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【発明の名称】 熱線カットフィルター
【発明者】 【氏名】原田 孝

【氏名】今井 裕

【要約】 【課題】支持体の熱線2次放射を効果的に防止し、冷光を効果的に作り出すことが可能な熱線カットフィルターを提供する。

【解決手段】光源(5)側に向けて配置されて受光面となる裏面(12)と、その裏面(12)と対向する表面(11)とを有する光透過性の支持体(1)と、支持体(1)に固定された、少なくとも2つの赤外反射層とを備え、少なくとも2つの赤外反射層の一方が金属を含有する薄膜(2)であり、他方が誘電反射層(3)であり、裏面(12)側から光源(5)の光を受け、可視光帯域の一部と赤外帯域を含む反射波長帯域の光を所定の割合で反射し、反射波長帯域外の可視光帯域を含む透過波長帯域の光を所定の割合で透過する熱線カットフィルターである。少なくとも金属を含有する薄膜(2)が、支持体(1)の裏面(12)側に固定されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 光源側に向けて配置されて受光面となる裏面と、その裏面と対向する表面とを有する光透過性の支持体と、上記支持体に固定された、少なくとも2つの赤外反射層とを備え、前記少なくとも2つの赤外反射層の一方が金属を含有する薄膜であり、他方が誘電反射層であり、前記裏面側から光源の光を受け、可視光帯域の一部と赤外帯域を含む反射波長帯域の光を所定の割合で反射し、前記反射波長帯域外の可視光帯域を含む透過波長帯域の光を所定の割合で透過する熱線カットフィルターにおいて、少なくとも前記金属を含有する薄膜が、前記支持体の裏面側に固定されていることを特徴とする熱線カットフィルター。
【請求項2】 UV(紫外線)カット層をさらに備えており、そのUVカット層は、前記光源側に向けて配置される裏面と、その裏面と対向する表面とを有し、前記誘電反射層が前記UVカット層の表面側に固定されている請求項1記載の熱線カットフィルター。
【請求項3】 前記UVカット層が、前記赤外反射層のいずれか一方または両方を前記支持体に固定する接着剤と、光安定剤とを含有する接着層である請求項2記載の熱線カットフィルター。
【請求項4】 前記誘電反射層は、前記支持体の表面側に固定されている請求項1記載の熱線カットフィルター。
【請求項5】 前記反射波長帯域の下限が600〜700nmの範囲にあり、前記反射波長帯域の下限以上、1,100nm以下の波長帯域での前記誘電反射層の光反射率が70%以上であり、かつ前記透過波長帯域での前記誘電反射層の可視光透過率が60%以上である請求項1記載の熱線カットフィルター。
【請求項6】 前記反射波長帯域の下限が600nm以上640nm以下の範囲にある請求項5記載の熱線カットフィルター。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、光源が発する照明光が赤外線を含む熱線成分を含む場合に、その熱線成分を効果的にカットし、照明光を冷光に変えて被照明体を照明可能な熱線カットフィルターの改良に関する。本発明の熱線カットフィルターは、比較的近赤外帯域での反射率の高い誘電反射層(複数の誘電体層を含む多層体または多層膜)と、中遠赤外帯域での反射率の高い金属薄膜または金属化合物薄膜とを組合せているので、人体が熱線として感じやすい波長帯域の光、すなわち、赤外帯域に近い可視光と赤外線とを含む光を効果的に反射することができる。したがって、その様な熱線を含まず、従来に比べて感温性の低い冷光が作り出せる。本発明の熱線カットフィルターは、医療用無影灯(手術灯とも呼ばれる。)の光源を覆う光フィルターとして特に有用である。
【0002】
【従来の技術】 従来から、所望の波長帯域の電磁波(以下、単に「光」という用語を用いる場合もある。)のみを選択的に透過させるため、および(または)透過させる必要のない波長帯域の電磁波をカット(すなわち、吸収又は反射)するため、いろいろなタイプの光フィルターが知られている。たとえば、熱線(主として赤外線)を含む光を発する光源を被覆する様に配置され、光源からの光に含まれる熱線を減らし、いわゆる冷光を作り出すための熱線カットフィルターなどがその一例である。
【0003】 たとえば、ハロゲンランプ等の白熱電球を含んでなる光源は、可視光(通常400〜800nmの波長帯域に含まれる光)以外に、赤外線を広い波長帯域にわたって放射している。赤外線は、そのランプの照射(照明)範囲にある物体(人や物)に害を与える場合もあり、その様な場合はなるべくカットする様に工夫される。この様な工夫のために、熱線カットフィルターが用いられている。たとえば、医療用無影灯(手術灯とも呼ばれる。)では、手術部に赤外線を当てない様にするために、熱線カットフィルターで光源を覆っている。
