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【発明の名称】 非破壊検査方法および装置、データ判定装置
【発明者】 【氏名】竹田 英哲

【氏名】黒川 政秋

【氏名】中山 博之

【要約】 【課題】被検体の形状、コーティングの厚さに起因した測定データのばらつきの影響を排除し、コーティングの剥離部分をより正確に検出可能な非破壊検査装置を実現すること。

【解決手段】被検体Pを所定時間加熱し、その後の温度低下を測定する。この測定データを、基準被検体データに基づいて補正することで、被検体の形状に起因した温度のばらつきを相殺する。基準被検体データとは、被検体Pと同形状且つ剥離のない基準被検体についての、加熱時の温度のばらつきを示したデータである。この補正を行った後のデータについて、温度変化率を求める。そして、この温度変化率に基づいて剥離部を検出する。この温度変化率は、剥離部と、健全部とで大きく異なっている。また、コーティングの厚さの影響を受けにくい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 母材表面にコーティングを施すことで構成された部材における、コーティングの剥離が生じている部分を検出する非破壊検査装置に用いられるデータ判定装置において、そのとき検査対象となっている部材表面の所望の測定点での温度の経時変化を示すデータに基づいて、前記測定点での温度変化率を算定する算定手段と、前記算定手段の算定した温度変化率の大きさに基づいて、当該測定点において前記コーティングの剥離が生じているか否かを判定する判定手段と、を備えることを特徴とするデータ判定装置。
【請求項2】 母材表面にコーティングを施すことで構成された部材における、コーティングの剥離が生じている部分を検出する非破壊検査装置に用いられるデータ判定装置において、そのとき検査対象とされている部材(以下「被検体」という)と同形状であり且つ剥離状況が既知である部材についてあらかじめ用意された補正データを備え、前記被検体の表面における所望の測定点での温度の経時変化を示すデータを、前記補正データに基づいて補正する補正手段と、前記補正手段によって補正された後のデータに基づいて、前記測定点での温度変化率を算定する算定手段と、前記算定手段の算定した温度変化率の大きさに基づいて、当該測定点において前記コーティングの剥離が生じているか否かを判定する判定手段と、を備えることを特徴とするデータ判定装置。
【請求項3】 前記判定手段は、あらかじめ定められた基準値(以下「昇温基準値」という)を備え、前記データが前記測定点での昇温時についてのものである場合には、前記温度変化率が前記昇温基準値よりも大きい測定点では前記コーティングの剥離が生じているものと判定するものであること、を特徴とする請求項1または2に記載のデータ判定装置。
【請求項4】 前記判定手段は、あらかじめ定められた基準値(以下「降温基準値」という)を備え、前記データが前記測定点での降温時についてのものである場合には、前記温度変化率が前記降温基準値よりも小さい測定点では前記コーティングの剥離が生じているものと判定するものであること、を特徴とする請求項1または2に記載のデータ判定装置。
【請求項5】 前記測定点として複数の位置が設定されており、前記判定手段は、前記データが前記測定点での昇温時についてのものである場合、前記温度変化率が他の測定点よりも高くなっている測定点では前記コーティングの剥離が生じているものと判定し、一方、前記データが前記測定点での降温時についてのものである場合、前記温度変化率が他の測定点よりも低くなっている測定点では前記コーティングの剥離が生じているものと判定するものであること、を特徴とする請求項1または2に記載のデータ判定装置。
【請求項6】 母材表面にコーティングを施すことで構成された部材における、コーティングの剥離が生じている部分を検出する非破壊検査装置において、そのとき検査対象となっている部材を加熱する加熱手段と、前記加熱手段による加熱中の温度上昇時または該加熱を停止した後の温度下降時における、前記部材表面の所望の測定点での温度の経時変化を観測する温度観測手段と、前記温度観測手段によって観測されたデータを判定する請求項1〜5のいずれか一つに記載のデータ判定装置と、を備えたことを特徴とする非破壊検査装置。
【請求項7】 母材表面にコーティングを施すことで構成された部材における、コーティングの剥離が生じている部分を検出する非破壊検査装置に用いられるデータ判定装置において、そのとき検査対象とされている部材(以下「被検体」という)と同形状であり且つ剥離状況が既知である部材についてあらかじめ用意された補正データを備え、前記被検体の表面における所望の測定点での温度またはその経時変化を示すデータを、前記補正データに基づいて補正する補正手段と、前記補正手段によって補正された後のデータに基づいて、前記測定点での所定のタイミングにおける温度に基づいて、当該測定点において前記コーティングの剥離が生じているか否かを判定する判定手段と、を備えることを特徴とするデータ判定装置。
