| 【発明の名称】 |
液体クロマトグラフィ装置及びフローセル |
| 【発明者】 |
【氏名】城田 修
【氏名】三林 和彦
|
| 【要約】 |
【課題】本発明は注入される被検液の温度を安定化させる機構を有した液体クロマトグラフィ装置及びフローセルに関し、被検液の変質防止とベースラインにおけるノイズ低減を共に図ることを課題とする。
【解決手段】カラム36で分離処理された被検液が注入配管20を介して注入されると共に注入された被検液に対してUV光が照射される本体部11と、注入配管20が巻回される配管巻回部12とを具備するフローセルであって、本体部11及び注入配管20を共に樹脂により形成する。かつ、注入配管20の肉厚を、被検液が配管巻回部12を通過する過程において被検液と配管巻回部12との間で熱の授受が行なわれ、被検液と配管巻回部12との温度が実質的に同一となる厚さに設定する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 カラムで分離処理された被検液が配管を介して注入されると共に注入された前記被検液に対して前記紫外線或いは可視光線が照射される本体部と、前記配管が巻回される配管巻回部とを具備するフローセルを設けてなる液体クロマトグラフィ装置であって、前記本体部及び前記配管を共に樹脂により形成し、かつ、前記配管の厚さを、前記被検液が前記配管巻回部を通過する過程において前記被検液と前記配管巻回部との間で熱の授受が行なわれ、前記被検液と前記配管巻回部との温度が実質的に同一となる厚さに設定したことを特徴とする液体クロマトグラフィ装置。 【請求項2】 請求項1記載の液体クロマトグラフィ装置において、前記配管の外径を0.40mm以上1.60mm以下に設定し、かつ、前記配管の厚さを0.15mm以上0.50mm以下に設定したことを特徴とする液体クロマトグラフィ装置。 【請求項3】 請求項1または2記載の液体クロマトグラフィ装置において、前記樹脂としてポリエーテルエーテルケトンを用いたことを特徴とする液体クロマトグラフィ装置。 【請求項4】 被検出体となる被検液が配管を介して注入されると共に注入された前記被検液に対して前記紫外線或いは可視光線が照射される本体部と、前記配管が巻回される配管巻回部とを具備するフローセルであって、前記本体部及び前記配管を共に樹脂により形成し、かつ、前記配管の厚さを、前記被検液が前記配管巻回部を通過する過程において前記被検液と前記配管巻回部との間で熱の授受が行なわれ、前記被検液と前記配管巻回部との温度が実質的に同一となる厚さに設定したことを特徴とするフローセル。 【請求項5】 請求項4記載の液体フローセルにおいて、前記配管の外径を0.40mm以上1.60mm以下に設定し、かつ、前記配管の厚さを0.15mm以上0.50mm以下に設定したことを特徴とするフローセル。 【請求項6】 請求項4または5記載のフローセルにおいて、前記樹脂としてポリエーテルエーテルケトンを用いたことを特徴とするフローセル。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は液体クロマトグラフィ装置及びフローセルに係り、特に注入される被検液の温度を安定化させる機構を有した液体クロマトグラフィ装置及びフローセルに関する。 【0002】 【従来の技術】液体クロマトグラフィ装置は化学物質を分離・定量する化学分析手段として広く使われている。特に、内径が1〜2mmのセミミクロカラムを使った液体クロマトグラフィ装置は高感度、高分解能および高精度な分析結果を提供できる利点を有しており、活発な研究がなされている。 【0003】この液体クロマトグラフィ装置は、ポンプにより流れる移動相に被検液を注入した上でカラムに導入して被検液の各成分を分離し、カラムから流出する分離された各成分を検出器で検出することにより被検液の成分分析を行なう構成とされている。 【0004】また、液体クロマトグラフィ装置に設けられる検出器は分析方法に応じて各種提供されているが、その一つとして吸光光度検出器がある。この吸光光度検出器はフローセルを有しており、カラムで分離された被検液は配管を介してフローセル内に注入される構成とされている。また、フローセルは、注入された被検液に紫外線或いは可視光を照射しうる構成とされており、被検液に含まれる各成分の吸光率差を利用して被検液の成分分析を行なう。 【0005】また、上記のように被検液はポンプにより移動相と共に移動するため、被検液の移動にはポンプに起因した脈動が必然的に発生する。この脈動により被検液の移動速度も変動し、これにより被検液には温度差が発生する。 