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【発明の名称】 ガスセンサ素子
【発明者】 【氏名】藤井 並次

【氏名】佐藤 元昭

【氏名】小林 清美

【氏名】堀田 泰道

【要約】 【課題】Si成分等の気相の被毒物が被測定ガス側電極まで到達することを防止し,長期に渡って安定したセンサ出力を維持することができるガスセンサ素子を提供すること。

【解決手段】粗粒子と細粒子とからなると共に上記粗粒子間に形成される空隙部分に細粒子が充填されている構造を有するセラミック多孔質体製の第2保護層13が設けてあり,上記粗粒子及び細粒子の少なくとも一方は,γ−Al23,θ−Al23,δ−Al23,またはこれらのアルミナと同じ結晶構造を有した固溶体のいずれか1種以上を含有している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 固体電解質体と,該固体電解質体における基準ガスと対面する側に設けた基準ガス側電極と,また上記固体電解質体における被測定ガスと対面する側に設けた被測定ガス側電極とよりなるガスセンサ素子において,上記被測定ガス側電極の表面には,粗粒子と細粒子とからなると共に上記粗粒子間に形成される空隙部分に細粒子が充填されている構造を有するセラミック多孔質体製の保護層が設けてあり,上記粗粒子及び細粒子の少なくとも一方は,γ−Al23,θ−Al23,δ−Al23,またはこれらのアルミナと同じ結晶構造を有した固溶体のいずれか1種以上を含有していることを特徴とするガスセンサ素子。
【請求項2】 請求項1において,上記保護層は貴金属触媒を含有していることを特徴とするガスセンサ素子。
【請求項3】 請求項1または2において,上記保護層において,上記粗粒子の平均粒子径(RB)と細粒子の平均粒子径(RA)の比(RB/RA)は3以上であることを特徴とするガスセンサ素子。
【請求項4】 請求項1〜3のいずれか一項において,上記細粒子の平均粒子径は0.1〜5μm,上記粗粒子の平均粒子径は0.3〜50μmであることを特徴とするガスセンサ素子。
【請求項5】 請求項1〜4のいずれか一項において,上記保護層における細粒子の割合は上記粗粒子の含有量WBと細粒子の含有量WAの合計量W(=WA+WB)に対する細粒子の含有量WAの重量比(WA/Wの値)は20以上であることを特徴とするガスセンサ素子。
【請求項6】 固体電解質体と,該固体電解質体における基準ガスと対面する側に設けた基準ガス側電極と,また上記固体電解質体における被測定ガスと対面する側に設けた被測定ガス側電極とよりなるガスセンサ素子において,上記被測定ガス側電極の表面には,粗粒子と細粒子とからなると共に上記粗粒子間に形成される空隙部分に細粒子が充填されている構造を有するセラミック多孔質体製の保護層が設けてあり,上記粗粒子及び細粒子の少なくとも一方は比表面積が50m2/g以上であることを特徴とするガスセンサ素子。
【発明の詳細な説明】【0001】
【技術分野】本発明は,内燃機関の空燃比制御などに用いられるガスセンサ素子に関する。
【0002】
【従来技術】一般に,自動車内燃機関の排気系には空燃比制御に利用されるガスセンサが設置されている。このガスセンサに内蔵されるガスセンサ素子として,例えば排ガス中の酸素濃度を検出可能な,ZrO2よりなる固体電解質体を用いた酸素濃淡起電力式の素子がよく知られており,実用化されている。
【0003】このような起電力式のガスセンサ素子として,例えば特公平2−15017号のような構成が知られている。上記従来技術にかかる酸素濃度検出器は,検出器の先端部分にガスセンサ素子が設けられており,該ガスセンサ素子は,基準ガス側電極,固体電解質焼結体,被測定ガス側電極,電極保護層を順に形成した有底円筒体である。また,センサ素子の内腔内にはヒータが挿入されている。
【0004】上記電極保護層はセラミックコーティング層,またはセラミックコーティング層上に例えばγ−Al23層を設けた層から形成されている。排ガスは上記セラミックコーティング層または上記γ−Al23層を通って上記被測定ガス側電極に達する。
