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【発明の名称】 プロセスエレメントアレイ論理回路及び高速フーリエ変換器
【発明者】 【氏名】中田 俊司

【氏名】門 勇一

【氏名】山田 順三

【要約】 【課題】プロセスエレメントアレイ論理回路のLSI面積の低減と消費電力の削減を図る。

【解決手段】プロセスエレメントアレイ論理回路のプロセスエレメント回路を、入力信号に応じて一方が接地され他方がハイインピーダンスとなる2個の出力端子を有する排他的nMOSネットワークにより構成した組み合わせ論理回路21と、該組み合わせ論理回路21の前記2個の出力端子に2つの入出力端子が接続され電源端子にクロックが印加されるCMOSインバータからなるフリップフロップ回路22とから構成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】論理処理を行う1種類又は2種類以上のプロセスエレメント回路がアレイ状に配置されたプロセスエレメントアレイ論理回路において、前記プロセスエレメント回路は、入力信号に応じて一方が接地され他方がハイインピーダンスとなる2個の出力端子を有する排他的nMOSネットワークにより構成した組み合わせ論理回路と、該組み合わせ論理回路の前記2個の出力端子に2つの入出力端子が接続され電源端子にクロックが印加されるCMOSインバータからなるフリップフロップ回路とを具備することを特徴とするプロセスエレメントアレイ論理回路。
【請求項2】請求項1において、前記プロセスエレメント回路を4個以上縦積み接続して各プロセスエレメント回路の前記フリップフロップ回路の電源端子に位相が1/4周期づつ異なる4相クロックを印加し、前段のプロセスエレメント回路は、クロックがハイレベルに向けて上昇するとき論理値の判定を行い、ハイレベルにあるとき該判定の結果を保持して後段のプロセスエレメント回路に論理転送を行い、後段のプロセスエレメント回路は、前記前段のプロセスエレメント回路の判定結果の保持中に前記前段のプロセスエレメント回路のクロックより1/4周期位相の遅れたクロックをハイレベルに向けて上昇することにより、前記前段のプロセスエレメント回路から転送されてきた信号を受けて論理値の判定を行い、ハイレベルにあるとき該判定の結果を保持して更なる後段のプロセスエレメント回路に論理転送を行うことを特徴とするプロセスエレメントアレイ論理回路【請求項3】請求項1又は2において、前記プロセスエレメント回路を4段又は8段の縦積みすることにより1個のプロセスエレメント回路を構成し、4相のクロックで各段を処理してから後段のプロセスエレメント回路に論理結果を転送することを特徴とするプロセスエレメントアレイ論理回路。
【請求項4】請求項1乃至3のいずれか1つにおいて、前記したクロックを、電荷再利用型のパワークロックとしたことを特徴とするプロセスエレメントアレイ論理回路。
【請求項5】請求項1乃至4のいずれか1つに記載のプロセスエレメントアレイ論理回路を加減算器アレイとして使用したことを特徴とする高速フーリエ変換器。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、論理処理を行うプロセスエレメント回路(以下、PE回路と呼ぶ)がアレイ状に配置されたプロセスエレメントアレイ論理回路に係り、特に面積及び消費電力低減を図ったプロセスエレメントアレイ論理回路およびそれを利用した高速フーリエ変換器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】プロセスエレメントアレイ論理回路は、独立してデータを並列且つパイプライン的に論理処理する回路である。この論理回路の特徴としては、下記のようにまとめられる(文献1:VLSIとディジタル信号処理 谷萩隆嗣 コロナ社 p.166)。
【0003】■.処理単位となるPE回路が単純な構成をとる。■.PE回路が規則的に配置されている。■.PE回路間の接続は隣接PE回路どうしに限られる。■.PE回路間の通信は完全同期方式をとる。
【0004】各PE回路には、当該のPE回路の出力状態を固定するためにDFF回路やDラッチ回路などのレジスタ回路を必要とする。ここではレジスタ回路としてRSラッチ回路を例に説明する。
【0005】図8(a)は4個のデータA,B,C,Dを扱うPE回路80の構成の一例を示す図であり、CMOS論理回路部81とラッチ回路部82からなる。ラッチ回路部82の1個のRSラッチ回路821は、図8(b)に示すように、2個の2入力ANDゲート8211,8212と、2個の2入力NORゲート8213,8214から構成されるが、ANDゲート8211とNORゲート8213の組み合わせは、図8(c)に示すように、6個のトランジスタで構成される。TpはpMOSFET、TnはnMOSFETである。
【0006】よって、1個のRSラッチ回路821は12個のトランジスタを必要とするので、4個のRSラッチ回路821をもつラッチ回路部82では48個のトランジスタが必要となる。
【0007】ここで、高速フーリエ変換(Fast Fourier Trasform : FFT)を行う場合について説明する。この高速フーリエ変換は実時間データを周波数成分に高速に変換する重要なアルゴリズムである。これを実現するLSIとして、DA法を用いて、乗算器を用いずに加減算器のみで実現できることが知られている(文献2:I.Ross Mactaggart and Mervyn A.Jack,IEEE Journal of Solid-State Cicuits, vol.SC-19,No.3(1984) p.368-373)。
【0008】Z=B*Wという複素数の乗算を例に取る。これは、実数の乗算を4回と実数の加算、減算により実現できる。下記式中で、Re( )は実数部をIm( )は虚数部を表す。
【0009】

