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【発明の名称】 非線形光学効果を有する銅酸化物材料薄膜およびその製造方法およびその銅酸化物材料薄膜を用いた光導波路素子
【発明者】 【氏名】眞子 隆志

【氏名】川崎 雅司

【氏名】福村 知昭

【氏名】沖本 洋一

【氏名】和泉 真

【氏名】五神 真

【氏名】島野 亮

【氏名】十倉 好紀

【要約】 【課題】良好な非線形光学効果を示す銅酸化物薄膜およびその製造方法および導波路光スイッチ素子を提供することにある。

【解決手段】K2NiF4構造を有し、その基板方位(100)面を表面とするように切断、研磨された酸化物基板上にA2CuO3(Aは、少なくとも1種類のアルカリ土類金属)なる組成の非線形光学効果を有する銅酸化物薄膜を作成する際に、銅酸化物と格子整合し、K2NiF4構造を持つ酸化物薄膜を、中間層としてあらかじめ基板上に堆積させ、しかる後に、銅酸化物薄膜を堆積することにより、A2CuO3中の銅−酸素からなる一次元鎖の方向を、一方向に揃えたので、単一配向を有し良好な光学特性を有した銅酸化物材料薄膜を得ることができ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 K2NiF4構造を有し、その基板方位(100)面を表面とするように切断、研磨された酸化物基板上にA2CuO3(Aは、少なくとも1種類のアルカリ土類金属(Mg、Ca、Sr、Ba))なる組成の非線形光学効果を有する銅酸化物薄膜を作成する際に、銅酸化物と格子整合し、K2NiF4構造を持つ酸化物薄膜を、中間層としてあらかじめ基板上に堆積させ、しかる後に、銅酸化物薄膜を堆積することにより、A2CuO3中の銅−酸素からなる一次元鎖の方向を、一方向に揃えたことを特徴とする非線形光学効果を有する銅酸化物材料薄膜。
【請求項2】 前記酸化物基板は、LaSrAlO4であり、中間層として(Ca1-xSrx2(Ti1-yZry)O4(ここで、0≦x,y≦1)を用いたことにより、A2CuO3中の銅−酸素一次元鎖を薄膜面内に揃えたことを特徴とする請求項1に記載の非線形光学効果を有する銅酸化物材料薄膜。
【請求項3】 前記酸化物基板は、LaSrAlO4であり、中間層としてSr2TiO4を、銅酸化物層としてSr2CuO3を用いることにより、Sr2CuO3中の銅−酸素一次元鎖を薄膜面内に揃えたことを特徴とする請求項1に記載の非線形光学効果を有する銅酸化物材料薄膜。
【請求項4】 K2NiF4構造を有する酸化物基板の基板方位(100)面を表面とするように切断、研磨する工程と、前記酸化物基板上にA2CuO3(Aは、少なくとも1種類のアルカリ土類金属(Mg、Ca、Sr、Ba))なる組成の非線形光学効果を有する銅酸化物薄膜を作成する工程とを備え、前記銅酸化物薄膜を作成する工程において、銅酸化物と格子整合し、K2NiF4構造を持つ酸化物薄膜を、中間層としてあらかじめ基板上に堆積させ、しかる後に、銅酸化物薄膜を堆積することにより、A2CuO3中の銅−酸素からなる一次元鎖の方向を、一方向に揃えたことを特徴とする非線形光学効果を有する銅酸化物材料薄膜の製造方法。
【請求項5】 前記酸化物基板は、LaSrAlO4であり、中間層として(Ca1-xSrx2(Ti1-yZry)O4(ここで、0≦x,y≦1)を用いたことにより、A2CuO3中の銅−酸素一次元鎖を薄膜面内に揃えたことを特徴とする請求項4に記載の非線形光学効果を有する銅酸化物材料薄膜の製造方法。
【請求項6】 前記酸化物基板は、LaSrAlO4であり、中間層としてSr2TiO4を、銅酸化物層としてSr2CuO3を用いることにより、Sr2CuO3中の銅−酸素一次元鎖を薄膜面内に揃えたことを特徴とする請求項4に記載の非線形光学効果を有する銅酸化物材料薄膜の製造方法。
