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【発明の名称】 地下水を利用したヒートポンプシステム
【発明者】 【氏名】岡本 美佐雄
【課題】地盤沈下等の弊害を生じさせることなく、しかも構造が簡単で安価な地下水を利用したヒートポンプシステムを提供する。

【解決手段】このヒートポンプシステムでは、打込工法によって地盤(11)に汲上井戸(12)及び還元井戸(13)を設けて、汲上井戸(12)から汲み上げた帯水層(30)の地下水を、冷媒との熱交換に利用した後、還元井戸(13)に注入して帯水層(30)へ還元するようにしている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 地盤に複数の井戸を設け、それら井戸のうち一部の井戸から汲み上げた地下帯水層の地下水を、冷媒との熱交換に利用した後、他の井戸に注入して地下帯水層へ還元するようにしたことを特徴とする地下水を利用したヒートポンプシステム。
【請求項2】 各井戸は、深さ10m以内の浅井戸とされている請求項1記載の地下水を利用したヒートポンプシステム。
【請求項3】 各井戸は、ストレーナー付きのケーシングを地上から直接打ち込む打込工法によって施工されている請求項1又は2記載の地下水を利用したヒートポンプシステム。
【請求項4】 各井戸は、少なくとも8mの間隔をあけて設けられている請求項1乃至3のいずれかに記載の地下水を利用したヒートポンプシステム。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、主に住宅に適した地下水を利用したヒートポンプシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】地球環境温暖化防止の観点からエネルギー消費に伴うCO2排出量の削減が急務であるが、民生部門のエネルギー消費は年々増加しており、住宅の新築から解体・廃棄に至る全エネルギーのうち、約80%は居住(使用)時に消費される。さらに、このうち約60%は冷暖房、給湯による消費が占め、そのほとんどが化石燃料で賄われていることから、その消費量の削減又は自然エネルギーへの代替が望まれている。
【0003】住宅における自然エネルギーの利用手段として現在確立し普及しているのは、太陽エネルギーのみである。しかし、太陽エネルギーの利用は、天候に左右され易く、また住宅密集地では十分な日射の確保ができない等の不確実性がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】これに対し、自然エネルギーのひとつである地熱は、年間を通じてほぼその地域の年平均気温付近で安定した温度を保つことから、夏季は外気より低温、冬季は高温となる。このような地熱の利用は、ビルや公共施設等で試行的に実施されているが、その利用方法は、熱媒管敷設による熱回収が一般的で、大掛かりな工事が必要であり、しかもイニシャルコストが高いことから、住宅用としては不向きである。
【0005】一方、地熱の汲み上げ媒体としての地下水は、全国的に広く分布しており、井戸を施工することで容易に取得することができる。このような地下水を利用すれば、地中に多数の熱媒管を敷設する熱回収法と比べて簡便でイニシャルコストも低く抑えることができる。地下水を利用した冷房は、ヒートポンプが出回る以前に井戸水ファンコイルクーラーとして普及しており、さく井及び冷房技術はある程度確立されている。また、最近では、井戸から汲み上げた地下水を融雪や温室の保温のために利用するといった試みもなされている。
【0006】しかし、現在主流のボーリング式井戸では、一般の住宅に広く普及させるには施工コストがまだまだ高く、しかも地下水を大量に汲み上げると地盤沈下等の弊害が生じるといった問題がある。また、地下水を利用した暖房は、全く行われていない。従って、地下水を利用した住宅用の冷暖房・給湯システムは、未だ確立されていないのが現状である。
【0007】そこで、この発明は、上記に鑑み、地盤沈下等の弊害を生じさせることがなく、しかも構造が簡単で安価な地下水を利用したヒートポンプシステムの提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するため、この発明の地下水を利用したヒートポンプシステムは、地盤に複数の井戸を設け、それら井戸のうち一部の井戸から汲み上げた地下帯水層の地下水を、冷媒との熱交換に利用した後、他の井戸に注入して地下帯水層へ還元するようにしたことを特徴とする。
