| 【発明の名称】 |
転写媒体およびこれを使用した磁気記録媒体 |
| 【発明者】 |
【氏名】堀江 潔
【氏名】伊藤 則之
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| 【要約】 |
【課題】コーティング方法を用いず、塗液中の溶剤を乾燥させるための熱、或いは残留溶剤によって引き起こされる被転写基材の変形を防止するとともに、OPカードの膜厚精度を高めることでカードの読取/書込時のエラーを防止することができ、かつ、十分な耐摩擦性、印字適正を有した磁気記録媒体を作製することができる転写媒体を提供する。
【解決手段】支持体2上に、剥離性を有する保護層兼受像層3、接着層4を順次設けてなる転写媒体1において、該保護層兼受像層が重合度600から2000の範囲内にある塩化ビニル樹脂を含有し、かつ融点が90℃以上の滑剤を1〜20重量%含有する組成で形成され、接着層は平均分子量5万以下のアクリル系樹脂を50重量%以上含有する組成で形成されている転写媒体である。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】支持体上に、剥離性を有する保護層兼受像層、接着層を順次設けてなる転写媒体において、該保護層兼受像層が重合度600から2000の範囲内にある塩化ビニル樹脂を含有し、かつ融点が90℃以上の滑剤を1〜20重量%含有する組成で形成され、接着層は平均分子量5万以下のアクリル系樹脂を50重量%以上含有する組成で形成されてなることを特徴とする転写媒体。 【請求項2】前記接着層の厚みは乾燥厚みにて0.1μm以上、前記保護層兼受像層の厚みは乾燥厚みにて0.4μm以上であり、かつ両層の合計厚みは乾燥厚みにて0.8μm以上9μm以下であることを特徴とする請求項1および2記載の転写媒体。 【請求項3】請求項1および2記載の転写媒体を、磁気記録層を含む基材に転写せしめてなる磁気記録媒体であって、磁気記録層上の非磁性層厚みが0.8μm以上9μm以下であることを特徴とする磁気記録媒体。 【請求項4】前記基材の磁気記録層は目視不可能な状態で隠蔽されてなることを特徴とする請求項4記載の磁気記録媒体。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、磁気情報を有する磁気記録カードを構成するための転写箔(転写媒体)に関し、更に詳しくはカード基材上に磁気テープを配し、更にこれを隠蔽し、印刷層、保護層を有するオーバープリントカード、特に顔写真等の個別画像情報を加工することが可能なオーバープリントカードを構成するための転写箔(転写媒体)及びこれを使用した磁気記録媒体に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、磁気記録媒体であるクレジットカードやキャッシュカードが広く利用されている。これらは、一般的に白色の塩化ビニル樹脂をコア材として用い、この両面もしくは片面に、所定の磁気テープをを所定位置に貼付した透明な塩化ビニル樹脂シートを重ねて加熱加圧プレスしたものを基材として用いたものである。欧州や米国では白色のコア材に印刷を施し、後に透明シートをプレスする構成をとっている。しかし日本国内では、これら諸外国と同様の構成のカードの他に、透明シートをプレス接着した後に、表面にデザイン等の絵柄印刷を施す構成のカードも使用されている。これは、日本国内のみで通用するJIS規格の磁気テープがカード表面に付与されているためである。すなわち、諸外国ではカード表面に磁気テープがないため、印刷はシートの内側でかまわないが、日本ではカード表面にJIS規格磁気テープを使用し、磁気情報の記録消去を行う必要があるため、この磁気テープが基材の最表層付近になければならず、結果として透明シートの外側に磁気テープを設けることになる。したがって、デザイン上でこの磁気テープを隠蔽するための印刷を透明シートの外側に施すことになるのである。 