| 【発明の名称】 |
懸濁させた磁性微粒子の磁化率測定方法及び装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】渡會 仁
【氏名】木村 恒久
|
| 【要約】 |
【課題】微小磁極片を用いて100マイクロメータ〜数100マイクロメータ程度の微少幅を隔てて領域に大きな磁場勾配中でキヤビラリー内の溶液中に磁性微小粒子の磁気泳動を引き起こし、微粒子の磁化率を決定することを目的とする。
【解決手段】磁場勾配中に設置されたセル内の溶媒に懸濁させた磁化率未知の磁性微粒子の磁気泳動速度および粒径を測定し、一方磁場勾配中に設置されたセル内の溶媒に懸濁させた磁化率既知の磁性微粒子の磁気泳動速度および粒径を測定し、磁化率既知の微粒子の磁気泳動速度および粒径を測定値に基づいて磁場分布を決定し、決定した磁場分布、磁化率未知の微粒子の磁気泳動速度および粒径の測定値に基づいて個々の微粒子の磁化率を決定することを特徴とする、磁性微粒子の磁化率測定方法。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 磁場勾配中に設置されたセル内の溶媒に懸濁させた磁性微粒子の磁気泳動速度および粒径を測定し、測定した微粒子の磁気泳動速度および粒径、媒体の粘度および磁化率並びに測定磁気勾配に基づいて微粒子の磁化率を決定することを特徴とする、個々の微粒子の磁化率測定方法。 【請求項2】磁場勾配中に設置されたセル内の溶媒に懸濁させた磁化率未知の磁性微粒子の磁気泳動速度および粒径を測定し、一方磁場勾配中に設置されたセル内の溶媒に懸濁させた磁化率既知の磁性微粒子の磁気泳動速度および粒径を測定し、磁化率既知の微粒子の磁気泳動速度および粒径の測定値に基づいて磁場分布を決定し、決定した磁場分布、磁化率未知の微粒子の磁気泳動速度および粒径を測定値を基づいて該微粒子の磁化率を決定することを特徴とする、個々の磁性微粒子の磁化率測定方法。 【請求項3】 磁性微粒子が溶媒中に溶解する場合には、微粒子の溶媒に対する溶解度に基づき磁化率を補正することを特徴とする、請求項1または2の個々の微粒子の磁化率測定方法。 【請求項4】 微小磁場を形成する1対の磁石と、1対の磁石の間に形成された微小磁場空間に設置され、磁性微粒子を含む溶媒を充填するセルと、磁場付加中にセル内溶媒中の磁性微粒子の磁気泳動速度を測定する測定器、該微粒子の半径を測定する測定器、測定した微粒子の磁気泳動速度および粒径、媒体の粘度および磁化率並びに測定磁気勾配に基づいて磁性微粒子の磁化率を決定する演算装置とからなる磁気泳動方式の個々の磁性微粒子の磁化率測定装置。 【請求項5】 磁場付加中にセル内溶媒中の磁性微粒子の磁気泳動速度を測定する測定器と該微粒子の半径を測定する測定器とが、セル中の微粒子を観測する顕微鏡と、顕微鏡で得られた画像を電気信号に変換するCCDカメラと、CCDカメラで変換された電気信号を記録するレコーダと、記録された電気信号を解析する解析装置からなる、請求項4に記載の磁気泳動方式の個々の磁性微粒子の磁化率測定装置。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、磁場勾配中に設置されたキャピラリー等のセル内の溶媒中の微粒子の磁気泳動速度と微粒子の半径とを測定し、その磁気泳動速度と微粒子の半径とに基づいて微小粒子の磁化率を決定する微粒子磁気泳動方式磁化率測定方法及び装置に関する。 【0002】 【従来技術】従来、ある程度の分量の固体、液体の磁化率の測定については、グーイの磁気てんびんが利用されているが、微粒子一個一個の磁化率を測定する方法はこれまでに存在していない。本発明により、磁化率の微粒子による偏り、あるいは磁化率の分布を知ることができる。