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【発明の名称】 アミノ酸分析方法および装置
【発明者】 【氏名】藤井 芳雄

【氏名】伊藤 正人

【氏名】甲田 公良

【要約】 【課題】53成分を一斉に分析可能なアミノ酸分析方法を提供する。

【解決手段】一つまたは複数種が混合された緩衝液に試料を導入し、分離カラムを通過させて、生体液アミノ酸類縁物質を検出対象とした生体液分析を行うアミノ酸分析方法において、前記試料が導入される緩衝液のリチウムイオン濃度を、少なくともβ−アミノイソ酪酸(β−AiBA)が溶出される時間まで0.3mol/L以下とすることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】一つまたは複数種が混合された緩衝液に試料を導入し、分離カラムを通過させて、生体液アミノ酸類縁物質を検出対象とした生体液分析を行うアミノ酸分析方法において、前記試料が導入される緩衝液のリチウムイオン濃度を、少なくともβ−アミノイソ酪酸(β−AiBA)が溶出される時間まで0.3mol/L以下とすることを特徴とするアミノ酸分析方法。
【請求項2】請求項1のアミノ酸分析方法において、前記β−アミノイソ酪酸(β−AiBA)が溶出される時間まで、前記緩衝液のpHを3.5 以下とすることを特徴とするアミノ酸分析方法。
【請求項3】請求項1のアミノ酸分析方法において、γ−アミノ−n−酪酸(γ−ABA)からハイドロオキシリジン(Hylys)までの溶出時間で、前記緩衝液のリチウムイオン濃度とpHをグラジェントに上昇させることを特徴とするアミノ酸分析方法。
【請求項4】請求項3のアミノ酸分析方法において、前記リチウムイオン濃度は、0.44mol/Lから1.00mol/Lにかけて、前記pHは、3.66から4.1にかけて上昇させることを特徴とするアミノ酸分析方法。
【請求項5】請求項1のアミノ酸分析方法において、ハイドロオキシリジン(Hylys)からヒスチジン(His)までの溶出時間で、前記緩衝液のリチウムイオン濃度を0.81mol/L、pHを4.00 とすることを特徴とするアミノ酸分析方法。
【請求項6】請求項5のアミノ酸分析方法において、ヒスチジン(His)溶出後は、前記緩衝液のリチウムイオン濃度を1.00mol/L、pHを4.1とすることを特徴とするアミノ酸分析方法。
【請求項7】請求項1のアミノ酸分析方法において、バリン(val)からホモシトルリン(HCit)の溶出時間で、カラム温度を70℃とすることを特徴とするアミノ酸分析方法。
【請求項8】請求項1のアミノ酸分析方法において、チロシン(Tyr)の溶出時間から、カラム温度を70℃とすることを特徴とするアミノ酸分析方法。
【請求項9】請求項1のアミノ酸分析方法において、システイン−ホモシステイン ミクスド ジスルフィド(Cys−HCys)からトリプトファン(Trp)の溶出時間で、カラム温度を63℃とすることを特徴とするアミノ酸分析方法。
【請求項10】一つまたは複数種が混合された緩衝液を用いて、ホスホセリン(P−Ser),タウリン(Tau),ホスホエタノールアミン(PEA),ウレア(Urea),アスパラギン酸(Asp),ハイドロオキシプロリン(Hypro),メチオニンスルホキシド(MetSOX),スレオニン(Thr),セリン(Ser),アスパラギン(AspNH2),グルタミン酸(Glu),グルタミン(GluNH2),サルコシン(Sar),α−アミノ アデピン酸(α−AAA),プロリン(Pro),グリシン(Gly),アラニン(Ala),シトルリン(Cit),α−アミノ−n−酪酸(α−ABA),バリン(Val),ピペコリン酸(Pipeco),ホモシステイン(HCysH),メチオニン(Met),ホモシトルリン(HCit),アローイソロイシン(Allo−Ile),シスチン(Cys),サッカロピン(Saccha),イソロイシン(Ile),ロイシン(Leu),チロシン(Tyr),シスタチオニン(Cysthi),フェニルアラニン(Phe),アルギニノコハク酸(ASA),システイン−ホモシステイン ミクスド ジスルフィド(Cys−Hcys),β−アラニン(β−Ala),アミノ レブリン酸(ALevA),β−アミノイソ酪酸(β−AiBA),γ−アミノ−n−酪酸(γ−ABA),ホモシスチン(HCys),アルギニノコハク酸 アンヒドライド 1(ASA−Anhy1),エタノールアミン(EOHNH2),トリプトファン(Trp),アンモニア(NH3),ハイドロオキシリジン(Hylys),アミノエチルシステイン(AEC),オルニチン(Orn),リジン(Lys),1−メチル ヒスチジン(1Mehis),ヒスチジン(His),3−メチル ヒスチジン(3Mehis),アンセリン(Ans),カルノシン(Car),アルギニン(Arg)の各成分を分析対象成分として分析を行うアミノ酸分析方法であって、前記緩衝液のリチウムイオン濃度を、少なくとも前記β−アミノイソ酪酸(β−AiBA)が溶出される時間まで0.3mol/L以下とし、ハイドロオキシリジン(Hylys)からヒスチジン(His)までの溶出時間で、0.81mol/Lに保持することを特徴とするアミノ酸分析方法。
