| 【発明の名称】 |
超音波探傷方法及び超音波探傷装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】山野 正樹
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| 【要約】 |
【課題】被検査部分の全断面にわたって精度良く内在きずを検出することができる超音波探傷方法及びこの方法を実施するための超音波探傷装置を提供する。
【解決手段】屈折角度制御器9により、振動子群が選択され、選択された振動子群の各振動子4aに対し、対応する送信用遅延素子6により、各振動子4aを駆動するタイミングに、対応する遅延時間を加算したタイミングが各パルサ5に与えられる。前記タイミングでパルサ5により振動子4aが駆動され、鋼管1中に超音波ビームが送信される。各振動子4aに受信されたエコー信号は、レシーバ7に入力され、レシーバ7に入力された信号は、受信用遅延素子8により、対応する遅延時間を与えられて、きず評価器12によりきずの有無が評価される。振動子群を順次切り替えて走査することにより、超音波ビームを偏向させて、溶接部2の全断面を探傷することができる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 被検査材の表面上に音響媒質体を配置し、複数の超音波振動子を含むアレイ探触子を前記音響媒質体上に配置し、前記超音波振動子により超音波ビームを送受信して前記被検査材を探傷する超音波探傷方法において、前記アレイ探触子との接触面を曲面状になした音響媒質体を用い、複数の前記超音波振動子を1つのグループとする振動子群により超音波ビームを送受信し、前記グループを順次切り替えることにより超音波ビームの屈折角度を変えて、前記被検査材を走査することを特徴とする超音波探傷方法。 【請求項2】 前記グループの切り替え毎に、前記グループの各超音波振動子の送受信に遅延時間を与えて、超音波ビームを前記被検査材の所定位置で集束させる請求項1記載の超音波探傷方法。 【請求項3】 被検査材の表面上に、音響媒質体を介し、複数の超音波振動子を含むアレイ探触子を配置し、各別に超音波振動子に接続された発振回路により各超音波振動子を駆動して超音波ビームを送信し、前記超音波振動子が受信したエコー信号を信号処理回路に取り込んで前記被検査材を探傷すべくなしてある超音波探傷装置において、前記音響媒質体の前記アレイ探触子との接触面を曲面状になしてあり、複数の前記超音波振動子を1つのグループとして選択する回路と、前記グループを順次切り替える回路と、前記グループの各超音波振動子を駆動するタイミングを各発振回路に与える回路とを有した屈折角度制御器を備えたことを特徴とする超音波探傷装置。 【請求項4】 前記屈折角度制御器により制御された遅延時間を前記タイミングに加えたタイミングを各発振回路に与える送信用遅延素子と、前記超音波振動子がエコー信号を受信したタイミングに、前記屈折角度制御器により制御された遅延時間を加えて前記エコー信号を前記信号処理回路に与える受信用遅延素子とを備えた請求項3記載の超音波探傷装置。 【請求項5】 前記音響媒質体は、前記超音波振動子から送信された超音波ビームを前記被検査材の内部で集束させるための形状をなしている請求項3又は4記載の超音波探傷装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、溶接部等に内在するきずを検出する超音波探傷方法及び超音波探傷装置に関し、特に厚肉溶接部の断面全体を探傷する超音波探傷方法及び超音波探傷装置に関する。 【0002】 【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】溶接鋼管等の溶接部には溶接方法及び条件により様々なきずが発生し、溶接部の品質低下の原因となっている。このため、X線及び超音波を用いた非破壊検査が行われている。X線はピンホール及びスラグ巻き込み等の点状きずを容易に検出することができ、検査実績も多いが、能率が低い、設備コストが高い等の問題点がある。 【0003】このため、サブマージドアーク溶接(SAW)鋼管では、超音波探傷を行い、きず有りと判定された部位及び両管端部のみにX線検査を実施している。