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【発明の名称】 ジュールトムソン冷却装置
【発明者】 【氏名】稲口 隆

【要約】 【課題】適切な作動ガスの組合せを設定することにより、窒素の沸点温度77K以下に高速に冷却可能なジュールトムソン冷却装置を提供すること。

【解決手段】第1段冷却用フィン付きチューブに供給する第1作動ガスをアルゴンガスとし、第2段冷却用フィン付きチューブに供給する第2作動ガスをネオンガスとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 冷却装置の本体容器内に同軸に配置されたコールドフィンガーチューブ内に収容され、第1段冷却用フィン付きチューブ、第1段冷却用フィン付きチューブの低温端に設けられた第1段ジュールトムソン弁、第2段冷却用フィン付きチューブ、および第2段冷却用フィン付きチューブの低温端に設けられた第2段ジュールトムソン弁を具備したクライオスタットと、第1段冷却用フィン付きチューブに第1作動ガスを供給する第1高圧ガスタンクと、第2段冷却用フィン付きチューブに第2作動ガスを供給する第2高圧ガスタンクとを備え、前記第1作動ガスはアルゴンガスであり、前記第2作動ガスはネオンガスであることを特徴とするジュールトムソン冷却装置。
【請求項2】 前記クライオスタットは、第2段冷却用フィン付きチューブに、第1段冷却用ジュールトムソン弁通過後の第1作動ガスおよび第2段冷却用ジュールトムソン弁通過後の第2作動ガスを直接接触させる構造であることを特徴とする請求項1記載のジュールトムソン冷却装置。
【請求項3】 冷却装置の本体容器内に収容され、軸方向の一端が作動ガスの出入り口端をなし、軸方向の他端に設けられたエンドキャップが前記冷却装置の本体容器内に収容された被冷却物を冷却する低温端を成すコールドフィンガーチューブと、このコールドフィンガーチューブ内に同心的に配置され、前記作動ガス出入り口端側が小径とされ、前記エンドキャップ側が大径とされた段付き円筒状のマンドレル、このマンドレルの小径部外周面に接触して卷回された第1段冷却用フィン付きチューブ、第1段冷却用フィン付きチューブの低温端に設けられ、この第1段冷却用フィン付きチューブ内を流れてきた第1作動ガスをコールドフィンガーチューブ内中央部の環状空間に放出する第1段冷却用ジュールトムソン弁、第1段冷却用フィン付きチューブの外周および前記マンドレルの大径部外周面に接触するように卷回された第2段冷却用フィン付きチューブ、および第2段冷却用フィン付きチューブの低温端に設けられ、この第2段冷却用フィン付きチューブ内を流れてきた第2作動ガスを前記エンドキャップ近傍のコールドフィンガーチューブ内環状空間に放出する第2段冷却用ジュールトムソン弁を有するクライオスタットと、第1段冷却用フィン付きチューブに第1作動ガスを供給する第1高圧ガスタンクと、第2段冷却用フィン付きチューブに第2作動ガスを供給する第2高圧ガスタンクとを備え、前記第1作動ガスはアルゴンガスであり、前記第2作動ガスはネオンガスであることを特徴とするジュールトムソン冷却装置。
【請求項4】 前記コールドフィンガーチューブのエンドキャップの冷却面を被冷却物の被冷却面より小さくしたことを特徴とする請求項1または3記載のジュールトムソン冷却装置。
【請求項5】 前記マンドレル内空間を真空にしたことを特徴とする請求項3記載のジュールトムソン冷却装置。
【請求項6】 前記第1高圧ガスタンクおよび第2高圧ガスタンクの外周面に断熱材を設けたことを特徴とする請求項1または3記載のジュールトムソン冷却装置。
【請求項7】 前記第1高圧ガスタンクと前記第1段冷却用フィン付きチューブとを接続する連絡配管および前記第2高圧ガスタンクと前記第2段冷却用フィン付きチューブとを接続する連絡配管それぞれに断熱材を配設したことを特徴とする請求項1または3記載のジュールトムソン冷却装置。
