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【発明の名称】 多次元触覚入出力装置
【発明者】 【氏名】亀山 研一

【氏名】山内 康晋

【要約】 【課題】粘土のように挙動しかつ触感を持つ触覚入出力装置を提供する。

【解決手段】粒状または粉状物質と、前記粒状または粉状物質を包む弾性膜と、前記弾性膜の局所的な変形を計測する変形計測部と、装置全体の三次元空間内における姿勢を計測する姿勢センサーとから構成される触覚入出力装置。変形は、張力構造またはテンセグリティ構造を持つ構造体中の部分的張力またはテンセグリティ構造の部材同士の角度変化または弾性膜の局所的曲率をセンシングすることによって計測する。また、装置の硬さは電磁気的または熱的作用によって粒状物質同士の摩擦あるいは粘性係数変えることによって変化させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】粒状または粉状物質と、この粒状または粉状物質を包む弾性膜と、この弾性膜に沿って付けられた曲げセンサーの曲げ角度をもとに、前記曲げセンサーに沿った弾性膜の面の曲率を算出し、前記弾性体の変形を計測する変形計測手段とを有することを特徴とする多次元触覚入出力装置。
【請求項2】粒状または粉状物質と、この粒状または粉状物質を包む弾性膜と、この弾性膜の内部に張られた張力構造体の各辺の伸びをもとに、前記弾性体の変形を計測する変形計測手段とを有することを特徴とする多次元触覚入出力装置。
【請求項3】粒状または粉状物質と、この粒状または粉状物質を包む弾性膜と、この弾性膜の内部に張られたテンセグリティ構造をもつ構造体の部材同士の角度変化をもとに、前記弾性体の変形を計測する変形計測手段とを有することを特徴とする多次元触覚入出力装置。
【請求項4】磁場または電場を変化させる磁場または電場生成手段を有し、電気粘性流体または磁気粘性流体を塗布された前記粒状または粉状物質の表面の粘性係数を変化させ、前記弾性膜の変形の硬さを変化させることを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載の多次元触覚入出力装置。
【請求項5】三次元空間内における位置または姿勢またはその両者を計測する姿勢センサーを有することを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載の多次元触覚入出力装置。
【請求項6】装置を把持している使用者の体温、皮膚電位、脈波のうち少なくとも一種類以上の生理情報をセンシングする生理センサーを有することを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載の多次元触覚入出力装置。
【請求項7】力学的振動を発生する一個以上の振動子、一個以上の発熱素子のうちの少なくともどちらか片方の素子と、前記振動子間および発熱素子間に振動ダンピング部および断熱材とを有することを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載の多次元触覚入出力装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本願発明は、接触による入出力を行うための多次元触覚入出力装置に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、触覚入出力装置としては、センサブルテクノロジー社のPHANToM(TM)のような力帰還型のアームを用いたもの、バーチャルテクノロジー社のCyberTouch(TM)のような振動子を用いたものがあり、仮想的な三次元形状の触感を表現するのに使われている。また、複数のピンで指に刺激を与える盲人用ディスプレイや電気的刺激を与える装置も触感の表現に用いられている。一方、研究段階ではあるが、導電性ウレタンや導電性ゴムを用いたデバイスにより、デバイスに加えられた力を検出するアプローチもある。基本的にデバイスに加えた力と同じ抗力を手で感じるため、パッシブな触覚を与えるのと同時に触覚による入力が可能である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このような従来型の触覚入出力装置では、入力できるポイントが限られていたり、装置が大きかったり、また小さくてもフレキシビリティに欠け、簡便に多様な触感が得られなかった。そのため、触覚は視覚や聴覚に比べコミュニケーションのメディアとしてはほとんど利用されていない。また、主に触覚の入出力のみに重点がおかれ、温感・冷感の提示や使用者の生理データ計測を同時に行う試みもなされていない。
