| 【発明の名称】 |
数値制御工作機械におけるワークの加工方法及びそのプログラム |
| 【発明者】 |
【氏名】藤縄 正
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| 【要約】 |
【課題】工具の切り換え時間を短縮することによって加工時間を短縮し、ワークの加工コストの削減を図ることができるワークの加工方法を提供する。
【解決手段】今回工具を指定するステップS71と、今回工具を割り出し、ワーク側に移動させて前記ワークの加工を行うステップS73,S74と、次回工具を指定するステップS72と、次回工具を所定位置に割り出すステップS77と、今回工具によるワークの加工終了後に、NCプログラムの実行について待ち合わせを行うステップS79と、今回工具のワークからの退避移動と同時に次回工具をワークに向けて移動させることについて移動許可が存在するかどうかを判断するステップS80と、移動許可が存在する場合に、前記今回工具のワークからの退避移動と同時に、次回工具をワークに向けて移動させるステップS82,S85と、次回工具によるワークの加工を開始させるステップS84とを有する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の工具を備え、割り出し動作によって所定の工具を所定位置に割り出すことが可能な刃物台を複数有し、複数の刃物台の複数の工具を切り換えがらワークの加工を行う数値制御工作機械におけるワークの加工方法において、一の前記刃物台に装着された今回使用する今回工具を指定するステップと、この指定に基づいて今回工具を割り出し、ワーク側に移動させて前記ワークの加工を行うステップと、他の前記刃物台に装着された次回使用する次回工具を指定するステップと、指定された次回工具を所定位置に割り出すステップと、今回工具によるワークの加工終了後に、NCプログラムの実行について待ち合わせを行うステップと、今回工具のワークからの退避移動と同時に次回工具をワークに向けて移動させることについて移動許可が存在するかどうかを判断するステップと、前記移動許可が存在する場合に、前記今回工具のワークからの退避移動と同時に、次回工具をワークに向けて移動させるステップと、次回工具によるワークの加工を開始させるステップと、を有することを特徴とするワークの加工方法。 【請求項2】 前記今回工具が、加工終了後にワークから第一の距離まで移動したときに、次回工具が、前記ワークから第二の距離まで接近していることを特徴とするワークの加工方法。 【請求項3】 前記今回工具が退避移動を開始してから前記第一の距離まで達する時刻と、前記次回工具が前記ワーク側への移動を開始してから前記第二の距離まで達する時刻とが同じであることを特徴とする請求項2に記載のワークの加工方法。 【請求項4】 前記第一の距離及び前記第二の距離が共に等しいことを特徴とする請求項2又は3のいずれかに記載のワークの加工方法。 【請求項5】 前記今回工具の移動速度と、前記次回工具の移動速度を同一にしたことを特徴とする請求項1に記載のワークの加工方法。 【請求項6】 複数の工具を備え、割り出し動作によって所定の工具を所定位置に割り出すことが可能な刃物台を複数有し、複数の刃物台の複数の工具を切り換えがらワークの加工を行う数値制御工作機械におけるワーク加工のためのプログラムにおいて、今回工具と次回工具とを指定し、今回工具の移動中における次回工具の移動を許容し、今回工具の退避移動の開始とともに次回工具のワーク側への移動を指令することを特徴とするプログラム。 【請求項7】 前記今回工具が退避を開始して予め設定された第一の位置まで達する時刻と、前記次回工具がワーク側への移動を開始して予め設定された第二の位置まで達する時刻とが同じになるように、前記今回工具の移動と前記次回工具の移動について補間指令を行うことを特徴とする請求項6に記載のプログラム。 【請求項8】 前記今回工具の退避移動と、前記次回工具のワーク側への移動とを同期させることを特徴とする請求項6に記載のプログラム。 【請求項9】 前記次回工具の前記ワーク側への移動を許容する指令を、特定の宣言コードを用いて行うことを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載のプログラム。 【請求項10】 前記次回工具の前記ワーク側への移動を許容する指令を、特定のプログラム文によって定義することを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載のプログラム。 【請求項11】 前記次回工具の前記ワーク側への移動を許容するかどうかを、プログラムごと、工具ごと又は移動軸ごとにパラメータ化して設定することを特徴とする請求項6〜10のいずれかに記載のプログラム。
