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【発明の名称】 磁気ディスク装置及び薄膜磁気ヘッド
【発明者】 【氏名】中 康弘

【氏名】三浦 英生

【氏名】小柳 広明

【要約】 【課題】薄膜磁気ヘッド及びこれを搭載した磁気ディスク装置において、磁気ディスクに対向する端面の幅狭小化加工が容易で、応力を低減し剥離を防止して信頼性高めること。

【解決手段】絶縁膜13を介在させた下部磁極15と上部磁極3とを有し、上部磁極3を第1上部磁極1と第2上部磁極2とに分離し、第1上部磁極1にディスクと対向する端面1a1を形成し、第2上部磁極2を幅が狭い先端部2aと幅の広い上面部2cとこの両者をつなぐ傾斜部2bとを有し、その先端部2aの接合面2a2における特異点2a3を略直角に形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】記録面を有する円盤状のディスクを回転させるモータと、前記ディスクの記録面に磁気信号の記録又は再生を行う薄膜磁気ヘッドと、前記薄膜磁気ヘッドを支持し駆動するアクチュエータとを備えた磁気ディスク装置において、前記薄膜磁気ヘッドは、下部磁極と、上部磁極と、前記下部磁極と前記上部磁極との間に形成された絶縁膜とを有し、前記上部磁極は第1上部磁極と第2上部磁極とに分離して形成し、前記第1上部磁極は、前記絶縁膜上に前記下部磁極と対向すると共に、円盤状のディスクと対向する端面を有し、前記第2上部磁極は、幅の広い上面部と、前記第1上部磁極上に積層され前記上面部より幅が狭い先端部と、前記先端部と前記上面部とをつなぐ傾斜部とを有し、前記第2上部磁極の先端部は、前記第1上部磁極側の接合面の前記傾斜部につながる部分と両側部分とを略直角に結ぶ特異点を有するように形成したことを特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項2】記録面を有する円盤状のディスクを回転させるモータと、前記ディスクの記録面に磁気信号の記録又は再生を行う薄膜磁気ヘッドと、前記薄膜磁気ヘッドを支持し駆動するアクチュエータとを備えた磁気ディスク装置において、前記薄膜磁気ヘッドは、下部磁極と、上部磁極と、前記下部磁極と前記上部磁極との間に形成された絶縁膜とを有し、前記上部磁極は第1上部磁極と第2上部磁極とに分離して形成し、前記第1上部磁極は、前記絶縁膜上に前記下部磁極と対向すると共に、円盤状のディスクと対向する端面を有し、前記第2上部磁極は、幅の広い上面部と、前記第1上部磁極上に積層され前記上面部より幅が狭い先端部と、前記先端部と前記上面部とをつなぐ傾斜部とを有し、前記第2上部磁極の先端部は、前記第1上部磁極側の接合面の前記傾斜部につながる部分と両側部分とを略直角に結ぶ特異点を有するように形成し、前記第2上部磁極の傾斜部は、その中間部に幅の変化が急拡大するように変曲点を形成したことを特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項3】記録面を有する円盤状のディスクを回転させるモータと、前記ディスクの記録面に磁気信号の記録又は再生を行う薄膜磁気ヘッドと、前記薄膜磁気ヘッドを支持し駆動するアクチュエータとを備えた磁気ディスク装置において、前記薄膜磁気ヘッドは、下部磁極と、上部磁極と、前記下部磁極と前記上部磁極との間に形成された絶縁膜とを有し、前記上部磁極は第1上部磁極と第2上部磁極とに分離して形成し、前記第1上部磁極は、前記絶縁膜上に前記下部磁極と対向すると共に、円盤状のディスクと対向する端面を有し、前記第2上部磁極は、幅の広い上面部と、前記第1上部磁極上に積層され前記上面部より幅が狭い先端部と、前記先端部と前記上面部とをつなぐ傾斜部とを有し、前記第2上部磁極の先端部は、前記第1上部磁極側の接合面の前記傾斜部につながる部分と両側部分とを略直角に結ぶ特異点を有するように形成し、前記第2上部磁極の傾斜部は、その中