在する付着物によりスレーブ媒体2が塑性変形することになる。
【0016】前記弾性部材4の厚さは、0.1mm以上、6mm未満の範囲である。この厚さが0.1mm未満のものでは、付着物による変形を吸収しきれず信号抜けが発生する。また、厚さが6mm以上のものでは、圧力印加時に弾性部材4が全体的に変形し、その変形によりスレーブ媒体2に位置ずれ等の好ましくない変形が発生する恐れがある。
【0017】そして、マスター担体3またはスレーブ媒体2の表面に付着物P(粒子)が付着している場合には、図1のように、マスター担体3とスレーブ媒体2とに密着圧力を印加した際に、弾性部材4のスレーブ媒体2を押圧する面が付着物Pの形状に変形し、スレーブ媒体2を付着物Pの形状に沿わせて押圧変形させ、付着物Pの周囲におけるマスター担体3とスレーブ媒体2間の隙間の形成範囲を狭くすることができ、この付着物Pの周辺におけるマスター担体3とスレーブ媒体2との密着不良による付着物Pを中心とした信号抜けの範囲Dを小さくして転写信号品位を高めることができる。上記信号抜け範囲Dは付着物Pの直径dに対する広がり率が小さくなる。
【0018】前記弾性部材4の具体的材料としては、シリコンゴム、ポリウレタンゴム、フッ素ゴム、ブタジエンゴム、テフロン(登録商標)ゴム、バイトンゴムなど一般的なゴムなどが使用できる。
【0019】ゴム硬度としては、10〜100の範囲のものを用いることができ、好ましくは40〜80の範囲である。ヤング率は5.0×10-5Pa〜3.0×1010Paの範囲が好ましいが、8.0×10-5Pa〜4.1×104Paの範囲がさらに好ましく、1.2×10-4Pa〜5.1×102Paの範囲が特に好ましい。
【0020】弾性部材4のスレーブ媒体2と接する面の形状は、マスター担体3と平行な平面形状、またはスレーブ媒体2側に凸形状に形成される。凸形状としては、円弧形状が好ましいが、いわゆる円錐形状であってもよい。円弧形状あるいは円錐形状の場合、中心と縁部の高さの差(凸部の高さ)は、弾性部材4の直径に対して5%以下が好ましい。
【0021】また、弾性部材4のスレーブ媒体2と反対側の背面全体を加圧手段の圧力が加わるようにしてもよいし、一部に弾性部材4の変形を吸収できる十分な間隙を設けてもよい。例えば弾性部材4の背面に設ける押圧支持部材5の押圧面5aを、中心位置付近を除いて押圧するように設けることにより弾性部材4の中心付近の変形(盛り上がり)が、この押圧面5aが接していない部分で起こり、スレーブ媒体2の中心部に大きな応力が集中することを防ぐことができる。
【0022】磁気転写方法の概要は次のようなものである。まず図2(a)に示すように、スレーブ媒体2に初期磁界Hinをトラック方向の一方向に印加して予め直流磁化(直流消磁)を行う。その後、図2(b)に示すように、このスレーブ媒体2の磁気転写面とマスター担体3の基板31の微細凹凸パターンに磁性層32が被覆されてなる情報担持面とを密着させ、スレーブ媒体2のトラック方向に前記初期磁界Hinとは逆方向に転写用磁界Hduを印加して磁気転写を行う。その結果、図2(c)に示すように、スレーブ媒体2の磁気転写面(トラック)にはマスター担体3の情報担持面の磁性層32の密着突部と凹部空間との形成パターンに応じた情報が磁気的に転写記録される。なお、このような磁気転写方法の詳細については、例えば、特願平11−117800号に記載した内容を参照されたい。
【0023】なお、上記マスター担体3の基板31の凹凸パターンが図2のポジパターンと逆の凹凸形状のネガパターンの場合であっても、初期磁界Hinの方向および転写用磁界Hduの方向を上記と逆方向にすることによって同様の情報が磁気的に転写記録できる。
【0024】前記基板31がNiなどによる強磁性体の場合はこの基板31のみで磁気転写は可能で、前記磁性層32(軟磁性層)は被覆しなくてもよいが、転写特性の良い磁性層32を設けることでより良好な磁気転写が行える。基板31が非磁性体の場合は磁性層32を設けることが必要である。