超音波探傷は、割れきず及び融合不良等面状きずを検出するのに適した方法であり、検査能率、設備コストの面からX線検査より優れているので、両管端数10mmの部分を除き、溶接部全面の検査を担っている。 【0004】一例として、SAW鋼管の製造工程におけるオンライン自動探傷方法の概略が文献1(「溶接鋼管の超音波探傷法」鉄鋼協会品質管理部会(NDI部門)編、1999年2月22日発行)の4.4.1〜4.4.3(pp60〜62)に記載されている。同技術は、縦方向きず、横方向きずそれぞれについて内面きず、外面きず検出用の複数の探触子を配置し、溶接部に発生する様々なきずを見逃すことなく検出できるようにしたものである。 【0005】オンライン探傷では前記探触子群を渦流式又は光学式シーム検出器とシーム追従機構とを用いて、常に溶接部からの所定位置に配置できるようにしながら、鋼管を直線搬送して溶接部全面の検査を行っている。この場合、きずを見逃さないために、管の長手方向の各位置において前記探触子群で送受信する超音波ビームが溶接部全断面をカバーしている必要性がある。 【0006】超音波探触子で送受信される超音波ビームは、探傷周波数及び振動子径等によって規定される指向角で拡散しながら材料中を伝搬する。図10は、管軸方向きず検査用探触子の配置及び超音波伝搬挙動を示す模式図であり、図中1は鋼管である。鋼管1は溶接部2を有しており、鋼管1の外表面には、内面きず用探触子23が溶接部2から0.5スキップの位置に、外面きず用探触子24が1.0スキップの位置に配置されている。この内面きず用探触子23及び外面きず用探触子24を用いた場合、溶接部2の中央部の超音波ビーム強度が弱くなり、きず検出能が低下する。すなわち、図10に示したように、溶接部2の中央部に探傷感度不足域Aが発生する。この傾向は厚肉材ほど顕著になる。 【0007】従って、前記文献1記載の技術では鋼管探傷における探触子設定例(文献1:表4.11、p65)に記載されているように、厚肉材では溶接部2から1.0スキップ以上の距離に2個の探触子を設置するよう推奨されている。図11は、前記推奨位置に配置された管軸方向きず検査用探触子の配置及び超音波伝搬挙動を示す模式図であり、図中1は鋼管である。鋼管1は溶接部2を有しており、鋼管1の外表面には、内面きず用探触子23が溶接部2から1.0スキップの位置に、外面きず用探触子24が1.5スキップの位置に配置されている。図11においては、探傷感度不足域が発生していない。これは、伝搬距離が長くなるのに従い、超音波ビームが拡散することを利用したものであるが、伝搬距離が長くなるのに比例して単位面積当たりの超音波ビーム強度は低下するので、きずからの反射エコー強度も低下し、きずエコーがノイズ信号に埋没する虞がある。 【0008】前記課題を解決するためには、溶接部2までの超音波伝搬距離が短い位置に数多くの探触子(例えば外面きず、内面きず用の探触子に中央部きず用の探触子を付加した3個)を配置するのが望ましい。しかし、探触子の数を増やすことは探傷器の数を増加させるばかりではなく、前記シーム検出器及びシーム追従機構等も増設する必要性が生じ、設備コストが莫大なものとなる問題がある。 【0009】前記問題を解決するために、近年、アレイ探触子を用いた探傷技術が提案されている。例えば、文献2(非破壊検査第47巻1号(1998)pp45〜52「ガス導管に適用するリニアアレイ方式超音波探傷技術の開発」)に記載されている斜角アレイ探触子のリニア走査方式、及び特開平11−183446号公報に記載されている斜角アレイ探触子のセクター走査方式がこれに相当する。すなわち、アレイ探触子1個で図10及び図11に記載している2個以上の探傷領域を確保しようという考えである。しかし、これらの技術には下記の課題がある。 【0010】前記文献2に記載された技術では、くさびと呼ばれる、アレイ探触子を探傷面に対し所定角度傾けて配置するための合成樹脂製の音響媒質体が大きなものとなり、肉厚19mmの溶接部全断面をカバーするためにはくさびと被検査材との接触部の長さが150mm(幅20mm)程度必要であると報告されている。精度が高く、安定した探傷を行うためには、くさびと被検査材との接触部には水等の接触媒質が必要であるが、前記のように広い接触部に均一に、且つ安定して接触媒質を供給し続けることは困難である。