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【発明の名称】 グラジェント液体クロマトグラム測定装置および測定方法
【発明者】 【氏名】磯部 稔

【氏名】宮路 敏彦

【氏名】工藤 憲一

【氏名】篠崎 美雄

【要約】 【課題】本発明の目的は検出精度を向上するために、μl/minオーダーで分析でき、再現性があり、精度の高いグラジェントが得られ、廉価で操作が容易な、流量を変化させても精度の高い測定結果を得る事ができ、質量分析計を検出器として使用する際には目的成分の全量を質量分析計へ導入可能で、質量スペクトル測定を行う際は、測定に同期して流量、圧力、グラジェントの傾きの調整が行い得る装置、測定方法を提供することである。

【解決手段】前記目的を達成するために、本発明にかかるグラジェント液体クロマトグラム測定装置2は、送液用ポンプ4、6と、少なくとも1回の測定に用いられるグラジェント溶媒の全容量を収納可能なグラジェント溶媒充填管8を備える送液系10と、試料注入機構14と、分離カラム16と、検出器18とを備える分離検出系20からることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 グラジェント溶媒を用いてクロマトグラムを測定することが可能な装置であって、前記装置は、異なる複数の溶媒の混合量を変化させて作成されるグラジェント溶媒を作成するために、前記複数の溶媒各1種の送液量を調整しながら送液するための少なくとも各溶媒1種につき1つずつ備えられた複数の送液用ポンプと、前記送液用ポンプから送液されて混合されることによって作成された少なくとも1回の測定に用いられるグラジェント溶媒の全容量を収納可能なグラジェント溶媒充填管を備える送液系と、試料を分離するための分離カラムと、前記分離カラムに試料を注入するための試料注入機構と、前記分離カラムによって分離された成分を検出するための検出器とを備える分離検出系からなることを特徴とするグラジェント液体クロマトグラム測定装置。
【請求項2】 請求項1に記載のグラジェント液体クロマトグラム測定装置において、該送液ポンプは送液量を変更可能であり、試料の検出精度向上のために前記送液ポンプの送液量を変更する際、一時的に前記ポンプを流路から切り離して、前記送液ポンプにより送液される溶媒の流量を変更し、かつ、前記変更後の流量で送液される溶媒の圧力を分離カラムにかかる圧力と略同じ圧力に調整した後、再び流路に接続するための流量・圧力調整機構を有することを特徴とするグラジェント液体クロマトグラム測定装置。
【請求項3】 請求項1乃至2のいずれかに記載のグラジェント液体クロマトグラム測定装置において、該送液系と該分離検出系は分割と接続の切り替えが可能であり、前記切り替えを行うための切り替えバルブを有し、前記分離検出系には分離カラムを平衡化するためのカラム平衡用ポンプを有することを特徴とするグラジェント液体クロマトグラム測定装置。
【請求項4】 請求項3に記載のグラジェント液体クロマトグラム測定装置において、該送液系と該分離検出系が分割された状態に調整し、前記送液系では複数の該送液ポンプの送液量を調整しながら前記送液された溶媒を混合してグラジェント溶媒を作成させ、作成された前記グラジェント溶媒をグラジェント溶媒充填管に充填させるグラジェント溶媒充填行程、該送液系と該分離検出系が分割された状態に調整し、前記分離検出系では該カラム平衡用ポンプによって前記分離検出系を平衡化する分離検出系平衡化行程、前記各行程の後、該送液系と該分離検出系を接続させ、前記送液ポンプによってグラジェント溶媒の最終組成比の溶媒を送液させ、該試料注入機構によって前記分離カラムに試料を注入して該分離カラムで前記試料の成分を分離する試料分離行程、前記試料分離行程の後、該検出器で前記試料の成分の検出が開始された際に前記送液ポンプの送液量を適切な送液量に変更して成分の検出を行う検出行程、からなる各行程を、装置各部を自動制御して一括してコントロールしながらシーケンシャルに行うコントローラーを備えることを特徴とするグラジェント液体クロマトグラム測定装置。
【請求項5】 請求項1乃至4のいずれかに記載のグラジェント液体クロマトグラム測定装置において、分離された成分を検出するための検出器として質量分析計が用いられており、該分離カラムによって分離された成分の全量が前記質量分析計に導入されるように構成されていることを特徴とするグラジェント液体クロマトグラム測定装置。
【請求項6】 請求項5に記載の質量分析計を用いたグラジェント液体クロマトグラム測定装置を用いた測定方法であって、該送液系と該分離検出系が分割された状態で、前記送液系では複数の該送液ポンプの送液量を調整しながら前記送液された溶媒を混合してグラジェント溶媒が作成され、作成された前記グラジェント溶媒をグラジェント溶媒充填管に充填を行うグラジェント溶媒充填行程と、該送液系と該分離検出系が分割された状態で、前記分離検出系では該カラム平衡用ポンプによって前記分離検出系を平衡化する分離検出系平衡化行程と、前記各行程の後、該送液系と該分離検出系を接続し、前記送液ポンプによってグラジェント溶媒の最終組成比の溶媒を送液し、該試料注入機構によって前記分離カラムに試料を注入して該分離カラムで前記試料の成分を分離する試料分離行程と、前記試料分離行程の後、該質量分析計で前記試料の目的成分の検出が開始された際に前記送液ポンプの送液量を10μl/min以下の範囲に変更して成分の検出を行う検出行程と、からなる各行程によって測定を行うことを特徴とする測定方法。
【請求項7】 請求項6に記載の測定方法を用いて、質量分析計によって該試料の分離成分から質量スペクトルを測定することを特徴とする測定方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は液体クロマトグラム測定装置、特に迅速で、かつ精度の高い測定が行い得る液体クロマトグラム測定装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、タンパク、ペプチドなどは、あらかじめこれらをいくつかの部位(フラグメント)に切断した後、カラムでこれらのフラグメントを分離し、ピークとしてUV検出器などを用いて検出していた。さらに、これらのフラグメントの分子量や構造、アミノ酸配列を同定するために、質量分析計で特定の分子量のピークとして検出したり、このピーク検出時に質量スペクトルを測定することがあった。このようなフラグメントを分離、溶出するためには、移動相の組成を時間的に変化させて溶出するグラジェント溶出が用いられている。