【0003】この透明シートの外側に印刷を施すカードをオーバープリントカード(以下、OPカード)と呼ぶことにする。 【0004】OPカードの作成手順は次の通りである。白色塩化ビニルコアの両面に、あらかじめ所定位置に磁気テープを貼付した透明塩化ビニルシートを重ね、加熱加圧プレスしてカード基材を得る。その後、磁気テープを隠すための隠蔽層、デザインのための印刷層、印刷面を保護するための保護層が設けられ、表面を平らにするためのプレスを再度行ってカード形状に打ち抜き、必要に応じて設けられるホログラムの箔転写、サインパネル転写及びエンボス工程を経て、OPカードとなる。 【0005】また、近年のクレジットカードの偽造・不正使用防止策の一つとして、カードに所有者の顔写真を入れる方法が取られている。これは、一般的に塩ビに染着しやすい昇華(熱移行)性の染料を用い、YMCの各色に塗り分けた昇華転写リボンをサーマルヘッド等で熱エネルギーを与え、個々の画像情報を記録していくものである。この様な使用をするOPカードにおいては、保護層上に別途受像層を設け、プレス加工を行い表面を平らにして製造されている。以上のことからわかるとおり、印刷層が透明シートの内側にあって十分に保護されている諸外国のカードとは異なり、日本のOPカードの耐性は非常に薄い保護層のみによって保たれているので、保護層の役割は非常に重要である。また、要求される磁気特性を得るため、隠蔽層、印刷層、保護層、場合により設けられる受像層の厚みは必要以上に厚くすることができず、さらに耐久性を増すことは困難になっている。 【0006】この保護層を設ける方法としてはいくつか考えられ、グラビア塗工系の方式とスクリーン印刷系の方式、さらにオフセット印刷系の方式がある。しかし、このうちスクリーン印刷系は膜厚制御が困難であるので、磁気出力変動率が大きくなるおそれがある。また、オフセット印刷系の方式では、主に紫外線硬化型のオフセットインキを使用するが、これは様々なものとの密着性が悪い。さらに、耐擦過性を向上させるために滑材成分を添加すると、ほとんどのものが密着不可能である。したがって、後工程となるホログラム箔の転写や受像層の塗工が非常に困難となってしまう。以上のことから、保護層を設ける方法としてグラビア塗工系の方式が用いられてきている。 【0007】しかしながら、上述のグラビア塗工系の方式によって保護層を設ける方法には様々な問題がある。まず、強い溶媒を多量に含む保護層の塗液を直接的に上から塗工するため、溶剤の浸透によって基材や印刷の歪みが生じやすい状況となる。また、溶剤が多量に含まれる塗液を塗工するので、塗工後には十分な乾燥が必要であるが、基材の塩化ビニルは熱変形を起こしやすいため、高温かつ長時間の乾燥は無理であり、結果として溶剤が残留し、密着性低下や樹脂の可塑化等の悪影響を及ぼす。さらには、磁気出力の変動率を安定させるためには塗膜の膜厚を安定させる必要があるが、枚葉のシートへの塗工では膜厚安定性にも限界があり、安定した塗膜は得られにくい上、膜厚の管理も容易でないという問題がある。 【0008】また、上述したグラビア塗工系の問題点に加え、以下の問題を有している。顔写真付きOPカードを製造する場合、顔写真等の画像データを入れる場所は顧客の仕様により、まちまちである。よって、受像層を形成する方式としては、印刷エリアの指定が容易であるスクリーン印刷法が採用されている。このスクリーン印刷法の欠点は、上述した膜厚の制御が困難であること以外にも、印刷版上に乗せたインキを印圧により印刷版を通過させ押し出す方式であるため、版乾きの問題を回避する方法として乾きにくい高沸点溶剤が使用される。すなわち、十分な乾燥を行うことが不可能であるカードにおいて、生乾きの印刷を行うことは、後々カード同士のブロッキング等様々な問題を引き起こす。 上記の問題を解決するために、近年では保護層の材料を塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂に変更し、保護層兼受像層とする構成も考えられている。