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【発明の名称】 磁気記録媒体
【発明者】 【氏名】澤口 雅弘

【要約】 【課題】磁気記録媒体の走行耐久性の向上を図る。

【解決手段】非磁性支持体1上に、磁性塗料の塗布により形成された厚さ0.01〜0.3〔μm〕の磁性層3を有する、いわゆる薄型の磁気記録媒体10において、磁性層3の電気抵抗値を1.0×105 〜1.0×109 〔Ω/sq〕に数値的に特定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 非磁性支持体上に、磁性塗料の塗布により形成された磁性層を有する磁気記録媒体であって、上記磁性層は、上記非磁性支持体上に直接形成されて成り、上記磁性層の厚さは、0.01〜0.3〔μm〕であり、上記磁性層の電気抵抗が、1.0×105 〜1.0×109 〔Ω/sq〕であることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項2】 非磁性支持体上に、磁性塗料の塗布により形成された磁性層を有する磁気記録媒体であって、上記磁性層は、上記非磁性支持体上に厚さが0.5〔μm〕未満の材料層を介して形成されて成り、上記磁性層の厚さは、0.01〜0.3〔μm〕であり、上記磁性層の電気抵抗が、1.0×105 〜1.0×109 〔Ω/sq〕であることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項3】 上記磁性層に帯電防止剤が含有されて成ることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項4】 上記磁性層に帯電防止剤が含有されて成ることを特徴とする請求項2に記載の磁気記録媒体。
【請求項5】 上記磁性塗料中の磁性粉の表面に、炭素が被着されて成ることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項6】 上記磁性塗料中の磁性粉の表面に、炭素が被着されて成ることを特徴とする請求項2に記載の磁気記録媒体。
【請求項7】 上記磁性塗料中の結合剤に、ビニル系共重合体が含有されて成り、該ビニル系共重合体は、第4級アンモニウム塩を官能基として有し、かつ数平均分子量(Mn)が、10000以下であることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項8】 上記磁性塗料中の結合剤に、ビニル系共重合体が含有されて成り、該ビニル系共重合体は、第4級アンモニウム塩を官能基として有し、かつ数平均分子量(Mn)が、10000以下であることを特徴とする請求項2に記載の磁気記録媒体。
【請求項9】 上記磁性塗料中の結合剤に、ポリエステルポリウレタン樹脂が含有されて成り、該ポリエステルポリウレタン樹脂は、第4級アンモニウム塩を官能基として有し、かつ数平均分子量(Mn)が、10000以下であることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項10】 上記磁性塗料中の結合剤に、ポリエステルポリウレタン樹脂が含有されて成り、該ポリエステルポリウレタン樹脂は、第4級アンモニウム塩を官能基として有し、かつ数平均分子量(Mn)が、10000以下であることを特徴とする請求項2に記載の磁気記録媒体。
【請求項11】 上記磁性層中に研磨剤が含有されて成り、上記研磨剤は、表面を導電性物質で被覆された固形物であることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項12】 上記磁性層中に研磨剤が含有されて成り、上記研磨剤は、表面を導電性物質で被覆された固形物であることを特徴とする請求項2に記載の磁気記録媒体。
【請求項13】 磁気抵抗効果型の磁気ヘッドを具備する磁気記録システムによって記録あるいは再生の少なくともいずれかがなされることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項14】 磁気抵抗効果型の磁気ヘッドを具備する磁気記録システムによって記録あるいは再生の少なくともいずれかがなされることを特徴とする請求項2に記載の磁気記録媒体。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気記録媒体に係わる。
【0002】
【従来の技術】近年、オーディオ装置やビデオ装置、コンピュータ装置等において用いられる磁気記録媒体においては、デジタル記録等により情報量が増大し、さらなる高密度記録化、短波長記録化が進められ、磁気記録媒体の特性向上への要求が高まって来ている。
【0003】このような状況から、磁気記録媒体においては、高密度記録化、高速記録化を目的として、磁性層を形成する各種原材料の検討がなされており、例えば、高い分散性を有する微細粒子磁性粉や、優れた分散能を有する結合剤等の研究がなされている。
【0004】また、記録再生の周波数の短波長化が進み、これに応じて磁性層を、例えば0.3μm以下に薄膜化する要望が高まってきている。また更に、高密度記録化を要求する磁気記録機器は、同時に記録再生の高速化を進める必要があり、このため、磁気記録媒体の耐久性、信頼性の向上が要求されてきている。
【0005】上述したような要求に対して、図8に示す従来構造の磁気記録媒体100においては、非磁性支持体101上に、非磁性粒子と結合剤樹脂とを主成分として調整された塗料によって下地層102を形成し、下地層102に耐久性を向上させるための機能を与えたり、その他の各種機能を与えたりして走行性および信頼性の向上を図っている(特開平8−329449号公報等)。
【0006】また、特に磁気記録媒体の走行性を向上させるためには、磁気記録媒体の電気抵抗を低減化させることが必要であるが、従来においては、粒径が数十nm程度の微細な凝集カーボンを、磁性層103や下地層102に添加したりしていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図8に示すような構造の磁気記録媒体100においては、磁性層103と下地層102とが積層形成されているため、これらの層中の成分間に化学的、あるいは物理的な相互作用が生じるおそれがあることを考慮しなければならず、製造条件や塗布条件が制約を受けて工程が煩雑化する原因になっていた。