今日、高度の品質を追求する素材産業分野では、微粒子材質の均質性が問題となっている。本発明は、これらの問題に対応しう唯一の測定法を提供することを目的とする。 【0003】 【課題を解決するための手段】本発明は、小型永久磁石あるいは外部磁場により磁化された微小磁極片を用いて100マイクロメータ〜数100マイクロメータ程度の微少幅を隔てて領域に大きな磁場勾配を発生させ、また発生した磁場勾配を用いて、キヤビラリー内の溶液中の磁性微粒子に磁気泳動を引き起こし、この磁性微粒子の磁気泳動速度と粒径とを測定し、磁性微粒子の磁気泳動速度と粒径の測定値とに基づいて微粒子の磁化率を決定する方法および装置に関する。 【0004】より詳しく述べると、本発明の磁気泳動移動速度の測定から微粒子の磁化率を決定する方法は、磁場勾配中に設置されたセル内の溶媒に懸濁させた微粒子の磁気泳動速度および粒径を測定し、測定した微粒子の磁気泳動速度および粒径、媒体の粘度および磁化率並びに測定磁気勾配に基づいて個々の微粒子の磁化率を決定することを特徴とする。 【0005】さらに、本発明の磁気泳動移動速度の測定から磁性微粒子の磁化率を決定する別の方法は、磁場勾配中に設置されたセル内の溶媒に懸濁させた磁化率未知の磁性微粒子の磁気泳動速度および粒径を測定し、一方磁場勾配中に設置されたセル内の溶媒に懸濁させた磁化率既知の磁性微粒子の磁気泳動速度および粒径を測定し、磁化率既知の微粒子の磁気泳動速度および粒径の測定値に基づいて磁場分布を決定し、決定した磁場分布、磁化率未知の微粒子の磁気泳動速度および粒径の測定値に基づいて個々の微粒子の磁化率を決定することを特徴とする。 【0006】磁性微粒子が溶媒中に溶解する場合には、微粒子の溶媒に対する溶解度に基づき磁化率を補正する。また、所定の磁性微粒子を含有する該溶媒として微粒子を構成する物質を飽和させた溶媒を用いることが好ましい。その理由は、磁性微粒子が溶媒中に溶解して粒径が変動することが防止できるからである。 【0007】本発明の磁気泳動方式の磁性微粒子の磁化率測定装置は、微小磁場を形成する1対の磁石と、1対の磁石の間に形成された微小磁場空間に設置され、磁性微粒子を含む溶媒を充填するセルと、磁場付加中にセル内溶媒中の磁性微粒子の磁気泳動速度を測定する測定器、該微粒子の半径を測定する測定器、測定した微粒子の磁気泳動速度および粒径、媒体の粘度および磁化率並びに測定磁気勾配に基づいて磁性微粒子の磁化率を決定する演算装置とからなる。 【0008】磁場付加中にセル内溶媒中の磁性微粒子の磁気泳動速度を測定する測定器と該微粒子の半径を測定する測定器とが、セル中の微粒子を観測する顕微鏡と、顕微鏡で得られた画像を電気信号に変換するCCDカメラと、CCDカメラで変換された電気信号を記録するレコーダと、記録された電気信号を解析する解析装置とすることができる。 【0009】 【発明の実施の態様】以下に、本発明を適宜図面を参照して詳細に説明する。まず、本発明の発明の背景等について言及する。本発明者は、一対の小型永久磁石あるいは、永久磁石、電磁石、超伝導磁石により磁化された一対の微小磁極片を100マイクロメータ〜数百マイクロメータ、例えば、500マイクロメータ程度の一定距離の空僚を空けて配置し、一方の磁極片から他方の磁極片に磁力線が該空隙を通り抜けるようにした場合、その空隙の磁石間端から外方、例えば約100マイクロメータの位置に磁力線の向きが逆転する点(磁束密度B=0)が存在するため、この点の両側、特にこの点から空隙の内側に大きな磁気勾配が発生することを見出した。その大きさを示すB(dB/dx)の値は容易に400T2/mに逢することを発見した。これは、通常、超伝導磁石により発生させることのできる強度である。 