【0003】また一般的に前記タンパクやペプチドなどの試料は微量であり、かつ濃度の低いことが多いが、前記従来技術のような一般的な高圧液体クロマトグラフシステムでは流量を1.0ml/min程度で送液し、カラムとして内径4.6mm程度のものが用いられていたが、この高圧液体クロマトグラフシステムで分析を行うには、サンプル量の不足や、検出感度の不足が問題となってしまっていた。
【0004】従って、微量の試料の分析に対応し、検出感度を上昇させるため、高圧液体クロマトグラフシステムのスケールをダウンサイズしたミクロ高圧液体クロマトグラフシステムを用いていた。従来用いられていたミクロ高圧液体クロマトグラフシステムにおいて、グラジェント溶出法が可能な装置としては、流量が50〜100μl/minで送液し、カラムとしては内径0.5〜2.0mmのものが一般的であった。
【0005】また、グラジェント溶媒を使用してクロマトグラムの測定を行い得る装置に関する技術としては特公昭52−80876号公報や、特公昭54−20157号公報などに記載された技術が存在した。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】前記特公昭52−80876号公報に記載された技術はグラジェント溶媒を作成するのに別の装置を用いて溶媒の濃度を変化させるか、或いは測定者があらかじめグラジェント溶媒を作成しておく必要があった。またグラジェント溶液を作成するポンプに低圧ポンプを使用し、測定時には高圧ポンプを使用するため、測定時にグラジェント溶媒の圧力に変化が生じてしまうものであった。また特公昭54−20157号公報に記載された技術はグラジェント溶媒を作成したのち、連続した操作で測定を行うことが困難であった。そのためグラジェント溶媒の作成から試料の分離、分離成分の検出までを一連の動作としてグラジェント溶媒の精度を落とさずに測定を行い得る測定装置の開発が待たれていた。
【0007】さらに従来の技術では、測定時間を短縮するためにカラムで試料の分離を行う際には比較的速いスピードで送液を行い、成分を検出器によって検出する行程では送液の速度が遅くして検出精度を高いものとするという手段がとられていたが、成分の検出の際に送液スピードを変化させると、それに伴ってカラムにかかる圧力が変化してしまい、測定結果の精度に影響が出てしまっていた。しかし従来では送液スピードを変化させた際に圧力を調整し得る装置は存在しなかった。
【0008】またグラジェント溶出では2溶媒グラジェントの場合、2つのポンプを用いてそれぞれのポンプの流量比で溶媒組成を作成する方法が一般的に用いられている。この場合、例えば1:99の組成比の場合、1%の組成比となるポンプについては、少なくとも設定トータル流量の1/100で正確な送液ができるようなポンプでなければ、正確な組成比を得ることができないことは言うまでもないが、例えば質量分析計に全量導入できるような流量でのグラジェントを行う場合、数μl/minから10μl/minの1/100の割合である0.1μl/min〜0.01μl/min前後の流量精度を持つポンプが必要とされる。しかしμl/minオーダーで送液できるポンプは比較的容易に手にいれることができるものの、グラジェント溶出のために、0.1μl/min〜0.01μl/min前後の流量精度を持ち、グラジェント溶出を行うことが可能なポンプは多くなく、かつ大変高価である上、μl/minオーダーで送液するためのポンプ操作にも大きな注意が必要であった。
【0009】このため、比較的容易に手に入れることができる従来のミクロ高圧液体クロマトグラフシステムに用いられたポンプであっても容易な操作で、再現性があり、正確なグラジェントを得ることができるようなグラジェントの作成、送液ができる装置が望まれていた。
【0010】また、質量分析計で検出を行う場合、質量分析計に導入できる溶媒の量としては10μl/min前後であり、さらにタンパク、ペプチドの分析によく用いられる飛行時間型質量分析計の場合は少なくとも5μl/min以下の流量でないと適切な検出ができないものであった。このため従来の高圧液体クロマトグラム測定装置では、質量分析計に溶出液を導入する場合、カラムから溶出した後に流路を2つに分割し、2つの流路にかかる圧力差によって流量を調節して、適切な流量に調整された流路を質量分析計に接続し、導入する方法が一般的に用いられている。ところがこの方法では流路が分割されることにより溶出される目的成分も分割され、結果として濃度も分割比と同じように小さくなり、検出器による検出感度が低下してしまうものであった。特に、低流量で導入する飛行時間型質量分析計の場合はより大きな分割が必要となり、結果的に検出器による検出感度の低下が非常に大きくなってしまっていた。またグラジェント溶出の場合、溶媒の組成比が変化すると、圧力も変化してしまうため、流路で分割される分割比も変化してしまう。このため質量分析計に導入される流量も変化してしまうこととなる。
【0011】このことからグラジェント溶出のときであっても一定流量で質量分析計へ導入し、さらに検出器による感度低下をなくすためにカラムにより溶出される目的成分の全量を質量分析計に導入し得る装置が望まれた。すなわち、質量分析計に全量を導入できるような流量で送液が可能、グラジェント溶出が可能、分離検出が可能というようなミクロ高圧液体クロマトグラフシステムが望まれていた。
【0012】また質量分析計で質量スペクトルを測定する場合、さらにはタンデム質量分析計でMS/MSスペクトルを測定する場合、スペクトルの感度を上げるためにはスペクトル測定の積算回数を多くして測定を行う必要があった。しかし積算回数を多くすると測定に時間を要するため、質量スペクトルを測定するのに適切な流量であっても測定している間に目的成分ピークが通りすぎてしまうことがあった。このように目的成分が通りすぎてしまうため適切なスペクトルが測定されず、必ずしも感度上昇にはならなかった。そこで確実に感度上昇を達成するためにはスペクトル測定中に流量を小さくし、なるべく目的成分のピークが通過しないようにする必要があるが、送液を停止してしまうと質量分析計への試料の供給が停止するため測定することが不可能となる。そこで目的成分のピークが通過しないような流量で送液を行い、送液を停止しないで感度上昇を達成し得る装置の開発が望まれた。