【請求項8】 前記第2高圧ガスタンクを前記第1高圧ガスタンクの中に設置したことを特徴とする請求項1または3記載のジュールトムソン冷却装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ジュールトムソン冷却装置に関し、特に、ジュールトムソン冷却装置に内蔵されるクライオスタットの構造に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のクライオスタットを内蔵したジュールトムソン冷却装置としては、例えば特開平11−295143号公報およびUSP5382797号公報に記載されたものが知られている。これを図8に示し、以下説明する。
【0003】このジュールトムソン冷却装置は、赤外線放射を感知して応答電気信号を発生する赤外線検知器140を、クライオスタット100で冷却する赤外線検知装置として具体化したものである。
【0004】クライオスタット100は、内側クライオスタット110と外側クライオスタット120とからなる二重クライオスタットであり、コールドフィンガーチューブ130内に収容されている。より具体的には、内側クライオスタット110が外側クライオスタット120の内部に同軸に配置され、外側クライオスタット120がコールドフィンガーチューブ130の内部に同軸に配置されている。そして、コールドフィンガーチューブ130は、前端に鍔部101aを有する筒状の検知器組立体101内に配設されている。なお、検知器組立体101の前端鍔部101aは、デュアハウジング102により密閉されている。
【0005】上記内側クライオスタット110は、比較的低い熱伝導性材料で作られた延伸筒状のマンドレル111を具備し、その外周表面にフィン付きチューブ112が卷回されている。そして、マンドレル111の低温端はエンドキャップ113で密閉されている。
【0006】また、外側クライオスタット120は、比較的低い熱伝導性材料で作られた延伸筒状のマンドレル121を具備し、その外周表面にフィン付きチューブ122が卷回されている。そして、マンドレル121の低温端はエンドキャップ123で密閉されている。なお、コールドフィンガーチューブ130とフィン付きチューブ122とを熱的に隔離するために、フィン付きチューブ122の周りに絶縁性の糸等が緻密に巻かれている。また、この外側クライオスタット120のエンドキャップ123はその中央に隆起部分123aを有し、その前面がコールドフィンガーチューブ130のエンドキャップ131の後面に接着接合されている。
【0007】内側クライオスタット110のフィン付きチューブ112の低温端には外側クライオスタット120のエンドキャップ123に向けられたジュールトムソン弁(以下JT弁という)115と、外側クライオスタット120の低温端に近接して半径方向に向けられたJT弁116とが設けられている。
【0008】内側クライオスタット110のフィン付きチューブ112内を流れてきた作動流体は、環状空隙117内において、JT弁115から外側クライオスタット120のエンドキャップ123に向けて放出膨張され、エンドキャップ131を介して台座142を冷却する。また、この放出と併行して、内側クライオスタット110内を流れてきた作動流体は、マンドレル111とマンドレル121との間の円筒状空隙内において、外側クライオスタット120の低温端を冷却するようにJT弁116から放出膨張され、マンドレル121の筒状壁を介しフィン付きチューブ122を予冷しながら外部に放出される。
【0009】外側クライオスタット120のフィン付きチューブ112の低温端には、外側クライオスタット120のエンドキャップ123の隆起部分123aを取り囲む複数の縦方向に向けられたJT弁125が取り付けられている。
【0010】外側クライオスタット120のフィン付きチューブ122内を流れてきた作動流体は、JT弁125から環状空隙127内に放出膨張され、エンドキャップ131を介して台座142を冷却する。そして、フィン付きチューブ122を予冷しながら外部に放出される。