【0008】また、上述のように、電気抵抗の低減化を図るためにカーボンを磁性層103に含有させると、カーボンの比重が比較的小さいため、磁性層103の表層付近にカーボンが集まり易く、磁気記録媒体10の静磁気特性、および電磁変換特性の劣化を招来したり、磁性塗料の粘度を上昇させたり、磁気記録媒体の表面粗度に悪影響を与えたりし、特に、磁性層を0.3μm以下の薄層に形成する場合において、かかる不都合が顕著になった。
【0009】また、電気抵抗の低減化を図るためにカーボンを、下地層102に含有させると、下地層形成用塗料の安定性や物性に影響を与えるため、製造条件や塗布条件が制約を受けて工程が煩雑化する原因となったり、上記と同様に、磁気記録媒体の表面粗度に悪影響を与えたりする等の不都合が生じた。
【0010】そこで、本発明者は上述した事情に鑑みて、磁性層の厚さが、0.01〜0.3〔μm〕である薄層型の磁気記録媒体の走行性、および耐久性の向上を図るべく、磁気記録媒体の物性および添加物質について検討を行った。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体の一主面上に、磁性塗料の塗布により形成された磁性層を有する磁気記録媒体であるものとし、磁性層は、非磁性支持体上に直接、あるいは厚さ0.5〔μm〕以下程度の薄層の材料層を介して形成されて成るものとする。この磁性層の厚さは、0.01〜0.3〔μm〕である薄型の磁気記録媒体であるものとし、磁性層の電気抵抗について、特に数値的に規定することとし、これを、1.0×105 〜1.0×109 〔Ω/sq〕の範囲に低減化させたものとした。
【0012】本発明によれば、非磁性支持体上に0.01〜0.3〔μm〕の厚さの薄層の磁性層が形成されている磁気記録媒体において、多様な環境下における耐久性の向上が図られ、安定した走行性が確保される。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体の一主面上に、磁性塗料の塗布により形成された磁性層を有する磁気記録媒体であるものとし、磁性層は、非磁性支持体上に直接、あるいは厚さ0.5〔μm〕以下程度の薄層の材料層を介して形成されて成るものとする。この磁性層の厚さは、0.01〜0.3〔μm〕である薄型の磁気記録媒体であるものとし、磁性層中に帯電防止剤を投入したり、磁性分やその他の添加剤の表面を導電性物質で被覆したり、結合剤に4級アンモニウム塩を含有させたりすることによって、磁性層の電気抵抗について制御を行い、特に数値的に規定することとし、これを、1.0×105 〜1.0×109 〔Ω/sq〕の範囲に低減化させたものとした。
【0014】以下、本発明の磁気記録媒体10について、図1にその一例の概略構造を示して説明するが、本発明の磁気記録媒体は以下に示す例に限定されるものではない。
【0015】図1に示す磁気記録媒体10は、非磁性支持体1上に、下地層を介することなく、0.01〜0.3〔μm〕の厚さの磁性層2を形成した構成の、いわゆる薄層型の磁気記録媒体である。非磁性支持体1上の磁性層2形成面側とは反対側の主面には、バックコート層2が形成されて成るものとする。
【0016】非磁性支持体1を構成する材料としては、例えばポリエチレンテレフタレートのフィルムを適用することができるが、本発明の磁気記録媒体10は、公知の各種の材料の適用が可能である。すなわち、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミドイミド、その他のプラスチック、紙、アルミニウム、銅等の金属、アルミニウム合金、チタン合金等の軽合金、セラミックス、単結晶シリコン等についても、同様に適用することができる。
【0017】また、非磁性支持体1は、各種表面処理や各種装飾を施してもよい。例えば、適宜微細な凹凸形状を形成したり、表面に、コロナ放電処理や電子線照射処理等の、前処理を施したりしてもよい。またカオリン等の無機フィラーや有機フィラーを非磁性支持体表面に配置することにより、表面の粗度を制御することもできる。
【0018】次に、非磁性支持体1上に形成する磁性層2について説明する。本発明の磁気記録媒体においては、磁性層2を、高記録密度化を図り、短波長記録化に対応するため、特に0.3μm以下の厚さに形成するものとする。また、情報の記録および再生を行う磁性層2としての機能を発揮するために、0.01μm以上の厚さに形成する。塗布型の磁気記録媒体においては、磁性層2は、磁性粉末、結合剤(バインダー)、帯電防止剤、硬化剤、潤滑剤、分散剤、研磨剤、防錆剤、有機溶剤等を用いて、これらを従来公知の方法により、調整することにより磁性塗料を作製し、この磁性塗料を非磁性支持体1上に所定の厚さに塗布することによって形成される。これらの磁性塗料の原料物質は、原料同士がそれぞれ化学反応を起こさないように、所定の工程で添加される。また、個々の原料を複数回に分けて添加することもできる。
【0019】本発明の磁気記録媒体10の磁性層3を形成する磁性粉末は、強磁性酸化鉄粒子(γ−Fe2 3 、Fe3 4 等)、Co,Ni含有の強磁性酸化鉄粉末、強磁性酸化クロム粉末、強磁性金属粉末、炭化鉄粉末、バリウムフェライト等を使用することができる。上記磁性粉末には、用途により、Al,Si,P,S,Ca,Sc,Ti,V,Cr,Mn,Cu,Zn,Y,Mo,Rh,Pd,Ag,Sn,Sb,Te,Ba,Ta,W,Re,Au,Pd等を含有させることもできる。また、磁性塗料中の磁性粉に炭素(カーボンあるいはグラファイト)を被着させることにより、磁性層の電気抵抗の低減化を図ることができる。磁性粉を炭素により被覆する場合には、化学蒸着(CVD)法による気相成長、物理蒸着(PVD)法、有機化合物の還元、炭化水素などの熱分解、不完全燃焼等、種々の方法により行うことができる。このように、磁性塗料中の磁性粉に炭素を被着させることにより、磁性層3の電気抵抗値を、1.0×105 〜1.0×109 〔Ω/sq〕になるように調整する。
【0020】磁性塗料中の結合剤には、ビニル系共重合体であって、第4級アンモニウム塩を官能基として有し、数平均分子量(Mn)が10000以下のもの、あるいは、ポリエステルポリウレタン樹脂であって第4級アンモニウム塩を官能基として有し、数平均分子量(Mn)が10000以下のものが含有されているものが望ましい。これらの樹脂を用いることによって、磁性層の電気抵抗を低減化させることができる。なお、結合剤樹脂の数平均分子量が10000を越えたものは、高密度記録に不可欠な磁性粉分散能力が低下する傾向を有するため、結合剤樹脂は、数平均分子量を10000以下に選定した。