【0013】また質量分析計で計測を行いながら流量を小さくする場合では、例えば流量5μl/minから1μl/minに変更する場合を考えると、ただ単に流量を変更しただけでは、流量変更前にカラムや接続している配管等にかかっていた圧力から、変更された流量でかかることとなる圧力となるまでに、これらの圧力差から溶媒が流れてしまい、ピークが流出してしまう可能性がある。このため、流量を変更する場合、瞬時に変更後にかかると思われる圧力付近に変化させることが必要であった。さらに前記MSスペクトルを測定するタイミングにあわせて、流量の変更と圧力の調節が必要であり、かつスペクトル測定後は元の条件に戻す必要もある。これら流量の変更、圧力調節の一連の操作を、シーケンシャルに操作する必要があるが、従来ではそれぞれの操作をオペレーターが行われなければならず、操作への注意と熟練が必要とされていた。
【0014】さらに流量を変更した際に、分離のパターンが変化しないようにするため、送液流量あたりに変化するグラジェント量(グラジェントの傾き)が、流量変更後であっても変更前の傾きと同じような割合になるようにしなければならない。一般的に従来使用されているミクロ高圧液体クロマトグラフシステムのグラジェント方法では、時間あたりに変化させる組成比を設定することによってポンプの送液量を調節してグラジェントが実行されていた。この場合、グラジェントの途中で流量を変更すると、容量あたりのグラジェントの傾きが変わってしまい、その結果、得られるクロマトグラムのパターンも変化してしまっていた。よって前記MSスペクトルを測定するために流量変更した場合であってもグラジェントの傾きは変化しないように調整する必要がある。
【0015】このようにスペクトル測定開始の信号を受けて流量変更と圧力調整を行い、スペクトル測定が終了したら元の流量に戻すようなコントローラを備え、ランダムなMSスペクトルのタイミングにあわせていつでもスペクトル測定と同期して、流量、圧力を変更できかつグラジェントの傾きは変化させないような装置が必要であった。
【0016】以上のように溶出される目的成分の検出精度の向上ために、μl/minオーダーで分析することができるミクロ高圧液体クロマトグラフシステムが必要とされており、このような装置は容易に操作でき、かつ、再現性があり、精度のあるグラジェントを得ることができることも必要とされていた。そして質量分析計を検出器として使用する際には目的成分の全量を質量分析計へ導入し得る、廉価で簡単なシステムでの実現が望まれていたが、このような装置は従来存在しなかった。また質量分析計で質量スペクトル測定を行うとき、そのタイミングに同期して流量、圧力、グラジェントの傾きの調整を行うことができる装置も存在しなかった。
【0017】本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は溶出される目的成分の検出精度を向上するために、μl/minオーダーで分析できること、前記分析は再現性があり、かつ、精度の高いグラジェントを得る事ができること、廉価で操作が容易であること、流量を変化させても精度の高い測定結果を得る事ができること、質量分析計を検出器として使用する際には目的成分の全量を質量分析計へ導入可能であること、及び質量スペクトル測定を行うときはそのタイミングに同期して流量、圧力、グラジェントの傾きの調整が行うことができるグラジェント液体クロマトグラム測定装置、および測定方法を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するために、本発明にかかるグラジェント液体クロマトグラム測定装置は、グラジェント溶媒を用いてクロマトグラムを測定することが可能な装置であって、前記装置は、異なる複数の溶媒の混合量を変化させて作成されるグラジェント溶媒を作成するために、前記複数の溶媒各1種の送液量を調整しながら送液するための少なくとも各溶媒1種につき1つずつ備えられた複数の送液用ポンプと、前記送液用ポンプから送液されて混合されることによって作成された少なくとも1回の測定に用いられるグラジェント溶媒の全容量を収納可能なグラジェント溶媒充填管を備える送液系と、試料を分離するための分離カラムと、前記分離カラムに試料を注入するための試料注入機構と、前記分離カラムによって分離された成分を検出するための検出器とを備える分離検出系からなることを特徴とする。
【0019】また本発明のグラジェント液体クロマトグラム測定装置において、該送液ポンプは送液量を変更可能であり、試料の検出精度向上のために前記送液ポンプの送液量を変更する際、一時的に前記ポンプを流路から切り離して、前記送液ポンプにより送液される溶媒の流量を変更し、かつ、前記変更後の流量で送液される溶媒の圧力を分離カラムにかかる圧力と略同じ圧力に調整した後、再び流路に接続するための流量・圧力調整機構を有することが好適である。
【0020】また本発明のグラジェント液体クロマトグラム測定装置において、該送液系と該分離検出系は分割と接続の切り替えが可能であり、前記切り替えを行うための切り替えバルブを有し、前記分離検出系には分離カラムを平衡化するためのカラム平衡用ポンプを有することが好適である。
【0021】また本発明のグラジェント液体クロマトグラム測定装置において、該送液系と該分離検出系が分割された状態に調整し、前記送液系では複数の該送液ポンプの送液量を調整しながら前記送液された溶媒を混合してグラジェント溶媒を作成させ、作成された前記グラジェント溶媒をグラジェント溶媒充填管に充填させるグラジェント溶媒充填行程、該送液系と該分離検出系が分割された状態に調整し、前記分離検出系では該カラム平衡用ポンプによって前記分離検出系を平衡化する分離検出系平衡化行程、前記各行程の後、該送液系と該分離検出系を接続させ、前記送液ポンプによってグラジェント溶媒の最終組成比の溶媒を送液させ、該試料注入機構によって前記分離カラムに試料を注入して該分離カラムで前記試料の成分を分離する試料分離行程、前記試料分離行程の後、該検出器で前記試料の成分の検出が開始された際に前記送液ポンプの送液量を適切な送液量に変更して成分の検出を行う検出行程からなる各行程を、装置各部を自動制御して一括してコントロールしながらシーケンシャルに行うコントローラーを備えることが好適である。
【0022】また本発明のグラジェント液体クロマトグラム測定装置において、分離された成分を検出するための検出器として質量分析計が用いられており、該分離カラムによって分離された成分の全量が前記質量分析計に導入されるように構成されていることが好適である。