これはSAW鋼管等の被検査材の表面が曲率を有する場合には、よりいっそう顕著となる。 【0011】特開平11−183446号公報に開示された技術においては、前記問題は比較的少ない。しかし、くさび形状によって決まる屈折角度に対して超音波ビームを偏向させ、屈折角度を変えるためには、大きな送受信遅延時間が必要となる。例えば、1mmピッチで16個の振動子から構成されるアレイ探触子(くさび材質はアクリル:縦波音速2700m/s)でくさび設定屈折角度を60°(入射角46°)として±8°程度(入射角±6°程度)、屈折角度を変更するには、両端の振動子間には約620ns程度の遅延時間が必要となる(=16振動子×sin(6°)/2700m/s)。各振動子での受信信号に遅延を与える手段として通常アナログ遅延線が用いられているが、遅延量を増やすとともに受信波形が歪み、また振動持続時間が長くなるという欠点がある。従って、セクター走査を行う場合、受信側の位相整合が難しく、高精度かつ高分解能な探傷を行うのが困難であるという問題がある。また、セクター走査を行う場合、サイドローブによる虚像が発生しやすいという問題もある。 【0012】本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、アレイ探触子との接触面を曲面状になした音響媒質体を用い、アレイ探触子の複数の超音波振動子を1つのグループとする振動子群により超音波ビームを送受信し、このグループを順次切り替え、超音波ビームの屈折角度を変えて探傷することにより、被検査部分の全断面にわたって精度良く内在きずを検出することができる超音波探傷方法及びこの方法を実施するための超音波探傷装置を提供することを目的とする。 【0013】また、本発明は、グループの切り替え毎に、グループの各超音波振動子の送受信に遅延時間を与えることにより、被検査材の肉厚方向の各深さで超音波ビームを集束することができ、溶接部全断面で微小きずの検出が可能となる超音波探傷方法及び超音波探傷装置を提供することを目的とする。 【0014】さらに、本発明は、音響媒質体の形状を、超音波振動子から送信された超音波ビームが被検査材の内部で集束するような形状にすることにより、送受信遅延処理をしなくても微小きずを検出することができる超音波探傷装置を提供することを目的とする。 【0015】 【課題を解決するための手段】第1発明の超音波探傷方法は、被検査材の表面上に音響媒質体を配置し、複数の超音波振動子を含むアレイ探触子を前記音響媒質体上に配置し、前記超音波振動子により超音波ビームを送受信して前記被検査材を探傷する超音波探傷方法において、前記アレイ探触子との接触面を曲面状になした音響媒質体を用い、複数の前記超音波振動子を1つのグループとする振動子群により超音波ビームを送受信し、前記グループを順次切り替えることにより超音波ビームの屈折角度を変えて、前記被検査材を走査することを特徴とする。 【0016】第2発明の超音波探傷方法は、第1発明において、前記グループの切り替え毎に、前記グループの各超音波振動子の送受信に遅延時間を与えて、超音波ビームを前記被検査材の所定位置で集束させることを特徴とする。 【0017】第3発明の超音波探傷装置は、被検査材の表面上に、音響媒質体を介し、複数の超音波振動子を含むアレイ探触子を配置し、各別に超音波振動子に接続された発振回路により各超音波振動子を駆動して超音波ビームを送信し、前記超音波振動子が受信したエコー信号を信号処理回路に取り込んで前記被検査材を探傷すべくなしてある超音波探傷装置において、前記音響媒質体の前記アレイ探触子との接触面を曲面状になしてあり、複数の前記超音波振動子を1つのグループとして選択する回路と、前記グループを順次切り替える回路と、前記グループの各超音波振動子を駆動するタイミングを各発振回路に与える回路とを有した屈折角度制御器を備えたことを特徴とする。 【0018】第4発明の超音波探傷装置は、第3発明において、前記屈折角度制御器により制御された遅延時間を前記タイミングに加えたタイミングを各発振回路に与える送信用遅延素子と、前記超音波振動子がエコー信号を受信したタイミングに、前記屈折角度制御器により制御された遅延時間を加えて前記エコー信号を前記信号処理回路に与える受信用遅延素子とを備えたことを特徴とする。 