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【発明の名称】 音声合成方法
【発明者】 【氏名】望月 亮

【氏名】礒野 敏幸

【氏名】西村 洋文

【要約】 【課題】音声素片を変形、接続して音声を合成する際、大幅なデータ圧縮をすることができ、しかも、音質の劣化を小さくすることができる音声合成方法を提供すること。

【解決手段】音声素片の有声部分をピッチ波形301単位に分解し、ピッチ波形301の位相特性303を特定の代表位相特性305に置き換え、位相特性が置き換えられたピッチ波形307を似通ったピッチ波形同士にグループ化し、グループ毎に代表ピッチ波形を決定し、この代表ピッチ波形を用いて音声を合成するよう構成した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 音声素片を変形、接続して音声を合成する波形重畳方式の音声合成方法において、音声素片の有声部分をピッチ波形単位に分解し、前記ピッチ波形の位相特性を特定の代表位相特性に置き換え、前記ピッチ波形を似通ったピッチ波形同士にグループ化し、グループ毎に代表ピッチ波形を決定し、前記代表ピッチ波形を用いて音声を合成することを特徴とする音声合成方法。
【請求項2】 前記代表位相特性は、前記音声素片の有声部分を分解して得た複数のピッチ波形から求めることを特徴とする請求項1に記載の音声合成方法。
【請求項3】 前記代表位相特性は、前記複数のピッチ波形の位相特性を平均して求めることを特徴とする請求項2に記載の音声合成方法。
【請求項4】 予め音素の種別毎に前記ピッチ波形を分類することを特徴とする請求項1乃至請求項3いずれかに記載の音声合成方法。
【請求項5】 前記ピッチ波形をグループ化する際、前記ピッチ波形の振幅特性に対して周波数毎に重み付けして生成した類似度評価用のピッチ波形同士を比較することを特徴とする請求項1乃至請求項4いずれかに記載の音声合成方法。
【請求項6】 合成時に隣接して用いる代表ピッチ波形同士を比較し、前記比較の結果が所定の条件を満たさないとき、代表ピッチ波形を決定し直すことを特徴とする請求項1乃至請求項5いずれかに記載の音声合成方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、音声素片を変形、接続して音声を合成する波形重畳方式の音声合成方法に関し、特に、音声素片の有声部分をピッチ波形単位に分解して加工する音声合成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、音声素片を変形、接続して音声を合成する波形重畳型の音声合成方法(特開平10−171484号公報に記載)は、使用するメモリ容量が少なくて済むように、音声素片をピッチ波形単位に分解し、このピッチ波形の中から冗長と思われるピッチ波形を省き、代表となるピッチ波形を用いて音声を合成するようになっていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような従来の音声合成方法では、位相特性の相違によってピッチ波形の形状が様々であるため、類似度の高いピッチ波形をまとめあげて代表ピッチ波形に置き換えたとしても、大幅なデータ削減にはつながらないという問題があった。
【0004】本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、音声素片を変形、接続して音声を合成する際、大幅なデータ圧縮をすることができ、しかも、音質の劣化を小さくすることができる音声合成方法を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の音声合成方法は、音声素片を変形、接続して音声を合成する波形重畳方式の音声合成方法において、音声素片の有声部分をピッチ波形単位に分解し、前記ピッチ波形の位相特性を特定の代表位相特性に置き換え、前記ピッチ波形を似通ったピッチ波形同士にグループ化し、グループ毎に代表ピッチ波形を決定し、前記代表ピッチ波形を用いて音声を合成する構成を有している。この構成により、ピッチ波形の位相特性の不一致によるピッチ波形の形状の違いを取り除いた後、ピッチ波形をグループ化して代表ピッチ波形を選択するため、多数のピッチ波形をひとつの代表ピッチ波形に置き換えることができるようになり、大幅なデータ圧縮をすることができることとなる。また、ピッチ波形単位の位相特性は変更しても合成した音声の音質にほとんど影響を与えないため、音質劣化が少ない音声合成をすることができることとなる。
