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【発明の名称】 磁気ヘッドの製造方法、磁気ヘッド、及び磁気ディスク装置
【発明者】 【氏名】斉藤 和浩

【要約】 【課題】積層タイプの固着磁性層を有する磁気ヘッドにおいて、固着磁性層に対する磁化の固着を有効に行なうことを可能すること。

【解決手段】磁気ヘッドを外部より加熱するヒーターを用いて加熱する加熱工程と、加熱工程による磁気ヘッドの加熱と同時に磁気ヘッドのリードに電流を加える電流印加工程とからなり、電流印加工程で、通電回路によって加えられた電流がリードを介して磁気抵抗効果膜を流れる際に発生する熱で磁気ヘッドを加熱し加熱工程からの加熱と合わせて磁化固着層の温度をブロッキング温度以上にすると共に、磁気抵抗効果膜から発生する電流磁化を磁化固着層の強磁性層に加えることにより、強磁性層の磁化を固着する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の強磁性層を積層した構成の磁化固着層を持つ磁気抵抗効果膜と前記磁気抵抗効果膜に電流を加えるためのリードとを有する磁気ヘッドの製造方法において、前記磁気ヘッドを外部より加熱するヒーターを用いて前記磁気ヘッドを加熱する加熱工程と、前記加熱工程による前記磁気ヘッドの加熱と同時に、前記磁気ヘッドの前記リードに電流を加える通電回路を用いて前記リードに電流を加える電流印加工程とからなり、前記電流印加工程では、前記通電回路によって加えられた電流が前記リードを介して前記磁気抵抗効果膜を流れる際に発生する熱で前記磁気ヘッドを加熱し前記加熱工程における外部からの加熱と合わせて前記磁化固着層をブロッキング温度以上にすると共に、前記磁気抵抗効果膜から発生する電流磁界を前記磁化固着層の前記強磁性層に加えることにより、前記強磁性層の磁化を固着することを特徴とする磁気ヘッドの製造方法。
【請求項2】 前記加熱工程と前記電流印加工程は、前記磁気ヘッドの高さを調整する加工を実施後の形状が確定した状態の前記磁気ヘッドに対して行なうことを特徴とする請求項1記載の磁気ヘッドの製造方法。
【請求項3】 前記電流印加工程は、前記加熱工程において前記磁気ヘッドに対して前記ヒーターによる加熱を終了した後に、前記磁気ヘッドの前記リードに対する前記通電回路からの電流の印加を終了することを特徴とする請求項1記載の磁気ヘッドの製造方法。
【請求項4】 前記電流印加工程による前記磁気ヘッドの前記リードへの電流の印加と同時に、磁界を発生する電磁石を用いて前記磁気ヘッドに前記磁界を印加する磁界印加工程を更に行なうことを特徴とする請求項1記載の磁気ヘッドの製造方法。
【請求項5】 前記電流印加工程は、前記リードに対して短時間のパルス電流を印加するパルス電流印加工程と、前記パルス電流印加工程により前記パルス電流を印加した後に、前記パルス電流よりも値が小さく且つ前記パルス電流よりも長期間に亘り電流を印加する第2の電流印加工程とからなることを特徴とする請求項1記載の磁気ヘッドの製造方法。
【請求項6】 複数の強磁性層を積層した構成の磁化固着層を持つ磁気抵抗効果膜と前記磁気抵抗効果膜に電流を加えるためのリードと備えた再生部と、前記再生部の上に形成された記録部とを有する磁気ヘッドの製造方法において、前記記録部に電流を流すことにより前記記録部に発生する熱で磁気ヘッドを加熱する加熱工程と、前記加熱工程による前記磁気ヘッドの加熱と同時に、前記磁気ヘッドの前記リードに電流を加える通電回路を用いて前記リードに電流を加える電流印加工程とからなり、前記電流印加工程では、前記通電回路によって加えられた電流が前記リードを介して前記磁気抵抗効果膜を流れる際に発生する熱で前記磁気ヘッドを加熱し前記記録部からの加熱と合わせて前記磁化固着層の温度をブロッキング温度以上にすると共に、前記磁気抵抗効果膜から発生する電流磁界を前記磁化固着層の前記強磁性層に加えることにより、前記強磁性層の磁化を固着することを特徴とする磁気ヘッドの製造方法。
【請求項7】 複数の強磁性層を積層した構成の磁化固着層を持つ磁気抵抗効果膜と、前記磁気抵抗効果膜に媒体磁界方向とほぼ平行に電流を加えるための一対のリードとを有する磁気ヘッドの製造方法において、前記磁気ヘッドを外部より加熱するヒーターを用いて前記磁気ヘッドを加熱する加熱工程と、前記加熱工程による前記磁気ヘッドの加熱と同時に、前記磁気ヘッドの前記リードに電流を加える通電回路を用いて前記リードに電流を加える電流印加工程とからなり、前記電流印加工程では、前記通電回路によって前記磁化固着膜の磁化が媒体磁界方向に向くに必要な値の電流を加え、当該電流が前記リードを介して前記磁気抵抗効果膜を流れる際に発生する熱で前記磁気ヘッドを加熱し前記加熱工程における外部からの加熱と合わせて前記磁化固着層をブロッキング温度以上にすると共に、前記磁気抵抗効果膜から発生する電流磁界を前記磁化固着層の前記強磁性層に加えることにより、前記強磁性層の磁化を固着することを特徴とする磁気ヘッドの製造方法。