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【発明の詳細な説明】【0001】本発明は、複数の刃物台を有する数値制御旋盤等の数値制御工作機械に関し、特に、ワークの加工を行う工具の切り換えを迅速に行い、無駄時間を短縮又は無くすことができる数値制御工作機械におけるワークの加工方法及びそのNCプログラムに関するものである。 【0002】 【従来の技術】図11に、二つの刃物台を有する数値制御(NC)旋盤の概略平面図を示す。このNC旋盤200は、主軸220を回転自在に支持する主軸台210と、主軸220の軸線Cの両側に配置された二つの刃物台、すなわち、櫛刃形の第一の刃物台240及び第二の刃物台260とを有している。第一の刃物台240は、図11の紙面に直交する方向であるY軸方向に移動できるようにサドル241に設けられ、第二の刃物台260は、Y軸方向に移動できるように、サドル261に設けられている。サドル241,261は、主軸軸線Cと水平面内で直交するX軸方向に移動できるように、刃物台本体230,250に設けられている。刃物台本体230,250は、主軸軸線Cと同方向のZ軸方向に移動できるように、NC旋盤のベッド201に設けられている。 【0003】主軸220の回転中心には図示しない貫通孔が形成されていて、長尺棒状のワークWが、主軸220のこの貫通孔を挿通するようになっている。ワークWは、主軸220の前方(図面の左側)に設けられたガイドブッシュ271から所定長さ先端を突出させた状態で、主軸220の先端に設けられた図示しないチャックによって把持される。工具T1,T2は、刃物台240,260のY軸方向の移動によって所定位置に割り出され、刃物台本体230,250のZ軸方向の移動及びサドル241,261のX方向の移動の組み合わせにより、ワークWに対して位置決めがなされる。 【0004】上記構成のNC旋盤200においては、一定の条件下では、工具T1,T2を同時にワークWに当接させ、工具T1,T2に対してワークWを相対回転させることで、二つの工具T1,T2による加工を同時に行うことができる。しかしながら、種類の異なる工具T1,T2でワークWの加工を行うには、工具T1,T2に対するワークWの相対回転速度などの切削条件が異なるため、多くの場合、種類の異なる工具T1,T2でワークWの同時加工を行うことはできない。 【0005】また、今回工具T1がワークWの外周面の切削を行うバイト等の切削工具で、次回工具T2がワークWの外周面に穴あけ加工を行うドリル等の回転工具である場合、今回工具T1から次回工具T2に切り換える際には、ワークWの回転を停止させ、所定の回転角度位置に位置決めして固定しなければならない。このように、工具T1,T2によるワークWの同時加工を行うことができない場合は、今回工具T1によるワークWの加工中には、今回工具T1及びワークWと干渉が生じない位置(待機位置)で次回工具T2を待機させておき、今回工具T1によるワークWの加工終了後に、今回工具T1を次回工具T2に切り換えて加工を行う必要がある。 【0006】上記したような場合における、今回工具T1から次回工具T2への工具の切り換えの手順を図12(a)〜(c)に示す。図12(a)に示すように、第一の刃物台240の今回工具T1によるワークWの加工中には、第二の刃物台260の次回工具T2は、今回工具T1及びワークWと干渉が生じない位置B2で待機している。図12(b)に示すように、第一の刃物台240の今回工具T1によるワークWの加工が終了すると、今回工具T1がワークWから退避して予め設定された所定の位置A1まで移動する。