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【発明の名称】 個人識別装置
【発明者】 【氏名】清水 正

【氏名】杉野 創

【氏名】伊藤 健介

【氏名】安川 薫

【要約】 【課題】偽造が困難であり、利用者の心理的な抵抗感がなく、利用時の身体の拘束条件が殆んどなく、融通性が高く、更に、入れ替わりによる成り済ましを防止することができる個人識別装置を得る。

【解決手段】個人がキーボード14に設けられたキーを打鍵したときの打鍵時刻と当該キーを特定できる打鍵コードとが含まれた打鍵事象を打鍵事象検出処理40によって検出し、検出した打鍵事象に基づいて、上記個人が連続して打鍵したときの隣接する2つの打鍵事象の打鍵時間差と当該2つの打鍵事象の上記打鍵コードによって特定されるキーの組合わせを二連接打鍵事象導出処理42によって導出し、導出したキーの組合わせのうち、同一の組合わせ毎に上記打鍵時間差に基づく特徴値を打鍵事象特徴値算出処理44によって算出すると共にハードディスク20に記憶しておき、記憶しておいた特徴値に基づいて個人識別処理50によってキーボード14を操作している個人を識別する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 個人がキーボードを操作する行動に基づいて前記個人を識別する個人識別装置であって、前記個人が前記キーボードに設けられたキーを打鍵したときの打鍵時刻と当該キーを特定できる特定情報とが含まれた打鍵事象を検出する打鍵事象検出手段と、前記打鍵事象検出手段によって検出された打鍵事象に基づいて、前記個人が連続して打鍵したときの隣接する2つの打鍵事象の打鍵時間差と当該2つの打鍵事象の前記特定情報によって特定されるキーの組合わせを導出する二連接打鍵事象導出手段と、前記二連接打鍵事象導出手段により導出されたキーの組合わせのうち、同一の組合わせ毎に前記打鍵時間差に基づく特徴値を算出する打鍵事象特徴値算出手段と、前記打鍵事象特徴値算出手段によって算出された特徴値を記憶する記憶手段と、を備えた個人識別装置。
【請求項2】 個人がキーボードを操作する行動に基づいて前記個人を識別する個人識別装置であって、前記個人が前記キーボードに設けられたキーを連続して打鍵したときの打鍵時刻が隣接する2つのキーの組合わせ毎に、当該2つのキーの打鍵時間差に基づく特徴値が予め記憶された記憶手段と、前記個人が前記キーボードに設けられたキーを打鍵したときの打鍵時刻と当該キーを特定できる特定情報とが含まれた打鍵事象を検出する打鍵事象検出手段と、前記打鍵事象検出手段によって検出された打鍵事象に基づいて、前記個人が連続して打鍵したときの隣接する2つの打鍵事象の打鍵時間差と当該2つの打鍵事象の前記特定情報によって特定されるキーの組合わせを導出する二連接打鍵事象導出手段と、前記二連接打鍵事象導出手段によって導出されたキーの組合わせに対応する前記記憶手段に記憶されている前記特徴値と、前記二連接打鍵事象導出手段によって導出された打鍵時間差とを比較し、該比較結果に基づいて個人を識別する識別手段と、を備えた個人識別装置。
【請求項3】 前記識別手段は、前記特徴値に基づいて作成したメンバーシップ関数を用いたファジイ推論によって個人を識別することを特徴とする請求項2記載の個人識別装置。
【請求項4】 前記識別手段による識別結果の評価値が所定値以下である場合に前記個人の利用範囲を制限する制限手段を更に備えたことを特徴とする請求項2又は請求項3記載の個人識別装置。
【請求項5】 前記打鍵事象検出手段は、前記キーボードのキーを離す事象を利用して前記打鍵時刻を検出することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項記載の個人識別装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、個人識別装置に係り、より詳しくは、個人がキーボードを操作する行動に基づいて当該個人を識別する個人識別装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、利用が制限された領域への入退出管理やコンピュータのアクセス管理等に利用する個人識別装置の識別手法として、指紋、虹彩、網膜血管、手形、顔等の人体の特徴を利用する手法や、声紋、署名といった特性を利用する手法が知られている。
【0003】このうち、特に、特開平6−28457号公報、特開平6−28458号公報、特開平6−28459号公報等に開示されている指紋のパターンを利用する識別手法は、万人不同でかつ終生不変の身体的特徴を利用することで、他の手法に比較して高い識別率が実現できる手法として広く知られている。
【0004】一方、これらの手法とは異なる技術として、特開昭62−157966号公報には、予め定められた文字列をタイピングする際の、当該タイピングの時間的特徴を利用して、個人を確認する技術が記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述のような指紋を光学的に検出することによって得られた二次元パターンを利用する手法では、前述のように高い識別率は実現できるものの、他人の指紋パターンの採取と、該指紋パターンの複製は比較的容易に可能であり、如何に高い識別率を実現したところで、複製を用いた偽造に対して弱い、という問題点があった。
【0006】また、この手法では、指紋パターンの採取のためにプリズム等の光学部材に手を触れる必要があり、不特定多数の人が利用する場合には非衛生的である、という問題点もあった。
【0007】これらの問題点を回避しようとして、非接触で指紋の凸部である隆線や凹部である谷部の形状情報を追加した三次元パターンを検出して利用したとしても、詰まるところ外観の情報に一次元分の情報を追加しただけのことで、偽造が多少面倒になる程度の効果しか得られず、指紋パターンの検出装置が複雑化し、データ処理量が多大になって、装置コストと処理時間が増大するだけで、問題の根本的な解決には成り得ない。即ち、平面的な二次元パターンであろうが、立体的な三次元パターンであろうが、外観情報を利用する限り偽造に弱いのである。
【0008】更に、指紋の利用は犯罪捜査のイメージがあるために、利用者の心理的な抵抗感が高く、一般に普及させるためにはイメージの払拭という、技術以前の困難な問題も抱えている。
【0009】以上のような、指紋の外観を利用する手法以外の前述の従来手法も、以下に示すように各々問題を抱えている。