しかしながら、十分な耐摩擦性・印字適性のバランスが取れないだけでなく、カード裏面のサインパネル材とのブロッキングが生じるため、十分に満足のいく構成は得られていない。 【0009】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、コーティング方法を用いないことで、塗液中の溶剤を乾燥させるための熱、或いは残留溶剤によって引き起こされる被転写基材(カード基材)の変形を防止するとともに、OPカードの膜厚精度を高めることでカードの読取/書込時のエラーを防止することができ、かつ、十分な耐摩擦性、印字適正を有することができる磁気記録媒体及びこれを作製するに用いる転写媒体を提供することである。 【0010】 【課題を解決するための手段】以上の課題を解決するため、本発明は保護層を直接グラビア法によって塗工するのではなく、別の支持体上に塗工した保護層を基材上に転写する方法をとっている。 【0011】これに使用する転写箔の構成を示す請求項1記載の発明は、支持体上に、剥離性を有する保護層兼受像層、接着層を順次設けてなる転写媒体において、該保護層兼受像層が重合度600から2000の範囲内にある塩化ビニル樹脂を含有し、かつ融点が90℃以上の滑剤を1〜20重量%含有する組成で形成され、接着層は平均分子量5万以下のアクリル系樹脂を50重量%以上含有する組成で形成されてなる事を特徴とする転写媒体である。 【0012】また、請求項2記載の発明は、前記接着層の厚みは乾燥厚みにて0.1μm以上、前記保護層兼受像層の厚みは乾燥厚みにて0.4μm以上であり、かつ両層の合計厚みは乾燥厚みにて0.8μm以上9μm以下であることを特徴とする請求項1および2記載の転写媒体である。 【0013】また、請求項3記載の発明は、請求項1および2記載の転写媒体を、磁気記録層を含む基材に転写せしめてなる磁気記録媒体であって、磁気記録層上の非磁性層厚みが0.8μm以上9μm以下であることを特徴とする磁気記録媒体である。 【0014】また、請求項4記載の発明は、前記基材の磁気記録層は目視不可能な状態で隠蔽されてなることを特徴とする請求項4記載の磁気記録媒体である。 【0015】 【作用】本発明によってなる転写媒体を用いることにより、カード基材及び印刷層上に直接溶剤を多量に含む塗液を塗工する必要がなくなるので、基材や印刷の歪みを防止することができる。また、塗工後の乾燥工程が不要となり、残留溶剤による密着性低下や樹脂の可塑化等の悪影響を防ぐことができる。さらに、別途受像層を設ける必要がなく、保護層兼受像層の塗工がロールの状態で加工可能になるため、膜厚管理が容易で高いレベルでの管理が可能となるので、磁気特性の変動を抑制することができ、工程の簡略化を図ることができる。 【0016】 【発明の実施の形態】図面を参照して本発明を詳細に説明する。図1は本発明の転写媒体(1)の構成を示す断面図である。転写媒体(1)は、支持体(2)上に保護層兼受像層(3)、接着層(4)の順に各層が形成されている。 【0017】図2は本発明の転写媒体(1)を被転写基材(21)上に転写し、磁気記録媒体(11)としてカード化した場合の一実施例を示す断面図である。磁気記録媒体(11)は、カード基材(12)として白色コア材(13)の両面に透明オーバーシート材(14)が積層されている。この透明オーバーシート材(14)の表面(図の上側)にJIS磁気テープ(15)が埋め込まれ、裏面(図の下側)にISO磁気テープ(20)が埋め込まれている。このJIS磁気テープ(15)が埋め込まれた面側に、隠蔽層(16)、印刷層(17)が設けられ、被転写基材(21)が形成されている。この被転写基材(21)上に、転写媒体(1)上の保護層兼受像層(3、19)および接着層(4、18)が転写されて構成されたのが磁気記録媒体(11)である。 【0018】支持体(2)としては厚みが安定しており、かつ耐熱性の高いポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを用いるのが一般的であるが、これに限るものではない。