そして、第一の刃物台240がこの位置A1まで移動して停止したときに、次回工具T2が位置B2からワークWに向けて移動を開始する。この後、図12(c)に示すように、次回工具T2によるワークWの加工が開始される。 【0007】ところで、近年では、ワーク加工のためのさらなるコスト削減の要求から、刃物台による工具の割り出し時間を短縮したり、主軸の回転速度を高速化したりして、加工時間の短縮を図るなどの手段が講じられている。しかしながら、割り出し時間の短縮や主軸の回転速度の高速化等による加工時間の短縮は、近年では実質的に限界に達していて、これまで以上の大幅な加工時間の短縮はほとんど期待することができない。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の問題にかんがみてなされたもので、複数の刃物台の工具を交互に切り換えながらワークの加工を行う場合に、工具の切り換え時間を短縮することによって加工時間を短縮し、ワークの加工コストのさらなる削減を図ることができる数値制御工作機械におけるワークの加工方法及びそのプログラムを提供することを目的とする。 【0009】 【課題を解決するための手段】本発明の発明者は、工具の切り換え時に発生するいわゆる無駄時間を短縮又は無くすことにより、加工時間の大幅な短縮を図ることを見出した。すなわち、上記したような従来の工具T1,T2の切り換え工程では、図12(b)に示すように、今回工具T1と次回工具T2のいずれによってもワークWの加工が行われていない、いわゆる無駄時間が発生する。そこで、このような無駄時間の短縮又は無駄時間を無くすことによって、加工時間の大幅な短縮を図った。 【0010】このような無駄時間をグラフで示したものが図13である。図13(a)は今回工具T1の退避移動開始からの経過時間と移動速度との関係を示し、図13(b)は次回工具T2の移動開始からの経過時間と移動速度との関係を示している。今回工具T1によるワークWの加工が終了し、今回工具T1は(a)に示すような速度変化曲線を描きながら、時間t1でワークWから所定距離離れた位置A1まで移動する。そして、今回工具T1が位置A1まで移動して停止すると同時に、次回工具T2が移動を開始し、図13(b)に示すような速度変化曲線を描きながら、時間t2でワークWまで達する。したがって、今回工具T1が退避移動を開始する時刻0から、次回工具T2の移動が終了する時刻t2までの時間が、無駄時間として発生する。 【0011】さらに発明者は、ワークWの形状にともなう現状の工具の待機位置にも着目した。例えば、図14に示すような場合においては、工具T1,T2の待機位置である位置B1,B2が、ワークWの形状にかかわらず一定であった。すなわち、図14(a)に示すように、大径部Waと小径部Wbとを有するワークWの加工を行う場合に、ワークWの外径Wzを基準として距離L1,L2のところに位置B1,B2を設定している。そのため、小径部Wbの加工を行う際には工具T1,T2からワークWまでの距離が遠すぎて、工具T1,T2がワークWに到達するまでに長時間を要し、多大な無駄時間が発生することになる。そこで、ワークWの形状に応じて待機位置を設定するようにして、加工時間の短縮を図った。本発明では、上記の目的を達成するために、今回工具である今回工具T1が加工を終えてワークWから退避移動を開始すると同時に、次回工具T2がワークに向けて移動を開始するようにした。 【0012】具体的には、請求項1に記載の発明は、複数の工具を備え、割り出し動作によって所定の工具を所定位置に割り出すことが可能な刃物台を複数有し、複数の刃物台の複数の工具を切り換えがらワークの加工を行う数値制御工作機械におけるワークの加工方法において、一の前記刃物台に装着された今回使用する今回工具を指定するステップと、この指定に基づいて今回工具を割り出し、ワーク側に移動させて前記ワークの加工を行うステップと、他の前記刃物台に装着された次回使用する次回工具を指定するステップと、指定された次回工具を所定位置に割り出すステップと、今回工具によるワークの加工終了後に、NCプログラムの実行について待ち合わせを行うステップと、今回工具のワークからの退避移動と同時に次回工具をワークに向けて移動させることについて移動許可が存在するかどうかを判断するステップと、前記移動許可が存在する場合に、前記今回工具のワークからの退避移動と同時に、次回工具をワークに向けて移動させるステップと、次回工具によるワークの加工を開始させるステップとを有する加工方法である。