間部に幅の変化が急拡大するように変曲点を形成し、前記第2上部磁極の先端部の接合面から前記傾斜部の変曲点までの高さをh(mm)とし、前記第2上部磁極の先端部の接合面から前記上面部までの高さをH(mm)とする場合、4<H≦7のときにh>(0.18H+0.25)2.1-1、7<H≦13のときにh>(0.049H+1.2)2.1-1であることを特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項4】下部磁極と、上部磁極と、前記下部磁極と前記上部磁極との間に形成された絶縁膜とを備えた薄膜磁気ヘッドにおいて、前記上部磁極は第1上部磁極と第2上部磁極とに分離して形成し、前記第1上部磁極は、前記絶縁膜上に前記下部磁極と対向すると共に、円盤状のディスクと対向する端面を有し、前記第2上部磁極は、幅の広い上面部と、前記第1上部磁極上に積層され前記上面部より幅が狭い先端部と、前記先端部と前記上面部とをつなぐ傾斜部とを有し、前記第2上部磁極の先端部は、前記第1上部磁極側の接合面の前記傾斜部につながる部分と両側部分とを略直角に結ぶ特異点を有するように形成したことを特徴とする薄膜磁気ヘッド。
【請求項5】下部磁極と、上部磁極と、前記下部磁極と前記上部磁極との間に形成された絶縁膜とを備えた薄膜磁気ヘッドにおいて、前記上部磁極は第1上部磁極と第2上部磁極とに分離して形成し、前記第1上部磁極は、前記絶縁膜上に前記下部磁極と対向すると共に、円盤状のディスクと対向する端面を有し、前記第2上部磁極は、幅の広い上面部と、前記第1上部磁極上に積層され前記上面部より幅が狭い先端部と、前記先端部と前記上面部とをつなぐ傾斜部とを有し、前記第2上部磁極の先端部は、前記第1上部磁極側の接合面の前記傾斜部につながる部分と両側部分とを略直角に結ぶ特異点を有するように形成し、前記第2上部磁極の傾斜部は、その中間部に幅の変化が急拡大するように変曲点を形成したことを特徴とする薄膜磁気ヘッド。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、薄膜磁気ヘッド及びこれを搭載した磁気ディスク装置に係り、特に上部磁極を分離した構成を有する薄膜磁気ヘッド及びこれを搭載した磁気ディスク装置に好適なものである。
【0002】
【従来の技術】従来技術1の磁気ディスク装置としては、図12に示す上部磁極を有する薄膜磁気ヘッドを用いたものがある。図12は従来技術1の磁気ディスク装置に用いる薄膜磁気ヘッドにおける上部磁極の斜視模式図、図13は図12の上部磁極の接合面を示す模式図である。
【0003】従来技術1における上部磁極3は、図12に示すように、円盤状ディスクと対向する端面3a1を有する先端部3aと、この先端部3aより上方に位置すると共にこれより幅広の上面部3cと、この先端部3aと上面部3cとをつなぐ傾斜部3bとを有しており、これらは一体に形成されている。そして、先端部3aは、図13で明らかなように、その下面が図示しない絶縁層との接合面3a2を形成し、さらにその接合面3a2の傾斜部3bにつながる部分と両側部分とを直角に結ぶ特異点3a3を有している。なお、図12の特異点3a3から延びる矢印Pは後述する応力分布の方向を示すものである。
【0004】また、従来技術2の磁気ディスク装置としては、図14に示す上部磁極を有する薄膜磁気ヘッドを用いたものがある。図14は従来技術2の磁気ディスク装置に用いる薄膜磁気ヘッドにおける上部磁極の斜視模式図、図15は図14の上部磁極の接合面を示す模式図である。