その他の材料としては、ポリエチレンナフタレート樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム等が耐熱性が高いフィルムとして知られており、同様の目的で使用することが可能である。また、他のフィルム、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、耐熱塩化ビニル等の材料でも、塗液の塗工条件、さらに言えば乾燥条件が許せば使用可能である。 【0019】次に、保護層兼受像層(3)および接着層(4)の組成について説明する。保護層兼受像層(3)は、支持体(2)との密着性が軽度のものであって、転写媒体(1)の加熱プレス転写後には容易に剥離する材料でなければならない。さらに、転写後は保護層としての役割と昇華転写による受像適性も果たさなければならない。さらには、保護層上へのホログラムの転写および転写後の密着性、あるいはエンボス加工時の適性も考慮される必要がある。 【0020】以上のことを全て満たす組成として、発明者らが検討を重ねた結果、保護層兼受像層(3)の組成としては、1)重合度が600から2000の範囲内にある塩化ビニル樹脂を含有する組成であること、2)融点が90℃以上の滑材成分を1〜20重量%含有する組成が好ましいことがわかった。 【0021】1)は、昇華(熱移行)性染料による染着が容易であること、サインパネル材とのブロッキング(変形)がしずらく強靱な皮膜であること、劣化がし難いこと、後加工(ホログラム等の転写性)のし易さ、である。昇華(熱移行)性染料による染着が容易である材料としては、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂に代表される塩ビ系材料が知られている。しかし、塩化ビニル樹脂に他成分を共重合する理由としては溶剤への溶解性・柔軟性を付与するためであり、取り扱いが容易になる反面、JISX6301(旧規格)に代表される接着性・粘着性の試験において、40℃90%RH環境に48時間、4.9KPa荷重にてブロッキング試験をした場合、カード裏面のサインパネル材(膜厚10μm程度)の段差が密着跡として変形してしまう。また、塩ビ系の材料を使用する場合、熱や光による劣化の問題が生じる。この劣化現象はポリ塩化ビニルが空気(酸素)に接して、熱や光(紫外線)に曝されると脱塩素を起こし、不安定な共役二重結合のポリエン構造を生じて変色し始める。さらには架橋や分子切断を誘発して分解・劣化を導き、黒変・脆化・発泡等を起こし、使用に耐えなくなる。 【0022】この劣化現象は、重合度が600未満の不安定な材料で顕著に現れ、構造的に安定な高分子材料を使用することが望ましい。また、重合度が2000を超える場合には各種溶剤への溶解性が乏しくなり、溶液のゲル化等の問題が発生し、加工性の問題を引き起こす。熱溶融押し出し法等で無溶剤による薄膜均一加工が可能である場合には、これに限定されるものでは無い。 【0023】後加工のし易さについて説明すると、ホログラムの転写箔はカード基材の最表面にある透明塩化ビニルシート上に転写され易い様に設計されているため、塩ビ系の材料を使用するのが望ましい。以上の理由から重合度600から2000の範囲内にある塩化ビニル樹脂を含有するのが好ましいことがわかった。 【0024】2)は、カードとして使用される場合、磁気ヘッドとの擦れが問題になる。一般的に、週に3回の割合で買い物をしてクレジットカードを使用することを考えると、一年当たりで150回、有効期限の5年間では750回、磁気ヘッドと擦れることになる。しかし、クレジットカードの利用時に通す、いわゆるCAT端末は、通常人間の手で通すので、カードと磁気ヘッドの当たり具合が均一でないため、さらにマージンを5倍程度見込むと、約4000回程度のヘッドパス耐性が必要と考えられる。