【0011】一方、赤外線検知器140は、その視野角を制限するためのコールドシールド141内に配置され、前述のようにして冷却された台座142に取り付けられている。コールドシールド141は、デュアハウジング102内に同軸に配置されており、円錐支持部材143によりコールドフィンガーチューブ130から熱伝達を受けて冷却されるように、コールドフィンガーチューブ130に対し固定されている。また、デュアハウジング102の前端には赤外線を透過させるための開口102aが設けられ、この開口102aに窓材103が取り付けられている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来のジュールトムソン冷却装置においては、第1段冷却用作動ガスおよび第2段冷却用作動ガスとしてどのような作動ガスを使用すればよいかについては、アルゴン(Ar)、窒素(N2)、ヘリウム(He)またはそれらの組合せが用途に適していると記載されているのみで、具体的組合せについては何ら開示されていない。
【0013】因みに、ジュールトムソン膨張により作動ガスを高圧から大気圧近傍まで膨張させたときの到達温度は、その作動ガスの大気圧近傍の圧力における沸点になる。また、一般に沸点が低くなるほど、ジュールトムソン膨張による冷却効果が低下する。そこで、各種ガスの大気圧における沸点を調べ、これを表1に示している。この表1によると、ヘリウムの沸点は4.2Kと極端に低い。また、アルゴンの沸点は87.3Kであり、窒素の沸点は77.3Kである。したがって、77K以下、すなわち液体窒素の沸点温度以下であって、4.2K温度(ヘリウムの沸点温度)以上の中間温度領域に冷却する作動ガスとしては、非効率的にならざるを得ない。
【0014】
【表1】

【0015】本発明は、このような従来技術に存在する問題点に鑑み成されたもので、適切な作動ガスの組合せを設定することにより、液体窒素の沸点温度77K以下に高速に冷却可能なジュールトムソン冷却装置を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明のジュールトムソン冷却装置は、冷却装置の本体容器内に同軸に配置されたコールドフィンガーチューブ内に収容され、第1段冷却用フィン付きチューブ、第1段冷却用フィン付きチューブの低温端に設けられた第1段ジュールトムソン弁、第2段冷却用フィン付きチューブ、および第2段冷却用フィン付きチューブの低温端に設けられた第2段ジュールトムソン弁を具備したクライオスタットと、第1段冷却用フィン付きチューブに第1作動ガスを供給する第1高圧ガスタンクと、第2段冷却用フィン付きチューブに第2作動ガスを供給する第2高圧ガスタンクとを備え、前記第1作動ガスはアルゴンガスであり、前記第2作動ガスはネオンガスであることを特徴とする。
【0017】上記のように構成すると、液体窒素の沸点温度77K以下の温度に冷却する装置における作動ガスとして、沸点温度および冷却効果から見て最適なネオン(Ne)が使用されており、また、このネオンガスを予冷するガスとして最適なアルゴンガスが使用されているで、冷却効率が良く、初期冷却速度の速い高速冷却のジュールトムソン冷却装置を得ることができる。
【0018】また、前記クライオスタットは、第2段冷却用フィン付きチューブに、第1段冷却用ジュールトムソン弁通過後の第1作動ガスおよび第2段冷却用ジュールトムソン弁通過後の第2作動ガスを直接接触させる構造としてもよい。
【0019】このように構成すれば、ジュールトムソン弁通過後の第1作動ガスが従来のように筒状の壁体を介することなく直接接触で効率よく第2段冷却用フィン付きチューブを流通する第2作動ガスを予冷することができ、より一層初期冷却時間を短縮することができる。なお、熱理論的に、第2作動ガスの流量に比し第1作動ガスの流量が大幅に多くなるので、第1段冷却用ジュールトムソン弁通過後の第1作動ガスと第2段ジュールトムソン弁通過後の第2作動ガスが混合されても、これによる弊害はほとんど生じない。