【0005】近年の排ガス規制強化に伴ない,燃焼制御をより精密に行う必要性が生じている。この条件を満たすためには,ガスセンサが使用環境下でセンサ特性が変化せず,より安定に長期間使用できることが不可欠の要件となっている。
【0006】使用環境下でセンサ特性が変化する大きな要因は,ガソリン中のPb,S等の成分,ガソリン,オイル中に含まれるK,Na,P,Ca,Zn等の添加物の成分や内燃機関のシール材等に含まれるSi成分によるガスセンサ素子の被毒劣化である。
【0007】特開平10−221296号には,粗粒子と細粒子からなると共に,該粗粒子間に形成される空隙部分に細粒子を充填した構造を有する保獲層を被測定ガス側電極に対し設けた素子が提案されている。上記技術は,粗粒子の隙間に細粒子を埋めることで,保護層の気孔率,細孔径を適度に絞ることができ,被毒性を向上させると共に,ガスの絞り効果により排ガス中の未燃成分を残存酸素と平衡反応させて,センサ出力波形をシャープにすることを狙ったものである。
【0008】
【解決しようとする課題】しかしながら,上記従来技術は,ガソリンやオイル成分の化合物によって形成される結晶質,または緻密なガラス状物質による保護層の目詰まりを防止することはできる。よって,これらの物質による被毒劣化防止には有効である。しかしながら,内燃機関のシール材等に含まれるSi成分等,気相の物質による被毒劣化に対しては十分な効果を得ることができない。なお,Si成分による被毒とは,Si成分が気相の状態でガスセンサ素子に達し,それが保護層を通過して被測定ガス側電極まで到達し,被測定ガス側電極上を覆うことで電極の活性が失われることによりセンサ特性が劣化するモードである。
【0009】本発明は,かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので,Si成分等の気相の被毒物が被測定ガス側電極まで到達することを防止し,該気相の被毒物が被測定ガス側電極を被覆することを防止することで,長期に渡って安定したセンサ出力を維持することができるガスセンサ素子を提供しようとするものである。
【0010】
【課題の解決手段】請求項1に記載の発明は,固体電解質体と,該固体電解質体における基準ガスと対面する側に設けた基準ガス側電極と,また上記固体電解質体における被測定ガスと対面する側に設けた被測定ガス側電極とよりなるガスセンサ素子において,上記被測定ガス側電極の表面には,粗粒子と細粒子とからなると共に上記粗粒子間に形成される空隙部分に細粒子が充填されている構造を有するセラミック多孔質体製の保護層が設けてあり,上記粗粒子及び細粒子の少なくとも一方は,γ−Al23,θ−Al23,δ−Al23,またはこれらのアルミナと同じ結晶構造を有した固溶体のいずれか1種以上を含有していることを特徴とするガスセンサ素子にある。
【0011】本発明において最も注目すべきことは,保護層を構成する粗粒子及び細粒子の少なくとも一方が,γ−Al23,θ−Al23,δ−Al23,またはこれらのアルミナと同じ結晶構造を有した固溶体のいずれか1種以上を含有していることである。つまり,これらの固溶体はγ−Al23,θ−Al23,δ−Al23,と同じ結晶構造を有する正方晶系,単斜晶系のいずれかの結晶構造を有するアルミナ固溶体である。また,粗粒子,細粒子は同一の材料から構成されていても,異なる材料から構成されていてもよい。
【0012】なお,上記固溶体の具体例としては,γ−(Al1-xLax23,θ−(Al1-xLax23,δ−(Al1-xLax23という物質を挙げることができる。
【0013】また,上記保護層は少なくとも被測定ガス側電極の表面全体を覆うように設けてある。また,固体電解質体の表面を電極と共に被覆するように,上記保護層を設けることもできる。また,本発明にかかる保護層と電極との間に更に別の層を設けることもできる(図1参照)。
【0014】次に,本発明の作用につき説明する。本発明にかかる保護層は,粗粒子と細粒子とから構成されている。このため,粗粒子間の空隙部分に細粒子が入り込むことで,保護層の気孔率,細孔径を十分に小さくすることができる。また,保護層形成時に粗粒子同士がブリッジとなり,保護層における亀裂の発生を防止することができるため,十分に厚い保護層を容易に得ることができる。