【請求項7】 K2NiF4構造を有し、その基板方位(100)面を表面とするように切断、研磨された酸化物基板上にA2CuO3(Aは、少なくとも1種類のアルカリ土類金属)なる組成の非線形光学効果を有する銅酸化物薄膜を作成する際に、銅酸化物と格子整合し、K2NiF4構造を持つ酸化物薄膜を、中間層としてあらかじめ基板上に堆積させ、しかる後に、銅酸化物薄膜を堆積することにより、A2CuO3中の銅−酸素からなる一次元鎖の方向を一方向に揃えると共に、前記A2CuO3薄膜を成長させる際に用いた中間体、もしくは中間層に使用される材料と同じ組成を有し、A2CuO3薄膜の上に成膜された酸化物層を導波層として使用することを特徴とする光導波路素子。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、非線形光学効果を有する銅酸化物材料薄膜、その製造方法、その銅酸化物材料薄膜を用いた光導波路素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】次世代の大容量高速光通信を実現する為に、求められる要素技術の一つとして高速で大きな光非線形性を有する材料の開発がある。これまで知られている非線形光学材料についていえば、高速応答性と非線形感受率(χ)の大きさの間には相反関係があるが、もし、大きな非線形感受率と高速応答性を兼ね備える材料が得られるならば、たとえば、ポンプ−プローブ型の超高速全光型スイッチング素子のような応用も現実的なものとなるであろう。こうした中で、最近になってNature誌 405巻929ページならびに、Physical Review Letters誌 85巻 2204ページなどでSr2CuO3における大きく速い3次非線形光学効果報告がなされた。この材料の3次非線形感受率χ(3)は、10-9-10-8esu程度と、これまでに知られていた非線形光学材料の中でも最大級のものであるうえ、実験で示されたピコ秒領域での高速応答性や、酸化物であるがゆえの物質の安定性などの点で、従来材料よりもはるかに応用に近いと考える事が出来る。
【0003】上記報告例はいずれも、Sr2CuO3単結晶試料を用いた測定であるが、これらの材料を実際の光学デバイスに応用する為には、その薄膜試料を得る必要がある。ここで注意する必要があるのは、Sr2CuO3の非線形光学特性には大きな異方性があるという点である。Sr2CuO3は図1に示すように、ペロブスカイト類縁構造の一種であるK2NiF4型構造(以下では2-1-4構造と略す)から、酸素を欠損させた構造(以下ではこの構造を2-1-3構造と略す)を持っている。図から明らかなように、この構造においては、銅と酸素からなる菱形が、頂点である酸素イオンを共有しながら、図中でb軸と記した方向に一次元的に連なっており、これと同じ菱形の列が、図中でc軸と示した方向に等間隔で並んでいる。すべての菱形の中心には銅イオンがあることを考えると、この構造は銅と酸素からなる一次元鎖を有する構造である事が分かる。また、図中でa軸と示した方向には、この菱形の列が、c軸方向に半周期だけずらした形で並んでいることから、この構造中のすべての銅-酸素鎖は完全に一つの方向に並んでいる事がわかる。前述の非線形光学効果は入射光の電界が、この銅-酸素で作られる一次元鎖に平行な時にのみ起こる。従って、高効率な非線形光学効果素子に用いられる薄膜においては、光学的損失が少ないことのみならず、銅-酸素の一次元鎖が完全に一方向に揃っている完全配向性が求められることになる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、以上のように構成された従来のSr2CuO3単結晶においては、2-1-3構造のSr2CuO3ならびにCa2CuO3薄膜を銅-酸素一次元鎖の方向を揃えながら成長させようとする際に、最も容易に考えられる方策は、大型で良質な単結晶の入手が容易な「2-1-4構造を持つ酸化物」を基板として用いることである。図1からも明らかなように、2-1-3構造と2-1-4構造の両者で、金属イオンの配列は同一であり、その違いは、2-1-3構造において酸素欠損が周期配列している点だけである。従って (1 0 0)面を表面とするように切断/研磨された(以下では(1 0 0)基板と略す) 2-1-4型基板上に薄膜を作成すれば、目的とする配向性を持つ薄膜を得られる可能性がある。