この方法では、今回工具の終了後に今回工具の退避移動の開始と同時に次回工具をワークに向けて移動させるようにしているので、無駄時間を短縮することができる。 【0013】請求項2に記載の発明は、前記今回工具が、加工終了後にワークから第一の距離まで移動したときに、次回工具が、前記ワークから第二の距離まで接近している加工方法である。本発明においては、請求項3に記載するように、補間指令によって、前記今回工具が退避移動を開始してから前記第一の距離まで達する時刻と、前記次回工具が前記ワーク側への移動を開始してから前記第二の距離まで達する時刻とが同じになるようにするとよい。前記第一の距離及び第二の距離を可能な限り小さく設定することで、無駄時間を0に近づけることができる。 【0014】また、今回工具がワークや次回工具と干渉することの無い位置に前記第一の距離を設定することで、今回工具を安全な位置に確実に退避させた後で次回工具によるワークの加工を開始させることができるようになる。また、請求項4に記載するように、前記第一の距離及び前記第二の距離が共に等しくなるようにしてもよい。 【0015】請求項5に記載の発明は、前記今回工具の移動速度と、前記次回工具の移動速度を同一にした加工方法である。このように、今回工具と次回工具とを同期移動させることで、今回工具と次回工具の距離を一定に保ったまま、今回工具をワークから所定位置まで退避させ、次回工具をワークまで移動させることができる。 【0016】上記加工方法は請求項6〜11に記載のプログラムをNC装置に読み込ませることで実行が可能である。すなわち、請求項6に記載の発明は、複数の工具を備え、割り出し動作によって所定の工具を所定位置に割り出すことが可能な刃物台を複数有し、複数の刃物台の複数の工具を切り換えがらワークの加工を行う数値制御工作機械におけるワーク加工のためのプログラムにおいて、今回工具と次回工具とを指定し、今回工具の移動中における次回工具の移動を許容し、今回工具の退避移動の開始とともに次回工具のワーク側への移動を指令するプログラムである。 【0017】このプログラムによれば、今回工具の退避移動中に、次回工具の移動を許容することができ、両工具を同時に移動させることが可能になる。そのため、工具切り換え時における無駄時間を短縮することができる。この場合、請求項7に記載するように、前記今回工具が退避を開始して予め設定された第一の位置まで達する時刻と、前記次回工具がワーク側への移動を開始して予め設定された第二の位置まで達する時刻とが同じになるように、前記今回工具の移動と前記次回工具の移動について補間指令を行うようにするとよい。前記した第一の位置及び第二の位置は、ワークから同一の距離のところにあってもよく、また、ワークに可能な限り近いところに設けるとよい。このようにすることで、無駄時間を可能な限り小さくすることができる。 【0018】また、請求項8に記載するように、前記今回工具の退避移動と、前記次回工具のワーク側への移動とを同期させるようにしてもよい。さらに、請求項9に記載の発明は、前記次回工具の前記ワーク側への移動を許容する指令を、特定の宣言コードを用いて行うプログラムである。また、請求項10に記載の発明は、前記次回工具の前記ワーク側への移動を許容する指令を、特定のプログラム文によって定義するプログラムである。このように、次回工具の移動制限を解除して、今回工具の退避移動中に次回工具の移動を許容するのは、所定の宣言コードであってもよいし、所定のプログラム文であってもよい。この発明では、請求項11に記載するように、前記次回工具の前記ワーク側への移動を許容するかどうかを、プログラムごと、工具ごと又は移動軸ごとにパラメータ化して設定することも可能である。 【0019】 【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明では、適宜に、図11のNC旋盤を参照するものとする。 [第一の実施形態]図1は、本発明における加工方法の第一の実施形態を説明するためのフローチャートである。