【0015】そして,上記保護層を構成する粗粒子及び細粒子は,γ−Al23,θ−Al23,δ−Al23といった,比表面積が非常に大きい材料を含んでいる。このため,気相の被毒物質との接触面積を大きくすることができ,これら被毒物質を確実に保護層において捕獲することができる。これにより,気相で飛散してくる被毒物を保護層で確実に捕獲して,これら被毒物質が被測定ガス側電極まで到達することを確実に防止できる。よって,長期間に渡って安定したセンサ出力を維持することができる。
【0016】以上,本発明によれば,Si成分等の気相の被毒物が被測定ガス側電極まで到達することを防止し,該気相の被毒物が被測定ガス側電極を被覆することを防止することで,長期に渡って安定したセンサ出力を維持することができるガスセンサ素子を提供することができる。よって,本発明にかかるガスセンサ素子は内燃機関排気系に設置する用途に好適である。
【0017】また,保護層を構成するγ−Al23,θ−Al23,δ−Al23,またはこれらのアルミナと同じ結晶構造を有した固溶体としては,比表面積が50m2/g以上であるものを用いることが好ましい。これにより,本発明にかかる効果をより一層得ることができる。比表面積が50m2/g未満である場合は,その粒子自身の被毒物捕獲能力が低くなり,よってセンサの被毒防止能力が低下するおそれがある。
【0018】また,上記保護層の厚さは50μm以上であることが望ましい。これにより,被毒物が充分にγ−Al23等の粒子と接触することでセンサの被毒防止能力を充分に高めることができる。厚みが50μm未満である場合は,被毒物が捕獲粒子と十分に接触できず,よって,センサの被毒防止能力が低下するおそれがある。
【0019】本発明にかかる構成は後述する図1に示すようコップ型のガスセンサ素子の他,積層型で板状のガスセンサ素子を搭載したものに適用することができる。また,本発明にかかる構成は車両用内燃機関搭載用の酸素センサ,空燃比センサの他,特に積層型の場合はNOxセンサ,CO,HCセンサ等に適用することができる。
【0020】次に,請求項2に記載の発明のように,上記保護層は貴金属触媒を含有していることが好ましい。貴金属触媒は未燃焼ガスを平衡化することができるため,センサ出力を安定させる作用を有するため,保護層の気相の被毒物質捕獲能力を補完して,本発明にかかる効果をより一層高めることができる。また,保護層に対して貴金属触媒は,後述する図5に示すごとく,粗粒子の周囲や細粒子間に分散するようにして含有されることが好ましい。なお,上記貴金属としては,Pt,Rh,Pd等を用いることができる。
【0021】また,保護層に対する貴金属の含有量は,0.1〜5%であることが好ましい。これにより,貴金属のガスの平衡化作用により,センサの被毒防止能力を一層高めることができる。含有量が0.1%未満では上記効果を得ることが難しく,5%より多くなると,未燃焼ガス並びに残存酸素が平衡化される際の貴金属へのガス成分の吸着時間が長くなり,被毒防止能力は問題ないもののセンサの応答性の悪化という問題が生じるおそれがある。
【0022】次に,請求項3記載の発明のように,上記保護層において,上記粗粒子の平均粒子径(RB)と細粒子の平均粒子径(RA)の比(RB/RA)は3以上であることが望ましい。RA/RBが3以上となることで粗粒子の隙間を細粒子が効果的に充填して,保護層の気孔率,細孔径を低下させ,高い被毒防止効果を得ることができる。RA/RBが3未満の場合には,粗粒子の隙間を細粒子が十分に充填することが困難となり,被毒物を捕獲能力が低くなるおそれがある。また,RA/RBの上限は,保護層を形成する際のスラリーの安定性から,150とすることが好ましい。
【0023】請求項4記載の発明のように,上記細粒子の平均粒子径は0.1〜5μm,上記粗粒子の平均粒子径は0.3〜50μmであることが好ましい。これにより,被毒防止効果に優れた保護層を得ることができる。
【0024】細粒子の平均粒子径が0.15μm未満である場合は,保護層を形成する際に亀裂が発生し,被毒防止効果が低下するおそれがある。一方,5μmを越えた場合は,保護層の形成時に用いるスラリーの粒子の分散性が悪くなり,均一な保護層を形成し難くなり,被毒防止効果が低下するおそれがある。