【0005】実際に、基板材料として2-1-4型構造を持つLaSrAlO4用い、銅酸化物薄膜としてCa2CuO3を用いる組み合わせにおいては、基板のc軸と薄膜のa軸の方向を一致させることができ、同時に基板の面内a軸と薄膜のb軸をも一致させることができた。これは、b軸方向が銅‐酸素の一次元鎖の方向である事を考えると、Ca2CuO3に関しては、銅‐酸素一次元鎖を薄膜面内の一方向にすべて揃える事が出来たことを意味している。しかし、同様な実験をSr2CuO3について行うと、基板のc軸と薄膜のa軸の方向は完全に一致するが、薄膜のb軸が膜面内に向いた結晶粒と膜面に垂直に向いた結晶粒の2種類の結晶粒の存在がX線回折などで確認されている。これは、基板であるLaSrAlO4のa軸長とCa2CuO3のb軸長の不整合は1%以下と極めて小さいが、Sr2CuO3のb, c軸長とはそれぞれ、+4%, −7%の大きな不整合があることが原因であると考えられる。
【0006】もし、Ca2CuO3に対するLaSrAlO4のように、Sr2CuO3と格子整合の良い単結晶基板を得ることができるならば、Ca2CuO3の場合と同様な薄膜の結晶方位制御が可能であることが期待できる。しかし、どのような元素の組み合わせでも良質なバルク単結晶が得られるわけではないこと、光学デバイス応用を考えると通信波長での透明性も基板に要求される可能性が高いことなどのため、そのような基板を用意することが必ずしも容易とは限らない。この発明は上記実情に鑑み提案されたもので、2-1-4構造基板上に2-1-3構造薄膜を作製する際に、そのままでは、単一配向成長が成長が難しいLaSrAlO4上のSr2CuO3のような場合においても、単一配向薄膜を有する銅酸化物材料薄膜および単一配向薄膜を作成する方法を提供する事ことを目的とする。また、このようにして得られた配向性の高い材料を用いれば、高速な光スイッチにも利用できる光導波路素子を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、K2NiF4構造を有し、その基板方位(1 0 0)面を表面とするように切断、研磨された酸化物基板上にA2CuO3(Aは、少なくとも1種類のアルカリ土類金属(Mg、Ca、Sr、Ba))なる組成の非線形光学効果を有する銅酸化物薄膜を作成する際に、銅酸化物と格子整合し、K2NiF4構造を持つ酸化物薄膜を、中間層としてあらかじめ基板上に堆積させ、しかる後に、銅酸化物薄膜を堆積することにより、A2CuO3中の銅−酸素からなる一次元鎖の方向を、一方向に揃えたことを特徴としている。以上の構成により、単一配向を有する銅酸化物材料薄膜を得ることができる。
【0008】また、請求項2に記載の発明における酸化物基板は、LaSrAlO4であり、中間層として(Ca1-xSrx2(Ti1-yZry)O4(ここで、0≦x,y≦1)を用いたことにより、A2CuO3中の銅−酸素一次元鎖を薄膜面内に揃えたことを特徴としている。以上の構成により、A2CuO3中の銅−酸素一次元鎖を薄膜面内の一方向にすべて揃えることができる。
【0009】また、請求項3に記載の発明における酸化物基板は、LaSrAlO4であり、中間層としてSr2TiO4を、銅酸化物層としてSr2CuO3を用いることにより、Sr2CuO3中の銅−酸素一次元鎖を薄膜面内に揃えたことを特徴としている。以上の構成により、Sr2CuO3中の銅−酸素一次元鎖を薄膜面内の一方向にすべて揃えることができる。