【0010】この空隙を通って、断面積が100マイクロメータx100マイクロメータ程度の正方形であるガラスキヤビラリーを設置して、微粒子を含む水溶液または非水溶液を導入し、流れを止めた状態にする。キャピラリー内の溶媒と微粒子の磁化率の差に応じて、微粒子はB=0の点に近づく方向、あるいは、遠ざかる方向に泳動する。このときの磁性微粒子の粒径と泳動速度とをCCDカメラとビデオ記録システムを有する顕微鏡により測定する。このとき、粒径と磁化率が既知の微粒子を用いて泳動速度を測定することによって、空隙内の磁場強度のマイクロメータオーダーの分布を決定することができる。通常広く使用されているガウスメータでは、このような微小部分における磁場分布を求めることは不可能である。 【0011】次いで、磁化率既知の媒体中の磁化率未知の微粒子について泳動速度を測定し、位置と泳動速度との関係から、その微粒子の磁化率を決定することができる。細いキャピラリーと顕徴鏡とを用いるので、数マイクロメータ程度までの大きさの微粒子の磁化率を決定することができる。微粒子の状態は、形状と大きさが判定できるものであれば、液体、固体、気体のいずれのものでもよい。したがって、試料としては、微小粒子を含む生体試料、環境試料、機能性材料等のいかなる試料にも適用できる。マイクロシリンジあるいはマイクロポンプを用いてキヤビラリーに試料を連続的に送り込むことができるので、多数の試料を迅速に計測することができる。 【実施の態様】 【0012】以下に、本発明に至った実験及び技術解析及び理論的構成についてさらに詳細に説明する。 (1) 不均一磁場中で磁性粒子が受ける力と磁気泳動速度小型の永久磁石あるいは、磁場中において磁化された一対の微小磁極片を100〜400マイクロメータ程度の空隙を空けて配置したときに該空隙の両磁石の端部間付近に生じる磁場勾配に、100マイクロメータ×100マイクロメータ程度の正方形の断面積を有するガラスキャピラリーを設置し、これに微粒子を含む水溶媒または非水溶媒を導入する。図1(a)および図1(b)参照。この場合、図のように磁極片(例えば、鉄片)の長い方を磁石に対して垂直につけると、磁極片が磁石の散らばっている磁力線を寄せ集め、その先端により強い磁場を発生させる。このとき鉄片のx軸(キヤピラリーの中心軸)に沿って大きな磁場勾配が生じるので、この領域に生じる磁気浮力を泳動の駆動力として利用し、また、x軸は、フローの方向を正の向きとし、フローが流れてくる方の磁極片の端を0にとった。図中、1、1は対向させた1対の磁石、MPは各磁石の対向面に垂直で内側方向に向けて上記空隙を空けて取付けた鉄片、Cは鉄片MP,MPの間の空隙を通して配置したガラスキャピラリーを示す。溶媒が弱い反磁性で、微粒子が強磁性物質を含む場合、微粒子には、磁石端の外約100マイクロメータのB=0の点から磁石の空隙内に向かう磁気力が作用し(図1(c)参照)、これに対抗する粘性カとの差の力により等速の運動が生じる。溶媒が常磁性で、微粒子が弱い反磁性の場合は、磁気浮力により泳動の方向が磁石の空隙内からB=0点に向かう。磁極間には磁気勾配があるので、このときの運動はキャピラリー壁方向に直線的に泳動するのではなく、弧を描くように移動し、ついにはキャピラリー壁に接触する。 【0013】(2) 不均一磁場中に置かれた物質は、その磁性により磁気力を受ける。その物質が常磁性体ならば磁場の強い方へと力を受け、反磁性ならば磁場の弱い方へと力を受ける。図2(a)は、常磁性の微細粒子が磁場の強い方へと引き寄せられていく様子を表している。このとき、キャピラリー軸方向(以下、x方向とする)について考えると磁性粒子が不均一磁場中で受ける力、すなわち磁気力は近似的に次式で表される。 【数1】