【0021】その他、結合剤としては、従来用いられている公知の高分子樹脂をいずれも適用することができる。例えば塩化ビニル、酢酸ビニル等のビニル系重合体やこれらの共重合体、アクリル酸エステル等の共重合体、ポリエステルポリウレタン等のウレタン樹脂、ニトロセルロース等のセルロース誘導体、エポキシ樹脂、アセタール樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。上記結合剤樹脂は、分子構造中に公知の官能基を有するものであってもよい。例えば、−SO4 M、−SO3 M、−SO2 M、−COOM、−NH2 、−NR2 、−NR3 、−OH、−OPO3 2 、−OPO3 2 エポキシ基、等が挙げられる(この場合、Mは水素原子またはアルカリ金属を示し、Rはアルキル基、アルケニル基、アルコキシル基等を示す)。結合剤としては、上記官能基のうち、少なくとも一種類の官能基を有するものであることが望ましく、特に、磁性層の電気抵抗を低減化する効果の大きい4級アンモニウム塩が好ましい。これらの官能基は、樹脂1〔g〕あたり1.0×10-6〜1.0×10-2当量含まれていることが好ましい。
【0022】上記結合剤の分子量は、磁性塗料を良好に分散させるために、数平均分子量で、10000以下程度とすることが望ましい。特に、ビニル系共重合体とポリエステルポリウレタン樹脂を使用した場合、分子量が10000以下程度とすることによって、良好な分散性を確保することができる。
【0023】また、結合剤にはポリイソシアネート系硬化剤を添加することによって、架橋が促進され、磁性層の耐久性を向上させることができる。このような硬化剤としては、トリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4' −ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート等のイソシアネート類、これらと多価アルコールとの反応物、イソシアネートの縮合物(ポリイソシアネート)等を使用することができる。
【0024】結合剤の具体的な商品名としては、コロネート−L、コロネート−HL、コロネート−2030(以上、日本ポリウレタン社製商品名)、タケネートD−200、タケネートD−202(以上、武田薬品社製商品名)等が挙げられ、これらを単独、あるいは複数組み合わせて用いることができる。
【0025】本発明の磁気記録媒体10は、磁性層3の電気抵抗値を、1.0×105 〜1.0×109 〔Ω/sq〕の範囲に制御されて成るものであるが、磁性塗料中に、カーボン等の導電性微粉末や、その他、無機塩、エステル、一価あるいは多価アルコール、アミン、シリコーン系化合物、各種界面活性剤等の帯電防止剤を添加することにより、磁性層の電気抵抗の低減化を図ることができる。帯電防止剤の種類としては、従来公知のものを広く適用することができる。
【0026】帯電防止剤は、それぞれの性質と磁性塗料中の他の成分に応じて、その種類と添加量を調整し、一種または複数組み合わせて使用することができる。
【0027】帯電防止剤の例として界面活性剤を用いる場合、カチオン系界面活性剤としては、脂肪酸アミン塩類、第一級アミン塩、第三級アミン、第四級アンモニウム化合物類、ビリジン誘導体等を使用することができる。
【0028】アニオン系界面活性剤としては、硫酸化油、硫酸化エステル油、硫酸アミド油、オレフィンの硫酸エステル塩類、脂肪族アルコール硫酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩、脂肪酸エチルスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸とホルマリンの混合物、コハク酸エステルスルホン酸塩、リン酸エステル塩、石鹸等を適用することができる。
【0029】非イオン系界面活性剤としては、多価アルコールの部分的脂肪酸エステル、脂肪族アルコールのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸のエチレンオキサイド付加物、脂肪族アミノまたは脂肪酸アミドのエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物、アルキルナフトールのエチレンオキサイド付加物、多価アルコールの部分的脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール等を適用することができる。
【0030】両性界面活性剤としては、カルボン酸誘導体系界面活性剤、イミダゾリン誘導体系界面活性剤等を適用することができる。
【0031】潤滑剤としては、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸塩、高級アルコール、多価アルコール、多価アルコールエステル、アミド、シリコーンオイル、フッ素含有有機化合物等、従来公知のものをいずれも適用することができる。また、潤滑剤には、グラファイト、二硫化モリブデン等の固体潤滑剤を添加してもよい。
【0032】分散剤としては、脂肪酸(炭素数10〜20程度)とその金属塩、そのエステル及び金属石鹸、リン酸エステル、アミド系、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤等を適用することができる。
【0033】研磨剤としては、金属酸化物、金属硫化物、硫酸化物、炭酸化物、窒化物、炭化物、コランダム、人工ダイヤモンド等の無機充填剤等、従来公知のものをいずれも適用することができる。また、磁性塗料中の研磨剤に炭素(カーボンあるいはグラファイト)や導電性物質を被着させることにより、磁性層の電気抵抗の低減化を図ることができる。研磨剤を炭素により被覆する場合には、化学蒸着(CVD)法による気相成長、物理蒸着(PVD)法、有機化合物の還元、炭化水素などの熱分解、不完全燃焼等、種々の方法により行うことができる。このように、研磨剤に炭素を被着させることにより、磁性層3の電気抵抗値を、1.0×105 〜1.0×109 〔Ω/sq〕になるように調整する。
【0034】また、その他、防錆剤、抗菌(防黴)剤、有機溶剤等や、特に塗布型の磁気記録媒体において用いられる磁性分散液、磁性分散液を調整するための溶剤等は、従来公知の材料をいずれも適用することができる。