【0010】また、請求項4に記載の発明は、K2NiF4構造を有する酸化物基板の基板方位(1 0 0)面を表面とするように切断、研磨する工程と、前記酸化物基板上にA2CuO3(Aは、少なくとも1種類のアルカリ土類金属(Mg、Ca、Sr、Ba))なる組成の非線形光学効果を有する銅酸化物薄膜を作成する工程とを備え、前記銅酸化物薄膜を作成する工程において、銅酸化物と格子整合し、K2NiF4構造を持つ酸化物薄膜を、中間層としてあらかじめ基板上に堆積させ、しかる後に、銅酸化物薄膜を堆積することにより、A2CuO3中の銅−酸素からなる一次元鎖の方向を、一方向に揃えたことを特徴としている。以上の構成により、単一配向を有する銅酸化物材料薄膜を製造することができる。
【0011】また、請求項5に記載の発明における酸化物基板は、LaSrAlO4であり、中間層として(Ca1-xSrx2(Ti1-yZry)O4(ここで、0≦x,y≦1)を用いたことにより、A2CuO3中の銅−酸素一次元鎖を薄膜面内に揃えたことを特徴としている。以上の構成により、単一配向を有する銅酸化物材料薄膜を製造することができる。
【0012】また、請求項6に記載の発明における酸化物基板は、LaSrAlO4であり、中間層としてSr2TiO4を、銅酸化物層としてSr2CuO3を用いることにより、Sr2CuO3中の銅−酸素一次元鎖を薄膜面内に揃えたことを特徴としている。以上の構成により、単一配向を有する銅酸化物材料薄膜を製造することができる。
【0013】また、請求項7に記載の発明は、K2NiF4構造を有し、その基板方位(100)面を表面とするように切断、研磨された酸化物基板上にA2CuO3(Aは、少なくとも1種類のアルカリ土類金属)なる組成の非線形光学効果を有する銅酸化物薄膜を作成する際に、銅酸化物と格子整合し、K2NiF4構造を持つ酸化物薄膜を、中間層としてあらかじめ基板上に堆積させ、しかる後に、銅酸化物薄膜を堆積することにより、A2CuO3中の銅−酸素からなる一次元鎖の方向を一方向に揃えると共に、前記A2CuO3薄膜を成長させる際に用いた中間体、もしくは中間層に使用される材料と同じ組成を有し、A2CuO3薄膜の上に成膜された酸化物層を導波層として使用することを特徴としている。以上の構成の導波構造の採用によりA2CuO3の非線形光学効果をより効果的に活用することができ、高速でS/N比の大きい光スイッチを得ることができる。
【0014】
【実施例】以下、実施例を示す図面に基づいて本発明を詳細に説明する。本発明は、図1に示すように2-1-4 構造を持つ(1 0 0)基板上に2-1-3 構造の銅酸化物薄膜を作成する際に、2-1-4 構造を持ち、かつ銅酸化物薄膜と格子整合する中間層を、銅薄膜を成膜する前にあらかじめ成膜しておくことにより、銅-酸素の一次元鎖を完全に一方向にそろえることができることを見出したものである。図1は、基板および中間層材料として用いられる2-1-4 型およびSr2CuO3を代表とする2-1-3型の結晶構造を示す斜視図である。図において、1はランタン(La)または、ストロンチウム(Sr)原子、2は、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、または銅(Cu)原子、3は酸素(O)原子をそれぞれ示している。ここで、矢印R方向は、銅−酸素一次元鎖の方向を示している。
【0015】このような効果が得られる銅酸化物材料、中間層、基板の組み合わせとしては、たとえば銅酸化物材料としてSr2CuO3を、中間層としてSr2TiO4を、基板材料としてLaSrAlO4を用いる組み合わせが利用できる。また、この組み合わせのみならず、光学特性等からの要請により銅酸化物材料としてSr2CuO3以外のA2CuO3 (ただし、Aは少なくとも一種類のアルカリ土類金属)で、基板材料との格子整合性が悪いものを用いなければならない場合にも、それと格子整合するような、A2TiO4(Aは、少なくとも1種類のアルカリ土類金属)を保護層に用いることにより、同様に本発明を適用することができる。