ここで、Vは粒子の体積(m3)、μ0は真空の透磁率(Ns2c−2)、χは粒子の体積磁化率(−)、Hは外部磁界(Am-1)、dH/dxは磁界勾配(Am-2)である。磁界Hと磁束密度B(T)との間にはB=μμ0Hの関係が成り立つので、μ=1とすると、(1)式は次のように書き換えることができる。 【数2】
不均一磁場中にある媒体中の粒子にもこのような磁気力がはたらくが、この場合、媒体にも同様に磁気力がはたらくので、それにより発生する力についても考慮しなければならない。つまり、粒子には、図2(b)にあるような二つの力がはたらくことになる。ひとつは粒子自身にはたらく磁気力Fpであり、もうひとつは粒子と同体積の媒体にはたらく力と大きさが等しく、向きが逆向きの力、磁気浮力Ffである。よって、媒体中の粒子が受ける力Fmは(2)式より、【数3】
となる。ここで、χp、χfはそれぞれ粒子と媒体の体積磁化率である。一方、粒子が磁気力により媒体中を泳動すると、その粒子は泳動方向とは逆向きに流体抵抗力Fvを受けるが、粒子が球形である場合、その力の大きさはストークスの法則により次のように表される。 【数4】
ここで、ηは媒体の粘度(Pas)、rは粒子半径(m)、vは粒子の速度(ms−1)である。我々の扱う泳動現象では粒子の質量と加速度が十分小さいので、FmとFvが常につりあいながら泳動していると考えて、粒子の泳動速度として次式を得る。 【数5】
(5)式より明らかなように、泳動速度は粒子の位置により決定される。また、粒子の泳動速度を大きくするためには、粒子と媒体の磁化率の差を大きくするかB(dB/dx)の値を大きくすることが必要である。われわれの実験では、例えば、媒体に強磁性溶液の塩化マンガン水溶液を用いることによって粒子と媒体の磁性差を大きくし、主に磁気浮力により粒子を泳勤させている。 【0014】(2)磁性粒子の磁性泳動速度の測定溶媒中の磁性粒子の磁性粒子の磁気泳動速度を実際に、以下の方法及び装置を用いて測定した。 (2−1) 試料磁気泳動速度解析の対象として、磁化率が大きく、入手しやすい塩化マンガン水溶液の液滴を選んだ。実験を開始する直前に0.001〜1.0mol dm-3の塩化マンガン水溶液を媒体である安息香酸エチル5mlが入ったスクリュー管に30μl加え超音波で液滴に分散させたものを試料とした。安息香酸エチルは水で飽和したものと、そうでないものを用いた。また磁化率を測定するための試料に0.02〜2.5mol dm-3の塩化マンガン水溶液を用いた。 【0015】(2−2) 測定装置(2−2−1)磁気泳動速度測定装置及び実験条件図3に示す磁気泳動速度測定装置を用いて、微粒子の磁気泳動速度を測定した。磁気泳動速度測定装置は、セルとしてのキャピラリーCを間に配置する一対の磁石1と、微粒子の磁気泳動を観察する顕微鏡2と、キャピラリーに光を当てるための照射ライト3、顕微鏡で得られた画像の光信号を電気信号として変換するCCDカメラ4と、モニター装置5と、顕微鏡で得られた画像を電気信号として記録するビデオテープレコーダ6と、演算装置(パソコン)7とからなる。また、セルを水平面でX,Y方向に位置調節するためのXYステージ8を設けた。 【0016】試料液を入れるセルには、内寸100μm ×100μm 、外寸300μm ×300μm の正方形型キャピラリー(Polymicro Technologes,Square Flexible Fused Silica Capillary Tubing)を用いた。上記キャピラリー(長さ20cm)に前述の試料液を入れ図3のように二枚の磁石間に設置した。磁石には大きさ16.85mm×19.6mm×2.9mmのNd−Fe−B磁石(住友特殊金属,NEOMAX)を使用した。泳動速度の測定領域は磁場勾配の大きな、磁石端から200μm 内側とした。