【0025】さらに,粗粒子の平均粒子径が0.3μm未満である場合は,同様に保護層を形成する際に亀裂が発生し,被毒防止効果が低下するおそれがある。一方,50μmを越えた場合は,同様に保護層の形成時に用いるスラリーの粒子の分散性が悪くなり,均一な保護層を形成し難くなり,被毒防止効果が低下するおそれがある。
【0026】請求項5記載の発明のように,上記保護層における細粒子の割合は上記粗粒子の含有量WBと細粒子の含有量WAの合計量W(=WA+WB)に対する細粒子の含有量WAの重量比(WA/Wの値)は20以上であることが望ましい。WA/Wを20以上とすることで粗粒子の隙間を細粒子が効果的に充填して,保護層の気孔率,細孔径を低下させ耐被毒性をより高めることができる。WA/Wが20未満である場合は,気孔率,細孔径が十分に低下せず,よってセンサの被毒防止能力が低下するおそれがある。また,重量比は上げすぎると,粗粒子のすき間を細粒子が効果的に重点できなくなることから,50以下とすることが好ましい。
【0027】請求項6記載の発明は,固体電解質体と,該固体電解質体における基準ガスと対面する側に設けた基準ガス側電極と,また上記固体電解質体における被測定ガスと対面する側に設けた被測定ガス側電極とよりなるガスセンサ素子において,上記被測定ガス側電極の表面には,粗粒子と細粒子とからなると共に上記粗粒子間に形成される空隙部分に細粒子が充填されている構造を有するセラミック多孔質体製の保護層が設けてあり,上記粗粒子及び細粒子の少なくとも一方は比表面積が50m2/g以上であることを特徴とするガスセンサ素子にある。
【0028】本請求項にかかる保護層は粗粒子と細粒子とから構成されている。このため,粗粒子間の空隙部分に細粒子が入り込むことで,保護層の気孔率,細孔径を十分に小さくすることができる。また,保護層形成時に粗粒子同士がブリッジとなり,保護層における亀裂の発生を防止することができるため,十分に厚い保護層を容易に得ることができる。
【0029】そして,上記保護層を構成する粗粒子及び細粒子は比表面積が非常に大きい材料を含んでいる。このため,気相の被毒物質との接触面積を大きくすることができ,これら被毒物質を確実に保護層において捕獲することができる。これにより,気相で飛散してくる被毒物を保護層で確実に捕獲して,これら被毒物質が被測定ガス側電極まで到達することを確実に防止できる。よって,長期間に渡って安定したセンサ出力を維持することができる。
【0030】比表面積が50m2/g未満である場合は,その粒子自身の被毒物捕獲能力が低くなり,よってセンサの被毒防止能力が低下するおそれがある。
【0031】以上,本発明によれば,Si成分等の気相の被毒物が被測定ガス側電極まで到達することを防止し,該気相の被毒物が被測定ガス側電極を被覆することを防止することで,長期に渡って安定したセンサ出力を維持することができるガスセンサ素子を提供することができる。
【0032】
【発明の実施の形態】実施形態例1本発明の実施形態例にかかるガスセンサ素子につき,図1〜図3を用いて説明する。本例のガスセンサ素子1は,図1に示すごとく,有底円筒状のコップ型固体電解質体10と,該固体電解質体10における基準ガスと対面する側に設けた基準ガス側電極11と,また被測定ガスと対面する側に設けた被測定ガス側電極12とよりなる。
【0033】上記被測定ガス側電極12の表面には,プラズマ溶射による第1保護層130が設けられ,さらにその外側に図2に示すごとく,粗粒子131と細粒子132とからなると共に該粗粒子131間に形成される空隙部分に細粒子132が充填されている構造を有するセラミック多孔質体製の第2保護層13が設けてある。
【0034】そして上記第2保護層13を構成する粗粒子131や細粒子132はγ−Al23,θ−Al23,δ−Al23,またはこれらのアルミナと同じ結晶構造を有した固溶体のいずれか1種以上を含有している。
【0035】以下,詳細に説明する。本例のガスセンサ素子1は自動車エンジンの排気通路に取付けて,空燃比制御に利用されるガスセンサ2に内蔵される素子である。本例のガスセンサ素子1は,酸素イオン伝導体である固体電解質体10と基準ガス側電極11,被測定ガス側電極12とによって電気化学的セルを構成したものである。基準ガスとして大気を導入することにより,基準ガスと被測定ガスとの間の酸素濃度差によって生じる両電極間の電位差から排ガス中の酸素濃度を検知するよう構成された酸素濃淡起電力式の素子である。