【0006】本発明の音声合成方法は、前記代表位相特性を、前記音声素片の有声部分を分解して得た複数のピッチ波形から求める構成を有している。この構成により、もととなる音声素片の有声部分を分解して得た複数のピッチ波形から代表位相特性を求めるので、ピッチ波形の位相特性の置き換えに伴うピッチ波形の形状の変更を小さくすることができ、音質劣化がさらに少ない音声を合成することができることとなる。
【0007】本発明の音声合成方法は、前記代表位相特性を、前記複数のピッチ波形の位相特性を平均して求める構成を有している。この構成により、もととなる音声素片の有声部分を分解して得た複数のピッチ波形の位相特性を平均して求めるので、ピッチ波形の位相特性の置き換えに伴うピッチ波形の形状の変更を小さくすることができ、音質劣化がさらに少ない音声を合成することができることとなる。
【0008】本発明の音声合成方法は、予め音素の種別毎に前記ピッチ波形を分類する構成を有している。この構成により、グループ分けにかかる演算量を大幅に省けるとともに、音素の種別が異なるピッチ波形同士が同一グループに振り分けられることを防ぐことができ、安定した音質の音声を合成することができることとなる。
【0009】本発明の音声合成方法は、前記ピッチ波形をグループ化する際、前記ピッチ波形の振幅特性に対して周波数毎に重み付けして生成した類似度評価用のピッチ波形同士を比較する構成を有している。この構成により、各周波数帯域における振幅特性が合成音声の音質に与える影響を考慮することができ、音質との整合性がとれた類似度評価が可能となり、安定した音質の音声を合成することができることとなる。
【0010】本発明の音声合成方法は、合成時に隣接して用いる代表ピッチ波形同士を比較し、前記比較の結果が所定の条件を満たさないとき、代表ピッチ波形を決定し直す構成を有している。この構成により、音声素片を代表ピッチ波形によって再構成する際に、隣接する代表ピッチ波形間の連続性が考慮され、音質の劣化をさらに小さくすることができることとなる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する【0012】(第1の実施の形態)図1は音声素片から抽出したピッチ波形をグループ分けして代表ピッチ波形を決定する例を示した図である。図1において、音声素片101〜104は、CV(子音・母音)、VCV(母音・子音・母音)といった単位からなり、合成時に韻律変形を施して接続する。ピッチ波形データベース111は音声素片の有声部分から抽出したピッチ波形を格納するものである。類似したピッチ波形を集めたグループ122、123は、位相特性が統一されたピッチ波形について、類似度を評価関数にして振り分けたものである。代表ピッチ波形132、133は各グループ122、123から選出された代表となるピッチ波形である。代表ピッチ波形データベース131は代表ピッチ波形132、133を格納するものである。
【0013】図2は音声素片の一部分からピッチ波形を抽出する例を示した図である。図2において、ピッチ波形211〜217は原音声からハニング窓によって抽出される。ピッチマーク位置221〜227はピッチ波形抽出の基準であり、予め自動または手動で付与してある。
【0014】図3はピッチ波形の位相特性を特定の位相特性(代表位相特性)に置き換える例を示した図である。図3において、まず、音声素片から抽出した時間軸のピッチ波形301に対してフーリエ変換処理302を行い、周波数軸の位相特性303および振幅特性304を得る。ここで、位相特性303を、予め選定または生成された代表位相特性305に置き換える。図4はピッチ波形の位相特性(または代表位相特性)の例を示した図であり、位相は各周波数毎に異なっている。なお、振幅特性304については置き換えを行わない。次に、代表位相特性305と振幅特性304とに対して逆フーリエ変換処理306を行い、位相特性が代表位相特性に置き換えられた時間軸のピッチ波形307を得る。
【0015】図5は代表ピッチ波形を用いて音声素片を再構成する例を示した図である。図5において、代表ピッチ波形511〜513はピッチ波形の代替として使用される。代表ピッチ波形511〜513を配列して再構成された音声素片521を得る。