【0023】また本発明における測定方法は、前記質量分析計を用いたグラジェント液体クロマトグラム測定装置を用いた測定方法であって、該送液系と該分離検出系が分割された状態で、前記送液系では複数の該送液ポンプの送液量を調整しながら前記送液された溶媒を混合してグラジェント溶媒が作成され、作成された前記グラジェント溶媒をグラジェント溶媒充填管に充填を行うグラジェント溶媒充填行程と、該送液系と該分離検出系が分割された状態で、前記分離検出系では該カラム平衡用ポンプによって前記分離検出系を平衡化する分離検出系平衡化行程と、前記各行程の後、該送液系と該分離検出系を接続し、前記送液ポンプによってグラジェント溶媒の最終組成比の溶媒を送液し、該試料注入機構によって前記分離カラムに試料を注入して該分離カラムで前記試料の成分を分離する試料分離行程と、前記試料分離行程の後、該質量分析計で前記試料の目的成分の検出が開始された際に前記送液ポンプの送液量を10μl/min以下の範囲に変更して成分の検出を行う検出行程とからなる各行程によって測定を行うことを特徴とする。また本発明の測定方法を用いて、質量分析計によって該試料の分離成分から質量スペクトルを測定することが好適である。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を用いて本発明のグラジェント液体クロマトグラム測定装置を詳しく説明する。
【0025】図1に本発明におけるグラジェント液体クロマトグラム測定装置の概略構成図を示す。同図に示すように本発明におけるグラジェント液体クロマトグラム測定装置2は、グラジェント溶媒を用いてクロマトグラムを測定することが可能な装置であって、前記装置2は、異なる複数の溶媒A、Bの混合量を変化させて作成されるグラジェント溶媒を作成するために、前記複数の溶媒A、B各1種の送液量を調整しながら送液するための少なくとも各溶媒1種につき1つずつ備えられた複数の送液用ポンプ4、6と、前記送液用ポンプ4、6から送液されて混合されることによって作成された少なくとも1回の測定に用いられるグラジェント溶媒の全容量を収納可能なグラジェント溶媒充填管8を備える送液系10と、前記グラジェント溶媒の初期組成比と同じ組成比の溶媒を送液するためのカラム平衡用ポンプ12と、試料を分離するための分離カラム16と、前記分離カラム16に試料を注入するための試料注入機構14と、前記分離カラム16によって分離された成分を検出するための検出器として質量分析計18とを備える分離検出系20からなっている。そして前記分離カラム16によって分離された成分の全量が質量分析計18に導入されるように構成されている。
【0026】ポンプ4とポンプ6はグラジェント溶媒を作成するとき、および、試料を分析するときにカラム16に送液するために用いられるポンプである。本実施形態ではこのポンプ4によって溶媒Aが送液され、ポンプ6によって溶媒Bが送液されるように構成されており、両ポンプの流量比を変化させることによりグラジェント溶媒が作成される。ポンプ4、6によって送液された各溶媒A、Bは配管を通り、ミキサー22によって混合され、バルブ24、26を経てグラジェント溶媒充填管8に充填される。グラジェント溶媒充填管8の容量はあらかじめ決められており、少なくとも1回の測定に必要なグラジェント溶媒をポンプ4、6によって作成し、それら全てがグラジェント溶媒充填管8に充填されるのである。
【0027】背圧チューブ30はグラジェント溶媒作成時に、試料分析時と同じ程度の圧力がかかるようにするために接続されている。この背圧チューブ30によってグラジェント溶媒充填管8に充填されたグラジェント溶媒に試料分析時と同じ程度の圧力がかかってグラジェント溶媒充填管8に充填されることとなる。背圧チューブ30に接続されているシリンジ34はグラジェント溶媒作成時に流量を測定するために接続されており、流量の測定を行わないときにはシリンジ34は接続せず、この部分より出てくる溶媒は廃液する。
【0028】ポンプ12は測定初期におけるグラジェント溶媒と同じ組成比の溶媒を送液するように構成されており、ポンプ4、6によってグラジェント溶媒が作成され、グラジェント溶媒充填管8に充填する間に分離カラムに測定初期におけるグラジェント溶媒と同じ組成比の溶媒を送液し続け、分離カラムの平衡化を行うために用いられる。本実施形態ではグラジェント溶媒として測定初期には溶媒A100%であり、次第に溶媒Bの濃度が高くなり、最終的に溶媒B100%となるようなグラジェント溶媒を用いることとしたため、ポンプ12によって送液される溶媒は溶媒Aとなっている。このポンプ12は測定中は必要がなくなるため測定においては流路系から分離できるように構成されている。
【0029】バルブ26、28は2連6方バルブであり、グラジェント溶媒充填管8の前後に接続されている。そしてこれらの両方、もしくは一方を切り換えることによって、送液系10と分離検出系20の分割、接続を行うことができる。このためポンプ4、6によって作成、送液されたグラジェント溶媒のグラジェント溶媒充填管8への充填、またはグラジェント溶媒をカラム16へ送液するための流路の切り替えを行うことが可能である。なお、このように送液系10と分離検出系20の分割、接続が行い得るものであればここで使用した2連6方バルブのみに限られるものではない。
【0030】試料は、バルブ28と分離カラム16の間に取り付けられたインジェクタ等からなる試料注入機構14によりカラムに導入される。このような試料注入機構14としては従来周知のものを適用することが可能である。即ち、インジェクタや、試料の濃縮などの前処理を行う場合には、このためのバルブ、および装置等を用いることができるため、その目的に合わせて好適なものを使用するのがよい。
【0031】分離カラム16の後ろにはHPLC検出器32と質量分析計18が接続されており、この検出器によって分離成分の分析を行うことが可能である。そして本実施形態では分離カラムの後ろに接続される検出器のフローセル部分はカラム16から分離、溶出した試料のピークが下流に接続された質量分析計18に導入されるときにピークが広がらないように細いチューブでできている。なお、このような細いチューブを用いなくともピークが広がらないように構成されていればよく、このフローセル部分に関する限定は特に無い。
【0032】なおここに示したように、必ずしも質量検出計とHPLC検出器の2つを用いる必要性はないが、本発明のように質量検出計とともにUV検出器などの一般に液体クロマトグラフに用いられる検出器を用いてもよいし、質量分析計の変わりにこれらを用いることも可能である。