【0010】手形を利用する手法では、指紋の2次元パターンと同様に外観を利用しているため、複製される危険が大きい。また、虹彩を利用する手法は、カメラで虹彩パターンを読み取るため、カメラからのビデオ信号を盗聴して記録することが可能であり、認証時に上記記録されたビデオ信号を、カメラのビデオケーブルに接続することで偽造される危険が大きい。また、顔の形状を利用する手法では、姿勢や照明条件を一定の範囲内に抑える必要があり、安定性に欠け、また外観を利用するために偽造される可能性がある。
【0011】また、声紋や署名は盗み取られる可能性が高く、かつ利用者の心理状態や健康状態の影響を受け易く安定性に欠ける。また、手や指の血管パターンを利用する手法では、外観的特徴を利用する手法より偽造が困難であると共に、網膜血管パターンを利用する手法より利用者の心理的負担が小さい。しかしながら、この手法では、近赤外光等を用い、皮下静脈等の比較的表層に近い情報を利用するため、結局は近赤外カメラ等でパターンを盗み取られる可能性が残る。更に、手や指の血管は、手や指の動きによる変形があるため、毎日完全に同じパターンを得ることが難しい。このため、照合時の許容範囲を広く採らざるを得ず、誤認証率が高くなる、という問題がある。
【0012】また、これらの従来技術の最も重大な基本的問題は、個人識別が時間軸のある一点でのみ行われることで、それ以降の成り済ましに対して無力に近いことである。
【0013】そもそも、これらの個人識別手法は、建物や部屋の入退出という、閉ざされた空間への物理的通過の可否を制御することが主目的であり、ある時点で認証された人物は、空間的に外部と隔離されていて時間の経過に関係なく入れ替われないことが前提となっている。従って、これらの個人識別手法を空間的制約がないネットワークを通じて遠隔地からの計算機、又は計算機端末を利用する際の個人の認証手法として適用しても、操作する人の入れ替わりによる成り済ましを検出できないので、明らかに不適切な手法であると言わざるを得ない。また、ネットワーク経路の途中から侵入しての成り済しも同様に検出できない。それゆえ、アクセス開始時に、これらの個人識別手法を用いて、いくら厳密に個人認証を行なったとしても、セキュリティは万全とは言い難い。
【0014】一方、上記特開昭62−157966号公報に記載の技術は、前述のようにタイピングの時間的特徴を利用して個人を確認しているため、偽造される危険性は著しく低いものの、予め定められた文字列が入力されない限り個人を確認することができないため、利用者は上記文字列の入力を余儀なくされ、融通性が低い、という問題点があった。この問題点を解消するために、同公報に記載されているように「Log in」等の当該機器を起動する際に必ずタイピングする文字列を、上記予め定められた文字列として適用し、利用者が何ら意識することなく個人確認を行うようにすることも可能であるが、この場合は、当該機器の起動時にのみ個人確認を行うことになるので、上述した成り済ましの問題が生ずる。
【0015】本発明は上記問題点を解消するために成されたものであり、極めて偽造が困難であり、利用者の心理的な抵抗感がなく、利用時の身体の拘束条件が殆んどなく、融通性が高く、更に、入れ替わりによる成り済ましを防止することができる個人識別装置を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1記載の個人識別装置は、個人がキーボードを操作する行動に基づいて前記個人を識別する個人識別装置であって、前記個人が前記キーボードに設けられたキーを打鍵したときの打鍵時刻と当該キーを特定できる特定情報とが含まれた打鍵事象を検出する打鍵事象検出手段と、前記打鍵事象検出手段によって検出された打鍵事象に基づいて、前記個人が連続して打鍵したときの隣接する2つの打鍵事象の打鍵時間差と当該2つの打鍵事象の前記特定情報によって特定されるキーの組合わせを導出する二連接打鍵事象導出手段と、前記二連接打鍵事象導出手段により導出されたキーの組合わせのうち、同一の組合わせ毎に前記打鍵時間差に基づく特徴値を算出する打鍵事象特徴値算出手段と、前記打鍵事象特徴値算出手段によって算出された特徴値を記憶する記憶手段と、を備えている。
【0017】請求項1に記載の個人識別装置によれば、個人がキーボードに設けられたキーを打鍵したときの打鍵時刻と、当該キーを特定できる特定情報とが含まれた打鍵事象が打鍵事象検出手段によって検出され、該検出された打鍵事象に基づいて、上記個人が連続して打鍵したときの隣接する2つの打鍵事象の打鍵時間差と当該2つの打鍵事象の上記特定情報によって特定されるキーの組合わせが二連接打鍵事象導出手段によって導出される。ここで、上記キーボードには、パーソナル・コンピュータやワークステーション等のコンピュータに設けられているキーボードの他、携帯電話、有線電話機、ファクシミリ等の通信機器に設けられているキー・スイッチ部や、テレビ受像機、ビデオ装置、エアコン等の各種機器に広く用いられているリモコン装置のキー・スイッチ部等、複数のキーが設けられているあらゆる機器が含まれる。
【0018】また、本発明では、上記二連接打鍵事象導出手段により導出されたキーの組合わせのうち、同一の組合わせ毎に上記打鍵時間差に基づく特徴値が打鍵事象特徴値算出手段によって算出され、該算出された特徴値が記憶手段によって記憶される。なお、上記記憶手段には、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、及びフラッシュEEPROM(Flash EEPROM)等の半導体記憶素子、フロッピー(登録商標)・ディスク、CD−R(Compact Disc-Recordable)、CD−RW(Compact Disc-ReWritable)、MO(光磁気)ディスク等の可搬記録媒体、あるいはネットワークに接続されたサーバ・コンピュータ等に設けられた外部記憶装置等を用いることができる。
【0019】すなわち、本発明では、個人がキーボードによって任意の文字列の入力を行っている状態下で、時間的に連接する打鍵キーの打鍵時間差に基づく特徴値を逐次記憶するようにしている。従って、本発明の特徴値は、任意のキー間の打鍵時間差に基づく値として得られるので、個人を識別する際に、それまでに蓄積されている特徴値に対応する組合わせのキーが連続して打鍵されれば、この打鍵によって得られた打鍵時間差と、これに対応する上記特徴値との比較によって個人の識別が可能となる。従って、本発明を適用した個人識別は、予め定められた文字列を入力する必要がないため、極めて融通性が高い。また、この識別は、偽造が困難であり、利用者の心理的な抵抗感が少なく、かつ利用時の身体の拘束条件が殆んどない。
【0020】更に、この場合の個人識別は、個人がキー打鍵を行っているときであれば、いつでも行うことができるので、当該個人識別を随時行うことによって、入れ替わりによる成り済ましを防止することができる。