【0016】本実施の形態は、まず、図1に示すように、音声素片101〜104の有声部分をピッチ波形単位に分解し、各ピッチ波形をピッチ波形データベース111に格納する。ピッチ波形は、図2に示すように予め音声波形に付与されたピッチマーク位置221〜227を基準に、ハニング窓を用いて抽出する。続いて、ピッチ波形データベース111に格納されたピッチ波形について、図3に示すように、位相特性を統一する。ピッチ波形の位相特性は、変更しても合成音声の音質にほとんど影響を与えないため、あるひとつの位相特性(代表位相特性)に置きかえる。位相特性を統一することで、位相特性の違いによって生じる波形形状の不一致を取り除き、ピッチ波形間の類似性を高めることができる。続いて、図1に示すように、位相特性を統一したピッチ波形データベース111内で、類似度が高いピッチ波形同士をグループにまとめあげる。ピッチ波形間の類似度は、距離(ユークリッド距離)や相関、尤度によって定義できる。ここでは類似度を表す指標として相関係数を用いる。あるふたつのピッチ波形SmおよびSnの相関係数Mmnは下記数1から求める。
【数1】

ここで、l はピッチ波形長を表し、ふたつのピッチ波形の波形長のうち、短い方に合わせる。続いて、図1に示すように、各グループ122、123において、それぞれ代表ピッチ波形132、133を選定する。各グループにおける代表ピッチ波形の選定は、ベクトル量子化によってコードブックを作成する要領でセントロイドを求め、このセントロイドの最近傍にあるピッチ波形を代表ピッチ波形として選定し、代表ピッチ波形データベース131に格納する。そして、図5に示すように、代表ピッチ波形511〜513によって音声素片521を再構成する。なお、もとの音声素片を構成するピッチ波形と代表ピッチ波形511〜513との対応関係は、音声素片を再構成するための情報として保存する。合成時には、この対応関係を示す情報を参照することで必要な音声素片521を再構成する。
【0017】以上のように本実施の形態によれば、ピッチ波形を共有化することにより冗長なデータの削減が可能であり、特に位相特性を統一することで、位相特性の不一致によって生じる波形形状のばらつきを取り除くことができ、ピッチ波形間の類似度が高まることから、飛躍的にデータベースを縮小することが可能である。
【0018】なお、前記説明では、CV単位、VCV単位の音声素片からピッチ波形を抽出した場合を例に説明したが、当然、その他の単位の音声素片や、任意の自然発声音声から抽出したピッチ波形に対して処理することも可能である。
【0019】また、前記説明では、ピッチ波形間の類似度を時間軸で評価する場合を例に示したが、周波数軸において振幅スペクトルの距離を用いて評価する方法でも、ほぼ同等の効果が得られる。
【0020】尚、上記説明では、各グループ分けされたピッチ波形の中から代表ピッチ波形を選定する方法を例に示したが、各グループ分けされたピッチ波形の中で、セントロイド(重心)を代表ピッチ波形として用いることも可能である。
【0021】(第2の実施の形態)第2の実施の形態は、音声合成に利用する音声素片の有声部分を分解して得たピッチ波形から、統計的な手法によって、代表ピッチ波形を求めるようになっている。また、代表位相特性を複数用意して選択するようになっている。その他の処理は、第1の実施形態と同じであり、詳細な説明を省略する。
【0022】図6は代表位相特性を決定する例を示した図である。図6において、ピッチ波形601は代表位相特性を決定するための分析対象である。フーリエ変換処理602はピッチ波形601を周波数分析する処理である。位相特性603はピッチ波形601からフーリエ変換処理602によって得られる。代表位相特性生成処理604は統計的な手法によって代表位相特性を生成する方法である。代表位相特性データベース605は代表位相特性を格納するものである。なお、ピッチ波形データベース111は、図1に示したピッチ波形データベース111であって、音声合成に利用する音声素片の有声部分を分解して得た複数のピッチ波形を格納したものである。
【0023】ここで、代表位相特性を求める統計的な手法の例を説明する。フーリエ変換処理602の結果、ピッチ波形の周波数軸における振幅特性A(w)および位相特性P(w)は、実部R(w)と虚部I(w)を用いて、それぞれ、A(w)=(R(w)2+I(w)21/2P(w)=tan-1(I(w)/R(w))
