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【発明の名称】 水素ガスセンサ
【発明者】 【氏名】吉良 満治

【氏名】花田 真理子

【要約】 【課題】酸素濃度が低い高濃度水素雰囲気中においても出力が飽和せずに水素濃度を検出することができ、またこのような強い還元性雰囲気中においても出力に不可逆な変化が発生せず、長期間に亘って安定して高濃度の水素ガス濃度を検出することができ、しかも簡便な構成で安価に製造することができ、更に小型、堅牢であり、特に燃料電池用燃焼ガス中の水素ガス濃度検知用として好適に用いることができる水素ガスセンサを提供する。

【解決手段】金属酸化物半導体よりなる感応部6に電気抵抗測定用の一対の電極を設けた水素ガスセンサである。感応部6はTiO2、SrTiO3、BaTiO3のうちの少なくとも一種のものを主成分とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 金属酸化物半導体よりなる感応部に電気抵抗測定用の一対の電極を設けた水素ガスセンサであって、感応部はTiO2、SrTiO3、BaTiO3のうちの少なくとも一種のものを主成分とすることを特徴とする水素ガスセンサ。
【請求項2】 水素ガス濃度4〜100%の高濃度水素ガス検知用として形成して成ることを特徴とする請求項1に記載の水素ガスセンサ。
【請求項3】 燃料電池用燃料ガス中の水素ガス濃度検知用として形成して成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の水素ガスセンサ。
【請求項4】 感応部は、TiO2、SrTiO3、BaTiO3の総量に対してPdを0.02〜2.0質量%含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の水素ガスセンサ。
【請求項5】 感応部は、TiO2、SrTiO3、BaTiO3の総量に対してPtを0.01〜1.0質量%含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の水素ガスセンサ。
【請求項6】 感応部は、バインダーとしてコロイダルシリカ、有機シリカ、アルミナゾルのうちの少なくともいずれか一つを用いることによりSiO2、A23のうちの少なくともいずれかを含有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の水素ガスセンサ。
【請求項7】 感応部を楕円球状に形成して成ることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の水素ガスセンサ。
【請求項8】 感応部を平板型基体上に形成して成ることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の水素ガスセンサ。
【請求項9】 感応部を円筒型基体上に形成して成ることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の水素ガスセンサ。
【請求項10】 感応部を加熱するヒータを設けて成ることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の水素ガスセンサ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、酸素がほとんど存在しない雰囲気下、あるいは高濃度の水素ガス雰囲気下において、出力が飽和せず、高濃度の水素ガス濃度を安定して検知することができる水素ガスセンサに関し、特に燃料電池用燃料ガス中の水素ガス濃度の測定用として好適に用いることができるものに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、地球規模の環境問題の解決が要望されるなか、クリーンエネルギー技術の開発が活発となっており、このような技術として燃料電池が注目されている。燃料電池は水素と酸素との燃焼反応等を利用して起電力を発生させるものであり、エネルギー変換率が高く、クリーンで環境にやさしい発電装置として期待されている。またこのような燃料電池を電源として用いた燃料電池自動車の開発も活発に進められている。
【0003】燃料電池は、一般的には燃料である天然ガス等から硫黄化合物を除去する脱硫器、脱硫された燃料を水素とCO及びCO2に変成する改質器、及びCOをCO2に変化させる変成器から構成される改質装置を備えており、この改質装置によって、天然ガス等の燃料から水素ガスに富んだ燃料ガス(改質ガス)が生成される。そして燃料電池本体において、この燃料ガス中の水素ガスと空気中の酸素とを電気化学的に反応させて直流電力を得るものである。