【請求項8】 母材表面にコーティングを施すことで構成された部材における、コーティングの剥離が生じている部分を検出する非破壊検査装置において、そのとき検査対象となっている部材を加熱する加熱手段と、前記加熱手段による加熱中の温度上昇時または該加熱を停止した後の温度下降時における、前記部材表面の所望の測定点での温度を観測する温度観測手段と、前記温度観測手段によって観測されたデータを判定する請求項7に記載のデータ判定装置と、を備えたことを特徴とする非破壊検査装置。
【請求項9】 母材表面にコーティングを施すことで構成された部材における、コーティングの剥離が生じている部分を検出する非破壊検査方法において、前記部材表面の所望の測定点における温度変化率を求め、該温度変化率の大きさに基づいて、該測定点において剥離が生じているか否かを判定すること、を特徴とする非破壊検査方法。
【請求項10】 前記温度変化が昇温である場合には、昇温時についてあらかじめ定められた基準値よりも前記温度変化率が大きい測定点では剥離が生じていると判定すること、を特徴とする請求項9に記載の非破壊検査方法。
【請求項11】 前記温度変化が降温である場合には、降温時についてあらかじめ定められた基準値よりも前記温度変化率が小さい測定点では剥離が生じていると判定すること、を特徴とする請求項9に記載の非破壊検査方法。
【請求項12】 前記請求項9〜11のいずれか一つに記載された方法を、コンピュータに実行させるプログラムを格納したことを特徴とするコンピュータが読取可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は母材表面にコーティングを施すことで構成された部材について、コーティングの剥離を検出する非破壊検査方法および装置、さらには、これに用いられるデータ判定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】母材表層に施されたコーティング(膜)の剥離を、赤外線サーモグラフィー法を用いて検出する非破壊検査装置が知られている。この非破壊検査装置では、以下のような原理に基づいて、コーティングの剥離を検出している。なお、本明細書において言う「剥離」とは、コーティングが母材と十分に密着しておらず、両者の間に隙間ができている状態を意味する。
【0003】表面にコーティングが施された部品(被検体)の表層部を外部から加熱した場合、外部から加えられた熱は、コーティング材を経て母材へと伝えられることになる。ところが、コーティングが母材から剥離している部分では、この母材への熱伝導がうまくおこなわれない。剥離部と健全部(剥離が生じていない部分)とでは、コーティングと母材との間での熱伝導特性が異なっている。健全部では、コーティングが母材に密に接しているため、コーティング材と母材との間での熱伝導が比較的スムーズにおこなわれる。これに対し、剥離部では、コーティングが母材から離れているため、熱が伝わりにくい。このため、剥離部では、コーティングに熱が蓄積されたまま(すなわち、高温)となる。したがって、この加熱状態において、この部品の表面温度分布を測定することで、高温部(すなわち、剥離部)を検出することができる。
【0004】なお、実際の装置では、加熱は、赤外線を照射することで行っているのが一般的である。また、加熱後一定時間が経過した時点での温度に基づいて判断している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記従来技術は、健全部と剥離部とでの温度の違い(温度ムラ)に基づいて、両者を判別するものであった。
【0006】しかし、温度ムラが生じる原因は、コーティングの剥離だけではない。たとえば、加熱ムラに起因して温度ムラが生じることもある。また、コーティングの厚みのばらつきに起因して温度ムラが生じることもある。コーティングが厚い部分では健全部であっても、剥離部と同等レベルの温度になっていることがある。このため、このような他の要因によって温度ムラが生じやすい条件下での測定では、剥離部を正確に検出することが困難な場合があった。
【0007】そこで、この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、剥離部をより正確に検出可能な、非破壊検査方法および装置、さらには、これに用いられるデータ判定装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本願発明者は、様々な観点から検討を加えた結果、健全部と剥離部とでは、温度が同レベルであったとしても、温度変化率は異なっていることに気づいた。本発明は本願発明者のこのような知見に基づいてなされたものである。
【0009】上述の目的を達成するために、請求項1に係るデータ判定装置は、母材表面にコーティングを施すことで構成された部材における、コーティングの剥離が生じている部分を検出する非破壊検査装置に用いられるデータ判定装置において、そのとき検査対象となっている部材表面の所望の測定点での温度の経時変化を示すデータに基づいて、前記測定点での温度変化率を算定する算定手段と、前記算定手段の算定した温度変化率の大きさに基づいて、当該測定点において前記コーティングの剥離が生じているか否かを判定する判定手段と、を備えることを特徴とするものである。