【0021】このように、請求項1に記載の個人識別装置によれば、個人がキーボードに設けられたキーを打鍵したときの打鍵時刻と当該キーを特定できる特定情報とが含まれた打鍵事象を検出し、検出した打鍵事象に基づいて、上記個人が連続して打鍵したときの隣接する2つの打鍵事象の打鍵時間差と当該2つの打鍵事象の上記特定情報によって特定されるキーの組合わせを導出し、導出したキーの組合わせのうち、同一の組合わせ毎に上記打鍵時間差に基づく特徴値を算出し、算出した特徴値を記憶しているので、記憶した特徴値を利用して個人識別を行うことによって、偽造が困難であり、利用者の心理的な抵抗感がなく、利用時の身体の拘束条件が殆んどなく、融通性が高く、更に、入れ替わりによる成り済ましを防止することができる個人識別が可能となる。
【0022】また、上記目的を達成するために、請求項2記載の個人識別装置は、個人がキーボードを操作する行動に基づいて前記個人を識別する個人識別装置であって、前記個人が前記キーボードに設けられたキーを連続して打鍵したときの打鍵時刻が隣接する2つのキーの組合わせ毎に、当該2つのキーの打鍵時間差に基づく特徴値が予め記憶された記憶手段と、前記個人が前記キーボードに設けられたキーを打鍵したときの打鍵時刻と当該キーを特定できる特定情報とが含まれた打鍵事象を検出する打鍵事象検出手段と、前記打鍵事象検出手段によって検出された打鍵事象に基づいて、前記個人が連続して打鍵したときの隣接する2つの打鍵事象の打鍵時間差と当該2つの打鍵事象の前記特定情報によって特定されるキーの組合わせを導出する二連接打鍵事象導出手段と、前記二連接打鍵事象導出手段によって導出されたキーの組合わせに対応する前記記憶手段に記憶されている前記特徴値と、前記二連接打鍵事象導出手段によって導出された打鍵時間差とを比較し、該比較結果に基づいて個人を識別する識別手段と、を備えている。
【0023】請求項2に記載の個人識別装置には、個人がキーボードに設けられたキーを連続して打鍵したときの打鍵時刻が隣接する2つのキーの組合わせ毎に、当該2つのキーの打鍵時間差に基づく特徴値が予め記憶された記憶手段が備えられている。なお、上記キーボードには、パーソナル・コンピュータやワークステーション等のコンピュータに設けられているキーボードの他、携帯電話、有線電話機、ファクシミリ等の通信機器に設けられているキー・スイッチ部や、テレビ受像機、ビデオ装置、エアコン等の各種機器に広く用いられているリモコン装置のキー・スイッチ部等、複数のキーが設けられているあらゆる機器が含まれる。また、上記記憶手段には、RAM、EEPROM、及びフラッシュEEPROM等の半導体記憶素子、フロッピー・ディスク、CD−R、CD−RW、MOディスク等の可搬記録媒体、あるいはネットワークに接続されたサーバ・コンピュータ等に設けられた外部記憶装置等を用いることができる。
【0024】また、本発明によれば、個人がキーボードに設けられたキーを打鍵したときの打鍵時刻と、当該キーを特定できる特定情報とが含まれた打鍵事象が打鍵事象検出手段によって検出され、該検出された打鍵事象に基づいて、上記個人が連続して打鍵したときの隣接する2つの打鍵事象の打鍵時間差と当該2つの打鍵事象の上記特定情報によって特定されるキーの組合わせが二連接打鍵事象導出手段によって導出される。
【0025】更に、本発明では、識別手段により、上記二連接打鍵事象導出手段によって導出されたキーの組合わせに対応する上記記憶手段に記憶されている特徴値と、上記二連接打鍵事象導出手段によって導出された打鍵時間差とが比較され、該比較結果に基づいて個人が識別される。
【0026】すなわち、本発明では、個人がキーボードによって任意の文字列の入力を行っている状態下で、時間的に連接する打鍵キーの打鍵時間差と、これに対応する記憶手段に予め記憶されている特徴値との比較によって個人を識別している。従って、本発明による個人識別は、予め定められた文字列を入力する必要がないため、極めて融通性が高い。また、この識別は、偽造が困難であり、利用者の心理的な抵抗感が少なく、かつ利用時の身体の拘束条件が殆んどない。
【0027】更に、本発明による個人識別は、個人がキー打鍵を行っているときであれば、いつでも行うことができるので、当該個人識別を随時行うことによって、入れ替わりによる成り済ましを防止することができる。
【0028】このように、請求項2に記載の個人識別装置によれば、個人がキーボードに設けられたキーを連続して打鍵したときの打鍵時刻が隣接する2つのキーの組合わせ毎に、当該2つのキーの打鍵時間差に基づく特徴値が予め記憶された記憶手段が備えられると共に、個人がキーボードに設けられたキーを打鍵したときの打鍵時刻と当該キーを特定できる特定情報とが含まれた打鍵事象を検出し、検出した打鍵事象に基づいて、上記個人が連続して打鍵したときの隣接する2つの打鍵事象の打鍵時間差と当該2つの打鍵事象の上記特定情報によって特定されるキーの組合わせを導出し、導出したキーの組合わせに対応する上記記憶手段に記憶されている特徴値と、上記導出した打鍵時間差とを比較し、該比較結果に基づいて個人を識別しているので、偽造が困難であり、利用者の心理的な抵抗感がなく、利用時の身体の拘束条件が殆んどなく、融通性が高く、更に、入れ替わりによる成り済ましを防止することができる。
【0029】なお、請求項3記載の発明のように、請求項2記載の発明における識別手段を、上記特徴値に基づいて作成したメンバーシップ関数を用いたファジイ推論によって個人を識別するものとすることもできる。この場合は、ファジイ推論によって個人を識別しているので、識別率を向上することができる。
【0030】また、請求項4記載の発明のように、請求項2又は請求項3記載の発明は、前記識別手段による識別結果の評価値が所定値以下である場合に前記個人の利用範囲を制限する制限手段を更に備えることが好ましい。これによって、セキュリティを向上することができる。なお、上記個人の利用範囲には、利用できる機器の範囲、利用できる機能の範囲等が含まれる。
【0031】ところで、近年、パーソナル・コンピュータ用のオペレーティング・システム(OS)として広く普及している米マイクロソフト社のWindows98、Windows NT等のWindows OSによって提供されているAPI(Application Program Interface)のフック関数を用いて打鍵を検出する場合、個人が物理的にキーを押した打鍵状態と、キーボード又はキーボードドライバが有するオートリピート機能によって生成された打鍵状態との区別はできないが、キーを離した状態は確実に検出することができる。