【請求項8】 複数の強磁性層を積層した構成の磁化固着層を持つ磁気抵抗効果膜と前記磁気抵抗効果膜に電流を加えるためのリードとを有する磁気ヘッドにおいて、前記強磁性層のうち反強磁性膜に接する強磁性層の中央付近の位置の磁化の向きが信号磁界に略平行であり、且つ、前記強磁性層の前記リードに近い位置の磁化の向きが前記中央付近の位置の磁化の向きに対して少なくとも10度以上の傾きを有していることを特徴とする磁気ヘッド。
【請求項9】 複数の強磁性層を積層した構成の磁化固着層を持つ磁気抵抗効果膜と前記磁気抵抗効果膜に電流を加えるための一対のリードとを有する磁気ヘッドにおいて、前記一対のリードが媒体磁界方向に平行に並んだ状態で、且つ、前記一対のリードの間に前記磁気抵抗効果膜が配置され、前記磁気抵抗効果膜に媒体磁界方向とほぼ平行に電流が流れる構成であることを特徴とする請求項8記載の磁気ヘッド。
【請求項10】 複数の強磁性層を積層した構成の磁化固着層を持つ磁気抵抗効果膜と前記磁気抵抗効果膜に電流を加えるためのリードとを有する磁気ヘッドを備えた磁気ディスク装置において、前記磁気ヘッドを外部より加熱するヒーターを具備し、前記ヒーターを用いて前記磁気ヘッドを加熱すると同時に前記リードに電流を加え、当該電流が前記リードを介して前記磁気抵抗効果膜を流れる際に発生する熱で前記磁気ヘッドを加熱することで前記ヒーターからの加熱と合わせて前記磁化固着層の温度をブロッキング温度以上にすると共に、前記磁気抵抗効果膜から発生する電流磁界を前記磁化固着層の前記強磁性層に加えることにより、前記強磁性層の磁化を固着することを特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項11】 複数の強磁性層を積層した構成の磁化固着層を持つ磁気抵抗効果膜と前記磁気抵抗効果膜に電流を加えるためのリードとを有する磁気ヘッドを備えた磁気ディスク装置において、前記磁気ヘッドは、前記磁気抵抗効果膜に近接して積層された磁気シールドと、前記磁気シールドに電流を加えるための磁気シールド用リードを更に具備し、前記前記シールド用リードを介して前記磁気シールドに電流を加え前記シールドから発生する熱で前記磁気ヘッドを加熱すると同時に、前記リードに電流を加え、当該電流が前記リードを介して前記磁気抵抗効果膜を流れる際に発生する熱で前記磁気ヘッドを加熱することで前記シールドからの加熱と合わせて前記磁化固着層の温度をブロッキング温度以上にすると共に、前記磁気抵抗効果膜から発生する電流磁界を前記磁化固着層の前記強磁性層に加えることにより、前記強磁性層の磁化を固着することを特徴とする磁気ディスク装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気抵抗効果型の磁気ヘッドの製造方法、磁気ヘッド、及び磁気ディスク装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、磁気記録の高密度化が進み、HDDでは10Gbit/inch2という高記録密度のシステムが実用化されており、さらなる高密度化が要求されている。このような高記録密度システムにおける磁気ヘッドとしては、再生感度向上の観点から磁性薄膜の電気抵抗が外部磁界によって変化するという、巨大磁気抵抗効果(GMR)を用いた磁気抵抗効果型の磁気ヘッドが用いられている。
【0003】一般的なシールド型GMRヘッド(以下、シールド型GMRヘッドを磁気ヘッドと呼ぶ)の一構成を図1に示している。同図において、1はAl2O3・TiC等からなる基板であり、この基板1上にはパーマロイ等の軟磁性膜からなる磁気シールド層2が形成されている。磁気シールド層2上には、再生磁気ギャップを構成する絶縁膜3を介して、GMR膜4(磁気抵抗効果膜)があり、その両端にGMR膜4の磁化自由層を単磁区化する目的でCoPt等からなる硬磁性層5と一対のリード6が接続されている。このGMR膜4と硬磁性層5と一対のリード6とにより、アバット ジャンクション方式のMR素子7(磁気抵抗効果素子)が構成されている。MR素子7上には、再生磁気ギャップを構成する絶縁層8を介して、磁気シールド層9が形成されている。このような一般的な磁気ヘッドにおける信号磁界の検出は、例えば、一対のリード6にセンス電流を流し、平均磁化方向の変化に応じたGMR膜4の抵抗の変化を測定することで行なう。
【0004】更に、一般的な磁気ヘッドのGMR膜4は、図2に示す基本構成を持っている。即ち、反強磁性層11、磁化固着層12、非磁性中間層13、磁化自由層14が順次積層された構成となる。反強磁性層11には、PtMn、NiMn、IrMn、FeMn、NiO等の反強磁性材料が用いられる。非磁性中間層13はCuが一般的である。磁化自由層14はCo、Ni、Fe、又は合金である強磁性材料及びその積層が用いられ、CoFeにNiFeを積層したものがよく用いられる。
