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【発明の名称】 薄膜磁気ヘッドの製造方法、薄膜磁気ヘッド及び磁気ディスク装置
【発明者】 【氏名】岡田 泰行

【氏名】工藤 一恵

【氏名】星屋 裕之

【要約】 【課題】応力緩和剤を含まないめっき浴から作製したCo−Ni−Fe軟磁性材料膜は、Bsが1.9T以上、Hchが200A/m以下という特性を有するものであるが、めっき膜の応力が大きいため、膜厚2.0μm以上の成膜が困難である。一方応力緩和剤を含む浴から作製したCo−Ni−Fe軟磁性材料膜では、Hch=32A/m程度という、保磁力の低い膜が得られているが、応力緩和剤を浴中に添加するためBsが1.85T程度しか得られない。そこで本発明では、高飽和磁束密度を有し、かつ、高記録密度に対応する十分な磁界が発生できる磁気ヘッドの作製方法を提供する。

【解決手段】電気めっき法において、パルス電流を用いて成膜を行なうパルスめっき法により、結晶粒を微細化し内部応力の低減されためっき磁性薄膜を得ることができ、従来得られなかった厚膜の磁性膜を白濁もしくは剥離なく成膜することが可能となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】基板上に形成された下部磁気コアを形成する工程と、先端部で磁気ギャップ膜を介して下部磁気コアと結合し、後端部で下部磁気コアと結合し、後端部よりも先端部における幅が狭く、後端部から先端部に向かう途中で徐々にその幅を狭める形状を有する上部磁気コアを形成する工程と、上部磁気コアと下部磁気コアを周回して配置されたコイルを形成する工程と、コイルと上部磁気コア及び下部磁気コアとの間に形成された絶縁層を形成する工程を有し、上記上部磁気コアあるい下部磁気コアの少なくとも一部をCo、Ni、Feを主成分とし、コバルト20から90重量パーセント、鉄10から50重量パーセント、ニッケル0から20重量パーセントである軟磁性膜を電気めっきにより作製し、該電気めっきが電気めっき浴に電極を浸漬して成膜時間内に電流のオンとオフを繰り返すことでめっき膜を電着するパルスめっき法により作製することを特徴とする磁気ヘッドの製造方法。
【請求項2】上記電流のオン時間tonと、オフの時間toffとの関係が、ton/(ton+toff)≦0.2であることを特徴とする上記請求項1記載の磁気ヘッドの製造方法。
【請求項3】基板上に形成された下部磁気コアと、先端部で磁気ギャップ膜を介して下部磁気コアと結合し、後端部で下部磁気コアと結合し、後端部よりも先端部における幅が狭く、後端部から先端部に向かう途中で徐々にその幅を狭める形状を有する上部磁気コアと、上部磁気コアと下部磁気コアを周回して配置されたコイルと、コイルと上部磁気コア及び下部磁気コアとの間に形成された絶縁層を有する誘導型薄膜磁気ヘッドであって、上記上部磁気コアあるい下部磁気コアの少なくとも一部がCo、Ni、Feを主成分とする軟磁性膜から形成された磁気ヘッドであって、上記軟磁性膜の組成がコバルト20から90重量パーセント、鉄10から50重量パーセント、ニッケル0から20重量パーセントであり、該軟磁性膜の平均結晶粒径が5から30nmであることを特徴とする磁気ヘッド。
【請求項4】上記軟磁性膜の膜厚方向の構造が、面心立方構造と体心立方構造の体積率の変調構造であることを特徴とする請求項3記載の磁気ヘッド。
【請求項5】上記請求項3又は4記載の磁気ヘッドを搭載したことを特徴とする磁気ディスク装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、薄膜磁気ヘッドの製造方法、薄膜磁気ヘッド及び磁気記憶装置に係り、特に、高記録密度の記録を行うことができる記録再生分離型磁気ヘッド記録用に使われる誘導型薄膜磁気ヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】磁気ディスク装置の高記録密度化に伴い、記録媒体の高保磁力化が進み、このような高保磁力の記録媒体に対して十分な記録能力を有する薄膜磁気ヘッドが要求されている。そのため、これらの磁気ヘッドは、磁気コア材料として飽和磁束密度(Bs)の大きな材料を用いて構成することが必要である。最近ではこれらの高飽和磁束密度を有するコア材料として、Co−Ni−Feによる三元系軟磁性薄膜が、例えば特開平6−89422号公報、特開平6−346202号公報、特公平10−2821456号公報などに記載されて提案されている。