【0032】そこで、請求項5記載の発明のように、請求項1乃至請求項4の何れか1項記載の発明において、前記打鍵事象検出手段は、前記キーボードのキーを離す事象を利用して前記打鍵時刻を検出することが好ましい。これによって、フック関数によって打鍵を確実に検出することができるので、高精度な特徴値を得ることができ、この結果として高精度に個人を識別することができる。
【0033】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1に示すように、本実施の形態に係る個人識別装置10は本装置全体の動作を制御する制御部12、オペレータ(ユーザ)からの各種情報等の入力に使用するキーボード14及びマウス16、文字情報や画像情報等の各種情報を表示するディスプレイ18を含んで構成されている。
【0034】図2に示すように、制御部12はCPU(中央演算処理装置)22を備えており、CPU22には、後述する各種テーブル等が記憶されるハードディスク20、各種プログラムやパラメータ等が記憶されたROM24、及びCPU22による各種プログラムの実行時におけるワークエリア等として用いられるRAM26が接続されている。
【0035】また、CPU22には、インタフェース部(I/F)28を介してキーボード14及びマウス16が、表示制御部30を介してディスプレイ18が、各々接続されている。
【0036】このように、本実施の形態に係る個人識別装置10は、汎用のパーソナル・コンピュータで構成されており、CPU22により所定プログラムを実行することによって、当該パーソナル・コンピュータのユーザ(本発明の「個人」に相当)を識別することができるように構成されている。なお、個人識別装置10には、OSとしてWindows98が搭載されている。
【0037】図3には、本実施の形態に係る個人識別装置10に備えられたハードディスク20の各種記憶領域が示されている。同図に示すように、ハードディスク20には、ユーザがキーボード14に設けられているキーを打鍵したときの打鍵時刻と、当該キーを特定できるキーコード(以下、「打鍵コード」という)とが含まれた後述する打鍵事象テーブルを記憶する領域である打鍵事象テーブル領域DAと、打鍵事象テーブルに基づいて作成される後述する二連接打鍵事象テーブルを記憶する領域である二連接打鍵事象テーブル領域NAと、二連接打鍵事象テーブルに基づいて作成される後述する特徴値テーブルを記憶する領域である特徴値テーブル領域TAと、が予め設けられている。
【0038】なお、本実施の形態に係る特徴値テーブルは、図10(A)に示すように、全ての2種類の打鍵コードの組合わせ毎に、「出現頻度」、「打鍵時間差の和」、及び「打鍵時間差の自乗の和」を記憶するための領域が設けられており、各領域には初期設定として0(零)が記憶されている。
【0039】一方、本実施の形態に係る個人識別装置10によって個人識別のために行われる処理は、図4に示すように、識別対象とする複数のユーザに関する特徴値を取得して記録する特徴値取得処理と、それまでに記憶されている特徴値を利用して当該個人識別装置10を使用中のユーザを識別する識別処理の2つの処理に大別される。また、同図に示すように、上記特徴値取得処理は、打鍵事象検出処理40、二連接打鍵事象導出処理42及び打鍵事象特徴値算出処理44の3つの処理によって実行され、上記識別処理は、個人識別処置50及び利用範囲制限処理52の2つの処理によって実行される。以下、打鍵事象検出処理40、二連接打鍵事象導出処理42、打鍵事象特徴値算出処理44、個人識別処置50及び利用範囲制限処理52の各処理の概要について説明する。
(1)打鍵事象検出処理について打鍵事象検出処理40では、ユーザがキーボード14に備えられている何れかのキーを打鍵したときの打鍵時刻と、当該キーの打鍵コードを検出し、打鍵事象テーブルとしてハードディスク20の打鍵事象テーブル領域DAに記憶する。この処理を実現するには、Windows OSが提供するAPIのフック関数を利用してWindowsのメッセージを横取りするか、又はキーボード14のデバイスドライバに検出機能を組み込めばよい。
【0040】フック関数を利用する場合は、一旦全てのメッセージを捕捉し、捕捉したメッセージからキーボード操作関係のメッセージのみを検出して、検出したメッセージから打鍵コードを取得する。また、上記検出したメッセージにはタイムスタンプがつかないので、当該メッセージを検出した時刻を以って打鍵時刻とする。
【0041】なお、フック関数を利用する以外に、キーボードデバイスドライバに検出機構を設けてもよいし、キーボード内にハードウェア、又はソフトウェアで設けてもよいが、この場合はフック関数を利用する場合のメリットであるキーボードの種別に依存しない利点が失われる。このため、本実施の形態に係る打鍵事象検出処理40では、フック関数を利用する形態を適用している。
【0042】このように、本実施の形態に係る打鍵事象検出処理40では、打鍵時刻及び打鍵コードが検出されるが、これらの打鍵事象の他、打鍵の種類を示す情報を検出する形態とすることもできる。この打鍵の種類としては、一般的なキーボードの物理的構造から、キーを押すこと、及びキーを離すことの2種類が基底となるが、フック関数を使って打鍵事象を検出する場合は、個人が物理的にキーを押した打鍵状態と、キーボード又はキーボードドライバが有するオートリピート機能によって生成される打鍵状態とを区別することができないので、個人のキーボード操作を確実に検出できるキーを離す打鍵情報のみに限定することが好ましく、本実施の形態では、この形態を適用している。この場合、打鍵の種類は1種類のみとなるので、あえてこの情報を記憶する必要はない。
(2)二連接打鍵事象導出処理について二連接打鍵事象導出処理42では、続けて発生する打鍵事象の連なる2つの打鍵間の打鍵コードの組合わせ及び打鍵時刻の時間差を導出し、二連接打鍵事象テーブルとしてハードディスク20の二連接打鍵事象テーブル領域NAに記憶する。
【0043】ここで、キーボード14のチャタリングやソフトウェア上の問題で、同一打鍵コードが現実には生起しがたい短い時間差で続けて導出された場合や、ユーザの離席等によって比較的長時間の打鍵時間差が導出された場合は、ユーザ個人の操作の特徴が反映されていないと考えるべきであるので、これらの場合の各データ(打鍵時刻及び打鍵コード)は除去することが好ましく、本実施の形態では、この形態を適用している。
【0044】本実施の形態において、日常的にパーソナル・コンピュータを操作している5名を被験者とし、各々80000回ずつ打鍵させたときの実験結果から、ここで除去すべき時間間隔の下限値は100ms〜200ms程度、上限値は500ms〜1000msが適当であると考えられる。
【0045】なお、下限値については、ここで示した値を下回ると認識率が極端に低下する場合もあったが、上限値を大きくする分には、さほど認識率に影響は見られなかったので、キーボードの操作に不慣れなユーザを識別対象とする場合等は、上限値を更に大きな値としても問題はない。