NCプログラムの実行開始とともに、今回工具T1の指定と次回工具T2の指定が行われる(ステップS71,S72)。今回工具T1及び次回工具T2の指定は、それぞれ別系統で行われる。今回工具T1及び次回工具T2の指定は同時であってもよいが、次回工具T2の指定は遅くとも今回工具T1によるワークWの加工終了前までに行われるようにしてある。 【0020】今回工具T1の指定があったときは、第一の刃物台240(図11参照)が今回工具T1を所定位置に割り出す(ステップS73)。そして、今回工具T1をワークW側へ移動させて、今回工具T1によるワークWの加工を開始する(ステップS74)。次回工具T2については、次回工具T2の指定があったときに、第二の刃物台260の割り出し動作が可能かどうかを判断して(ステップS76)、可能であれば次回工具T2を所定位置に割り出し、当該割り出しを行った位置又はこの位置よりもワークに近い所定の位置で工具T2を待機させる(ステップS77)。割り出し動作が可能でなければ(ステップS76)、割り出しが可能になるまで待機する。今回工具T1によるワークW1の加工が終了すれば(ステップS75)、今回工具T1側と次回工具T2との間でプログラムの実行を待ち合わせる(ステップS78,79)。 【0021】待ち合わせ終了後に、次回工具T2については、今回工具T1の移動中に次回工具T2を移動させることについて、移動許可がなされているかどうかを判断し(ステップS80)、許可がなされていなければ、今回工具T1の退避移動が完了するまで待機する(ステップS81)。許可がなされていれば、今回工具T1の退避移動の開始と同時に、次回工具T2のワークW側への移動を開始させる(ステップS82,S85)。今回工具T1は、例えば、第一の刃物台240の割り出し動作が可能な位置まで移動して退避移動を終了する(ステップS86)。次回工具T2は、ワークWに当接するまで移動する(ステップS83)。そして、次回工具T2によるワークWの加工が開始される(ステップS84)。 【0022】図2は、図1の加工方法を実行するためのNCプログラムの一例を示す図である。図2のプログラムのブロックB5では、今回工具T1の指定が「T1200」で行われる。次回工具T2の指定は、別タスク(別系統)で独自に「T2100」で行われる。ブロックB6は今回工具T1によるワークWの加工のための移動指令で、ブロックB7は、次回工具T2の移動を許可する指令である。このブロックB7では、再度、工具T1,T2の指定を「T1200 K1 R2100」で行うことで、今回工具T1の退避移動と、次回工具T2のワークW側への移動とを指令している。コード「K1」は、今回工具T1の移動中における次回工具T2の移動を許可するためのものである。このような指定によれば、異なるコードを同一のブロックで同時に指令できるので、工具T1,T2を同時に移動させることができるという利点がある。また、今回工具T1によるワークWの加工終了後に、今回工具T1側のブロックB8と次回工具T2側のブロックB15に準備指令「G4」を設け、これに続くブロックB9,B16に待ち合わせ指令「!2L10」「!1L10」を設けている。これにより、待ち合わせ終了後に、今回工具T1と次回工具T2とが同時に移動を開始する。 【0023】なお、ブロックB10,B17の「G1 X20.0」は、今回工具T1をX20.0のところまで早送りによって移動させるとともに、次回工具T2をX20.0のところまで早送りで移動させることを指令するものである。今回工具T1の退避移動開始位置からこのX20.0の位置までの距離、及び次回工具の移動開始位置からX20.0までの距離を同じにし、かつ、工具T1,T2の移動速度を同じにすることで、今回工具T1と次回工具T2とが同時刻にX20.0に到達するようにすることが可能である。この後、今回工具T1には、ブロックB11の「G1 X****」により、X20.0の位置からさらに離間した所定の位置(例えば、刃物台の割り出しが可能な位置)まで移動するように指令が出力され、次回工具T1には、例えばX10.0の位置まで早送りによってワークWに接近するように指令が出力される。 