【0020】また、本発明のジュールトムソン冷却装置は、冷却装置の本体容器内に収容され、軸方向の一端が作動ガスの出入り口端をなし、軸方向の他端に設けられたエンドキャップが前記冷却装置の本体容器内に収容された被冷却物を冷却する低温端を成すコールドフィンガーチューブと、このコールドフィンガーチューブ内に同心的に配置され、前記作動ガス出入り口端側が小径とされ、前記エンドキャップ側が大径とされた段付き円筒状のマンドレル、このマンドレルの小径部外周面に接触して卷回された第1段冷却用フィン付きチューブ、第1段冷却用フィン付きチューブの低温端に設けられ、この第1段冷却用フィン付きチューブ内を流れてきた第1作動ガスをコールドフィンガーチューブ内中央部の環状空間に放出する第1段冷却用ジュールトムソン弁、第1段冷却用フィン付きチューブの外周および前記マンドレルの大径部外周面に接触するように卷回された第2段冷却用フィン付きチューブ、および第2段冷却用フィン付きチューブの低温端に設けられ、この第2段冷却用フィン付きチューブ内を流れてきた第2作動ガスを前記エンドキャップ近傍のコールドフィンガーチューブ内環状空間に放出する第2段冷却用ジュールトムソン弁を有するクライオスタットと、第1段冷却用フィン付きチューブに第1作動ガスを供給する第1高圧ガスタンクと、第2段冷却用フィン付きチューブに第2作動ガスを供給する第2高圧ガスタンクとを備え、前記第1作動ガスはアルゴンガスであり、前記第2作動ガスはネオンガスであることを特徴とするものとしてもよい。
【0021】このように構成すると、前記構成のジュールトムソン冷却装置と比較して、クライオスタット部の構成が簡略化および小型化され、冷却装置の総重量を低減することができ、この種の極低温装置において最も重要な初期冷却時間をより一層短縮することができる。
【0022】また、前記コールドフィンガーチューブのエンドキャップの冷却面を被冷却物の被冷却面より小さくすることが好ましい。このように構成すれば、冷却装置の総重量を低減することができ、初期冷却時間を短縮することができる。
【0023】また、前記マンドレル内空間を真空にすることが好ましい。このように構成すれば、外部からマンドレル内の空気等ガスの熱伝導により熱が侵入することを低減することができ、初期冷却時間をより短縮することができる。
【0024】また、前記第1高圧ガスタンクおよび第2高圧ガスタンクの外周面に断熱材を設けることが好ましい。このように構成すると、高圧ガスタンクから作動ガスが流出して、高圧ガスタンク内の作動ガスの膨張により高圧ガスタンクの温度が下がるが、高圧ガスタンクの外周面に設けられた断熱材により周囲からの熱侵入が防止され、より低い温度を維持した状態で第1段冷却用フィン付きチューブおよび第2段冷却用フィン付きチューブに作動ガスをそれぞれ導入することができ、初期冷却時間をより短縮することができる。
【0025】また、前記各高圧ガスタンクと第1段および第2段冷却用フィン付きチューブとを連絡する連絡配管に断熱材を設けることが好ましい。この場合も連絡配管を通して進入する熱を防止することができ、より低い温度を維持した状態で第1段冷却用フィン付きチューブおよび第2段冷却用フィン付きチューブにそれぞれ作動ガスを導入することができ、初期冷却時間をより短縮することができる。
【0026】また、前記第2高圧ガスタンクを前記第1高圧ガスタンクの中に設置してもよい。このように構成すれば、作動ガスの流出によりより低くなる第2高圧ガスタンクの周囲が大気より大幅に温度の低い第1作動ガスにより包まれることになり、外部からの熱侵入をより一層低減することができ、より低い温度を維持した状態で第2段冷却用フィン付きチューブに作動ガスを導入することができ、初期冷却時間をより一層短縮することができる。また、第2高圧ガスタンクの内外圧力差が小さくなるので、タンク構成材料の肉厚を薄くすることができる。また、高圧ガスタンクが2重構造となり、コンパクトに纏められるので、冷却装置の設置スペースを低減することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】実施の形態1.以下、この発明の実施の形態1を図1〜図4に基づき説明する。なお、図1は実施の形態1に係るジュールトムソン冷却装置の全体説明図である。図2は図1における冷却装置本体部分の拡大図である。図3はネオンの逆転温度曲線図である。図4はアルゴンの逆転温度曲線図である。