【0004】上記の燃料ガス中には数10〜100%という高濃度の水素ガスが含まれると共に、酸素は殆ど含まれないものであるが、この燃料ガス中の水素濃度は、燃料電池の運転の安定化のために所定の濃度範囲内となっている必要があり、燃料電池の運転の安定化を図ったり運転状態を監視するためには、燃料ガス中の水素ガス濃度をモニターしたりコントロールしたりする必要がある。
【0005】このため、燃料電池用の水素ガス濃度を検知するための水素ガスセンサとして、例えば特開2000−9685号公報に開示されているものが提案されている。この水素ガスセンサは、酸素濃度検知セルと酸素ポンプセルとを固体電解質の両側に多孔質の電極を配置して構成し、この各セルの一方の電極を間隔をあけて対向させると共にこの各電極間の空間を外部から閉塞して空隙を形成し、空隙内側に配置されている各セルの電極を接地し、更にこの空隙と外部との間に水素ガスが通過可能なガス拡散制限部を設けて構成されたものである。
【0006】このように構成される水素ガスセンサは、酸素ポンプセルの外面側の電極が燃料電池に供給される水素を含む燃料ガスの気流中に露出するように配される。ここで燃料ガスには水蒸気が添加されるものである。この状態で酸素ポンプセルの電極間に電圧を印加すると、外面側の電極において水が分解される共に、酸素イオンが固体電解質中を通過して空隙内に導入される。一方、空隙内にはガス拡散制限部を介して水素も導入され、空隙内で酸素イオンと水素とが反応して水が生成される。また酸素濃度検知セルの電極間には一定の微少電流が通電され、電極間に空隙内の酸素濃度に応じた電圧が発生するようにしている。そして、酸素濃度検知セルに発生する電圧が一定となるように酸素ポンプセルの電極間に印加する電圧を制御し、このときの酸素ポンプセルの電極間に印加する電圧の値から水素濃度を導出するものである。
【0007】また、特開平6−196188号公報には、燃料電池用の水素ガス濃度を検知するための水素ガスセンサとして、SnO2、ZnO等の酸化物から構成される半導体センサを用いることが開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記の特開2000−9685号公報に開示されている水素ガスセンサは、装置構成が複雑であり、しかも複雑な制御機構が必要とされるものであって、小型化が困難であり、また製造工程が煩雑となって製造に手間がかかると共に、製造コストも嵩むものであった。
【0009】一方、特開平6−196188号公報に記載のように水素ガスセンサを半導体センサにて構成すると簡便な構成で安価に製造することができるが、従来から知られているSnO2、In23、ZnO、WO3、Fe23等を主成分とする感応部にて構成される金属酸化物半導体ガスセンサは、比較的低濃度の水素雰囲気中で出力が飽和してまうと共に、酸素濃度が低い雰囲気中でも出力が飽和し、また強い還元性雰囲気中では破壊的なダメージを受けて出力に不可逆な変化が発生してしまうものであって、燃料電池用の燃料ガス中の水素濃度を検出する場合のような高濃度の水素ガス濃度を長期間安定して検出することができないものであった。
【0010】尚、金属酸化物半導体としてTiO2を用いるセンサとしては、例えば特許第1368525号のように自動車のエンジン制御用空燃比センサとして実用化されているものがあり、またSrTiO3やBaTiO3を用いるセンサは実用化はされていないものの自動車のリーンバーンエンジン制御用センサとして特開平7−198647号公報に開示されているように多くの研究事例があるが、いずれも酸素センサとして用いられているものであり、水素ガスセンサへの適用の可能性は見出されていなかった。
【0011】本発明は上記の点に鑑みて為されたものであり、金属酸化物半導体として従来水素ガスセンサへの適用が見出されていなかったTiO2、SrTiO3、BaTiO3に着目し、酸素濃度が低い高濃度水素雰囲気中においても出力が飽和せずに水素濃度を検出することができ、またこのような強い還元性雰囲気中においても出力に不可逆な変化が発生せず、長期間に亘って安定して高濃度の水素ガス濃度を検出することができ、しかも簡便な構成で安価に製造することができ、更に小型、堅牢であり、特に燃料電池用燃焼ガス中の水素ガス濃度検知用として好適に用いることができる水素ガスセンサを提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1に係る水素ガスセンサは、金属酸化物半導体よりなる感応部6に電気抵抗測定用の一対の電極を設けた水素ガスセンサであって、感応部6はTiO2、SrTiO3、BaTiO3のうちの少なくとも一種のものを主成分とすることを特徴とするものである。
【0013】また請求項2の発明は、請求項1において、水素ガス濃度4〜100%の高濃度水素ガス検知用として形成して成ることを特徴とするものである。