【0006】具体的には、被検液の移動速度が速い部分における温度は低下し、移動速度が遅い部分における温度は上昇する。このように、移動する被検液に温度差が存在すると、これがノイズとなり分析結果のベースラインに大きな変動が発生し、分析精度が低下してしまう。 【0007】このため、フローセルには配管巻回部が設けられており、この配管巻回部にカラムから被検液を搬送する配管を巻回することにより上記の温度変動を低減する構成としている。即ち、被検液を搬送する配管をフローセルの配管巻回部に巻回することにより、この巻回された配管内を被検液が通過する過程においてフローセルと被検液との間に熱の授受が行なわれ、これによりフローセル内に注入される時点において被検液の温度変動は低減される。 【0008】従来、この配管及びフローセルは全て金属により形成されており、よって被検液は配管及びフローセルを構成する金属に触れつつ移動する構成とされていた。 【0009】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、被検液に含まれる成分には、金属と反応する物質(以下、金属反応物質という)を含む場合がある。よって、このような金属反応物質を含む被検液を従来のフローセル(液体クロマトグラフィ装置)及びで分析処理すると、金属反応物質が金属と反応することにより変質してしまい、精度の高い分析処理ができなくなるという問題点があった。 【0010】この問題点を解決する手段として、配管及びフローセルの材質として被検液に反応しない樹脂を用いることが考えられる。しかしながら、従来の金属配管に代え、同一の外径及び内径を有する樹脂配管を用いた場合には、樹脂は金属に比べて熱伝導率が低いため、配管巻回部に巻回された配管内を被検液が通過する過程におけるフローセルと被検液との間に熱の授受が良好に行なわないという問題点が生じる。フローセルと被検液との間における熱の授受が適正に行なわれないと、被検液の温度変動は維持されてしまい、前記のようにベースラインにおけるノイズが増大して分析精度が低下してしまう。 【0011】本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、被検液の変質防止とベースラインにおけるノイズ低減を共に図り得る液体クロマトグラフィ装置及びフローセルを適用することを目的とする。 【0012】 【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するために本発明では、次に述べる各手段を講じたことを特徴とするものである。 【0013】請求項1記載の発明は、カラムで分離処理された被検液が配管を介して注入されると共に注入された前記被検液に対して前記紫外線或いは可視光線が照射される本体部と、前記配管が巻回される配管巻回部とを具備するフローセルを設けてなる液体クロマトグラフィ装置であって、前記本体部及び前記配管を共に樹脂により形成し、かつ、前記配管の厚さを、前記被検液が前記配管巻回部を通過する過程において前記被検液と前記配管巻回部との間で熱の授受が行なわれ、前記被検液と前記配管巻回部との温度が実質的に同一となる厚さに設定したことを特徴とするものである。 【0014】また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の液体クロマトグラフィ装置において、前記配管の外径を0.40mm以上1.60mm以下に設定し、かつ、前記配管の厚さを0.15mm以上0.50mm以下に設定したことを特徴とするものである。 【0015】また、請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の液体クロマトグラフィ装置において、前記樹脂としてポリエーテルエーテルケトンを用いたことを特徴とするものである。 【0016】また、請求項4記載の発明は、被検出体となる被検液が配管を介して注入されると共に注入された前記被検液に対して前記紫外線或いは可視光線が照射される本体部と、前記配管が巻回される配管巻回部とを具備するフローセルであって、前記本体部及び前記配管を共に樹脂により形成し、かつ、前記配管の厚さを、前記被検液が前記配管巻回部を通過する過程において前記被検液と前記配管巻回部との間で熱の授受が行なわれ、前記被検液と前記配管巻回部との温度が実質的に同一となる厚さに設定したことを特徴とするものである。 