【0019】第5発明の超音波探傷装置は、第3又は第4発明において、前記音響媒質体が、前記超音波振動子から送信された超音波ビームを前記被検査材の内部で集束させるための形状をなしていることを特徴とする。 【0020】第1発明及び第3発明においては、アレイ探触子との接触面を曲面状になした音響媒質体を用いるので、超音波送受信に関わる超音波振動子のグループを順次切り替えることにより、被検査部分への超音波入射点から探触子までの距離を一定に保ちながら、セクター走査同様の屈折角度変更を行うことができ、被検査部分の全断面を高精度に探傷することができる。特に、厚肉の溶接部を自動探傷し、内在きずを精度良く検出する溶接部の超音波探傷方法として有益である。そして、各超音波振動子群で送受信する超音波ビームが音響媒質体と被検査材との接触部において、ほぼ同一の場所を通過するので、音響媒質体の長さの短縮を実現することができる。また、選択振動子群を切り替えるだけで屈折角度の変更が可能であるので、各超音波振動子に送受信遅延を与えずに探傷することができる。 【0021】第2及び第4発明においては、送受信遅延を与えるので、超音波ビームが被検査材中で拡散するのが防止される。また、遅延時間を小さく、波形歪みを極小化することができ、サイドローブによる虚像の発生を防止することができる。そして、選択振動子群毎に最大200nsec程度の比較的小さな送受信遅延を与えるだけで肉厚方向の各深さで超音波ビームを集束することができ、溶接部全断面で微小きずの検出が可能となる。 【0022】曲面上に配設された振動子群から送受信される超音波ビームは、曲面形状によって定まる位置に集束する。第5発明においては、音響媒質体が、集束位置が被検査材内部の所定位置(例えば溶接部中央部)になるような形状を有しているので、送受信遅延処理をしなくても(またはごくわずかの遅延量を与えるのみで)集束点近傍の微小きずを検出することができる。 【0023】 【発明の実施の形態】以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。 実施の形態1.図1は、本発明の実施の形態1に係る超音波探傷装置を示す模式図であり、図中1は鋼管である。鋼管1は溶接部2を有しており、鋼管1の外表面には、アクリル等の樹脂製で扇形状のくさび3(曲率50mm×幅15mm円筒の1/4)が配置されており、くさび3の外周面上には複数個の超音波振動子4a(長さ1mm×幅10mm)からなるアレイ探触子4が配設されている。この実施の形態においては、アレイ探触子4は32CHからなり、頂点側が第1CH、90°側が第32CHである。 【0024】配設された各振動子4aには、それぞれパルサ5及び送信用遅延素子6、並びにレシーバ7及び受信用遅延素子8が接続されている。この実施の形態においては、受信用遅延素子8としてアナログ遅延線が使用されている。振動子4aは、対応するパルサ5により駆動され、各パルサ5の動作タイミングは、送信用遅延素子6により決定されるようになしてある。 【0025】各送信用遅延素子6は屈折角度制御器9に接続されている。屈折角度制御器9は、予め設定された数の振動子4aを1つのグループとする振動子群を選択する回路と、前記グループを切り替える回路と、グループの各振動子4aを駆動するタイミングを各パルサ5に与える回路と、送信用遅延素子6及び受信用遅延素子8に遅延時間を与える回路とを備えている。屈折角度制御器9により、振動子群が選択され、選択された各振動子4aに対し、対応する送信用遅延素子6によって、各振動子4aを駆動するタイミングに、屈折角度制御器9により制御された遅延時間を加算したタイミングが各パルサ5に与えられる。前記タイミングでパルサ5により送信電圧を印加することにより、振動子4aから鋼管1中に超音波ビームが送信される。 【0026】きずエコー等の受信は下記のように実施される。選択された振動子群の各振動子4aに受信された信号は、レシーバ7に入力される。レシーバ7に入力された信号は、受信用遅延素子8が屈折角度制御器9により制御された遅延時間を与えられて、加算器10へ出力される。受信信号は、加算器10により合成され、増幅器11により評価に必要な信号レベルまで増幅される。