【0009】具体的に、各井戸は、深さ10m以内の浅井戸とされ、ストレーナー付きのケーシングを地上から直接打ち込む打込工法によって施工されている。また、各井戸は、少なくとも8mの間隔をあけて設けられている。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1及び図2は、この発明の一実施形態に係る住宅に適用したヒートポンプシステムの全体回路を示している。図において、(1)は、冷媒を圧縮する圧縮機、(2)は、冷房サイクルと暖房サイクルとを切り換える四方弁、(3)は、室外熱交換器、(4)は、住宅の室内に配されたファンコイルクーラー等の室内熱交換器であり、これらが配管(5)によって接続されて冷媒回路(6)を構成している。なお、室内熱交換器(4)を除く圧縮機(1)、室外熱交換器(3)といった冷媒回路(6)の主要部分は、室外機として単一のパッケージに納められている。
【0011】そして、室外熱交換器(3)には、地下水回路(10)が接続されている。この地下水回路(10)は、地盤(11)に設けた汲上井戸(12)及び還元井戸(13)の2つの井戸を、ポンプ(14)を備えた地下水用配管(15)で繋ぐことによって構成されている。
【0012】一般に、井戸の施工には、ボーリング工法と打込工法がある。ボーリング工法は、口径の大きな深さ10mを越える深井戸の施工に用いられ、地盤を予めボーリングで掘削し、ストレーナー付きのケーシングを挿入後、隙間に砂利等の濾過材を充填して施工する。このボーリング工法では、ストレーナーを帯水層へ確実に設置でき、優れた濾過性能を有する深井戸施工が可能であり、この深井戸からは水質の良好な地下水を得ることができるが、施工コストが高いといった問題がある。一方、打込工法は、口径の小さな深さ10m以内の浅井戸の施工に用いられ、ストレーナ付きのケーシングを地上から打ち込むだけの簡易工法のため、施工コストは半減する。しかし、浅井戸からは近年良質の地下水が得難くなっており、水質が安定しないといった問題がある。家庭用井戸の場合、特に水質の安定が重視されるため、現在のところボーリング工法による深井戸が主流となっている。
【0013】ところが、この発明のヒートポンプシステムでは、上記のように2つの井戸(12)(13)を必要とすることから、他の機器を含めたイニシャルコストを考慮すると、井戸施工費の削減が重要である。また、地下水の熱だけを利用することから、水道水程の水質基準をクリアする必要はなく、必要水量が得られれば十分利用可能である。従って、汲上井戸(12)及び還元井戸(13)は、打込工法によって施工した深さ10m以内の浅井戸とされている。
【0014】ここで、打込工法による汲上井戸(12)及び還元井戸(13)の施工について説明すると、まず地盤(11)の表面層を簡単に掘削して、その掘削部分に図3に示すようなストレーナー(20)付のケーシング(21)を直接打ち込む。ストレーナ(20)は、外周に多数の集水口(22)(22)を有し、その外周には砂侵入防止用金網(24)が巻き付けられ、先端には矢尻(25)が取り付けられている。上記の打込時には、ストレーナー(20)が地盤(11)の帯水層(30)に到達するまで打ち込む。
【0015】そして、打ち込みが完了すると、揚水量等を確認して、問題がなければ掘削部分を埋め戻す。これにより、汲上井戸(12)及び還元井戸(13)の施工が完了する。
【0016】このような浅井戸(12)(13)の場合、注入水の温度影響は比較的短時間に広範囲まで及び、特に汲上側へは水位勾配も発生して水が流れ易くなるため、温度影響は大きくなる。浅井戸(12)(13)において熱影響を全く受けなくするには、井戸間隔を15m以上確保しなければならないが、一般の戸建住宅の敷地では、このような井戸間隔を確保することができない。かといって、4m程度以下の井戸間隔では、注入水の熱による冷暖房効率への影響が無視できなくなることは実験により判明している。従って、井戸(12)(13)の間隔を、一般の戸建住宅で確保可能であり、しかも冷暖房効率への影響を受けにくいように、少なくとも8m以上に設定している。