【0004】 熱線カットフィルターには、大別して2つのタイプがある。1つは熱線を吸収するタイプであり、もう1つは熱線を反射するタイプである。熱線吸収フィルターの一例を示すと、たとえば、特開平8−231245号公報に開示された、ガラス基板(透明な支持体)と、その基板の表面を被覆した、紫外線吸収材及び赤外線吸収材を含有するシリコーン系コーティングからなるフィルター層とから構成される熱線カットフィルターである。赤外線吸収材の具体例として、フタロシアニン系化合物、ポリメチレン系化合物等が開示されている。
【0005】 しかしながら、熱線吸収フィルターを熱線カットフィルターとして用いた場合、2次放射が起こり、フィルターを通した光の温度を下げることが困難であった。すなわち、光源からの赤外線は有効にカットできたとしても、フィルターが輻射熱を発するので、結局、手術部等の被照明体の温度が不要に上昇してしまうことがあった。
【0006】 熱線を反射するタイプの熱線カットフィルターは、たとえば、特開昭51−41280号公報や特開平9−154852号公報に開示されている様に、誘電反射層を含んでなる光フィルターである。誘電反射層は、複数の誘電体層を含む多層体または多層膜からなる。誘電反射層では、互いに隣接する誘電体層の屈折率が異なり、相対的に高い屈折率の層の両隣には、相対的に低い屈折率の層が配置され、かつ、相対的に低い屈折率の層の両隣には、相対的に高い屈折率の層が配置されている。この様な屈折率の異なる層どうしの界面での反射を有効に利用して、所望の波長帯域の光(通常は可視光帯域光)を透過させ、不所望の波長帯域の光(通常は赤外帯域光)を反射させる、波長選択透過性を発揮する。
【0007】 この様な透過光(または反射光)の波長選択性は、いわゆる誘電反射原理に基づくもので、従来から広く知られている。この原理の説明の詳細は、たとえば、国際特許公開(WO)第95/17303号、国際特許公開(WO)第99/36808号(対応米国特許第6,049,419号)、特開平11−281816号等の公報でも、詳しく教示されているので詳細は省くが、ここで要点のみ説明しておく。
【0008】 フィルター用途では、加工が容易な点から、通常は誘電反射体としてポリマーを利用する。この様な場合、誘電反射層は、第1のポリマーからなる複数の層から構成された第1組の誘電反射層単位と、前記第1のポリマーとは異なる屈折率を有する第2のポリマーからなる複数の層から構成された第2組の誘電反射層単位とを組み合わせて含む、誘電反射フィルムからなる。この様な誘電反射フィルムでは、前記第1組及び第2組の誘電反射層単位は、第1のポリマーの層と第2のポリマーの層とが交互に積層されて組み合わされている。前記第1組及び第2組の誘電反射層単位の少なくともいずれか一方は、厚み(d、単位はnm)とポリマーの屈折率(n)との積(n・d)が、反射する光の波長の4分の1である、4分の1波長層を含んでなる。たとえば、640〜1,100nmの波長帯域光の反射率を効果的に高めたい場合、上記4分の1波長層の積(n・d)は、160〜300nmの範囲である様に設計される。この様にすれば、反射波長帯域以外の帯域の光(上記の場合、640nm以下の可視光と、1,100nmより上の帯域の赤外光)の透過性を高めながら、所定の帯域(反射波長帯域)での光反射率を効果的に高めることができる。
【0009】 しかしその反面、広い帯域にわたって光を反射させる様に設計することは、原理上困難であった。冷光を作り出すための熱線カットフィルターでは、近赤外帯域光(波長が約800〜2,500nm)と、中遠赤外帯域の光(波長が約2,500nm〜約25μmの光)とは、ともに効果的にカットされるべきである。ところが、この様な広い反射光帯域に対応する4分の1波長層を誘電反射層に含ませた場合、誘電反射層自体の厚さが不要に大きくなり、熱線カットフィルターの構成部品としては、嵩高くなり過ぎたり、加工しにくくなったりする。したがって、この様な誘電反射層のみで、冷光用の熱線カットフィルターを構成することは困難であった。