【0017】また、請求項5記載の発明は、請求項4記載の液体フローセルにおいて、前記配管の外径を0.40mm以上1.60mm以下に設定し、かつ、前記配管の厚さを0.15mm以上0.50mm以下に設定したことを特徴とするものである。 【0018】また、請求項6記載の発明は、請求項1または2記載のフローセルにおいて、前記樹脂としてポリエーテルエーテルケトンを用いたことを特徴とするものである。 【0019】上記した各手段は、次のように作用する。 【0020】請求項1及び請求項4記載の発明によれば、被検液が内部を流れる配管、及び被検液が注入される本体部及び配管を共に樹脂により形成したため、被検液が配管及び本体部に触れても被検液に対し配管及び本体部が反応することを防止できる。即ち、配管及び本体部として金属製のものを用いた場合には、被検液によっては金属と反応してしまい、正確な分析処理が実施できないおそれがある。しかしながら、上記各発明のように配管及び本体部を共に樹脂により形成することにより、被検液が配管及び本体部により変質されることを防止でき、精度の高い分析処理を行なうことができる。 【0021】また、配管の厚さを、被検液が配管巻回部を通過する過程において被検液と配管巻回部との間で熱の授受が行なわれ、被検液と配管巻回部との温度が実質的に同一となる厚さに設定したことにより、被検液が本体部に注入される時点において被検液の温度変動を減少させることができる。よって、分析結果のベースラインに発生する変動幅を減少させることができ、分析精度の向上を図ることができる。 【0022】また、請求項2及び請求項5記載の発明によれば、配管の外径を0.40mm以上1.60mm以下の細管とし、かつ、配管の厚さを0.15mm以上0.50mm以下と肉薄としたことにより、配管巻回部と配管内を通過する被検液との間における熱伝導、及び配管巻回部において隣接する配管内を通過する被検液同士の間における熱伝導を速やかに行なうことができ、被検液の温度変動を速やかに減少させることができる。 【0023】また、請求項3及び請求項6記載の発明によれば、樹脂としてポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を用いたことにより、PEEKは熱伝導性が高く、また機械的強度及び耐薬品性も高いため、フローセルの信頼性を向上させることができる。 【0024】 【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態について図面と共に説明する。 【0025】図1及び図2は、本発明の一実施例であるフローセル10を示しており、また図3はフローセル10を用いた液体クロマトグラフィ装置30を示している。先ず、図3を用いて液体クロマトグラフィ装置30の全体構成について説明する。 【0026】液体クロマトグラフィ装置30は、移動相用容器31,ポンプ33,試料注入装置35,カラム36,検出器37,及び廃液用容器38等により構成されている。移動相用容器31は、移動相32を貯めておく容器である。本実施例では単一の移動相32を用いる構成のフローセル10であるため、移動相用容器31は1個のみ配設されている。尚、グラディエント溶出法を用いる場合等においては、複数の移動相用容器31を配設することも可能である。 【0027】ポンプ33は、配管39を用いて移動相用容器31内の移動相32を吸引すると共に、吸引された移動相32を配管40に所定の圧力で吐出する機能を奏するものである。このポンプ33としては、例えばプランジャータイプポンプ,シリンジタイプポンプ,ダイヤフラムタイプポンプ,エアシリンダータイプポンプ等を用いることができる。 【0028】これら各タイプのポンプは、吐出圧力を可変することができ、液送精度が高く、また機構が簡単である等の特徴があるため、移動相32を搬送するポンプとして好適である。しかしながら、各タイプのポンプは、その構造上必然的に配管40に吐出される移動相32に脈動が生じてしまう。 【0029】即ち、配管40以降の移動相32の流れ速度には、所定の周期で速い部分と遅い部分が発生してしまう。よって、移動相32の移動速度が速い部分における温度は低下し、移動速度が遅い部分における温度は上昇する。 【0030】このように、移動相32に温度差が存在すると、移動相32と共に移動する被検液(成分分析処理がされるサンプル)にも周期的な温度差が発生する。従って、前記したように、この温度差を無くさないと、これに起因して分析結果のベースラインに大きな変動が発生し分析精度が低下してしまう。尚、本実施例における移動相32の脈動による被検液の温度変動を抑制する手段については、説明の便宜上、後述するものとする。 