【0024】次に、今回工具T1の移動のタイミングと次回工具T2の移動タイミングの設定の一例を、図3〜図5を参照しながら説明する。図3〜図5は、今回工具T1の移動のタイミングと、次回工具T2の移動のタイミングをグラフで示したものである。各図において(a)は今回工具T1の移動速度と時間との関係を示し、(b)は次回工具T2の移動速度と時間との関係を示している。 【0025】図3に示す移動のタイミングは、本発明における最も基本的な移動制御を示している。すなわち、今回工具T1の退避移動の開始と同時に、次回工具T2の移動が開始され、今回工具T1及び次回工具T2が、それぞれ、指定された速度で移動する。この図3では、グラフの面積が工具T1,T2の移動距離を示している。したがって、今回工具T1が、予め定められた第一の位置(例えば、後述の図7の距離δ1で示される位置)を通過する時刻は、図3(a)のグラフ中斜線で示す面積が、今回工具T1の退避移動の開始位置と前記第一の位置との間の距離と等しくなる時刻t1で示される。同様に、次回工具T2が予め定められた第二の位置(例えば、後述の図7の距離δ2で示される位置)を通過する時刻は、図3(b)のグラフ中斜線で示す面積が、次回工具T2の移動開始位置と前記第二の位置との間の距離に等しくなる時刻t2で示される。先にも説明したように、今回工具T1の退避移動開始位置から前記第一の位置までの距離と、次回工具の移動開始位置から前記第二の位置まで距離を同じにし、かつ、工具T1,T2の速度変化パターン(グラフ形状)を同じにすることで、今回工具T1と次回工具T2とを同時刻に前記第一の位置及び第二の位置に到達させることが可能になる。 【0026】図3に示す移動制御は、最も簡単な移動制御であるものの、次回工具T2が移動を開始する位置の設定によっては、未だ多大な無駄時間が生じる可能性がある。また、今回工具T1が、ワークWや次回工具T1等と干渉しない第一の位置まで退避しきらないうちに、次回工具T2がワークWの加工を開始するという不都合が生じるおそれがある。そこで、このような場合には、図4に示すような補間移動制御を利用するとよい。図4に示す補間移動制御では、今回工具T1が退避移動を開始して予め設定された前記第一の位置まで達する時刻t1と、次回工具T2が移動を開始して予め設定された前記第二の位置まで達する時刻t2とが同じになるように制御している。 【0027】このような補間移動制御では、今回工具T1が前記第一の位置を通過する時刻と、次回工具T2が前記第二の位置を通過する時刻とを、前記第一の位置と前記第二の位置との関係にかかわらず、必ず同時刻に合わせることができる。また、前記第一の位置及び前記第二の位置を可能な限りワークに近づけることで、無駄時間を0に近づけることができる。さらに、前記第一の位置を今回工具T1が次回工具T2やワークWと干渉する等の不都合を生じない安全な位置に設定することで、今回工具T1が安全位置まで退避しきらないうちに、次回工具T2がワークWの加工を開始するという不都合を防止することができる。 【0028】また、図5に示すような同期移動制御によって、今回工具T1と次回工具T2との距離を一定に保ちながら移動させることが可能である。図5の移動制御では、工具T1,T2とが同じ速度変化曲線を描くように移動を制御している。したがって、今回工具T1が退避移動を開始するときと、次回工具がワークに向けて移動を開始するときの、両工具T1,T2間の距離が、次回工具T2によるワークWの加工が開始させるまで保持されるので、今回工具T1が安全位置まで退避しきらないうちに、次回工具T2がワークWの加工を開始するという不都合を防止することができる。 【0029】図2のブロックB7における次回工具T2の移動許可は、プログラムごと、工具ごと又は移動軸ごとに設定が可能である。図6は、プログラムごと、工具ごと又は移動軸ごとに次回工具T2の移動許可を設定する設定画面の一例を示すものである。図6に示すように、今回工具T1の移動中に次回工具T2の移動を許可するかどうかは、パラメータで設定することができる。図6(a)は、プログラムごとに設定を行うことができるようにしたもので、今回工具T1と次回工具T2の双方の移動が設定されている全てのプログラムについて、次回工具T2の移動許可の設定及びその解除が可能である。