【0010】 一方、本発明者らが検討した結果、金属を含有する薄膜〔銀やアルミニウム等の金属の薄膜、または、酸化スズやインジウム・スズ・オキサイド(ITO)等の金属化合物の薄膜〕を、ガラス板や透明ポリマーフィルムからなる支持体の表面に密着させたものは、近赤外帯域の光は透過しやすいものの、中遠赤外帯域の光を反射可能であることが分った。すなわち、この様な、金属含有薄膜と誘電反射層とを組合せてなる2つの赤外反射層を備えるフィルターは、近赤外帯域から中遠赤外帯域の光まで、広い赤外帯域の光を効果的に反射できることをつきとめた。なお、この様な金属含有薄膜と誘電反射層とを組合せた光フィルターは、前掲の国際特許公開(WO)第99/36808号公報及び特開平11−281816号公報にも例示されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、通常の2つの赤外反射層を備えるフィルターでは、次の様な問題が発生し得ることが判明した。光源が発する光が、支持体に含まれる原子や分子を励起しやすい赤外光成分を比較的多く含む場合、支持体に直接、すなわち赤外反射層を通さずに光が照射されると、熱線の2次放射が起こりやすく、輻射熱が発生して冷光が効果的に作り出せないおそれがあることが分った。前掲の従来技術を開示した公報には、2つの赤外反射層と支持体とを組み合わせる場合に、この様な問題をどの様に解決すれば良いかを教示していない。
【0012】 したがって、本発明者らは、前記の様な2つの赤外反射層を備える熱線カットフィルターの技術が応用され、手術灯の光源を覆うフィルターとして特に有用なものにするために、支持体で補強された熱線カットフィルターを改良し、上記課題を解決すべく検討を重ね、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の目的は、支持体の熱線2次放射を効果的に防止し、冷光を効果的に作り出すことが可能な熱線カットフィルターを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】 本発明によれば、光源側に向けて配置されて受光面となる裏面と、その裏面と対向する表面とを有する光透過性の支持体と、上記支持体に固定された、少なくとも2つの赤外反射層とを備え、前記少なくとも2つの赤外反射層の一方が金属を含有する薄膜であり、他方が誘電反射層であり、前記裏面側から光源の光を受け、可視光帯域の一部と赤外帯域を含む反射波長帯域の光を所定の割合で反射し、前記反射波長帯域外の可視光帯域を含む透過波長帯域の光を所定の割合で透過する熱線カットフィルターにおいて、少なくとも前記金属を含有する薄膜が、前記支持体の裏面側に固定されていることを特徴とする熱線カットフィルター、が提供される。
【0014】
【発明の実施の形態】 以下、本発明に係る熱線カットフィルターを詳細に説明する。本発明の熱線カットフィルターは、(i)光源側に向けて配置されて受光面となる裏面と、その裏面と対向する表面とを有する光透過性の支持体と、(ii)上記支持体に固定された、少なくとも2つの赤外反射層とを備える。そして、これら2つの赤外反射層の一方は、金属を含有する薄膜(金属含有薄膜)であり、他方は誘電反射層である。したがって、可視光帯域の一部と赤外帯域を含む熱線を効果的に反射し、熱線を含まない光を効果的に透過可能である。
【0015】 また、本発明の熱線カットフィルターでは、少なくとも前記金属を含有する薄膜は、前記支持体の裏面側に固定され、支持体の裏面(受光面)を被覆している。したがって、光源からの光は、前記金属含有薄膜を通ってから支持体に照射される。これにより、光源が、支持体に含まれる原子や分子を励起しやすい赤外光成分を比較的多く含む光を発する場合でも、熱線2次放射が起きにくく、感温性の低い(人が熱いまたは暖かいと感じ難い)冷光を効果的に作り出せる。
【0016】(熱線カットフィルター)本発明の熱線カットフィルターは、光源からの光を受け、可視光帯域の一部と赤外帯域を含む反射波長帯域の光を所定の割合で反射し、反射波長帯域外の可視光帯域を含む透過波長帯域の光を所定の割合で透過する。この時、前記反射波長帯域の光の反射率は、通常50%であり、好適には60%以上、特に好適には70%以上である。また、前記透過波長帯域の光の透過率は、通常50%であり、好適には60%以上である。
【0017】 なお、本願明細書における「光透過率」または「光反射率」は、分光光度計を用いて測定された値である。また、特に波長帯域を限定しないで、単に「光透過率」と呼ぶ場合、3原色帯域の光の透過率である。また、誘電反射層及び金属含有薄膜以外の層や材料について説明する場合に、特に波長帯域を限定しないで、単に「光透過性」と呼ぶ場合、3原色帯域の光に対する透過性である。なお、「3原色帯域」とは、青の帯域(波長が430〜490nm)、緑の帯域(波長が515〜575nm)、及び赤の帯域(波長が580〜640nm)からなる可視光の帯域である。