この耐性を満たすため、ステアリン酸(融点70℃前後)、ステアリン酸メチル(融点40℃前後)、ステアリン酸エチル(融点30℃前後)、ステアリン酸亜鉛(融点120℃前後)、ステアリン酸ブチル(融点30℃前後)、ポリエチレンワックス(融点70〜140℃前後)、パラフィンワックス(融点−10〜70℃前後)、カルナバワックス(融点80℃前後)モンタンワックス(融点70〜100℃前後)、マイクロクリスタリンワックス(融点60〜100℃前後)、セラックワックス(融点60〜80℃前後)、サゾールワックス(融点100℃前後)、キャンデリラワックス(融点70℃前後)、ライスワックス(融点80℃前後)、木蝋(融点50℃前後)、蜜榔(融点60〜70℃)、ラノリン(融点40℃前後)、セレシン(融点50〜100℃前後)、テフロン(登録商標)パウダー(融点320℃前後)等から選択される滑材成分を1〜20重量%含有する組成が好ましいことがわかった。 【0025】滑材添加量が1重量%未満では、ヘッド擦れの耐性が低すぎ、20重量%を超えて添加すると、滑材成分が表面へブリードしてくるため、カード表面が不均一にマット化されて曇ったた状態になり、見た目の印象が悪くなってしまうだけでなく、ホログラムの転写・密着性が悪くなってしまう等の加工性悪化を引き起こす。 【0026】次に、昇華転写による画像の形成性であるが、染着性の良い塩ビ系樹脂に上記の滑剤を20重量%以下の含有率で添加したものを受像層として、画像の形成性を見たところ、滑剤の種類によって昇華リボンの貼り付きが発生した。これは、昇華転写リボンにサーマルヘッドから熱エネルギーを与え、染料を昇華(溶融)させ移行させるものであるため、受像層の樹脂中に含まれる滑剤の影響によって、受像層自体が溶融しやすくなり、リボンのバインダーとの接着性が増し、融着しやすくなったものと考えられる。滑剤の添加量を20重量%に固定し、滑剤の融点を変えて実験を行ったところ、融点が90℃を超える滑剤を使用することにより、昇華リボンとの貼り付きが起きなくなることを見いだした。上記の理由により、耐摩擦性及び昇華転写の受像適性を両方満足させるには、融点が90℃以上の滑材成分を1〜20重量%含有することが好ましい。 【0027】接着層(4)の組成としては、平均分子量5万以下のアクリル系樹脂を50重量%以上含む組成として用いる。アクリル系樹脂としては、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート等のアクリル酸及びそのエステル系樹脂、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート等のメタクリル酸及びそのエステル系樹脂、あるいはこれらにエチレン、プロピレン、ブタジエン、スチレン等を共重合した樹脂等が挙げられる。アクリル系樹脂が好ましい理由は、その下層として設けられる印刷層(17)が主に紫外線硬化型オフセットインキから構成されているためである。紫外線硬化型オフセットインキは、一般にアクリル酸系樹脂のモノマーやプレポリマーと紫外線照射によってラジカルを発生する光開始剤、および色材から構成される。したがって、樹脂の重合過程が樹脂製造時と塗工乾燥時に行われるという差はあるが、その成分は比較的似通ったものであり、密着性は比較的良好であるからである。しかし、単にアクリル系樹脂であれば密着するわけではない。 【0028】一般的に、紫外線硬化型樹脂の硬化過程においては、雰囲気中の酸素が重合反応を阻害して、表面のごく近傍1〜10nm程度の深さまでは硬化反応が完全には進行しないといわれている。この酸素阻害を防止するために、紫外線ランプ付近に窒素ガスを充填する方法も実際に採られているが、一般の印刷機ではそのような機能は付いていないことが多い。したがって、ほとんどの紫外線硬化型オフセットインキを使用した印刷物の表面は未反応の層が存在している。したがって、この未反応層の上に転写箔側の接着層(4)を熱で密着させようとしても、見かけ上は密着したように見えても、未反応層の強度が弱いため、強い力をかけると未反応層が破壊されて剥がれてしまう。