トップ :: G 物理学 :: G01 測定;試験




【発明の名称】 積層型ガスセンサ素子及びその製造方法並びにこれを備えるガスセンサ
【発明者】 【氏名】牧野 圭祐

【氏名】安田 年克

【氏名】青木 良平

【氏名】大川 哲平

【要約】 【課題】クラックの発生、発熱抵抗体の断線、積層型センサ素子自体の反り等を十分に防止でき、これまでよりも大きな電圧及び/又は電流の負荷にも耐え得る積層型ガスセンサ素子、及びこの積層型ガスセンサ素子を一体に焼成して得ることのできる効率のよい製造方法並びにこれを備えるガスセンサを提供する。

【解決手段】ジルコニア粉末、アルミナ粉末、バインダ、テオブロミンを含有するペーストを調製し、ドクターブレード法によりシート状に成形した焼成されて多孔質部材22a及び22bとなる多孔質部材用未焼成シートを得る。この多孔質部材用未焼成シートにより、発熱抵抗体21となる未焼成パターンを挟持して、酸素濃淡電池部1及びヒータ部2となる部位を備える未焼成積層体を一体に焼成して積層型ガスセンサ素子Aを得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 固体電解質層に検知電極及び基準電極が配設された酸素濃淡電池部と、板状のセラミックヒータ部とが積層された積層型ガスセンサ素子であって、上記セラミックヒータ部は、該セラミックヒータ部の面方向に形成された発熱抵抗体と、該発熱抵抗体を埋設してなる絶縁性多孔質セラミック層と、該絶縁性多孔質セラミック層を該セラミックヒータ部の厚さ方向に挟むヒータ支持層とからなることを特徴とする積層型ガスセンサ素子。
【請求項2】 上記絶縁性多孔質セラミック層の気孔率は、5〜50%の範囲内である請求項1記載の積層型ガスセンサ素子。
【請求項3】 上記絶縁性多孔質セラミック層は、アルミナを主成分とする請求項1又は2に記載の積層型ガスセンサ素子。
【請求項4】 上記絶縁性多孔質セラミック層の気孔の気孔径は、2〜20μmの範囲内である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の積層型ガスセンサ素子。
【請求項5】 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の積層型ガスセンサ素子の製造方法であって、上記発熱抵抗体となる発熱抵抗体未焼成パターンを、上記絶縁性多孔質セラミック層となる絶縁性多孔質セラミック層用ペースト又は絶縁性多孔質セラミック層用未焼成シートにより挟み込んで挟持体を得、次いで、該挟持体を、板状に形成された上記ヒータ支持層となるヒータ支持層用未焼成シートにより挟み込んでセラミックヒータ部となるセラミックヒータ部用未焼成体を得、その後、該セラミックヒータ部用未焼成体と、上記酸素濃淡電池部となる酸素濃淡電池部用未焼成体とを積層して未焼成組立体を得、次いで、該未焼成組立体を一体に焼成することを特徴とする積層型ガスセンサ素子の製造方法。
【請求項6】 上記絶縁性多孔質セラミック層用ペースト又は上記絶縁性多孔質セラミック層用未焼成シートは、昇温されるに伴い液相を経ずに昇華又は酸化気化する気孔化剤を含有する請求項5記載の積層型ガスセンサ素子の製造方法。
【請求項7】 ガス流通管に固定される主体金具の内側に、請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載の積層型ガスセンサ素子を配置してなることを特徴とするガスセンサ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、測定対象ガス中の特定成分の濃度を検出するための積層型ガスセンサ素子及びその製造方法、並びにこれを備えるガスセンサに関する。更に詳しくは、酸素濃淡電池部とセラミックヒータ部とを備える積層型ガスセンサ素子であって、セラミックヒータ部でのクラックや、セラミックヒータ部を構成する発熱抵抗体の断線が生じ難く、耐久性に優れた積層型ガスセンサ素子及びその製造方法、並びにこれを備えるガスセンサに関する。
【0002】