【0010】Wは回転子と呼ばれ、|W|=1の複素数である。BはFFTを行う実時間データである。文献2によれば、DA法を用いて(1)式の演算を乗算器を用いずに加減算器のみで実現できる。文献2の方法は、回転子Wに対し、固定小数点表示を行う。
【0011】

【0012】また、入力値である実時間データBより、KとK’を生成する。

【0013】KとK’およびWRn、WInを用いることにより、Re(Z)、Im(Z)を次式のように変形する。

【0014】

【0015】これをLSIにインプリントすると、加減算器を用いた図9に示すような構成となる。図9において、91はWの入力部、92はBの入力部、93は加減算器、94はEXNORゲート、95はインバータ、96は遅延器である。ここでは8ビットの例を示しており、PE回路としての加減算器93をアレイ状に8×8個並べることにより実現できる。ΣA(n)2-nという累加算は、横8個の加減算器93から成る8ビット加減算器を上から下へ8個縦に接続している回路構成において、演算終了後1ビット右へシフトすることにより得られる。その具体的な回路を図10に示した。図10において、110はPE回路である。
【0016】このFFTのためのPE回路をCMOSで構成したときの回路構成を図11(a)に示す。111はNで制御されるセレクタ、112はインバータ、113はMで制御されるセレクタ、114は論理回路、115はRSラッチ回路である。ここでは、K1,K1’,N,M,S1,C1、CKを入力して、K2,K2’,S2,C2を出力する。
【0017】ところが、この回路構成では、セレクタ111は図11(b)に示すように4個のトランジスタで構成され(セレクタ113も同じ)、論理回路114のS(sum)を出力する部分は図11(c)に示すように22個のトランジスタで構成され(インバータは2個のトランジスタ)、論理回路114のC(carry)を出力する部分は図11(d)に示すように12個のトランジスタで構成され、RSラッチ回路回路115は図8のラッチ回路821で説明したように12個のトランジスタで構成されるので、合計で92個のトランジスタが必要となる。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、PE回路をCMOSで構成する場合には、かなりの数のトランジスタが必要となり、LSI化したときに必要面積が大きくなり、また消費電力も大きくなるという問題がある。
【0019】本発明はこの点に鑑みてなされたもので、その目的は、RSラッチ回路等のレジスタを不要にして、必要トランジスタ数を削減し、回路面積及び消費電力の低減を図ったプロセスエレメントアレイ論理回路及びそれを利用した高速フーリエ変換器を提供することである。
【0020】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するための第1の発明は、論理処理を行う1種類又は2種類以上のプロセスエレメント回路がアレイ状に配置されたプロセスエレメントアレイ論理回路において、前記プロセスエレメント回路は、入力信号に応じて一方が接地され他方がハイインピーダンスとなる2個の出力端子を有する排他的nMOSネットワークにより構成した組み合わせ論理回路と、該組み合わせ論理回路の前記2個の出力端子に2つの入出力端子が接続され電源端子にクロックが印加されるCMOSインバータからなるフリップフロップ回路とを具備するように構成した。
【0021】第2の発明は、第1の発明において、前記プロセスエレメント回路を4個以上縦積み接続して各プロセスエレメント回路の前記フリップフロップ回路の電源端子に位相が1/4周期づつ異なる4相クロックを印加し、前段のプロセスエレメント回路は、クロックがハイレベルに向けて上昇するとき論理値の判定を行い、ハイレベルにあるとき該判定の結果を保持して後段のプロセスエレメント回路に論理転送を行い、後段のプロセスエレメント回路は、前記前段のプロセスエレメント回路の判定結果の保持中に前記前段のプロセスエレメント回路のクロックより1/4周期位相の遅れたクロックをハイレベルに向けて上昇することにより、前記前段のプロセスエレメント回路から転送されてきた信号を受けて論理値の判定を行い、ハイレベルにあるとき該判定の結果を保持して更なる後段のプロセスエレメント回路に論理転送を行うよう構成した。