【0016】また、中間層として用いる材料の屈折率が同じ波長での基板材料の屈折率よりも大きい場合には、中間層自体、あるいはA2CuO3層の上に成長した中間層と同じ材質をもつ薄膜を導波路型素子の導波層として用いることができる。導波構造の採用によりA2CuO3の非線形光学効果をより効果的に活用することができ、高速でS/N比の大きい光スイッチング素子を得ることができる。
【0017】図2は、銅酸化物Sr2CuO3と基板材料LaSrAlO4および中間層Sr2TiO4の結晶単位格子を模式的に示すものである。図中において、右側の図のみ、銅と酸素からなる菱形と正八面体を示している。Sr2CuO3中の銅-酸素一次元鎖方向であるb軸長は基板であるLaSrAlO4のa軸長よりも4%大きいのに対し、それに直交するc軸長は基板のa軸長よりも7%短い。エピタキシャル成長においては、基板と膜の金属イオンの配置が同等になるのは、図に示すように、薄膜成長方向がc軸になる場合とa軸になる場合しか考えられないが、いずれの場合の場合にも基板と薄膜の間の格子不整合が大きいため、どちらかが特に優勢になることは無く、結果として両方の配向を持った結晶粒が成長しうる。実際に、図3(1)に示す、作成した薄膜のX線回折スペクトルにも2種類の異なる配向を持つ結晶の存在が確認できる。
【0018】一方、図2からわかるように、Sr2CuO3のc軸長は、中間層であるSr2TiO4のa軸長よりも10%短いのに対し、b軸長は0.5%長いだけである。このため、Sr2CuO3がc軸方向に成長する右側の場合のほうが、圧倒的に格子不整合による損失が少ないことが期待できる。図3は、Sr2CuO3薄膜のX線回折ペクトルを示すもので、図3(1)は中間層Sr2TiO4が無い場合、図3(2)は、中間層が存在する場合を示している。図3(2)の薄膜のX線回折スペクトルは、この期待通り、薄膜が単一配向化していることを示している。このようにして単一配向化した薄膜の光吸収スペクトルは、単結晶試料の光吸収スペクトルとほぼ一致し、本発明により極めて高品質な光学薄膜が得られることがわかる。
【0019】こうして得られた薄膜を用いれば導波路構造を持った光スイッチ素子を簡単に作成することができる。そのような素子構造の一例を図4に示す。LaSrAlO4基板10上に中間層としてSr2TiO4薄膜11を、銅酸化物層としてSr2CuO3薄膜12を作成したのち、その上に導波層用のSr2TiO4薄膜13を作成する。Sr2TiO4の屈折率は基板であるLaSrAlO4よりも大きいため、導波層の厚さを適当なものとすることにより導波路を形成することができる。図4は、構成可能な2種類の導波構造を示すものである。図4(a)は、A2CuO3の上部に導波層として中間層と同じ材料被膜を成長させた上導波型であり、図4(b)は中間層を厚くすることにより、中間層自体を導波層13とする下導波型である。
【0020】なお、この場合、A2CuO3層の厚さは導波する光の波長に比べて十分薄くすれば、導波の条件に及ぼすA2CuO3層の屈折率の影響は無視できる。図5は、本発明の導波路素子を全光型スイッチに応用した場合の構成を示す説明図である。ここで、上部導波層であるSr2TiO4に信号光21を導波させながら、制御光20のパルスをON/OFFすることにより、出射光強度を変調する。今、図5のように、信号光21を導波モードで導波させた状態で、同時に超短パルス制御光20を導波路に入射すると、A2CuO3層で信号光に非線形光吸収が誘起され、導波路から出てくる信号光の強度が小さくなる。すなわち制御光の有無により信号光の強度を超高速で変調する全光型スイッチを形成できる。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態に従って具体的に説明する。