【従来の技術】自動車エンジン等の内燃機関において、その空燃比制御等において指標となる排ガス中の特定成分(酸素、炭化水素、NOx等)の濃度を検出するための各種ガスセンサが開発されている。このようなガスセンサに組み込まれるガスセンサ素子としては種々の形態のものが知られているが、板状又は薄膜状の固体電解質層の表面に一対の電極を設けた酸素濃淡電池部と、その固体電解質層を活性化させるための加熱手段であるセラミックヒータ部とを積層してなる積層型ガスセンサ素子が実用化されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】近年、排ガス規制の強化等から、内燃機関の始動直後から早期に酸素濃淡電池部を活性化させて特定ガスの濃度測定が行える積層型ガスセンサ素子が検討されている。しかし、このように早期活性化を実現するためには、セラミックヒータ部に従来よりも大きな電圧を負荷(供給)し、早期に所定の温度まで加熱する必要がある。そのために、セラミックヒータ部自身にクラックが生じたり、発熱抵抗体が断線する可能性が高くなり、十分な耐久性を維持できないおそれがある。とりわけ、このような耐久性の低下は、酸素濃淡電池部とセラミックヒータ部とが一体に焼成された形で構成される積層型ガスセンサ素子において起こり易い。
【0004】本発明は上記問題を解決するものであり、セラミックヒータ部におけるクラックの発生、発熱抵抗体の断線を十分に防止することができ、従来よりも大きな電圧の負荷にも耐え得る積層型ガスセンサ素子、並びにこれを備えるガスセンサを提供することを目的とする。また、このような積層型ガスセンサ素子を効率良く得ることができる製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】従来より、セラミックヒータ部は、セラミックヒータ部の面方向に形成される発熱抵抗体と、その発熱抵抗体を埋設する絶縁性セラミックからなる絶縁層と、その絶縁層を厚さ方向に挟み込むヒータ支持層とから構成されている。本発明者らは、このような従来のセラミックヒータ部を備える積層型ガスセンサについて検討した。その結果、絶縁層が緻密化され、この絶縁層により発熱抵抗体が隙間なく覆われている場合に、積層型ガスセンサ素子(セラミックヒータ部)の耐久性が十分に得られない場合があることを見出した。更に、この原因は主に発熱抵抗体通電時に発熱抵抗体周辺の絶縁層が熱膨脹するためであることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】本第1発明の積層型ガスセンサ素子は、固体電解質層に検知電極及び基準電極が配設された酸素濃淡電池部と、板状のセラミックヒータ部とが積層された積層型ガスセンサ素子であって、上記セラミックヒータ部は、該セラミックヒータ部の面方向に形成された発熱抵抗体と、該発熱抵抗体を埋設してなる絶縁性多孔質セラミック層と、該絶縁性多孔質セラミック層を該セラミックヒータ部の厚さ方向に挟むヒータ支持層とからなることを特徴とする。
【0007】上記「固体電解質層」は板状(通常50μm以上のものをいう)であっても、薄膜状(通常50μm未満のものをいう)であってもよい。また、酸素イオン伝導性を有すればその組成は限定されず、例えば、ジルコニア(ZrO2)系焼結体や、Y23ないしCaOを固溶させたZrO2、あるいは、それ以外のアルカリ土類金属ないし希土類元素酸化物とZrO2との固溶体でもよく、また、LaGaO3系焼結体、さらにはそれら焼結体をベースにハフニウムを添加したもの等を使用することができる。上記「検知電極」及び上記「基準電極」は固体電解質層の表面に形成されておれば特に限定されないが、通常、一面に検知電極、裏面に基準電極が形成され、検知電極と基準電極とは固体電解質層を介して対向している。上記「発熱抵抗体」は、外部からの電力供給により発熱し、固体電解質層を加熱・保温して固体電解質層を活性化する。発熱抵抗体の組成は特に限定されないが、白金を主成分にできる。その他、白金合金や白金にアルミナ等を添加した組成であってもよい。
【0008】そして、セラミックヒータは、絶縁性多孔質セラミック層(以下、単に「多孔質層」という)により覆われた発熱抵抗体が、板状のヒータ支持層により挟持された多層構造を呈する。上記「多孔質層」は、第3発明のようにアルミナを主成分とすることが絶縁性を確保する意味で好ましい。但し、アルミナ以外にも、ムライト、マグネシア・アルミナスピネル等を主成分とすることもできる。尚、ここでいう主成分は多孔質層全体を100質量%とした場合に、その成分が50質量%以上含有されることを指す。そして、このように絶縁層を多孔質化し、この多孔質層で発熱抵抗体を覆うことにより、発熱抵抗体に電圧が印加され発熱する際の発熱抵抗体周りの絶縁層(多孔質層)の熱膨脹を効果的に吸収、緩和させることができる。従って、セラミックヒータ部自身のクラックや発熱抵抗体の断線を防止することができる。