【0022】第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記プロセスエレメント回路を4段又は8段の縦積みすることにより1個のプロセスエレメント回路を構成し、4相のクロックで各段を処理してから後段のプロセスエレメント回路に論理結果を転送するよう構成した。
【0023】第4の発明は、第1乃至第3のいずれか1つの発明において、前記したクロックを、電荷再利用型のパワークロックとした。
【0024】第5の発明の高速フーリエ変換器は、第1乃至第4のいずれか1つの発明のプロセスエレメントアレイ論理回路を加減算器アレイとして使用して構成した。
【0025】
【発明の実施の形態】[第1の実施の形態]図1はPE回路の第1の実施形態を示す図であり、FFT回路の前記した図11の回路に対応するPE回路を2分決定グラフ(Binary Decision Diagram : BDD)で表した図である。図1(a)はK1,K1’,N,M,S1,C1を入力としてS2(sum)を求めるBDD、図1(b)はK1,K1’,N,M,S1,C1を入力としてC2(carry)を求めるBDD、図1(c)はK1を入力してK2を求めるBDD、図1(d)はK1’を入力してK2’を求めるBDDである。
【0026】図1(a)のBDDを代表して説明すると、11は始点、12は節点、13,14はブランチ、15,16は終点である。各節点12には入力変数(K1,K1’,N,M,S1,C1等)が対応しており、始点11から入って下向きに各節点12をたどり、最後に2つの終点15,16のいずれかに到達する。各節点12においては、その入力変数に応じて2つのブランチ13又は14をたどる。例えば、入力変数Nが「0」ならブランチ13をたどり、「1」ならブランチ14をたどる。つまり、入力変数が与えられると、始点11から終点15又は16への1つのパスが指定され、パスの終わりが終点15ならS2は「0」、終点16なら「1」である。
【0027】図2はこの図1に示した4つのBDDを4つのnMOSネットワークに置き換えた回路図である。図2の(a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれ図1の(a)、(b)、(c)、(d)に対応している。図2の(a)を代表して説明すると、BDDの始点11を接地し、組み合わせ論理回路21をTnで表したnMOSFETの縦積み回路で構成し、BDDの終点15,16にTnで表したnMOSFETとTpで表したpMOSFETからなるCMOSインバータによるフリップフロップ回路(ラッチ回路)22を設けている。このフリップフロップ回路22の電源部には、定電圧を与える代わりに、クロックCKを印加している。
【0028】このように、図2のPE回路では、RSラッチ回路の代わりにCMOSインバータによるフリップフロップ回路22によってラッチ回路を構成しており、使用トランジスタ数が大幅に削減される。ここで使用されているトランジスタ数は合計で54個であり、前記した図11のCMOS回路で構成したPE回路と比べると、1/2程度トランジスタ数を削減できる(図7(a)参照)。
【0029】図3(a)は図2に示した構成のPE回路を利用してパイプライン処理を行うようにした回路を示す図である。31は図2に示した構成のPE回路であり、このPE回路31を4段シリーズ接続(縦積み接続)している。PE回路31の各々に印加されるクロックは、図3(b)に示すように、位相が1/4周期ずつずれた4相のクロックCK1,CK2,CK3,CK4としている。なお、図1,図2では扱う信号を6個としていたが、ここでは簡単のために2個としている。