大きな泳動速度を得るためにはB(dB/dx)の値を大きくする必要があるので、アルミニウムのスペーサーを用いて、二枚の磁石間の距離を400μm とした。二枚の磁石はアルミニウム製の磁石ホルダーに固定されており、磁石ホルダーはXYステージによりその位置を調節した。ポリスチレン粒子の泳動挙動は、顕微鏡(中央精機)、CCDカメラ(ELMO,CN42H)、モニターにより観測し、ビデオに録画して画像をパソコンに取り込みその解析を行った。 【0017】(2−2−2)磁化率の測定磁化率の測定には、磁化率測定器(Sherwood Scientific LTD,MSB−AUTO)を用いた。 【0018】(2−3)磁場解析ソフト”SUPERMOMENT”によるシミュレーションコイルや磁石の作る磁場や発生するトルクなどを計算することを磁場解析というが、これらの計算手法には、磁気モーメント法、有限要素法、境界要素法などがある。本発明で磁場解析のために使用した”SUPERMOMENT’(H.Sekiya,1998)は磁気モーメント法のプログラムであり、従来大型コンピューターが使われていた磁場解析をパソコン上で実行できるようにした製品である。 【0019】この“SUPERMOMENT”によって、磁石が作るおおよその磁場を計算することはできるが、厳密に磁石周辺での磁場強度を計算することはできない。理由は、実際の磁石の性質と形は完全に整っているわけではないので、実験系ではその影響が出てきてしまうからである。特に、本発明で扱ったような非常にミクロな空間では、磁石の端の丸みなどが磁場の形成に大きな影響を与える。しかし、ガウスメーターなどの磁場測定器を使用できないような小さな空間の磁場を予想するには、”SUPERMOMENT”による磁場解析は非常に有用な手段である。 【0020】シミュレーション用の磁石には17mm×19mm×3mmのNeFeB40磁石(上のNd−Fe−B磁石と同じ)は同じものを用いた。X軸は磁石端を0、磁石の内側方向を正の向きとし、Z軸は磁石の中心を0とした.磁石間の距離は実験と同様、400mmである。 (3)実験結果とその考察(3−1) 磁場の形と泳動挙動シミュレーションから得た磁場の形を図3(a)に示す。図3(b)は磁石及びキャピラリーとX軸及びZ軸との関係を示す。ここからB(dB/dx)の概形を導くと、図5(a)と図5(b)のようになる。この図5(a)と図5(b)と式(5)を見ると、x=200μm付近で速度が最も大きくなる事がわかる。また、z方向には近いほうの磁石に引き付けられるように泳動することも分かる。図6は泳動中の液滴の画像を1秒ごとにパソコンに取り込み重ね合わせた図であるがシミュレーションでの予想どおりに動いている。0〜300μmで液滴のx方向の速度を測定したものが図7である。このグラフから分かるように、速度は磁場の形を反映して位置により変化しx=200μm付近で最大になる。また粒径、濃度に依存することが分かる。 【0021】(3−2) x=200μm 付近での鞄の粒径依存性式(5)から分かるように、速度vx性は粒径rの二乗に比例する。図8は液滴に0.06mol dm−3塩化マンガン水溶液を用いたときの、x=200μm でのvxをr2に対しプロットしたものであり比例関係が得られた。 【0022】(3−3) △xとマンガン濃度との関係磁気天秤を用いて、△xとマンガン濃度[Mn2+]との関係を調べた結果が、図9である。このグラフから△xと[Mn2+]との間に次の式が成り立つことが分かった。 【数6】
(3−4)x=200μm付近でのVxの濃度依存性式(5)、(6)から△xは[Mn2+]にも比例することが分かる。 【数7】