【0046】また、上記下限値は、あくまで同一打鍵コードが連続した場合(同一キーが連続して打鍵された場合)の打鍵時間差に適用するものであり、Nキーロールオーバー機能(Nキー分、略同時に離しても各キーを認識することができる機能)を有しないパーソナル・コンピュータ用キーボードは殆ど存在しないと考えられるので、異なる打鍵コードが連続した場合の時間差は、たとえ0msであったとしても有効なデータとして扱わなければならない。更に、本発明を携帯型コンピュータや携帯電話等の、キーボードが比較的小型である機器に適用する場合には、キーボードの操作性がパーソナル・コンピュータ用キーボードより優れているとは言いがたいので、より大きな上限値を適用することが好ましい。
(3)打鍵事象特徴値算出処理について打鍵事象特徴値算出処理44では、二連接打鍵事象導出処理42により導出された打鍵コードの組合わせ毎に打鍵時間差の統計値を算出し、特徴値テーブルとしてハードディスク20の特徴値テーブル領域TAに記憶する。本実施の形態に係る打鍵事象特徴値算出処理44において記憶される上記統計値は、打鍵コードの組合わせ毎の出現頻度、打鍵時間差の和、打鍵時間差の自乗の和の3種類である。
【0047】この処理をプログラムで実現するためには、打鍵コードの組合わせをインデックスとする配列、又は木構造を予め、又は動的に生成し、上記インデックスで示される出現頻度をインクリメントし、上記インデックスで示される打鍵時間差の和に打鍵時間差を加えると共に、上記インデックスで示される打鍵時間差の自乗の和に打鍵時間差の自乗値を加え、以上によって得られた各値を記憶する。
(4)個人識別処理について個人識別処置50では、前述の打鍵事象検出処理40と同様に、ユーザがキーボード14に備えられている何れかのキーを打鍵したときの打鍵時刻と、当該キーの打鍵コードを検出し、二連接打鍵事象導出処理42と同様に、続けて発生する打鍵事象の連なる2つの打鍵間の打鍵コードの組合わせ及び打鍵時刻の時間差を導出する。
【0048】次に個人識別処置50は、導出した打鍵コードの組合わせに対応する特徴値(本実施の形態では、出現頻度、打鍵時間差の総和及び打鍵時間差の自乗値の総和)を、前述の打鍵事象特徴値算出処理44によって記憶された特徴値テーブルから読み出し、次の(1)式及び(2)式によって、平均値AV及び標準偏差値HVを求める。
【0049】
【数1】

【0050】但し、STは打鍵時間差の総和、JTは打鍵時間差の自乗値の総和、CTは出現頻度である。
【0051】そして、個人識別処置50は、平均値AV及び標準偏差値HVと、識別すべきユーザのキー操作から得られた打鍵時間差とに基づくファジイ推論によってスコアを算出する。
【0052】本実施の形態に係る個人識別装置10では、前述の打鍵事象特徴値算出処理44によって複数人の特徴値を特徴値テーブルとして登録しておき、該登録済みの複数人の特徴値の各々に対するスコアを上記のように算出し、一番高いスコアとなった特徴値の登録者がユーザであるものとして識別する。
【0053】なお、登録者が1人の場合は識別ではなく、照合による認証となる。この場合は、閾値を設けて判断することになる。照合の場合、又は識別の場合であってもスコアがある一定値以下なら認証しない形態とすることが好ましく、本実施の形態では、この形態を適用している。
(5)利用範囲制限処理について利用範囲制限処理52では、個人識別処置50においてユーザが認証されなかった場合に、当該ユーザによって利用できる機能、リソース、及び機器を制限する。これによって、セキュリティを向上することができる。
【0054】打鍵事象検出処理40が本発明の打鍵事象検出手段に、二連接打鍵事象導出処理42が本発明の二連接打鍵事象導出手段に、打鍵事象特徴値算出処理44が本発明の打鍵事象特徴値算出手段に、ハードディスク20が本発明の記憶手段に、個人識別処理50が本発明の識別手段に、利用範囲制限処理52が本発明の制限手段に、各々相当する。
【0055】次に、個人識別装置10の作用を説明する。まず、図5を参照して、前述の打鍵事象検出処理について説明する。なお、図5は、当該打鍵事象検出処理を実行するために、CPU22によって実行される打鍵事象検出処理プログラムの流れを示すフローチャートであり、該プログラムは予めROM24の所定領域に記憶されている。また、この打鍵事象検出処理プログラムは、フック関数によってメッセージが流れてきた際に随時実行される割込処理プログラムである。
【0056】まず、ステップ100では、フック関数によって流れてきたメッセージを本来の通知先にそのまま通知し、次のステップ102では、上記メッセージがキーボード操作関係のメッセージであるか否かを判定し、キーボード操作関係のメッセージである場合(肯定判定の場合)はステップ104へ移行して、打鍵時刻及び打鍵コードを打鍵事象テーブルとしてハードディスク20の打鍵事象テーブル領域DAに記憶した後に本打鍵事象検出処理を終了し、キーボード操作関係のメッセージでない場合(ステップ102で否定判定された場合)には、ステップ104の処理を実行することなく本打鍵事象検出処理を終了する。
【0057】図6には、本打鍵事象検出処理によって得られる打鍵事象テーブルの一例が模式的に示されている。同図に示す例では、打鍵時刻としてミリ秒単位の時間が、打鍵コードとして16進数のコード(例えば、‘0x6c’は16進数の6cを表す)が記憶されている。なお、本打鍵事象検出処理は、前述のように、フック関数によってメッセージが流れてきた際に随時実行されるので、図6に示すように、ユーザがキーボード14のキーを打鍵する度に、順次打鍵時刻及び打鍵コードが蓄積されることになる。
【0058】次に、図7を参照して、前述の二連接打鍵事象導出処理について説明する。なお、図7は、当該二連接打鍵事象導出処理を実行するために、CPU22によって実行される二連接打鍵事象導出処理プログラムの流れを示すフローチャートであり、該プログラムも予めROM24の所定領域に記憶されている。また、この二連接打鍵事象導出処理プログラムは、上記打鍵事象検出処理プログラムが実行された際に随時実行される割込処理プログラムである。
【0059】まず、ステップ200では、ハードディスク20に記憶されている打鍵事象テーブルを参照して、連接する打鍵事象の各打鍵間の打鍵コードの組合わせを抽出し、次のステップ202では、上記ステップ200で抽出した打鍵コードの組合わせにおける各打鍵コードの打鍵時刻を打鍵事象テーブルから読み出して、次の(3)式によって、打鍵時間差Tを算出する。
【0060】T=AT−BT ・・・(3)