【請求項11】複数の緩衝液を各緩衝液毎に設けられたバルブを調整することで混合し、当該混合された緩衝液に試料を導入し、分離カラムを通過させて、生体液アミノ酸類縁物質を検出対象とした生体液分析を行うアミノ酸分析装置において、前記混合後の緩衝液のリチウムイオン濃度が、少なくとも前記β−アミノイソ酪酸(β−AiBA)が溶出される時間まで0.3mol/L以下であり、ハイドロオキシリジン(Hylys)からヒスチジン(His)までの溶出時間で、0.81mol/Lに保持されるように、前記バルブを制御して緩衝液の流量調整を行うことを特徴とするアミノ酸分析装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、臨床分野に好適なアミノ酸分析方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】アミノ酸分析計は大別して、蛋白加水分解物アミノ酸約20成分を対象とした標準分析法と、生体液アミノ酸類縁物質約40成分を対象とした生体液分析法を行うものに分類できる。ここでは生体液分析法、すなわち、血清や尿,髄液などの生体液を分析し、これを臨床的に利用して、病気の診断や、治療に役立てることができる分析法について述べる。
【0003】生体液分析法を示した例としては、特開昭53−60291号公報,特開昭59−10849号公報,特開平4−194570号公報,特開平9−80037号公報等がある。また、報告文として、Journal of Chromatograhy,224 ; 315-321(1981)Resolution of 52 ninhydrin-positive compounds with a High-speed amino acid analyzer」、Clinical Chemistry 43 ; 8,1421−1428(1997)Amino Acid determination inbiological fluids by automated ion-exchangechromatography:performance of Hitachi L-8500A」がある。
【0004】これら、従来の生体液分析法は、複数の緩衝液を混合し、混合した緩衝液に試料を添加し、分離カラムを通過させて検出するという一連の分析手法は変わるところはないが、分離カラムや緩衝液の流速などを工夫することにより、時代と共に分析時間が早くなり、通常は110分,高速の場合でも90−60分で分析できるようになった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】生体液分析法では、現在上記に示したように約40成分(厳密には、表1に示した*印の付されていない41成分)の分析を一斉に行うことができる。ところが最近、これまで分析対象となっていなかったような成分が特定の病気を知るために有効であることが発見され、上記41成分に加え、それらの成分を合わせて分析したいという要求が高まりつつある。具体的には、表1の*印の付された12成分が従来にない新たな分析対象成分である。当然、これら新たな12成分は、既存の41成分と同時に分析でき、且つそれぞれのピークが分離できることが望ましい。即ち、53成分のアミノ酸を一斉同時分析しようという要求が生じつつある。

【0006】

【0007】ところがこれらの追加成分のほとんどは、特定の時間帯に集中して溶出されるので、従来からある41成分用の分析法では、既存の何れかの成分の溶出時間と重複してしまい、ほとんど分離ができない状態にあった。
【0008】本発明の目的は、新たに着目されるようになった12成分を含む全53成分のアミノ酸を一斉に分析でき、且つ出来るだけ効率良く短い時間で分析を行うことが出来るアミノ酸分析方法および装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らが、分離実験を重ねたところ、これら追加成分を含めた53成分を一斉に分析可能な分析法を見出した。