増幅された信号値は、きず評価器12により予め決められたしきい値と比較されて、きずの有無が評価される。この実施の形態に係る超音波探傷装置においては、超音波ビーム形成に寄与する、例えば16個の選択振動子群を所定間隔で順次切り替えて走査することにより、鋼管1に屈折入射する角度を変えて、溶接部2の全断面を探傷することができる。 【0027】図1においては、内面側を0.5スキップで探傷し、外面側(アレイ探触子4設置側)を1.0スキップで探傷しているビームの状態を示すが、鋼管1の肉厚方向に多段的にビーム照射位置を変え、溶接部2の全断面を探傷するようにするのが好ましい。後述するように、本願発明者らは内外面の探傷以外に、肉厚中央部(0.75スキップ)を探傷する試験も行っている。 【0028】この実施の形態においては、下記の遅延を与えた。なお、遅延時間の単位はいずれもnsである。 CH1 :170、 CH2 :130、CH3 : 90、 CH4 : 60、CH5 : 35、 CH6 : 20、CH7 : 5、 CH8 : 0、CH9 : 0、 CH10: 5、CH11: 20、 CH12: 35、CH13: 60、 CH14: 90、CH15:130、 CH16:170選択振動子群を順次切り替えるときも、これらの送受信遅延時間は同一パターンで与える。すなわち、両端の振動子4aには常に中央部の振動子4aに比べ170ns程度の遅延を与える。 【0029】実施の形態2.実施の形態1の超音波探傷装置においては、くさび3として1/4円柱を用いたので、送受信遅延時間を与えない場合、各選択振動子群で送受信される超音波ビームはくさび3と鋼管1間の境界面に集束し、鋼管1の内部では拡散しながら伝搬することになり、きず検出能が低下する。このため、実施の形態1においては、溶接部2までの距離に対応する送受信遅延を与えて、超音波ビームを集束する。しかしながら、送受信遅延時間を与えるためには、送信用遅延素子6群及び受信用遅延素子8群が必要となり、それだけ電子回路的にも複雑、かつ高価なものとなる。また、実施の形態1で与える遅延時間は最大で200nsec程度であるが、前述のように波形ひずみ、持続時間増大等の問題が残存している。 【0030】そこで、本願発明者らはアレイ探触子4を配設するくさび3の形状を検討することにより、送受信遅延時間を与える必要がない超音波探傷装置を開発した。図2は、本発明の実施の形態2に係る超音波探傷装置を示す模式図であり、図中、図1と同一部分は同一符号で示してある。この実施の形態2においては、くさび3の形状は、曲率200mmRの円柱の一部を切り取る形状をなしており、溶接部2側の端面(超音波ビーム進行側)をこれと反対側の端面より大きくしてある。その結果、送受信遅延時間を与えなくても、鋼管1中のビーム路程で略45mmの位置に集束するようになっている。 【0031】くさび3の溶接部2側の端面には、くさび3内部の乱反射信号を抑制するための吸音材13が張り付けられている。また、くさび3と鋼管1との接触面は、各選択振動子群で送受信する超音波ビームが通過するのに必要十分な領域(長さ50mm×くさび3の幅程度)を除いて、安定接触させ、くさび3内の音波の乱反射を防止するための切り込みが設けられている。この実施の形態においては、送受信遅延が不要となるため、送信用遅延素子6群及び受信用遅延素子8群が不要となり、電子回路が簡素化され、安価に製造でき、安価な超音波探傷装置の提供を可能としている。 【0032】 【実施例】以下に、実施の形態1及び2を実施例によりさらに詳しく説明する。 [実施例1]実施例1においては、実施の形態1に係る超音波探傷装置を用い、送受信遅延時間を与えずに、選択振動子群を切り替えて探傷を実施した。振動子群を切り替えることにより、屈折角度が変更され、鋼管1中に入射する超音波ビームが偏向される。図3は、肉厚40mmの鋼板に人工きずを設けた状態を示す図であり、図3(a)は側面図、図3(b)は平面図である。図4は、実施の形態1に係る超音波探傷装置を用い、実施例1の方法により前記鋼板の人口きずを調べた場合を示す波形図であり、図4(a)は鋼板の板厚中央部の横穴を探傷した場合、(b)は外面部のスリットを探傷した場合、(c)は内面部のスリットを探傷した場合を示す。図中の矢印はきず波形位置を示す。 