【0035】磁性塗料を調整するための溶剤としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、酢酸グリコールモノエチルエステル等のエステル系溶剤、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサン等のグリコールエーテル系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤等、公知のものが使用できる。
【0036】上述した磁性粉末と、結合剤等により作製される磁性塗料の調整は、公知の方法により行うことができるが、例えば、ロールミル、ボールミル、サンドミル、トロンミル、高速ストーンミル、バスケットミル、ディスパー、ホモミキサー、ニーダー、連続ニーダー、エクストルーダー、ホモジナイザー、および超音波分散機等を用いて、混練、調整する。
【0037】非磁性支持体1上に、磁性塗料を塗布し、磁性層2を形成する手法としては、エアードクターコート、ブレードコート、ロッドコート、押し出しコート、エアナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、グラビアコート、トランスファーロールコート、キャストコート等の従来公知の方法をいずれも適用することができる。
【0038】本発明の磁気記録媒体10においては、上記の他、磁性層3と非磁性支持体1との間に、厚さ0.5〔μm〕未満の、所定の材料からなる材料層を形成した構成とすることもできる。磁性層3を材料層を介して非磁性支持体1上に形成することにより、磁気記録媒体1の機械的な強度を向上させたり、その他各種機能を持たせることができる。例えば、樹脂中にフィラー等の無機添加材を分散させて作製した塗料を塗布して材料層を形成することにより、上層の磁性層3の表面性を良好にすることができる。また、材料層を0.5〔μm〕未満の薄層に形成することにより、磁気記録媒体10を全体として薄層型に形成することができ、体積あたりの記録容量を高められ、大容量の磁気記録媒体とすることができる。
【0039】磁性塗料を塗布後、従来公知のバックコート層2形成用の材料を用いて、磁性層形成面側とは反対側の主面にバックコート層2を形成する。その後、磁場をかけたり永久磁石を用いて、公知の方法により磁性粉配向処理を行い、磁性層の磁気特性を向上させる。そして、カレンダー処理を行い磁気テープの表面処理を行い、所定の幅に裁断して磁気記録媒体10が得られる。
【0040】次に、本発明の磁気記録媒体10に好適な磁気ヘッドおよびこの磁気ヘッドを備えた磁気記録システムについて説明する。
【0041】本発明の磁気記録媒体10は、磁性層3を0.01〜0.3〔μm〕の薄層に形成したいわゆる薄型の磁気記録媒体であり、高感度の再生ヘッドを用いた磁気記録システムに対して好適なものである。この場合、高感度の磁気ヘッドとしては、磁気抵抗効果型のMRヘッド、GMRヘッド等が挙げられる。但し、これらに限定されるものではなく、高感度で、充分なS/Nが得られるものであれば、薄膜インダクティブヘッドのような再生ヘッドでも有効であるが、本発明の磁気記録媒体は、特に高密度記録に対応した磁気記録システムに好適なものである。
【0042】MR再生ヘッドとしては、MR素子をシールドで挟み込んだシールド型のMRヘッド、高透磁率材で挟み込んだヨーク型MRヘッド等がある。これらのヘッドを固定したリニア記録システムに使用しても良いし、ビデオシステムのような回転ドラムに搭載したヘリカルスキャン記録システムに応用しても良い。
【0043】以下、一例として、MR再生ヘッドを用いたヘリカルスキャン磁気記録システムについて説明する。
【0044】この場合、MR再生ヘッドとしては、MR素子をシールドで挟み込んだシールド型のMRヘッドを用い、これを回転ドラムに搭載して、記録再生装置を構成するものとする。
【0045】上記ヘリカルスキャン磁気記録システムの磁気記録再生装置は、回転ドラムを用いて記録再生を行うヘリカルスキャン方式の磁気記録再生装置であり、回転ドラムに搭載された再生用磁気ヘッドとして、MRヘッドを使用する。
【0046】この磁気記録再生装置に搭載される回転ドラム装置の一例について、図を参照して説明する。図2は、回転ドラム装置11の概略斜視図を示し、図3に、回転ドラム装置11を含む磁気記録媒体送り機構30の概略平面図を示す。
【0047】図2に示すように、回転ドラム装置11は、円筒状の固定ドラム12と、円筒状の回転ドラム13と、回転ドラム13を回転駆動するモータ14と、回転ドラム13に搭載された一対のインダクティブ型磁気ヘッド15a,15bと、回転ドラム13に搭載された一対のMRヘッド16a,16bとを具備している。
【0048】上記固定ドラム12は、回転することなく保持されるドラムである。この固定ドラム12の側面には、テープ状の磁気記録媒体10の走行方向に沿ってリードガイド部18が形成されている。後述するように、記録再生時に磁気記録媒体10は、このリードガイド部18に沿って走行する。そして、この固定ドラム12と中心軸が一致するように、回転ドラム13が配置されている。
【0049】回転ドラム13は、磁気記録媒体10に対する記録再生時に、モータ14によって所定の回転速度で回転駆動されるドラムである。この回転ドラム13は、固定ドラム12と略同径の円筒状に形成されてなり、固定ドラム12と中心軸が一致するように配置されている。そして、この回転ドラム13の固定ドラム12に対向する側には、一対のインダクティブ型磁気ヘッド15a,15bおよび一対のMRヘッド16a,16bが搭載されている。
【0050】インダクティブ型磁気ヘッド15a、15bは、一対の磁気コアが磁気ギャップを介して接合されるとともに、磁気コアにコイルが巻装されてなる記録用磁気ヘッドであり、磁気記録媒体10に対して信号を記録する際に使用される。そして、これらのインダクティブ型磁気ヘッド15a,15bは、回転ドラム13の中心に対して互いに成す角度が180°となり、それらの磁気ギャップ部分が回転ドラム13の外周から突き出すように、回転ドラム13に搭載されている。なお、これらのインダクティブ型磁気ヘッド15a,15bは、磁気記録媒体10に対してアジマス記録を行うように、アジマス角が互いに逆となるように設定されている。
【0051】一方、MRヘッド16a,16bは、磁気記録媒体10からの信号を検出する感磁素子としてMR素子を備えた再生用磁気ヘッドであり、磁気記録媒体10から信号を再生する際に使用される。そして、これらのMRヘッド16a,16bは、回転ドラム13の中心に対して互いに成す角度が180°となり、磁気ギャップ部分が回転ドラムの外周から突き出すように、回転ドラム13に搭載されている。なお、これらのMRヘッド16a,16bは、磁気記録媒体10に対してアジマス記録された信号を再生できるように、アジマス角が互いに逆になるように設定されている。