【0005】そして、磁化固着層12は、強磁性層12a、交換結合層12b、強磁性層12cが順次積層された構成となっている。強磁性層12a、12cには磁化自由層14と同様の材料が用いられ、例えば、CoFeがよく用いられる。交換結合層12bはRu、Cr、V等が用いられる。このような磁化固着層12の積層構造は、交換結合層12bによって強磁性層12aと強磁性層12cの磁化を互いに反強磁性的になるように設計されている。なお、この結合は成膜することのみで十分得られる。こうして磁化固着層12全体の磁化をゼロに近くすることによって、従来の磁化固着層が単層膜のものよりも電流バイアスの動作点設計を容易とし、また静電破壊などの耐熱性を向上させている。
【0006】なお、上述では、GMR膜4は、反強磁性層11、磁化固着層12、非磁性中間層13、磁化自由層14の順に積層すると説明したが、これに限らず、磁化自由層、非磁性中間層、磁化固着層、反強磁性層の順に積層するようにしても良い。
【0007】ところで、上述したように磁化固着層12を積層構造とした構成を実現し、さらに磁化固着層12と磁化自由層14の磁化を略直交に保つためには、熱処理プロセスが必要となる。一例を示すと、磁界をかけながらブロッキング温度付近(250℃)で磁気シールド2、9とGMR膜4の磁化自由層14に誘導磁気異方性を付与し、その後、GMR膜4の磁化固着層12の磁化の固着したい方向に磁界を向けて冷却する。熱処理後、硬磁性膜5を着磁して、磁化自由層14にバイアス磁界を付与することで、磁化自由膜14のバルクハウゼンノイズの発生を抑える構成とする。ここで、ブロッキング温度とは、反強磁性層11と磁化固着層12中の強磁性層12aの磁化を固定する際の温度のことを言い、その温度は材料に依存するが250℃から400℃程度である。なお、磁化固着層12内の交換結合は上記の熱処理の影響を殆ど受けない。
【0008】しかしながら、従来の熱処理の方法では、磁気ヘッドで用いるレジストとの温度の整合性から、磁気ヘッドの再生部の製造段階、つまり磁気ヘッドがウエハの状態のままで行なうことが通常である。従って、単層タイプの磁化固着層を有するものの場合には有効な方法である。
【0009】一方、積層タイプの磁化固着層12の場合、交換結合層12bが存在するためこの交換結合層12bの交換結合力を超える大きな磁界をかけることが必要となるが、磁気ヘッドがウエハの状態のままで、そのような大きな磁界をかけることは困難である。すなわち、磁気ヘッドがウエハの状態のときには、3インチを超えるウエハ全体の広い範囲に均等に且つ大きな磁界をかける必要があるが、この場合には、非常に巨大な電磁石の設備が必要となり、そのような広い範囲に均等に且つ大きな磁界をかける設備の開発は困難である。
【0010】例えば、強磁性層12aに3[nm]を下回るCo系材料を用い、交換結合層12bにRuを用いた場合には、強磁性層12aの磁化が完全にその強磁性層12aにかける磁界と平行になるようにするためには、1185k[A/m](≒15k[Oe])にも達する磁界をかける必要がある。
【0011】更に、従来の熱処理は、磁気シールド2の上にフォトレジスト工程でパターンを作成することでGMR4膜を形成した後に行なわれる。GMR膜4をパターニングすると、外部からの磁界がGMR膜4のパターニングによる形状からの反磁界の影響を受けて、GMR膜4の中に磁界が入り難くなるので、上記した1185k[A/m](≒15k[Oe])よりも更に大きな磁界をかける必要がある。また、磁気ヘッドの再生部に対して不十分な値である小さな磁界で熱処理を行なった場合には、その後の記録部に対する熱処理工程により、磁化固着層12の磁化の固着が外れてしまう恐れもある。
【0012】更には、磁気ヘッドの再生部の上層に記録部を製造した後、機械加工を用いて分割し一定数量の磁気ヘッドが載ったバーの状態になったものに対して、磁界をかけることが考えられる。この場合は、磁界をかける必要のある範囲は広くないため、大きな装置は必要ない。しかし、記録部にレジストなどの有機材料が使われるため、200℃を超える温度に加熱して熱処理をすることは困難である。
【0013】また、上記では磁化固着層は2層の強磁性層を有する構成の場合を説明したが、強磁性層を3層以上に積層した構成も考えられる。強磁性層が3層の場合、強磁性層、交換結合層、強磁性層、交換結合層、強磁性層と順次積層された構成となる。したがって、交換結合層が2層存在するため、強磁性層を飽和させるために、よりいっそう大きな磁界をかける必要があるが、上述したように、再生ヘッドがウエハの状態のときにそのような大きな磁界をかけることは困難である。更に、磁化固着層の強磁性層を4層以上にした場合には、磁化固着層の磁化の固着を行なうことはなおさら困難になる。このことは、交換結合層でなく、Cu等からなる非磁性中間層の多層構造である人口格子膜(強磁性層と非磁性中間層とが交互にn層分積層した層を形成し、その層上に硬磁性層、反強磁性層を順次積層し形成したような膜)や、あるいは交換結合層と人口格子膜との組合せを考えれば困難であることは明確である。