そのため、熱で密着させる際には、この未反応層を超えて、下層の硬化層まで接着剤が浸透し、十分な密着をとることが必要である。 【0029】そこで、本発明においては、アクリル系樹脂のうち、平均分子量が5万以下の樹脂を使用することにより、加熱時の粘度ができるだけ低い状態で樹脂を浸透させることが可能である。したがって、接着層(4)と印刷層(17)の密着強度が十分な磁気記録媒体(11)を得ることが可能となる。 【0030】続いて、保護層兼受像層(3)と接着層(4)の厚みについて説明する。JIS磁気テープ(15)上の厚みを制限する要因は、主にヘッドパス耐性と磁気出力である。発明者らの実験によれば、ヘッドパス耐性は、保護層兼受像層(19)の組成が同じ場合には、厚いほど向上する。逆に、磁気出力はJIS磁気テープ(15)上の非磁性層の厚みが厚いほど低下する。そこで、市販されている磁気テープのうち高出力のテープを使用して、非磁性層の厚み、すなわち、隠蔽層(16)、印刷層(17)、接着層(18)、保護層兼受像層(19)の合計厚みを変化させて実験を行ったところ、非磁性層の合計厚みが9μm以下で磁気情報の読み取りテストが合格となった。一方、一般的に、隠蔽層(16)の厚みは2〜3μm、印刷層(17)の厚みは2〜3μmであるから、各平均値は2.5μm、合計で5μmと見積もることができる。したがって、接着層(18)と保護層兼受像層(19)の合計厚みの上限は4μm以下が適当であるという結果が得られた。 【0031】しかし、JIS磁気テープ(15)を隠蔽する方法としては、通常の銀ペーストを印刷する方法以外に、AlやSn等の金属や無機化合物を蒸着等の薄膜形成手段により成膜する方法もある。その場合には、実質的に隠蔽層(16)の厚みはほとんど0であるので、この場合は接着層(18)および剥離保護層(19)の合計厚みを9μm以下に設定すればよい。 【0032】また、同時に行った実験で、接着層(18)の厚みを変化させると、0.1μm以上の厚みがあれば十分な密着性が得られることがわかった。さらに、0.1μmの接着層(18)を用いて保護層兼受像層(19)の厚みを変化させたところ、合計0.5μmをきったところでヘッドパス耐性が5000回もたず、不合格という結果が得られ、保護層兼受像層(19)の厚みが0.4μm以下ではヘッドパス耐性が不合格となり、保護層兼受像層(19)の厚みが0.4μm以上必要であることが示された。しかし、ここで昇華転写の受像適性をみたところ、それぞれ必要な最低厚み、すなわち接着層(18)が0.1μm、剥離保護層(19)が0.4μmの組み合わせでは昇華転写リボンの貼り付きが一部発生した。これは下層の印刷層(17)、隠蔽層(16)に含まれる顔料や無機フィラー等の熱伝導性が悪いため、蓄熱効果により貼り付きを起こしたためである。よって、ある程度の距離をとることが必要となり、さらに実験を重ねた結果、両層の合計厚みは少なくとも0.8μmが必要であることが示された。 【0033】 【実施例】以下に、実施例を示す。[表1]に保護層兼受像層(3)(後述の比較例2の場合は保護層兼受像層(19))に使用する樹脂組成、[表2]に保護層兼受像層(3)および(19)に使用する滑剤組成、[表3]に接着層(4)(同接着層(18))の組成一覧を示した。なお、[表1]、[表3]とも溶剤に関しては記述していないが、受像兼接着層にはテトラヒドロフランを使用し((1)〜(3)は溶液であるため、除く)、接着層にはメチルエチルケトン/トルエンが溶媒として使用されており、固形分は10%以上に調製されている。[表4]には、保護層兼受像層3の樹脂組成品の溶解性・耐光性・耐熱性・耐変形性についてプレ評価した結果を記す。 【0034】 【表1】
【0035】 【表2】
【0036】 【表3】
【0037】 【表4】