【0052】そして、磁気記録再生装置は、このような回転ドラム装置11に磁気記録媒体10を摺動させて、磁気記録媒体10に対する信号の記録や、磁気記録媒体10からの信号の再生を行う。
【0053】すなわち、記録再生時に磁気記録媒体10は、図3に示すように、供給リール21からガイドローラ22、23を経て、回転ドラム装置11に巻き付くように送られ、この回転ドラム装置11で記録再生がなされる。そして、回転ドラム装置11で記録再生がなされた磁気記録媒体10は、ガイドローラ24、25、キャプスタン26、ガイドローラ27を経て、巻き取りロール28へと送られる。すなわち、磁気記録媒体10は、キャプスタンモータ29により回転駆動されるキャプスタン26によって所定の張力および速度にて送られ、ガイドローラ27を経て巻き取りロール28に巻き取られる。
【0054】このとき、回転ドラム13は、図2中の矢印Aに示すように、モータ14によって回転駆動される。一方、磁気記録媒体10は、固定ドラム12のリールガイド部18に沿って、固定ドラム12および回転ドラム13に対して斜めに摺動するように送られる。すなわち、磁気記録媒体10は、走行方向に沿って、図2中の矢印Bに示すように、テープ入口側から固定ドラム12および回転ドラム13に摺接するようにリードガイド部18に沿って送られ、その後、図2中矢印Cに示すように、テープ出口側へと送られる。
【0055】次に、上記回転ドラム装置11の内部構造について、図4を参照して説明する。図4に示すように、固定ドラム12および回転ドラム13の中心には、回転軸31が挿通されている。なお、固定ドラム12、回転ドラム13、および回転軸31は、導電材料からなり、これらは電気的に導通しており、固定ドラム12が接地されている。
【0056】そして、固定ドラム12のスリーブの内側には、2つの軸受け32、33が設けられており、これにより、固定ドラム12に対して回転軸31が回転可能に支持されている。すなわち、回転軸31は、軸受け32、33により、固定ドラム12に対して回転可能に支持されている。一方、回転ドラム13には、その内周部にフランジ34が形成されており、このフランジ34が回転軸31の上端部に固定されている。これにより、回転ドラム13は、回転軸31の回転に伴って回転するようになされている。
【0057】また、回転ドラム装置11の内部12と回転ドラム13との間で信号の伝送を行うために、非接触型の信号伝送装置であるロータリトランス35が配されている。このロータリトランス35は、固定ドラム12に取り付けられたステータコア36と、回転ドラム13に取り付けられたロータコア37とを有している。
【0058】ステータコア36及びロータコア37は、フェライト等のような磁性材料が回転軸31を中心とする円環状に形成されてなる。また、ステータコア36には、一対のインダクティブ型磁気ヘッド15a、15bに対応した一対の信号伝送用リング36a、36bと、一対のMRヘッド16a,16bに対応した信号伝送用リング36cと一対のMRヘッド16a,16bの駆動に必要な電力を供給するための電力電送用リング36dとが、同心円状に配置されている。同様に、ロータコア37にも、一対のインダクティブ型磁気ヘッド15a、15bに対応した一対の信号伝送用リング37a,37bと、一対のMRヘッド16a,16bに対応した信号伝送用リング37cと、一対のMRヘッド16a,16bの駆動に必要な電力を供給するための電力電送用リング37dとが、同心円状に配置されている。
【0059】これらのリング36a,36b,36c,36d,37a,37b,37c,37dは、回転軸31を中心として円環状に巻回されたコイルからなり、ステータコア36の各リング36a,36b,36c,36dとロータコア37の各リング37a,37b,37c,37dとがそれぞれ対向するように配されている。そして、このロータトランス35は、ステータコア36の各リング36a,36b,36c,36dとロータコア37の各リング37a,37b,37c,37dとの間で非接触にて信号や電力の伝送を行うようになっている。
【0060】また、回転ドラム装置11には、回転ドラム13を回転摺動させるモータ14が取り付けられている。このモータ14は、回転部分であるロータ38と、固定部分であるステータ39とを有している。ロータ38は、回転軸31の下端部に取り付けられており、駆動用マグネット40を備えている。一方、ステータ39は、固定ドラム12の下端部に取り付けられており、駆動用コイルを備えている。そして、駆動用コイル41に電流を供給することにより、ロータ38に取り付けられている回転軸31が回転し、それに伴って、回転軸31が固定されている回転ドラム13が回転駆動されることとなる。
【0061】次に、上述したような回転ドラム装置11による記録再生について、この回転ドラム装置11ならびにその周辺回路についての回路構成の概略を示す図5を参照して説明する。
【0062】上記回転ドラム装置11を用いて磁気記録媒体10に信号を記録する際は、先ず、モータ14の駆動用コイル41に電流が供給され、これより、回転ドラム13が回転駆動される。そして、回転ドラム13が回転している状態にて、図5に示すように、外部回路50からの記録信号が記録用アンプ51に供給される。
【0063】記録用アンプ51は、外部回路50からの記録信号を増幅し、一方のインダクティブ型磁気ヘッド15aによって信号を記録するタイミングの時、当該インダクティブ型磁気ヘッド15aに対応したステータコア36の信号伝送用リング36aに記録信号を供給し、また、他方のインダクティブ型磁気ヘッド15bによって信号を記録するタイミングの時、当該インダクティブ型磁気ヘッド15bに対応したステータコア36の信号伝送用リング36bに記録信号を供給する。
【0064】ここで、一対のインダクティブ型磁気ヘッド15a、15bは、上述したように、回転ドラム13の中心に対して互いに成す角度が180°となるように配されているので、これらのインダクティブ型磁気ヘッド15b,15bは、180°の位相差をもって交互に記録することとなる。すなわち、記録用アンプ51は、一方のインダクティブ型磁気ヘッド15aに記録信号を供給するタイミングと、他方のインダクティブ型磁気ヘッド15bに記録信号を供給するタイミングとを、180°の位相差をもって交互に切り換える。
