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【発明の名称】 電気化学センサ及びその使用方法
【発明者】 【氏名】板山 朋聡

【氏名】野崎 健

【氏名】根岸 明

【氏名】加藤 健

【要約】 【課題】導電性材料製ワイヤ電極の装着を簡略化できるだけでなく内部への水の漏洩を確実に防止することの可能な電気化学センサを提供する。

【解決手段】電気化学センサ1は上部筐体11と下部筐体12で構成される。下部筐体の外部にはアタッチメント13が取り付けられるが、アタッチメント表面をモータ123で駆動される駆動プーリ122によって動かされるワイヤ電極16が走行する。なお、アタッチメントとワイヤ電極との間は絶縁管で絶縁されてアタッチメントは対極として機能し、アタッチメントの前方には参照電極が設置される。逃がし孔129から逃げるガス量が一定量となるように筐体内に供給する加圧ガスの圧力を調整することにより、絶縁管内のメニスカスを一定位置に維持することが可能となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 中空の密閉筐体と、前記密閉筐体の測定部において、引き出し孔から前記密閉筐体の内部から外部に引き出され、前記測定部において前記密閉筐体の外面に沿って走行し、引き入れ孔から前記密閉筐体の外部から内部に引き入れられる導電性材料製ワイヤ電極と、前記密閉筐体内に設置され、前記ワイヤ電極を移動させるワイヤ電極移動手段と、前記ワイヤ電極と対をなす電極である対極と、前記密閉筐体内に加圧ガスを供給する加圧ガス供給手段と、を具備する電気化学センサ。
【請求項2】 前記測定部が、前記密閉筐体の外面から取り外し可能なアタッチメントで構成される請求項1に記載の電気化学センサ。
【請求項3】 前記アタッチメントが、上部アタッチメントと、前記上部アタッチメントと対向する下部アタッチメントと、前記上部アタッチメント及び前記下部アタッチメントの間に挟まれ、前記ワイヤ電極が貫通し、底部に前記ワイヤ電極が露出する開口が形成されたU字型の絶縁管と、で構成される請求項2に記載の電気化学センサ。
【請求項4】 前記アタッチメントが導電材料で製造されて対極として機能する請求項1から3のいづれか1項に記載の電気化学センサ。
【請求項5】 密閉筐体が、前記測定部、前記ワイヤ電極及び前記ワイヤ電極移動手段が搭載される下部筐体と、前記下部筐体を覆う上部筐体で構成される請求項1から4のいづれか1項に記載の電気化学センサ。
【請求項6】 前記下部筐体が、前記加圧ガス供給管から供給される加圧ガスを逃がす逃がし孔を具備する請求項1から5のいづれか1項に記載の電気化学センサ。
【請求項7】 ワイヤ電極をU字型の絶縁管に挿入する挿入段階と、前記挿入段階でワイヤ電極が挿入された絶縁管を上部及び下部アタッチメントに挟み、上部及び下部アタッチメントを一体に組み立てる組み立て段階と、前記組み立て段階で一体に組み立てられたアタッチメントを下部筐体に取り付ける取り付け段階と、前記取り付け段階でアタッチメントに取り付けられたワイヤ電極をワイヤ電極移動手段に接続する接続段階と、前記接続段階でワイヤ電極とワイヤ電極移動手段が接続された下部筐体を上部筐体で覆い密閉する密閉段階と、前記密閉段階で密閉された筐体を測定位置に設置する設置段階と、からなる請求項6に記載の電気化学センサの使用方法。
【請求項8】 逃がし孔から逃げる加圧ガス量を、ワイヤ電極と絶縁管の間の隙間のメニスカス位置が不変となるように調整する調整段階をさらに含む請求項7に記載の電気化学センサの使用方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電気化学センサに係わり、特に検査対象液中に沈設した場合にも常に清浄な電極で計測することの可能な電気化学センサに関する。
【0002】
【従来の技術】湖沼、海洋、バイオリアクタ又は水処理装置等中でのポテンシオメトリ、ボルタンメトリ等の電気化学測定においては、電極として貴金属類(白金、金等)あるいは炭素等の水中でも化学的に安定な導電材料が使用される場合が多い。しかし、時間の経過に従って電極表面に微生物等が付着して電極の電気化学的特性が変化し、正確な測定に支障をきたすことを回避できない。