【0030】さて、初段のPE回路31に着目すると、クロックCK1が上昇することにより論理値の判定を行い、ハイレベルに固定されているときにフリップフロップ回路22に判定結果が保持される。この間に次段のPE回路31のクロックCK2が上昇し、前段のPE回路31の出力信号を受けて論理値の判定を行い、クロックCK2がハイレベルに固定されるときに、結果がラッチされる。このような動作が繰り返され、論理信号が次々と伝搬される。
【0031】[第2の実施形態]図3で説明したPE回路31の4段接続構成では、矩形波のクロックCK1〜CK4により論理結果を次々と転送したが、これらのクロックを電荷再利用型クロック(パワークロック:PCK)に置き換えても正しく動作させることができ、しかも電荷を再利用しているために、消費電力を低減することが可能となる。
【0032】図4(a)はPE回路31の4段接続にこのようなパワークロックPCK1〜PCK4を印加するようにした例を示す図である。このパワークロックPCK1〜PCK4は図4(b)に示すように、緩やかに立ち上がる部分でプリチャージ(precharge)し、ハイレベル部分でホールド(hold)し、緩やかに立ち下がる部分で電荷を電源に返すリサイクル(recycle)を行い、ロウレベル部分で待機(weit)する動作を行い、これを繰り返しながら、論理信号が次々と伝搬される。このようなパワークロックは、スイッチドキャパシタ回路(図示せず)やLC共振回路(図示せず)等で生成できる。スイッチドキャパシタ回路では図4の(b)に示した階段状の波形を得ることができ、LC共振回路では正弦波を得ることができる。
【0033】使用トランジスタのしきい値がVt=0.5V、電源電圧がVDD=0.5Vのとき、100KHz動作における1段のPE回路の消費電力は、SPICEのシミュレーションによると、CMOS論理回路(図11)による場合が13.3nWであったのに対して、パワークロック方式のnMOS論理回路(図2のCKとしてPCKを使った)による場合が1.28nWであり、1/10程度の消費電力削減ができた(図7(b)参照)。
【0034】[第3の実施形態]PE回路を1種類ではなく、図5(a)に示すように、2種類のPE回路51、52を交互に接続して使用することもできる。この場合も、4相のクロックCK1〜CK4を使用することにより、論理結果をPE回路51→52→51→52の順で転送することができる。さらに、図5(b)に示すように、3種類のPE回路51,52,53を使用して、51→52→53→51→52→53→51→52とシリーズに接続することも可能である。
【0035】[第4の実施形態]また、PE回路は1段のnMOSの縦積み回路で構成するものに限られず、図6(a)に示すように、4段の縦積み構成で1個のPE回路61、62を構成し、これをシリーズ(縦積み)に接続することもできる。また、図6(b)に示すように、8段の縦積み構成でPE回路63,64を構成し、これをシリーズ(縦積み)に接続することもできる。
【0036】[その他の実施形態]以上の各実施形態ではBDDを用いたが、必ずしもこれに限られるものではなく、外部から1又は2以上の入力信号を入力させたときに、2つの出力信号の内の一方が接地され、他方がハイインピーダンスになるようなネットワークの構成であれば、いずれの回路構成でも利用できる。
【0037】
【発明の効果】以上から本発明によれば、CMOS論理回路と比較してトランジスタ数がほぼ1/2となって、LSI面積を低減できる。また、電荷再利用型クロックを使用することにより、CMOS論理回路と比較して消費電力をほぼ1/10程度まで削減できる。
【出願人】 【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
【出願日】 平成12年10月4日(2000.10.4)
【代理人】 【識別番号】100083194
【弁理士】
【氏名又は名称】長尾 常明
【公開番号】 特開2002−108834(P2002−108834A)
【公開日】 平成14年4月12日(2002.4.12)
【出願番号】 特願2000−304279(P2000−304279)