【0009】また、多孔質層の厚さ(積層方向における最短距離)は20〜100μmの範囲内であることが好ましい。尚、ここでいう多孔質層の厚さとは、発熱抵抗体を埋設した状態の全体の厚さを指す。通常、発熱抵抗体は多孔質層の厚さ方向の略中央に位置するが、この厚さが20μm未満であると絶縁性が低下するおそれがある。一方、この厚さは大きい程絶縁性は向上するが100μmを超えるとセラミックヒータ部の容積が過度に大きくなり、発熱抵抗体の発熱により酸素濃淡電池部を早期に活性化し難くなる。また、電力によりこれを改善することもできるが、省電力化の観点から好ましくない。
【0010】上記「ヒータ支持層」は、酸素イオン伝導性を有する固体電解質(例えば、ジルコニア系焼結体)、及び、アルミナ等の絶縁性セラミックから構成できる。尚、ヒータ支持層が絶縁性セラミックから形成されている場合は、酸素濃淡電池部を構成する固体電解質層にもこの絶縁性セラミックが含有されることが好ましい。具体的には、固体電解質層を100質量%とした場合に、絶縁性セラミックの主成分をなすセラミック成分(例えばアルミナ)を10〜80質量%、好ましくは30〜70質量%、更に好ましくは40〜60質量%の範囲内で含有させるとよい。これにより得られる積層型ガスセンサ素子において、酸素濃淡電池部とセラミックヒータ部との熱膨脹率が合い、酸素濃淡電池部となる酸素濃淡電池部用未焼成体とセラミックヒータ部となるセラミックヒータ部用未焼成体とを一体に焼成した際にも、反りの発生を抑えることができる。
【0011】また、この多孔質層の気孔率は、第2発明のように5〜50%とすることが好ましい。気孔率が50%を超えると、多孔質層の厚み(ひいてはセラミックヒータ部の厚み)を均一に形成することが難しくなる。従って、多孔質層に局部的に薄い部分が生じてしまい、その部分が局所的に加熱され易く、セラミックヒータの耐久性を低下させることがある。一方、気孔率が5%を下回ると、上述した多孔質層による熱膨脹の吸収・緩和の効果が十分に得られないことがある。
【0012】尚、ここでいう気孔率とは、多孔質層の一部分を切り出し、この切り出した多孔質層の見掛け体積(気孔体積を含む)Vと、空気中における質量m1と、水中に浸漬して気孔に十分に水を含有させた含水質量m2とを用いて、下記(1)式により算出することができる。得られた気孔率は多孔質層全体の気孔率であるものとする。
{(m2−m1)/V}×100 (1)
【0013】更に、多孔質層中の気孔の気孔径は、本第4発明に示すように、2〜20μmの範囲内にあることが好ましく、5〜20μmの範囲内にあることがより好ましく、10〜20μmの範囲内にあることが更に好ましい。気孔径は大きい方が好ましいが、20μmを超えると多孔質層の厚み(ひいてはセラミックヒータの厚み)を均一に形成することが難しくなり、また、多孔質層中の気孔の占める体積が増すために、発熱抵抗体を支える面が減少する結果、前記同様にセラミックヒータの耐久性を低下させることがある。一方、気孔径が2μmを下回ると、上述した多孔質層による熱膨脹の吸収・緩和の効果が十分に得られないことがある。尚、ここでいう気孔径は、平均気孔径を指し、多孔質層の一部分を切り出し、この切り出した多孔質層の断面組織を倍率1000〜5000倍にして撮影した電子顕微鏡写真上の気孔の気孔径を測定し、これらの平均値を平均気孔径とする。そして、電子顕微鏡写真上の気孔の気孔径の測定は、具体的には、気孔の長径を測定するものとする。この気孔の長径は、図3に示すように、多孔質層の断面組織上(電子顕微鏡上)で観察される気孔3の外形線に対し、その外形線と接しかつ気孔内を横切らないように2本の平行線α,βを、その気孔の位置関係を変えながら各種引いた場合の、上記平行線α,β間の距離の最大寸法値dとして定義する。
【0014】本第1〜4発明の積層型ガスセンサ素子を製造するにあたっては、例えば、酸素濃淡電池部となる酸素濃淡電池部用未焼成体と、セラミックヒータ部となるセラミックヒータ部用未焼成体とを、各々別々に焼成し、次いで、得られた酸素濃淡電池部とセラミックヒータ部とを例えば、リン酸アルミナ系セメント等の接着剤を介在させて積層して得ることができる。しかし、この方法では、酸素濃淡電池部と、セラミックヒータ部とを別々に焼成する必要がある。