本発明の第1の実施の形態において、基板方位 (1 0 0)方向に切断/研磨された、LaSrAlO4基板10上にレーザーアブレーション法により中間層であるSr2TiO4薄膜11を約100A堆積させた。具体的には、まず、Sr2TiO4なる組成を持つ酸化物多結晶体を直径20 mm、厚さ5 mmのペレットに成形しターゲットとした。このターゲットを真空チャンバー内に設置した後、集光したKrFパルスエキシマレーザを照射し、ターゲットに対向しておかれた基板10にSr2TiO4薄膜11を成長させた。
【0022】この時の基板の温度は700℃とし、チャンバー内の酸素圧は50 mTorrとした。またターゲット表面上でのエキシマレーザのエネルギー密度は1パルスあたり1000 mJ/cm2、パルス繰り返し周期は5 Hzとした。次に、ターゲットをSr2CuO3に交換し、同様な手続きで薄膜12を成長させた。成長条件はSr2TiO4の場合と同一とし、膜厚は約500〜1000 Aとなるようにレーザーパルス数を調節した。
【0023】作成した薄膜について、4軸 X線回折計によるX線回折測定と光吸収スペクトル測定を行った。光吸収スペクトルは、通常の紫外可視域の吸光光度計により測定した。X線回折の測定の結果から、得られたSr2CuO3薄膜12は完全な単一配向であることが確認できた。図6には、作成した薄膜の光吸収スペクトルを比較のための単結晶試料の光吸収スペクトルを併せて示す。図6から判る通り、薄膜試料の吸収スペクトルは単結晶のものとほぼ一致しており、単結晶に近い高品質な光学結晶薄膜が得られたことがわかる。
【0024】第2の実施の形態は、第1の実施の形態と同様にして、LaSrAlO4 (1 0 0)基板10上に、(Sr1-xCax)2CuO3 (xは0.2, 0.4, 0.6)の薄膜を作成した。xが増大するごとに、単位格子サイズが縮小するため、中間層となる物質も第1の実施の形態のSr2TiO4のSrの一部をCaで置換した (Sr1-yCay)2TiO4とし、目的の薄膜と格子整合するように中間層のyを決定した。第1の実施の形態の場合と同様なX線回折、光吸収測定の結果、これらの膜も単一配向で、良好な光吸収特性をもつことが示された。
【0025】第3の実施の形態は、第2の実施の形態と同様にして、LaSrAlO4 (1 0 0)基板10上に、(Sr1-xBax)2CuO3 (x は 0.2, 0.4, 0.6)の薄膜を作成した。xが増大するごとに、単位格子サイズが増大するため、中間層となる物質も第1の実施の形態のSr2TiO4のTiの一部をZrで置換した Sr2(Ti1-yZry)O4とし、目的の薄膜と格子整合するように中間層のyを決定した。第1の実施の形態の場合と同様なX線回折、光吸収測定の結果、これらの膜も単一配向で、良好な光吸収特性をもつことが示された。
【0026】第4の実施の形態は、第1の実施の形態と同様にして、LaSrAlO4 (1 0 0)基板10上にSr2TiO4を中間層11として作成し、その上にSr2CuO3 薄膜12を作成する。ここで、中間層を導波層として用いるためにSr2TiO4中間層13の厚さを1〜2μmと第2の実施の形態の場合よりも厚くする。次に、図5に示すようにTiO2プリズムを用いて、信号光パルスを導波層内に導入する。信号光はパルス幅200fsec、波長は通信波長1.5μmで、強度は1W/cm2とした。信号光と同様に制御光(モードロックチタンサファイアレーザからの出力、パルス幅200fs、強度1GW/cm2)を導波路に結合する。信号光が導波路内を伝播する過程で、制御光パルスが照射されているとSr2CuO3薄膜内での非線形光学効果によって信号光に大きな非線形吸収が生じる。その結果、制御光パルスが存在するときのみ、信号光は低透過となる。
