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【発明の名称】 媒体基板及びその製造方法
【発明者】 【氏名】山本 憲郎

【要約】 【課題】磁気記録媒体等の製造に好適で、製造が低コストで容易にかつ安定に可能であり、しかもCSS特性と磁気ヘッドの低浮上特性の両方を同時に満足させることができるテクスチャ付きの媒体基板を提供すること。

【解決手段】シリカを主成分として含有するホウ珪酸ガラスからなりかつ多孔質構造に由来する連続したテクスチャがその表面に施されているように構成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 磁気記録媒体等において支持体として使用されるものであって、シリカを主成分として含有するホウ珪酸ガラスからなりかつ多孔質構造に由来する連続したテクスチャがその表面に施されていることを特徴とする媒体基板。
【請求項2】 前記ホウ珪酸ガラスの多孔質構造が、当該ガラスの熱処理による分相とそれに続く酸処理による成分溶出によって形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の媒体基板。
【請求項3】 シリカを主成分として含有するホウ珪酸ガラスからなりかつ多孔質構造に由来する連続したテクスチャをその表面に有している媒体基板を製造するに当って、円盤状のホウ珪酸ガラスを熱処理して分相させ、次いで分相後のガラスを酸処理して分相成分を溶出させ、多孔質化することによって製造することを特徴とする媒体基板の製造方法。
【請求項4】 前記ホウ珪酸ガラスを600〜700℃の温度で5〜24時間にわたって熱処理し、前記多孔質構造の細孔径を5〜250nmの範囲に制御することを特徴とする請求項3に記載の媒体基板の製造方法。
【請求項5】 前記ホウ珪酸ガラスを熱処理して分相させた後、磁気ヘッドのランディングゾーン以外の領域にマスキング要素を存在させた状態で前記酸処理を行い、前記ランディングゾーンのみを選択的に多孔質化することを特徴とする請求項3に記載の媒体基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は媒体技術に関し、さらに詳しく述べると、磁気記録媒体等において支持体として使用することのできるテクスチャ付き表面を有する媒体基板とその製造方法に関する。本発明はまた、そのような媒体基板を使用した磁気記録媒体とその製造方法、そしてそのような磁気記録媒体を組み込んだ磁気ディスク装置に関する。磁気ディスク装置として、特に、改良型ヘッド/ディスク・インターフェース(HDI)及びデータ・リードバック信号を有する固定ディスク・ドライブを挙げることができる。
【0002】
【従来の技術】周知のように、コンピュータの外部記憶装置として各種の磁気ディスク装置が用いられている。磁気ディスク装置では、ディスクの上を磁気ヘッドが超低空で浮上しながら、データの記録再生を行う。また、この記録再生のため、ディスクが静止している時に磁気ヘッドがディスク表面に接触し、ディスクが起動したり停止したりする時に磁気ヘッドがディスク表面を接触しながら摺動する方式、いわゆるCSS(Contact Start Stop)方式が多く採用されている。
【0003】CSS方式で使用される磁気ディスクでは、ディスクの起動及び停止時に生じるスティクション(ヘッドがディスク表面に吸着される現象;ディスクの回転不能やヘッド支持系の変形・破壊を引き起こすことがある)の防止や、ヘッドとの摩擦力の低減のために、テクスチャと呼ばれる適度に微細に粗れた表面凹凸が形成されている。
【0004】磁気ディスク上におけるテクスチャの形成(すなわち、テクスチャリング)は、いろいろな方法によって行われている。一般的な方法は、研磨テープや研磨スラリーを使用したメカニカル方式である。例えば、Ni−P基板の表面にテクスチャを形成する場合、粗目の研磨テープを用いて基板の表面に円周方向に延在するキズを形成した後、微細なテープを用いてラッピング処理することができる。しかし、この方法の場合、研磨砥粒がテープに固定されているため、バリが発生しやすいという問題があり、また、バリを取り除こうとすると、オーバーラッピングとなりやすい。
【0005】また、高記録密度化に対応するため、Ni−P基板に代えてガラス基板、セラミック基板等が多用されている。しかし、このような基板は一般的に脆性がなく、硬度が大きいので、上述のようなメカニカル方式でテクスチャを付与した場合、基板が損傷したり欠けたりする問題が発生する。また、この方式では基板表面の凹凸形状を精密に制御することができず、CSS特性と磁気ヘッドの低浮上特性の両方を同時に満足させることが非常に難しい。
【0006】また、例えば、米国特許第5,108,781号明細書には、NiPめっき付きのアルミニウム基板を用意して研磨した後、その研磨基板の表面にレーザー加熱によってテクスチャを付与することが記載されている。この方法によると、得られる磁気ディスクの保護膜が基板のテクスチャを複製するので、ヘッド(スライダ)がディスクの保護膜上で停止している際のスティクションを減少させることができる。しかし、この方法では、基板を研磨し、さらにレーザーテクスチャリングを行うことが必須であり、ディスク製造の工程が煩雑になるばかりでなく、製造コストも増大する。