【0010】この請求項1に記載の発明によれば、算定手段は、そのとき検査対象となっている部材表面の所望の測定点での温度の経時変化を示すデータに基づいて、測定点での温度変化率を算定する。判定手段は、算定手段の算定した温度変化率の大きさに基づいて、測定点においてコーティングの剥離が生じているか否かを判定する。
【0011】請求項2に係るデータ判定装置は、母材表面にコーティングを施すことで構成された部材における、コーティングの剥離が生じている部分を検出する非破壊検査装置に用いられるデータ判定装置において、そのとき検査対象とされている部材(以下「被検体」という)と同形状であり且つ剥離状況が既知である部材についてあらかじめ用意された補正データを備え、前記被検体の表面における所望の測定点での温度の経時変化を示すデータを、前記補正データに基づいて補正する補正手段と、前記補正手段によって補正された後のデータに基づいて、前記測定点での温度変化率を算定する算定手段と、前記算定手段の算定した温度変化率の大きさに基づいて、当該測定点において前記コーティングの剥離が生じているか否かを判定する判定手段と、を備えることを特徴とするものである。
【0012】この請求項2に記載の発明によれば、補正手段は、被検体の表面における所望の測定点での温度の経時変化を示すデータを、補正データに基づいて補正する。算定手段は、補正手段によって補正された後のデータに基づいて、測定点での温度変化率を算定する。判定手段は、算定手段の算定した温度変化率の大きさに基づいて、測定点においてコーティングの剥離が生じているか否かを判定する。
【0013】請求項3に係るデータ判定装置は、請求項1または2に記載の発明において、前記判定手段は、あらかじめ定められた基準値(以下「昇温基準値」という)を備え、前記データが前記測定点での昇温時についてのものである場合には、前記温度変化率が前記昇温基準値よりも大きい測定点では前記コーティングの剥離が生じているものと判定するものであること、を特徴とするものである。
【0014】この請求項3に記載の発明によれば、データが昇温時についてのものである場合には、判定手段は、温度変化率が昇温基準値よりも大きい測定点ではコーティングの剥離が生じているものと判定する。
【0015】請求項4に係るデータ判定装置は、請求項1または2に記載の発明において、前記判定手段は、あらかじめ定められた基準値(以下「降温基準値」という)を備え、前記データが前記測定点での降温時についてのものである場合には、前記温度変化率が前記降温基準値よりも小さい測定点では前記コーティングの剥離が生じているものと判定するものであること、を特徴とするものである。
【0016】この請求項4に記載の発明によれば、データが降温時についてのものである場合には、判定手段は、温度変化率が降温基準値よりも小さい測定点ではコーティングの剥離が生じているものと判定する。
【0017】請求項5に係るデータ判定装置は、請求項1または2に記載の発明において、前記測定点として複数の位置が設定されており、前記判定手段は、前記データが前記測定点での昇温時についてのものである場合、前記温度変化率が他の測定点よりも高くなっている測定点では前記コーティングの剥離が生じているものと判定し、一方、前記データが前記測定点での降温時についてのものである場合、前記温度変化率が他の測定点よりも低くなっている測定点では前記コーティングの剥離が生じているものと判定するものであること、を特徴とするものである。
【0018】この請求項5に記載の発明によれば、データが昇温時についてのものである場合、判定手段は、温度変化率が他の測定点よりも高くなっている測定点ではコーティングの剥離が生じているものと判定する。一方、データが測定点での降温時についてのものである場合、判定手段は、温度変化率が他の測定点よりも低くなっている測定点ではコーティングの剥離が生じているものと判定する。
【0019】請求項6に係る非破壊検査装置は、母材表面にコーティングを施すことで構成された部材における、コーティングの剥離が生じている部分を検出する非破壊検査装置において、そのとき検査対象となっている部材を加熱する加熱手段と、前記加熱手段による加熱中の温度上昇時または該加熱を停止した後の温度下降時における、前記部材表面の所望の測定点での温度の経時変化を観測する温度観測手段と、前記温度観測手段によって観測されたデータを判定する請求項1〜5のいずれか一つに記載のデータ判定装置と、を備えたことを特徴とするものである。
【0020】この請求項6に記載の発明によれば、加熱手段が、そのとき検査対象となっている部材を加熱する。温度観測手段は、加熱手段による加熱中の温度上昇時または加熱を停止した後の温度下降時における、部材表面の所望の測定点での温度の経時変化を観測する。データ判定装置は、温度観測手段によって観測されたデータを判定することで、剥離している部分を検出する。