【0015】これに対して、第1発明〜第4発明のいずれかに記載の積層型ガスセンサ素子の製造するにあたって好ましい方法としては第5発明のように、上記発熱抵抗体となる発熱抵抗体未焼成パターンを、上記絶縁性多孔質セラミック層となる絶縁性多孔質セラミック層用ペースト又は絶縁性多孔質セラミック層用未焼成シートにより挟み込んで挟持体を得、次いで、該挟持体を、板状に形成された上記ヒータ支持層となるヒータ支持層用未焼成シートにより挟み込んでセラミックヒータ部となるセラミックヒータ部用未焼成体を得、その後、該セラミックヒータ部用未焼成体と、上記酸素濃淡電池部となる酸素濃淡電池部用未焼成体とを積層して未焼成組立体を得、次いで、該未焼成組立体を一体に焼成することを特徴とする。
【0016】上記「発熱抵抗体未焼成パターン」は、例えば白金を主成分とし、バインダと溶媒を加えて混練したペーストを所定形状に印刷することにより形成できる。上記「絶縁性多孔質セラミック層用ペースト」(以下、単に「多孔質層用ペースト」という)は、絶縁性セラミックの粉末、バインダ及び溶剤等を混合して調合できる。また上記「絶縁性多孔質セラミック層用未焼成シート」(以下、単に「多孔質層用未焼成シート」という)は、絶縁性セラミックの粉末及びバインダ等を混合して調合したペーストをシート状に成形することにより得ることができる。この多孔質層用ペースト及び多孔質層用未焼成シートはいずれも焼成されて多孔質層となる。
【0017】上記「挟持体」は、多孔質層用ペースト又は多孔質層用未焼成シートにより発熱抵抗体未焼成パターンが挟持された積層体である。この挟持体を、多孔質層用ペーストを用いて形成する場合は、スクリーン印刷等により所定の大きさ及び厚さに多孔質層用ペーストを印刷し、次いで、印刷、乾燥された多孔質層用ペースト上に前記発熱抵抗体未焼成パターンをスクリーン印刷等により形成し、更に、この印刷、乾燥された発熱抵抗体未焼成パターンを挟み込むように多孔質層用ペーストをスクリーン印刷等により印刷して得ることができる。一方、この挟持体を多孔質層用未焼成シートを用いて形成する場合は、多孔質層用未焼成シート上に発熱抵抗体未焼成パターンをスクリーン印刷等により形成した後、この印刷、乾燥された発熱抵抗体未焼成パターンを多孔質層用未焼成シートで挟み込むように積層することにより得ることができる。尚、同様に下層又は上層の一方のみ多孔質層用ペーストで形成し、他方を多孔質層用未焼成シートにより形成することもできる。
【0018】また、この多孔質層用未焼成シートは、多孔質用ペーストを用いてドクターブレード法等により形成することができる。多孔質層用ペーストは、厚みの薄い(100μm以下)多孔質層を形成する場合に特に好ましい。一方、多孔質層用未焼成シートは、必要な大きさ(長さ及び幅)に、また、略均一な厚さで予め成形することができる。このため、作業性効率がよく、焼成後も均一な厚みの多孔質層が形成し易い。
【0019】上記「ヒータ支持層用未焼成シート」は、絶縁性セラミックの粉末、バインダ及び溶剤等を混合して調合したペーストをドクターブレード法等によりシート状に成形することにより得ることができる。尚、多孔質層との熱膨張率を合わせるため、更に、密着性を向上させるために、多孔質層用ペースト及び多孔質層用未焼成シートと、このヒータ部支持層用未焼成シートとは、同じ絶縁性セラミック粉末を多く含有することが好ましい。
【0020】上記「酸素濃淡電池部用未焼成体」は、焼成されて固体電解質特性を発揮するようなペーストを調合し、このペーストをシート状又は板状に成形し、得られたシート状物又は板状物の一面ないし表裏面に、検知電極及び基準電極と各々なるパターンを印刷して得ることができる。また、上記「未焼成組立体を一体に焼成する」とは、酸素濃淡電池部用未焼成体とセラミックヒータ部未焼成体とを積層して同時に焼成することをいう。従って、1回の焼成により酸素濃淡電池部とセラミックヒータ部とが同時に得られる。即ち、積層型ガスセンサ素子を得るための製造効率に優れる。