【0018】 本発明の熱線カットフィルターの好適な一例について、図1に沿って説明する。図示の例の熱線カットフィルターは、表面(11)及び裏面(12)を有する光透過性の支持体(1)と、その裏面(12)に固定された金属を含有する薄膜(金属含有薄膜)(2)と、その支持体(1)の表面(11)に固定された誘電反射層(3)とを備えている。支持体(1)の裏面(12)は、金属含有薄膜(2)を通った光を受光する受光面となる。
【0019】 支持体(1)は、使用中に不要に変形しない様に、熱線カットフィルター全体に十分な機械的な強度を付与するためのものである。その厚さは、用途や平面寸法にもよるが、通常0.5〜30mm、好適には0.7〜20mmである。支持体(1)の厚さは、熱線カットフィルターの強度の観点からは可及的に厚い方が好ましい。しかしながら、熱線カットフィルターが厚すぎると、それを備え付けた冷光照明装置等の物品全体の質量の不要な増大を招くおそれがある。
【0020】 支持体(1)は、たとえば、ガラスやプラスチック材料から形成される。プラスチック材料としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂等が使用できる。透明性と機械的強度に優れるため、好適にはアクリル樹脂がプラスチック材料として使用できる。また、アクリル樹脂として、耐衝撃性を改良するためにポリ弗化ビニリデン樹脂をブレンドしたものも使用できる。なお、支持体(1)の光透過率は、通常70%以上、好適には80%以上、特に好適には85%以上である。
【0021】 金属含有薄膜(2)は、支持体(1)の裏面(12)を被覆する様に、支持体(1)の裏面(12)側において固定的に熱線カットフィルターに組み込まれていれば良く、本発明の効果を損なわない限り、支持体(1)と金属含有薄膜(2)との間に別の光透過性の層が存在しても良い。たとえば、金属含有薄膜(2)が、上記の別の層として使用されたベースフィルムの表面に固定されてなる、金属含有薄膜付きフィルムを用いることができる。その場合、その金属含有薄膜付きフィルムを、光透過性の接着層を介して支持体(1)に固定するのが良い。この時、金属含有薄膜(2)が光源(5)に直接向かい合う。なお、ベースフィルムは、通常、厚さが支持体よりも薄いポリマーフィルムであるが、その厚さは、通常3〜300μmである。
【0022】 また、支持体(1)に固定された金属含有薄膜(2)の光源(5)と向かい合う面の上に、保護フィルムを配置することもできる。保護フィルムは、金属含有薄膜(2)の汚損を効果的に防止できる。この場合、保護フィルムが光源(5)に直接向かい合い、保護フィルムと支持体(1)との間に、金属含有薄膜(2)が配置される。なお、保護フィルムは、通常、厚さが支持体よりも薄いポリマーフィルムである。保護フィルムの厚さは、保護フィルム自体の熱線2次放射を効果的に防止するために可及的に薄い方が良く、通常3〜100μm、好適には5〜80μmである。
【0023】 ベースフィルムのポリマーは、好適には、アクリル系ポリマー、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリオレフィン、シリコーン、ポリウレタン、フッ素系ポリマー等の透明性の高いポリマーである。また、保護フィルムのポリマーは、好適には、アクリル系ポリマー、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリオレフィン、シリコーン、ポリウレタン、フッ素系ポリマー等の透明性の高いポリマーである。
【0024】 なお、上記ベースフィルムの光透過率は、熱線カットフィルターの波長選択透過性を損なわない限り特に限定されないが、通常70%以上、好適には80%以上である。また、上記保護フィルムの光透過率は、熱線カットフィルターの波長選択透過性を損なわない限り特に限定されないが、通常70%以上、好適には80%以上である。
【0025】 誘電反射層(3)は、通常、前掲の公報にも開示されている誘電反射フィルムである。誘電反射フィルムの支持体(1)への固定には、通常、光透過性の接着層(4)を用いる。図示の例では、誘電反射層(3)は、支持体(1)の表面(11)に固定されているが、本発明の効果を損なわない限り、支持体(1)の裏面(12)側に固定されても良い。たとえば、支持体(1)の裏面(12)に誘電反射層を固定し、その誘電反射層の上に金属含有薄膜(2)を配置しても良い。また、支持体(1)と誘電反射層(3)との間に、接着層(4)以外の別の光透過性層が存在しても良い。