【0033】バルブ24は2連3方バルブであり、質量分析計18でスペクトル測定を行う際に、このバルブのポートbとcが接続されるように所定時間切り替えて圧力を開放することができる。このときの開放圧力はバルブ24のポートcに接続された背圧チューブ36により調整可能であり、ポートを切り替えて圧力調整を行いながらポンプ4、6の流量調整を行うことができる。このように本実施形態におけるグラジェント液体クロマトグラム測定装置ではポンプ4、6、バルブ24、背圧チューブ36よりなる流量・圧力調整機構38を有している。
【0034】本発明の装置は、このようにあらかじめ測定に用いられるグラジェント溶媒全量を作成し、それをグラジェント溶媒充填管に充填しておくことによって、一般的なHPLCポンプを用いて精度の高いグラジェント溶媒が作成することができ、かつ再現性を高めることが可能となる。さらに送液ポンプ4、6によって流量を変化させた場合であってもグラジェント溶液の傾きが変化してしまうことをなくすことができるとともに、圧力の変化を極力抑えることができるため、測定精度に影響を与え難い。またグラジェント溶媒に注入された試料を分離後、その全量を質量分析計に導入するため、質量分析計を検出器として用いたときに検出感度の向上を実現することが可能となる。また、一般的なHPLCポンプを用いるため、操作も容易であり、価格も廉価とすることができる。
【0035】また一般的なHPLCポンプからなる送液ポンプ4、6は測定時における微小な流量であると送液量の正確さが落ちてしまう。しかしこのようにあらかじめグラジェント溶媒を作成し、グラジェント溶媒充填管に充填しておく構成であると、グラジェント溶媒作成時には正確な送液量が十分確保できる流量で作成することが可能である。
【0036】なお図1に示したポンプ4、6、12、バルブ24、26、28、質量分析計18、HPLC検出器32、インジェクタ14は、図2に示すようにコントローラ40と接続されており、コントローラによって一括制御できるとともに検出器による検出信号を受信するように構成されている。以下、本発明のグラジェント液体クロマトグラム測定装置を用いて実際に測定を行った際にどのように測定を行うのかを説明しながら、本発明をさらに詳しく説明する。
【0037】本発明ではいくつかの行程によって測定が行われる。即ち、該送液系と該分離検出系が分割された状態で、前記送液系では複数の該送液ポンプの送液量を調整しながら前記送液された溶媒を混合してグラジェント溶媒が作成され、作成された前記グラジェント溶媒をグラジェント溶媒充填管に充填を行うグラジェント溶媒充填行程、該送液系と該分離検出系が分割された状態で、前記分離検出系では該カラム平衡用ポンプによって前記分離検出系を平衡化する分離検出系平衡化行程、前記各行程の後、該送液系と該分離検出系を接続し、前記送液ポンプによってグラジェント溶媒の最終組成比の溶媒を作成しながら送液し、該試料注入機構によって前記分離カラムに試料を注入して該分離カラムで前記試料の成分を分離する試料分離行程、前記分離行程の後、該検出器で前記試料の成分の検出が開始された際に前記送液ポンプの送液量を適切な送液量に変更して成分の検出を行う検出行程からなる各行程によって測定が行われる。
【0038】図1に記載した本発明の一実施形態で、グラジェント溶媒充填行程、分離検出系平衡化行程を行っている動作説明図を図3に示す。なお同図において図1と同じ構成要素に対応する部分には同一の符号を付して説明を省略する。図3に示すように、グラジェント溶媒充填行程、分離検出系平衡化行程ではバルブ26はポートaとf、bとc、dとeを接続し、バルブ28はポートaとb、cとd、eとfを接続する。このような接続によってバルブ28によって送液系と分離検出系は分割された状態となっている。
【0039】このとき送液系は、ポンプ4、6によって送液された溶媒が、ミキサー22部分で合流し、ここで均一に混合された後、バルブ24のポートbからaを通り、さらにバルブ26のポートaからfを経て、グラジェント溶媒充填管8に送液される。そしてこのグラジェント溶媒充填管8の出口はバルブ26のポートeからdを通り、背圧チューブ30を経て、流量測定用のシリンジ34に送液されるか、シリンジ34を用いないときは廃液されるような流路に設定されている。
【0040】グラジェント溶媒充填行程では、まずポンプ4、6によって、グラジェント溶媒充填管8の中を初期溶媒で置換洗浄する。そしてその後、グラジェント溶媒作成時には、トータル流量に対して、ポンプ4、6の送液量がグラジェント溶媒の組成比となるような流量で送液することによりグラジェント溶媒が作成される。例えばトータル流量40μl/minで100%A溶媒から、10分で直線的に100%B溶媒に変化させてグラジェント溶媒を作成する場合は、ポンプ4によって送液を行い、溶媒Aでグラジェント溶媒充填管8を置換、洗浄した後、ポンプ4は40μl/minから10分で0.0μl/minまで直線的に流量を変化させ、逆にポンプ6は0.0μl/minから10分で40μl/minまで直線的に流量を変化させることでグラジェント溶媒が作成されるのである。
【0041】作成されたグラジェント溶媒は、その先頭がグラジェント溶媒充填管8のバルブ26のポートdに近いところに達するまでグラジェント溶液の最終組成溶媒で送液される。本実施形態において前述した例では最終組成溶媒は溶媒B100%であるからポンプ6のみを稼動させ送液する。グラジェント溶媒充填行程はこのようにして行われるのである。
【0042】なお、グラジェント溶媒の先頭がバルブ26のポートdに近いところに達するまでの時間はミキサー22、バルブ24、26、グラジェント溶媒充填管8、およびこれらを接続する配管の内部容量の合計と、ポンプ4、6のトータル流量によって決められる。流量が同じであればその時間は一定であるので、流量から時間を目安にしてもよいし、背圧チューブ30の先端にシリンジ34を接続して廃液の容量を測定し、それによってグラジェント溶媒の先頭位置を割り出してもよい。このようなシリンジによる容量測定を行わないのであれば、背圧チューブ30から流出する溶媒は廃液してよい。
【0043】また、グラジェント溶媒充填管8の溶媒置換、洗浄時のポンプ4、6の流量は、時間短縮のために流路系の耐圧が許す限り、カラムに送液する流量よりかなり早い流量であってもかまわない。さらに、グラジェント溶媒作成時のポンプ4、6の流量も、グラジェント溶媒が正確に作成できるような流量でよく、カラムに送液する流量よりかなり早い流量でもかまわない。
【0044】また背圧チューブ30はグラジェント溶媒作成充填時に、分離カラムで試料を分析するときにかかる圧力と略同じ圧力となるように長さを調整しておくのが好適である。このように構成することにより、試料を測定するときに圧力の変化があまりないため、速やかにグラジェント溶媒が分離カラム16に送液され、試料の分離が可能となる。