【0031】ポンプ33から移動相32が吐出される配管40は、試料注入装置35に接続されており、また配管40の途中位置には圧力計34が配設されている。圧力計34は例えばブルドン管圧力計であり、ポンプ33から吐出される移動相32の圧力を測定できるよう構成されている。この圧力計34で測定された配管40内の移動相32の圧力は、ポンプ33にフィードバックされ、これにより配管40内の移動相32の圧力が一定となるよう制御される構成となっている。 【0032】試料注入装置35は、例えばユニバーサルインジェクタであり、注入ポート43から成分分析処理がされるサンプルである被検液が注入される。注入ポート43から注入された被検液は、試料注入装置35において移動相32と混合され、配管41を介してカラム36に送られる。 【0033】カラム36は、例えば内径が1〜2mmのガラス製のセミミクロカラムであり、その内部には被検液の分離処理を行なうためのカラム充填材(例えば、シリカゲルの粉体)が充填されている。このカラム36で成分分離された被検液は、注入配管20を介して検出器37に注入される。 【0034】検出器37は、大略すると光源(例えば、紫外線発射装置),フローセル10,及び光センサ等により構成されている。カラム36で分離処理された被検液は注入配管20を介してフローセル10に注入されるよう構成されており、また光源はフローセル10に注入された被検液に紫外線(以下、UV光という)を照射する構成とされている。 【0035】この際、被検液に含まれる成分によりUV光の吸収率が異なるため、被検液を通過したUV光は被検液に含まれる成分の情報が重畳されたものとなる(以下、この成分の情報が重畳されたUV光を情報光という)。この情報光は、光センサにより検出される。そして、この光センサから出力される信号を解析することにより、被検液に含まれる成分を分析することができる。尚、検出器37で検出処理が終了した被検液は、廃液配管21を介して廃液用容器38に排気される。 【0036】続いて、検出器37を構成するフローセル10について、図1及び図2を用いて説明する。図1はフローセル10の斜視図であり、図2はフローセル10の断面図である。 【0037】フローセル10は、大略すると本体部11,配管巻回部12,及びベース部13等により構成されている。また、本実施例に係るフローセル10は、注入配管20の一部も構成要素の一部としている。 【0038】本体部11(図2に梨地で示す)は、樹脂により形成されている。具体的には、本体部11はポリエーテルエーテルケトン(以下、PEEKと略称する)により成形されている。この本体部11には注入口14,排出口15,及び本体部11が形成されている。 【0039】注入口14は、注入配管20の端部に配設された注入用ジョイント22が接続されることにより、カラム36で分離処理された被検液が注入される構成とされている。また、排出口15は、廃液配管21の端部に配設された廃液用ジョイント23が接続されることにより、吸光光度検出が行なわれた被検液が廃液用容器38に向け排出される構成とされている。 【0040】また、セル部16は本体部11の中心位置に図中上下に形成されており、上端部に注入口14が接続され、下端部に排出口15が接続されている。従って、注入配管20から注入された被検液は、セル部16を図中上から下に向け流れる。 【0041】前記したように、本体部11は、PEEK等の樹脂により形成されている。また、内部を被検液が流れる注入口14,排出口15,及びセル部16は、全て樹脂製の本体部11に形成されている。 【0042】PEEKは、耐溶剤性,耐薬品性,耐加水分解性に優れ、よって被検液が触れても従来の金属のように反応することはない。即ち、本実施例の構成とすることにより、被検液の変質を防止することができ、従って精度の高い分析処理を行なうことが可能となる。また、PEEKは機械的強度も高いため、注入用ジョイント22及び廃液用ジョイント23が接続される構成としても各ジョイント22,23を確実に固定することができ、フローセル10の信頼性を向上させることができる。また、本実施例では上記したように光源としてUV光を用いているが、UV光を照射されても劣化するようなことはなく、これによってもフローセル10の信頼性を向上させることができる。 【0043】配管巻回部12は、本体部11の図中上部に配設されている。本実施例では、配管巻回部12はステンレス等の金属により形成しているが、配管巻回部12を本体部11と同様に樹脂により成形することも可能である。