【0004】しかし、触覚は接触によって得られる基本的感覚であり、情動とも関連が深い。従って、例えばコミュニケーションのチャンネルとして利用できれば、より緊密な対話が可能になることは勿論、ECなどにおいては購入前により実物に近い感覚を得ることが可能となる。設計・製造分野においても、手軽にデジタル化された三次元形状を作成したり体験・評価できるようになる。
【0005】以上のような、触覚を実現するデバイスとしては、デバイス自体が仮想的な粘土のように自由に変形し、かつその変形情報を実時間でデジタル情報として取得できる必要がある。また、コミュニケーションのメディアとして利用するには、コミュニケーション相手が入力した触感が適当なかたちで出力される必要がある。さらに、他の接触情報も付与する場合には、温感の提示デバイスや、生理状況取得センサーも必要となる。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本願発明は、粒状または粉状物質と、前記粒状または粉状物質を包む弾性膜と、前記弾性膜の局所的な変形を計測する変形計測手段とから構成される。 具体的には、粒状または粉状物質と、この粒状または粉状物質を包む弾性膜と、この弾性膜に沿って付けられた曲げセンサーの曲げ角度をもとに、前記曲げセンサーに沿った弾性膜の面の曲率を算出し、前記弾性体の変形を計測する変形計測手段を有する。また、粒状または粉状物質と、この粒状または粉状物質を包む弾性膜と、この弾性膜の内部に張られた張力構造体の各辺の伸びをもとに、前記弾性体の変形を計測する変形計測手段とを有する。また、粒状または粉状物質と、この粒状または粉状物質を包む弾性膜と、この弾性膜の内部に張られたテンセグリティ構造をもつ構造体の部材同士の角度変化をもとに、前記弾性体の変形を計測する変形計測手段とを有する。このような構成により、弾性膜の変形を計測することができる。また、磁場または電場を変化させる磁場または電場生成手段とを有し、電気粘性流体または磁気粘性流体を塗布された前記粒状または粉状物質の表面の粘性係数を変化させ、前記弾性膜の変形の硬さを変化させることにより、前記粒状または粉状物質の摩擦係数を電磁気的または熱的作用により変化させ、装置変形の硬さを変化させられる。
【0007】また、さらに三次元空間内における姿勢を計測する姿勢センサーも有する。
【0008】さらにこれらの構成に加え、装置を把持している使用者の体温、皮膚電位、脈波のうち少なくとも一種類以上の情報をセンシングする生理センサーを有することにより、使用者の生理情報を取得したり、さらに力学的振動を発生する一個以上の振動子、一個以上の発熱素子のうちの少なくともどちらか片方の素子を有することにより、振動または温感または振動と温感の両方を同時に提示することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下に、本願発明に係わる触覚入出力装置の実施例を説明する。図1に第一の実施例の全体の構成を示す。ゴム風船のような閉曲面状の弾性膜1は、内部に粒状または粉状物質2を包みこんでいる。図2は弾性膜1が内部に粒状または粉状物質2を包みこんでいる様子を示す。この粒状または粉状物質2としては、小麦粉や片栗粉、砂、ビーズなどを用いることが出来る。変形計測部3は、弾性膜1の局所的な変形を計測するものであり、例えば、曲げセンサー31を常に弾性膜に沿った状態にすることで計測できる。曲げセンサーとしては、Flexpoint 社製の曲げ角度によって抵抗値が変化するセンサーなどを用いればよい。ガイド32は曲げセンサー3を弾性膜に沿わせるためのものである。配線4はセンサーからの配線であり、キャップ5は配線を束ねると同時に端点6での面の方向を特定するものである。そして、カバー7でセンサー全体を覆っている。
【0010】粒状または粉状物質2は弾性膜1で包み込むと、力を加えることで形状は自由に変化するが、力を取り去っても、一旦変形した形状はそのまま保持される。これにより、粘土のような触感を得ることが出来る。形状が保持されるのは、各粒子同士の摩擦によるところが大きい。従って、粒子表面に磁気粘性流体またはER流体(電気粘性流体)を塗布し、磁場あるいは電場を変化させることによって粘性を変えれば、硬さを可変にすることができる。
【0011】一方、曲げセンサー31で計測した局所変形から、形状変形速度や形状全体の形を求めることができる。曲げセンサー31は曲げ角度によって抵抗値が変化するものであるため、例えば、定電流を流して電圧差を出力させ、これをデジタル値に変換すれば、容易にデジタル化された曲げデータを得ることが出来る。予め個々のセンサー出力のキャリブレーションを行っておけば、センサーに沿った面の曲率を算出できる。デバイス表面は滑らかな曲面となるはずなので、センサーが十分にあれば、図3のように端点6を基準にして、形状全体を算出することができる。
【0012】弾性膜1の形状を算出する手順を図4をもとに説明する。まず、端点6の座標(X0,Y0)と曲げセンサー31の曲げ角度θと長さm、キャップの方向φから、センサーの曲がりを単純に放物線で近似する(S1)。