【0014】また請求項3の発明は、請求項1又は2において、燃料電池用燃料ガス中の水素ガス濃度検知用として形成して成ることを特徴とするものである。
【0015】また請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、感応部6は、TiO2、SrTiO3、BaTiO3の総量に対してPdを0.02〜2.0質量%含有することを特徴とするものである。
【0016】また請求項5の発明は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、感応部6は、TiO2、SrTiO3、BaTiO3の総量に対してPtを0.01〜1.0質量%含有することを特徴とするものである。
【0017】また請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれかにおいて、感応部6は、バインダーとしてコロイダルシリカ、有機シリカ、アルミナゾルのうちの少なくともいずれか一つを用いることによりSiO2、A23のうちの少なくともいずれかを含有することを特徴とするものである。
【0018】また請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれかにおいて、感応部6を楕円球状に形成して成ることを特徴とするものである。
【0019】また請求項8の発明は、請求項1乃至6のいずれかにおいて、感応部6を平板型基体上に形成して成ることを特徴とするものである。
【0020】また請求項9の発明は、請求項1乃至6のいずれかにおいて、感応部6を円筒型基体上に形成して成ることを特徴とするものである。
【0021】また請求項10の発明は、請求項1乃至9のいずれかにおいて、感応部6を加熱するヒータを設けて成ることを特徴とするものである。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0023】本発明に係る水素ガスセンサは、感応部6が二酸化チタン(TiO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)及びチタン酸バリウム(BaTiO3)のうちの少なくとも一種のものを主成分として構成されるものであり、この場合、TiO2、SrTiO3、BaTiO3の総量は、感応部6全体に対して50〜100質量%の範囲とすることが好ましい。
【0024】また、感応部6には、感応部6に含まれるTiO2、SrTiO3、BaTiO3の総量に対してパラジウム(Pd)を0.02〜2.0質量%含有させるか、あるいは白金(Pt)を0.01〜1.0質量%含有させることが好ましく、この場合、水素ガスの濃度を検知する場合に感応部6の電気抵抗値が速やかに安定し、水素ガスの検知時における感応部6の応答性を向上することができる。
【0025】また、この感応部6には、バインダーとして、有機シリカやコロイダルシリカ等のシリカ系バインダーや、アルミナゾル等のアルミナバインダーのうちの少なくともいずれか一種を添加して、感応部6にSiO2、A23のうちの少なくともいずれかを含有させることが好ましい。このようにすると、感応部6の成形性や強度を向上することができる。これらのバインダーの添加量は特に限定されるものではなく、感応部6に充分な成形性や強度を付与するために必要とされる適宜の量が用いられる。
【0026】以下に、感応部6の製造方法を例示する。
【0027】感応部6の主成分としてTiO2を用いる場合は、例えばTiCl4水溶液にアンモニア水を添加して得られるTi(OH)4を空気雰囲気下で1100℃で1時間焼成することにより得られるTiO2を用いることができる。尚、ここでは出発物質としてチタンの塩化物である四塩化チタンを用いているが、硝酸塩や炭酸塩などの、各種のチタンの化合物を用いることもできる。
【0028】また感応部6の主成分としてBaTiO3を用いる場合は、例えば市販のTiO2と、BaCl2・2H2Oとを、BaとTiとのモル比が1:1となるように湿式混合した後、乾燥固化したものを、例えば空気雰囲気下で1100℃で2時間焼成することにより得られるBaTiO3を用いることができる。尚、ここでは出発物質としてバリウムの塩化物であるBaCl2・2H2Oを用いているが、硝酸塩や炭酸塩などの、各種のバリウムの化合物を用いることもできる。また出発物質として用いているTiO2は、ルチル、アナターゼのいずれの結晶構造のものも用いることができる。
【0029】また感応部6の主成分としてSrTiO3を用いる場合は、例えば市販のTiO2とSr(NO32とをSrとTiとのモル比が1:1となるように湿式混合した後、乾燥固化したものを、空気雰囲気下で1100℃で2時間焼成することにより得られるSrTiO3を用いることができる。尚、ここでは出発物質としてバリウムの硝酸塩であるSr(NO32を用いているが、塩化物や炭酸塩などの、各種のストロンチウムの化合物を用いることもできる。また出発物質として用いているTiO2は、ルチル、アナターゼのいずれの結晶構造のものも用いることができる。