【0005】従来技術2における上部磁極3は、図14に示すように、第1上部磁極1と第2上部磁極2に分離して形成されている。第1上部磁極1は、円盤状ディスクと対向する端面1a1を有する先端部1aと、上部磁極2との接合部分になる後部拡大部1bとからなっている。第2上部磁極2は、幅の広い上面部2cと、第1上部磁極1の後部拡大部1b上に積層され、上面部2cより幅が狭い端面2a1を有する先端部2aと、先端部2aと上面部2cとをつなぐ傾斜部2bとを有している。また、傾斜部2bから先端部2aの端面2a1へ至る両側は直線状に幅が狭くなるように形成されている。そして、第2上部磁極2の先端部2aは、図15で明らかなように、その下面が第1上部磁極1の後部拡大部1b及び図示しない絶縁層との接合面2a2を形成し、さらにその接合面2a2の傾斜部2bにつながる部分と両側部分とを鋭角θに結ぶ特異点2a3を有している。なお、図14の特異点2a3から延びる矢印Pは後述する応力分布の方向を示すものであり、寸法lは端面2a1の幅を示すものである。
【0006】なお、従来技術2に関連するものとしては、例えば特開平10−269524号公報に記載されたものが挙げられる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来技術1では、先端部3aの端面3a1の幅を狭くして磁気ディスク装置の高記録密度化に対応しようとする場合に、その先端部3aの加工が極めて難しくなるという問題がある。即ち、近年の磁気ディスク装置の高記録密度化は著しく、これに伴って、磁気記録を磁気ディスクに記録、再生する磁気ヘッドはますます微細構造化する傾向にあり、それに伴って、記録ヘッドのトラック幅と呼ばれる上部磁極先端部の幅も狭小化しているが、従来技術1では、先端部3aと傾斜部3b及び上面部3cとを一体に形成しなければならないため、その先端部3aの微細化加工が極めて難しいものとなっている。
【0008】一方、従来技術2では、上部磁極3を第1上部磁極1と第2上部磁極2とに分離して形成するために、第1上部磁極1の端面の幅狭小化への加工技術の対応が比較的容易であるが、第1上部磁極1と第2上部磁極2とに分離したことによりその接合面における大きなはく離を生じ、信頼性が低下することが考えられる。
【0009】そこで、従来技術2のはく離に対する信頼性を確認するために応力解析を行った。この応力解析は、3次元モデルを用い、有限要素法弾性解析により行った。具体的には、薄膜固有の真性応力を含む成膜の過程において生じる残留応力と、コイル通電による温度上昇によって生じる熱応力を計算し、両者を足しあわせたものである。一方、比較のため、従来技術1の応力解析も同様な方法で行った。
【0010】この応力解析の結果は、特異点からの距離に対する応力分布を示す図9で明らかなように、特異点近傍における従来技術2の応力分布特性42が従来技術1の応力分布特性41より極めて大きくなることが判明した。これは、第2上部磁極2の先端部2aにおける接合面2a2の傾斜部2bにつながる部分と両側部分とを結ぶ特異点2a3の角度θが鋭角になっているので、特異点2a3付近に応力が集中してしまうためと考えられる。なお、図9は接合面において応力の集中する特異点近傍の応力分布を示した図である。
【0011】本発明は、磁気ディスクに対向する端面の幅狭小化加工が容易で、しかも応力を低減して剥離を防止できることにより高い信頼性を有する薄膜磁気ヘッド及びこれを搭載した磁気ディスク装置を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するための本発明の第1の特徴は、記録面を有する円盤状のディスクを回転させるモータと、ディスクの記録面に磁気信号の記録又は再生を行う薄膜磁気ヘッドと、薄膜磁気ヘッドを支持し駆動するアクチュエータとを備えた磁気ディスク装置において、薄膜磁気ヘッドは、下部磁極と、上部磁極と、下部磁極と上部磁極との間に形成された絶縁膜とを有し、上部磁極は第1上部磁極と第2上部磁極とに分離して形成し、第1上部磁極は、絶縁膜上に下部磁極と対向すると共に、円盤状のディスクと対向する端面を有し、第2上部磁極は、幅の広い上面部と、第1上部磁極上に積層され上面部より幅が狭い先端部と、先端部と上面部とをつなぐ傾斜部とを有し、第2上部磁極の先端部は、第1上部磁極側の接合面の傾斜部につながる部分と両側部分とを略直角に結ぶ特異点を有するように形成したことにある。