【0007】一方、米国特許第5,053,250号明細書には、ディスク基板上に凹凸をもった下地層をその場(in-situ )で形成する方法が記載されている。すなわち、この方法によると、加熱された基板上に低融点金属(例えば、ガリウム)をスパッタリングによって付着させ、低融点金属の不連続な液体球からなる下地層(しま模様の凹凸構造物)を形成する。液体球が凝固した後、その凹凸をもった下地層の上に磁気記録膜及び保護膜を順次形成すると、下地層表面の凹凸が複製され、ディスクのヘッド/ディスク界面にテクスチャ付き表面が完成する。しかし、この方法では、下地層の形成等のテクスチャリング加工の条件を入念にコントロールしないと、得られる磁気記録膜の結晶成長に悪影響を及ぼす可能性がある。また、この方法では、その表面凹凸の大きさや周期が小さく、また凹部の高さの分布が揃いすぎているために、摩擦係数がそれほど小さくならず、CSS特性は必ずしも満足なものではない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記したような従来のテクスチャリング加工技術のいろいろな問題点を解決することにある。本発明の目的は、高密度記録が可能な磁気記録媒体等の製造に好適で、製造が低コストで容易にかつ安定に可能であり、しかもCSS特性と磁気ヘッドの低浮上特性の両方を同時に満足させることができるテクスチャ付きの媒体基板と、その製造方法を提供することにある。
【0009】本発明の上記した目的及びその他の目的は、以下の詳細な説明から容易に理解することができるであろう。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記した目的を達成するために鋭意研究した結果、基板の材料にシリカを主成分として含有するホウ珪酸ガラスを選択するとともに、そのガラスを熱処理して分相させ、さらに続けて酸処理して、細孔テクスチャを形成するのが有効であるということ、また、形成される細孔テクスチャの密度や大きさは、熱処理温度及び時間のコントロールを通じて容易に制御可能であるということを見い出し、本発明を完成した。
【0011】本発明は、その1つの面において、磁気記録媒体等において支持体として使用されるものであって、シリカを主成分として含有するホウ珪酸ガラスからなりかつ多孔質構造に由来する連続したテクスチャがその表面に施されていることを特徴とする媒体基板にある。また、本発明は、そのもう1つの面において、シリカを主成分として含有するホウ珪酸ガラスからなりかつ多孔質構造に由来する連続したテクスチャをその表面に有している媒体基板を製造するに当って、円盤状のホウ珪酸ガラスを熱処理して分相させ、次いで分相後のガラスを酸処理して分相成分を溶出させ、多孔質化することによって製造することを特徴とする媒体基板の製造方法にある。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明による媒体基板は、磁気記録媒体(磁気ディスク)やその他の記録媒体あるいは別種の媒体において支持体として使用されるものである。典型的には、磁気ディスクの基板が挙げられるが、表面にテクスチャを有することを必要とするいかなるタイプの媒体にも、本発明の基板を有利に使用することができる。以下、特に磁気ディスクの基板を参照して本発明を説明する。
【0013】図1は、本発明による媒体基板を模式的に示した断面図である。基板1は、シリカを主成分として含有するホウ珪酸ガラスからなり、その表面には、基板に形成された多孔質構造(細孔aの分布による)に由来する連続したテクスチャが付けられている。多孔質構造は、通常、図示のように基板1の表面部位にのみ形成される。このような多孔質構造の選択的形成は、以下に詳細に説明するけれども、本発明に従いホウ珪酸ガラスを熱処理によって分相させ、さらに酸処理を行うことによって達成することができる。
【0014】基板1の表面のテクスチャは、いろいろな形状を有することができ、例えば、波形、鋸歯形、台形など、あるいはそれらの組み合わせであることができる。また、このようなテクスチャのサイズ(ここでは、国際標準化機構ISOの技術委員会TC57で規定している表面粗さ、すなわち、中心線平均粗さRaをいう)も、媒体基板の使途などに応じて広く変更することができるけれども、磁気ディスクの基板として使用する場合、通常、約1〜10nmの範囲である。本発明では、基板表面が微細な多孔質構造を有しているので、表面粗さRaが1nmの如く小さい値であっても十分に満足し得る作用効果を得ることができ、スティクションが発生することもない。表面粗さRaが10nmを上回ると、複製された突起が大きくなりすぎ、ヘッドの浮上を保証することができなくなる場合もある。
【0015】本発明の媒体基板では、各種のホウ珪酸ガラスを使用することができるけれども、特に、Na2 O、B2 3 及びSiO2 を出発物質として形成されたホウ珪酸ガラス、すなわち、ソーダホウ珪酸ガラスを有利に使用することができる。ソーダホウ珪酸ガラスは、好ましくは、次のような組成:Na2 O 10〜30質量%、B2 3 10〜30質量%、及びSiO2 50〜80質量%、を有している。特に好ましいソーダホウ珪酸ガラスは、10質量%のNa2 O、30質量%のB2 3 及び60質量%のSiO2 からなっている。
【0016】本発明の媒体基板では、上記したようなソーダホウ珪酸ガラスとならんで、Li2 O、B2 3 及びSiO2 を出発物質として形成されたホウ珪酸ガラス、すなわち、リチウムホウ珪酸ガラスも有利に使用することができる。リチウムホウ珪酸ガラスは、好ましくは、次のような組成:Li2 O 5〜30質量%、B2 3 10〜30質量%、及びSiO2 50〜80質量%、を有している。特に好ましいリチウムホウ珪酸ガラスは、5質量%のLi2 O、30質量%のB2 3 及び66質量%のSiO2 からなっている。
【0017】ホウ珪酸ガラスからなる本発明の媒体基板の多孔質構造は、ホウ珪酸ガラスの熱処理による分相とそれに続く酸処理による成分溶出によって形成することができる。この連続した2工程を図2を参照して説明する。なお、図2は、Na2 O、B2 3 及びSiO2 を出発物質として形成されたソーダホウ珪酸ガラスの多孔質化の例であり、それぞれの工程のレプリカのTEM(透過型電子顕微鏡写真)をスケッチしてある。