【0030】上記の感応部6の主成分となるTiO2、SrTiO3、BaTiO3のうちから適宜選択された一種又は二種以上の金属酸化物半導体を粉砕し、テルピネオール等の有機溶媒を加えてペースト状の成形材料を調製する。この成形材料には、必要に応じて、強度改善や電気抵抗値のコントロールのためにα−アルミナを混合しても良い。
【0031】ここで感応部6にPd又はPtを含有させる場合は、例えば上記の粉体状の金属酸化物半導体に有機溶媒を加える前にPd又はPtを配合し、空気雰囲気下で例えば500℃で1時間焼成し、その後に有機溶媒を加えてペースト状の成形材料を調製するものである。
【0032】そして、このように調製される成形材料をセンサ基体に塗布した後、例えば空気雰囲気下で700℃で1時間焼成することにより、感応部6を形成することができる。
【0033】また、既述のようなバインダーを用いる場合は、上記のようにしてセンサ基体に塗布された成形材料を焼成した後、その表面にバインダーを適当量塗布し、更に例えば空気中で700℃で1時間焼成して、感応部6を形成するものである。また成形材料を調製する際にテルピネオール等の有機溶媒の代わりに、既述のようなバインダーを配合してペースト状の成形材料を調製することもできる。
【0034】このようにして得られる感応部6を用い、この感応部6に電気抵抗測定用の一対の電極を設けることにより、水素ガスセンサを構成することができる。そして、感応部6を水素ガスを含む雰囲気中に配置した状態でこの電極間の電気抵抗値を測定し、この電気抵抗値に基づいて水素ガス濃度を検出することができるものである。
【0035】また、水素ガスセンサを構成するにあたっては、感応部6を一定の温度に保つためのヒータを設けることが好ましい。すなわち、感応部6は組成に応じて水素ガスを検知するための好適な温度(素子温度)があり、また素子温度が変動すると水素ガスの感度が変動して正確な水素濃度を検知することが困難になるため、水素ガス濃度の検出を行うにあたり、ヒータにて素子温度を好適温度に保ち、水素ガス濃度を正確に検知することができるようにするものである。
【0036】以下に水素ガスセンサの具体的な構成を例示する。
【0037】図1,2に示す水素ガスセンサでは、ヒータ25及び芯線20をセンサ基体として、このヒータ25及び芯線20を覆うように楕円球体状(ミニビード状)に感応部6が形成されている。この水素ガスセンサは、有底筒状のセンサ筐体40の底部を兼ねる樹脂製のベース30と、ベース30を貫通してセンサ筐体40内外に突出する3本の端子101,102,103と、端子101,102,103にリード線201,202,203を接続固定して支持されたセンシング部Aと、センサ筐体40の天上面に設けられたガス導入用のステンレス製の金網41とを備えている。ここに、ヒータ25は上述のリード線201,203間に設けられ、芯線20は上述のリード線202により形成されている。また、リード線202とリード線201,203のいずれか一方とで電気抵抗測定用の電極を構成し、リード線201とリード線203とがヒータ加熱用の電極を構成している。尚、感応部6の外径寸法は、長手方向の直径をほぼ0.5mmとし、短手方向の径をほぼ0.3mmとしてある。
【0038】図3,4に示す水素ガスセンサでは、平板状アルミナ基板1をセンサ基体(平板型基体)として用い、この平板状アルミナ基板1の一面に厚膜状に感応部6が形成されている。ここで平板状アルミナ基板1の一面にはスルーホールにより他面の金電極4A′,4B′と接続された金電極4A、4Bを図3(a)に示すように設け、金電極4A、4B間に亘るように感応部6が形成されている。またこの平板状アルミナ基板1の他面側の各電極2A,2B,4A′,4B′にはリードワイヤ5を夫々接続して、リードワイヤ5をベース30に貫通した端子10に接続してある。センシング部Aは、厚さ0.3mmで一辺の長さが2mmの正方形の平板状アルミナ基板1の他面に図3(b)に示すように金電極4A′,4B′及びヒータ用の金電極2A,2Bを設け、金電極2A,2B間には白金印刷膜からなるヒータ25′を形成している。
【0039】図5,6に示す水素ガスセンサでは、円筒状のセラミック管7の外周の両側部に電極8,8がそれぞれ印刷により形成されたものをセンサ基体(円筒型基体)として用い、このセンサ基体の外面に、両電極8,8間に亘って円筒状(チューブ状)に感応部6が形成されている。センシング部Aは、電極8,8及び感応部6が設けられたセラミック管7の中にコイル状のヒータ25を配設したものであって、軸方向の長さが3.5mm、外径が1.2mmに形成してある。また、リードワイヤ5は各電極8,8に対してそれぞれ二本ずつ接続され、センシング部Aに対して計四本接続されているものであり、この4本のリードワイヤ5はベース30に貫通した6つの端子10のうちの4つにそれぞれ接続され、ヒータ25の両端はそれぞれ残りの端子10に接続されている。