【0065】そして、一方のインダクティブ型磁気ヘッド15aに対応したステータコア36の信号伝送用リング36aに供給された記録信号は、非接触にてロータコア37の信号伝送用リング37aに伝送される。そして、ロータコア37の信号伝送用リング37aに伝送された記録信号は、インダクティブ型磁気ヘッド15aに供給され、当該インダクティブ型磁気ヘッド15aにより、磁気記録媒体10に対して信号の記録がなされる。
【0066】同様に、他方のインダクティブ型磁気ヘッド15bに対応したステータコア36に信号伝送用リング36bに供給された記録信号は、非接触にてロータコア37の信号伝送用リング37bに伝送される。そして、ロータコア37の信号伝送用リング37bに伝送された記録信号は、インダクティブ型磁気ヘッド15bに供給され、当該インダクティブ型磁気ヘッド15bにより、磁気記録媒体10に対して信号の記録がなされる。
【0067】また、上記回転ドラム装置11を用いて、磁気記録媒体10からの信号を再生する際は、先ず、モータ14の駆動用コイルに電流が供給され、これにより、回転ドラム13が回転駆動される。そして、回転ドラム13が回転している状態にて、図5に示すように、オシレータ52から高周波の電流がパワードライブ53に供給される。
【0068】オシレータ52からの高周波の電流は、パワードライブ53によって所定の交流電流に変換された上で、ステータコア36の電力伝送用リング36dに供給される。そして、ステータコア36の電力伝送用リング36dに供給された交流電流は、非接触にてロータコア37の電力伝送用リング37dに伝送される。そして、ロータコア37の電力伝送用リング37dに伝送された交流電流は、整流器54により整流されて直流電流とされレギュレータ55に供給され、当該直流電流はレギュレータ55により所定の電圧に設定される。
【0069】そして、レギュレータ55によって所定の電圧に設定された電流は、一対のMRヘッド16a,16bにセンス電流として供給される。なお、一対のMRヘッド16a,16bには、当該MRヘッド16a,16bからの信号を検出する再生用アンプ56が接続されており、レギュレータ55からの電流は、この再生用アンプ56にも供給される。
【0070】ここで、MRヘッド16a,16bは、外部磁界の大きさによって抵抗値が変化するMR素子を備えている。そして、MRヘッド16a,16bは磁気記録媒体10から信号磁界によりMR素子の抵抗値が変化し、これにより、センス電流に電圧変化が現れるようになされている。
【0071】そして、再生用アンプ56は、この電圧変化を検出し、当該電圧変化に応じた信号を再生信号として出力する。なお、再生用アンプ56は、一方のMRヘッド16aによって信号を再生するタイミングの時、当該MRヘッド16aによって検出した信号を出力し、また、他方のMRヘッド16bによって信号を再生するタイミングの時、MRヘッド16bによって検出した再生信号を出力する。
【0072】ここで、一対のMRヘッド16a,16bは、上述したように、回転ドラム13の中心に対して互いに成す角度が180°となるように配されているので、これらのMRヘッド16a,16bは、180°の位相差をもって交互に再生することとなる。すなわち、再生用アンプ56は、一方のMRヘッド16aからの再生信号を出力するタイミングと他方のMRヘッド16bからの再生信号を出力するタイミングとを、180°の位相差をもって交互に切り替える。
【0073】そして、再生用アンプ56から再生信号は、ロータコア37の信号伝送用リード37cに供給され、この再生信号は、非接触にてステータコア36の信号伝送用リング36cに伝送される。ステータコア36の信号伝送用リング36cに伝送された再生信号は、再生用アンプ57によって増幅された上で、補正回路58に供給される。そして、再生信号は、補正回路58により所定の補正処理が施された後、外部回路50へと出力される。
【0074】なお、図5に示したような回路構成とした場合、一対のインダクティブ型磁気ヘッド15a,15b、一対のMRヘッド16a,16b、整流器54、レギュレータ55及び再生用アンプ56は、回転ドラム13に搭載され、回転ドラム13と共に回転する。一方、記録用アンプ51、オシレータ52、パワードライブ53、再生用アンプ57及び補正回路58については、回転ドラム装置11の固定部分に配するか、或いは、回転ドラム装置11とは別に構成された外部回路とする。
【0075】つぎに、上記回転ドラム13に搭載されるMRヘッド16a,16bについて、図6を参照して詳細に説明する。なお、MRヘッド16aおよび16bは、アジマス角が互いに逆になるように設定されている他は、同一の構成を有している。そこで、以下の説明では、これらのMRヘッド16a,16bをまとめてMRヘッド16と呼称する。
【0076】MRヘッド16は、回転ドラム13に搭載され、ヘリカルスキャン方式によって磁気記録媒体10からの信号を磁気抵抗効果を利用して検出する再生専用の磁気ヘッドである。一般にMRヘッドは、電磁誘導を利用して記録再生を行うインダクティブ型磁気ヘッドよりも感度が高く再生出力が大きくなるので、高密度記録に適している。したがって、再生用磁気ヘッドとしてMRヘッド16を用いることで、より高密度記録化を図ることができる。
【0077】そして、MRヘッド16は、図6に示すように、Ni−Zn多結晶フェライト等のような軟磁性材料からなる一対の磁気シールド61、62と、絶縁体63を介して介して一対の磁気シールド61、62によって挟持された略矩形状のMR素子部64とを備えている。なお、MR素子部64の両端からは、一対の端子が導出されており、これらの端子を介して、MR素子部64にセンス電流を供給できるようになされている。
【0078】MR素子部64は、磁気抵抗効果を有するMR素子と、SAL(Soft AdjacentLayer) 膜と、MR素子とSAL膜との間に配された絶縁体膜とが積層されてなる。MR素子は、異方性磁気抵抗効果(AMR)により、外部磁界の大きさによって抵抗値が変化するNi−Fe等のような軟磁性材料からなる。SAL膜は、いわゆるSALバイアス方式により、MR素子にバイアス磁界を印加するためのものであり、パーマロイ等のように低保磁力で高透磁率の磁性材料からなる。絶縁体膜は、MR素子とSAL膜との間を絶縁し、電子的な分流損を防ぐためのものであり、Ta等のような絶縁材料からなる。
【0079】このMR素子部64は、略矩形状に形成されてなり、一側面が磁気記録媒体摺動面65に露呈するように、一対の磁気シールド61、62によって絶縁体63を介して支持されている。詳細には、このMR素子部64は、短軸方向が磁気記録媒体摺動面65に対して略垂直となり、長軸方向が磁気記録媒体の摺動方向に対して略直交するように、一対の磁気シールド61、62によって絶縁体63を介して挟持されている。