【0018】まず、ソーダホウ珪酸ガラスのブロックを作製し、ディスクに好適な厚さにスライスした後に粗研磨及びポリッシングを行う。工程(a)は、ポリッシング後のガラス板1の表面の状態を模式的に示したものであり、なんらの変化も認められない。次いで、ガラス板1をその分相に適当な温度で熱処理する。熱処理温度及び時間は、使用するホウ珪酸ガラスの種類などに応じて広く変更することができるというものの、通常、約500〜700℃の温度で約5〜24時間である。所定の時間の経過後、ホウ珪酸ガラスの分相が起こり、工程(b)に示すように、SiO2 からなる海9bのなかに虫食い状態でNa2 O−B2 3 の島9aが形成される。
【0019】上記のようにして分相ガラスを形成する場合に、本発明では、熱処理温度及び時間をコントロールすることによって、最終的に得られる多孔質化ガラスの表面のテクスチャ状態を任意に制御することができる。実際、同じ熱処理温度(例えば、650℃)でも、熱処理時間を延長するにつれて、分相状態をより顕著に発現させることができる。例えば、3時間の熱処理ではさほど分相が進行しなかったものが、6時間が経過すると顕著になり、10時間の経過でも分相領域が拡大し、15時間、25時間と延長するにつれてさらに拡大する。
【0020】上記のようにして分相ガラスを形成した後、ガラス板1を酸処理する。酸処理には、硝酸、硫酸、塩酸、酢酸などの酸の希釈した水溶液を有利に使用することができる。特に硝酸を有利に使用することができる。酸処理は、いろいろな手法を使用して行うことができるが、通常、選ばれた酸の溶液の浴中にガラス板を所定の時間にわたって浸漬して行うのが有利である。酸溶液の酸の濃度は、広く変更することができるというものの、通常、約2〜10体積%の範囲であり、特に5体積%前後の濃度を適用することが好ましい。また、このような酸溶液は、処理効果を高めるため、通常、約50〜100℃の温度に高めた状態で使用するのが好ましい。具体的には、例えば、約70℃に保った硝酸水溶液中にガラス板を約1時間にわたって浸漬する。酸処理の結果、分相ガラス中のNa2 O−B2 3 が硝酸水溶液に徐々に溶け出し、工程(c)に示すように、Na2 O−B2 3 の島に対応する細孔aが形成される。すなわち、最終的には、実質的にSiO2 のみからなる多孔質のガラス板(媒体基板)1が完成する。細孔aの孔径は、約5〜250nmの範囲である。また、媒体基板の表面粗さRaは、前述のように、通常、約1〜10nmの範囲である。但し、本発明の媒体基板では、もしも本発明の作用効果に悪影響などがでないならば、10nmを上回る表面粗さRaを備えていてもよい。この媒体基板は、純度99%以上のSiO2 ガラスからなっているため、耐水性及び耐候性が良好である。
【0021】本発明の媒体基板において、その表面部位に上記のようにして形成される連続したテクスチャは、その基板の表面に全面的に形成されていてもよく、さもなければ、部分的に形成されていてもよいが、高性能な媒体の製造のためには、後者の方が好ましい。特に、基板表面のランディングゾーンのみに多孔質構造に由来のテクスチャを設けることが好ましい。
【0022】基板表面のランディングゾーンのみにおける多孔質テクスチャの形成は、いろいろな技法を使用して実施することができるけれども、通常、半導体装置の製造などで広く使用されているレジスト法を使用して実施するのが好ましい。例えば、上記のようにして分相ガラスを形成した後、ランディングゾーン以外の領域を耐酸性に優れたフォトレジストでマスクした状態でガラス板を酸処理する。酸処理の完了後にフォトレジストを溶解除去すると、ランディングゾーンのみにテクスチャを有する基板が得られる。フォトレジストやその溶解除去剤は、それぞれ、半導体装置の製造等の分野で一般的に使用されているものを利用することができる。
【0023】本発明は、そのもう1つの面において、本発明の媒体基板を支持体として使用した磁気記録媒体にある。本発明の磁気記録媒体は、それが本発明の媒体基板を使用する限りにおいて特に限定されるものではなく、したがって、当業者に容易に理解されるように、いろいろな層構成を有することができる。本発明の磁気記録媒体は、好ましくは、非磁性基板上に少なくとも1層の磁性金属材料からなる磁気記録膜を設けてなる磁気記録媒体であって、前記基板が、本発明に従いシリカを主成分として含有するホウ珪酸ガラスからなりかつ多孔質構造に由来する連続したテクスチャをその表面に有していることを特徴としている。以下、下記の説明によって限定されるものではないけれども、図3の基本構成を参照して本発明の磁気記録媒体を説明する。
【0024】本発明の磁気記録媒体10は、非磁性のガラス基板1、下地層2、磁気記録膜(磁気層、磁性層などともいう)3、カーボン保護膜4、そして潤滑剤層5を少なくとも有しており、しかし、本発明の範囲内において種々の変更、例えば、磁気記録膜3の多層化、中間層の追加などを行うことができる。実際、現用の磁気記録媒体の層構成は、非常に複雑になっている。
【0025】本発明の磁気記録媒体において、非磁性のガラス基板は、本発明の媒体基板に相当するもので、上述の通り、シリカを主成分として含有していて、多孔質構造をもったホウ珪酸ガラス、好ましくはソーダホウ珪酸ガラス又はリチウムホウ珪酸ガラスからなっている。また、このようなホウ珪酸ガラスの多孔質構造は、当該ガラスの熱処理による分相とそれに続く酸処理による成分溶出によって形成されたものである。さらに、このようなガラス基板上の連続したテクスチャは、ホウ珪酸ガラスからなる基板の表面に選択的に形成されているのが好ましい。このような基板とその製造方法は、前記した通りである。