この配管巻回部12は、円筒形状を有しており、その外周には注入配管20が所定ターン数で巻回されている。 【0044】即ち、カラム36からの被検液は、配管巻回部12に巻回された注入配管20内を通過した上で、注入用ジョイント22を介して本体部11(セル部16)に注入される構成となっている。そして、配管巻回部12に巻回された注入配管20内を通過する過程において、被検液と配管巻回部12との間で熱の授受が行なわれ(一部、本体部11との間での熱の授受も存在すると思われる)、被検液が本体部11に注入される時点において被検液の温度変動は変動のない一定の温度となる。 【0045】また、配管巻回部12の図中中央上部には光通過部24が配設されており、この光通過部24の下部には石英ガラスよりなる窓部26が形成されている。光源からのUV光は、配管巻回部12に形成された光通過部24,窓部26を介し、本体部11に形成されたセル部16内を流れる被検液に照射されるよう構成されている。 【0046】ベース部13は、本体部11の図中下部に配設されている。本実施例では、ベース部13はステンレス等の金属により形成しているが、ベース部13を本体部11と同様に樹脂により成形することも可能である。このベース部13のセル部16と対向する位置には光通過部25が配設されており、この光通過部25の図中上部には石英ガラスよりなる窓部27が形成されている。 【0047】更に、ベース部13の図中下部で、光通過部25と対向する位置には、図示しない光センサが配設されている。よって、セル部16内を通過した情報光(UV光)は、ベース部13に敬意瀬された窓部27,光通過部25を介して光センサに受光され、これにより光センサは情報光に対応した信号を出力する。 【0048】ここで、配管巻回部12に巻回されている注入配管20に注目する。本実施例では、注入配管20を樹脂により形成している。具体的には、注入配管20は、本体部11と同様にPEEKにより形成している。前記したように、PEEKは、耐溶剤性,耐薬品性,耐加水分解性に優れている。よって、注入配管20をPEEKにより形成することにより、被検液が触れても従来の金属配管のように反応することはなくなり、注入配管20内を通過する過程において被検液が変質することを防止することができる。従って、注入配管20を樹脂により形成することにより、精度の高い分析処理を行なうことが可能となる。 【0049】また、本実施例で用いる注入配管20は、従来用いられていた金属配管に比べて細管化されている。これについて、図4を用いて説明する。図4(A)は本実施例で用いている注入配管20の断面図であり、図4(C)は従来用いられていた金属配管20Bの断面図である。尚、図4(A)に示す注入配管20と、図4(C)に示す注入配管20Bは、等倍率で描いている。 【0050】先ず、従来用いられていた図4(C)に示す注入配管20Bに注目すると、注入配管20Bの外径D3は1/16inch(約、1.6mm)であり、また内径R1は0.13mmであった。従って、注入配管20Bの肉厚W3は約0.74mmとなる。 【0051】このように、従来用いられていた金属製の注入配管20Bは、被検液が流れる内径に対して肉厚な構成とされていた。しかしながら、金属は樹脂に比べて熱伝導率が高いため、図4(C)に示されるように、注入配管20Bの肉厚W3を厚く設定しても、配管巻回部12と注入配管20B内を流れる被検液との間で熱の授受を十分行なうことができ、よって被検液がセル部16に注入される時点では温度の変動をなくすことができた。 【0052】しかしながら、図4(C)に示す形状の樹脂製の注入配管を作製し、これを配管巻回部12に巻回して分析処理を行なったところ、図5に矢印Bで示すように、分析結果のベースラインが大きく変動し、注入配管を配管巻回部12に巻回せずに直接被検液をセル部16に注入したと同様の検出結果を得た。これは、樹脂の熱伝導率が金属に比べて小さいため、配管巻回部12と注入配管20B内を流れる被検液との間で熱の授受が行なわれず、被検液がセル部16に注入される際に依然として温度の変動が存在しているからである。尚、図5は分析処理結果の一例を示す図であり、図6に矢印Cで示すベースラインを拡大して示すものである。 【0053】そこで本実施例では、注入配管20を図4(A)に示す構成とした。即ち、本実施例では、注入配管20の外径D1を0.50mmとし、その内径R1は注入配管20Bと同様に0.13mmとした。従って、本実施例に係る注入配管20の肉厚W1は約0.19mmとなる。 