【0026】 たとえば、上記別の光透過性層として、UV(紫外線)カット層を使用することができる。その場合、そのUVカット層は、前記光源(5)側に向けて配置される裏面と、その裏面と対向する表面とを有し、前記誘電反射層(3)は、前記UVカット層の表面側に固定されているのが好ましい。これは、次の様な理由による。
【0027】 光源(5)の種類によっては、光源(5)が発する光が比較的強い紫外線を含む場合がある。この様な場合、誘電反射層(3)に直接光が照射されると、誘電反射層(3)に含まれるポリマー層が劣化するおそれがある。ポリマー層の劣化は、反射波長や透過波長のシフトを促進する。たとえば、透過波長のシフトは透過光を変色させる。そこで、上記の様に、UVカット層の裏面から光が照射され、誘電反射層(3)がUVカット層の表面側に固定される様にすれば、効果的に誘電反射層(3)を紫外線劣化から守ることができる。UVカット層の光透過率は、熱線カットフィルターの波長選択透過性を損なわない限り特に限定されないが、通常70%以上、好適には80%以上である。
【0028】 上記の様なUVカット層として、好適には、アクリル系ポリマー、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリオレフィン、シリコーン、ポリウレタン、フッ素系ポリマー等のポリマーを含有する、塗膜やフィルムが使用できる。たとえば、(メタ)アクリルモノマー等の重合成分を含有する塗布液を、支持体(1)の裏面(12)または表面(11)に、または誘電反射層(3)の裏面〔光源(5)からの光を受光する面〕にコーティングし、重合成分を重合させて塗膜化できる。また、別の基材の表面に塗膜を形成した後、支持体(1)または誘電反射層(3)に転写、密着させても良い。
【0029】 (メタ)アクリルモノマーとしては、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸ビスフェノールA等の、フェノル基と(メタ)アクリロイル基を分子内に有するモノマーが好適である。(メタ)アクリルモノマーに代えて、上記モノマーを含有する成分から形成されたオリゴマーや、ウレタン(メタ)アクリレートも使用できる。また、(メタ)アクリレートモノマーの他、エポキシ基又はビニルエーテル基を有する化合物や、シロキサン変性ポリエステルを単独で、あるいは(メタ)アクリレートモノマーと混合して、用いることもできる。上記重合成分は、本発明の効果を損なわない限り、無機質コロイド、カップリング剤、帯電防止剤、光安定剤(ラジカル捕捉剤、消光剤、紫外線吸収剤など)、架橋剤、酸化防止剤、防黴剤、光触媒等の添加剤を含有することもできる。なお、重合操作は、放射線の照射又は加熱によって行うことができる。
【0030】 また、UVカット層は、別途フィルム化したポリマーフィルムを、誘電反射層等のUVカット層固定面に密着させてもよい。また、支持体(1)または金属含有薄膜(2)に誘電反射層(3)を密着させるために使用される接着層に、紫外線吸収剤等の光安定剤を含有させてUVカット接着層として使用することもできる。さらに、支持体(1)または誘電反射層(3)を金属含有薄膜(2)に密着させるために使用される接着層に、紫外線吸収剤等の光安定剤を含有させてUVカット接着層として使用することもできる。この様なUVカット接着層を利用すれば、誘電反射層を紫外線から守るために、別の追加の層を設けることが不要になるので好ましい。したがって、製造が簡便になり、また、熱線カットフィルターの全体の厚さを不要に大きくしたり、全体の光透過率を不要に低下させることが無い。
【0031】 接着層の接着剤は、感熱接着剤、感圧接着剤、硬化型接着剤等が使用できる。好適には、アクリル系ポリマーを含有する接着剤である。アクリル系ポリマーは、光透過率が高く、また、可視光帯域に近い帯域の紫外線を効果的に吸収可能である。
【0032】 UVカット層の厚さは、特に限定されないが、熱線カットフィルターの波長選択透過性を損なわない様に設計すべきである。たとえば、0.1μm〜30mmの範囲の厚みを有することができる。なお、UVカット層として接着層を利用する場合は、接着層の厚さは、通常0.1〜50μmである。また、支持体(1)が紫外線吸収剤等の光安定剤を含有する場合、支持体(1)がUVカット層を兼ねることもできる。
【0033】 UVカット層において使用される光安定剤の種類や含有量は、UVカット層の光透過率を低下させない様に選択される。たとえば、■ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチレート系、シアノアクリレート系の紫外線吸収剤、■ヒンダードアミン系のラジカル捕捉剤、■ニッケル錯体系の消光剤などが使用できる。UVカット層に含有される光安定剤の量は、UVカット層全質量に対して、通常0.1〜10%である。