【0014】また、米国特許第5,650,887には、磁気ヘッドに与える電流にパルスを加え磁化固着層の劣化を補正するシステムが提案されている。しかし、このシステムでは、積層タイプの磁化固着層を用いたものについては考慮されていない。磁化固着層が積層タイプの場合には、図11に示すように印加する電流に対して複雑な磁化の動きを示すが、この積層タイプの磁化固着層の複雑な磁化の動きと、図10の電流の方向に伴う電流磁界の方向を磁化の変化と合わせて考慮すると、電流を止めて磁気ヘッドが冷却される過程で、その磁化固着層の磁化が不確定な方向を示してしまうことが考えられる。さらに、電流だけで磁気ヘッドを加熱すると、内部の電流分布も大きくなるため、電流にパルスを用いて制御することは困難である。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】このように、従来の熱処理の方法では、積層タイプの磁化固着層を有する磁気ヘッドに対して、その磁化固着層の磁化の固着を有効に行なうことが困難であった。このため、積層タイプの磁化固着層の優れた特性を生かすために、従来の熱処理の方法に代わる熱処理の方法、及び、ヘッド構造が要求されている。
【0016】そこで、本発明では、積層タイプの固着磁性層を有する磁気ヘッドにおいて、固着磁性層に対する磁化の固着を有効に行なうことを可能とし、それにより固着磁性層の特性を引き出すことが可能な熱処理を行なう製造方法、ヘッド構造及び磁気ディスク装置を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明の磁気ヘッドの製造方法は、複数の強磁性層を積層した構成の磁化固着層を持つ磁気抵抗効果膜と前記磁気抵抗効果膜に電流を加えるためのリードとを有する磁気ヘッドの製造方法において、前記磁気ヘッドを外部より加熱するヒーターを用いて前記磁気ヘッドを加熱する加熱工程と、前記加熱工程による前記磁気ヘッドの加熱と同時に、前記磁気ヘッドの前記リードに電流を加える通電回路を用いて前記リードに電流を加える電流印加工程とからなり、前記電流印加工程では、前記通電回路によって加えられた電流が前記リードを介して前記磁気抵抗効果膜を流れる際に発生する熱で前記磁気ヘッドを加熱し、前記加熱工程における外部からの加熱と合わせて前記磁化固着層をブロッキング温度以上にすると共に、前記磁気抵抗効果膜から発生する電流磁界を前記磁化固着層の前記強磁性層に加えることにより、前記強磁性層の磁化を固着することを特徴とする。
【0018】また、本発明の磁気ヘッドは、複数の強磁性層を積層した構成の磁化固着層を持つ磁気抵抗効果膜と前記磁気抵抗効果膜に電流を加えるためのリードとを有する磁気ヘッドにおいて、前記強磁性層のうち反強磁性膜に接する強磁性層の中央付近の位置の磁化の向きが信号磁界に略平行であり、且つ、前記強磁性層の前記リードに近い位置の磁化の向きが前記前記中央付近の位置の磁化の向きに対して少なくとも10度以上の傾きを有していることを特徴とする。
【0019】また、本発明の磁気ディスク装置は、複数の強磁性層を積層した構成の磁化固着層を持つ磁気抵抗効果膜と前記磁気抵抗効果膜に電流を加えるためのリードとを有する磁気ヘッドを備えた磁気ディスク装置において、前記磁気ヘッドを外部より加熱するヒーターを具備し、前記ヒーターを用いて前記磁気ヘッドを加熱すると同時に前記リードに電流を加え、当該電流が前記リードを介して前記磁気抵抗効果膜を流れる際に発生する熱で前記磁気ヘッドを加熱することで前記ヒーターからの加熱と合わせて前記磁化固着層の温度をブロッキング温度以上にすると共に、前記磁気抵抗効果膜から発生する電流磁界を前記磁化固着層の前記強磁性層に加えることにより、前記強磁性層の磁化を固着することを特徴とする。
【0020】上記構成により、再生部に積層タイプの固着磁性層を持つ磁気抵抗効果膜を有する磁気ヘッドの固着磁性層に対する磁化の固着を確実に行なうことが可能となる。
【0021】
【発明の実施の形態】(第1の実施形態)以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る第1の製造方法で熱処理を行なう磁気ヘッドの再生部の一構成図である。1はAl2O3・TiC等からなる基板であり、この基板1上にはパーマロイ等の軟磁性膜からなる磁気シールド2が形成されている。磁気シールド2上には、再生磁気ギャップを構成する絶縁膜3を介して、GMR膜4があり、その両端にGMR膜4の磁化自由層を単磁区化する目的でCoPt等からなる硬磁性層5と一対のリード6が接続されている。このGMR膜4と硬磁性層5と一対のリード6とにより、アバット ジャンクション方式の磁気抵抗効果素子(MR素子)7が構成されている。磁気抵抗効果素子7上には、再生磁気ギャップを構成する絶縁層8を介して、磁気シールド9が形成されている。
【0022】更に、GMR膜4は図2に示すように、反強磁性層11、磁化固着層12、非磁性中間層13、磁化自由層14が順次積層された構成となる。磁化自由層14にはCo90Fe10、又はCo90Fe10にNi80Fe20を積層した積層膜などからなるCo系、Fe系軟磁性材料が用いられる。