によって求められる。なお、wは周波数[Hz]を表し、離散値である。ここで、ピッチ波形データベース111内のN個のピッチ波形について、位相特性の平均P’(w)を下記数2によって求め、このP’(w)を代表位相特性とする。すなわち、複数のピッチ波形について周波数毎の位相の平均を代表位相特性とする。
【数2】

【0024】図7は代表位相特性を選択して位相特性を置き換える例を示した図である。図7において、ピッチ波形701は音声合成に利用する音声素片の有声部分を分解して得たピッチ波形である。フーリエ変換処理702はピッチ波形701を周波数分析する処理である。振幅特性703および位相特性704は、フーリエ変換処理702によって得られる周波数軸におけるピッチ波形701の特性である。代表位相特性705は位相特性704の代わりに使用される位相特性である。逆フーリエ変換処理706は周波数軸から時間軸に戻す処理である。逆フーリエ変換処理706によって、位相特性が置き換えられたピッチ波形707が得られる。代表位相特性選択処理708は代表位相特性データベース605から適切な代表位相特性を選択する処理である。
【0025】本実施の形態では、図6に示すように、ピッチ波形データベース111に格納されているすべてのピッチ波形について、フーリエ変換処理を施し、周波数軸の位相特性を求める。ここで求まった複数のピッチ波形の位相特性について類似度を基準にグループ分けを行ない、複数の代表位相特性を求める。各グループの代表位相特性は、グループ内の位相特性の平均を用いるか、または、グループ分けされた位相特性の中から最もセントロイドに近い位相特性を選定する。このように求めた代表位相特性を代表位相特性データベース605に格納する。続いて、図7に示すように、ピッチ波形の位相特性を代表位相特性に置き換える。まず位相操作の対象であるピッチ波形701にフーリエ変換処理702を施し、振幅特性703と位相特性704を抽出する。抽出された位相特性704を、代表位相特性705に置き換える。代表位相特性データベース605に代表位相特性が複数ある場合は、もとの位相特性704との類似度が最も高い代表位相特性を選択する(代表位相特性の選択処理708)。選択された代表位相特性705と振幅特性703に対して逆フーリエ変換処理706を行い、位相特性が置き換えられたピッチ波形707を得る。
【0026】以上のように本実施の形態によれば、ピッチ波形の位相特性を、音声合成に利用する音声素片の有声部分を分解して得たピッチ波形から統計的な手法によって求めた代表位相特性に置き換えることにより、ピッチ波形間の位相特性の不一致を回避でき、また、零位相化のようにエネルギーが集中する不自然なピッチ波形になることが避けられ、音質が安定した音声合成をすることができる。
【0027】(第3の実施の形態)第3の実施の形態は、予め音素の種別毎にピッチ波形を分類しておくようになっている。その他の処理は、第1または第2の実施の形態と同じであり、詳細な説明を省略する。
【0028】図8は音声素片から抽出したピッチ波形を音素カテゴリ(音素の種別)に基づいて分類する例を示した図である。図8において、VCV単位の音声素片801〜804はピッチ波形の抽出もとであり、ピッチ波形データベース811〜813は音素の種別毎にグループ分けされたピッチ波形をそれぞれ格納する。
【0029】音声素片から抽出したすべてのピッチ波形をひとつの集合として、この中から類似度の高いピッチ波形同士をグループ化することは可能であるが、すべてのピッチ波形を一度に取り扱う場合、ピッチ波形数が多大になるためグループ分け処理に時間がかかり、作業効率が良くない。そこで、音声素片から抽出したピッチ波形をひとつのピッチ波形データベースに格納するのではなく、予め音素の種別毎にピッチ波形データベースを作成する。音声素片801〜804は予め音素境界がラベリングされており、抽出したピッチ波形が属す音素の種別に基づき、ピッチ波形は、音素の種別毎に分類されてピッチ波形データベース811〜813に格納される。ここで音素の種別は、母音/a/、/i/、/u/、/e/、/o/、撥音/n/、半母音/w/、/y/、有声子音/m/、/n/、/r/、/z/、/j/、/b/、/d/、/g/、/v/といった音素の種別である。続いて音素の種別毎にピッチ波形の位相特性を代表位相特性に置き換え、グループ分けを行う。なお、代表位相特性は、音素の種別毎に各ピッチ波形データベース811〜813内で決定する。以降、各グループから代表ピッチ波形を選定または生成し、この代表ピッチ波形を用いて、音声素片を再構成する。