【0003】そこで、正確な測定を継続するために、電極を機械的あるいは化学的に洗浄することが一般的であった。しかし、機械的あるいは化学的な洗浄自体が検査対象液の性質に影響を及ぼし、正確な測定が困難となることも多い。この課題を解決するために作用電極としてワイヤ電極を使用し、順次ワイヤ電極を移動させて常に電極を清浄に維持するものが実用化されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、電気化学センサにワイヤ電極を装着することだけでなく、ワイヤ電極を送り出し引き込むために電気化学センサに穿孔された孔から検出対象液が電気化学センサ内に漏洩することを回避することが困難であった。本発明は上記課題に鑑みなされたものであって、ワイヤ電極の装着を簡略化できるだけでなく内部への検査対象液の漏洩を確実に防止することの可能な電気化学センサを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】第1の発明に係る電気化学センサは、中空の密閉筐体と、密閉筐体の測定部において引き出し孔から密閉筐体の内部から外部に引き出され測定部において密閉筐体の外面に沿って走行し引き入れ孔から密閉筐体の外部から内部に引き入れられる導電性材料製ワイヤ電極と、密閉筐体内に設置され測定部を走行するワイヤ電極を移動させるワイヤ電極移動手段と、ワイヤ電極と対をなす電極である対極と、密閉筐体内に加圧ガスを供給する加圧ガス供給手段と、を具備する。
【0006】本発明にあっては、作用電極として機能するワイヤ電極がワイヤ電極移動手段によって移動される。第2の発明に係る電気化学センサの使用方法は、ワイヤ電極をU字型の絶縁管に挿入する挿入段階と、絶縁管を上部及び下部アタッチメントに挟み上部及び下部アタッチメントを一体に組み立てる組み立て段階と、アタッチメントを下部筐体に取り付ける取り付け段階と、ワイヤ電極をワイヤ電極移動手段に接続する接続段階と、下部筐体を上部筐体で覆い密閉する密閉段階と、筐体を測定位置に設置する設置段階と、からなる。
【0007】本発明にあっては、ワイヤ電極を絶縁管に挿入し、絶縁管を挟んでアタッチメントを組み立て、下部筐体に取り付け、上部筐体で覆った後測定位置に設置される。第3の発明に係る電気化学センサに使用方法は、逃がし孔から逃げる加圧ガス量をワイヤ電極と絶縁管の間の隙間のメニスカス位置が不変となるように調整する調整段階をさらに含む。
【0008】本発明にあっては、加圧ガスの逃がし孔からの逃がし量を調整することにより絶縁管内のメニスカス位置が不変に保持される。
【0009】
【発明の実施の形態】図1は本発明に係る電気化学センサの斜視図であって、電気化学センサ1を覆う円筒形状の筐体は上部筐体11と下部筐体12に分割されている。上部筐体11の上面には圧縮ガス供給用コネクタ111及び電気ケーブルコネクタ112が取り付けられている。
【0010】下部筐体12には基板121が垂直に配置され、基板121上部には駆動プーリ122が配置される。なお、駆動プーリ122はモータ123によって回転駆動される。基板121下部には方向転換プーリ124及び125が、下部筐体12にはアタッチメント13、対極14及び参照電極15が配置される。
【0011】アタッチメント13外周上を走行する導電性の材料で製造されたワイヤ電極16は、駆動プーリ122から下方に伸延し、第1の方向転換プーリ124によって水平に方向転換され、アタッチメント13外周を走行して、第2の方向転換プーリ125によって垂直に方向転換され、上方に伸延して駆動プーリ122に戻るループを形成する。
【0012】従って、モータ123によって駆動プーリ122を駆動するとワイヤ電極14はアタッチメント13外周を走行する。なお、基板121に例えば3個の張力付与プーリ1261、1262及び1263からなる張力付与機構を設置して、ワイヤ電極16に張力を付与し、ワイヤ電極16の弛みを防止するようにしてもよい。
【0013】図2は下部筐体に取り付けられたアタッチメントの拡大図であって、アタッチメント13は下部筐体12の周壁表面に形成された貫通孔を有する凹部127に格納される。図3はアタッチメントの3面図及び樹脂製チューブの上面図であって、アタッチメント13は上部アタッチメント131及び下部アタッチメント132に分割されている。
【0014】上部アタッチメント131及び下部アタッチメント132の対向面には2本の平行な半円形の溝が形成されており、この溝内にはワイヤ電極16が貫通するU字型の樹脂製チューブ17が挿入される。その後上部アタッチメント131及び下部アタッチメント132は4本の結合ネジ133によって一体に組み立てられる。
【0015】一体に組み立てられたアッタチメント13は下部筐体12の周壁表面に形成された凹部127に格納され、4本の取り付けネジ134によって下部筐体12に固定される。なお凹部127底面には下部筐体12内部に貫通する貫通孔が設けられるとともに、シリコンゴムのようなシール材が貼られている。U字型の樹脂製チューブ17の底部には開口171が形成され、この開口171からワイヤ電極16が露出する。なお、ワイヤ電極16は下部筐体12の凹部127の底面の貫通孔を通って下部筐体12の内部に引き入れられ、一方は張力付与プーリ1261、1262及び1263を介して、他方は直接駆動プーリ122に導かれ、駆動プーリ122上で結ばれてループを形成する。