【0021】本第5発明の製造方法においては、第6発明のように、絶縁性多孔質セラミック層用ペースト又は上記絶縁性多孔質セラミック層用未焼成シートは、昇温されるに伴い液相を経ずに昇華又は酸化気化する気孔化剤を含有することが好ましい。とりわけ、「昇温過程において、固相の状態から液相を経ずに直接気相となる気孔化剤」を含有している点が着目すべき点である。
【0022】ここで、「昇温過程において、固相の状態から液相を経ずに直接気相となる気孔化剤」を、その昇華又は酸化気化温度以下の温度域で分解する有機系バインダ(以下、単に「バインダ」ともいう)と組み合わせて多孔質層用ペースト又は多孔質層用未焼成シートを形成すると、その昇温過程においてバインダの分解後に気孔化剤が昇華又は酸化気化するので、確実に気孔(空隙)が形成され、且つ多孔質層焼結時における焼結性の低下もない。即ち、気孔化剤が液相を経ると仮定すると、バインダ分解後に気孔化剤が液相になる時に、多孔質層用シート又は多孔質層用未焼成シートが軟化するため、予め添加した気孔化剤の存在箇所に空隙を有効に形成することができない。このため、気孔化剤を添加したにも関わらず空隙の体積及び割合が小さくなってしまう。これに対して、昇温過程において、固相の状態から液相を経ずに直接気相となる気孔化剤を用いることによりこの逆が起こることとなり、空隙を確実に形成することができるため好ましい。
【0023】上記「気孔化剤」としては、(1)テオブロミン、カフェイン及びテオフィリンといった昇華性キサンチン誘導体、(2)炭素(カーボン)粉末(このカーボン粉末は真球状粉末でも、不定形状粉末でもよい。尚、「真球状」とは一つの粒子における(最大直径)/(最小直径)が1.2以下であることをいう。)、(3)キサントプテリン、m−アミノ安息香酸、m−アセトアミド安息香酸、4,4’−ベンゾフェノンジカルボン酸、アセトラセンカルボン酸、α−アミノ酪酸、イソニコチン酸、イソパニリン酸、イソフタル酸、5−メチルイソフタル酸、o−オキシ桂皮酸、3−オキシ−p−トルイル酸、5−オキシ−1−ナフトエ酸、5−キノリンカルボン酸、4,5−ジオキシ−2−アントラキノンカルボン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、3,5−ピリジンジカルボン酸、(4)ペレリン、フロログルシントリメチルエーテル、フルオレセイン、ビフタリジリデン、テトラフェニルメタン、チミン、アリザリンブリー、アロキサン、イサチン、インジゴ、オキシインジゴ、インジルピン、カンタリジン、キノフタロン、2−オキシアントラキノン、1,5−ジアミノアントラキノン、1,5−ジオキシアントラキノン、1,7−ジオキシアントラキノン、アミノアントラキノン、2,4−ジオキシキノリン、アセナフテンキノン、5−オキシキノリン、2、2’−アゾナフタリン、アデニン、p−アセトトルイド、8−アミノ−2−ナフトール等を挙げることができる。また、これらを2種以上併用することも可能である。
【0024】更に、このような気孔化剤を用いることによって、多孔質層の気孔率については気孔化剤の含有量を調整することで、気孔径については気孔化剤の粒径及び粒度分布を調整することで、気孔率又は/及び気孔径を所望の値に自在に調整(制御)することができる。
【0025】本第7発明のガスセンサは、ガス流通管に固定される主体金具の内側に、第1〜第4発明に記載の積層型ガスセンサ素子を配置してなることを特徴とする。
【0026】このガスセンサの構造や取り付け方法は特に限定されるものではなく、例えば、積層型ガスセンサ素子を主体金具の内側に配置してなり、主体金具の外周面に螺設される取付けねじ部をガス流通管(例えば、排気管など)に対して素子の前方側(検知部)がそのガス流通管内に突出するように固定し、使用に供されることになるものを挙げることができる。
【0027】
【発明の実施の形態】以下、本発明の積層型ガスセンサ素子、及びこの素子を組み込んだガスセンサについて実施例により詳しく説明する。
〔1〕積層型ガスセンサ素子の構造図1は、本発明の積層型ガスセンサ素子の一例であり、図2に示すガスセンサBに組み込まれる素子Aの分解斜視図である。