【0028】実施の形態1に係るジュールトムソン冷却装置は、赤外線検知装置として具体化されたものである。この赤外線検知装置は、前記従来のものと同様の機能を有する。図1において、1は円筒状の冷却装置本体容器で、本体容器1内の後端側(図面上は上方側)にはクライオスタット10を収容するコールドフィンガーチューブ8が配置され、その前端側(図面上は下方側)には赤外線検知器2を収納したコールドシールド3が配置されている。このコールドシールド3は、コールドフィンガーチューブ8の低温端を成すエンドキャップ8aに接触して取り付けられて冷却されている。なお、エンドキャップ8aの直径および面積は、コールドシールド3の冷却面の直径および面積より小さく構成されており、冷却装置の低重量化、小型化が行われている。
【0029】本体容器1の後端(図面上は上端)には厚手の蓋板5が設けられている。蓋板5の中央部にはコールドフィンガーチューブ8の内径と略同一の孔が設けられ、この孔には蓋板5より薄手の密栓8bが取り付けられている。また、密栓8bには、第1作動ガスを導入するための連絡配管13および第2作動ガスを導入するための連絡配管23が貫通して配置されている。また、密栓8bの下方位置において、蓋板5の外部とコールドフィンガーチューブ8内とを連通する複数のガス逃し孔5aが設けられている。また、本体容器1の前端(図面上は下端)には、エンドプレート6が設けられ、このエンドプレート6には赤外線を透過させるための開口6aが設けられ、この開口6aに窓材7が取り付けられている。
【0030】次に、クライオスタット10の構成を説明する。コールドフィンガーチューブ8内には、有底筒状のマンドレル9が同軸に配置されている。前記マンドレル9は、後端側、つまり作動ガス導入側部(高温部)9aを小径とし、前端側、つまり低温部9bを大径とした段付き円筒状として構成されている。そして、マンドレル9の高温部9aの外周面には第1段冷却用フィン付きチューブ11が卷回されている。また、第1段冷却用フィン付きチューブ11の外周およびマンドレル9の低温部9bの外周面には、第2段冷却用フィン付きチューブ21が卷回されている。なお、第2段冷却用フィン付きチューブ21とコールドフィンガーチューブ8とは熱的に隔離するために、第2段冷却用フィン付きチューブ21の周りに絶縁性の糸等が緻密に巻かれている。また、マンドレル9内空間は、後端側の開放部が密栓8bにより密封されるとともに真空に保持されている。
【0031】また、コールドフィンガーチューブ8内のマンドレル9との間に形成される環状空間部8cにおいて、第1段冷却用フィン付きチューブ11の低温端には第1ジュールトムソン弁(JT弁)12が設けられており、この第1JT弁12はマンドレル9の段部の上部に配置されている。また、コールドフィンガーチューブ8内のマンドレル9との間に形成される環状空間部8cにおいて、第2段冷却用フィン付きチューブ21の低温端には第2JT弁22が設けられており、この第2JT弁22はエンドキャップ8aの近傍においてエンドキャップ8aに向けて配置されている。本実施の形態1においては、クライオスタット10は以上のように構成されている。
【0032】また、図1において、14は第1高圧ガスタンクである。この第1高圧ガスタンク14は、内部に第1作動ガスが充填されており、開閉弁15を介し連絡配管13により第1段冷却用フィン付きチューブ11に接続されている。また、24は第2高圧ガスタンクである。この第2高圧ガスタンク24は、内部に第2作動ガスが充填されていおり、開閉弁25を介し連絡配管23により第2段冷却用フィン付きチューブ21に接続されている。
【0033】上記のように構成された赤外線検知装置は、次のように作動する。第1高圧ガスタンク14から供給される第1作動ガスは、第1段冷却用フィン付きチューブ11を介して第1JT弁12からコールドフィンガーチューブ8内の環状空間部8c内に放出され膨張し、低温ガスと成って第1段冷却用フィン付きチューブ11および第2段冷却用フィン付きチューブ21に直接接触して冷却しながら、ガス逃し孔5aを介して外部に放出される。一方、第2高圧ガスタンク24から供給される第2作動ガスは、第2段冷却用フィン付きチューブ21を介して第2JT弁22からエンドキャップ8aに向けてコールドフィンガーチューブ8内の環状空間部8c内に放出され膨張し、これにより被冷却物である赤外線検知器2を収納したコールドシールド3を冷却する。また、第1JT弁12から放出された第1作動ガスと混合しながら前記第1段冷却用フィン付きチューブ11および第2段冷却用フィン付きチューブ21を冷却し、つまり第2作動ガスを予冷しながら、ガス逃し孔5aを介して外部に放出される。