【0021】請求項7に係るデータ判定装置は、母材表面にコーティングを施すことで構成された部材における、コーティングの剥離が生じている部分を検出する非破壊検査装置に用いられるデータ判定装置において、そのとき検査対象とされている部材(以下「被検体」という)と同形状であり且つ剥離状況が既知である部材についてあらかじめ用意された補正データを備え、前記被検体の表面における所望の測定点での温度またはその経時変化を示すデータを、前記補正データに基づいて補正する補正手段と、前記補正手段によって補正された後のデータに基づいて、前記測定点での所定のタイミングにおける温度に基づいて、当該測定点において前記コーティングの剥離が生じているか否かを判定する判定手段と、を備えることを特徴とするものである。
【0022】この請求項7に記載の発明によれば、補正手段は、被検体の表面における所望の測定点での温度またはその経時変化を示すデータを、補正データに基づいて補正する。判定手段は、補正手段によって補正された後のデータに基づいて、測定点での所定のタイミングにおける温度に基づいて、測定点においてコーティングの剥離が生じているか否かを判定する。
【0023】請求項8に係る非破壊検査装置は、母材表面にコーティングを施すことで構成された部材における、コーティングの剥離が生じている部分を検出する非破壊検査装置において、そのとき検査対象となっている部材を加熱する加熱手段と、前記加熱手段による加熱中の温度上昇時または該加熱を停止した後の温度下降時における、前記部材表面の所望の測定点での温度を観測する温度観測手段と、前記温度観測手段によって観測されたデータを判定する請求項7に記載のデータ判定装置と、を備えたことを特徴とするものである。
【0024】この請求項8に記載の発明によれば、加熱手段が、そのとき検査対象となっている部材を加熱する。温度観測手段は、加熱手段による加熱中の温度上昇時または加熱を停止した後の温度下降時における、部材表面の所望の測定点での温度またはその経時変化を観測する。データ判定装置は、温度観測手段によって観測されたデータを判定することで、剥離している部分を検出する。
【0025】請求項9に係る非破壊検査方法は、母材表面にコーティングを施すことで構成された部材における、コーティングの剥離が生じている部分を検出する非破壊検査方法において、前記部材表面の所望の測定点における温度変化率を求め、該温度変化率の大きさに基づいて、該測定点において剥離が生じているか否かを判定すること、を特徴とするものである。
【0026】この請求項9に記載の発明によれば、部材表面の所望の測定点における温度変化率を求め、温度変化率の大きさに基づいて、測定点において剥離が生じているか否かを判定する。
【0027】請求項10に係る非破壊検査方法は、請求項9に記載の発明において、前記温度変化が昇温である場合には、昇温時についてあらかじめ定められた基準値よりも前記温度変化率が大きい測定点では剥離が生じていると判定すること、を特徴とするものである。
【0028】この請求項10に記載の発明によれば、温度変化が昇温である場合には、昇温時についてあらかじめ定められた基準値よりも温度変化率が大きい測定点では剥離が生じていると判定する。
【0029】請求項11に係る非破壊検査方法は、請求項9に記載の発明において、前記温度変化が降温である場合には、降温時についてあらかじめ定められた基準値よりも前記温度変化率が小さい測定点では剥離が生じていると判定すること、を特徴とするものである。
【0030】この請求項11に記載の発明によれば、温度変化が降温である場合には、降温時についてあらかじめ定められた基準値よりも温度変化率が小さい測定点では剥離が生じていると判定する。
【0031】請求項12に係るコンピュータが読取可能な記録媒体は、前記請求項9〜11のいずれか一つに記載された方法を、コンピュータに実行させるプログラムを格納したことを特徴とするものである。
【0032】この請求項12に記載の発明によれば、請求項9〜11のいずれか一つに記載された方法を、コンピュータに実行させることができる。
【0033】
【発明の実施の形態】以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0034】この実施の形態の非破壊検査装置100は、被検体P表面の温度変化の様子(温度変化率)に基づいて判定をおこなうことで、測定精度を高めたことを主な特徴とするものである。また、この判定に先立って、測定データを補正することで誤差要因を除去し、より正確な判定を可能にしたことを特徴の一つとする。以下、詳細に説明する。
【0035】まず非破壊検査装置100の概要を図1および図2を用いて説明する。この非破壊検査装置100は、母材表面にコーティング(膜)を施すことで構成された被検体Pについて、このコーティングの状態を非破壊で検査するためのものである。この非破壊検査装置100は、被検体Pを保持具101に保持させた状態で、加熱ヘッド102によって赤外線を照射することで、この被検体Pを加熱するようになっている。