【0080】このMRヘッド16の磁気記録媒体摺動面65は、当該磁気記録媒体摺動面65にMR素子部64の一側面が露呈するように、磁気記録媒体10の摺動方向に沿って円筒研磨されているとともに、磁気記録媒体10の摺動方向に対して直交する方向に沿って円筒研磨されている。これにより、このMRヘッド16は、MR素子部64あるいはその近傍部分が最も突出するようになされ、MR素子部64の磁気記録媒体10に対する当たり特性を良好なものとすることができる。
【0081】そして、以上のようなMRヘッド16を用いて、磁気記録媒体10からの信号を再生する際には、図7に示すように、磁気記録媒体10をMR素子部64に摺動させる。なお、図7中に示した矢印は、磁気記録媒体10が磁化されている様子を模式的に示している。
【0082】そして、このように磁気記録媒体10をMR素子部64に摺動させた状態で、MR素子部64の両端に接続された端子64a、64bを介して、MR素子部64にセンス電流を供給し、当該センス電流の電圧変化を検出する。具体的には、MR素子部64の一端に接続された端子64aから、所定の電圧Vcを印加するとともに、MR素子部64の他端に接続された端子64bを、回転ドラム13に接続しておく。ここで、回転ドラム13は、回転軸31を介して固定ドラム12に電気的に導通しており、また、固定ドラム12は接地されている。したがって、MR素子部64に接続された一方の端子64bは、回転ドラム13、回転軸31及び固定ドラム12を介して接地されている。
【0083】そして、磁気記録媒体10を摺動させた状態で、MR素子部64にセンス電流を供給すると、磁気記録媒体10からの磁界に応じて、MR素子部64に形成されたMR素子の抵抗値が変化し、その結果、センス電流に電圧変化が生じる。そこで、このセンス電流の電圧変化を検出することにより、磁気記録媒体10からの信号磁界が検出され、磁気記録媒体10に記録されている信号が再生される。
【0084】なお、用いるMRヘッド16において、MR素子部64に形成されるMR素子は、磁気抵抗効果を示す素子であればよく、例えば、複数の薄膜を積層することにより、より多くの磁気抵抗効果を得られるようにした、いわゆる巨大磁気抵抗効果素子(GMR素子)も使用可能である。
【0085】また、MR素子にバイアス磁界を印加する手法は、SALバイアス方式でなくてもよく、例えば永久磁石バイアス方式、シャント電流バイアス方式、自己バイアス方式、交換バイアス方式、バーバーポール方式、分割素子方式、サーボバイアス方式等、種々の手法が適用可能である。なお、巨大磁気抵抗効果並びに各種のバイアス方式については、例えば丸善株式会社の「磁気抵抗ヘッド基礎と応用林和彦訳」に詳細に記載されている。
【0086】以下に、本発明の磁気記録媒体10について、具体的に〔実施例〕および〔比較例〕の磁気記録媒体を挙げて説明するが、本発明の磁気記録媒体は、以下に示す例に限定されるものではない。
【0087】〔実施例1〕先ず、磁気記録媒体10を構成する磁性層2を形成するために用いる磁性分散液組成物を調整した磁性層用分散液の組成について以下に示す。
〔磁性層用分散液組成〕
強磁性粉末:Fe−Co(Co30原子%) :100〔重量部〕
結合剤:塩化ビニル酢酸ビニル共重合体A :17〔重量部〕
無機粉末(研磨剤):α−アルミナ : 2〔重量部〕
溶剤 :シクロヘキサノン :100〔重量部〕
メチルエチルケトン :100〔重量部〕
トルエン :100〔重量部〕
潤滑剤:ブチルステアレート : 2〔重量部〕
ステアリン酸 : 1〔重量部〕
帯電防止剤:(下記に示す) :0.3〔重量部〕
【0088】上記の材料を、ニーダーで混練処理を施し、サンドミル処理を行い分散し、磁性層用分散液とした。そして、日本ポリウレタン製硬化剤「コロネートL」3〔重量部〕を添加し、攪拌均一にして磁性塗料とした。
【0089】磁性粉末は、比表面積約45〔m2 /g〕、長軸径0.1〔μm〕、σS 145〔emu/g〕、Hc2300〔Oe〕のものを使用した。塩化ビニル酢酸ビニル共重合体Aには、数平均分子量(Mn)9000、ガラス転移点70℃、官能基としてスルホン酸塩を0.1〔mmol/g〕含有するものを使用した。α−アルミナには、粒子サイズが0.3〔μm〕のものを使用した。
【0090】〔実施例1〕においては、磁性塗料中に帯電防止剤として、下記〔化1〕のオレイルアルコール硫酸エステルナトリウム塩を適用した。
【化1】CH3 (CH2 7 CH=CH(CH2 7 CH2 SO3 Na【0091】磁性塗料を塗布した後、バックコート層を形成し、その後磁場配向処理を行い、乾燥させて巻き取りを行った。さらにカレンダー処理を施し、硬化処理し、厚さ0.3〔μm〕の磁性層3を形成した。
【0092】なお、分子量測定は、GPC法(高速液体クロマトグラフィ〔Water 社:Model 1500/ 検出器:Shodex RI SE-61 〕、カラム〔Shodex KF804 +KF803 +KF802 +KF801 〕を用いて測定した。ガラス転移点の測定は、バイブロン法(昇温速度2〔℃/分〕、10〔Hz〕)で行った。比表面積は、表面積測定装置(BET法)により求めた。
【0093】上述のようにして作製した広幅のテープを任意の幅にスリットしたものをサンプルの磁気テープとした。
【0094】〔実施例2〕上記〔実施例1〕の〔磁性層用分散液組成〕中の帯電防止剤として、下記〔化2〕に示すモノラウリン酸ソルビタンを適用した。
【化2】

他の条件は上記〔実施例1〕と同様にして、サンプルの磁気テープを作製した。
【0095】〔実施例3〕上記〔実施例1〕の〔磁性層用分散液組成〕中の磁性粉に、二酸化炭素吸着乾燥により、3〔重量%〕のカーボンを被着させたものを用いた。他の条件は上記〔実施例1〕と同様にして、サンプルの磁気テープを作製した。
【0096】〔実施例4〕上記〔実施例1〕の〔磁性層用分散液組成〕中の結合剤の塩化ビニル酢酸ビニル共重合体Aに代えて、数平均分子量(Mn)8000、ガラス転移点70〔℃〕、官能基として第四級アンモニウム塩を0.1〔mmol/g〕含有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合体Bを用いた。他の条件は、上記〔実施例1〕と同様にして、サンプルの磁気テープを作製した。