【0026】非磁性のガラス基板の上の下地層は、常用の磁気記録媒体において一般的な非磁性金属材料から形成することができ、好ましくは、クロムを主成分とする非磁性金属材料から形成することができる。下地層は、単層であっても2層もしくはそれ以上の多層構造であってもよい。多層構造の下地層の場合、それぞれの層の組成は任意に変更することができる。かかる下地層は、特に、クロムのみを主成分とする金属材料あるいはクロム及びモリブデンを主成分とする金属材料から有利に構成することができる。例えば、磁気記録媒体の磁気記録膜に白金が含まれるような場合には、クロム及びモリブデンを主成分とする金属材料から下地層を構成のが好ましい。すなわち、モリブデンの添加によって、格子面間隔を広げることができ、また、磁気記録膜の組成、特に白金量によって広がる磁気記録膜の格子面間隔に対して下地層の格子面間隔を近くしてやることにより、磁気記録膜(CoCr系合金)のC軸の面内への優先配向を促すことができるからである。適当な下地層の材料の例として、例えば、Cr、CrW、CrV、CrTi、CrMoなどを挙げることができる。
【0027】上述のような下地層は、好ましくは、例えばマグネトロンスパッタ法などのスパッタ法により、一般的な成膜条件により形成することができる。特に、保磁力を高めるため、DC負バイアスの印加下にスパッタ法を実施するのが好ましい。適当な成膜条件として、例えば、約100〜300℃の成膜温度、約1〜10mTorrのArガス圧力、そして約100〜300VのDC負バイアスを挙げることができる。また、必要に応じて、スパッタ法に代えて、他の成膜法、例えば蒸着法、イオンビームスパッタ法等を使用してもよい。かかる下地層の膜厚は、種々のファクタに応じて広い範囲で変更することができる。下地層の膜厚は、この範囲に限定されるものではないけれども、S/N比を高めるため、一般的には5〜60nmの範囲である。下地層の膜厚が5nmを下回ると、磁気特性が十分に発現しないおそれがあり、また、反対に60nmを上回ると、ノイズが増大するおそれがある。
【0028】本発明の磁気記録媒体は、必要に応じて、そのガラス基板とその上方の前記下地層との中間に、チタンを主成分とする金属材料からなる追加の下地層、好ましくはTi薄膜を有していてもよい。このような中間層は、両者の結合関係をより向上させる働きを有している。本発明の磁気記録媒体において、非磁性の下地層の上に形成されるべき磁気記録膜は、下地層と同様に、常用の磁気記録媒体において一般的な磁気記録膜から形成することができる。磁気記録膜は、磁気記録媒体の分野において通常行われているように、各種の磁性金属材料から形成することができ、好ましくは、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、例えば、CoCrNi系合金、CoCrPt系合金などから形成することができる。
【0029】磁気記録膜は、単層であってもよく、2層もしくはそれ以上の多層構造であってもよい。多層構造の磁気記録膜の場合、それぞれの磁気記録膜の組成は同一もしくは異なっていてもよく、また、必要に応じて、磁気記録膜の間に中間層を介在させて、磁気記録特性の向上などを図ってもよい。具体例を挙げて説明すると、磁気記録膜は、それが単層構造を有している場合、コバルトを主成分として含有し、クロム 14〜23at%、及び白金 1〜20at%、を含み、さらにタングステン及びカーボンを組み合わせて有する五元系合金から構成することができる。また、この磁気記録膜は、磁気記録膜が2層構造を有している場合、その上層磁気記録膜を構成することができる。
【0030】さらに具体的に説明すると、単層構造の磁気記録膜又は2層構造の上層磁気記録膜の五元系合金は、次式により表される組成範囲:Cobal.−Cr14-23 −Pt1-20−Wx −Cy(上式中、bal.はバランス量を意味し、そしてx+yは1〜7at%である)を有することができる。
【0031】本発明による磁気記録媒体では、磁気記録膜をCoCrPt合金から構成し、これにW及びCの両方を添加し、さらに層構成や成膜プロセスを最適化したことにより、ノイズの大幅な低減を図ることができ、したがって、高いS/N比が得られ、よって、高密度記録媒体を具現することができる。このような作用効果は、磁気記録膜の形成のためにCoCrPt合金に対して添加されたW及びCが、WC及びW2 Cなる安定な化合物を形成することができることに由来する。これらの化合物は、Coへの固溶限界が極めて小さいため、結晶粒界に析出するからである。
【0032】また、磁気記録媒体の磁気記録膜が2層構造を有している場合には、上層磁気記録膜としては、上記したCoCrPtWC五元系合金からなる磁気記録膜を採用することができ、この上層磁気記録膜と下地層との中間に配置されるべき下層磁気記録膜としては、コバルトを主成分として含有し、クロム 13〜21at%、及び白金 1〜20at%、を含み、さらにタンタル及びニオブを組み合わせて有する五元系合金から構成されている磁気記録膜を採用することができる。
【0033】さらに具体的に説明すると、この下層磁気記録膜の五元系合金は、次式により表される組成範囲:Cobal.−Cr13-21 −Pt1-20−Tax −Nby(上式中、bal.はバランス量を意味し、そしてx+yは1〜7at%である)を有することができる。このような場合に、下層磁気記録膜の五元系合金において、タンタル及びニオブの添加量は、同等もしくはほぼ同等でありかつ合計量が1〜7at%であることが好ましい。