【0030】以上のように、本実施の形態によれば、ピッチ波形を予め音素の種別に基づいて分類することで、グループ化処理にかかる計算の手間が大幅に省けるとともに、音素の種別が異なるピッチ波形同士が同一グループにグループ分けされることを防げるため、音質が安定した音声合成をすることができる。
【0031】尚、前記説明では、VCV単位の音声素片からピッチ波形を抽出した場合を例に説明したが、当然、その他の単位の音声素片や、任意の自然発声音声から抽出したピッチ波形に対して処理することも可能である。
【0032】尚、前記説明では、各ピッチ波形データベース毎に代表位相特性を決定する例を説明したが、すべてのピッチ波形データベースで同一の代表位相特性を決定するようにしてもよい。
【0033】(第4の実施の形態)第4の実施の形態は、ピッチ波形をグループ化する際、ピッチ波形の振幅特性に対して周波数毎に重み付けして生成した類似度評価用のピッチ波形同士を比較するようになっている。その他の処理は、第1、第2、または第3の実施の形態と同じであり、詳細な説明を省略する。
【0034】図9はピッチ波形間の類似度を評価するための前処理の例を示した図である。図9において、もとのピッチ波形901は重み付け処理を行う前のピッチ波形である。振幅特性911は、ピッチ波形901に対してフーリエ変換処理を行って得られた周波数軸の振幅特性である。振幅特性911に対して周波数帯域毎に設定する振幅利得(重み)921は、周波数帯域毎の重要性に応じて任意に決められている。前処理フィルタ902は、ピッチ波形901に対してフーリエ変換処理を行って得られた振幅特性911に対して、周波数帯域毎に振幅利得921を設定する。この周波数帯域毎に振幅利得が設定された振幅特性と、代表位相特性とによって逆フーリエ変換が行われ、この逆フーリエ変換によって得られた類似度評価用のピッチ波形903、すなわち振幅利得921が設定されたピッチ波形903によって、ピッチ波形同士の類似度の評価を行う。
【0035】ピッチ波形間の類似度は、ピッチ波形間の相関係数によって評価する。この相関係数が1に近いほどピッチ波形間の類似度が高いことを示し、類似度が高いピッチ波形同士は音声素片を再構成する際に相互に置き換えを行なっても歪みが少ない。すなわち、代表ピッチ波形とそのグループに属すピッチ波形との相関係数が高ければ、代表ピッチ波形を用いることによって音質劣化が生じることはない。
【0036】音声波形間の類似度を定義するにあたり、低域における振幅特性は音声の連続性を保持するために極めて高い類似度を必要とするが、高域における振幅特性の類似度はそれほど気にしなくても良い場合がある。このように周波数帯域毎に振幅特性の重要度が違ってくる。ここでは低域の振幅特性に重みを置いた場合を例にして説明すると、類似度の評価対象となるピッチ波形の振幅特性911に対して、周波数帯域に応じた振幅利得921をかけあわせる。このように、帯域毎に重み付けされたピッチ波形を用いて類似度の評価を行なう。これはピッチ波形901を低域通過フィルタに通し、高域成分の影響を抑えたピッチ波形903を用いて類似度を評価する処理と等化である。尚、類似度の評価にはこのフィルタリングをしたピッチ波形を用いるが、実際にグループ分けされ、代表ピッチ波形として選定されるのは、フィルタ処理を行なわないピッチ波形である。すなわち、本処理は類似度の評価を行うための処理である。
【0037】以上のように、本実施の形態によれば、類似度評価を行なう前処理として、ピッチ波形に対して周波数帯域毎に重み付けをすることで、各周波数帯域の振幅特性が合成音声の音質に与える影響を考慮した上で類似度を評価することができるため、音質と類似度との関係の整合性がとれたピッチ波形削減が可能である。
【0038】尚、類似度評価用のピッチ波形同士による類似度の評価は、周波数軸におけるピッチ波形の振幅特性に基づいて類似度を評価するようにしてもよく、また、時間軸でフィルタリングされたピッチ波形を用いて類似度を評価するようにしてもよい。
【0039】(第5の実施の形態)第5の実施の形態は、隣接して用いる代表ピッチ波形同士の類似度を評価するようになっている。