但し、ATは後に打鍵されたキーの打鍵コードに対応する打鍵時刻、BTは先に打鍵されたキーの打鍵コードに対応する打鍵時刻である。
【0061】次のステップ204では、打鍵時間差Tが所定値S1未満であるか否かを判定し、所定値S1未満でない場合(否定判定の場合)はステップ206へ移行する。なお、上記所定値S1は、前述の下限値に相当するものであり、本実施の形態では100msを適用している。
【0062】ステップ206では、打鍵時間差Tが所定値S2より大きいか否かを判定し、大きくない場合(否定判定の場合)はステップ208へ移行する。なお、上記所定値S2は、前述の上限値に相当するものであり、本実施の形態では1000msを適用している。
【0063】ステップ208では、上記ステップ200で抽出した打鍵コードの組合わせ及び上記ステップ202で算出した打鍵時間差Tを二連接打鍵事象テーブルとしてハードディスク20の二連接打鍵事象テーブル領域NAに記憶した後に本二連接打鍵事象導出処理を終了する。
【0064】また、上記ステップ206において、打鍵時間差Tが所定値S2より大きいと判定された場合(肯定判定された場合)は、上記ステップ208の処理を行うことなく、本二連接打鍵事象導出処理を終了する。
【0065】一方、上記ステップ204において、打鍵時間差Tが所定値S1未満であると判定された場合(肯定判定された場合)にはステップ210へ移行し、上記ステップ200において抽出された打鍵コードの組合わせが同一打鍵コードの組合わせであったか否かを判定し、同一打鍵コードの組合わせでなかった場合(否定判定の場合)は上記ステップ208の処理を実行した後に本二連接打鍵事象導出処理を終了し、同一打鍵コードの組合わせであった場合(肯定判定の場合)はステップ208の処理を実行することなく本二連接打鍵事象導出処理を終了する。
【0066】図8には、本二連接打鍵事象導出処理によって得られる二連接打鍵事象テーブルの一例が模式的に示されている。同図に示す例では、打鍵コードの組合わせとして16進数表現の打鍵コードの組合わせが、当該打鍵コードの組合わせに対応する打鍵時間差としてミリ秒単位の時間差が各々記憶されている。なお、同図に示す各データは、打鍵事象テーブルの各データが図6に示すものである場合について示している。同図に示すように、例えば、通知された打鍵コードが16進法で3e、打鍵時刻が計算機内部時刻の32131msであり、直前の打鍵事象の打鍵コードが16進で6c、打鍵時刻が31934msであるときは、打鍵コードの組合わせは3e,6c、打鍵時間差は197msと算出される。
【0067】次に、図9を参照して、前述の打鍵事象特徴値算出処理について説明する。なお、図9は、当該打鍵事象特徴値算出処理を実行するために、CPU22によって実行される打鍵事象特徴値算出処理プログラムの流れを示すフローチャートであり、該プログラムも予めROM24の所定領域に記憶されている。また、この打鍵事象特徴値算出処理プログラムも、上記打鍵事象検出処理プログラムが実行された際に随時実行される割込処理プログラムである。
【0068】まず、ステップ300では、ハードディスク20に記憶されている二連接打鍵事象テーブルを参照して、直前に二連接打鍵事象テーブルに記憶された打鍵コードの組合わせと、該組合わせに対応する打鍵時間差を読み出し、次のステップ302では、ハードディスク20に記憶されている特徴値テーブルにおける上記ステップ300で読み出した打鍵コードに対応する「出現頻度」領域の値を1だけインクリメントし、更に、次のステップ304で同打鍵コードに対応する「打鍵時間差の和」領域の値を、該値に上記ステップ300で読み出した打鍵時間差を加算したものに置換え、次のステップ306で同打鍵コードに対応する「打鍵時間差の自乗の和」領域の値を、該値に上記ステップ300で読み出した打鍵時間差の自乗値を加算したものに置き換え、その後に本打鍵事象特徴値算出処理を終了する。
【0069】図10(B)には、本打鍵事象特徴値算出処理によって得られた特徴値テーブルの一例が模式的に示されている。同図に示すように、本打鍵事象特徴値算出処理によって、ユーザによってキーボード14のキーが連続して打鍵された際に、打鍵されたキーの打鍵コードの組合わせに対応する出現頻度が1ずつインクリメントされると共に、それまでに特徴値テーブルに記憶されていた打鍵時間差の和及び打鍵時間差の自乗の和に、このとき演算された打鍵時間差及び打鍵時間差の自乗値が各々累積される。
【0070】従って、特徴値テーブルに記憶されている各値に基づいて、任意の2種類の打鍵コードの組合わせ毎の打鍵時間差の平均値AV及び標準偏差値HVを、上記(1)式及び(2)式の演算によって得ることができる。
【0071】次に、図11を参照して、前述の個人識別処理について説明する。なお、図11は、当該個人識別処理を実行するために、CPU22によって実行される個人識別処理プログラムの流れを示すフローチャートであり、該プログラムも予めROM24の所定領域に記憶されている。また、この個人識別処理プログラムも、上記打鍵事象検出処理プログラムが実行された際に随時実行される割込処理プログラムである。また、ここでは、図示は省略するが、認証対象とする複数人分の特徴値テーブルが予めハードディスク20の特徴値テーブル領域TAに記憶されており、該複数の特徴値テーブルを用いてユーザの識別を行う場合について説明する。
【0072】まず、ステップ400では、前述の二連接打鍵事象導出処理によって直前に二連接打鍵事象テーブル(図8も参照)に記憶された打鍵コードの組合わせ及び打鍵時間差を読み出し、次のステップ402では、予め特徴値テーブル領域TAに記憶されている複数人分の特徴値テーブルのうちの何れかの特徴値テーブル(図10(B)も参照)から上記ステップ400で読み出した打鍵コードの組合わせに対応する特徴値(出現頻度、打鍵時間差の和、打鍵時間差の自乗の和)を読み出し、次のステップ404では、読み出した特徴値を用いて上記(1)式及び(2)式により平均値AV及び標準偏差値HVを算出する。
【0073】次のステップ406では、上記ステップ400で読み出した打鍵時間差と、上記ステップ404で算出した平均値AV及び標準偏差値HVとに基づいて、以下に示すように、ファジイ推論によってスコアを導出する。
【0074】打鍵コード組合わせCij(0≦i,j≦n)に対するファジイルールRCijは後件部をシングルトンとして次の(4)式に示すものとなる。
【0075】
【数2】

【0076】但し、nは打鍵コードの種類の数、ACijは打鍵コード組合わせCijに対するファジイラベル、xCijは打鍵コード組合わせCijに対する識別対象個人の打鍵時間差、yCijは打鍵コード組合わせCijに対する識別対象個人のスコアである。