【0040】以上のようにして構成される水素ガスセンサの感応部6は、水素ガスを含む雰囲気中に配置されると、水素ガス濃度の変化に応じて電気抵抗値が変化し、この電気抵抗値の変化により水素ガス濃度を検出することができる。このとき水素ガス濃度が上昇するに伴い電気抵抗値が上昇するものであり、しかも雰囲気中の酸素濃度が低く、かつ水素ガスが4〜100%の高濃度である場合であっても電気抵抗値の変化が飽和しないものであり、更にこのような還元性の強い雰囲気中においても破壊的なダメージが発生せず、電気抵抗値が可逆的に変化するという特性を有するものである。尚、感応部6を水素ガスが存在しない雰囲気中から水素ガスが存在する雰囲気中に配置すると、まず感応部6の表面に吸着している酸素と水素ガスとが反応し、それに伴って感応部6の電気抵抗値が急激に低下するという現象が起こるが、それ以後は感応部6の電気的抵抗値は水素ガス濃度の変化に応じて可逆的に変化し、水素ガス濃度を安定して検出することができるものである。
【0041】そのため、本発明に係る水素ガスセンサは、従来の半導体ガスセンサとは異なり、酸素濃度が低い高濃度水素雰囲気中においても出力が飽和せずに水素濃度を検出することができる。またこのような強い還元性雰囲気中においても破壊的なダメージを受けず出力に不可逆な変化が発生せず、長期間に亘って安定して高濃度の水素ガス濃度を検出することができる。従って、従来の半導体ガスセンサでは検出できなかった4〜100%の高濃度水素雰囲気においても、水素ガス濃度を安定して検知することが可能となるものである。
【0042】またこの水素ガスセンサは金属酸化物半導体センサとして構成されていることから、簡便な構成で安価に製造することができ、更に小型化が容易で、かつ堅牢に形成することができるものである。
【0043】ここで、水素ガスセンサを用いて水素ガス濃度を測定する場合、感応部6の周囲の雰囲気が水素ガスを含まない状態から水素ガスを含む状態に変化する場合は、感応部6に既述のような急激な電気抵抗値の変化が生じる。図7〜10はその様子を示すものである。そのため感応部6が水素ガスを含む雰囲気中に配置されるようになってから1分程度経過して感応部6の電気抵抗値が安定した後に、感応部6の電気抵抗値から水素ガス濃度を検出するようにすることが好ましい。
【0044】また、感応部6の周囲の雰囲気中の水素濃度が上昇する場合は、感応部6の電気抵抗値は一旦過剰に上昇(オーバーシュート)した後、徐々に低下して安定するという現象が発生する。図14はその様子を示すものである。このオーバーシュートが発生する原因は不明確ではあるが、感応部6に既述のようにPd又はPtを添加すると、オーバーシュートが発生してから電気抵抗値が安定するまでに要する時間を短縮することができ、水素ガス濃度の変化に対する応答性を向上することができる。
【0045】本発明に係る水素ガスセンサは上記のような特性を具備しているため、特に燃料電池用の燃焼ガス中の水素ガス濃度検知用として好適に用いることができる。この場合は、例えば燃料である天然ガス等から水素に富んだ燃料ガス(改質ガス)を生成する改質装置と、燃料ガス中の水素ガスと空気中の酸素とを電気化学的に反応させて直流電力を発生させる燃料電池本体とで燃料電池を構成し、この改質装置と燃料電池本体との間の燃料ガス供給用の流路中に水素ガスセンサを配設するものである。このようにすると、水素ガスセンサによって燃料ガス中の水素ガス濃度を検出してモニターし、燃料電池の運転状況を監視することができ、また水素ガス濃度の検出結果に基づいて燃料電池に供給される燃料ガス中の水素濃度が所定範囲内に収まるように制御を行って燃料電池の運転の安定化を図ることができる。
【0046】
【実施例】以下、本発明を実施例によって詳述する。
【0047】(実施例1)水素ガスセンサとして、図1,2に示すものを作製した。ここで、感応部6としては、次に示すようにして形成されたものを用いた。
【0048】まず、TiCl4水溶液にアンモニア水を添加して得られるTi(OH)4を空気雰囲気下で1100℃で1時間焼成することによりTiO2(ルチル)を得た。
【0049】このTiO2を粉砕し、テルピネオールを加えてペースト状の成形材料を調製し、センサ基体に塗布した後、空気雰囲気下で700℃で1時間焼成した。焼成後、表面にコロイダルシリカを塗布し、更に空気中で700℃で1時間焼成して感応部6を形成した。
【0050】(実施例2)水素ガスセンサとして、図1,2に示すものを作製した。ここで、感応部6としては、次に示すようにして形成されたものを用いた。