図6(b)は、工具ごとに設定を行うことができるようしたもので、全ての工具について、次回工具T2の移動許可の設定及びその解除が可能である。図6(c)は、移動軸ごとに設定を行うことができるようにしたもので、全ての移動軸において移動許可の設定及びその解除が可能である。 【0030】図7は、図1及び図2を参照しながら説明した第一の実施形態の加工方法及びそのプログラムによるワークWの加工の一例を示す図である。図7(a)に示すように、第一の刃物台240及び第二の刃物台260の割り出し動作によって、今回工具T1と次回工具T2とが所定位置に割り出される。そして、今回工具T1によるワークWの加工が開始される。このとき、次回工具T2は、ワークWから離間した位置B1で待機している。図7(b)に示すように、今回工具T1によるワークWの加工が終了して、今回工具T1がワークWから退避すると同時に、次回工具T2の移動が許可されていることを条件に、次回工具T2がワークWに向けて移動を開始する。 【0031】図7(c)に示すように、次回工具T2がワークWに対して予め設定された距離δ2のところまで接近したときに、今回工具T1がワークWから予め設定された距離δ1のところまで退避している。距離δ1,δ2は、図2のNCプログラムではX=20.0である。以後、次回工具T2がワークWに当接して、図7(d)に示すように、次回工具T2によるワークWの加工が行われる。 【0032】[第二の実施形態]図8は、本発明における加工方法の第二の実施形態を説明するためのフローチャートである。この第二の実施形態においても、図11のNC旋盤を適宜参照するものとする。この第二の実施形態では、第一の刃物台240(図11参照)の移動を制御するための制御系(第一の制御系)と、第二の刃物台260の移動を制御するための制御系(第二の制御系)とが別々に設けられている。NCプログラムの実行を開始する前に、第一の制御系と第二の制御系とでNCプログラムの実行開始タイミングの待ち合わせが行われる(ステップS101,S102)。 【0033】この後、今回工具T1と次回工具T2とを指定し(ステップS103,S104)、今回工具T1を所定位置に割り出して(ステップS111)ワークW側に移動させ、今回工具T1によるワークWの加工を開始する(ステップS112)。一方、次回工具T2については、第二の刃物台260の割り出し動作が可能であるか否かを判断し(ステップS104)、可能であれば、次回工具T2を所定位置に割り出して待機させ(ステップS106)、可能でなければ、次回工具T2の割り出しが可能になるまで待機させる(ステップS105)。今回工具T1によるワークWの加工が終了すれば(ステップS113)、再び第一の制御系と第二の制御系とでNCプログラムの実行開始タイミングの待ち合わせが行われる(ステップS108,S114)。待ち合わせ終了後、今回工具T1がワークWから退避を開始し(ステップS117)、所定距離離れた位置まで移動する。一方、次回工具T2は、移動許可が設定されていることを条件に(ステップS109)、ワークWに向けて移動を開始する(ステップS115)。移動許可が存在しなければ、今回工具T1が移動を終了するまで待機する(ステップS110)。以後、次回工具T2によるワークWの加工が開始される(ステップS116)。 【0034】[プログラムの説明]図9は、図8の加工方法を実行するためのNCプログラムの一例を示す図である。このNCプログラムは、今回工具T1と次回工具T2の指定を行うブロックB5,B14の前に、第一の制御系と第二の制御系とでNCプログラムの実行開始タイミングの待ち合わせを行う「!2L10」「!1L10」を設けている。これ以外は、図2のNCプログラムと基本的に同じである。従って、図2のNCプログラムと同一のブロックには同一の符号を付して、詳しい説明は省略する。この実施形態においても、次回工具T2の移動許可を行うコードは上記の「K1」に限られず、他のコードや宣言文を使って移動許可の設定を行うことが可能である。 【0035】図10は、図8及び図9を参照しながら説明した第二の実施形態の加工方法及びプログラムによるワークWの加工の一例を示す図である。