【0097】〔実施例5〕上記〔実施例1〕の〔磁性層用分散液組成〕中の結合剤の塩化ビニル酢酸ビニル共重合体Aに代えて、数平均分子量(Mn)9000、ガラス転移点65〔℃〕、官能基として第四級アンモニウム塩を0.08〔mmol/g〕含有するポリエステルポリウレタン樹脂を用いた。他の条件は、上記〔実施例1〕と同様にして、サンプルの磁気テープを作製した。
【0098】〔実施例6〕上記〔磁性層用分散液組成〕中の、無機粉末(研磨剤)のα−アルミナの代えて、粒子状カーボンで被覆した粒径0.3〔μm〕のα−Fe2 3 を用いた。他の条件は、上記〔実施例1〕と同様にして、サンプルの磁気テープを作製した。
【0099】〔実施例7〕上記〔磁性層用分散液組成〕中の磁性粉に、二酸化炭素吸着乾燥により、3〔重量%〕のカーボンを被着させたものを用いた。結合剤として、数平均分子量(Mn)8000、ガラス転移点70〔℃〕、官能基として第四級アンモニウム塩を0.1〔mmol/g〕含有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合体Bを用いた。また、〔磁性層用分散液組成〕中の、無機粉末(研磨剤)のα−アルミナの代えて、粒子状カーボンで被覆した粒径0.3〔μm〕のα−Fe2 3 を用いた。他の条件は、上記〔実施例1〕と同様にして、サンプルの磁気テープを作製した。
【0100】〔比較例1〕上記〔磁性層用分散液組成〕中の帯電防止剤に代えて、粒子サイズが30〔nm〕のカーボンブラックを3〔重量部〕添加した。他の条件は、上記〔実施例1〕と同様にして、サンプルの磁気テープを作製した。
【0101】〔比較例2〕上記〔磁性層用分散液組成〕中の帯電防止剤に代えて、粒子サイズが30〔nm〕のカーボンブラックを10〔重量部〕添加した。他の条件は、上記〔実施例1〕と同様にして、サンプルの磁気テープを作製した。
【0102】上記のような〔実施例1〕〜〔実施例7〕および〔比較例1〕、〔比較例2〕において作製した各サンプルの磁気テープについて、磁気特性(角形比および保磁力)、磁性層の電気抵抗値、および走行耐久性の測定を行った。磁気特性は、磁気特性測定装置(VSM)を用いて測定した。
【0103】また、磁性層の電気抵抗値は、JIS磁気テープ録音再生システム 第4部磁気テープの機械的特性〔JIS C 5565−1989(IEC 94−4−1986)〕の5.7 「磁性層及びバックコート層(ある場合)の電気抵抗」に準拠して測定した。このとき、室温22〔℃〕、湿度60〔%RH〕環境下で24時間以上放置し、その後、同環境下において測定した。
【0104】また、走行耐久性についての試験は、磁気テープを8〔mm〕幅に切り出し、8ミリビデオデッキを用いて調べた。ビデオデッキには、ソニー社製WV−TW1を用い、長時間(一時間)スチルテストを行った。なお、走行耐久性のテストにおいては、テープ保護用の回路を解除した。記録周波数は5〔MHz〕とする。一時間走行後の各サンプルの磁気テープのレベルダウンを数値化し、比較例1のレベルダウン幅を100〔%〕として、これを基準とした比較評価を行った。
【0105】評価結果を下記〔表1〕に示す。なお、〔表1〕において、レベルダウン幅が90%以下のものを○、90〜105〔%〕のものを△、105%以上のものを×として評価した。
【0106】
【表1】

【0107】上記〔表1〕に示すように、厚さが0.01〜0.3〔μm〕の薄層型の磁性層を有する磁気記録媒体であって、磁性層の電気抵抗値が、1.0×105 〜1.0×109 〔Ω/sq〕に選定した〔実施例1〕〜〔実施例7〕の磁気テープは、多数回(長時間)連続走行させた場合においても、きわめてレベルダウンが少なく、静磁気特性に関しても良好であることがわかった。
【0108】一方において、磁性層に帯電防止剤を含有させず、カーボンブラックを添加し、磁性層の電気抵抗値が1.0×109 〔Ω/sq〕を越えた〔比較例1〕においては、上記〔実施例1〕〜〔実施例7〕の磁気テープに比して、多数回走行させた場合に、レベルダウンが大きくなった。
【0109】また、〔比較例2〕に示すように、磁性層中にカーボンブラックを添加して電気抵抗を下げる場合において、磁性層の電気抵抗値が1.0×105 〜1.0×109 〔Ω/sq〕の範囲内となるようにしようとすると、カーボンブラックの添加量が10〔重量部〕程度必要になってしまい、カーボンブラック量が過剰であるため、磁性層自体の強度が劣化し、走行中磁性層の剥離を招来し、レベルダウンが大きくなり、磁性層としての機能を維持することが困難になるという問題を生じた。
【0110】本発明の磁気記録媒体においては、上述した例に限定されるものではない。例えば、帯電防止剤は、磁性層3に含有させる場合の他、非磁性支持体1中、あるいはバックコート層2中に含有させることもできる。さらに、磁性層3上にトップコート層として帯電防止剤を適宜塗布することもできる。
【0111】本発明の磁気記録媒体においては、厚さが0.01〜0.3〔μm〕以下の磁性層3を有するいわゆる薄型の磁気記録媒体10において、磁性層3の電気抵抗値を1.0×105 〜1.0×109 〔Ω/sq〕に選定したことによって、走行耐久性の向上を図ることができた。
【0112】
【発明の効果】本発明の磁気記録媒体においては、厚さが0.01〜0.3〔μm〕以下の磁性層3を有するいわゆる薄型の磁気記録媒体10において、磁性層3の電気抵抗値を1.0×105 〜1.0×109 〔Ω/sq〕に数値内に作製したことによって、走行耐久性の向上を図ることができた。
【0113】本発明においては、磁性層の厚さを0.3μm以下としたことによって、短波長成分の再生時の厚さ損失や、記録時の自己減磁損失の低減化が図られ、優れた磁気特性を有する高密度記録の磁気記録媒体を得ることができた。
【0114】また、本発明においては、磁性層と非磁性支持体1との間に所定の材料層を形成する場合においても、材料層の厚さを、特に0.5〔μm〕未満とし、最終的に得られる磁気記録媒体を薄層型としたことによって、単位体積あたりの記録容量を増大させることができ、高密度記録の磁気記録媒体を得ることができた。
【出願人】 【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニー株式会社
【出願日】 平成12年8月11日(2000.8.11)
【代理人】 【識別番号】100080883
【弁理士】
【氏名又は名称】松隈 秀盛
【公開番号】 特開2002−56517(P2002−56517A)
【公開日】 平成14年2月22日(2002.2.22)
【出願番号】 特願2000−244605(P2000−244605)