【0013】本発明の第2の特徴は、さらに、第2上部磁極の先端部は、第1上部磁極側の接合面の傾斜部につながる部分と両側部分とを略直角に結ぶ特異点を有するように形成し、第2上部磁極の傾斜部は、その中間部に幅の変化が急拡大するように変曲点を形成したことにある。
【0014】本発明の第3の特徴は、さらに、第2上部磁極の先端部の接合面から傾斜部の変曲点までの高さをh(mm)とし、第2上部磁極の先端部の接合面から上面部までの高さをH(mm)とする場合、4<H≦7のときにh>(0.18H+0.25)2.1-1、7<H≦13のときにh>(0.049H+1.2)2.1-1を満足するようにしたことにある。
【0015】本発明の第4の特徴は、下部磁極と、上部磁極と、下部磁極と上部磁極との間に形成された絶縁膜とを備えた薄膜磁気ヘッドにおいて、上部磁極は第1上部磁極と第2上部磁極とに分離して形成し、第1上部磁極は、絶縁膜上に下部磁極と対向すると共に、円盤状のディスクと対向する端面を有し、第2上部磁極は、幅の広い上面部と、第1上部磁極上に積層され上面部より幅が狭い先端部と、先端部と上面部とをつなぐ傾斜部とを有し、第2上部磁極の先端部は、第1上部磁極側の接合面の傾斜部につながる部分と両側部分とを略直角に結ぶ特異点を有するように形成したことにある。
【0016】本発明の第5の特徴は、薄膜磁気ヘッドにおいて、さらに、第2上部磁極の傾斜部は、その中間部に幅の変化が急拡大するように変曲点を形成したことにある。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の各実施例を図を用いて説明する。各実施例及び従来技術の図における同一符号は同一物又は相当物を示す。
【0018】まず、本発明の第1実施例を図2から図5及び図9を用いて説明する。
【0019】最初に、磁気ディスク装置の全体構成を図2を用いて説明する。図2は本発明の第1実施例に係る磁気ディスク装置の正面図である。
【0020】磁気ディスク装置は、記録面を有する円盤状のディスク5を回転させるモータ4と、アームの先端に位置し、ディスク5の記録面に対向して磁気信号の記録又は再生を行う薄膜磁気ヘッド9と、薄膜磁気ヘッド9が先端部に装着され、薄膜磁気ヘッド9を支持してアームを構成するヘッド支持ばね8と、ヘッド支持ばね8を取り付けてアームを構成し、薄膜磁気ヘッド9を駆動するアクチュエータ7と、前記先端部に薄膜磁気ヘッド9が搭載されたアームを駆動させ、薄膜磁気ヘッド9の位置を制御する制御機構部6とを備えている。制御機構部6は、アームを通じて薄膜磁気ヘッド9をディスク5における所定の位置へ誘導し、これにより、薄膜磁気ヘッド9は、ディスク5に所定位置に磁気信号を記録し、又は磁気信号を読み取る。
【0021】次に、薄膜磁気ヘッド9の全体構成を図3を用いて説明する。図3は図2に用いる薄膜磁気ヘッドの外観模式図である。
【0022】薄膜磁気ヘッド9は、基板10上に薄膜17が多層にスパッタリングなどにより積層された構造となっている。なお、面Sが、ディスク5の記録面と対向する面である。
【0023】次に、薄膜磁気ヘッド9の上下磁極部分の詳細構成を図4及び図5を用いて説明する。図4は図3のA−A断面図、図5は図4の上部磁極の斜視模式図である。
【0024】図4に示すように、薄膜磁気ヘッド9は、基板10上に積層された下部磁極15と、下部磁極15上に積層された絶縁膜13と、絶縁膜13上に積層された上部磁極3と、上部磁極3を覆って最上層を形成する保護膜16とを有している。上部磁極3内には、絶縁膜11a、11b、11cにより覆われたコイル12を有している。この絶縁膜11a、11b、11cの内部にあるコイル12によって、絶縁膜13を挟んだ上部磁極3と下部磁極15を通る磁界を発生させ、ディスク5への記録を行う。