図10の加工例では、今回工具T1で小径部Wbの粗加工を行った後、次回工具T2で同一部分の仕上げ加工を行い、次いで、今回工具T1で大径部Waの粗加工を行った後、次回工具T2で同一部分の仕上げ加工を行うものとして説明する。図10(a)に示すように、今回工具T1と次回工具T2とが割り出され、まず、今回工具T1によるワークWの小径部Wbの加工が開始される。このとき、次回工具T2は、ワークWの小径部Wbから十分に離間した位置で待機している。 【0036】今回工具T1によるワークWの加工終了後に、今回工具T1が退避移動を開始すると、次回工具T2の移動が許可されていることを条件に、次回工具T2がワークWに向けて移動を開始する。図3〜図5で説明したように、今回工具T1及び次回工具T2の移動のタイミングを適宜に設定することで、図10(b)に示すように、今回工具T1が小径部Wbの表面から距離δ3のところまで退避したときに、次回工具T2を小径部Wbの表面から距離δ4のところまで接近させることができる。図10(c)に示すように、次回工具T2による小径部Wbの加工が行われている間、今回工具T1はワークWから十分に離間した位置で待機している。これ以後、次回工具T2が今回使用する工具である今回工具T2となり、待機している今回工具T1が次回工具T1となる。 【0037】今回工具T2による小径部Wbの加工終了後に、今回工具T2が退避移動を開始すると、次回工具T1の移動許可がなされていることを条件に、次回工具T1が大径部Waに向けて移動を開始する。そして、図10(d)に示すように、今回工具T2が小径部Wbの表面から距離δ4のところまで退避したときに、次回工具T1が大径部Waの表面から距離δ3のところまで接近している。このようにすることで、ワークWの形状にかかわらず、最良のタイミングで今回工具T1(T2)と次回工具T2(T1)の切り換えを行うことができる。また、距離δ3,δ4の設定によっては、無駄時間を0に可能な限り近づけることができる。 【0038】本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態により何ら限定されるものではない。例えば、対向する二つの櫛刃形の刃物台を有する数値制御旋盤を例に挙げて説明したが、本発明は櫛刃形に限らずタレット形の刃物台を有する旋盤にも適用が可能であるし、また、旋盤に限らずマシニングセンタ等の他の数値制御工作機械にも適用が可能である。また、刃物台の数は二つに限らず3つ以上であってもよい。さらに、本発明の加工方法を実行するためのNCプログラムは上記のものに限られず、他の形態のNCプログラムも用いることが可能である。 【0039】 【発明の効果】本発明は上記のように構成されているので、工具切り換えの際の無駄時間を可能な限り少なくすることによって加工時間を短縮し、ワーク加工のコストの大幅な削減を図ることができる。また、ワークの形状にかかわらず、最良のタイミングで今回工具と次回工具の切り換えを行うことができ、複雑な形状を有するワークの加工において、工具の切り換えを行う際の無駄時間の発生を抑制し、加工時間を短縮して加工コストを低減することが可能である。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000001960 【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
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| 【出願日】 |
平成13年5月16日(2001.5.16) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100086759 【弁理士】 【氏名又は名称】渡辺 喜平
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| 【公開番号】 |
特開2002−341913(P2002−341913A) |
| 【公開日】 |
平成14年11月29日(2002.11.29) |
| 【出願番号】 |
特願2001−146997(P2001−146997) |
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