【0023】このことを確かめるために、vx/r2を[Mn2+]に対してプロットしたグラフが図10である。グラフを見るとvx/r2は[Mn2+]に依存していることは分かるが単純な比例関係でもないようである。式(7)に実験で求めたx=20μmでのB(dB/dx)を代入して得た理論値が図10中の斜めの直線である。なぜこのような関係になったのかを考えると、安息香酸エチル5mlに塩化マンガン水溶液を30μl分散させていることから、安息香酸エチル中に液滴の水が溶け出しており、[Mn2+]が大きくなっているということが考えられた。 【0024】(3−5) 水に飽和した安息香酸エチルを用いた実験の結果液滴が濃縮されて[Mn2+]が大きくなっているかどうかを調べるため、水に飽和した安息香酸エチルを媒体として実験を行い、図7と同じようにvx/r2を[Mn2+]に対してプロットし図10に加えたものが図11である。新たにプロットしたものは理論値と良い一致を示している。よって、水が溶け出していたと考えてまず間違いない。 【0025】 【発明の実施の態様】以下に、本発明の実施の態様について述べる。 (1)微粒子、磁性化学種本発明においては、磁性化学種を含有する微粒子としては、上記実験のように水等の溶媒等とすることができ、該溶媒等には密度が1に近く水と混じりあわない非水溶媒、高分子、セラミック、環境浮遊微粒子、生体微粒子等の固体を挙げることができ、また磁性化学種としては、マンガン(II)、鉄(II)などの遷移金属イオンや希土類金属イオン他、それらを含む化合物を挙げることができる。また、微粒子の粒径としては、0.1ミクロンから100ミクロン位の微粒子の微粒子が本願発明で特に適合し、また溶媒等な化の磁性化学種の濃度はまた磁性化学種の濃度は、10−5〜1 mol dm−3位とすることが好ましい。 【0026】(2)溶媒微粒子を分散させる溶媒としては、水及び水以外の透明な液体を用いることができる。微粒子と微粒子懸濁溶媒との好ましい組合せとしては、例えば水溶液と安息香酸エチル、2−フルオロベンゼン、アニソール等が上げられる。また、溶媒中に分散させる微粒子の濃度は特に限定されるものではないが1x10−5〜1 mol dm−3が本発明の磁気泳動方式磁化率測定方法に特に適合する。なお、微粒子を形成する物質が溶媒中に溶解する場合には該物質を飽和させた溶媒を用いて同様の測定を行い検量線を補正して本発明の磁気泳動方式磁化率測定を行うことができる。また、微粒子は、その磁化率が媒体より大きいか、小さいかにより泳動の方向を異にするので、泳動の方向から含まれる物質が反磁性か強磁性か等も判定することができる。泳動速度から濃度を決定する考え方は、他の泳動法にも適用できる。 【0027】(3)セルセルとしては、キャピラリー管、ガラスセル、プラスチックセルを用いることができ、キャピラリーの寸法は特に限定されるものではないが、例えば、断面席100ミクロン×100ミクロンとすることが好ましい。 (4)その他その他、本法は、有機溶液に水溶液を分散させたものでも、あるいは逆に水溶液に有機溶液を分散させたものに対しても適用可能である。 【0028】 【実施例】(実施例1)図1の磁石と鉄片の配置によって生じるB(dB/dx)の値を見積もるために、磁気泳動速度の測定を行った。試料液を粒径3μmのポリスチレン粒子を含む0,6M塩化マンガン水溶液とし、顕微鏡によりポリスチレン粒子の泳動速度を測定した。磁石1にはNd−Fe−B磁石を、磁極片MPとしての鉄片には大きさが3×1×7mmで純度が99.8%のものを使用した。また、二枚の磁石間の距離を保つために厚さ14.4mmのアルミニウムスペーサを用いた。図のように鉄片の長い方を磁石に対して垂直につけると、鉄片が磁石の散らばっている磁力線を寄せ集めて磁極片の役割を果たし、その先端により強い磁場を発生させる。