【0034】本発明の磁気記録媒体において、その磁気記録膜は、単層構造及び2層構造にかかわりなく、30〜180Gμm のtBr(磁気記録膜の膜厚tと残留磁化密度Brの積)を有していることが好ましい。特に、単層構造の磁気記録膜は、50〜180Gμm のtBrを有していることが好ましく、また、2層構造の磁気記録膜は、30〜160Gμm のtBrを有していることが好ましい。この磁気記録膜は、従来の磁気記録膜に比較して低Brに構成したことにより、特にMRヘッドをはじめとした磁気抵抗効果型ヘッド用として最適である。
【0035】本発明による多孔質化ガラス基板上に下地層を介して設けられる磁気記録膜は、好ましくは、スパッタ法により、所要の成膜条件下で形成することができる。特に、保磁力を高めるため、DC負バイアスの印加下にスパッタ法を実施するのが好ましい。スパッタ法としては、上記した下地層の成膜と同様、例えばマグネトロンスパッタ法などを使用することができる。適当な成膜条件として、例えば、約100〜350℃の成膜温度、約1〜10mTorrのArガス圧力、そして約80〜400VのDC負バイアスを挙げることができる。また、必要に応じて、スパッタ法に代えて、他の成膜法、例えば蒸着法、イオンビームスパッタ法等を使用してもよい。
【0036】本発明の磁気記録媒体は、磁気記録膜の上に、それを保護するカーボン保護膜を備える。カーボン保護膜は、基本的に、磁気記録媒体の分野において一般的に使用されている炭素質の保護膜であることができる。適当なカーボン保護膜として、例えば、C層、WC層、SiC層、B4 C層、水素含有C層などを挙げることができる。これらのカーボン保護膜は、従来から広く使用されているスパッタ法やCVD法によって形成してもよく、さもなければ、最近開発された技術であるFiltered Cathodic Arc 法(以下、「FCA法」と呼ぶ)を用いて形成してもよい。FCA法を使用すると、高硬度のカーボン保護膜を磁気記録膜上に堆積するとともに、その高硬度のカーボン保護膜中に窒素を含有させた場合、カーボン保護膜の液体潤滑剤に対する吸着性が著しく向上せしめられ、優れた耐久性を得、かつ維持することができるであろう。
【0037】本発明の磁気記録媒体は、上記したような必須の層及び任意に使用可能な層に加えて、この技術分野において常用の追加の層を有していたり、さもなければ、含まれる層に任意の化学処理等が施されていてもよい。例えば、上記したカーボン保護膜の上に、フルオロカーボン樹脂系の潤滑剤層が形成されていたり、さもなければ、同様な処理が施されていてもよい。適当な潤滑剤は、例えば、フォンブリン、クライオトックスなどという商品名で容易に入手可能である。かかる潤滑剤は、ヘッドと媒体が接触して磁気記録データを破壊するヘッドクラッシュと呼ばれる障害を防止し、しかもヘッドと媒体の摺動に伴う摩擦力を低減させ、媒体の寿命を延ばす働きがある。潤滑剤層の厚さは、通常、約0.1〜0.5nmである。
【0038】本発明の磁気記録媒体は、本発明の範囲内においていろいろな方法に従って製造することができるけれども、好ましくは、先にも説明したように、シリカを主成分として含有するホウ珪酸ガラスからなりかつ多孔質構造に由来する連続したテクスチャをその表面に有している非磁性のガラス基板を本発明方法に従って製造して、そのガラス基板の上に少なくとも1層の磁性金属材料からなる磁気記録膜を設けることによって製造することができる。
【0039】図4は、本発明の磁気記録媒体の製造工程を順を追って示したフローシートである。すなわち、本発明方法に従うと、好ましくは、ホウ珪酸ガラスを熱処理及び酸処理して本発明の媒体基板を作製した後、その基板の表面に、磁気記録媒体の製造の分野において一般的な技法を使用して磁気記録膜(磁性膜)等を形成し、さらに最上層のカーボン保護膜に潤滑剤を塗布することによって、目的とする磁気ディスクを製造することができる。磁気記録膜、カーボン保護膜等の形成や、潤滑剤の塗布は、必要に応じて任意に変更してもよいけれども、上記したような製造条件の下で有利に実施することができる。
【0040】本発明は、上記したような磁気記録媒体とその製造方法の他に、本発明の磁気記録媒体を使用した磁気ディスク装置にある。本発明の磁気ディスク装置において、その構造は特に限定されないというものの、基本的に、磁気記録媒体において情報の記録を行うための記録ヘッド部及び情報の再生を行うための再生ヘッド部を備えている装置を包含する。特に、再生ヘッド部は、以下に説明するように、磁界の強さに応じて電気抵抗が変化する磁気抵抗素子を使用した磁気抵抗効果型ヘッド、すなわち、MRヘッドを備えていることが好ましい。
【0041】本発明の磁気ディスク装置において、好ましくは、磁気抵抗効果素子及び該磁気抵抗効果素子にセンス電流を供給する導体層を有し、磁気記録媒体からの情報の読み出しを行う磁気抵抗効果型の再生ヘッド部と、薄膜で形成された一対の磁極を有し、磁気記録媒体への情報の記録を行う誘導型の記録ヘッド部とが積層されてなる複合型の磁気ヘッドを使用することができる。磁気抵抗効果型の再生ヘッドは、この技術分野において公知のいろいろな構造を有することができ、そして、好ましくは、異方性磁気抵抗効果を利用したAMRヘッド又は巨大磁気抵抗効果を利用したGMRヘッド(スピンバルブGMRヘッド等を含む)を包含する。再生ヘッド部の導体層は、いろいろな構成を有することができるけれども、好ましくは、1.導体層の膜厚に関して、磁気抵抗効果素子の近傍部分を比較的に薄く形成し、その他の部分を厚く形成したもの、2.導体層の膜厚及び幅員に関して、磁気抵抗効果素子の近傍部分のそれを比較的に薄くかつ細く形成し、その他の部分を厚くかつ幅広に形成したもの、を包含する。導体層の膜厚及び必要に応じて幅員を上記のように調整することは、いろいろな手法に従って行うことができるものの、特に、導体層の多層化によって膜厚の増加を図ることによりこれを達成することが推奨される。