【0038】価法は、溶解性については文字通り有機溶剤(THF)に塗工可能である10%以上の濃度にて溶解性(羽根攪拌にて1時間混ぜた後、24時間放置し状態観察)の確認を行い、ゲル化したものを不可とした。溶解性以外の項目は、上記作成した溶液を用い、ガラス板上に膜厚約5μmにて、ワイヤーバーを用いて形成し、カーボンアーク光灯にて500時間、80℃オーブン中に30日間放置し、それぞれ変退色のあったものを不可とした。耐変形性は、上記作成した樹脂層上に、裏面にサインパネル材が転写されたカードを重ね、40℃90%RH環境に48時間、4.9KPa荷重にて試験を行い、密着跡の付いた物を不可とした。 【0039】結果として、重合度2000を超えるものは溶液のゲル化により取り扱いが難しく、重合度600未満のものは耐光性・耐熱性において安定性に欠けるため使用不可である。また、共重合物は皮膜が柔軟となってしまうため、変形を起こしやすく使用不可である。よって、重合度600から2000の範囲内にある塩化ビニル樹脂を使用することが良いと示された。 【0040】<実施例1>・被転写基材の作成0.56mm厚の白色塩化ビニルコア材(13)の両面に0.1mm厚の透明塩化ビニルシート材(14)を重ねて、カード裏面となる側に保磁力23.7kA/mのISO磁気テープ(20)を仮止めし、カード表面となる側に保磁力51.4kA/m、残留磁束17nWb/cmのJIS磁気テープ(15)を仮止めし、全体を温度150℃、圧力2MPa、時間30分の条件にて加熱加圧プレスを行い、カード基材(12)を得た。続いて、隠蔽層(16)として、市販のアルミペーストスクリーンインキをスクリーン印刷法にて、3μm厚で全面に設けた。続いて、印刷層(17)として、市販の紫外線硬化型オフセットインキのプロセス4色である黄、紅、藍、墨にて絵柄を印刷し、紫外線ランプを照射してオフセットインキを硬化させ、被転写基材(21)を得た。この状態で、JIS磁気テープ(15)上の非磁性層の厚みは約5μmであった。 ・転写媒体の作成支持体(2)として表面未処理の25μm厚ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、この上に、[表1]中の組成(13)及び[表2]組成■〜■にて厚み1μmで保護層兼受像層(3)をグラビア法にて設けて乾燥させ、[表3]の組成(A)の接着層4を厚み0.5μmでグラビア法にて重ねて設けて乾燥させて、転写媒体(1)を得た。 ・カード化以上のようにして得た転写媒体(1)の接着剤面を被転写材(21)と重ね合わせ、温度100℃、圧力3MPa、時間15分の条件にて加熱加圧プレスを行い、磁気記録媒体(11)を得た。 【0041】<実施例2>・被転写基材の作成実施例1と同様に作成した。 ・転写媒体の作成実施例1と同様に、支持体(2)として表面未処理の25μm厚ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、この上に、[表1]中の組成(13)及び[表2]組成■にて厚み1μmで保護層兼受像層(3)をグラビア法にて設けて乾燥させ、[表3]の組成(A)〜(G)の接着層4を厚み0.5μmでグラビア法にて重ねて設けて乾燥させて、転写媒体(1)を得た。 ・カード化実施例1と同様にカード化した。 【0042】<比較例1>・被転写基材の作成実施例1と同様に作成した。 ・転写媒体の作成実施例1と同様に、支持体(2)として表面未処理の25μm厚ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、この上に、[表1]中の組成(13)及び[表2]中の組成■にて厚み0.3、0.4、0.7、3、4μmで剥離保護層(3)をグラビア法にて設けて乾燥させ、[表3]の組成(B)の接着層(4)を厚み0.1、0.3、0.5、1.0μmでグラビア法にて重ねて設けて乾燥させて、転写媒体(1)を得た。 ・カード化実施例1と同様にカード化した。 【0043】<比較例2>・被転写媒体の作成実施例1と同様に作成した。 ・カード化比較例2では、保護層兼受像層(19)および接着層(18)を転写媒体とせず、被転写基材(21)に直接ロールコータにて塗工した。