【0036】この場合、保持具101は、5軸のアクチュエータを備えている。後述するコンピュータ116からの指示にしたがって保持具コントローラドライバ111がこの5軸アクチュエータを制御することで、被検体Pの位置などを所望の状態に設定、変更される。
【0037】また、加熱ヘッド102は3軸のアクチュエータによって支持されている。測定者が手動でこの3軸アクチュエータを操作することで、加熱ヘッド102の位置などを変更し、所望の角度、位置から加熱をおこなうことができる。
【0038】さらに、加熱器以外の光が侵入するのを防ぎ、加熱が極力均一になるようにするため、保持具101に保持された被検体Pの周囲は、フード104に囲まれている。また、このフード104に囲まれた空間領域の温度(気温)が上昇しすぎて測定に影響を与えることを防ぐため、フード104にはファン105が設けられている。
【0039】このように被検体Pを極力均一に加熱した上で、このときの被検体Pの表面温度の分布を赤外線カメラ103によって撮影(測定)する。この赤外線カメラ103による撮影データ(測定データ)は、ビデオモニタ114へとリアルタイムに表示される。また、コンピュータ116に取り込まれて記録される。そして、この赤外線カメラ103の測定データをコンピュータ116によって補正、判定することで、被検体P表面でコーティングの剥離部を検出する。特にこの実施の形態では、この判定を、被検体P表面での温度変化の様子(温度変化率)に基づいておこなうようになっている。したがって、この補正、判定については、後ほど詳細に説明することにする。
【0040】また、コンピュータ116はこの非破壊検査装置100全体を制御統括する機能を備えており、上述した各部は、このコンピュータ116からの指示に基づいて動作するように構成されている。ただし、各部のすべてが、直接、コンピュータ116からの信号によって制御されているわけではない。撮影開始/停止、加熱の開始/停止などは、コンピュータ116からの指示にしたがって作動するタイマ113の出力信号に基づいてそのタイミングが決定されている。以上で概要説明を終わる。
【0041】先に述べたとおりこの実施の形態は、コンピュータ116による測定データの補正、判定を主な特徴とするものである。したがって、これ以降はこの特徴部分を中心に述べることにする。
【0042】コンピュータ116は、この非破壊検査装置100全体を制御統括するものであり、図2に示すとおり、インターフェース部117、記憶装置118、メモリ119およびCPU120を備えて構成されている。また、キーボード、マウスなどの入力装置121、CRT(Cathode Ray Tube)や液晶表示装置などの表示装置122などを備えている。
【0043】インターフェース部117は、CPU120からの指示にしたがって、上述した各部を制御するためのものである。この図には一つのブロックとして描いているが、実際には、保持具コントローラドライバ111、タイマ113および赤外線カメラ103等のそれぞれに用意されている。
【0044】記憶装置118は、測定に必要な各種データ、プログラム、測定データ、判定結果を保持するためのものである。コンピュータ116にあらかじめ用意されているデータとしては、たとえば、基準被検体データ、基準値、判定タイミングが上げられる。
【0045】基準被検体データとは、部品(検体)の形状に起因した温度変化のばらつきを補正するためのものである。具体的には、あらかじめ様々な検査方法によって剥離が発生していないことが確認されている検体(基準被検体)について、実際の測定時と同様の加熱を行った場合における、部分ごとの温度のばらつきを示したデータである。たとえば、他の部分よりも温度が高くなりがちな部分については、他の部分との温度の差分が正の数値(たとえば、+3℃)として定義されている。逆に、他の部分よりも温度が低くなりがちな部分については、他の部分との温度の差分が負の数値(たとえば、−4℃)として定義されている。
【0046】この実施の形態では、この基準被検体としては、製造直後の部品を用いている。ただし、基準被検体は、必ずしも未使用の部品である必要はない。たとえば、使用時の環境などに起因して形状が変化するような部品について所定期間使用後の剥離の発生状況を検査するような場合には、所定期間使用されており(つまり、被検体と同様の形状変化が生じており)、且つ、剥離の発生がないことが確認されたものを基準被検体とするのがよい。
【0047】基準値とは、剥離部であるか否かの判定の基準となる、温度変化率の閾値である。この実施の形態では降温中のデータに基づいて判定をおこなうようになっている関係上、この基準値は健全部とみなされる温度変化率の最小値(絶対値)としての意味を有している。つまり、測定データに基づいて算出された温度変化率が、この基準値よりも小さい部分(つまり、温度低下が緩やかな部位)は、剥離が生じていると判定されることになる。温度変化の様子は被検体の種類(コーティングの材料、母材の材料)によって異なる。したがって、この基準値は、被検体の種類ごとに用意されている。