【0045】なおここではポンプ4、6のトータル流量を40μ/minと設定したが、グラジェント溶媒を作成し、充填する本行程ではこの流量に関しては特に限定は無い。このとき分離検出系において、ポンプ12から送液された溶媒は、バルブ28のポートfからeを通り、試料注入機構14を経て、分離カラム16に至り、その溶出液はHPLC検出器32および質量分析計18へ導入されるような流路に設定されている。
【0046】そして分離検出系平衡化行程では、ポンプ12によって初期溶媒が送液されている。前述の例においては初期溶媒は溶媒A100%であるので溶媒Aがポンプ12によって送液される。この分離検出系平衡化行程では、ポンプ12の流量は分離カラム16の適切な流量で送液して各流路を平衡化するのである。なお、分離検出系平衡化行程は、グラジェント溶媒充填行程を行っている間に行うことが好適である。これによりグラジェント溶媒充填行程の終了とともに次の行程に移行することが可能となる。
【0047】前記各行程が終了したら、装置の送液系と分離検出系を接続し、試料の分離を行う。図1に記載した本発明の一実施形態で、試料分離行程を行っている動作説明図を図4に示す。なお同図において図1と同じ構成要素に対応する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0048】図4に示すように、グラジェント溶媒充填行程および分離検出系平衡化行程が終了したら、バルブ28のポートaとf、bとc、dとeが接続するように切り替え、送液系と分離検出系を接続する。これによってポンプ4、6は引き続きグラジェント溶媒の最終組成比の溶媒を送液し続けているからグラジェント溶媒充填管8に充填されたグラジェント溶媒は分離検出系に送液されるようになる。バルブ28の切り替えと同時に試料を試料注入機構14によって注入し、試料の注入とともにHPLC検出器32、質量分析計18の信号取り込みを開始させ、データ信号の取り込みを開始する。
【0049】なお前述のように、この試料分離行程ではポンプ4、6の流量を使用する分離カラム16の適切な流量であり、かつ質量分析計18に全量導入できるような流量で送液されることが好適である。試料はグラジェント溶媒に溶解され、グラジェント溶媒とともに送液される。そして分離カラム16によって分離されるのである。
【0050】この試料分離行程でのポンプ12の流路は、バルブ28のポートfからaを通り、短い接続配管を経て、バルブ28のポートbからcを通った後、接続配管を経てバルブ26のポートeからdを通って背圧チューブ30を経て、シリンジ34に接続されるか、または廃液されるようになっている。試料の測定を行っている間はポンプ12によって送液されるグラジェント溶媒の初期組成比溶媒は直接分析に関係しないため、送液を停止してもよいが、接続されている配管の置換、洗浄のため、さらには試料の測定が終了した後に次の試料を測定するために分離カラム16を再び平衡化する場合に、速やかに溶媒が流れるように、平衡化する時の流量で送液しておくことが望ましい。
【0051】試料分離行程が終了し、質量分析計において試料分析中に目的成分のピークが検出されたら、測定は検出行程に移行する。検出行程では装置の流路系自体は図4に示したものと同じ構成で行うことができる。但し、送液ポンプ4、6によって送液されている最終組成比のグラジェント溶媒の流量を質量分析計の検出感度が向上されるように目的ピークの質量スペクトルを測定している間だけ、流量を小さくして成分検出、特に質量分析計による質量スペクトルの測定を行うのである。
【0052】なお前述のようにポンプの流量を小さくすると送液量の正確さが落ちてしまうが、本発明の装置ではあらかじめ正確なグラジェント溶媒を作成しておき、グラジェント溶媒充填管に充填しておくことが可能であるため、測定時に送液量の正確さが落ちた流量で送液を行ったとしてもグラジェント溶液の正確さが保たれることとなる。
【0053】この検出行程において本実施形態においては、送液ポンプ4、6によって送液されている最終組成比のグラジェント溶媒の流量を変更し、変更した後、直ちに変更流量での圧力が分離カラムかかる圧力と略同じとするために図1に記載した流量・圧力調整機構38を使用する。
【0054】図1に記載した本発明の一実施形態で、検出行程での流量・圧力調整機構の動作説明図を図5に示す。なお同図において図1と同じ構成要素に対応する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0055】目的成分が質量検出計で検出され、質量スペクトルを測定し始めたときに、流量・圧力調整機構38を構成する図5に示すバルブ24は、所定時間ポートbとcが接続される。これと同時にポンプ4および6の送液量を小さくし、流量を調整する。このときの流量は10μl/min以下、さらには1〜2μl/min或いは、ポンプの最小流量に変更することが好適である。これより流量が大きいと質量スペクトルの測定感度の上昇が望めなくなってしまうためである。また所定時間とは目安として0.5〜3秒程度であることが好適である。これより長いとカラムの圧力が大きく変化してしまうためである。一般的には流量変更後の圧力と同じ圧力となるだけの時間でよい。
【0056】バルブ24に接続されている背圧チューブ36は、バルブ24を所定時間開放して、ポンプ4、6による流量変更し、再び所定流路に接続された際に、ポンプ4、6によって送液される溶媒の圧力が、分離カラムにかかる圧力と同じ程度になるように調整されている。
【0057】このようにバルブ24によって一時的にポンプが流路系から切り離された後に、ポンプの送液量が変更され、背圧チューブ36によって分離カラム16にかかる圧力と同じ程度の圧力に調整された後、再び所定流路に接続されるため、速やかに分離カラムに相当の圧力がかかり、流量の変更されたグラジェント溶媒が送液されるようになる。そして、質量分析計による質量スペクトルの測定が終了したら、ポンプ4、6の流量は元の分析流量に戻すのである。
【0058】このような行程によって試料の分析を行うことにより、目的成分が質量分析計により検出され、スペクトル測定が行われるときであっても、目的成分のピークが通りすぎてしまうことなく質量分析計へ導入されるため、スペクトルスキャン回数を多くすることができ、検出感度の上昇を実現することができる。このため本発明の質量分析計を用いたグラジェント液体クロマトグラム測定装置において、質量分析計によって該試料の分離成分から質量スペクトルを測定することが好適である。