【0028】この積層型ガスセンサ素子Aは、酸素濃淡電池部1とセラミックヒータ部2とが積層されて構成され、この酸素濃淡電池部1とセラミックヒータ部2は一体に焼成されている。このうち、酸素濃淡電池部1は、酸素イオン伝導性を有するジルコニアを主体に構成された固体電解質層(酸素濃淡電池部固体電解質層)11を備え、この固体電解質層11の前方側(図2における主体金具3より突出する側)の一表面には電極部131aが形成されるように検知電極(外側電極)13aが、裏面の対向する位置には電極部131bが形成されるように基準電極13bが形成されている(図2における検知部X)。この電極131a及び131bからは、後方側に向かって電極リード部132a及び132bがそれぞれ延設されている。但し、これらの各電極リード部132a及び132bは、アルミナ等からなる酸素濃淡電池部第1絶縁層12a及び酸素濃淡電池部第2絶縁層12bを介して固体電解質層の表裏面に各々形成され、これらは固体電解質層11とは絶縁されている。
【0029】電極リード部132bの端部である信号取出し用端子部133aは、外部回路接続用の外部端子(図示せず)に接続されることになる。一方、電極リード部132aの端部は、固体電解質層11、酸素濃淡電池部第1絶縁層12a及び酸素濃淡電池部第2絶縁層12bを貫通する酸素濃淡電池部スルーホール111を介して、信号取出し用端子14と電気的に接続され、更にこの信号取出し用端子14が、外部回路接続用の外部端子(図示せず)に接続されることになる。
【0030】セラミックヒータ部2は、高融点金属(白金、白金合金等)からなる発熱抵抗体21を備え、この発熱抵抗体21は、アルミナ等の絶縁性セラミックからなる絶縁性を有するヒータ部第1多孔質層22a及びヒータ部第2多孔質層22bに挟持されている。即ち、ヒータ部第1多孔質層22a及びヒータ部第2多孔質層22bからなる多孔質部材中に発熱抵抗体21は埋設されることになる。更に、これらの多孔質層に挟持された発熱抵抗体21は、ジルコニア等からなるヒータ部第1支持層23a及びヒータ部第2支持層23bに挟持され、アルミナ等からなるヒータ部第1絶縁層24a及びヒータ部第2絶縁層24bにより挟持される多層構造を呈している。尚、発熱抵抗体21は、ヒータ部第1多孔質層22b、ヒータ部第2支持層23b及びヒータ部第1絶縁層22bを貫通するスルーホール231及び231’を介して、外部回路接続用の外部端子(図示せず)に接続されるヒータ部通電端子25及び25’に電気的に接続されることになる。
【0031】〔2〕積層型ガスセンサ素子の製造■酸素濃淡電池部となる酸素濃淡電池部未焼成体の作製イットリアを固溶させたジルコニア粉末を、有機バインダ及び溶剤と共に混練して得られる生素地を用いて、ドクターブレード法によりシート状に成形し、焼成されて固体電解質層となる固体電解質用未焼成シートを成形した。尚、このシートは素子を5個分切り出すことができる大きさを呈するものとした。
【0032】焼成されて固体電解質層11となるこの固体電解質用未焼成シートの電極部131a及び131bが形成される部位を除く表裏面に、アルミナを主体とする焼成されて絶縁性を発揮するペースト(以下、「絶縁性ペースト」という)を印刷・乾燥させて、素子5個分の酸素濃淡電池部12a及び12bとなる塗膜を形成した。その後、固体電解質用未焼成シートの所定位置に酸素濃淡電池部スルーホール111となるべき5個分の貫通孔を穿設し、その貫通孔の内壁面及び開口端縁までを被覆するように絶縁性ペーストを再度印刷し、乾燥させた。
【0033】ついで、酸素濃淡電池部絶縁層12a及び12bとなる塗膜(酸素濃淡電池部スルーホール111となる貫通孔内に形成された絶縁性ペーストからなる塗膜を含む)の所定領域に、白金を主成分とする焼成されて導電性を発揮するペースト(以下、単に「導電性ペースト」という)を素子5個分印刷・乾燥させて、電極部131a及び131b、電極リード部132a及び132b、信号取出し用端子部133a及び14となる配線パターンに形成し、焼成されて酸素濃淡電池部1となる5個分の酸素濃淡電池部未焼成体を得た。
【0034】■多孔質層となる多孔質層用ペーストの調製アルミナ粉末(99.9%以上、平均粒径0.4μm)300gと、気孔化剤としてのテオブロミン(平均粒径6.0μm)60g(アルミナ粉末全体を100質量部とした場合のテオブロミンの添加量は20質量部(外配合))と、溶剤(ブチルカルビドール)、及びアセトンに溶解したバインダ(ポリビニルブチラール)をライカイ材にて混練し、アセトンを十分に揮発させて多孔質層用ペーストを得た。尚、同様にして、気孔化剤としてのテオブロミンを含有しない多孔質層用ペーストと、テオブロミンの添加量が、アルミナ粉末全体を100質量部とした場合の外配合にて10質量部、5質量部である多孔質層用ペーストをそれぞれ別途調製した。