【0023】磁化固着層12には、強磁性層12a、交換結合層12b、強磁性層12cが順次積層された構成となっている。交換結合層12bにはRu、Crなど強磁性層12aと強磁性層12cとを反強磁性的に結合させる材料を用い、強磁性層12aと強磁性層12cの磁化が互いに逆向きになるように設計されている。この交換結合は、300℃付近までほぼ一定の値で保たれる。したがって、磁化固着層12の全体の磁化はゼロに近く設計されている。電流磁界の分布を考慮し、磁化固着層12を構成する2つの強磁性層12a、12cのうち、反強磁性層11に接する強磁性層12aの磁化をもう一方の強磁性層12cの磁化よりも小さくしても良い。反強磁性層11は、PtMn、IrMnなどMn系反強磁性体、またNiO、CoOなどに代表される酸化物系反強磁性体などが使われ、磁化固着層12の強磁性層12aの磁化を固定する役割を果たす。
【0024】(第1の製造方法)次に、本発明の実施の形態に係る第1の製造方法を以下に説明する。本発明の第1の製造方法では、磁気ヘッドの形状が確定した状態で熱処理を行なう。熱処理は、磁気ヘッドを外部からの加熱と、磁気ヘッドの再生部への通電(すなわちリード6を介してGMR膜4に電流を印加する)による加熱とで、磁気ヘッドの温度を反強磁性層11のブロッキング温度近傍にすると共に、更にこの通電によりGMR4の特に非磁性中間層13を流れる電流を中心として発生する電流磁界を磁化固着層12にかけることにより、磁化固着層12の磁化を固着するようにしている。
【0025】ここで、磁気ヘッドの形状が確定した状態とは、次の工程で得られたものを言う。図1の磁気ヘッドの再生部の磁気シールド9の上層に記録部を作成した後、機械加工を用いて、一定数量の磁気ヘッドが載ったバーの状態に分割する。その後、バーの状態のウエハに載っている各々の磁気ヘッドの高さを調整した後、機械加工を用いて一つ一つの磁気ヘッドに分割する。そして、その分割した磁気ヘッドを各々サスペンションに貼りつける。上述した工程において、ウエハを分割してバーの状態にしたもの、及び、磁気ヘッドを各々サスペンションに貼りつけたヘッド・ジンバル・アセンブリの状態としたものが磁気ヘッドの形状が確定した状態である。
【0026】本発明の第1の製造方法では、バーの状態に分割する前のウエハの状態の場合でも熱処理を行なうことが可能である。しかしこの場合、ウエハの上に形成された膜を直接加工することとなるため、静電破壊や磁化固着層不良のトラブルが生じる可能性が高い。これに対して、磁気ヘッドの形状が確定した状態で熱処理を行なう場合は、そのような静電破壊や磁化固着層不良のトラブルが生じ難いため、本発明の第1の製造方法では、磁気ヘッドの形状が確定した状態のものに対して熱処理を行なうこととしている。
【0027】(製造装置)図3に、本発明の第1の製造方法に用いられる製造装置を示す。この製造装置では、ウエハを分割してバーの状態にしたもの、及び、ヘッド・ジンバル・アセンブリの状態にしたものについて熱処理を行なうことが可能である。図3では、ヘッド・ジンバル・アセンブリ21を対象にして熱処理を行なう例を示している。
【0028】本発明の製造装置は、ヘッド・ジンバル・アセンブリ21の磁気ヘッドの再生部に通電する通電回路22と、ヘッド・ジンバル・アセンブリ21の磁気ヘッドの再生部を加熱するためのヒーター23とを有する。また、ヘッド・ジンバル・アセンブリ21の磁気ヘッドに磁界をかける電磁石24を有している。製造装置では、電磁石24で磁気ヘッドに磁界をかけ、磁気ヘッドの再生部の電圧変化を読み取ることが出来るようになっており、その場で磁気ヘッドの再生部の再生特性を評価することが可能である。なお、ヒーター23にはオーブンなどを用いても良い。
【0029】以下に、この製造装置を用いた熱処理の実施方法について説明する。先ず、ヒーター23で、ヘッド・ジンバル・アセンブリ21の磁気ヘッドを加熱し、磁気ヘッドの温度をT1まで上昇させる。ヒーター23の温度は少なくとも室温よりは高く、50℃以上とする。この状態で、通電回路22よりヘッド・ジンバル・アセンブリ21の磁気ヘッドの再生部を電流Ibにて通電する。即ち、磁気ヘッドのリード6を介してGMR膜4に電流Ibを流し、GMR膜4が発生する熱でGMR膜4を含む磁気ヘッド自身を加熱する。電流Ibは、磁気ヘッドのGMR膜4が通常動作する際の電流値よりも大きな値とする。例えば、通常動作する際の電流が5[mA]である場合、電流Ibは8[mA]程度である。
【0030】また、磁気ヘッドの熱処理を行なうプロセスの保持時間tは、1秒から数時間までの時間であれば良い。但し、保持時間tが1秒未満では磁気ヘッドを十分加熱することができない。このように、磁気ヘッドの温度をT1に上昇させた後、電流Ibにて通電することで加熱するため、磁気ヘッドの温度T2は、電流Ibの通電量の関数となり、次の式(1)で示される。従って、電流Ibの通電量を制御することにより、磁気ヘッドの温度T2が、反強磁性層11のブロッキング温度近傍になるようにする。
【0031】T2=T1+f(Ib) …式(1)