【0010】本発明の特徴は、緩衝液のリチウムイオン濃度を、少なくともβ−アミノイソ酪酸(β−AiBA)が溶出される時間まで0.3mol/L以下とすることである。
【0011】また、好ましくは、β−アミノイソ酪酸(β−AiBA)が溶出される時間まで、前記緩衝液のpHを3.5以下とすることである。
【0012】更に好ましくは、γ−アミノ−n−酪酸(γ−ABA)からハイドロオキシリジン(Hylys)までの溶出時間で、リチウムイオン濃度とpHをグラジェントに上昇させることである。
【0013】更に好ましくは、ハイドロオキシリジン(Hylys)からヒスチジン(His)までの溶出時間で、0.81mol/Lに保持することである。
【0014】上記に示すように、本発明においては、緩衝液の切替え時間,混合比,グラジェント勾配などの分離改善要因を組み合わせることで、部分的なアミノ酸の分離バランスをよくすることが出来、総合的に53成分のアミノ酸を分離することができた。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、従来実施例と比較しながら本発明の実施例の詳細を述べる。
【0016】図2は本発明のアミノ酸分析計の装置構成及び流路説明図である。1〜4はそれぞれ第1〜第4緩衝液、5はカラム再生液である。この中から電磁弁シリーズ6によって何れかの緩衝液が選ばれ、緩衝液ポンプ7によってアンモニアフィルタカラム8,オートサンプラ9を経由して分離カラム10に送られる。オートサンプラ9によって導入されたアミノ酸試料は分離カラム10で分離される。ここで分離した各アミノ酸は、ニンヒドリンポンプ12によって送られてきたニンヒドリン試薬11とミキサ13で混合し、加熱された反応コイル14で反応する。反応によって発色したアミノ酸は検出器15で連続的に検知され、データ処理装置16によってクロマトグラム及びデータとして出力され、記録,保存される。
【0017】上記第1緩衝液1〜第4緩衝液4およびカラム再生液5としては、市販のL−8500−PF−KIT(三菱化学(株)製)を用いた(表2)。ニンヒドリン試薬11は市販のニンヒドリン試液L−8500セット(和光純薬工業(株)製)を用いた。分離カラム10にはパックドカラム4.6mmIDx60mm、充填剤としては、イオン交換樹脂2622SC(日立製作所製)を用いた。

【0018】次に本発明の分析プログラムを図3に示す。また、図3の緩衝液のグラジェント混合プログラムを図表化したものを図5(A)に示す。
【0019】ここで図3の分析プログラムについて説明する。「%B1−%B5」欄は、それぞれ第1緩衝液1〜カラム再生液5に相当する。時間0で、%B1−%B5の欄に100.0 とあるのは相当する電磁弁が100%開くという意味である。80と20は、相当する二つの電磁弁が時間比で80%と20%に開く、すなわち80%と20%に液が混合するという意味である。さらに時間と共に混合比を変えると、グラジェント混合が可能となる。図1の構成であれば、最大5液までグラジェントができる。
【0020】「温度」は、分離カラムの温度プログラムを示す。38とあるのは次の指定時間まで38℃一定を保つという意味である。
【0021】「流量1」は、緩衝液ポンプの流量、「流量2」はニンヒドリンポンプの流量である。
【0022】「%R1−%R3」欄は、ニンヒドリン試薬の混合比である。通常ニンヒドリン試薬は2液に分かれて市販されており、使用時にR1とR2は50%ずつ混合するようになっている。R3は蒸留水が設置してあり、分析終了時の洗浄などに使用する。
【0023】ここで、図4に従来行われていた分析プログラムを示す。また、図4の緩衝液のグラジェント混合プログラムを図表化したものを図5(B)に示す。
【0024】図5から分かるように、従来は基本的に緩衝液は段階的に切替えが行われていた。これに対して、本発明においては、全体の分析時間は長くなるものの、グラジェントを多用し、ゆっくりとした緩衝液の切替えを行うようにしている。
【0025】図1(A)に、図3の分析プログラムを使用して得られた、本発明の結果である分析クロマトグラムを示す。また比較のため、図1(B)に従来の図4の分析プログラムによるクラマトグラムを示す。どちらのクロマトグラムも表1に示すアミノ酸試料53成分を測定したものである。尚、図1(A)には各ピークに成分の略語が記載してあるが、表1にはアミノ酸の和文名,英文名のほかに、クロマトグラムで使用している略語を記載してあるので参照願いたい。また、図1(C)は、図1(A)のクロマトグラムと図1(B)のクロマトグラムのそれぞれ同じ成分のピークを線で結び表したものである。