【0036】また,上記第1保護層130の外側には,これを覆う第2保護層13が設けてあり,固体電解質体10の内部には大気が導入される基準ガス室100が設けてある。基準ガス室100の内部には棒状のセラミックヒータ108が挿入配置されている。
【0037】図2に示すごとく,上記第2保護層13は多数の粗粒子131と細粒子132により形成された多孔質層で,各粗粒子131,細粒子132は熱的に安定な金属酸化物よりなり,粒子が互いに連続的に結合して第2保護層13を形成している。
【0038】本例にかかる第2保護層13の形成方法について説明する。α−Al23よりなる粗粒子131及びγ−Al23よりなる細粒子132を準備する。粗粒子131の平均粒子径15μm,細粒子132の平均粒子径0.2μmである。
【0039】水と全粒子の重量の3〜10重量%の無機バインダー及び分散剤を加えてスラリーを作成した。このスラリーを固体電解質体10と被測定ガス側電極12の表面にディッピングまたはスプレーにより付着させた。なお,無機バインダーはアルミナゾル,分散剤として硝酸アルミを使用した。その後,500〜900℃で焼付け,第2保護層13を得た。また,得られた第2保護層13の断面のSEM(走査型電子顕微鏡)像を図4(a),(b)に記載した。図4(a)によれば,粗粒子131の隙間を細粒子132が充填するという構造が観察され,図4(b)は,図4(a)を拡大したものであり,粗粒子131の隙間を細粒子132が充填するという構造がより明瞭に観察された。従って,上述した形成方法で粗粒子131間の空隙部分に細粒子132が充填された構造が得られたことが分かった。
【0040】本例のセンサ素子1が組みつけられるガスセンサについて説明する。図3に示すごとく,ガスセンサ2は,ガスセンサ素子1を収容するハウジング22を有している。ハウジング22は,略中央部にフランジ231を設けた胴部23を有し,該胴部23の下方には排気通路に挿入される排気カバー24を有し,上記胴部23の上方には大気と接する大気カバー25を有している。
【0041】上記排気カバー24は,ステンレス製の内部カバー241と外部カバー242とを有し,上記内部カバー241と外部カバー242には排気ガス導入口243,244を設けてある。一方,上記大気カバー25は,上記胴部23に取り付けられたメインカバー251と該メインカバー251の後端部を覆うサブカバー252とを備えており,上記メインカバー251及び上記サブカバー252には図示を略した大気取り入れ口を設けてある。
【0042】ガスセンサ素子1は,絶縁部材232を介して,上記胴部23の内部に狭持されている。また,ガスセンサ素子1の基準ガス側電極11より延設された端子電極と被測定ガス側電極12より延設された端子電極(図示略)には,それらを包むように挟持する金属製の板状端子261,262が接続されている。そして,板状端子261,262は,出力取り出しリード線271,272と接続されている。即ち,上記板状端子261,262には,帯状の端子片263,264が接触片265,266に対して突設されている。
【0043】そして,上記端子片263,264は,他端283,284を上記リード線271,272と接続したコネクタ281,282の一端285,286に接続されている。上記板状端子261,262は逆丁字型の金属板を筒状に変形し,上記端子電極を狭持する。そして,金属板のばね弾性力により,上記板状端子261,262と端子電極との間には,適切な接触圧力が付与されている。
【0044】一方,上記リード線271,272には,上記ガスセンサ2の軸方向に向かう引張力が働くことから,上記コネクタ281,282を介して上記板状端子261,262が引っ張られ,軸方向にスライドすることがある。これを防止するために,上記ガスセンサ2の端部には,ゴムブッシュ291,292に挟まれたストッパ293が設けられている。ストッパ293は,上記コネクタ281,282の移動を抑止するものであり,また上記リード線271,272間の絶縁を保持するための樹脂材によって形成されている。