【0042】特に上記したような構成の磁気ディスク装置を使用すると、従来の複合型の磁気ヘッドに比較して、記録ヘッド部の磁極の湾曲を小さくするとともに導体層の抵抗を下げ、オフトラックが小さい範囲であれば、精確にかつ高感度で情報を読み出すことができる。本発明の磁気ディスク装置は、例えば、その記録ヘッド部及び再生ヘッド部を図5及び図6に示すような積層構造とすることができる。図5は、本発明の磁気ディスク装置の原理図であり、図6は、図5の線分B−Bにそった断面図である。
【0043】図5及び図6において、参照番号11は磁気記録媒体への情報の記録を行う誘導型の記録ヘッド部であり、そして参照番号12は情報の読み出しを行う磁気抵抗効果型の再生ヘッド部である。記録ヘッド部11は、NiFe等からなる下部磁極(上部シールド層)13と、一定間隔をもって下部磁極13と対向したNiFe等からなる上部磁極14と、これらの磁極13及び14を励磁し、記録ギャップ部分にて、磁気記録媒体に情報の記録を行わせるコイル15等から構成される。
【0044】再生ヘッド部12は、好ましくはAMRヘッドやGMRヘッド等でもって構成されるものであり、その磁気抵抗効果素子部12A上には、磁気抵抗効果素子部12Aにセンス電流を供給するための一対の導体層16が記録トラック幅に相応する間隔をもって設けられている。ここで、導体層16の膜厚は、磁気抵抗効果素子部12Aの近傍部分16Aが薄く形成され、他の部分16Bは厚く形成されている。
【0045】図5及び図6の構成では、導体層16の膜厚が、磁気抵抗効果素子部12Aの近傍部分16Aで薄くなっているため、下部磁極(上部シールド層)13等の湾曲が小さくなっている。このため、磁気記録媒体に対向する記録ギャップの形状もあまり湾曲せず、情報の記録時における磁気ヘッドのトラック上の位置と読み出し時における磁気ヘッドのトラック上の位置に多少ずれがあっても、磁気ディスク装置は正確に情報を読み出すことができ、オフトラック量が小さいにもかかわらず読み出しの誤差が生じるという事態を避けることができる。
【0046】一方、導体層16の膜厚が、磁気抵抗効果素子部12Aの近傍以外の部分16Bでは厚く形成されているため、導体層16の抵抗を全体として小さくすることもでき、その結果、磁気抵抗素子部12Aの抵抗変化を高感度で検出することが可能になり、S/N比が向上し、また、導体層16での発熱も避けることができ、発熱に起因したノイズの発生も防げる。
【0047】本発明による磁気ディスク装置の一例は、図7及び図8に示す通りである。なお、図7は磁気ディスク装置の平面図(カバーを除いた状態)であり、図8は図7の線分A−Aにそった断面図である。これらの図において、参照番号50は、ベースプレート51上に設けられたスピンドルモータ52によって回転駆動される磁気記録媒体としての複数枚(図示の例では3枚)の磁気ディスクを示している。磁気ディスク50は、本発明に従いテクスチャ付きのホウ珪酸ガラス製基板を使用している。
【0048】参照番号53は、ベースプレート51上に回転可能に設けられたアクチュエータである。このアクチュエータ53の一方の回転端部には、磁気ディスク50の記録面方向に延出する複数のヘッドアーム54が形成されている。このヘッドアーム54の回転端部には、スプリングアーム55が取り付けられ、更に、このスプリングアーム55のフレクシャー部に前述のスライダ40が図示しない絶縁膜を介して傾動可能に取り付けられている。一方、アクチュエータ53の他方の回転端部には、コイル57が設けられている。
【0049】ベースプレート51上には、マグネット及びヨークで構成された磁気回路58が設けられ、この磁気回路58の磁気ギャップ内に、上記コイル57が配置されている。そして、磁気回路58とコイル57とでムービングコイル型のリニアモータ(VCM:ボイスコイルモータ)が構成されている。そして、これらベースプレート51の上部はカバー59で覆われている。
【0050】次に、上記構成の磁気ディスク装置の作動を説明する。磁気ディスク50が停止している時には、スライダ40は磁気ディスク50の退避ゾーンに接触し停止している。次に、磁気ディスク50がスピンドルモータ52によって、高速で回転駆動されると、この磁気ディスク50の回転による発生する空気流によって、スライダ40は微小間隔をもってディスク面から浮上する。この状態でコイル57に電流を流すと、コイル57には推力が発生し、アクチュエータ53が回転する。これにより、ヘッド(スライダ40)を磁気ディスク50の所望のトラック上に移動させ、データのリード/ライトを行なうことができる。
【0051】この磁気ディスク装置では、磁気ヘッドの導体層として、磁気抵抗効果素子部の近傍部分を薄く形成し他の部分を厚く形成したものを用いているため、記録ヘッド部の磁極の湾曲を小さくすると共に導体層の抵抗を下げ、オフトラックが小さい範囲であれば正確に且つ高感度に情報を読み出すことができる。
【0052】
【実施例】引き続いて、本発明をその実施例を参照して説明する。なお、下記の実施例は一例であって、これによって本発明が限定されるものではないことを理解されたい。
実施例1合計200gの粉末状のガラス原料(10質量%のNa2 O、30質量%のB2 3 及び60質量%のSiO2 )を坩堝に入れ、混合した後、電気炉中で1,600℃で溶解させた。ガラス原料が十分に溶解した後、得られたガラス融液中に攪拌羽根を挿入し、約1時間にわたって攪拌した。次いで、坩堝から攪拌羽根を取り出し、30分間にわたって静置した。静置後の融液を成形治具に流し込み、硬化させた。ソーダホウ珪酸ガラスのブロックが得られた。得られたガラスブロックをそのガラスのガラス転移温度付近まで再加熱した後、徐冷して歪み取りを行った。歪みを取り除いた後のガラスブロックのサイズは、縦10cm、横10cm、そして高さ1cmであった。