このとき鉄片のx軸(キヤピラリーの中心軸)に沿って大きな磁場勾配が生じるので、この領域に生じる磁気浮力を泳勤の駆動力として利用した。 また、ここでのx軸は、フローの方向を正の向きとし、フローが流れてくる方の鉄片の端を0にとった。図12,13は0.6M塩化マンガン水溶液中での3μmポリスチレン粒子の泳動速度、およびその結果から予想されるB(dB/dx)をそれぞれ示している。ここで、図中の破線間の距離は鉄片の幅を表している。これらのグラフから分かるように、粒子が凝集する現象は観測されなかった。泳動速度の最高値はx=95μmで、−62μms2となっているが、これは鉄片を用いないときの3μmポリステレン粒子の最高速度のおよそ4倍である。つまり鉄片を使うことによって、これまでの磁石配置よりも約4倍大きい磁気浮力を得たことになる。このことは図4のB(dB/dx)の最高値約1,800T2/mであることから明らかである。 (実施例2)赤血球の体積磁化率の測定鉄片を使った磁石配置で赤血球の泳動速度を観測した結果が図14である。赤血球は0.1Mの塩化マンガン水溶液中で、ポリステレン粒子と同じ泳動方向、つまり磁気浮力方向に泳動しているのが分かる。赤血球の主要成分であるヘモグロビンはもともと常磁性(体積磁化率10.08×10−6)であるが、酸素が結合すると反磁性を示すようになる。実験で使用した赤血球には酸素と結合したものと、そうでないものが両方含まれていると考えられるが、いずれにしてもその磁化率は0.1Mの塩化マンガン水溶液(体積磁化率10.54x10−6)に比べてはるかに小さいために磁気浮力により泳勤したと思われる。この赤血球の泳動速度をB(dB/dx)に対してプロットしたものが図15である。横軸のB(dB/Dx)は、ポリスチレン粒子の泳動実験結果(図13)から求めたものである。このグラフにおける傾き−2・72×10−8(m2sー1T−2)は、式(5)から分かるように赤血球に関する情報、2(χp−χf)r2/9μμ0を与えるので、これより赤血球の体積磁化率を求めることができる。ただし、赤血球は球形ではなく円盤状になっているため、以下の補正式によりその補正半径r,を見積もることにする。 【数8】
ここでJは赤血球の泳動方向の特性長(m)、Vは体積(m3)、Aは泳動方向に垂直な面の最大断面積(m2)である。血液中での赤血球の体積8×10−17(m3)とA/l=5.5×10−6(m)を用いると、赤血球の補正半径は2.3×10−6(m)、体積磁化率は−17×10−6となる。しかし、この値は赤血球の体積磁化率の値としては大きすぎる。そこで0.1M塩化マンガン水溶液中では赤血球が少し膨張しているとして、その補正半径を3・0×10−6(m)(体積は1.3×10−16(m3))とすると、体積磁化率は−5.8×10−6と求まる。この値は、完全に脱酸素化された赤血球の体積磁化率−3.8×10−6と比べても十分妥当なものである。ただし、このようにして体積磁化率を決定するためには、正確に補正半径r2を求めることが必要である。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】391016945 【氏名又は名称】大阪大学長
|
| 【出願日】 |
平成12年8月30日(2000.8.30) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100059258 【弁理士】 【氏名又は名称】杉村 暁秀 (外2名)
|
| 【公開番号】 |
特開2002−71645(P2002−71645A) |
| 【公開日】 |
平成14年3月12日(2002.3.12) |
| 【出願番号】 |
特願2000−261557(P2000−261557) |
|