まず、被転写基材(21)上に[表3]組成(B)のインキを約2μm厚設定で設け、40℃、30分間乾燥させ、続いて[表1]組成(13)及び[表2]組成■のインキを同じく約2μm厚設定で設け、同様に乾燥させた。膜厚を測定してみると、最も薄い部分で両層の合計が2μm、最も厚い部分で5μmであり、膜厚安定性が低かった。 【0044】<評価方法>それぞれ作成した被転写媒体(磁気記録媒体)を、次のように評価した。ヘッドパス耐性は、LTS105ヘッドパス評価機(フォルマントエンジニアリング社製)を使用し、5000回の往復試験を行い、表面を目視観察した。この際、JIS磁気テープ15が露出しているものを不合格とした。転写箔密着性は、密着させたニチバンセロテープ(登録商標)を90度方向に一気に剥離し、剥離が見られたものを不合格とした。ホログラム密着性は、150℃、9.8MPaにて転写したホログラム転写箔上にニチバンセロテープを密着させ、90度方向に一気に剥離し、剥離が見られたものを不合格とした。磁気読み取りは、JSC112ジッタ出力分析装置(フォルマントエンジニアリング社製)を用いて、210BPI、60mAの書き込み電流で磁気データを書き込み、これをアンプゲイン100倍にて読みとった際に、平均出力が6V未満であったものを不合格とした。昇華転写による受像適性評価は、市販の昇華転写型カードプリンタ(凸版印刷社製CP1000)を用いて、サーマルヘッド電圧10Vにて画像を形成し、昇華転写リボンの貼り付きがあったものを不合格とした。 【0045】<評価結果>評価結果を[表5]に示した。 【0046】 【表5】
【0047】実施例1に関しては、保護層兼受像層(19)の組成が、融点90℃を超えた場合に良好な受像適性が得られるという結果が得られた。実施例2に関しては、接着層(18)の組成が平均分子量5万を超えた時点で、転写適性及びホログラムの密着性が低下するという結果が得られた。比較例1では、保護層兼受像層(19)の厚みが0.4μm未満であるとヘッドパス耐性が低下すること、および保護層兼受像層(19)と接着層(18)の合計厚みが4μmを超えると磁気読み取りが不良となること、さらに両層の合計厚みが0.8μmを下回ると受像適性が低下することが示された。比較例2では、転写媒体(1)を用いず、従来通りの塗工方式により磁気記録媒体(11)を作成したが、大量の溶剤を含む塗液を二度塗工かつ乾燥させることや膜厚管理が困難なことから、ヘッドパス耐性はよかったものの、転写箔密着性、ホログラム密着性および磁気読み取りに関してはバラツキが大きく、安定しなかった。上に述べた不良部分以外の組み合わせでは、いずれも評価結果は合格で、目標とする転写媒体(1)および磁気記録媒体(11)が得られたことを示された。 【0048】 【発明の効果】以上詳述したとおり、本発明によってなる転写媒体を用いることにより、カード基材上に直接溶剤を多量に含む塗液を塗工する必要がなくなるので、基材や印刷の歪みを防止することができる。また、塗工後の乾燥工程が不要となり、残留溶剤による密着性低下や樹脂の可塑化等の悪影響を防ぐことができる。さらには、膜厚管理が容易で高いレベルでの管理が可能となるので、磁気特性の変動を抑制することができる上、転写後の安定したヘッドパス耐性及び昇華転写による受像適性を得ることができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003193 【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年8月10日(2000.8.10) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2002−56523(P2002−56523A) |
| 【公開日】 |
平成14年2月22日(2002.2.22) |
| 【出願番号】 |
特願2000−242132(P2000−242132) |
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