【0051】まず、実施例1と同様にして得られるTiO2を粉砕し、PdをTiO2の総量に対して0.2質量%配合し、更にテルピネオールを加えてペースト状の成形材料を調製し、センサ基体に塗布した後、空気雰囲気下で700℃で1時間焼成した。焼成後、表面にコロイダルシリカを塗布し、更に空気中で700℃で1時間焼成して感応部6を形成した。
【0052】(実施例3)水素ガスセンサとして、図1,2に示すものを作製した。ここで、感応部6としては、次に示すようにして形成されたものを用いた。
【0053】まず、実施例1と同様にして得られるTiO2を粉砕し、PtをTiO2の総量に対して0.2質量%配合し、更にテルピネオールを加えてペースト状の成形材料を調製し、センサ基体に塗布した後、空気雰囲気下で700℃で1時間焼成した。焼成後、表面にコロイダルシリカを塗布し、更に空気中で700℃で1時間焼成して感応部6を形成した。
【0054】(実施例4)水素ガスセンサとして、図1,2に示すものを作製した。ここで、感応部6としては、次に示すようにして形成されたものを用いた。
【0055】まずTiO2と、BaCl2・2H2Oとを、BaとTiとのモル比が1:1となるように湿式混合した後、乾燥固化したものを、空気雰囲気下で1100℃で2時間焼成することによりBaTiO3を得た。
【0056】このBaTiO3を粉砕し、テルピネオールを加えてペースト状の成形材料を調製し、センサ基体に塗布した後、空気雰囲気下で700℃で1時間焼成した。焼成後、表面にコロイダルシリカを塗布し、更に空気中で700℃で1時間焼成して感応部6を形成した。
【0057】(実施例5)水素ガスセンサとして、図1,2に示すものを作製した。ここで、感応部6としては、次に示すようにして形成されたものを用いた。
【0058】まずTiO2と、BaCl2・2H2Oとを、BaとTiとのモル比が1:1となるように湿式混合した後、乾燥固化したものを、空気雰囲気下で1100℃で2時間焼成することによりBaTiO3を得た。
【0059】このBaTiO3を粉砕し、PdをBaTiO3の総量に対して0.5質量%配合し、更にテルピネオールを加えてペースト状の成形材料を調製し、センサ基体に塗布した後、空気雰囲気下で700℃で1時間焼成した。焼成後、表面にコロイダルシリカを塗布し、更に空気中で700℃で1時間焼成して感応部6を形成した。
【0060】(実施例6)水素ガスセンサとして、図1,2に示すものを作製した。ここで、感応部6としては、次に示すようにして形成されたものを用いた。
【0061】まずTiO2とSr(NO32とをSrとTiとのモル比が1:1となるように湿式混合した後、乾燥固化したものを、空気雰囲気下で1100℃で2時間焼成することによりSrTiO3を得た。
【0062】このSrTiO3を粉砕し、テルピネオールを加えてペースト状の成形材料を調製し、センサ基体に塗布した後、空気雰囲気下で700℃で1時間焼成した。焼成後、表面にコロイダルシリカを塗布し、更に空気中で700℃で1時間焼成して感応部6を形成した。
【0063】(比較例1)感応部6の代わりに次に示すように形成されたセンサ用素子を用いて図1,2に示すものと同様のセンサを作製した。
【0064】まず、塩化スズの水溶液をアンモニアで加水分解してスズゾルを得、このスズゾルを風乾後、空気中において500℃で1時間焼成して酸化スズを得た。この酸化スズに1000メッシュのα−アルミナを等量混合し、更にPdを酸化スズの総量に対して0.2質量%配合し、更にテルピオネールを加えてペースト状とし、センサ基体に塗布した後、空気中で700℃で3時間焼成して、酸化スズ製のセンサ用素子を形成した。
【0065】以上の各実施例及び比較例における、感応部6の組成をまとめたものを表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】(濃度特性評価)実施例1〜6の水素ガスセンサについて、素子温度400℃及び600℃での水素ガスに対する濃度特性を調査した。ここで濃度特性は、感応部6及びセンサ用素子の電気抵抗値(Rs)で評価した。
【0068】図7は実施例1〜3、図8は実施例4〜6について、素子温度400℃とした場合に、センサを窒素ガス雰囲気中に配置し、雰囲気中の水素ガス濃度を0%から100%まで10%刻みで上昇させた後、20%まで10%刻みで低下させ、更に15%、10%、7%、5%、3%、2%、1%、0%と低下させた場合の、感応部6及びセンサ用素子の電気抵抗値(Rs)の変化を示す。
【0069】一方、図9は実施例1,2、図10は実施例4〜6について、素子温度600℃とした場合にセンサを窒素ガス雰囲気中に配置し、雰囲気中の水素ガス濃度をまず0%から50%まで上昇させた後、100%まで10%刻みで上昇させ、次いで10%まで10%刻みで低下させ、更に5%、3%、2%、1%、0.5%、0%と低下させた後、1%、3%、5%、10%と上昇させ、次いで50%まで10%刻みで上昇させてから、0%に低下させた場合の、感応部6の電気抵抗値(Rs)の変化を示す。