【0003】特に特公平10−2821456号公報では、Co:40〜70重量パーセント、Ni:10〜20重量パーセント、Fe:20〜40重量パーセントからなる三元系合金を、応力緩和剤を含まないめっき浴から成膜することにより、1.9T以上という高い飽和磁束密度を有する軟磁性薄膜を作製している。
【0004】また、パルス電流を用いて成膜する手法は例えば特開平6−301919号公報に、Ni−Fe合金の成膜において、通電停止状態で電極表面へのイオンの拡散を促進することにより、合金組成、結晶配向性が直流電流を用いて作製しためっき膜と異なる膜が得られることが記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】高い磁気記録密度を有する磁気ヘッド装置には、高い飽和磁束密度を有する磁気コア材料を用いた薄膜磁気ヘッドを用いることが必要である。また、より強い磁界を発生するために、磁気コアの膜厚を厚く形成可能な成膜法、すなわち、内部応力を低減可能な成膜法が必要である。
【0006】特許公報第2821456号に記載のあるように、応力緩和剤を含まない浴から作製したCo−Ni−Fe軟磁性材料膜は、Bsが1.9T以上、Hchが200A/m(2.5Oe)以下という特性を有するものであるが、めっき膜の応力が大きいため、膜厚2.0μm以上の膜に剥離が生じ、成膜が困難である。
【0007】また、特開平6−346202号公報に記載のあるように、応力緩和剤を含む浴から作製したCo−Ni−Fe軟磁性材料膜では、Hch=32A/m(0.4Oe)程度という、保磁力の低い膜が得られているが、応力緩和剤を浴中に添加するためBsが1.85T程度しか得られていない。
【0008】以上の公知例からも明らかなように、高飽和磁束密度を有し、かつ、高記録密度に対応する十分な磁界が発生できる磁気ヘッドの作製は困難であった。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の目的は、磁気ディスク装置の高記録密度化に伴い、高保磁力化した記録媒体に対して十分な記録能力を有する薄膜磁気ヘッドおよびそれを用いた磁気ディスク装置を提供することにある。
【0010】また、高記録媒体に対して十分な書込み能力を有する磁界を発生するために、磁気コアを厚く成膜することが必要になる。そのためには、軟磁性膜の結晶粒径をできるだけ微細化し、めっき膜の応力は極力小さくする必要がある。
【0011】ところが、応力緩和剤に代表される添加剤は、めっき膜中に(磁性金属以外の)不純物元素を少量含有させることにより、めっき膜質を改質するものであるために、めっき膜の磁気特性、特に飽和磁束密度を劣化させる要因となる。
【0012】電気めっき法において、パルス電流を用いて成膜を行なうパルスめっき法により、結晶粒を微細化し内部応力の低減されためっき磁性薄膜を得ることができる。これにより、従来得られなかった厚膜の磁性膜を白濁もしくは剥離なく成膜することが可能となる。
【0013】以下詳細に本発明の手段を述べる。
【0014】パルス電流を用いて成膜しためっき膜は、結晶粒が微細化することが一般的に知られているため、従来内部応力の大きいCo−Ni−Fe組成領域での応力を低減できることが期待される。したがって、めっき電流としてパルス電流を用いることで、従来直流電流を用いて成膜されていたものとは異なる特性を有する磁性薄膜を得ることができる。
【0015】本発明によれば上記目的は、記録用薄膜磁気ヘッドの上部もしくは下部少なくとも一方の磁気コアの一部がCo、Ni、Feを主成分とする軟磁性膜から形成された磁気ヘッドであって、上記軟磁性膜の組成がコバルト20から90重量パーセント、鉄10から50重量パーセント、ニッケル0から20重量パーセントとすることにより達成される。
【0016】また上記目的は、上記軟磁性膜の平均結晶粒径が5から30nmとすることにより達成され、これは上記電気めっきが電気めっき浴に電極を浸漬して成膜時間内に電流のオンとオフを繰り返すことでめっき膜を電着するパルスめっき法により作製することにより達成される。
【0017】さらに上記目的は、上記電流のオンとオフの時間、tonおよびtoffがton/(ton+toff)≦0.2となるようにすることにより達成される。
【0018】したがって上記目的は、電気めっき法により作製したCo−Ni−Fe軟磁性膜を、パルス電流を印加することにより結晶粒径を制御することによってめっき膜の内部応力を低減し、3.0μm以上の厚膜の成膜が可能にすることにより達成される。