【0026】図1から分かるように、図1(B)ではVal〜γ−ABAの成分の間に多くの成分が集中して、良く分離出来ていない。図1(B)のVal〜γ−ABA間に相当する部分の拡大を図6に示す。SacchaとCysや、TyrとCys−Hcysなどピークが重なっている成分が多く見られる。これに対して、図1(A)では各成分が良く分離されていることが分かる。
【0027】次に、図1(A)に示すように、53成分の一斉分析を可能にした本発明の分析プログラムの作成過程について述べる。
【0028】まず各成分のピーク分離をよくするための要因であるが、分離カラムを固定し、緩衝液の処方を表2に固定した場合、次の要因が考えられる。
【0029】1.Liイオン濃度の強さによるピーク位置の移動2.pHの強さによるピーク位置の移動3.カラム温度によるピーク位置の移動4.上記1.2.3.の組み合わせこのほかに、緩衝液ポンプの流速が考えられるがここでは述べない。なお、例えば通常緩衝液ポンプの流速を2倍にすると、ほぼ比例的に分析時間が1/2に変わることは、よく知られていることである。この場合、全体的に各ピーク間の分離が悪くなることも同時に知られていることである。
【0030】以上の要因に基づいて、分離改善する具体的手段としては、次の項目が考えられる。
【0031】a:緩衝液の一定の混合比またはグラジェント混合比を変える。
【0032】b:緩衝液の一定の混合比またはグラジェント混合比の切替え開始時間を変える。
【0033】c:緩衝液の一定の混合比またはグラジェント混合比の切替え終了時間を変える。
【0034】d:緩衝液の一定の混合比またはグラジェント混合比を3液以上にする。
【0035】e:カラム温度を変える。
【0036】f:カラム温度を切替える開始時間を変えるg:カラム温度を切替える終了時間を変えるh:上記a〜gの組み合わせ。
【0037】以上の手段を用いた具体的分離改善の実施例を図9〜図17を用いて説明する。
【0038】尚、分析プログラムの時間(緩衝液切替え時間,カラム温度切替え時間等)は、図2の電磁弁シリーズ6における時間を基準としているため、クロマトグラムに示された各成分が溶出した時間(保持時間)とは異なるものであるから、その点留意願いたい。分析プログラムの時間と保持時間は、緩衝液が電磁弁シリーズ6から検出器15に至るまでに相当する程度のタイムラグを有しており、具体的には、約5〜10分位のずれがある。
【0039】図9は、分析プログラムの87分〜109分の間で、緩衝液B3=100%の場合(B)と、三つの緩衝液をグラジェントにした場合(A)の分離の状態を示したものである。図9から緩衝液B2,B3,B4を3液グラジェントにした方が、γ−ABA〜Lys間の分離バランスが良くなることが分かる。特にASA−Anhy1とEOHNH2 の分離が良くなる。これは、リチウムイオン濃度とpHがB3のレベル(Li濃度:0.721mol/L,pH:3.6)で一定であるよりも、グラジェントに上昇させた方(Li濃度:0.441mol/L→1.00mol/L,pH:3.66→4.1)が良いことを示す。
【0040】図10は、上記図9の場合から観点を変えて、92分〜117分でB2〜B4の3液グラジェントにした場合(A)と、B3とB4の2液グラジェントにした場合(B)の状態を示す。図10から、2液グラジェント(B)よりも3液グラジェント(A)の方がASA−Anhy1とEOHNH2 の分離が良くなることが分かる。同時にTrpとNH3の分離も良くなる。これは、リチウムイオン濃度とpHの観点で見ると、(B)Li濃度:0.721mol/L→1.00mol/L,pH:3.6→4.1よりも、(A)Li濃度:0.441mol/L→1.00mol/L,pH:3.66→4.1のグラジェントの方が好ましいといえる。
【0041】したがって、上記図9の検討も合わせて考慮すると、γ−ABA〜Lysあたりにおいては、B2〜B4の3液グラジェントにする方法が最も良い分離バランスを得られることが分かる。本発明の分析プログラムでは、この結果を基に、92分〜117分までをB2〜B4の3液グラジェントとするようにしている。