【0016】ワイヤ電極16を信号ケーブルの一方の極と電気的に接続するため、下部筐体12の内部底面には集電枕128が設置される。なお、信号ケーブルの他方の極は対極14に接続される。対極14は作用電極として機能するワイヤ電極16と対をなす電極であり、ワイヤ電極16から適当な範囲内に設置することができる。なお、アタッチメント13あるいは下部筐体12が導電材質製である場合には、アタッチメント13あるいは下部筐体12を対極14として使用することができる。
【0017】ワイヤ電極16の装着が完了した後は、上部筐体11を被せ加圧ガス供給用コネクタ111に加圧ガス供給用配管を、電気ケーブルコネクタ112に電気ケーブルを接続して、検出位置に電気化学センサを沈設する。図2の拡大図から明らかなように、開口127の直上には参照電極15が配置される。参照電極15はL字形であり、長辺は下部筐体12を貫通する取り付け孔151に挿入されて下部筐体12内に引き込まれる。短辺は下部筐体12外部で下方に伸延し、樹脂製チューブ17の開口171に近接する。なお、取り付け孔151の前方ではオーリング152を挟んでナット153が下部筐体12にねじ込まれ、取り付け孔151から検査対象液が漏洩することを防止している。
【0018】なお、圧縮ガス供給用配管111から供給される加圧ガスの圧力は、ワイヤ電極16とU字型の樹脂製チューブ17の隙間からの検査対象液の漏洩を防止するように電気化学センサの沈設位置の外圧と釣り合う圧力に調節する。即ち下部筐体12には、アタッチメント13を格納する凹部127より上方にガス逃がし孔129が設置されており、ガス逃がし孔129におけるガス圧をガス逃がし孔129位置における検査対象液の静圧にガス逃がし孔129と樹脂製チューブ17の水頭圧差を加算した圧力に調節する、即ちガス逃がし孔129から加圧ガスが一定の割合で逃げるように加圧ガスの圧力を調整することにより、ワイヤ電極16と樹脂製チューブ17の隙間のメニスカス位置が変動しないようにすることが可能となる。
【0019】また、電気ケーブルはモータ123の駆動電力を供給する電力ケーブルと、対極14から測定対象液体を介してワイヤ電極16に流れる電流を指示部(図示せず)に伝送し、ワイヤ電極16と参照電極15との間に生じる電位を測定するための信号ケーブルとを含む。即ち、本発明に係る電気化学センサの検出位置への設置順序は以下のようになる。
1.ワイヤ電極16を樹脂製チューブ17内に挿入する。
2.樹脂製チューブ17の開口が底部にくるように、樹脂製チューブ17をU字形に曲げる。
3.U字形に曲げた樹脂製チューブ17を上部アタッチメント131(又は下部アタッチメント132)の溝にU字形の底部が外側にくるように嵌め込み、下部アタッチメント132(又は上部アタッチメント131)を組み合わせて取り付けネジ133で一体に組み立てる。
4.組み立てられたアタッチメント13を下部筐体12に固定ネジ134で固定する。
5.ワイヤ電極16を方向転換プーリ124及び125を介して駆動プーリ122に導き、両端を接続してループに形成する。
6.上部筐体11で下部筐体12を覆い、接続部を密封する。
7.上部筐体11の加圧ガス供給用コネクタ111に加圧ガス供給用配管を、電気ケーブルコネクタ112に電気ケーブルを接続する。
8.電気化学センサを検出位置に設置する。
9.筐体内部に検査対象液が漏洩しないように加圧ガスの圧力を調整する。
【0020】なお、本発明に係る電気化学センサの大きさは特に規定されないが、例えば上部筐体を外径180mm×高さ250mm、下部筐体を外径180mm×高さ50mmとすることが可能である。
【0021】
【発明の効果】第1の発明に係る電気化学センサによれば、密閉筐体外周に取り付けられるアタッチメント上のワイヤ電極を密閉筐体中に格納されるワイヤ電極駆動手段によって駆動することにより、作用電極を常時清浄な状態に維持することが可能となる。
【0022】第2の発明に係る電気化学センサの使用方法によれば、ワイヤ電極をセンサに簡単に取り付けることが可能となる。第3の発明に係る電気化学センサの使用方法によれば、検査対象液が電気化学センサ内に漏洩することを確実に防止することが可能となる。
【出願人】 【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
【出願日】 平成12年8月24日(2000.8.24)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−71617(P2002−71617A)
【公開日】 平成14年3月12日(2002.3.12)
【出願番号】 特願2000−254518(P2000−254518)