【0035】■セラミックヒータ部となるセラミックヒータ部未焼成体の作製ついで、上記■にて成形された同様の固体電解質用未焼成シートにより、5個分のヒータ部第2支持層23bとなる大きさの未焼成シートを準備し、発熱抵抗体21が形成されることとなる一表面に、上記■で得られた4種の多孔質層用ペーストの内の1種を印刷・乾燥させる。尚、このとき多孔質層用ペーストの印刷・乾燥を2回ずつ繰り返し、ヒータ部第2多孔質層22bとなる層を形成した。更に、裏面には■で用いた絶縁性ペーストを印刷・乾燥させて、ヒータ部第2絶縁層24bとなるべき層を形成した。その後、得られたこの未焼成シートの所定位置にスルーホール231及び231’となる貫通孔を穿設(素子5個分)をした。そして、この貫通孔の内壁面及び開口端縁を覆うように■にて用いた絶縁性ペーストを印刷・乾燥させた。
【0036】その後、ヒータ部第2多孔質層22bとなる層上の所要領域(スルーホール231及び231’となるべき貫通孔含む)に、白金を主体とする発熱抵抗体用ペーストを所定パターンに印刷・乾燥し、発熱抵抗体21となる塗膜を形成した。ついで、ヒータ部第2絶縁層24bとなる層上の所要領域に、同じく白金を主体とする導電性ペーストを用いて、ヒータ部通電端子25及び25’となる所定パターンを印刷・乾燥させた。
【0037】そして、上記■にて成形された同様の固体電解質用未焼成シートにより、5個分のヒータ部第1支持層23aとなる大きさの未焼成シートを準備し、この未焼成シートの内で、ヒータ部第2支持層23bとなる未焼成シートの発熱抵抗体21となる導電パターンと向かい合う一表面に、ヒータ部第1多孔質層22aとなる未焼成層を形成するために、上記■で得られた4種の多孔質層用ペーストの内の1種を1回のみ印刷・乾燥した後、再度印刷のみ行った(尚、このとき用いる多孔質層用ペーストは、ヒータ部第2支持層23bに印刷させたものと同種類ものを用いる)。そして、この状態のヒータ部第1支持層23aに対してヒータ部第2支持層23bを積層・圧着して、セラミックヒータ部2となるセラミックヒータ部用未焼成体を得た。
【0038】(4)積層・脱脂、及び焼成工程ついで、セラミックヒータ部用未焼成体にヒータ部第1絶縁層24aとなる上記■で用いた絶縁性ペーストを印刷し、その絶縁性ペースト上に酸素濃淡電池部未焼成体を積層・圧着して、未焼成組立体を得た。この未焼成組立体を素子Aとなるように5つに切断し、大気雰囲気中にて、毎時20℃で昇温して最高温度450℃で1時間保持して脱脂(脱バインダ処理)を行い、その後1500℃で1時間焼成して、上記■の4種類の多孔質層用ペーストを用いた4種類の素子Aを5個ずつ得た。尚、気孔化剤として使用したテオブロミンは、脱脂中約350℃を超えた時点で昇華する。また、これらの素子Aはいずれも発熱抵抗体21の抵抗値が常温にて8Ωとした。
【0039】〔3〕素子の評価本発明の効果を確認するために、上述の実施例により得られた4種類の素子A(4種類の多孔質層を有する素子A)を用いて、以下の評価を行った。尚、各素子Aの気孔率は、上記■にて多孔質層ペーストに添加したテオブロミンの添加量の違いに応じて表1に示す値となった{各素子の気孔率は、前記(1)式に従い算出した}。
【0040】(i)過電圧負荷試験得られた4種類の素子Aの発熱抵抗体21に18Vの電圧を1分間印加した後、3分間通電を停止するサイクルを1サイクルとして、これを10サイクル繰り返し行った。その後、この10サイクルを経た素子Aのクラックの有無を目視により観察し、クラックが認められるまで電圧を1Vずつ大きくしながら、各電圧において上記と同様に10サイクルを繰り返し行った。この試験により、素子Aにクラックの発生が見られた電圧を表1に実施例1〜3及び比較例1として併記した(尚、試験は各素子につき3回行った)。
【0041】(ii)電圧断続印加試験得られた4種類の素子Aの発熱抵抗体21に18Vの電圧を1分間印加した後、3分間通電を停止するサイクルを1サイクルとして、このサイクルを250サイクル繰り返し行った。その後、素子Aのクラックの有無を目視により観察し、クラックが認められるまで同じ18Vの電圧にて同様に250サイクルずつ繰り返し行った。この試験により、各素子Aにクラックの発生がみられたサイクル数を表1に実施例1〜3及び比較例1として併記した(尚、試験は各素子につき3回行った)。