【0027】この制御光パルスによる信号光強度変調を観測したのが図7である。ここでは、制御光20をパルス列とし、信号光21のパルスとの遅延時間を掃引しながら、信号光パルスの強度を観測している。制御光20がない状態では信号光21は高透過なっており、これをスイッチのオン状態とみなすことができる。制御光パルスの時刻が信号光パルスと一致したときのみ、信号光強度が最大80%減少し、低透過すなわちスイッチオフの状態となる。強度変化は1 ps程度の時間で完全に回復しており、全光型の超高速光スイッチングが実現されているのがわかる。この例では、図4(b)で下導波型として示したように、中間層として用いたSr2TiO4を、導波路構造の導波層として用いている。第1の実施の形態で薄い中間層の上に作成したSr2CuO3の上に、もう一度Sr2TiO4薄膜を堆積し、この上側のSr2TiO4を導波層として用いる上導波型の構成を用いることもできる。
【0028】
【発明の効果】この発明は上記した構成からなるので、以下に説明するような効果を奏することができる。請求項1に記載の発明では、K2NiF4構造を有し、その基板方位(100)面を表面とするように切断、研磨された酸化物基板上にA2CuO3(Aは、少なくとも1種類のアルカリ土類金属)なる組成の非線形光学効果を有する銅酸化物薄膜を作成する際に、銅酸化物と格子整合し、K2NiF4構造を持つ酸化物薄膜を、中間層としてあらかじめ基板上に堆積させ、しかる後に、銅酸化物薄膜を堆積することにより、A2CuO3中の銅−酸素からなる一次元鎖の方向を、一方向に揃えたので、単一配向を有し、単一結晶と同等な光学特性を有する非線形光学効果を有する銅酸化物材料薄膜を得ることができる。
【0029】また、請求項4に記載の発明では、K2NiF4構造を有する酸化物基板の基板方位(100)面を表面とするように切断、研磨する工程と、前記酸化物基板上にA2CuO3(Aは、少なくとも1種類のアルカリ土類金属)なる組成の非線形光学効果を有する銅酸化物薄膜を作成する工程とを備え、前記銅酸化物薄膜を作成する工程において、銅酸化物と格子整合し、K2NiF4構造を持つ酸化物薄膜を、中間層としてあらかじめ基板上に堆積させ、しかる後に、銅酸化物薄膜を堆積することにより、A2CuO3中の銅−酸素からなる一次元鎖の方向を、一方向に揃えたので、極めて高品質の非線形光学効果を有する銅酸化物材料薄膜を製造することができる。
【0030】また、請求項7に記載の発明では、K2NiF4構造を有し、その基板方位(100)面を表面とするように切断、研磨された酸化物基板上にA2CuO3(Aは、少なくとも1種類のアルカリ土類金属)なる組成の非線形光学効果を有する銅酸化物薄膜を作成する際に、銅酸化物と格子整合し、K2NiF4構造を持つ酸化物薄膜を、中間層としてあらかじめ基板上に堆積させ、しかる後に、銅酸化物薄膜を堆積することにより、A2CuO3中の銅−酸素からなる一次元鎖の方向を一方向に揃えると共に、前記A2CuO3薄膜を成長させる際に用いた中間体、もしくは中間層に使用される材料と同じ組成を有し、A2CuO3薄膜の上に成膜された酸化物層を導波層として使用するので、制御光の有無によって信号光の強度を超高速で変調する全光型スイッチを得ることができる。
【出願人】 【識別番号】594182580
【氏名又は名称】技術研究組合オングストロームテクノロジ研究機構
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
【出願日】 平成13年3月26日(2001.3.26)
【代理人】 【識別番号】100082669
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 賢三 (外2名)
【公開番号】 特開2002−287186(P2002−287186A)
【公開日】 平成14年10月3日(2002.10.3)
【出願番号】 特願2001−86956(P2001−86956)