【0059】また前述のように本発明の装置では流量・圧力調整機構を有すると、質量分析計で目的成分の測定を行う際に、測定に適した流量に変更を行っても、流量変更後の圧力をすばやくカラムにかかる圧力と略同じとすることができる。よって検出器として質量分析計を用いたものでなくとも、流量を小さくして検出を行い検出感度の向上を図ることが可能である。
【0060】このようにして、試料の測定が終了した後に、さらに別の試料を測定する場合には、図3に示すような状態に流路を戻し、グラジェント溶媒充填管の置換、洗浄を行った後に、再び各行程繰り返すことによって測定を行うことができる。なお、本実施形態においてはバルブ26は図3から図5に示す過程で切り替えを行わなかったが、このバルブ26のポートaとb、cとd、eとfを接続すると、ポンプ4、6からミキサー22、バルブ24を通り、バルブ26のポートaからbに接続され廃液されるような流路となる。このように接続することよってポンプ4、6、ミキサー22、バルブ24までを新しい溶媒で置換するときに流量を上げて短時間に置換作業を行うことができるようになる。
【0061】また本実施形態のように該送液系と該分離検出系の分割と接続の切り替えを切り替えバルブによって行うことで簡単な操作で、かつ前記各行程を容易に行うことが出来るようになる。また本発明において、図1、図2に示したコントローラ40によってポンプ4、6、12、バルブ24、26、28、質量分析計18、HPLC検出器32、および試料注入機構14を一括して自動制御することによって、グラジェント溶媒充填行程、分離検出系平衡化行程、試料分離行程、検出行程の各行程における操作や作業を自動化することもできる。
【0062】このように自動化すると操作が非常に簡単となり、かつ、質量分析計でスペクトル測定を行うときに、そのタイミングに同期して、グラジェントの傾きを一定にしたまま流量、圧力を変更することができる。
【0063】なお本発明を説明するために本発明の一実施形態を用いて説明を行ったが、本発明はここに記載した装置のみに限られるものでは無い。例えば前記説明で例としてあげたグラジェント溶媒は初期組成比が溶媒A100%であり、最終組成比が溶媒B100%であるため、ポンプ4、6の2つのみを用いたが、最終組成比溶媒が溶媒A:溶媒Bが1:99となるような片方のポンプの送液量が非常に小さくなる場合などにおいて、スペクトル測定の際に流量を小さくしたときに、ポンプの最小流量より小さい送液が必要とされることも考えられる。このような場合、あらかじめ最終組成比溶媒や初期組成比溶媒を作成しておき、最終組成比溶媒送液用ポンプや初期組成比溶媒送液用ポンプなどを備えておくと、流量を小さくしたときに、このポンプによって送液を行うことができ、スペクトル測定の際に流量を小さくしたときであっても、最終組成比を作成しながら送液を行うポンプの最小流量を下まわる送液量となるような事態を避けることができる。このように本発明は、必要に応じて適宜改良を加えて使用することが可能である。
【0064】
【実施例】前述の図1に示した本発明の一実施形態において、コントローラによって各動作を自動制御するように構成された装置を用いて、実際に測定を行ってみることとした。
【0065】実験1初めに、水100%の溶媒と0.01%アセトンを含むアセトニトリルを用いて、初期組成比が水100%から10分で最終組成比0.01%アセトンを含むアセトニトリル100%となるようなグラジェント溶媒を作成して、そのグラジェント溶媒が正しく作成されているかを調べた。図1に示すポンプ4によって水100%溶媒をポンプ6によって0.01%アセトンを含むアセトニトリルをトータル流量が40μl/minとなるように送液し、水100%から10分で0.01%アセトンを含むアセトニトリル100%となるグラジェント溶媒を作成し、グラジェント溶媒充填管8に充填させた。グラジェント溶媒充填管8には容量490μlのものを使用した。
【0066】グラジェント溶媒の充填が完了したら、バルブ28を切り替えて、送液系10と分離検出系20を接続し、送液量を5μl/minに変更して、HPLC検出器32として用いたUV検出器260nmで検出を行い、ベースラインの変化を表したクロマトグラムを測定した。アセトンは260nm付近に吸収を持つため、アセトニトリル溶媒の比率が高くなるとベースラインが上昇してくる。ただし、水とアセトニトリル中の吸光係数が異なるため、比率を直線的に変化させた場合ベースラインは上に凸になるはずである。
【0067】図6にグラジェント溶媒のベースラインの変化を検出したクロマトグラムを示す。同図に示すようにグラジェント溶媒のベースラインの変化を検出したクロマトグラムは、理論どおりに上に凸の曲線となるベースラインが得られている。このことからグラジェント溶媒はグラジェント溶媒充填管中に正しく作成され、充填されており、測定においても正しいグラジェントの傾きが保たれていることがわかる。
【0068】実験2続いて、前記実験と同様の装置を用いて、実際にタンパクを分析してみた。溶媒としては溶媒Aとしてテトラフルオロ酢酸を含む水を、溶媒Bとしてテトラフルオロ酢酸を含むアセトニトリルを用いた。グラジェント溶媒充填行程では、ポンプ4、6によってグラジェント溶媒の初期組成比が溶媒A100%で、10分で溶媒B100%ととなる比率が直線的に変化するグラジェント溶媒をトータル流量40μl/minで作成し、容量が490μlのグラジェント溶媒充填管に充填した。
【0069】分離検出系ではカラムとしてオクタデシルシランをシリカに修飾した充填剤を充填した内径0.3mm、長さ15cmの逆相カラムを使用した。そして前記グラジェント溶媒充填行程と平行して、ポンプ12によって溶媒Aを分離検出系に10μl/minで送液し、分離検出系平衡化行程を行った。
【0070】前記グラジェント溶媒充填行程と分離検出系平衡化行程を開始してから、あらかじめ設定されていた所定時間過ぎると、コントローラがグラジェント溶媒の先頭がバルブ28の直前に来たものと判断し、バルブ28を図4に示すような流路系に切り替え、同時にコントローラはポンプ4、6の流量を質量分析計に溶媒および分離された成分の全量が導入できる流量として5μl/minに変更した。そして試料を試料注入機構14であるインジェクタによって注入し、HPLC検出器32であるUV検出器と質量検出計18を作動させ、その検出信号を受信し、記録を開始して、試料分離行程に移行した。UV検出器は210nmで検出するように設定した。