【0070】この図7〜10のグラフの縦軸は電気抵抗値(Rs)を示し、横軸は時間の変化を示すものであり、更に水素ガス濃度を変動させた時点を矢印で示すと共にその時の水素ガス濃度を表記している。
【0071】図中のグラフに示すように、窒素100%の雰囲気から水素を含む雰囲気となったときに感応部6の表面に吸着している酸素と水素とが反応することにより電気抵抗値(Rs)が急激に低下するが、その後は水素ガス濃度の変動に追随して電気抵抗値(Rs)が変動するものであり、しかも水素ガス濃度が100%であっても電気抵抗値(Rs)の変動が飽和することがなく、高濃度の水素ガス検知用に好適に用いることができることが確認された。
【0072】また図9,10のグラフに示すように、水素ガス濃度を一旦低下させた後に上昇させても電気抵抗値(Rs)は可逆的に変化したものであり、感応部6の出力に不可逆な変化は認められなかった。
【0073】ここで、実施例1,2,4,5,では、素子温度が400℃、600℃それぞれの場合につき、良好な濃度特性を有すものであった。また実施例6では素子温度が400℃では水素ガスの濃度変化に対する電気抵抗値(Rs)の変化がやや小さいものであったが、素子温度600℃では良好な濃度特性を有するものであり、SrTiO3を主成分とする感応部6にて水素ガスセンサを構成する場合は素子温度を600℃以上とすることが好ましいことが判った。
【0074】また、図11,12のグラフはそれぞれ、素子温度400℃、600℃の場合について、水素濃度と電気抵抗値(Rs)との関係をプロットし直したものである。図示のグラフから明らかなように、感応部6の電気抵抗値(Rs)は水素濃度の変化に従って変化すると共に、電気抵抗値(Rs)の値によって水素濃度が一義的に決定されるものである。
【0075】一方、比較例1についても、素子温度400℃において、実施例1〜6と同様に水素ガスに対する濃度特性を調査した。このときの水素濃度と電気抵抗値(Rs)との関係をプロットした結果を図13に示す。図示の通り、比較例1では水素濃度が5%に達する以前に電気抵抗値(Rs)が飽和してしまい、その後は水素濃度を上昇しても電気抵抗値(Rs)は殆ど変化しないものであって、高濃度の水素ガス検知用としては使用することができないものであった。
【0076】(応答性評価)実施例1及び実施例2で得られる水素ガスセンサを容積85mlの容器内に配置し、感応部6の素子温度を400℃とした状態でまず自然大気中に配置した後、感応部6に向けて100窒素ガスの気流を488ml/minの流量で噴出し、次いで100%水素ガスの気流を噴出した。このときの感応部6の電気抵抗値(Rs)を測定した結果を図14に示す。
【0077】図示の通り、感応部6が窒素ガスの気流中から水素ガスの気流中に配置されるようになった時点では、まず感応部6の表面に吸着している酸素と水素とが反応することにより電気抵抗値(Rs)が急激に低下した後、理由は不明であるが電気抵抗値(Rs)が上昇する方向にオーバーシュートが発生し、その後、電気抵抗値(Rs)が徐々に低下して安定する。
【0078】このとき、感応部6に白金、パラジウムのいずれも加えていない実施例1よりも、感応部6にパラジウムを加えている実施例2の方が、オーバーシュートが発生した時点から速やかに電気抵抗値(Rs)が低下して安定するものであり、パラジウムを添加することによる応答性の向上の効果が確認できた。
【0079】
【発明の効果】上記のように本発明の請求項1に係る水素ガスセンサは、金属酸化物半導体よりなる感応部に電気抵抗測定用の一対の電極を設けた水素ガスセンサであって、感応部はTiO2、SrTiO3、BaTiO3のうちの少なくとも一種のものを主成分とするため、感応部は、水素ガスを含む雰囲気中に配置されると、水素ガス濃度の変化に応じて電気抵抗値が変化し、この電気抵抗値の変化により水素ガス濃度を検出することができるものであり、このとき水素ガス濃度が上昇するに伴い電気抵抗値が上昇し、しかも雰囲気中の酸素濃度が低く、かつ水素ガスが高濃度である場合であっても電気抵抗値の変化が飽和しないものであり、更にこのような還元性の強い雰囲気中においても破壊的なダメージが発生せず、電気抵抗値が可逆的に変化するという特性を有する。そのためこのように構成される本発明に係る水素ガスセンサは、酸素濃度が低い高濃度水素雰囲気中においても出力が飽和せずに水素濃度を検出することができると共に、このような強い還元性雰囲気中においても破壊的なダメージを受けず出力に不可逆な変化が発生せず、長期間に亘って安定して高濃度の水素ガス濃度を検出することができるものである。また金属酸化物半導体センサとして構成されていることから、簡便な構成で安価に製造することができ、更に小型化が容易で、かつ堅牢に形成することができるものである。