【0034】上記構成において、作動ガスの選定は次ぎのように行った。表1の沸点温度から、77 K(窒素の沸点温度)以下の温度に冷却するには、ネオンを第2作動ガスに使用するのが適当であることが分る。次にネオンを予冷するための第1作動ガスを次のように選定した。
【0035】図3はネオンの逆転温度曲線を示したものである。図中、(?T/?P)Hはジュールトムソン係数で、これが正の値の場合、ジュールトムソン膨張時温度が下がり、逆に負の場合、温度が上昇する。ネオンの場合、300 Kにおいてはいかなる圧力においてもジュールトムソン係数は負であるため、予冷が必要になる。例えば20 MPaから膨張させる場合、160 Kまで予冷しておく必要がある。ここで、T:温度、P:圧力、H:エンタルピーである。
【0036】次に、アルゴン(Ar)の大気圧下の沸点は、表1に示すように87.3 Kであり、この沸点温度を有することから、ネオン(Ne)ガスを予冷するのに適当と考えられる。図4はアルゴンの逆転温度曲線を示したもので、例えば、40MPaから膨張させる場合、550 K以下ならジュールトムソン係数は正であるため、空力加熱による温度上昇を考慮してもアルゴン自体の予冷は不要である。以上から作動ガスとしては、第2作動ガスをネオンガスとし、第2作動ガス(ネオンガス)を予冷するための第1作動ガスをアルゴンガスとするのが適切であると考えられる。
【0037】本実施の形態1は、以上のように構成されているので次のような効果が発揮される。
(1) 第1作動ガスをアルゴンガスとし第2作動ガスをネオンガスとしたことにより、窒素の大気圧における略沸点温度である77 K以下に冷却する冷却装置としては、作動ガスの組合せが最適となり高速冷却が可能となる。
【0038】(2)第1JT弁12通過後の第1作動ガスおよび第2JT弁22通過後の第2作動ガスを、第2段冷却用フィン付きチューブ21に直接接触させる構造としたので、第1JT弁12通過後の第1作動ガスが従来のように筒状の壁体を介することなく、効率よく第2段冷却用フィン付きチューブ21を流通する第2作動ガスを予冷することができる。なお、一般に、第2作動ガスの流量に比し第1作動ガスの流量が大幅に多いので第1JT弁12通過後の第1作動ガスと第2JT弁22通過後の第2作動ガスが混合されても、これによる弊害はほとんど生じない。
【0039】(3)第1段冷却用フィン付きチューブ11および第2段冷却用フィン付きチューブ21を共に巻いている部分の外形を小さくするために、マンドレル9を段付き構造としたので、クライオスタット10の構成が簡略化および小型化され、冷却装置の総重量を低減することができ、この種の極低温装置において最も重要な初期冷却時間を短縮することができる。
【0040】(4) コールドフィンガーチューブ8のエンドキャップ8aの冷却面を被冷却物であるコールドシールド3の被冷却面より小さくしているので、質量低減により、この冷却装置の初期冷却時間を短縮することができる。
【0041】(5)マンドレル9内空間が真空となっているので、外部からマンドレル9内の空気等ガスの熱伝導により熱が侵入することを低減することができ、初期冷却時間をより短縮することができる。
【0042】実施の形態2.次に実施の形態2を図5に基づき説明する。図5は、実施の形態2に係るジュールトムソン冷却装置の全体説明図である。なお、図5において実施の形態1と同一または相当する要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。この実施の形態2は、図5から分るように第1および第2の高圧ガスタンク14,24の外周面に断熱材16,26を貼付して、外部から高圧ガスタンク14,24への熱侵入を防いだものであり、その他の構成は実施の形態1と同一である。