【0019】以上のように本発明では、高飽和磁束密度を有するCo−Ni−Fe軟磁性材料膜をパルスめっき法により作製することにより、高記録密度を有する磁気ディスク装置を得ることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】表1に、本発明で使用した電気めっき浴組成を示す。電気めっき浴は、Co、Ni、およびFeそれぞれのイオン源としてのCoSO4・7H2O、NiSO4・6H2O、NiCl2・6H2O、およびFeSO4・5H2Oと、電解質としての塩化ナトリウム、pH緩衝剤としてのほう酸を含む。電解質はめっき浴の導電性を高めるものであり、pH緩衝剤はめっき工程での浴自身のpH変動を抑えるものである。これらは同様の作用を持つ他の物質、たとえば電解質には硫酸アンモニウムなどを用いてもよい。また、一般にめっき法の添加剤として用いられるラウリル硫酸ナトリウムなどの光沢剤を適宜含んでもよい。
【0021】
【表1】

【0022】本発明ではほう酸および塩化ナトリウムの濃度を一定とし、めっき膜組成に直接関与するCoイオン量を3.5g/L〜10g/L、Niイオン量を8.0g/L〜10g/L、Feイオン量を0.3g/L〜3.0g/Lの範囲で変えて検討した。めっき電流にはパルス電流を用い、電流の印加と休止を適切な間隔で印加するような波形を用いた。電流印加時の電流密度を50〜750A/m2(5〜75mA/cm2)、休止時の電流密度を0A/m2とした。電流印加時間(オン時間)は5〜500ミリ秒(ms)の範囲で変え、パルス1サイクルに対するオン時間の割合(以下デューティー比という)を1〜0.09の範囲で変化させた。さらにpHを2.8〜3.8の範囲で変えて検討した。
【0023】めっき基板には、下地膜としてCo−Ni−Fe(100nm)/NiCr(5nm)膜を形成したガラス基板を用いた。基板はめっき膜応力に充分耐えうる物質であれば任意の物質でよく、下地膜組成もめっき下地として導電性を有しているものであれば任意の物質でよい。また、NiCr層はめっき下地膜の密着力を向上させる目的で形成しており、これも同様な材料で代用可能である。
【0024】なおめっき膜成膜時に、異方性付与のために約24kA/m(300Oe)の外部磁界を印加した。
【0025】以下、これらの膜の作製条件について詳細に説明する。
【0026】(実施例1)表1に示すめっき浴を用い、オン時間を50msに固定し、オフ時間を変化させることでデューティー比を変化させて検討を行なったところ、オフ時間を200ms以下(デューティー比0.2以上)にした場合は膜表面が白濁し、光沢のある膜が得られなかった。これはオフ時間に対するオン時間が長すぎたために、結晶成長が速く結晶粒径が大きくなってしまったため、膜表面の凹凸が大きくなってしまったことによると考えられる。このような膜の白濁化は、オン時間を50msよりもさらに短くし、デューティー比を0.2以下に低減することで改善することができる。
【0027】図1は、デューティー比を変化させて作製したCo−Ni−Fe膜組成の変化挙動であり、以下これについて説明する。オフ時間の増加に伴い、Co及びNi組成は増加し、Fe組成は減少する。オフ時間を300msから500msまで増加させ、デューティー比を0.14から0.09まで低下させると、Coは68重量パーセントから71重量パーセントまで、Niは8重量パーセントから10重量パーセントまで増加し、一方でFeは21重量パーセントから18重量パーセントまで減少した。
【0028】磁気特性については、Bsはデューティー比の低下に伴って1.8Tから2.2Tまで増加し、Hchはデューティー比0.14では480A/m(6Oe)であったが、0.11以上では400A/m(5Oe)以下に減少した。
【0029】これらの試料についてX線回折分析(XRD)を行なった結果を図2に示す。パルスめっき法により作製しためっき膜は、面心立方格子(fcc)相、体心立方格子(bcc)相、及びこれらが混在した結晶構造をとっていることが確認された。また結晶粒系分布を算出したところ、平均して5nmから30nmの分布を持つことが確認された。従来のDC電流を用いて作製しためっき膜の結晶粒径は少なくとも50nm以上であることから、パルスめっき法によって結晶粒が微細化された結果、磁気特性の優れた膜が得られたものと考えられる。
【0030】(実施例2)図3は、電流印加時の電流密度を250〜750A/m2(25〜75mA/cm2)の範囲で変化させた際のCo−Ni−Fe膜組成およびBsの変化であり、以下これについて説明する。その時のめっき条件は、pH=3.0、浴温度=30℃、デューティー比=0.09とした。このときオン時間をそれぞれ10ms〜50msの間で変化させ、オフ時間はそれぞれ100ms〜500msの間で変化させた。