【0033】前記アレイ探触子4についてきずの加工位置からの距離を一定に保持しながら、選択振動子群を順次切り替えて内外面スリット及び板厚中央部の横穴を検出した結果を示している。各部の検出時の屈折角度は以下の通りである。 ・内面スリット検出時の屈折角度:約70°・外面スリット検出時の屈折角度:約55°・中央横穴検出時の屈折角度 :約63°【0034】同時に、通常の斜角探傷試験を実施した。この探傷試験では、屈折角度を55°に固定し、鋼板の板厚方向のきず深さに応じて探触子の位置を変更し、最もSN比が優れた位置において探傷を行った。きずからの離隔距離は概ね、内面きず:0.5スキップ、外面きず:1.0スキップ、中央横穴:0.75スキップとした。 【0035】図5は、実施例1と、前記斜角探傷の2つの方法できずを探傷した場合のSN比を示すグラフである。実施例1ではきず加工位置からアレイ探触子4までの距離を一定に保持しているにも関わらず、屈折角度を変えながら探傷することにより、きずとの距離を最適に調整した通常の斜角探傷と同程度のSN比が得られていることが判る。すなわち、アレイ探触子4が1つで、通常の斜角探触子の3つ分の探傷範囲をカバーすることになる。表1に、前記の内外面スリットきずを通常の探触子及び本発明のアレイ探触子4により探傷した場合の感度差を示す。 【0036】 【表1】
【0037】表1より、本発明のアレイ探触子4を用いた場合、通常の斜角探傷よりも内外面スリットきずの感度差が少ないことが判る。これは下記の理由による。図6は、屈折角度20°〜80°の範囲において、屈折角度と相対エコー強度の相関関係を示したグラフである。通常の斜角探傷では屈折角度は同一にし、きずからの距離を変えて内外面きずを検出するので、内外面スリットそれぞれの感度(相対エコー強度)は図6の点A、点Bとなる。一方、実施例1に係る探傷では、きずからの距離は一定にし、屈折角を変えることにより内外面スリットを検出するので、内外面スリットそれぞれの感度は点A、点Cとなる。図6より、点AB間の感度差に比べ、点AC間の感度差が小さいことが判る。従って、本発明においては、内外面きずの感度差が小さい探傷を行うことが可能となり、同一寸法のきずであれば、内外面のどちらに存在していても同一のエコー強度で検出することができる。 【0038】また、順次選択振動子群を切り替えて走査を行うときに、各選択振動子群で送受信する超音波ビームは、くさび3と鋼管1との接触面上の、長さ20mm×くさび3の幅程度の部分を通過することが実験により確認されているので、この部分の接触状態を安定させることにより、再現性のよい探傷を実施することができる。以上のように、本発明を適用することにより、SAW鋼管等のオンライン探傷を行う場合に探触子4の数を大幅に削減することが可能となった。 【0039】[実施例2]次に、実施例2に係る超音波探傷方法について説明する。この方法においては、実施の形態1に係る超音波探傷装置を用い、グループとして選択された各振動子4aの送受信の遅延時間を探傷位置に合わせて変更する。実施例2では、内面きず探傷の場合は、選択振動子群で送受信される超音波が溶接部2の内面に集束するような遅延時間を与え、外面きず探傷の場合は、溶接部2の外面でビームが集束するような遅延時間を与え、探傷の深さに合わせて送受信遅延時間を変更する。 【0040】図7は、実施例2と、前記斜角探傷の2つ方法により、図3の人工きずを探傷した場合のSN比を示すグラフである。きずの深さに対応させて超音波ビームの集束位置を変えることによりSN比が向上しており、実施例1に係る方法による図5の場合と比較して微小なきずまで検出可能になったことが判る。被検査材の板厚によって、内外面、及び被検査材の板厚中央部までのビーム路程が変わるので、実施例2では被検査材の板厚及び探傷深さに対応させて送受信の遅延時間を変更する必要性があるが、この方法は微小きずまで検出する必要がある場合には極めて有効な探傷方法である。 【0041】[実施例3]実施の形態2に係る超音波探傷装置を用い、送受信遅延を与えずに、超音波探傷を実施した。図8は、実施例3に係る方法と、前記斜角探傷の2つ方法により、図3の人工きずを探傷した場合のSN比を示すグラフである。図8より、実施例2の結果(図7参照)よりは若干劣るが、実施例1の結果(図5参照)、及び通常の斜角探傷に比肩するSN比が得られており、十分にオンライン探傷に適用可能なことが判る。 