【0043】第1高圧ガスタンク14および第2高圧ガスタンク24からクライオスタット10へ第1作動ガスおよび第2作動ガスを供給すると、高圧ガスタンク14,24内の圧力および温度が低下し外部から熱が進入しやすくなる。特に、第2作動ガスであるネオンガスは、第2JT弁22から放出して膨張させる前に、予冷していないとジュールトムソン冷却効果が生じない。したがって、第2作動ガスであるネオンガスは、あらかじめできるだけ温度が低い状態で、クライオスタット10へ流入するほうが好ましい。このため、高圧ガスタンク14,24に断熱材16,26を設置し、これにより作動ガスの初期冷却時間を短時間化することが可能になり、また予冷で使用するアルゴンガスの流量も低減することが可能になる。
【0044】実施の形態3.次に実施の形態3を図6に基づき説明する。図6は、実施の形態3に係るジュールトムソン冷却装置の全体説明図である。なお、図6において実施の形態1と同一または相当する要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。この実施の形態3は、図6から分るように、第1高圧ガスタンク14と第1段冷却用フィン付きチューブ11とを連絡する連絡配管13、その連絡配管中に介装された開閉弁15、第2高圧ガスタンク24と第2段冷却用フィン付きチューブ21とを連絡する連絡配管23、その連絡配管中に介装された開閉弁15の外周面に断熱材を貼付して、外部から作動ガスへの熱侵入を防止しものであり、その他の構成は実施の形態1と同一である。
【0045】したがって、この実施の形態3の場合も、先の実施の形態2の場合と同様に、作動ガスへの外部からの熱侵入が防止されることにより、より低い温度を維持した状態で第1段冷却用フィン付きチューブおよび第2段冷却用フィン付きチューブにそれぞれ作動ガスを導入することができ、初期冷却時間をより短縮することができる。また、予冷で使用するアルゴンガスの流量も低減することが可能になる。
【0046】実施の形態4.次に実施の形態4を図7に基づき説明する。図7は、実施の形態4に係るジュールトムソン冷却装置の全体説明図である。なお、図7において実施の形態1と同一または相当する要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。この実施の形態4は、図7から分るように、第2高圧ガスタンク24を第1高圧ガスタンク14内に設置したものであり、その他の構成は実施の形態1と同一である。
【0047】これにより、作動ガスの流出によりより低くなる第2高圧ガスタンク24の周囲が大気より大幅に温度の低い第1作動ガスにより包まれることになり、外部からの熱侵入をより一層低減することができ、より低い温度を維持した状態で第2段冷却用フィン付きチューブ21に作動ガスを導入することができ、初期冷却時間をより一層短縮することができ、予冷で使用するアルゴンガスの流量を低減することも可能となる。また、第2高圧ガスタンク24の内外圧力差が小さくなるので、タンク構成材料の肉厚を薄くすることができる。また、高圧ガスタンク14,24が2重構造となり、コンパクトに纏められるので、冷却装置の設置スペースを低減することができる。
【0048】
【発明の効果】第1の発明にかかるジュールトムソン冷却装置よれば、冷却装置の本体容器内に同軸に配置されたコールドフィンガーチューブ内に収容され、第1段冷却用フィン付きチューブ、第1段冷却用フィン付きチューブの低温端に設けられた第1段ジュールトムソン弁、第2段冷却用フィン付きチューブ、および第2段冷却用フィン付きチューブの低温端に設けられた第2段ジュールトムソン弁を具備したクライオスタットと、第1段冷却用フィン付きチューブに第1作動ガスを供給する第1高圧ガスタンクと、第2段冷却用フィン付きチューブに第2作動ガスを供給する第2高圧ガスタンクとを備え、前記第1作動ガスはアルゴンガスであり、前記第2作動ガスはネオンガスであるので、冷却効率が良く、初期冷却速度の速い高速冷却のジュールトムソン冷却装置、特に、液体窒素の沸点温度77K以下の温度に冷却するジュールトムソン冷却装置を得ることができる。