【0025】図4及び図5に示すように、上部磁極3は第1上部磁極1と第2上部磁極2とに分離して形成されている。第1上部磁極1は、円盤状ディスクと対向する端面1a1を有し、細幅の直方体で形成されている。第2上部磁極2は、幅の広い上面部2cと、第1上部磁極1の後部上に積層され、上面部2cより幅が狭い端面2a1を有する先端部2aと、先端部2aと上面部2cとをつなぐ傾斜部2bとを有している。先端部2aは、図5で明らかなように、端面2a1とほぼ同じ外形の略直方体状に形成され、下面に第1上部磁極1及び絶縁膜13との接合面2a2を有し、さらにその接合面2a2の傾斜部2bにつながる部分と両側部分とを略直角に結ぶ特異点2a3を有している。従って、傾斜部2bは、両側が先端部2aの両側に交差するようにつながっている。なお、接合面2a3から上面部2cまでの高さ寸法は約7μmであり、端面1a1の幅lは従来技術2に示すものと同じである。
【0026】なお、上下磁極3、15の材料は81Ni−19Fe、94Co−6Fe、45Ni−55Fe、FeTaN、及び30Fe−25Co−45Ni等である。また、絶縁膜11に用いる材質は有機系の樹脂である。
【0027】かかる第2上部磁極2の応力解析を従来と同様の解析方法で行なった結果、図9で明らかなように、本発明第1実施例の応力分布特性43は、上部磁極3を分離した従来技術2の応力分布特性42より著しく低いものとすることができることが判明した。これは、第2上部磁極の先端部2aの接合面2a2の傾斜部2bにつながる部分と両側部分とを結ぶ特異点2a3の角度が略直角にしたために、特異点2a3付近における応力集中を大幅に緩和できるためである。このように、本実施例によれば、従来技術2と比較して、応力を大幅に低減できることにより、剥離を防止して信頼性の高いものとすることができると共に、上部磁極3を第1上部磁極1と第2上部磁極2の分離構造にしているので、第1上部磁極1の端面1a1の幅狭小化加工が容易である。特に、第1上部磁極1を直方体で形成したことにより、その加工は極めて容易である。
【0028】次に、本発明の第2実施例を図1、図6、図7及び図9から図11を用いて説明する。図1は本発明の第2実施例における上部磁極の斜視模式図、図6は図1の上部磁極における寸法例1を示す斜視模式図、図7は図1の上部磁極における異なる寸法例2を示す斜視模式図である。本実施例は、上部磁極2の傾斜部が次に述べる通り第1実施例と相違するものであり、その他の点については第1実施例と基本的には同一である。
【0029】本実施例では、第2上部磁極2の傾斜部2bの中間部に幅の変化が急拡大するように変曲点2b3を設け、先端部2aに近い方の第1傾斜部2b1と、上面部2cに近い方の第2傾斜部2b2とを形成している。そして、接合面2a1から変曲点2b3までの高さhを変化させ、図6に示す寸法例1はhを約2μmとした場合であり、図7に示す寸法例2はhを約5μmとした場合である。
【0030】この寸法例1及び寸法例2の応力解析を従来と同様の解析方法で行なった結果、図9で明らかなように、寸法例1の応力分布特性44は、上部磁極3を分離した従来技術2の応力分布特性42及び本発明の第1実施例より格段に、かつ上部磁極3を一体形成した従来技術1よりも低いものとすることができるものであった。また、図9に示すように、寸法例2は、上述した全ての例に対して格段に低い応力分布特性45することができるものであった。このように、本実施例では、変更が極めて難しい材料の変更によるのではなく、傾斜部2bに変曲点2b3を設けるという構成の変更により、応力を格段に低減することができるものである。
【0031】次に、本発明の第3実施例を図8を用いて説明する。図8は本発明の第3実施例における上部磁極の斜視模式図である。
【0032】本実施例は、幅狭の端面2a1を有する直方体状の先端部1aと、第2上部磁極2の先端部2aの幅より広い幅を有してこの先端部2aに接合する直方体状の後部拡大部1bとを有する点にて第2実施例と相違するものであり、その他の点については第2実施例と基本的には同一である。