【0042】図9は、深さ10〜80mmに加工したφ3.2mm横穴から得られるきずエコー強度(相対エコー強度)の深さ依存性を示すグラフである。図9より、実施例2の方法によりきず深さに依存しない相対エコー強度が得られており、実施例1及び実施例3の場合、従来の斜角探傷方法と比較して、エコー強度の深さ依存性が減じていることがわかる。 【0043】以上のように、本発明は鋼管1の溶接部2に存在するきずを超音波探傷する方法において、溶接部2の片側から1つの探触子(溶接部両側から2個)を用いて、溶接部2から探触子4までの距離を一定に保ちながら、溶接線方向に直線走査するだけで、溶接部2の全断面を高精度に探傷することができる。また、比較的小さな送受信遅延を与えるだけで肉厚方向の各深さで超音波ビームを集束することができ、溶接部2の全断面で微小きずの検出が可能となる。そして、くさび3の形状を、集束位置が溶接部2内部の所定位置(例えば中央部)になるような形状にすることにより、送受信遅延処理をしなくても(またはごくわずかの遅延量を与えるのみで)集束点近傍の微小きずを検出することができる。 【0044】なお、前記実施の形態においては、SAW鋼材溶接部探傷における縦方向きず検出(溶接線に垂直に超音波ビーム入射)につき説明しているが、これに限定されるものではなく、溶接線に対し斜めにビームを入射する横方向きず検出にも適用することが可能である。さらに、本発明は、鋼管1の溶接部2の探傷に限定されるものではなく、鋼板の突き合わせ溶接部等の超音波探傷に適用することも可能である。 【0045】 【発明の効果】以上、詳述したように、第1発明及び第3発明による場合は、アレイ探触子との接触面を曲面状になした音響媒質体を用いるので、超音波送受信に関わる超音波振動子のグループを順次切り替えることにより、被検査部分への超音波入射点から探触子までの距離を一定に保ちながら、セクター走査同様の屈折角度変更を行うことができ、被検査部分の全断面を高精度に探傷することが可能になる。特に厚肉の溶接部を自動探傷し、内在きずを精度良く検出する溶接部の超音波探傷方法として有益である。そして、各超音波振動子群で送受信する超音波ビームが音響媒質体と被検査材との接触部において、ほぼ同一の場所を通過するようになり、音響媒質体の長さの短縮を実現することができる。また、選択振動子群を切り替えるだけで屈折角度の変更が可能であるので、各超音波振動子に送受信遅延を与えずに探傷することができる。 【0046】第2及び第4発明による場合は、送受信遅延を与えるので、超音波ビームが被検査材中で拡散するのが防止される。また、遅延時間を小さく、波形歪みを極小化することができ、サイドローブによる虚像の発生を防止することができる。そして、選択振動子群毎に最大200nsec程度の比較的小さな送受信遅延を与えるだけで肉厚方向の各深さで超音波ビームを集束することができ、被検査部分の全断面で微小きず検出が可能となる。 【0047】第5発明による場合は、音響媒質体が、集束位置が被検査材内部の所定位置(例えば溶接部の中央部)になるような形状を有しているので、送受信遅延処理をしなくても(またはごくわずかの遅延量を与えるのみで)集束点近傍の微小きずを検出することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000002118 【氏名又は名称】住友金属工業株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年8月25日(2000.8.25) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100078868 【弁理士】 【氏名又は名称】河野 登夫 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開2002−71648(P2002−71648A) |
| 【公開日】 |
平成14年3月12日(2002.3.12) |
| 【出願番号】 |
特願2000−256416(P2000−256416) |
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