【0032】電流Ibの通電によりGMR膜4の特に非磁性中間層13を中心に流れる電流から発生する電流磁界が磁化固着層12にかかり磁化固着層12の磁化を固着する。このように、ヒーター23からの加熱と通電回路22からの電流Ibの通電により磁気ヘッドの温度T2を反強磁性層11のブロッキング温度近傍になるように上昇させると共に、GMR膜4の特に非磁性中間層13を中心に流れる電流から発生する電流磁界を磁化固着層12にかけることができ、それにより、磁化固着層12の磁化を安定して固着することが可能になる【0033】磁気ヘッドの温度T2を反強磁性層11のブロッキング温度近傍にして、電流磁界を磁化固着層12にかけた後、先にヒーター23の加熱をやめて、その後に電流Ibの通電をやめる。ここで、ヒーター23の加熱を先にやめる理由は、磁気ヘッドの温度が下がらないうちに磁化固着層12にかける電流磁界が弱まると、磁化の固着が不安定になることが懸念されるからである。このようにして、磁気ヘッドの再生部に対する熱処理を行なう。
【0034】なお、上述した通り、積層タイプの磁化固着層を有する磁気ヘッドでは、その磁化固着層にかける電流磁界は強いほうが望ましい。しかし、強い電流磁界を発生させようとして電流Ibの値を大きくし過ぎてしまうと、磁気ヘッドの温度が上がり過ぎてしまい、局所的にGMR膜4の温度が上がり過ぎる。このため、GMR膜4の積層膜間で拡散が起こったり、逆にGMR膜4の磁化固着層12で温度の上昇の不十分な部分が生じ、その部分の磁化の固着が適切に行なわれないなどの不具合が生じ、膜の性能が劣化してしまう。従って、電流Ibは、電流磁界がGMR膜4の磁化固着層12に十分かかる程度の最低値を選ぶことが望ましい。
【0035】(ヒーターの温度T1の適正値)次に、ヒーター23による磁気ヘッドの加熱の際の温度T1の適正値について説明する。磁気ヘッドの再生出力Output(ここで、再生動作電流の値は一定とする)は、ヒーター23で加熱する温度T1と、磁気ヘッドに通電する電流Ibの関数で表すことができ、その関係は次の式(2)で示される。
【0036】
Output=g(T1,Ib) …式(2)
【0037】この式(2)で示される関係をさらに説明するため、図4に、磁気ヘッドの再生出力と、製造時に加えるヒーター温度Tと電流Ibとの関係を示している。各グラフは、ヒーター23の加熱の温度T1をパラメータとして、その値をそれぞれ変更した場合の関係を示している。温度T1のパラメータは、温度の低い順に、室温、T1=100℃(T11)、T1=150℃(T12)、T1=180℃(T13)である。ここで、室温のものは、本発明の製造方法により磁気ヘッドの磁化固着層の磁化を固着したものではなく、従来の方法により行なったものである。
【0038】図4に示されるように、T1=150℃(T12)の場合が、再生出力Outputの値が最も高くなることから、ヒーター23の加熱の温度T1は、T1=150℃とするのが適切である。
【0039】(磁化固着層の強磁性層の磁化分布)図5に、本発明の製造方法により磁化の固着を行なった磁化固着層12の強磁性層12aについて、媒体対向面から見たときの磁化分布の様子を示している。本発明の製造方法では、GMR膜4に電流を流してGMR膜4自身を加熱するが、その時、リード6にて熱が逃げる。図1から分かるように、リード6は、GMR膜4の両端側に位置していることから、すなわち、磁化固着層12の強磁性層12aの両端側に位置していることとなる。このため、強磁性層12aの両端側から熱が逃げることとなり、加熱処理を行なっている時には、強磁性層12aの中央付近の温度が高く、リード6に近い両端付近では温度が低くなるような温度分布が生じる。
【0040】従って、本発明の製造方法により磁化の固着を行なった場合、強磁性層12aの中央付近は十分に加熱されるため熱処理が進み、磁化の固着は媒体磁界方向にほぼ平行となる。一方、リード6に近い両端付近は十分に加熱されないため、両端付近の磁化の固着は、本発明の製造プロセスにより磁化の固着を行なう前の状態に保たれることとなる。つまり、ウエハ工程中の磁界中熱処理により固着された磁化の向きがそのまま保たれた状態になっている。
【0041】このように本発明の製造方法により磁化の固着を行なった場合は、中央付近のみ媒体磁界方向にほぼ平行に磁化され、両端付近は媒体磁界方向と平行でない方向に磁化された磁化分布を得ることができる。従って、強磁性層12aにおいて中央付近の磁化の測定感度が高く、両端付近の磁化の測定感度を低くなるような構成を得ることが可能となる。本発明の製造方法により磁化の固着を行なったものについて強磁性層12aの磁化の測定感度を測定した結果、中央付近と両端付近との磁化の測定感度の差から、中央付近と両端付近の磁化の角度差θ(傾き)は、最低10度の差を有することが分かった。
【0042】これに対して、図5に従来の磁化の固着の方法(つまり、ウエハ工程中に磁界中熱処理により磁化を固着する方法)で行なわれた強磁性層12aを示しているが、従来の製造方法の場合は、強磁性層12aの全ての部分で磁化が同一方向を向いており、角度差(θ)はない。このため、従来の製造方法では、強磁性層12aを中央付近の磁化の測定感度が高く、両端付近の磁化の測定感度を低くなるような構成とすることはできない。