【0042】図11は、45分から始まるB3のグラジェント勾配による分離改善の様子を示したものである。グラジェント勾配を25%(A)から10%(C)まで低くすると、Phe〜β−AiBA間の分離のバランスが良くなることが分かる。ここで、リチウムイオン濃度の変化を観ると、(C)が0.123→0.277mol/L、(B)が0.123→0.280mol/L、(A)が0.123→0.316mol/Lである。結果は、(B)の状態では各ピークが何とか分離しているが、(A)の状態ではまだ分離しきれていない。このことから、リチウムイオン濃度が0.30mol/L 以上であるとPhe〜β−AiBA間の分離バランスが悪く不適切といえる。従って、本発明の分析プログラムにおいては、(A)の状態を目標にし、B3については、45分から84分にかけて、10%のグラジェント勾配を有するように設定している。また、92分まで、84分時点の組成を変化させない様にしている。
【0043】図12は、緩衝液B4のグラジェント開始時間を86分〜90分で変化させた場合の様子を示す。図12に示されるように、緩衝液B4のグラジェント開始時間を遅くすると、γ−ABAとHcysが分離し、同時にEOHNH2 とTrpの分離が改善されることが分かる。従って、本発明の分析プログラムでは、92分からB4を切替えるようにしている。
【0044】図13は、117〜130分におけるB2とB4の混合比について検討したものである。図から分かるように、B4の比率を80%から75%に低くすると、AnsとCarの分離が改善されることが分かる。リチウムイオン濃度とpHで観ると、B4比率80%では、Li濃度:0.851mol/L,pH:4.02 であり、B4比率75%では、Li濃度:0.814mol/L、pH:4.00 である。よって、本発明の分析プログラムでは、117〜130分のB2とB4の混合比を1:3(B4比率75%)とするようにしている。
【0045】図14は、B4を100%の状態に切替える開始時刻を128分から135分に遅らせた場合について検討したものである。切替える時刻を遅くすると、AnsとCarの分離がよくなるが、Argの溶出時間が遅くなることを示している。したがって、本発明の分析プログラムでは、バランスを考慮して、B4を100%の状態に切替える開始時刻を130分からとしている。
【0046】上記は緩衝液の組成について検討したものであるが、カラム温度についての検討も行ったので図15〜図17に示す。尚、カラム温度の変化をグラフ化したものを図18に示す。図18において、実線(A)は、図3で示した本発明の分析プログラム、破線(B)は参考として示した図4の従来の分析プログラムである。
【0047】図15は、カラム温度によるMet〜Cysthi間の分離改善を試みたものである。カラム温度を70℃にする時間範囲を、分析プログラムにおいて45分〜50分の場合と、45分〜55分の場合で実験を行った。この結果、45分〜55分にすると、バランスの良い分離改善ができることが分かった。従って、本発明の分析プログラムでは、カラム温度を45分〜55分で70℃とするようにしている。
【0048】図16は、カラム温度切替え開始時間の変更によるPhe〜β−AiBA間の分離改善を試みたものである。カラム温度を70℃にする切替え開始時間を80分から70分に早めていくと、分離が改善されることが分かる。従って、本発明の分析プログラムにおいては、カラム温度70℃の切替え開始時間を73分で行うことを採用している。
【0049】図17は、85分〜110分間で、カラム温度を70℃〜60℃の範囲で変化させた場合の様子を示す。カラム温度が下がると、EOHNH2 とTrpの分離が改善されることが分かる。従って、本発明の分析プログラムでは、85分〜110分の時間帯においては、63℃を採用している。
【0050】以上、図9−図17に示した部分分離改善を組合わせることにより、図3及び図5(A)に示す本発明の分析プログラムが求められ、図1(A)の分離結果が実現する。
【0051】上記本発明の分析プログラムにおいては、複数の緩衝液を混合し、且つカラム温度を調整しているが、53成分のピークを上手く分離できた要因としては、前述したように、「Liイオン濃度の強さ」「pHの強さ」「カラム温度」が大きな要因である。そこで、図7,図8に分析プログラムに沿ったLiイオン濃度とpHの変化の様子を示す。
【0052】図7は、本発明と従来の分析プログラムにおけるLiイオン濃度の変化をグラフ化したものである。実線(A)は図3に示す本発明の分析プログラム、破線(B)は図4の従来の分析プログラムに対応する。このグラフから分かるように、(A)に示す本発明のプログラムは、(B)の従来のプログラムに比べて、Liイオン濃度の上昇が非常にゆっくりであり、且つ徐々に上昇するようになっている。