【0048】判定タイミングとは、温度変化率を求める演算の対象とする時期(あるいは期間)を規定したものであり、この実施の形態では加熱ヘッド102の加熱を停止してからの経過時間として規定されている。この判定タイミングは、健全部と剥離部との温度変化率の差が十分に大きくなっている時期(あるいは期間)に設定されている。この判定タイミングは、被検体の種類、加熱温度、加熱時間等に応じて設定される。
【0049】具体的な記憶装置118は、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、フラッシュメモリ等の書き換え可能な不揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成されるものとする。
【0050】メモリ119およびCPU120は、記憶装置118に格納されているプログラムをメモリ119へロードし、これをCPU120が実行することで様々な機能を実現するものである。たとえば、CPU120は、赤外線カメラ103によって得られたデータを解析することで、剥離部を検出する機能を備えている。該機能の詳細については後ほど動作説明において述べることにする。なお、このコンピュータ116は専用のハードウエアにより実現されるものであってもよい。
【0051】特許請求の範囲において言う「データ判定装置」とは、この実施の形態においてはコンピュータ116に相当する。「算定手段」および「判定手段」は、CPU120が所定のプログラムを実行することで実現されている。「補正データ」とは、基準被検体データに相当する。「補正手段」とは、メモリ119,CPU120および記憶装置118等によって実現されている。「降温基準値」とは、この実施の形態における基準値に相当する。「加熱手段」は、加熱ヘッド102、加熱ヘッドドライバ112等によって実現されている。「温度観測手段」は、赤外線カメラ103等によって実現されている。ただし、上記各部は互いに密接に連携して機能しており、ここで述べた対応関係は厳密なものではない。
【0052】次に動作を説明する。以下の説明は、測定動作と、測定データを補正、判定する処理動作とに分けて述べることにする。
【0053】まず測定動作について述べる。測定に先立って、使用者が被検体Pを保持具101に保持させておく。また、タイマ113には各部の動作開始/停止タイミングなどを規定したスケジュールを設定しておく。
【0054】使用者からの測定開始の指示を受けると、コンピュータ116のCPU120は、インターフェース部117を介してタイマ113へと所定の信号を出力する。これを受けてタイマ113は作動を開始し、あらかじめ設定されたスケジュールにしたがって各部に信号を送る。これ以降、各部は主にこのタイマ113から入力される信号に基づいて決定されるタイミングで、動作をおこなう。具体的には以下の通りである。
【0055】まず、加熱ヘッドドライバ112は、加熱ヘッド102から赤外線を照射させてこの被検体Pの表面を昇温させる。そして、所定時間だけ加熱した後は、赤外線の照射を停止させる。すると、被検体Pの表面温度は、下降し始める。
【0056】このとき、赤外線カメラ103が被検体Pの表面における加熱後の温度変化の様子(経時変化)を測定する。この赤外線カメラ103による撮影画像は、ビデオモニタ114へとリアルタイムに表示される。また、赤外線カメラ103に取り込まれ記録されることになる。
【0057】次に、測定データを補正、判定する処理動作について図3を用いて述べる。コンピュータ116のCPU120は、基準被検体データと比較することで、評価対象となっている測定データを補正する(ステップS101)。この補正は、図4に示すように、測定データから基準被検体データを差し引くことでおこなう。この補正をおこなうことで、被検体Pの形状に起因した温度のムラを相殺することができる。したがって、この後おこなう判定処理においては、被検体Pの全表面について、各部の形状によらず同一の基準で判定するとができる。
【0058】つづいて、CPU120はこの補正済みの測定データを判定することで、被検体P表面でコーティングの剥離部を検出する(ステップS102)。該判定は、具体的には以下のようにしておこなう。すなわち、CPU120は、あらかじめ定められた判定タイミング(加熱停止から所定時間経過後)における温度変化率を、被検体Pの部分ごとに求める(つまり、微分演算をおこなう)。先に述べたとおり、判定タイミングは、健全部と剥離部との温度変化率の差が最も大きくなる時期に設定されている。そして、求めた温度変化率を基準値と比較する。比較の結果、温度変化率が基準値よりも小さい部分は、剥離が生じているものと判定する。そして、この判定結果を、ビデオモニタ114(あるいは、コンピュータ116の備える表示装置)へとグラフィカルに表示させる。たとえば、被検体Pの形状を表示させた上に重ねて、剥離が生じていると判定した位置を示してもよい。また、同様にプリンタ115へと出力させる。