【0034】 一方、誘電反射層(3)を紫外線から効果的に守るには、光源(5)からの光が可及的に多くの層を透過した後に、誘電反射層(3)に到達するのが良い。したがって、この様な観点からは、誘電反射層(3)は、図1に示す様に支持体(1)の表面(11)側に固定されているのが好ましい。
【0035】 本発明の熱線カットフィルターは、本発明の効果を損なわない限り、着色層を含むこともできる。たとえば、医療用の冷光を作り出す場合、医療の性質に応じて患部に照射したくない波長の光をカットする場合もある。その様な場合、たとえば、色素を含有するコーティング層を利用することができる。
【0036】 また、本発明の熱線カットフィルターの表面(光出射面)に、本発明の効果を損なわない限り、プリズムフィルム、レンズフィルム、拡散透過フィルム等の光学フィルムを配置することもできる。本発明の熱線カットフィルターでは、上記の構成部材以外のものを、本発明の効果を損なわない様にして用いても良い。たとえば、金属イオン(銅、鉄等)を含有する赤外線吸収層を用いても良い。赤外線吸収層の配置位置は特に限定されないが、2次放射による光の温度上昇を効果的に防ぐ様に配置位置を選択するのが好ましい。たとえば、支持体と金属含有薄膜との間に配置するのが好ましい。
【0037】(誘電反射層)本発明の熱線カットフィルターにおいて用いられる誘電反射層は、前掲の従来公報に開示されたものと同一の定義により特定される。すなわち、「誘電反射層」なる用語は、それを本願明細書で使用した場合、光透過性の誘電体の層の複数を互いに密着させて積層してなり、各層の厚みと屈折率との関係が上記したような波長選択性(ある波長帯域の光を透過し、その波長帯域以外の光を反射する性質)を有するように決定された反射体からなる層である、と定義される。波長選択性の発現は、2つの物質に挟まれた誘電体層の厚みと屈折率の積が、その層内に入射された光の波長の4分の1であり、その層の屈折率が両物質のいずれの屈折率よりも高いか又は低く、それにより、両物質と層との2つの界面での反射光は互いに位相が一致して強め合う、波長選択反射原理を利用している。
【0038】 近赤外帯域波長の光の反射は、誘電反射層が受け持つ。したがって、熱線カットフィルターにおいて、通常は、前記反射波長帯域の下限が600〜700nmの範囲にある。その場合、通常は、前記反射波長帯域の下限以上、1,100nm以下の波長帯域での前記誘電反射層の光反射率が70%以上であり、かつ前記透過波長帯域での前記誘電反射層の可視光透過率が60%以上であるのが良い。
【0039】 光源の種類によっては、光源が発する光が比較的強い近赤外線を含む場合がある。この様な場合、可視光の上限までを満遍なく透過する(すなわち、60%以上の割合で透過光を透過する)フィルターでは、近赤外線を効果的にカットできないおそれがある。また、可視光の上限までを透過する赤みがかった光は、視覚的に暖かく感じられるので、感温性を効果的に低減させた冷光を作り出せない場合がある。
【0040】 前記反射波長帯域の下限が600〜700nmの範囲にあれば、近赤外線を効果的にカットでき、また、赤みを抑えた透過光を作りだし、視覚的にも改良され、感温性が効果的に低減した冷光を作り出すことができる。その場合、前記反射波長帯域の下限以上、1,100nm以下の波長帯域での前記誘電反射層の光反射率が70%以上であり、かつ前記透過波長帯域での前記誘電反射層の可視光透過率が60%以上であるのが良い。さらに、上記の様な感温性をいっそう効果的に低減させるには、前記反射波長帯域の下限が600nm以上640nm以下の範囲にあるのがなお良い。
【0041】 一方、光源の光を用い熱線カットフィルターを通した光で物体を照明する場合、物体の持つ本来の色を大きく損なうのは好ましくない。したがって、透過する可視光帯域の上限(透過波長帯域の上限)は600nm以上であるのが良い。なお、この様な観点から、透過波長帯域の下限は430nm以上であるのが好ましい。
【0042】 可視光帯域及び近赤外帯域での、熱線カットフィルターの反射率を効果的に制御するには、誘電反射層の反射率を制御するのが好ましい。たとえば、熱線カットフィルターの640〜1,100nmの波長帯域での光反射率が70%以上である様にするには、誘電反射層の640〜1,100nmの波長帯域での光反射率を70%以上である様にする。この様にするには、誘電反射層に含まれる4分の1波長層の積(n・d)は、160〜300nmの範囲である様に設計する。なお、誘電反射層の640〜1,100nmの波長帯域での光反射率が小さすぎると、実測温度、及び視覚的な感温性の両方の面から、感温性を効果的に低減させることが困難になる。この様な観点から、誘電反射層の640〜1,100nmの波長帯域での光反射率は、好適には80%以上、特に好適には90%以上である。