【0042】
【表1】

【0043】(i)過電圧負荷試験、及び(ii)電圧断続印加試験の結果より、多孔質層を備える実験例1〜3の素子にあっては、耐過電圧性が向上し、更にこの多孔質層の気孔率は大きい程耐過電圧性が向上することが分かる。更に、耐久性も多孔質層を備えない素子に比べてサイクル数で倍以上と大きく向上していることが分かる。
【0044】〔4〕ガスセンサの構造図2は、本発明の積層型ガスセンサ素子が組み込まれたガスセンサであり、内燃機関の排気管に取り付けられ、排ガス中の酸素濃度の測定に使用されるλ型酸素センサと通称される酸素センサBの一例を示した断面図である。
【0045】この酸素センサBに組み込まれる積層型の酸素センサ素子Aは、その前方側が主体金具3の先端より突出するように当該主体金具3に形成された挿通孔32に挿通されると共に、挿通孔32の内面と素子Aの外面との間が、ガラス(例えば結晶化亜鉛シリカほう酸系ガラス)を主体に構成される封着材層41により封着されている。主体金具3の先端部外周には、素子Aの突出部分を覆う金属製の二重のプロテクタ61、62がレーザー溶接等によって固着されている。このプロテクタ61、62は、キャップ状を呈するもので、その先端や周囲に、排気管内を流れる排ガスをプロテクタ61、62内に導く通気孔61a、62aが形成されている。一方、主体金具3の後端部は外筒7の先端部内側に挿入され、その重なり部分においては、周方向にレーザー溶接等の接合が施されている。尚、主体金具3の外周部には、酸素センサB(主体金具3)を排気管にねじ込んで取付けるための取付ねじ部31が螺刻されている。
【0046】素子Aについては、第1コネクタ51、長手状金属薄板52、さらに第二コネクタ部53及び絶縁板(図示せず)(尚、これらを総称して「外部端子」という)と、リード線9とを介して、図示しない外部回路と電気的に接続されている。また、都合4本のリード線9は、外筒7の後端側に位置するグロメット8を貫通して延びている。
【0047】尚、素子Aの長手方向(軸線方向)において、封着材層41の少なくとも一方の側に隣接する形で(本実施例では封着材層41の検出部Xに近い端面側に隣接して)、多孔質無機物質(例えばタルク滑石の無機物質粉末の圧粉成形体あるいは多孔質仮焼体)で構成された緩衝層42が形成されている。この緩衝層42は、封着材層41から軸方向に突出する素子Aを外側から包むように支持し、過度の曲げ応力や熱応力が素子Aに加わるのを抑制する役割を果たす。
【0048】尚、本発明においては、上記の具体的実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。例えば、多孔質層を形成するにあたり、上記実施例のように多孔質層用ペーストを用いるのではなく、少なくとも絶縁性セラミック(絶縁性セラミックの粉末)と気孔化剤とを含有する多孔質層用未焼成シートを1枚以上用いて、セラミックヒータ部(ひいては積層型ガスセンサ素子)を形成することができる。また、上記実施例では酸素濃淡電池部1となる酸素濃淡電池部未焼成体と、セラミックヒータ部2となるセラミックヒータ部未焼成体とを一体に焼成して素子Aを構成したが、この酸素濃淡電池部未焼成体と第2組立体とを別々に焼成し、両者をリン酸アルミナ系セメント等の接着材を介して接着・積層させて積層型ガスセンサ素子を作製してもよい。更に、酸素濃淡電池部未焼成体とセラミックヒータ部未焼成体とは直接互いを積層して一体に焼成するものに限られず、互いの未焼成体間に熱膨張差を緩和させる緩衝層となる未焼成セラミックシートを1ないし複数介在させて一体に焼成してもよい。
【出願人】 【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
【出願日】 平成13年3月30日(2001.3.30)
【代理人】 【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
【公開番号】 特開2002−71628(P2002−71628A)
【公開日】 平成14年3月12日(2002.3.12)
【出願番号】 特願2001−102069(P2001−102069)