【0053】得られたガラスブロックを約1.5mmの厚さの円盤形状にスライスした後、カッターを使用して、内周及び外周が同心円であるガラスディスクを切り出した。さらに、ガラスディスクの内外周をダイヤモンド治具を用いて面取り加工した。その後、ガラスディスクの上下の両面を粗研磨及びポリシングした。引き続いて、ポリシング後のガラスディスクを加熱炉に入れ、600℃の温度で15時間にわたって加熱した。この加熱によって、ガラスの分相がおこり、SiO2 からなる領域(海)のなかに虫食い状態のNa2 O−B2 3 の領域(島)が形成された。
【0054】上記のような分相処理に続けて、ガラスディスクを5体積%の硝酸水溶液(70℃)に1時間にわたって浸漬し、酸処理を行った。酸処理の結果、分相ガラス中のNa2 O−B2 3 が硝酸水溶液に徐々に溶け出し、Na2 O−B2 3 の島に対応する細孔が形成された。得られた多孔質化ガラスの細孔の孔径は、平均して、約200nmであった。このガラスディスクは、純度99%のSiO2 ガラスからなっていることが、原子吸光法を使用した分析によって確認された。
【0055】引き続いて、熱処理温度及び時間をコントロールすることによって、最終的に得られる多孔質化ガラスの表面のテクスチャ状態を任意に制御することができることを確認するため、同じ熱処理温度(650℃)で、異なる時間にわたって熱処理(分相処理)を実施した。その結果、3時間の熱処理ではさほど分相が進行しなかったけれども、熱処理時間の延長とともに、下記のように多孔質化ガラスの細孔の孔径が増大した。
【0056】
6時間の熱処理後の細孔の孔径 約30nm、 10時間の熱処理後の細孔の孔径 約80nm、 15時間の熱処理後の細孔の孔径 約200nm、 25時間の熱処理後の細孔の孔径 約250nm。
上記のような細孔の孔径の経時変化を本発明の目的に照らして評価した場合、このような650℃の熱処理温度ては、通常、約10〜15時間の熱処理時間を適用するのが有用であるということが認められた。
実施例2前記実施例1に記載の手法を繰り返したけれども、本発明では、粉末状のガラス原料(10質量%のNa2 O、30質量%のB2 3 及び60質量%のSiO2 )に代えて、同じく粉末状のガラス原料(10質量%のLi2 O、30質量%のB2 3 及び60質量%のSiO2 )を使用した。実施例1において得られたものと同様な、多孔質構造に由来する連続したテクスチャを表面に有するSiO2 ガラスディスクが得られた。
実施例3下記の層構成を有する磁気ディスクを作製した。
【0057】
────────────────────潤滑剤層────────────────────窒素ドープのカーボン保護膜────────────────────磁気記録膜(CoCrPtTaNb)
────────────────────下地層(CrMo10
────────────────────テクスチャ表面を有するホウ珪酸ガラス基板────────────────────前記実施例1で作製したソーダホウ珪酸ガラス基板の表面を良く洗浄した後、DCマグネトロンスパッタ装置により、膜厚30nmのCrMo10(at%)下地層、膜厚27nmのCoCrPtTaNb系磁気記録膜、そして膜厚20nmの窒素ドープのカーボン(C)保護膜、そして膜厚1nmの「フォンブリンAM3001」(商品名)からなる潤滑剤層を順次積層した。本例の場合、下地層の成膜前にスパッタ室内を3×10-7Torr以下に排気し、基板温度を280℃に高め、Arガスを導入してスパッタ室内を5mTorrに保持し、−200Vのバイアスを印加しながら、下地層としてのCrMoをに成膜した。さらに、下地層の成膜に続けて、CoCrPtTaNb膜をそのBrtが100Gμm(27nm厚)となるように成膜した。成膜に使用したターゲットは、CoCrターゲットにPt、Ta、Nbチップを配置した複合ターゲットであった。
実施例4前記実施例1で作製したソーダホウ珪酸ガラス基板の表面を良く洗浄した後、DCマグネトロンスパッタ装置により、膜厚120nmのCr下地層、膜厚56nmのCoNiCr系磁気記録膜、そして膜厚20nmのダイヤモンドライクカーボン(DLC)保護膜を順次成膜した。次いで、DLC保護膜の上に「フォンブリンAM3001」(商品名)を膜厚1nmで塗布し、含浸させた。上記のようにして作製した磁気ディスクの表面の表面粗さ(Ra)を原子間力顕微鏡(AFM)によって測定したところ、約0.5nmであることが確認された。
【0058】引き続いて、得られた磁気ディスクを市販の摩擦試験機(富士通オートメーション社製)に搭載し、ヘッド荷重3gのマイクロスライダを使用してスティクション試験を行った。その結果、3万回にわたってCSSを反復した場合の静止摩擦係数が0.5、動摩擦係数が0.2であり、摩擦摺動特性が極めて良好であることが判明した。
【0059】比較のため、前記実施例1で熱処理による分相とそれに続く酸処理を省略して作製したソーダホウ珪酸ガラス基板(テクスチャを有しない比較品)を使用して、上記と同様な手法に従って磁気ディスクを作製した。しかし、この磁気ディスクは、その表面においてテクスチャに由来する異方性がでていないので、磁気ディスク装置に搭載して使用することができなかった。
〔付記〕以上、本発明を特にその好ましい態様及びいくつかの実施例を参照して説明した。本発明のさらなる理解のため、本発明の好ましい態様をまとめて記載すると、次の通りである。
【0060】1.磁気記録媒体等において支持体として使用されるものであって、シリカを主成分として含有するホウ珪酸ガラスからなりかつ多孔質構造に由来する連続したテクスチャがその表面に施されていることを特徴とする媒体基板。