【0071】しばらくすると逆相カラムで分離された試料のタンパクは各フラグメントに分離され、UV検出器で検出された。検出されたクロマトグラムを図7に示す。さらに、目的成分のピークが質量分析計で検出されると、コントローラは検出行程に移行し、図5に示したバルブ24を所定時間背圧チューブ36に接続するように切り替えて圧力を開放し、同時にポンプの流量を1μl/minに変更し、圧力を流量変更後にカラムにかかる圧力と同じ程度に調整して再び接続し、質量分析計18でトータルイオンクロマトグラム、MS/MSスペクトルの測定を行った。このとき得られたトータルイオンクロマトグラムを図8(a)に、また図8(a)において3.56分のピーク(図8(a)において矢印で示したピーク)を図9(a)に示す。
【0072】測定が終了したらコントローラはポンプの流量を元の5μl/minに戻して、実験を終了させた。図7に示した得られたクロマトグラムを参照すると、実際の試料を用いても良好なグラジェント溶出、および分離が達成されているのが確認できた。また、図8(a)および図9(a)に示す測定結果から、質量分析計による測定が良好に行われていることが確認できた。
【0073】比較実験1前記実験2と同様の装置で同様の実験を行い、実験2において質量分析計で測定を行う際にも流量を変更せずに測定を行って、実験2で得られた結果と比較することとした。実験2と同様、試料としてはタンパクを、溶媒としては溶媒Aとしてテトラフルオロ酢酸を含む水を、溶媒Bとしてテトラフルオロ酢酸を含むアセトニトリルを用いた。
【0074】グラジェント溶媒充填行程では、ポンプ4、6によってグラジェント溶媒の初期組成比が溶媒A100%で、10分で溶媒B100%ととなる比率が直線的に変化するグラジェント溶媒をトータル流量40μl/minで作成し、容量が490μlのグラジェント溶媒充填管に充填した。分離検出系ではカラムとしてオクタデシルシランをシリカに修飾した充填剤を充填した内径0.3mm、長さ15cmの逆相カラムを使用した。そして前記グラジェント溶媒充填行程と平行して、ポンプ12によって溶媒Aを分離検出系に10μl/minで送液し、分離検出系平衡化行程を行った。
【0075】前記グラジェント溶媒充填行程と分離検出系平衡化行程を開始してから、あらかじめ設定されていた所定時間過ぎると、コントローラがグラジェント溶媒の先頭がバルブ28の直前に来たものと判断し、バルブ28を図4に示すような流路系に切り替え、同時にコントローラはポンプ4、6の流量を質量分析計に溶媒および分離された成分の全量が導入できる流量として5μl/minに変更した。そして試料を試料注入機構14であるインジェクタによって注入し、HPLC検出器32であるUV検出器と質量検出計18を作動させ、その検出信号を受信し、記録を開始して、試料分離行程に移行した。UV検出器は210nmで検出するように設定した。
【0076】しばらくすると逆相カラムで分離された試料のタンパクは各フラグメントに分離され、UV検出器で検出された。検出されたクロマトグラムを図10に示す。さらに、目的成分のピークが質量分析計で検出されると、コントローラは検出行程に移行したものの、流量の変更は行わずに、質量分析計18でトータルイオンクロマトグラム、MS/MSスペクトルの測定を行った。このとき得られたトータルイオンクロマトグラムを図8(b)に、また図8(b)において0.65分のピーク(図8(b)において矢印で示したピーク)を図9(b)に示す。
【0077】図7および図10に示したクロマトグラムを比較すると、実験2ではスペクトル測定時にバルブ24によって圧力の開放、および流量の変更を行うため、保持時間が長くなり、測定時のピーク形状は異なっているが、クロマトグラムのパターンはほとんど同じであり、スペクトル測定時に流量の変更や圧力の調整を行っても、それ以後の試料の分離、溶出、検出には影響はせず、良好な測定結果が得られることがわかる。
【0078】さらに図8に示したトータルイオンクロマトグラムの矢印で示した同一の目的成分のMS/MSスペクトルを比較した図9では、実験2で得られた図9(a)の測定結果はS/N比で2倍感度上昇していることが確認できる。これによって、ピークが質量分析計で確認されたとき、圧力開放、および流量調整を行うことによって、ピーク時間を長く取ることができ、スペクトル測定の積算回数を多くして測定することができるため、流量の調整を行わない場合と比較して、検出感度の上昇が得られることがわかる。
【0079】このように本発明の装置は、MS/MSスペクトル測定時に、流量を小さくし、ピーク溶出を遅くすることで、スペクトル測定時間を多くとることができ、結果、スペクトルの感度を上昇することができる。しかも、本発明のようにグラジェント溶媒充填管にあらかじめグラジェント溶媒を作成し充填しておく方式では、単にポンプ流量を変える事で、同時にグラジェント変化率も変化するため、前述のように流量を変化させても簡単な方法で一定の変化率を持つグラジェント溶出が可能であり、また流量を元に戻した後でも、その後の分離、溶出に影響を与えることなく測定を行うことができる。
【0080】以上説明したように、本発明の装置によれば、グラジェント溶媒の作成から試料の分離検出までの一連の操作を一つの装置によって行うことが可能であり、かつ、送液ポンプの流量の変更が測定結果に影響を与えない。また分離された目的成分の全量を質量分析計へ導入するために、μl/minオーダーで分析することができる。
【0081】さらに再現性があり、かつ、精度のあるグラジェントを容易に得る事ができるグラジェント方法が可能であり、簡単なシステムおよび容易な操作でこのグラジェント分析を達成することができ、かつグラジェント方法を実行することができる。さらには質量分析計で、スペクトル測定を行うとき、そのタイミングに同期して、流量、圧力、グラジェントの傾きの変更を行い、測定の感動を上昇することができる。
【0082】
【発明の効果】本発明のグラジェント液体クロマトグラム測定装置及び測定方法によれば、精度の高い測定を行うことができる。
【出願人】 【識別番号】000232689
【氏名又は名称】日本分光株式会社
【出願日】 平成12年8月29日(2000.8.29)
【代理人】 【識別番号】100092901
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 祐司
【公開番号】 特開2002−71657(P2002−71657A)
【公開日】 平成14年3月12日(2002.3.12)
【出願番号】 特願2000−259448(P2000−259448)