【0043】(第2の実施の形態)次に本発明の第2の実施の形態に係る第2の製造方法について説明する。上述した第1の製造方法では熱処理の際に磁気ヘッドに外部磁界を加えていなかったのに対し、第2の製造方法では熱処理の際に磁気ヘッドに外部磁界を加えるようにした。すなわち、ヒーター23でヘッド・ジンバル・アセンブリ21の磁気ヘッドを加熱すると同時に、通電回路22より磁気ヘッドの再生部を通電することに加えて、電磁石24により磁気ヘッドに外部磁界を加える。外部磁界の方向は、通電により発生する電流磁界と平行な方向である。また、磁気ヘッドの再生部の信号磁界と平行な方向である。
【0044】電磁石24により磁気ヘッドに外部磁界を加えているため、電流磁界を減らすことが出来ることから、磁気ヘッドの再生部に対する通電の電流Ibの値を小さくすることが可能となる。よって、磁気ヘッドの温度が上がり局所的にGMR膜4の温度が上がり過ぎることがない範囲で電流Ibを通電することができる。
【0045】なお、図6に、第2の製造方法の外部磁界を加えた場合の磁気ヘッドの再生出力と、製造時に加えるヒーター温度Tと電流Ibとの関係を示しているが、電流Ibの値を小さくするため電流Ibによる加熱での温度上昇が低くなるので、この代わりにヒーター23で加熱する温度T1を、上述した第1の製造方法の場合の最適値(T1=150℃(T12))よりも高い所定の値(T14)とする必要がある。
【0046】(第3の実施の形態)次に本発明の第3の実施の形態に係る第3の製造方法について説明する。第1の製造方法では熱処理の際に磁気ヘッドの再生部に一定の値である電流Ibを加えるようにしているが、これに対して第3の製造方法では、磁気ヘッドの再生部に電流Ibを加える前に、この電流Ibよりも値の小さな電流Ib1のパルスを更に加えるようにした。例えば、電流Ib1として、12[mA]を加える。
【0047】図7に、磁気ヘッドの再生部に加える電流と磁気ヘッドの再生部に発生する発熱量Qとの関係を示している。上述したように電流Ibの値を大きくし過ぎてしまうと、磁気ヘッドの温度が上がり過ぎてしまい、局所的にGMR膜4の温度が上がり過ぎるため、GMR膜4の積層膜同士が拡散してしまうこととなり、結果として、磁気ヘッドの再生部の出力が低下してしまう。従って、GMR膜4の積層膜同士が拡散しないように、拡散の起こる時間より十分短い時間(t1)に磁気ヘッドを加熱する。ここで、パルスの電流Ib1を加える時間t1は、長くても1秒以下である必要があり、本発明では、1マイクロ秒とする。
【0048】発熱量Qは、パルスの電流Ib1を加えた時間に対して遅れるので、磁気ヘッドには十分な磁界のかかる電流Ibが必要である。また、第3の製造方法の場合は、上述した第1、2の製造方法の場合とは異なり、最終的に必要な加熱はパルスである電流Ib1が行なうため、この電流Ib1で加熱を行なった後、すなわちt1の時間を経過した後であればどの時点でヒーター23による加熱を止めることも可能である。
【0049】(第4の実施の形態)第4の実施の形態について説明する。第4の実施の形態に係る発明は、上述した第1乃至第3の製造方法において熱処理を行なった後に、その場で磁気ヘッドの再生部の再生特性を評価する評価方法に関するものである。例として、第1の製造方法を用いて熱処理を行ない、その後に磁気ヘッドの再生部の再生特性を評価する場合の、電流Ibとヒーター23の温度Tとの関係を図8に示す。
【0050】第1の製造方法によりヒーター23の温度をT1として、磁気ヘッドに熱処理を行なった後、時間がt2となった時点で、ヒーター23の温度をT2まで下げる。実際にヒーター23の温度がT2に下がるのは、時間がt3になった時点となるため、このt3になった時点で、通電回路22により磁気ヘッドの再生部に加える電流をIb2とし、そして電磁石24から磁気ヘッドの再生部に磁界をかける。そして電磁石24から磁気ヘッドの再生部に磁界をかけた時に、磁気ヘッドの再生部の電圧変化を、通電回路22により測定することで、磁気ヘッドの再生部の再生出力を測定する。この再生出力が目標値をクリアしていない場合には、再度、上述した第1乃至第3の製造方法により磁気ヘッドに対して熱処理を行なう。また、磁気ヘッドの再生部の再生出力の測定結果に基づいて、引き続き行なう熱処理において必要な電流磁界の条件を決定することもでき、適切な電流磁界の条件を求めることができ引き続き行なう熱処理において有効である。
【0051】(第5の実施の形態)次に、本発明の第5の実施の形態に係る磁気ヘッドについて説明する。図9に、本発明の磁気ヘッドの構造を示している。本発明の磁気ヘッドは、基板上面から見たときに、一対のリード6’が媒体磁界方向に平行に並んだ状態に配置されており、またそのリード6’の間にGMR膜4’が位置した状態になっている。このような構成を持つことにより、本発明の磁気ヘッドでは、GMR膜4’に流れる電流の方向が媒体磁界方向とほぼ平行となるように設計されている。従って、磁化固着層の磁化が媒体磁界方向に向く程度の大きさの電流を加えれば良くなる。
【0052】これに対して、図10に示すように一般的な磁気ヘッドの構成では、一対のリード6が媒体磁界方向と直交方向に並び、その間にGMR膜4が位置する状態になっており、GMR膜4に流れる電流の方向は媒体磁界方向の直交方向である。このため、磁化固着層の磁化を電流磁界方向(媒体磁界方向の直交方向)にまで向ける必要がある。従って、本発明の磁気ヘッドに加える場合よりも大きな値の電流を必要とすることとなる。