【0077】打鍵コード組合わせCijに関する適合度ωCijは、次の(5)式によって得られる。
【0078】
【数3】

【0079】但し、μACijは打鍵コード組合わせCijに関するメンバーシップ関数、x0Cijは打鍵コード組合わせCijに対する識別対象個人の打鍵時間差の非ファジイ値である。
【0080】ここで、メンバーシップ関数μACijは上記ステップ404によって算出された平均値AV及び標準偏差値HVに基づいて、頂点が平均値AVとなり、かつ半値幅が標準偏差値HVとなる三角型として設定される。
【0081】図12には、メンバーシップ関数μACijの一例が示されている。なお、同図の左端に示されている‘08−08’や‘08−09’等の数値は、組合わせられた打鍵コード(16進数)を示している。
【0082】本実施の形態では、打鍵事象発生毎に適合度が計算されるが、単発事象では個人の特徴値を十分に検出しているとは限らないから、通常、スコアは次の(6)式のように複数の打鍵事象を統合して計算される。
【0083】
【数4】

【0084】ここで、kは統合する事象の数、y0は統合されたスコア(非ファジイ値)である。
【0085】なお、(6)式ではスコアの値として0〜1の範囲の値をとるが、該値を100倍して100点満点としてもよい。
【0086】ファジイ推論が終了すると、次のステップ408では、特徴値テーブルが登録された全ての登録人について上記ステップ406によるファジイ推論が終了したか否かを判定し、終了していない場合(否定判定の場合)は上記ステップ402へ戻って、ファジイ推論が未終了の登録人に対する特徴値テーブルを用いたファジイ推論を再び行い、全ての登録人についてファジイ推論が終了した時点(ステップ408が肯定判定となった時点)でステップ410へ移行する。
【0087】以上のステップ402〜ステップ408の繰り返し処理によって、全ての登録人に対するファジイ推論によるスコアが導出されるので、ステップ410では、スコアが最高値である登録人がユーザである可能性が高いものとしてユーザ候補に選定し、次のステップ412では、上記ステップ410で選定されたユーザ候補のスコアが所定値(本実施の形態では、0.3)以上であるか否かを判定し、所定値以上でない場合(否定判定の場合)はユーザ候補が誤っており、認証できないものと見なしてステップ414へ移行し、利用範囲制限処理を実行した後に本個人識別処理を終了する。なお、本実施の形態における利用範囲制限処理では、前述のように、ユーザによって利用できる機能、リソース、及び機器を制限するための処理が行われる。
【0088】一方、上記ステップ412において、ユーザ候補のスコアが所定値以上であると判定された場合(肯定判定された場合)には、上記ステップ414の処理を行うことなく本個人識別処理を終了する。
【0089】なお、本個人識別処理において、打鍵時間差の平均値AV及び標準偏差値HVを利用するのは、次の理由によるものである。
【0090】図13には、5名の被験者A〜Eによる実験によって得られた、打鍵時間差が1000ms以上である場合と、打鍵時間差が100ms以下でかつ同一キーを連続して打鍵した場合とを除いた全ての有効打鍵時間差のヒストグラムが、図14には、5名の被験者A〜Eによる実験によって得られた、[A]キーと[I]キーが連続して打鍵された場合の打鍵時間差のヒストグラムが、各々示されている。
【0091】図13及び図14に示すように、各条件における打鍵時間差の頻度分布は、正規分布に近い状態となっている。従って、打鍵時間差の平均値及び標準偏差値を特徴値として適用することによって、精度のよい個人識別ができるものと推察することができるのである。
【0092】〔実験結果例〕図15には、被験者Aがユーザである場合の、本実施の形態に係る個人識別処理(図11参照)におけるファジイ推論によって得られたスコアの時系列変化の実験結果例が示されている。なお、同図の横軸は有効データ出現頻度(打鍵時間差が1000ms以上である場合と、打鍵時間差が100ms以下でかつ同一キーを連続して打鍵した場合とを除いた打鍵時間差の出現頻度)であり、縦軸はスコアである。また、ここでは、特徴値としてファジイ推論実行時から遡って5000回分の打鍵時間差の移動平均を適用している。
【0093】同図に示すように、どの時点でも被験者Aに対するスコアが最も高く、100%識別できることが分かる。
【0094】同様に、図16には、5名の被験者A〜Eがユーザである場合の、本実施の形態に係るファジイ推論によって得られたスコアの時系列変化の実験結果例が示されている。なお、同図も図15と同様に、横軸は有効データ出現頻度であり、縦軸はスコアである。また、ここでも、特徴値としてファジイ推論実行時から遡って5000回分の打鍵時間差の移動平均を適用している。
【0095】同図に示すように、5名の被験者A〜Eの全員について、どの時点でも100%識別できることが分かる。
【0096】図17には、5名の被験者A〜Eがユーザである場合で、特徴値として適用する打鍵時間差の平均値の算出の際にファジイ推論実行時から遡る回数を各々5回、50回、500回、及び2000回とした場合の、各被験者の識別率の実験結果例が示されている。なお、ここでは、各々80000件分の識別に対応する識別率が示されている。
【0097】図17(A)に示すように、移動平均が5回である場合には、被験者に対応する識別率が他の被験者の識別率よりは高いものの、被験者Dを除く全ての被験者の識別率が50%未満となっており、識別精度が必ずしも良くないことが分かる。しかしながら、図17(B)に示す、移動平均が50回である場合には、全ての被験者について識別率が70%を越えており、図17(C)に示す、移動平均が500回である場合には、全ての被験者について識別率が95%を越えており、更に図17(D)に示す、移動平均が2000回である場合には、全ての被験者について識別率が100%となっていることが分かる。
【0098】従って、この場合は、移動平均の回数が50回以上であれば、かなり高精度に識別することができると考えられる。
【0099】一方、図18には、デスクトップ型パーソナル・コンピュータのキーボードに対する被験者A〜Eの操作によって得られた特徴値を他のノートブック型パーソナル・コンピュータに用いて、被験者Aを識別した場合の有効データ出現回数に対するスコア例が、図19には、デスクトップ型パーソナル・コンピュータのキーボードに対する被験者A〜Eの操作によって得られた特徴値を他のデスクトップ型パーソナル・コンピュータに用いて、被験者Bを識別した場合の有効データ出現回数に対するスコア例が、更に図20には、デスクトップ型パーソナル・コンピュータのキーボードに対する被験者A〜Eの操作によって得られた特徴値を他のデスクトップ型パーソナル・コンピュータに用いて、被験者Cを識別した場合の有効データ出現回数に対するスコア例が、各々示されている。なお、図18〜図20では、特徴値としてファジイ推論実行時から遡って5000回分の打鍵時間差の移動平均を適用している。