【0049】また、第2の発明に係るジュールトムソン冷却装置によれば、前記クライオスタットは、第2段冷却用フィン付きチューブに、第1段冷却用ジュールトムソン弁通過後の第1作動ガスおよび第2段冷却用ジュールトムソン弁通過後の第2作動ガスを直接接触させる構造とされているので、第1作動ガスにより効率よく第2段冷却用フィン付きチューブを流通する第2作動ガスを予冷することができ、より一層初期冷却時間を短縮することができる。
【0050】また、第3の発明に係るジュールトムソン冷却装置によれば、冷却装置の本体容器内に収容され、軸方向の一端が作動ガスの出入り口端をなし、軸方向の他端に設けられたエンドキャップが前記冷却装置の本体容器内に収容された被冷却物を冷却する低温端を成すコールドフィンガーチューブと、このコールドフィンガーチューブ内に同心的に配置され、前記作動ガス出入り口端側が小径とされ、前記エンドキャップ側が大径とされた段付き円筒状のマンドレル、このマンドレルの小径部外周面に接触して卷回された第1段冷却用フィン付きチューブ、第1段冷却用フィン付きチューブの低温端に設けられ、この第1段冷却用フィン付きチューブ内を流れてきた第1作動ガスをコールドフィンガーチューブ内中央部の環状空間に放出する第1段冷却用ジュールトムソン弁、第1段冷却用フィン付きチューブの外周および前記マンドレルの大径部外周面に接触するように卷回された第2段冷却用フィン付きチューブ、および第2段冷却用フィン付きチューブの低温端に設けられ、この第2段冷却用フィン付きチューブ内を流れてきた第2作動ガスを前記エンドキャップ近傍のコールドフィンガーチューブ内環状空間に放出する第2段冷却用ジュールトムソン弁を有するクライオスタットと、第1段冷却用フィン付きチューブに第1作動ガスを供給する第1高圧ガスタンクと、第2段冷却用フィン付きチューブに第2作動ガスを供給する第2高圧ガスタンクとを備え、前記第1作動ガスはアルゴンガスであり、前記第2作動ガスはネオンガスであるので、クライオスタット部の構成が簡略化および小型化され、冷却装置の総重量を低減することができ、初期冷却時間を短縮することができる。
【0051】また、第4の発明に係るジュールトムソン冷却装置によれば、前記コールドフィンガーチューブのエンドキャップの冷却面を被冷却物の被冷却面より小さくしたので、総重量が低減でき、初期冷却時間を短縮することができる。
【0052】また、第5の発明に係るジュールトムソン冷却装置によれば、前記マンドレル内空間を真空にしたので、熱伝導による熱侵入が低減され、初期冷却時間をより短縮することができる。
【0053】また、第6の発明に係るジュールトムソン冷却装置によれば、前記第1高圧ガスタンクおよび第2高圧ガスタンクの外周面に断熱材を設けたので、高圧ガスタンク外周面からの作動流体への熱侵入が低減され、初期冷却時間をより短縮することができる。
【0054】また、第7の発明に係るジュールトムソン冷却装置によれば、前記各高圧ガスタンクと第1段および第2段冷却用フィン付きチューブとを連絡する連絡配管に断熱材を設けたので、連絡配管の外周面から作動流体への熱侵入が低減され、初期冷却時間をより短縮することができる。
【0055】また、第8の発明に係るジュールトムソン冷却装置によれば、前記第2高圧ガスタンクを前記第1高圧ガスタンクの中に設置したので、第2作動ガスへの熱侵入が防止され、初期冷却時間をより一層短縮することができる。また、第2高圧ガスタンクの肉厚を薄くしてコストダウンを図ることができる。また、高圧ガスタンクが2重構造となり、コンパクトに纏められるので、冷却装置の設置スペースを低減することができる。
【出願人】 【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
【出願日】 平成12年11月24日(2000.11.24)
【代理人】 【識別番号】100057874
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道照 (外6名)
【公開番号】 特開2002−162125(P2002−162125A)
【公開日】 平成14年6月7日(2002.6.7)
【出願番号】 特願2000−357711(P2000−357711)