【0059】具体的なデータを図5および図6に示した。図5は、補正済み測定データの一例である。図5において、縦軸は赤外線カメラ103によって測定された温度T[℃]、横軸は加熱停止からの経過時間t[s]である。図6は、図5に示したデータについての温度変化率を示したものである。図6において、縦軸は温度変化率(δT/δt)、横軸は加熱停止からの経過時間t[s]である。なお、この図5および図6の例では、判定タイミングを加熱停止後から0.2秒後に設定している。
【0060】図5および図6に示したとおり、剥離部は、健全部に較べて降温が遅くなっている。つまり温度変化率(δT/δt)が小さい。また、温度(T)はコーティングの厚さによる違いが比較的大きい(図5参照)のに対し、温度変化率(δT/δt)は厚さによる違いが小さい(図6参照)。このように、温度の変化率に基づいて判定を行った場合には、コーティングの厚さのばらつきを排除し、剥離部をより正確に検出できる。
【0061】以上説明したとおりこの実施の形態によれば、コーティングの厚さのばらつきの影響を排除し、剥離部をより正確に検出することができる。
【0062】上述した実施の形態では、被検体Pの全体に対して検査を行っていたが、必ずしも被検体Pの全体を検査する必要はない。被検体Pの形状等によっては、ある特定の位置にだけ特に剥離が生じやすいといったことも考えられる。したがって、最も剥離が生じやすい点だけを検査するようにしてもよい。この場合には、温度測定、温度変化率の算定は、原理的には、この測定対象となっている部位についてだけ行えば足りる。
【0063】具体的な演算処理の内容は上述した実施の形態には限定されるものではない。たとえば、基準被検体データの符号をこの実施の形態と逆向きに定義している場合には、測定データに基準被検体データを加算する。また、測定データに代わって、基準値を基準被検体データによって補正しておいてもよい。つまり、場所ごとに基準値が異なるようにしてもよい。このようにすれば、補正はあらかじめ1回行っておくだけでよいため、演算処理を減らすことができ、リアルタイムな処理が容易に可能である。また、より細かな部分ごとに判定をおこなうことができるため、より微少な剥離部も見逃すことがない。
【0064】基準被検体データは必ずしも、剥離が発生していない検体である必要はない。剥離の発生状況が正確に確認されており、且つ、この剥離が温度(あるいは、温度変化率)に与える影響が部位ごとに具体的且つ正確に確認されている検体のデータを基準被検体データとして用いることも可能である。この場合には、当然、既に存在する剥離の影響を排除するように補正をおこなうことになる。
【0065】上述した実施の形態では、降温中のデータに基づいて判定をおこなう関係上、上述した基準値としては、健全部とみなされる温度変化率の最小値を用意していた。しかし、昇温中のデータに基づいて判定をおこなうことも可能である。この場合には、逆に、健全部とみなされる温度変化率の最大値を判定の基準値として使用することになる。この場合には、測定データに基づいて算出された温度変化率がこの基準値よりも大きい部分は、剥離が生じていると判定することになる。なお、特許請求の範囲において言う「昇温基準値」とは、この場合における基準値に相当する。
【0066】これら2種類の基準値(昇温中のデータ判定用の基準値と、降温中のデータ判定用の基準値)の両方を備えてもよい。この場合には、必要に応じて、昇温中のデータと、降温中のデータとのいずれをも判定することができる。この場合には、測定データを解析し、当該測定データが昇温時のものであるかあるいは降温時のものであるかを自動的に判定することがより好ましい。
【0067】上述した実施の形態では、基準値を一定にしていたが、被検体Pの表面温度は気温による影響を受ける。したがって、周囲の温度等に応じて基準値を補正するようにすれば、より正確な判定が可能である。
【0068】上述した実施の形態では、測定データによって得られた温度変化率とあらかじめ用意された基準値とを比較することで判定を行っていたが、判定の手法はこれに限定されるものではない。たとえば、各所における温度変化率を互いに比較することで判定してもよい。通常は、剥離が生じている部位は被検体Pの表面の一部領域だけであると考えられる。したがって、温度変化率が、被検体Pの表面の他の部位(測定点)と著しく異なる部位(測定点)では、剥離が生じていると判定する。この場合も、測定データが降温時のものであれば、温度変化率が他の部位よりも著しく小さい部位を剥離部であると判定することになる。測定データが昇温時のものであれば、逆に、温度変化率が他の部位よりも著しく大きい部位を剥離部であると判定することになる。このようは判定手法では、あらかじめ定められた基準値を使用しないため、判定結果が室温の影響等を受けにくいという利点がある。
【0069】上述した実施の形態では剥離が生じていると判定された位置をビデオモニタ114等へと表示させていたが、出力の形態はこれに限定されるものではない。たとえば、補正後の測定データと基準値との差分値自体を出力してもよい。この場合には、サーモグラフのごとく、差分値の大きさに応じて色を変えて出力すればわかりやすい。