【0053】この電流の値の関係について、図11を用いて説明する。図11に磁化固着層での磁化状態と電流の値との関係を示している。図11では、左から順に電流の値を次第に大きくした時の磁化固着層での磁化状態を示している。最も左に示されているのは、電流の値が小さくその電流の電流磁界による磁化固着層の磁化が不確定の状態の場合である。中央に示されているのは、左で示した場合よりも電流の値を大きくした場合の磁化固着層の磁化の様子を示しており、磁化固着層の磁化が媒体磁界方向と平行な方向に固着される。右に示されているのは、中央に示されるものよりも更に電流の値を大きくした場合であり、この場合、磁化固着層の強磁性層の磁化が電流磁界方向に飽和してしまう。
【0054】図11から分かるように、磁化固着層の磁化を電流磁界方向に向ける場合の方が、媒体磁界方向に向ける場合よりも電流の値が小さくて済む。従って、本発明の磁気ヘッドでは、熱処理により磁化固着層の磁化を固着する際に、図10に示される一般的な磁気ヘッドに対して必要な電流の値よりも小さな値の電流で磁化の固着を行なうことが可能となる。
【0055】(第6の実施の形態)次に、図12に示すように磁気ディスク装置31の中にヒーター32を組み込むことにより、上述した第1乃至第3の製造方法における熱処理を実現することが可能である。磁気ヘッド33の再生部に対して熱処理を行なう場合は、磁気ヘッド33を磁気媒体34からヒーター32の位置に移動させた後、ヒーター32で磁気ヘッド33の再生部を加熱すると共に、磁気ヘッド32の再生部に電流を加えることにより行なう。
【0056】更に、図3の製造装置と同様に、磁気ディスク装置31の中にヒーター32と共に電磁石を組み込むことが可能である。この場合、上述した第4の実施の形態で説明した場合と同様な方法で電磁石を用いて磁気ヘッド33の再生部の再生特性を評価することが可能である。
【0057】(第7の実施の形態)次に、第7の実施の形態に係る磁気ヘッドについて説明する。第7の実施の形態に係る磁気ヘッドは、図13に示すように、MR素子41の下地として磁気シールド42を配置し、この磁気シールド42に磁気シールド用リード43を接続した構成であることを特徴とする。この構成とすることで、磁気シールド用リード43を介して磁気シールド42に適切な量の電流を加えることにより、磁気ヘッドのMR素子41を加熱することが可能となる。従って、ヒーターを設ける必要がなくなり、図3の製造装置や、図12の磁気ディスク装置においてヒーターを省くことができ、その構造が容易になる。
【0058】(第8の実施の形態)次に、第8の実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法について説明する。第8の実施の形態に係る製造方法は、磁気ヘッドの記録部に電流を通電しこの記録部にて発生する熱を利用して再生部を加熱する方法である。この場合、図14に示すように、磁気ヘッドの記録部に流す電流Iwを70[mA]にすると磁気ヘッドの再生出力Outputが1.7[mVpp]程度の値となり、その時には磁気ヘッドの温度が150℃程度になる。このように、磁気ヘッドの再生部をヒーターで加熱する代わりに、磁気ヘッドの記録部に電流Iwを流し、その記録部が発生する熱を利用して再生部を加熱することが可能である。従って、図3の製造装置や、図12の磁気ディスク装置においてヒーターを省くことができ、その構造が容易になる。
【0059】なお、上述した第1乃至第7の実施の形態では、磁化固着層が強磁性層を2層持つ場合を説明したが、これに限らず、磁化固着層が強磁性層を3層以上持つ場合であっても良い。強磁性層が3層以上の場合は、2層の場合よりも更に強い磁界を与えることが必要となるため、本発明の製造方法における熱処理が有効となる。また、磁化固着層の強磁性層の間の層としては交換結合層だけでなく、Cu等からなる非磁性中間層の多層構造である人口格子膜(強磁性層と非磁性中間層とが交互にn層分積層した層を形成し、その層上に硬磁性層、反強磁性層を順次積層し形成したような膜)や、あるいは交換結合層と人口格子膜との組合せにおいても本発明の製造方法における熱処理は有効である。
【0060】
【発明の効果】以上詳述したように本発明では、再生部に積層タイプの固着磁性層を持つ磁気抵抗効果膜を有する磁気ヘッドにおいて、固着磁性層に対する磁化の固着を確実に行なうことを可能とし、それにより固着磁性層の特性を引き出した安定で且つ高品質の磁気ヘッド及び磁気ディスク装置を提供することが可能となる。
【出願人】 【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
【出願日】 平成12年8月11日(2000.8.11)
【代理人】 【識別番号】100083161
【弁理士】
【氏名又は名称】外川 英明
【公開番号】 特開2002−56512(P2002−56512A)
【公開日】 平成14年2月22日(2002.2.22)
【出願番号】 特願2000−243660(P2000−243660)