【0025】強磁性金属による基板31に磁性層32を被覆した場合に、基板31の磁性の影響を断つために、基板31と磁性層32との間に非磁性層を設けることが好ましい。さらに最上層にダイヤモンドライクカーボン(DLC)等の保護膜を被覆し、この保護膜により接触耐久性が向上し多数回の磁気転写が可能となる。DLC保護膜の下層にSi膜をスパッタリング等で形成するようにしてもよい。
【0026】また、スレーブ媒体2の両面に磁気転写を行う際には、片面ずつ別工程で磁気転写を行うものである。
【0027】次に、前記マスター担体3の作製について説明する。マスター担体3の基板31としては、ニッケル、シリコン、石英板、ガラス、アルミニウム、合金、セラミックス、合成樹脂等を使用する。凹凸パターンの形成は、スタンパー法、フォトファブリケーション法等によって行われる。
【0028】スタンパー法は、表面が平滑なガラス板(または石英板)の上にスピンコート等でフォトレジストを形成し、このガラス板を回転させながらサーボ信号に対応して変調したレーザー光(または電子ビーム)を照射し、フォトレジスト全面に所定のパターン、例えば各トラックに回転中心から半径方向に線状に延びるサーボ信号に相当するパターンを円周上の各フレームに対応する部分に露光する。その後、フォトレジストを現像処理し、露光部分を除去しフォトレジストによる凹凸形状を有する原盤を得る。次に、原盤の表面の凹凸パターンをもとに、この表面にメッキ(電鋳)を施し、ポジ状凹凸パターンを有するNi基板を作成し、原盤から剥離する。この基板をそのままマスター担体とするか、または凹凸パターン上に必要に応じて非磁性層、軟磁性層、保護膜を被覆してマスター担体とする。
【0029】また、前記原盤にメッキを施して第2の原盤を作成し、この第2の原盤を使用してメッキを行い、ネガ状凹凸パターンを有する基板を作成してもよい。さらに、第2の原盤にメッキを行うか樹脂液を押し付けて硬化を行って第3の原盤を作成し、第3の原盤にメッキを行い、ポジ状凹凸パターンを有する基板を作成してもよい。
【0030】一方、前記ガラス板にフォトレジストによるパターンを形成した後、エッチングしてガラス板に穴を形成し、フォトレジストを除去した原盤を得て、以下前記と同様に基板を形成するようにしてもよい。
【0031】金属による基板の材料としては、NiもしくはNi合金を使用することができ、この基板を作成する前記メッキは、無電解メッキ、電鋳、スパッタリング、イオンプレーティングを含む各種の金属成膜法が適用できる。基板の凹凸パターンの深さ(突起の高さ)は、80nm〜800nmの範囲が好ましく、より好ましくは150nm〜600nmである。この凹凸パターンはサーボ信号の場合は、半径方向に長く形成される。例えば、半径方向の長さは0.3〜20μm、円周方向は0.2〜5μmが好ましく、この範囲で半径方向の方が長いパターンを選ぶことがサーボ信号の情報を担持するパターンとして好ましい。
【0032】前記磁性層(軟磁性層)の形成は、磁性材料を真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の真空成膜手段、メッキ法などにより成膜する。磁性層の磁性材料としては、Co、Co合金(CoNi、CoNiZr、CoNbTaZr等)、Fe、Fe合金(FeCo、FeCoNi、FeNiMo、FeAlSi、FeAl、FeTaN)、Ni、Ni合金(NiFe)が用いることができる。特に好ましくはFeCo、FeCoNiである。磁性層の厚みは、50nm〜500nmの範囲が好ましく、さらに好ましくは150nm〜400nmである。また磁性層の下層に下地層として設ける非磁性層の材料としては、Cr、CrTi、CoCr、CrTa、CrMo、NiAl、Ru、C、Ti、Al、Mo、W、Ta、Nb等を用いる。この非磁性層は基板が強磁性体の場合における信号品位の劣化を抑制できる。