【0013】次に、端点6からセンサー端点Pまでのセンサーに沿った概略形状を求める(S2)。
【0014】そして、全体の形状はセンサーが連続していると仮定し、端点Pより次のセンサー端点までの形状を求める(S3)。以上を連続して繰り返すことにより、全体の形状を求めることができる。
【0015】なお、この実施例ではセンサーからの配線がデバイス外部に伸びていることを想定したが、センサー内部に電池、信号変換機、無線送信モジュールを持たせられれば、配線を無くすことも可能である。信号変換機は、例えば、電圧変換機、アナログ/デジタル変換機および記憶装置と演算ユニットより構成できる。また、無線送信モジュールとしては、Bluetooth 仕様の近距離無線方式等を用いることができる。
【0016】なお、粒状または粉状物質2であるビーズや砂などは表面に油のような流体を塗布しても良い。
【0017】また、ガイド31の代わりに、ナイロン膜のような伸縮しかつ滑る素材で弾性膜全体覆ってもよい。
【0018】図5に第二の実施例を示す。弾性膜1、粉状または粒状物質2、センサー配線4については第一の実施例と同じである。一方、変形測定部は、弾性膜1の曲率を計測するのではなく、弾性膜1内に張られた張力構造体3の各辺の伸びを測定することにより、変形を計測する。
【0019】このような張力構造体としては、例えば、テンセグリティ構造が知られている。図5のような多くの頂点を持つような形状にしておけば、球に近い構造となるため、第一の実施例と同様な細かい操作が可能である。なお、張力構造体では張力をゴム棒33によって発生させるのと同時に、各ゴム棒の伸びを測定すれば、構造を決定できる。ゴム棒33としては、たとえばポリテックデザイン社の可変抵抗ゴム等、伸びることによって抵抗値が変化するセンサーを用いることが出来る。
【0020】図6に第三の実施例を示す。弾性膜1、粉状または粒状物質2、変形計測装置3、センサー配線4、キャップ5については、第一、第二の実施例と同じである。第三の実施例ではこれらに加え、姿勢を計測する姿勢センサー8がある。姿勢センサー8としては、例えば、ジャイロや加速度計を用いることが出来る。
【0021】このように姿勢を計測することにより、動作を入力することができる。つまり、形状の変化による入力だけでなく、本装置を実際の物体または仮想物体を操作するための入力デバイスとして用いることができる。
【0022】図7に第四の実施例を示す。弾性膜1、粉状または粒状物質2、変形計測装置3、センサー配線4、キャップ5、姿勢センサー8については、第一、第二、第三の実施例と同じである。第四の実施例ではこれらに加え、振動子9により、使用者に触感を提示する。振動子9としては、例えば、偏った錘をつけた小型モーター、積層した圧電素子などを用いることが出来る。
【0023】この振動子9を、例えば、図8に示すような手のツボを刺激するような配置にすれば、使用者の感性に直接作用するようなデバイスになる。また、同様に振動子9の代わりに、ペルチエ効果を利用して発熱,吸熱を行うペルチエ素子のような温度変化を提示する素子を用いても良い。
【0024】また、このデバイスは使用者が身につけて用いることを想定しているため、生理センサー10を用いれば使用者の生理データを得ることが出来る。生理センサーとしては、例えば、体温計測ならサーミスタを用いればよい。また、皮膚電位の計測なら異なる2点間に微弱電流を流して抵抗値を測定することにより、脈波の計測なら青色LED(light-emitted diode )を皮膚にあて、その反射をフォトトランジスタで計測することにより検出できる。
【0025】最後に、図9において本願発明による多次元触覚入出力装置13を携帯端末11に実装した使用イメージを示す。使用者が多次元触覚入出力装置を使って入力した触覚情報は、通信の相手側の多次元触覚入出力装置での振動または動きとして、あるいは、携帯端末上で画像効果12として、あるいは、携帯端末の発する効果音として提示される。
【0026】
【発明の効果】以上、説明したように本願発明によれば、簡便にデジタル化された三次元形状を入力したり、触覚を通した非言語コミュニケーションを実現する小型の触覚入出力デバイスが構築できる。
【出願人】 【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
【出願日】 平成12年10月30日(2000.10.30)
【代理人】 【識別番号】100083161
【弁理士】
【氏名又は名称】外川 英明
【公開番号】 特開2002−132432(P2002−132432A)
【公開日】 平成14年5月10日(2002.5.10)
【出願番号】 特願2000−329916(P2000−329916)