【0045】なお,符号273は,ガスセンサ素子1を加熱するヒータ109用のワイヤである。そして,上記ガスセンサ2は上記排気カバー24を排気通路内に挿入し,上記フランジ231によって排気通路に固定される。
【0046】本例の作用効果について説明する。本例にかかる第2保護層13は,粗粒子131と細粒子132とから構成されている。このため,粗粒子131間の空隙部分に細粒子132が入り込むことで,保護層13の気孔率,細孔径を十分に小さくすることができる。また,第2保護層13形成時に粗粒子131同士がブリッジとなり,保護層13における亀裂の発生を防止することができるため,十分に厚い保護層13を容易に得ることができる。
【0047】そして,上記第2保護層13を構成する粗粒子131及び細粒子132は,γ−Al23,θ−Al23,δ−Al23,またはこれらのAl23と同じ結晶構造を有した固溶体といった,比表面積が非常に大きい材料を含んでいる。このため,気相の被毒物質との接触面積を大きくすることができ,これら被毒物質を確実に第2保護層13において捕獲することができる。これにより,気相で飛散してくる被毒物を第2保護層13で確実に捕獲して,これら被毒物質が被測定ガス側電極まで到達することを確実に防止できる。よって,長期間に渡って安定したセンサ出力を維持することができる。
【0048】以上,本例によれば,Si成分等の気相の被毒物が被測定ガス側電極まで到達することを防止し,該気相の被毒物が被測定ガス側電極を被覆することを防止することで,長期に渡って安定したセンサ出力を維持することができるガスセンサ素子を提供することができる。
【0049】実施形態例2本例では多数のガスセンサ素子を作成し,各素子のSi被毒の耐久性について試験した。すなわち,粗粒子の平均粒子径RB(μm),粗粒子の材質B,粗粒子の比表面積SA[B](m2/g),細粒子の平均粒子径RA(μm),細粒子の材質A,細粒子の比表面積SA[B](m2/g),粗粒子の含有量WBと細粒子の含有量WAの合計量W(=WA+WB)に対する細粒子の含有量WAの重量比WA/W,保護層の厚さ(μm)を種々変化させて各試料を作製し,これらについてSi被毒耐久性を評価した。
【0050】細粒子はRA0.1〜5μm,SA[B]2〜100m2/g,材質Aをγ−Al23とα−Al23,粗粒子はRB15μm,SA[B]m2/g,材質Bをα−Al23,細粒子と粗粒子の重量比WA/Wは10〜100%,保護層の厚さは20〜200μmの範囲で変化させた。
【0051】また,Si被毒耐久性は加速被毒試険前後のセンサ出力の変化率により判定した。変化率が10%未満の場合を◎,10%以上20%未満の場合を○,20%以上の場合を×と判定した。上記耐久試験における試験条件は,燃料噴射装置付き2000cc直列4気筒エンジンを3000r.p.m.にて連続的に運転させた。なお,耐久時の素子温度は600℃である。上記試験にあたって使用したガソリンとして,ガソリン1リットル当りにSiオイル(ジメチルシロキサン)を0.5cc添加したものを用いた。耐久時間は200時間である。
【0052】上記出力の測定は,λを0.9〜1.1まで連続的に変化させて出力波形を書かせた時のλ=0.95の値を用いた。また,出力測定に当たっては,燃料噴射装置付き2000cc直列6気筒エンジンを無鉛ガソリンを用いて回転数1100r.p.m.で運転させた状態で行なった。以上の試験結果を表1に記載した。
【0053】同表によれば,No.15,16は細粒子のみよりなる保護層であるため,またNo.15は保護層の厚さが薄いこと,No.16は形成時に亀裂が多数生じることで,いずれも被毒耐久性が不充分であるという問題があった。また,No.8は保護層はα−Al23(六方晶系)のみからなるため,特に粗粒子の比表面積が小さく,優れたSi被毒耐久性を得ることができなかった。
【0054】また,その他の試料は粗粒子と細粒子からなり,細粒子として比表面積の大きいγ−Al23を用いているため,優れたSi被毒耐久性が得られることが分かった。なお,No.9については,粗粒子としてγ−Al23を用いたが,同様に優れたSi被毒耐久性を得ることができた。