【0040】図10は隣接して用いる代表ピッチ波形の類似度を評価する例を示した図である。図10において、初期の代表ピッチ波形を選定する処理1001、ピッチ波形のグループ分け処理1002、各グループにおける代表ピッチ波形の選定処理1003、各代表ピッチ波形が条件を満たしているかどうかの判定処理1004、1005、および、代表ピッチ波形の選定処理1006は、本処理の各構成要素である。図11は連続するピッチ波形間の類似度と代表ピッチ波形の類似度との関係を説明する図である。図11において、ピッチ波形1101、1102は音声素片内の隣り合うピッチ波形であり、代表ピッチ波形1111、1112は、ピッチ波形1101、1102の代わりに使用される波形である。
【0041】図10において、まず、ピッチ波形データベース内において全てのピッチ波形の中から、任意のピッチ波形を初期の代表ピッチ波形に選定する(1001)。続いてすべてのピッチ波形について、代表ピッチ波形との類似度を計算し、最も類似度が高くなる代表ピッチ波形のグループに各ピッチ波形を割り振る(1002)。ここで代表ピッチ波形の数だけグループが作成されることになる。全てのピッチ波形をグループ分けしたら、各グループ毎に新たに代表ピッチ波形を選定し直す(1003)。代表ピッチ波形は各グループ内で最も重心近傍にあるピッチ波形を採用する。この新たに選定された代表ピッチ波形が条件を満たしているかどうか判断する。ここで条件は2つあり、1つは代表ピッチ波形とそのグループに属すすべてのピッチ波形との類似度が定められた閾値を満たしていること(1004)、もう1つは代表ピッチ波形によって音声素片を再構成した際に、隣接して用いる代表ピッチ波形同士の類似度が代表ピッチ波形に置きかえられる前のピッチ波形同士の類似度で決まる閾値を満たしていること(1005)である。もし、条件が満たされないときは、このグループを2つのグループに分割し、各グループにそれぞれ代表ピッチ波形を選定する(1006)。このように各代表ピッチ波形について、グループ内のすべてのピッチ波形との類似度、および、隣接して用いる代表ピッチ波形との類似度が、所定の条件を満たすまで一連の処理を繰り返し、最終の代表ピッチ波形を決定する。
【0042】ピッチ波形のグループ化処理において、新たに代表ピッチ波形を作成するかどうかの判断は、各代表ピッチ波形とグループ内のピッチ波形との類似度が所定の条件を満たしているかどうかで決定されるが、本実施の形態ではこれに加え、選定された代表ピッチ波形間の類似度も判断材料として用いている。図11において、音声素片内の連続する2つのピッチ波形(1101、1102)間の類似度に対して、それぞれの代用として使用される代表ピッチ波形(1111、1112)間の類似度が、ある一定以上の類似度を満たすか否か判定している。例えば、類似度として相関係数を用い、もとの連続するピッチ波形(1101、1102)間の相関係数が0.9であった場合、この代用として使われる代表ピッチ波形(1111、1112)間の相関係数は、0.9α以上であることを条件とする。ここでαは閾値を決定する所定の係数で、0<α<1である。この条件が満たされるまで、一連のグループ分け処理を繰り返し行なう。
【0043】以上のように、本実施の形態によれば、各グループ内のピッチ波形間の類似度だけでなく、音声素片を代表ピッチ波形で再現した際に隣接して用いる代表ピッチ波形間の類似度も考慮することで、連続性の良い音声素片を再構成することができ、音質劣化の少ない音声合成が可能となる。
【0044】尚、前記説明では、ピッチ波形間の類似度として相関係数を用いる例を示したが、スペクトル距離を用いて評価しても、ほぼ同等の効果が得られる。
【0045】
【発明の効果】本発明は、音声素片を変形、接続して音声を合成する際、大幅なデータ圧縮をすることができ、しかも、音質の劣化を小さくすることができるという優れた効果を有する音声合成方法を提供することができるものである。
【出願人】 【識別番号】000005821
【氏名又は名称】松下電器産業株式会社
【出願日】 平成12年9月18日(2000.9.18)
【代理人】 【識別番号】100072604
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 軍一郎
【公開番号】 特開2002−91475(P2002−91475A)
【公開日】 平成14年3月27日(2002.3.27)
【出願番号】 特願2000−281683(P2000−281683)