【0043】 一方、物体の持つ本来の色の再現性と、感温性の低減とをバランスさせるには、熱線カットフィルターの430〜630nmの波長帯域での光透過率を高める(通常60%以上にする)のが好ましい。この様にするには、誘電反射層に含まれる4分の1波長層の積(n・d)を制御し、誘電反射層の430〜630nmの波長帯域での光透過率が60%以上にするのが良く、好適には65%以上、特に好適には70%以上にする。
【0044】 誘電反射層は、通常、第1のポリマーからなる複数の層から構成された第1組の誘電反射層単位と、その第1のポリマーとは異なる屈折率を有する第2のポリマーからなる複数の層から構成された第2組の誘電反射層単位とを含み、第1のポリマーの層と第2のポリマーの層とを交互に積層して形成される。そして、上記第1組の誘電反射層単位又は第2組の誘電反射層単位の少なくともいずれか一方は、厚み(d、単位はnm)とポリマーの屈折率(n)の積(n・d)が、反射する光の波長の4分の1である4分の1波長層を含んでなり、上記積(n・d)が4分の1波長に相当しない波長の光は、透過可能である。
【0045】 前述の様に、誘電反射層は、通常、誘電反射フィルムから形成できる。誘電反射フィルムは、(a)透明なポリマーフィルムの上に、誘電体の層を多層コーティングして形成する方法、(b)ポリマー材料からなる誘電体を用い、共押出法により多層フィルムとして形成する方法、等の公知な方法により形成できる。このような誘電反射フィルムの製造方法は、たとえば、国際特許公開(WO)第95/17303号公報等に開示されている。
【0046】 誘電反射層を構成する誘電体としては、1.1以上の屈折率を有する光透過性の材料、例えば、ポリエステル(ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、エチレンナフタレート−エチレンテレフタレートのコポリエステル等)、アクリル系ポリマー(ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレートと他の(メタ)アクリレートとの共重合体等)、ポリスチレン系ポリマー(ポリスチレン、スチレンとブタジエンの共重合体、スチレンとアクリロニトリルの共重合体等)、フッ素系ポリマー(ポリフッ化ビニリデン、フッ化エチレン−フッ化プロピレン共重合体等)、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリウレタン、エポキシ樹脂などのポリマーが好適である。また、誘電反射フィルムは、上記(b)の方法により多層ポリマーフィルムとして成形されるのが好適である。加工性が良好で、本発明の熱線カットフィルターを製造するのが容易だからである。
【0047】 このような誘電反射フィルムは、例えば、上記のような誘電体の1種又は2種以上を含んでなる第1の層と、同様に誘電体を含んでなる第2の層とを、交互に積層して形成する。実質的にすべての層はその膜厚が1μm未満であり、上記のような波長選択性を発現するように、複数の異なる厚みの層が含まれる。各層の屈折率は通常1.1以上、好適には1.2〜2.8の範囲である。また、第1の層の屈折率n1 と、第2の層の屈折率n2 との差Δn(=|n1 −n2 |)は、通常0.05〜1.5の範囲、好適には0.1〜1.0の範囲である。各層がポリマーを含んでなる場合、波長選択反射性(所定の波長の光の反射率)の効果的な向上のため、それらのポリマー層はそれぞれ二軸配向されているのが好ましい。
【0048】 また、上記2種類の誘電体の他に、1層又はそれ以上の誘電体の層を加えて積層体を形成してもよい。また、誘電反射層には、本発明の効果を損なわない限り、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防黴剤、防錆剤、吸湿剤、着色材、燐光物質、界面活性剤等の添加剤を含有させることもできる。さらに、本発明の効果を損なわない限り、誘電反射フィルムの表面、裏面又はその両面に、光透過性の保護膜や接着剤層を形成することもできる。
【0049】(金属含有薄膜)また、本発明の熱線カットフィルターは、金属含有薄膜も含むので、中遠赤外帯域の光を効果的に反射できる。したがって、近赤外から中遠赤外帯域の光まで、広い赤外帯域の光を効果的に反射できる。