【0033】この第2実施例によれば、第1上部磁極1の加工性が低下するが、第1上部磁極1と第2上部磁極2との接合面積を広く確保できので、その磁気結合を確実に行なうことができる。し、図8は、本発明のさらに別の実施形態に係る上部磁極の模式図である。この図で示されるように、第1上部磁極1の形状を凸字状として、第2上部磁極2の接合面の形状から鋭角を排除してもよい。
【0034】次に、本発明の各実施例の解析結果に基づいて、接合面2a2から変曲点2b3までの高さhと上面部2cまでの高さHとの最適な関係について図9から図11を用いて説明する。
【0035】図9に示す従来技術2(図14)、第1実施例(図5、h=0μm)、第2実施例1(図6、h=2μm)及び第2実施例2(図7、h=5μm)の特異点付近の各応力分布は、次式に従うと仮定できるので、応力拡大係数Kで整理することができる。
【0036】
δz=K/xλ …(1)
この(1)式において、λは特異場の指数であり、図9に示された両対数グラフの傾きに相当する。図9に示された上部磁極の各構造における特異点近傍の応力は、両対数グラフですべてほぼ同じ傾きの直線で近似でき、その傾きは0.3である。したがって、特異場の指数λは0.3である。また、xは特異点からの距離である。
【0037】図10は、変曲点高さhと応力拡大係数K(λ=0.3)の関係を両対数プロットして示すものである(ただし横軸は(h+1)とした。)。この図10のグラフより、変曲点高さhは次式で表される。
【0038】
h=(874/K2.14)−1 …(2)
(2)式に従来技術1のK=15.4MPam?を代入するとh=1.5mmが得られる。例えば、応力拡大係数Kを従来技術1より小さくする条件はh>1.5mmである。なお、図10は、第2上部磁極2の磁性膜裏面の接合面からの高さH=約7mmのときの曲線である。
【0039】図11に、任意の上面部高さHのときの応力拡大係数Kと、H=7mmのときのK(HK=7)の比を示す。図11の関係は任意のh(0≦h≦H)で成り立ち、図11より変曲点高さhは次式で表される。
【0040】
h=((2.83H+3.81)/K)2.14−1 (1≦H≦7) …(3)
h=((0.747H+18.6)/K)2.14−1 (7<H≦13)…(4)
例えばH=5mmのとき、K=15.4MPam?を代入することによりh=0.39mmが得られ、従来技術1以下のKとするためには、h>0.39mmでなければならないことがわかる。
【0041】図1のように、第2上部磁極2の傾斜部2bの変曲点高さhを次式を満たす値とすれば、第1上部磁極1と第2上部磁極2の接合面の応力を従来技術1以下に抑制でき、はく離を防止することができる。
【0042】
h>(0.18H+0.25)2.1−1 (1≦H≦7) …(5)
h>(0.049H+1.2)2.1−1 (7<H≦13)…(6)
なお、H≦4mmで、h<0となるため、実際のHの適用範囲は、H>4である。従って、従来技術1より応力を低減するには、4<H≦7のときにh>(0.18H+0.25)2.1-1、7<H≦13のときにh>(0.049H+1.2)2.1-1であることが必要である。
【0043】
【発明の効果】本発明によれば、磁気ディスクに対向する端面の幅狭小化加工が容易で、しかも応力を低減して剥離を防止できることにより高い信頼性を有する薄膜磁気ヘッド及びこれを搭載した磁気ディスク装置を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
【出願日】 平成12年8月10日(2000.8.10)
【代理人】 【識別番号】100068504
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 勝男 (外2名)
【公開番号】 特開2002−56506(P2002−56506A)
【公開日】 平成14年2月22日(2002.2.22)
【出願番号】 特願2000−242121(P2000−242121)