【0017】地下水用配管(15)は、汲上井戸(12)内に挿入した揚水管(35)と、還元井戸(13)内に挿入した注入管(36)とを連結管(37)で接続した構造となっている。そして、連結管(37)には、前記のポンプ(14)、図示しない砂取器等の各種機器が設けられている。そして、この連結管(37)が前記の室外熱交換器(3)に接続されている。
【0018】上記構成のヒートポンプシステムでは、冷房時には、図1に示すように、圧縮機(1)により圧縮された冷媒が、四方弁(2)を通って室外熱交換器(3)に導かれ、凝縮熱を発散させながら液化状態となる。他方、地下水回路(10)において、ポンプ(14)の駆動により汲上井戸(12)から汲み上げられた地下帯水層(30)の地下水が、室外熱交換器(3)に導かれる。そして、室外熱交換器(3)において、冷媒回路(6)側の液化状態の高温冷媒と地下水回路(10)側の低温地下水との間で熱交換が行われる。この熱交換後の冷媒は、膨張しながら室内熱交換器(4)に導かれてガス化状態となり、このときの気化熱によって室内を冷房し、再び四方弁(2)を通って圧縮機(1)に戻される。熱交換後の地下水は、還元井戸(13)に注入されて地下帯水層(30)に還元される。
【0019】暖房時には、図2に示すように、冷媒回路(6)側の四方弁(2)が切り換わり、圧縮機(1)により圧縮された冷媒が、四方弁(2)を通って室内熱交換器(4)に導かれ、凝縮熱を発散させながら液化状態となり、このときの凝縮熱によって室内を暖房する。この暖房後に膨張してガス化状態となった冷媒は、室外熱交換器(3)において地下水回路(10)側の高温地下水との間で熱交換が行われる。熱交換後の冷媒は、四方弁(2)を通って圧縮機(1)に戻される。熱交換後の地下水は、冷房時と同様に、還元井戸(13)に注入されて地下帯水層(30)に還元される。
【0020】このような地下水を利用したヒートポンプシステムの場合、電力消費量の約6倍の熱エネルギーを得ることができる。すなわち、成績係数(COP)は「6」となり、成績係数が「3」である外気を利用した空気熱源ヒートポンプシステムに比較して、熱交換効率の高い省エネルギー効果に優れたヒートポンプシステムとすることができる。また、帯水層(30)から汲み上げた地下水を冷媒の熱交換用熱源として利用した後、再び帯水層(30)望ましくは同じ帯水層(30)に戻すようにすることで、地下水の汲み上げによる地盤沈下等を防ぐことができる。
【0021】なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正及び変更を加え得ることは勿論である。例えば、室内熱交換器に代えて給湯用熱交換器として、ヒートポンプシステムを冷暖房用だけでなく住宅における給湯用に利用しても良い。また、汲上井戸及び還元井戸は、ともに単一の井戸とは限らず、複数の井戸によって構成しても良い。
【0022】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、この発明では、地盤に複数の井戸を設けて、地下帯水層から汲み上げた地下水を再び地下帯水層へ還元しているので、地盤沈下等の弊害を生じさせることなく、年間を通じて安定した温度を保つ地下水を冷媒の熱交換用の熱源として利用した熱交換効率の高いヒートポンプシステムを提供することができる。
【0023】また、これら井戸は、打込工法によって施工した浅井戸であることから、ボーリング工法によって深井戸を施工するときと比べて、簡単な施工で済ますことができ、しかも施工コストの大幅な削減を実現することができる。これによって、一般の住宅にも広く普及させることができるシステムとすることができる。また、井戸間隔を8m以上確保していることから、還元側の井戸へ地下水を還元しても、その地下水の熱影響が汲上側の井戸にまで及び難くなり、冷暖房、給湯効率の向上を図ることができる。
【出願人】 【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
【出願日】 平成12年8月10日(2000.8.10)
【代理人】 【識別番号】100082278
【弁理士】
【氏名又は名称】樽本 久幸
【公開番号】 特開2002−54856(P2002−54856A)
【公開日】 平成14年2月20日(2002.2.20)
【出願番号】 特願2000−242130(P2000−242130)