【0070】本発明を実施するに当たっては上述した実施の形態の構成のすべてを備えている必要はない。必要に応じて一部の構成のみを採用してもよい。たとえば、測定データの補正だけを行って、判定自体は従来と同様に温度に基づいて行ってもよい。あるいは、測定データの補正をおこなうことなく、測定データをそのまま用いて温度変化率を求めてもよい。
【0071】コンピュータ116の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述した処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器などのハードウエアを含むものとする。
【0072】また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フロッピー(登録商標)ディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROMなどの可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスクなどの記録装置のことをいう。さらに、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネットなどのネットワークや電話回線などの通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものを含むものとする。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0073】
【発明の効果】以上説明したように、この発明の非破壊検査方法および装置、データ判定装置では、コーティングの厚さのばらつき、部材の形状に起因した加熱ムラ等の影響を排して、コーティングの剥離をより正確に検出することができる。より詳細には以下の通りである。
【0074】請求項1に記載の発明では、このデータ判定装置を用いてデータの判定を行った場合には、コーティングの厚さのばらつきによる影響を受けることなく、コーティングが剥離している部位をより正確に検出することができる。
【0075】請求項2に記載の発明では、補正データに基づいてデータの誤差(たとえば、形状に起因した温度のムラ)を補正することができる。したがって、このデータ判定装置を用いてデータの判定を行った場合には、コーティングが剥離している部位をより正確に検出することができる。
【0076】請求項3に記載の発明では、部材を加熱昇温させている際に測定されたデータに基づいて、コーティングの剥離を検出することができる。
【0077】請求項4に記載の発明では、部材を降温させている際に測定されたデータに基づいて、コーティングの剥離を検出することができる。
【0078】請求項5に記載の発明では、コーティングの剥離を検出することができる。また、データを測定する際の周囲の影響を受けにくい。
【0079】請求項6に記載の発明では、コーティングの厚さのばらつきによる影響を受けることなく、コーティングが剥離している部位をより正確に検出することができる。
【0080】請求項7に記載の発明では、補正データに基づいてデータの誤差(たとえば、形状に起因した温度のムラ)を補正することができる。したがって、このデータ判定装置を用いてデータの判定を行った場合には、コーティングが剥離している部位をより正確に検出することができる。
【0081】請求項8に記載の発明では、補正データに基づいてデータの誤差(たとえば、形状に起因した温度のムラ)を補正することができる。したがって、コーティングが剥離している部位をより正確に検出することができる。
【0082】請求項9に記載の発明では、コーティングの厚さのばらつきによる影響を受けることなく、コーティングが剥離している部位をより正確に検出することができる。
【0083】請求項10に記載の発明では、部材を昇温させている際に測定されたデータに基づいて、コーティングの剥離を検出することができる。
【0084】請求項11に記載の発明では、部材を降温させている際に測定されたデータに基づいて、コーティングの剥離を検出することができる。
【0085】請求項12に記載の発明では、コーティングの厚さのばらつきによる影響を受けることなく、コーティングが剥離している部位をより正確に検出することができる。
【出願人】 【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
【出願日】 平成12年8月29日(2000.8.29)
【代理人】 【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明 (外1名)
【公開番号】 特開2002−71605(P2002−71605A)
【公開日】 平成14年3月12日(2002.3.12)
【出願番号】 特願2000−259865(P2000−259865)