【0080】また請求項2の発明は、請求項1において、水素ガス濃度4〜100%の高濃度水素ガス検知用として形成するため、このような従来の半導体センサでは検知できない高濃度の水素ガス雰囲気中であっても、感応部の電気抵抗値の変化が飽和せず、またこのような強い還元性雰囲気中においても破壊的なダメージを受けず出力に不可逆な変化が発生しないものであり、長期間に亘って安定して高濃度の水素ガス濃度を検出することができるものである。
【0081】また請求項3の発明は、請求項1又は2において、燃料電池用燃料ガス中の水素ガス濃度検知用として形成するため、高濃度の水素ガスを含む燃料ガスの水素ガス濃度を簡便かつ小型の構成にて長期間に亘って安定して検出することができ、この水素ガスセンサの検出結果に基づいて燃料電池の運転状況を監視したり、燃料ガス中の水素濃度が所定範囲内に収まるように制御を行って燃料電池の運転の安定化を図ることができるものである。
【0082】また請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、感応部は、TiO2、SrTiO3、BaTiO3の総量に対してPdを0.02〜2.0質量%含有するため、水素ガス濃度が上昇した場合に感応部の電気抵抗値の変化にオーバーシュートが発生してから電気抵抗値が安定するまでに要する時間を短縮して、水素ガス濃度の変化に対する応答性を向上することができるものである。
【0083】また請求項5の発明は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、感応部は、TiO2、SrTiO3、BaTiO3の総量に対してPtを0.01〜1.0質量%含有するため、水素ガス濃度が上昇した場合に感応部の電気抵抗値の変化にオーバーシュートが発生してから電気抵抗値が安定するまでに要する時間を短縮して、水素ガス濃度の変化に対する応答性を向上することができるものである。
【0084】また請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれかにおいて、感応部は、バインダーとしてコロイダルシリカ、有機シリカ、アルミナゾルのうちの少なくともいずれか一つを用いることによりSiO2、A23のうちの少なくともいずれかを含有するため、感応部の成形性や強度を向上することができるものである。
【0085】また請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれかにおいて、感応部を楕円球状に形成するため、酸素濃度が低い高濃度水素雰囲気中においても出力が飽和せずに水素濃度を検出することができると共に、このような強い還元性雰囲気中においても破壊的なダメージを受けず出力に不可逆な変化が発生せず、長期間に亘って安定して高濃度の水素ガス濃度を検出することができ、また簡便な構成で安価に製造することができ、更に小型化が容易で、かつ堅牢に形成することができるものである。
【0086】また請求項8の発明は、請求項1乃至6のいずれかにおいて、感応部を平板型基体上に形成するため、酸素濃度が低い高濃度水素雰囲気中においても出力が飽和せずに水素濃度を検出することができると共に、このような強い還元性雰囲気中においても破壊的なダメージを受けず出力に不可逆な変化が発生せず、長期間に亘って安定して高濃度の水素ガス濃度を検出することができ、また簡便な構成で安価に製造することができ、更に小型化が容易で、かつ堅牢に形成することができるものである。
【0087】また請求項9の発明は、請求項1乃至6のいずれかにおいて、感応部を円筒型基体上に形成するため、酸素濃度が低い高濃度水素雰囲気中においても出力が飽和せずに水素濃度を検出することができると共に、このような強い還元性雰囲気中においても破壊的なダメージを受けず出力に不可逆な変化が発生せず、長期間に亘って安定して高濃度の水素ガス濃度を検出することができ、また簡便な構成で安価に製造することができ、更に小型化が容易で、かつ堅牢に形成することができるものである。
【0088】また請求項10の発明は、請求項1乃至9のいずれかにおいて、感応部を加熱するヒータを設けるため、水素ガス濃度の検出を行うにあたり、ヒータにて感応部の温度を好適温度に一定に保って、水素ガス濃度を正確に検知することができるものである。
【出願人】 【識別番号】593210961
【氏名又は名称】エフアイエス株式会社
【出願日】 平成12年8月30日(2000.8.30)
【代理人】 【識別番号】100087767
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 惠清 (外1名)
【公開番号】 特開2002−71611(P2002−71611A)
【公開日】 平成14年3月12日(2002.3.12)
【出願番号】 特願2000−261668(P2000−261668)