【0053】また図8は、図7と同様に(A)が本発明の図3の分析プログラム、(B)が図4の従来の分析プログラムに対応するものであり、pHについての変化を測定しグラフ化したものである。本発明の分析プログラムにおいては、pHもその上昇を大幅に抑えるようにしている。
【0054】ここで、本発明の分析プログラムについて、図9−図17に示した部分分離改善を基に、そのポイントを纏めると以下の様になる。1.γ−ABA〜Lys間の分離バランスを改善するためには、Li濃度を0.44mol/Lから1.00mol/Lに、pHを3.66から4.1 にグラジェントに上昇させる。本発明ではこれを3液グラジェントで実施する。また、この3液グラジェントを行う時間は、分析プログラムと保持時間のずれを考慮し、β−AiBAからHylysが溶出される時間(保持時間)で行うようにする。本発明の分析プログラムでは、87分〜109分の間となる。2.Phe〜β−AiBA間の分離バランスを改善するためには、Li濃度が0.30mol/L以下となるようにグラジェントさせる。具体的には、分析プログラムと保持時間のずれを考慮し、valからβ−AiBAが溶出される時間(保持時間)で緩衝液B3のグラジェントの勾配を10%に保ち、β−AiBA溶出時でLi濃度が0.30mol/L以下となるようにする。本発明の分析プログラムでは、45分〜92分間の動作となる。3.γ−ABAとHcys間の分離バランスを改善するためには、緩衝液B4のグラジェント開始時間を(分析プログラムと保持時間のずれを考慮し、)β−AiBAが溶出される時間(保持時間)からとする。本発明の分析プログラムでは、92分からとなる。4.AnsとArg間の分離バランスを改善するためには、Li濃度を0.81mol/L、pHを4.00とする。本発明ではこれをB2とB4の混合(B4比率75%)で実施する。また、このLi濃度・pHにする時間は、分析プログラムと保持時間のずれを考慮し、HylysからHisが溶出される時間(保持時間)で行うようにする。本発明の分析プログラムでは、117分〜130分の間となる。
【0055】また、His溶出後(分析プログラム130分以降)は、緩衝液B4を100%にし、Li濃度を1.00mol/L、pHを4.1とする。5.Met〜Cysthi間の分離バランスを改善するために、分析プログラムと保持時間のずれを考慮し、valからHcitの溶出時間(分析プログラムで45分〜55分)中、カラム温度を70℃に保つようにする。6.Phe〜β−AiBA間の分離バランスを改善するために、分析プログラムと保持時間のずれを考慮し、Tyrの溶出時間(分析プログラムで73分)から、カラム温度を70℃に切替える。7.EOHNH2とTrpの分離バランスを改善するために、分析プログラムと保持時間のずれを考慮し、Cys−HCysからTrpの溶出時間(分析プログラムで85分〜110分)中、カラム温度を63℃に保つようにする。
【0056】上記に示すように、53成分全体の分離が可能となった要因としては数々のポイントが上げられるが、代表的なものとして、Liイオン濃度、pHについて、少なくともβ−AiBAの溶出時間まで低いレベルに抑えたことが挙げられる。これにより、最もピークが密集した部分の分離バランスが大きく改善している。
【0057】本発明の分析プログラムを採用したことによる効果を纏めると以下の様になる。
1)緩衝液切替え時間の適正化によって、53成分を同時に分析した場合でも各成分のピークがバランス良く分離でき、且つ、分析時間も148分に抑えることができた。
2)緩衝液の処方に手を加えることなく、従来と同じ緩衝液をそのまま活用することができた。
3)分析装置のハードウエアや、分離カラムを変更することなく、分析プログラムのみの改善によって、53成分の分離が実現した。
【0058】
【発明の効果】本発明により、臨床分野において重要な53成分の一斉同時分析が行える。これにより、臨床分野に好適なアミノ酸分析計を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
【出願日】 平成12年9月1日(2000.9.1)
【代理人】 【識別番号】100075096
【弁理士】
【氏名又は名称】作田 康夫
【公開番号】 特開2002−71660(P2002−71660A)
【公開日】 平成14年3月12日(2002.3.12)
【出願番号】 特願2000−269864(P2000−269864)