【0055】更に,RB/RAが7.5以上,細粒子に50m2/g以上の比表面積を用い,WA/Wが20以上,保護層の厚さが50μm以上の場合には(No.1〜5,No.7,8,10,11,13,14),初期の出力の劣化が生じることなく,特に優れたSi被毒耐久性が得られることが分かった。
【0056】
【表1】

【0057】実施形態例3本例は,図5に示すごとく,貴金属触媒を含有した保護層を持つガスセンサ素子について説明する。本例にかかるガスセンサ素子は,実施形態例1と同様の構成を有する。つまり,酸素イオン伝導体である固体電解質体10と基準ガス側電極11,被測定ガス側電極12とによって電気化学的セルを構成し,基準ガスとして大気を導入することにより,基準ガスと被測定ガスとの間の酸素濃度差によって生じる両電極間の電位差から空燃比を検知するよう構成された酸素濃淡起電力式の素子である。
【0058】また,上記被測定ガス側電極12の表面は第1保護層130が,さらにその外側には,これを覆う第2保護層13が設けてあり,固体電解質体10の内部には大気が導入される基準ガス室100が設けてある(図1参照)。
【0059】本例にかかる第2保護層13は,図5に示すごとく,粗粒子131と細粒子132とよりなり,各々の粒子131,132の表面にはPtからなる触媒粒子135が担持されている。この触媒粒子135には,被測定ガス側電極と同様に天然ガスを平衡化する働きを有し,それによりセンサ出力を安定化することができる。これらの作用からSi等の気相の被毒に対してその捕獲能力を補完する働きを有する。
【0060】本例にかかる保護層の形成方法について説明する。粗粒子及び細粒子に水と全粒子の重量の3〜10重量%の無機バインダー及び分散剤を加えてスラリーを作成し,このスラリーを固体電解質体と被測定ガス側電極の表面にディッピングまたはスプレーにより付着させ,500℃〜900℃で焼付ける。さらに,焼付けを終えたガスセンサ素子1に対しPt塩の水溶液をディッピングして,保護層の中にPt塩を含浸せしめ,乾燥させる。その後,500℃〜900℃で焼付けて,Ptを保護層内に定着させる。なお,Pt塩水溶液の濃度により,Pt担持量を調整することができる。その他詳細は実施形態例1と同様である。
【0061】次にガスセンサ素子をいくつか作成し,各素子のSi被毒の耐久性及び初期応答性について試験した。すなわち,細粒子の平均粒子径RA(μm),細粒子の材質A,細粒子の比表面積SA[B](m2/g),および保護層に対するPtの担持量(wt%)を表2に示すごとく種々変化させた素子を準備した。なお,これらの素子の他の部分は同一で,粗粒子の平均粒子径RBは15(μm),材質Bはα−Al23,比表面積SA[B]は2(m2/g),粗粒子と細粒子の混合重量比WA/Wは30(%),保護層の厚さは100μmとした。
【0062】Si被毒耐久性は実施形態例2と同様の方法で測定した。そして,変化率が5%未満の場合を◎,5%以上20%未満の場合を○,20%以上の場合を×と判定した。
【0063】初期応答性の測定は,ガス応答時間,即ちλ0.9からλ1.0への切換時において,出力が0.6Vから0.3Vに変化する時間についての測定である。また,この測定は,燃料噴射装置付2000cc直列6気筒エンジンを,無鉛ガソリンを用いて回転数1100r.p.m.で運転させて行った。切換時の時間が150ms未満の場合を○,150ms以上200ms未満の場合を△,200ms以上の場合を×と判定した。この結果を表2に記載した。
【0064】同表によれば,No.23は細粒子も粗粒子も共にα−Al23のみよりなる保護層であり,比表面積が小さいことから,Si被毒耐久性が低かった。また,Pt担持量を10%まで増加させると,Si被毒耐久性は良好であるが,初期の応答性が悪化することが分かった。
【0065】
【表2】

【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成13年3月26日(2001.3.26)
【代理人】 【識別番号】100079142
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 祥泰
【公開番号】 特開2002−71632(P2002−71632A)
【公開日】 平成14年3月12日(2002.3.12)
【出願番号】 特願2001−88346(P2001−88346)