2.前記ホウ珪酸ガラスがソーダホウ珪酸ガラスであり、Na2 O、B2 3及びSiO2 を出発物質として形成されたものであることを特徴とする付記1に記載の媒体基板。
【0061】3.前記ソーダホウ珪酸ガラスが、次の組成:Na2 O 10〜30質量%、B2 3 10〜30質量%、及びSiO2 50〜80質量%、を有することを特徴とする付記2に記載の媒体基板。
【0062】4.前記ソーダホウ珪酸ガラスが、10質量%のNa2 O、30質量%のB23 及び60質量%のSiO2 からなることを特徴とする付記1又は2に記載の媒体基板。
5.前記ホウ珪酸ガラスがリチウムホウ珪酸ガラスであり、Li2 O、B2 3 及びSiO2 を出発物質として形成されたものであることを特徴とする付記1に記載の媒体基板。
【0063】6.前記リチウムホウ珪酸ガラスが、次の組成:Li2 O 5〜30質量%、B2 3 10〜30質量%、及びSiO2 50〜80質量%、を有することを特徴とする付記5に記載の媒体基板。
【0064】7.前記リチウムホウ珪酸ガラスが、5質量%のLi2 O、30質量%のB23 及び66質量%のSiO2 からなることを特徴とする付記5又は6に記載の媒体基板。
8.前記ホウ珪酸ガラスの多孔質構造が、当該ガラスの熱処理による分相とそれに続く酸処理による成分溶出によって形成されたものであることを特徴とする付記1〜7のいずれか1項に記載の媒体基板。
【0065】9.前記連続したテクスチャが、当該基板の表面に選択的に形成されていることを特徴とする付記1〜8のいずれか1項に記載の媒体基板。
10.シリカを主成分として含有するホウ珪酸ガラスからなりかつ多孔質構造に由来する連続したテクスチャをその表面に有している媒体基板を製造するに当って、円盤状のホウ珪酸ガラスを熱処理して分相させ、次いで分相後のガラスを酸処理して分相成分を溶出させ、多孔質化することによって製造することを特徴とする媒体基板の製造方法。
【0066】11.前記ホウ珪酸ガラスがソーダホウ珪酸ガラスであり、Na2 O、B2 3 及びSiO2 を出発物質として形成されたものであることを特徴とする付記10に記載の媒体基板の製造方法。
12.前記ソーダホウ珪酸ガラスが、次の組成:Na2 O 10〜30質量%、B2 3 10〜30質量%、及びSiO2 50〜80質量%、を有することを特徴とする付記11に記載の媒体基板の製造方法。
【0067】13.前記ソーダホウ珪酸ガラスが、10質量%のNa2 O、30質量%のB2 3 及び60質量%のSiO2 からなることを特徴とする付記11又は12に記載の媒体基板の製造方法。
14.前記ホウ珪酸ガラスがリチウムホウ珪酸ガラスであり、Li2 O、B23 及びSiO2 を出発物質として形成されたものであることを特徴とする付記10に記載の媒体基板の製造方法。
【0068】15.前記リチウムホウ珪酸ガラスが、次の組成:Li2 O 5〜30質量%、B2 3 10〜30質量%、及びSiO2 50〜80質量%、を有することを特徴とする付記14に記載の媒体基板の製造方法。
【0069】16.前記リチウムホウ珪酸ガラスが、5質量%のLi2 O、30質量%のB2 3 及び66質量%のSiO2 からなることを特徴とする付記14又は15に記載の媒体基板の製造方法。
17.前記ホウ珪酸ガラスを600〜700℃の温度で5〜24時間にわたって熱処理し、前記多孔質構造の細孔径を5〜250nmの範囲に制御することを特徴とする付記10〜16のいずれか1項に記載の媒体基板の製造方法。
【0070】18.前記ホウ珪酸ガラスを熱処理して分相させた後、磁気ヘッドのランディングゾーン以外の領域にマスキング要素を存在させた状態で前記酸処理を行い、前記ランディングゾーンのみを選択的に多孔質化することを特徴とする付記10〜16のいずれか1項に記載の媒体基板の製造方法。
19.磁気記録媒体において情報の記録を行うための記録ヘッド部及び情報の再生を行うための再生ヘッド部を備えた磁気ディスク装置であって、前記磁気記録媒体が、非磁性基板上に磁気記録膜を設けてなる磁気記録媒体であり、かつ前記基板が、シリカを主成分として含有するホウ珪酸ガラスからなりかつ多孔質構造に由来する連続したテクスチャをその表面に有していることを特徴とする磁気ディスク装置。
【0071】20.前記ホウ珪酸ガラスが、ソーダホウ珪酸ガラス又はリチウムホウ珪酸ガラスであることを特徴とする付記19に記載の磁気ディスク装置。
【0072】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明の媒体基板を使用すれば、磁気ヘッドとの摩擦摺動特性及びしたがって低浮上性に優れた磁気ディスクを提供することができる。また、媒体基板の製造において、分相処理温度、すなわち、熱処理温度をコントロールすることによって、基板表面に形成される凹凸構造を容易に算出することができ、よって、テクスチャ設計を効率よく行うことができる。
【0073】さらに、分相処理とその後の熱処理によって、ホウ珪酸ガラスを純度99%以上のSiO2 ガラスに変化させることができるので、耐水性及び耐候性に優れた磁気記録媒体を提供することができる。さらにまた、本発明に従うと、そのような優れた磁気記録媒体を組み込みことによって、高性能の磁気ディスク装置を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
【出願日】 平成12年8月9日(2000.8.9)
【代理人】 【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬 (外4名)
【公開番号】 特開2002−56520(P2002−56520A)
【公開日】 平成14年2月22日(2002.2.22)
【出願番号】 特願2000−241545(P2000−241545)