【0054】そして、図4(A)に示す本実施例に係る注入配管20を配管巻回部12に巻回して分析処理を行なったところ、図5に矢印Aで示すように、分析結果のベースラインの変動を大幅に小さくすることができた。 【0055】これは、樹脂の熱伝導率が金属に比べて小さくても、注入配管20の肉厚W1を約0.19mmと薄く設定したことにより、配管巻回部12と注入配管20内を流れる被検液との間で熱の授受が速やかにかつ良好に行なわれると共に、配管巻回部12に巻回されている隣接する注入配管20内を通過する被検液同士の間における熱伝導も速やかにかつ良好に行なわれるため、被検液がセル部16に注入される時点において温度の変動が減少されていることによる。 【0056】従って、上記のように樹脂製の注入配管20の肉厚W1を従来の金属製の注入配管20Bの肉厚W3に対して薄く設定し、被検液が配管巻回部12を通過する過程において被検液と配管巻回部12との間で熱の授受が行なわれ、被検液と配管巻回部12との温度が実質的に同一となるよう設定することにより、被検液が本体部11(セル部16)に注入される時点において被検液の温度変動を減少させることが可能となる。これにより、分析結果のベースラインに発生する変動幅を減少させることができ、分析精度の向上を図ることができる。具体的には、図5に矢印Aで示す本実施例による分析結果では、図中矢印Pで示すような微小なピークであっても確実に検出することができるが、従来例による分析結果のようにベースラインの変動が大きいと、微小なピークPを検出することはできない。従って、このことからも、本実施例の構成の方が従来に比べて分析精度の向上を図ることができることが理解できる。尚、図5では、理解を容易にするために、従来の分析結果と本実施例の分析結果を同一の図に示した。 【0057】一方、注入配管の寸法は、上記した注入配管20の寸法に限定されるものではない。即ち、注入配管内を流れる被検液と配管巻回部12との間で熱の授受が行なえる構成であれば、この構成も本発明の範疇となる。 【0058】具体的には、本発明者の実験によれば、配管の外径を0.40mm以上1.60mm以下の細管とし、かつ、配管の厚さを0.15mm以上0.50mm以下と肉薄とした場合、配管巻回部12と注入配管内を通過する被検液との間における熱伝導、及び配管巻回部12に巻回されている隣接する注入配管内を通過する被検液同士の間における熱伝導を速やかに行なうことができ、被検液の温度変動を速やかに減少させることができる。 【0059】従って、図4(B)に示す注入配管20Aのように、注入配管20Aの外径D2を1.20mmとし、その内径R2を0.70mmとし、従って注入配管20Aの肉厚W1を約0.25mmとした場合であっても、セル部16における被検液の温度変動をなくすことができ、精度の高い分析処理を行なうことができる。 【0060】 【発明の効果】上述の如く本発明によれば、次に述べる種々の効果を実現することができる。 【0061】請求項1及び請求項4記載の発明によれば、被検液が配管及び本体部により変質されることを防止でき、精度の高い分析処理を行なうことができる。また、被検液が本体部に注入される時点において被検液の温度変動を減少させることができるため、分析結果のベースラインに発生する変動幅を減少させることができ、分析精度の向上を図ることができる。 【0062】また、請求項2及び請求項5記載の発明によれば、配管巻回部と配管内を通過する被検液との間における熱伝導、及び配管巻回部において隣接する配管内を通過する被検液同士の間における熱伝導を速やかに行なうことができ、被検液の温度変動を速やかに減少させることができる。 【0063】また、請求項3及び請求項6記載の発明によれば、樹脂として熱伝導性,機械的強度,及び耐薬品性が高いポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を用いたため、フローセルの信頼性を向上させることができる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000001959 【氏名又は名称】株式会社資生堂
|
| 【出願日】 |
平成12年8月29日(2000.8.29) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100070150 【弁理士】 【氏名又は名称】伊東 忠彦
|
| 【公開番号】 |
特開2002−71658(P2002−71658A) |
| 【公開日】 |
平成14年3月12日(2002.3.12) |
| 【出願番号】 |
特願2000−259628(P2000−259628) |
|