【0100】図18〜図20に示すように、どの時点においても各被験者を100%識別することが可能であることが分かる。すなわち、本実施の形態で示した特徴値取得処理で取得した特徴値は、取得に用いたキーボード以外のキーボードによる識別においても適用することが可能である。
【0101】以上詳細に説明したように、本実施の形態に係る個人識別装置では、個人がキーボードに設けられたキーを打鍵したときの打鍵時刻と当該キーを特定できる特定情報(打鍵コード)とが含まれた打鍵事象を検出し、検出した打鍵事象に基づいて、上記個人が連続して打鍵したときの隣接する2つの打鍵事象の打鍵時間差と当該2つの打鍵事象の上記特定情報によって特定されるキーの組合わせを導出し、導出したキーの組合わせのうち、同一の組合わせ毎に上記打鍵時間差に基づく特徴値を算出し、算出した特徴値を記憶すると共に、該記憶した特徴値を利用して個人識別を行っているので、偽造が困難であり、利用者の心理的な抵抗感がなく、利用時の身体の拘束条件が殆んどなく、融通性が高く、更に、入れ替わりによる成り済ましを防止することができる。
【0102】また、本実施の形態に係る個人識別装置では、特徴値に基づいて作成したメンバーシップ関数を用いたファジイ推論によって個人を識別しているので、識別率を向上することができる。
【0103】また、本実施の形態に係る個人識別装置では、識別結果の評価値(スコア)が所定値以下である場合にユーザの利用範囲を制限しているので、セキュリティを向上することができる。
【0104】更に、本実施の形態に係る個人識別装置では、フック関数によってキーボードのキーを離す事象に基づいて打鍵時刻を検出しているので、打鍵を確実に検出することができるため、高精度な特徴値を得ることができ、この結果として高精度に個人を識別することができる。
【0105】なお、本実施の形態では、特徴値取得処理及び識別処理(図4参照)を、ユーザによってキーボード14のキーが打鍵された際に逐次割込み処理として実行する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、特徴値取得処理における打鍵事象検出処理40及び識別処理は本実施の形態と同様に逐次実行するが、二連接打鍵事象導出処理42及び打鍵事象特徴値算出処理44は打鍵事象テーブル内の打鍵事象が所定数以上蓄積された時点や、所定期間(例えば、1日)毎に実行する形態とすることもできる。この場合は、二連接打鍵事象導出処理42及び打鍵事象特徴値算出処理44が間欠的に実行されるので、これらの処理が次に実行されるまでの間は当該処理が前回実行された時点の特徴値データに基づいて個人識別が行われるため、本実施の形態に比較して識別率は若干低くなる場合もあるが、二連接打鍵事象導出処理42及び打鍵事象特徴値算出処理44のための処理時間を短縮することができる。
【0106】また、本実施の形態では、請求項1記載の発明における打鍵事象検出手段及び二連接打鍵事象導出手段と、請求項2記載の発明における打鍵事象検出手段及び二連接打鍵事象導出手段とを、打鍵事象検出処理40及び二連接打鍵事象導出処理42によって兼用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、請求項1記載の発明における打鍵事象検出手段及び二連接打鍵事象導出手段と、請求項2記載の発明における打鍵事象検出手段及び二連接打鍵事象導出手段とを、異なる処理によって別々に実行する形態とすることもできる。この場合も、本実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0107】また、本実施の形態では、ファジイ推論によってユーザを識別する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、ファジイ・ニューラルネットワークを適用して、ファジイ推論に用いるメンバーシップ関数等を自律学習する形態とすることもできる。
【0108】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、請求項1記載の個人識別装置によれば、個人がキーボードに設けられたキーを打鍵したときの打鍵時刻と当該キーを特定できる特定情報とが含まれた打鍵事象を検出し、検出した打鍵事象に基づいて、上記個人が連続して打鍵したときの隣接する2つの打鍵事象の打鍵時間差と当該2つの打鍵事象の上記特定情報によって特定されるキーの組合わせを導出し、導出したキーの組合わせのうち、同一の組合わせ毎に上記打鍵時間差に基づく特徴値を算出し、算出した特徴値を記憶しているので、記憶した特徴値を利用して個人識別を行うことによって、偽造が困難であり、利用者の心理的な抵抗感がなく、利用時の身体の拘束条件が殆んどなく、融通性が高く、更に、入れ替わりによる成り済ましを防止することができる個人識別が可能となる、という効果が得られる。
【0109】また、請求項2記載の個人識別装置によれば、個人がキーボードに設けられたキーを連続して打鍵したときの打鍵時刻が隣接する2つのキーの組合わせ毎に、当該2つのキーの打鍵時間差に基づく特徴値が予め記憶された記憶手段が備えられると共に、個人がキーボードに設けられたキーを打鍵したときの打鍵時刻と当該キーを特定できる特定情報とが含まれた打鍵事象を検出し、検出した打鍵事象に基づいて、上記個人が連続して打鍵したときの隣接する2つの打鍵事象の打鍵時間差と当該2つの打鍵事象の上記特定情報によって特定されるキーの組合わせを導出し、導出したキーの組合わせに対応する上記記憶手段に記憶されている特徴値と、上記導出した打鍵時間差とを比較し、該比較結果に基づいて個人を識別しているので、偽造が困難であり、利用者の心理的な抵抗感がなく、利用時の身体の拘束条件が殆んどなく、融通性が高く、更に、入れ替わりによる成り済ましを防止することができる、という効果が得られる。
【出願人】 【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
【出願日】 平成12年11月10日(2000.11.10)
【代理人】 【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳 (外3名)
【公開番号】 特開2002−149309(P2002−149309A)
【公開日】 平成14年5月24日(2002.5.24)
【出願番号】 特願2000−343452(P2000−343452)