【0033】なお、磁性層の上にDLC等の保護膜を設けることが好ましく、潤滑剤層を設けても良い。また保護膜として5〜30nmのDLC膜と潤滑剤層が存在することがさらに好ましい。また、磁性層と保護膜の間に、Si等の密着強化層を設けてもよい。潤滑剤は、スレーブ媒体との接触過程で生じるずれを補正する際の、摩擦による傷の発生などの耐久性の劣化を改善する。
【0034】前記原盤を用いて樹脂基板を作製し、その表面に磁性層を設けてマスター担体としてもよい。樹脂基板の樹脂材料としては、ポリカーボネート・ポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル・塩化ビニル共重合体などの塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アモルファスポリオレフィンおよびポリエステルなどが使用可能である。耐湿性、寸法安定性および価格などの点からポリカーボネートが好ましい。成形品にバリがある場合は、バーニシュまたはポリッシュにより除去する。樹脂基板のパターン突起の高さは、50〜1000nmの範囲が好ましく、さらに好ましくは200〜500nmの範囲である。
【0035】前記樹脂基板の表面の微細パターンの上に磁性層を被覆しマスター担体を得る。磁性層の形成は、磁性材料を真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の真空成膜手段、メッキ法などにより成膜する。
【0036】一方、フォトファブリケーション法は、例えば、平板状の基板の平滑な表面にフォトレジストを塗布し、サーボ信号のパターンに応じたフォトマスクを用いた露光、現像処理により、情報に応じたパターンを形成する。次いで、エッチング工程により、パターンに応じて基板のエッチングを行い、磁性層の厚さに相当する深さの穴を形成する。次いで、磁性材料を真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の真空成膜手段、メッキ法により、形成した穴に対応した厚さで基板の表面まで磁性材料を成膜する。次いで、フォトレジストをリフトオフ法で除去し、表面を研磨して、ばりがある場合は取り除くと共に、表面を平滑化する。
【0037】次にスレーブ媒体2について述べる。スレーブ媒体としては塗布型磁気記録媒体、あるいは金属薄膜型磁気記録媒体を用いる。塗布型磁気記録媒体としては高密度フレキシブルディスクなどの市販媒体が挙げられる。金属薄膜型磁気記録媒体については、まず磁性材料としてはCo、Co合金(CoPtCr、CoCr、CoPtCrTa、CoPtCrNbTa、CoCrB、CoNi等)、Fe、Fe合金(FeCo、FePt、FeCoNi)を用いることができる。これは磁束密度が大きいこと、スレーブ媒体と同じ方向(面内記録なら面内方向、垂直なら垂直方向)の磁気異方性を有していることが、明瞭な転写が行えるため好ましい。そして磁性材料の下(支持体側)に必要な磁気異方性をつけるために非磁性の下地層を設けることが好ましい。結晶構造と格子常数を磁性層に合わすことが必要である。そのためにはCr、CrTi、CoCr、CrTa、CrMo、NiAl、Ru等を用いる。
【0038】以下に、本発明の磁気転写方法の実施例1〜8と比較例1,2を示し、その特性を評価した結果を表1に示す。
【0039】[実施例1〜8]この実施例1の磁気転写方法は、スレーブ媒体として塗布型媒体による市販の高密度フレキシブルディスク(Zip250)を使用し、ピーク磁界強度が398kA/m(5000Oe:スレーブ媒体のHcの2倍)となるように電磁石装置を用いて、初期磁化(直流消磁)を施した。このスレーブ媒体を、表1に示すように各実施例で異なるヤング率および厚さを有するゴム素材による弾性部材を用いてマスター担体に押圧密着させ、この状態で電磁石装置を用いて、199kA/m(2500Oe)の転写用磁界を初期磁界と逆方向に印加して磁気転写した。また、印加圧力を各実施例で表1に示すように変更している。