【0031】電流密度を250A/m2(25mA/cm2)とした場合、オン時間を長くするとFe含有量が若干増加し、Coは逆にやや減少した。Niについては殆ど変化しなかった。ところがBsについてはオン時間50msの条件では急激に増加し、2.0T以上の値を示した。この時の膜組成は、Co:70.5重量パーセント、Ni:9.6重量パーセント、Fe:19.9重量パーセントであった。
【0032】電流密度500A/m2(50mA/cm2)の条件では、同様にオン時間50msで若干の組成変動が見られ、その組成はCo:65.2重量パーセント、Ni:6.5パーセント、Fe:28.3パーセントであった。Bsについてはほぼ一定で、いずれの条件でもほぼ2.0Tであった。
【0033】さらに750A/m2(75mA/cm2)まで電流密度を上げると、オン時間による組成変動は殆ど見られず、膜組成はCo:62.6重量パーセント、Ni6.2重量パーセント、Fe:31.2重量パーセントであった。このときのBsは他の電流密度で得られた膜よりも低下し、1.86Tであった。
【0034】また、電流密度の増加に伴い膜中のFe含有量は増加、Co含有量は減少するものの、Ni含有量は電流密度に大きく影響を受けないことが確認された。
【0035】オン時間による保磁力の変化挙動を図4に示す。電流密度の増加により保磁力は増加し、250A/m2(25mA/cm2)では400A/m(5Oe)以下だったものが500A/m2(50mA/cm2)で約680A/m(8Oe)、750A/m2(75mA/cm2)で約1040A/m(13Oe)であった。またオン時間による影響はほとんど見られず、オン時間を変化させても保磁力の値はほぼ一定値を示した。
【0036】これらの結果より、従来法では結晶粒の微細化、及び保磁力の低減にはサッカリンナトリウムなどの有機系添加剤を用いる必要があったが、本発明により添加剤を含まない浴からも良好な磁気特性を有する磁性膜を得られることが実証された。
【0037】したがって、パルスめっき法を用い、成膜中にパルス条件を変化させることにより、ほぼ同じ組成を有する膜でも磁気特性の異なるめっき膜の成膜が可能であり、また、成膜中にパルス条件を変化させることで、単一めっき浴からでも膜厚方向に結晶配向を変調させ、組成及び磁気特性を始めとする諸特性を変化させることも可能である。
【0038】(実施例3)図5は本検討の実施例1および実施例2により製造された磁気ヘッドの構成を示す断面斜視図である(但し、図の拡大倍率は均一では無い)。図5に示す磁気ヘッドは記録・再生分離型薄膜磁気ヘッドであり、下部シールド7上に電極4に挟まれて配置された磁気抵抗効果素子3による再生用ヘッドと、このヘッドに重ねられて配置される上部シールドを兼ねる下部磁気コア8と上部磁気コア5とこれらのコアの間に挟まれて配置されるコイル1とによる記録ヘッドとにより構成される。
【0039】そして、記録用ヘッドを構成する磁気コア5と、6とは、前述した本発明の実施例1または2のめっき浴を用いて、フレームめっき法により形成され、形成後、印加磁界を2kOeとして、処理温度を230℃とした条件で、1時間の熱処理が施された。
【0040】このようにして製造された磁気ヘッドを磁気ディスク装置に組み込んで記録性能を評価した結果、前述した実施例1および2のいずれを用いた場合でも、オーバーライト特性は良好であった。
【0041】なお、前述により製造される磁気ディスク装置の構成についての説明は省略するが、従来技術における磁気ディスク装置の記録・再生分離型磁気ヘッドの記録用の薄膜磁気ヘッドとして、本発明により製造した薄膜磁気ヘッドを使用して構成すればよく、その他の構成を同一として構成することができる。
【0042】
【発明の効果】以上説明したように、従来法で作製した、1.9T以上という高い飽和磁束密度を有するCo−Ni−Fe軟磁性材料膜は、厚膜化が困難であったが本発明によれば膜厚3μmまで作製が可能となり、該軟磁性材料膜を磁気コアに使用した薄膜磁気ヘッドを搭載した磁気ディスク装置を作製できる。
【出願人】 【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
【出願日】 平成12年8月8日(2000.8.8)
【代理人】 【識別番号】100075096
【弁理士】
【氏名又は名称】作田 康夫
【公開番号】 特開2002−56507(P2002−56507A)
【公開日】 平成14年2月22日(2002.2.22)
【出願番号】 特願2000−245514(P2000−245514)