【0040】マスター担体はスタンパー法によって作製した。凹凸パターンを有するNi基板上に、FeCo30at%の磁性層を25℃で200nmの厚さに設けた。形成パターンは円盤中心から半径方向20mm〜40mmの位置までに、幅5μmで等間隔の放射状ラインを設け、ライン間隔は半径方向20mmの最内周位置で1.2μm間隔である。磁性層は直流スパッタ法を使用し、作成温度は25℃、Arスパッタ圧は1.5×10-4Pa(1.08mTorr)、投入電力は2.80W/cm2とした。
【0041】[比較例1,2]この比較例1,2の磁気転写方法は、実施例1〜8と同様のスレーブ媒体およびマスター担体を使用し、比較例1では弾性部材のヤング率が小さく、印加圧力および厚さは実施例1と同様であり、比較例2では弾性部材のヤング率が大きく、印加圧力および厚さは実施例4と同様である。
【0042】表1では、「信号抜け」すなわち密着性の評価方法として、磁気転写を行った後のスレーブ媒体を磁気現像液(シグマハイケミカル社製;シグマーカーQ)を10倍に希釈し、スレーブ媒体上に滴下、乾燥させ、現像された磁気転写信号端の変動量を評価することにした。サーボ信号部を微分干渉型顕微鏡で50倍の拡大率で、スレーブ媒体上に存在する信号抜けを無作為に10視野観測する。各信号抜け部に存在する付着物直径dと信号抜け部直径Dから、信号抜け部の広がり率Drel(=100×(D−d)/d)を算出する。平均Drelが10%未満の良好な値であれば「○」、10〜20%の可な値の範囲では「△」、20%を越えた不可な値であれば「×」として評価する。
【0043】また、「スレーブ媒体の表面性」の評価としては、磁気転写前のスレーブ媒体表面の表面粗さRa(Ra1)を測定する。各実施例、比較例の条件で、同一マスター担体とスレーブ媒体で1000回密着・剥離を繰り返す。密着・剥離後のスレーブ媒体表面の表面粗さRa(Ra2)を測定し、増加率Rin(=100×(Ra2−Ra1)/Ra1)を算出する。このRinが2%以下の良好な値であれば「○」、3〜5%の可な値の範囲では「△」、6%以上の不可な値であれば「×」として評価する。
【0044】さらに、「マスター担体の耐久性」の評価としては、各実施例、比較例の条件で、1000回密着・剥離を繰り返した後、マスター担体表面を微分干渉型顕微鏡で480倍の拡大率で、50視野ランダムに観測する。この50視野中に磁性層の摩耗、亀裂箇所が2カ所以上の良好な値であれば「○」、3カ所以上の不可な値であれば「×」として評価する。
【0045】表1の結果から分かるように、弾性部材のヤング率、厚さおよび印加圧力が適性範囲にある実施例1〜実施例8では、信号抜け評価は「○」または「△」であり、スレーブ媒体に転写された信号品位は良好である。また、スレーブ媒体表面性の評価も良好であり、マスター担体の耐久性については印加圧力が高い実施例6を除いて良好な結果である。特に、実施例1〜4では良好な結果が得られている。
【0046】これに対して、弾性部材のヤング率が過小な比較例1では、同じ圧力、厚さの実施例1に比べて、信号抜けが大きく不可な結果であり、スレーブ媒体の表面粗さもやや劣っている。また、弾性部材のヤング率が過大な比較例2では、同じ圧力、厚さの実施例4に比べて、信号抜けが大きく不可な結果であり、スレーブ媒体の表面粗さも劣っている。
【0047】
【表1】

【出願人】 【識別番号】000005201
【氏名又は名称】富士写真フイルム株式会社
【出願日】 平成12年8月14日(2000.8.14)
【代理人】 【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史 (外1名)
【公開番号】 特開2002−56530(P2002−56530A)
【公開日】 平成14年2月22日(2002.2.22)
【出願番号】 特願2000−245760(P2000−245760)