【0050】 熱線カットフィルターの透過波長帯域での光透過率を高めるには、上記誘電反射層における制御に加えて、金属含有薄膜の材質や膜厚を効果的なものとなる様に選択するのが好ましい。たとえば、金属含有薄膜の材質は、インジウム・スズ・オキサイド(ITO)の様なスズ酸化物を含有する場合、中遠赤外反射性と透明性を高めるのに有利である。また、その膜厚は、通常30nm〜3μm、好適には50nm〜2μmである。また、銀やアルミニウムの様な金属からなる薄膜も利用できるが、透明性の点において比較的不利である。したがって、この様な金属薄膜の膜厚は、通常30nm〜1μm、好適には50nm〜800nmである。
【0051】 前述の様に、金属含有薄膜と、ベースフィルムとを含んでなる光透過性フィルムを、接着剤を介して、支持体に接着しても良い。この様な金属含有薄膜付きフィルムは市販のものも使用できる。この様な市販品の具体例として、3M社から入手可能な、Scotchtint(商標)シリーズのフィルムを挙げることができる。
【0052】(熱線カットフィルターの製造方法)本発明の熱線カットフィルターは、たとえば、金属含有薄膜付きフィルム及び誘電反射フィルム(誘電反射層)を、透明な支持体の主面(裏面または、表面及び裏面)に密着、固定して形成することができる。
【0053】 上記各フィルムと支持体との固定は、通常、透明性の高い接着剤を含む接着層を用いて行う。接着層の厚みは、通常0.1〜50μmの範囲である。接着剤の光透過率は、通常70%以上、好適には80%以上、特に好適には85%以上である。このような透明性の高い接着剤としては、高透明性と、高密着力とを有するアクリル系接着剤が好適である。アクリル系接着剤は、イソオクチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等の、炭素数4〜14のアルキル基を有するアクリレートモノマーと、(メタ)アクリル酸、カルボキシルアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、N,N−ジアルキルアクリルアミド等の極性基を有する(メタ)アクリレートモノマーとを含有する反応物質から得られた重合体、あるいはそのような重合体を含有する組成物である。
【0054】(熱線カットフィルターの使用方法)本発明の熱線カットフィルターは、前述の様に、医療用無影灯などの冷光照明装置において、その装置に組み込まれた光源を覆う光フィルターとして特に有用である。この場合の使用方法について、図2(a)(b)に沿って説明する。図2(a)(b)に示す例は、医療用無影灯に応用した例である。図2(a)(b)の医療用無影灯(20)は、装置本体(21)と、その装置本体(21)に組み込まれた複数の光源(22)を備えている。それらの光源(22)すべてを覆うフィルター(23)として、本発明の熱線カットフィルターを配置する。この時、熱線カットフィルター(23)の受光面(裏面)(24)が、光源(22)と向かい合う様に配置する。
【0055】 上記フィルター(23)は、すべての光源(22)を覆う様な面積を有する1つの熱線カットフィルターから形成しても良いし、それぞれが1つの光源(22)を覆う様に、複数のフィルターを用いても良い。通常においては、図2(b)に示すように、光源(22)と組み合わせて反射板(Reflector)(25)を用いる。この反射板(25)は、光源(22)が発する光を可及的に損失無く、フィルター受光面(24)に照射できる様に配置される。反射板(25)は、少なくとも可視光帯域の光、特に熱線カットフィルターの透過波長帯域の光を有効に反射するものが好ましい。したがって、熱線カットフィルターの透過波長帯域の光に対する反射板の反射率は、通常70%以上、好適には80%以上である。
【0056】 反射板(25)は、金属板や、反射膜が表面に固定されたフィルム(ポリマーフィルム)またはプレート(ポリマープレート)が使用できる。反射膜は、金属膜や誘電反射膜が使用できる。誘電反射膜は、前述の誘電反射層と同様にして形成できるが、赤外反射層として用いるものとは反射する光の波長が異なる。したがって、用いる誘電体の材質や屈折率、1/4波長層の厚さや屈折率等を適切なものに変更する必要がある。金属膜は、アルミニウム、銀、クロム、ニッケル等の金属から形成でき、可視光に対して実質的に不透明になる様な厚さを有するのが良い。
【0057】 なお、反射板(25)は、可視光帯域の光を反射し、かつ熱線を透過するものが良い。この様にするには、反射板(25)が誘電反射層を含むのが好ましい。この様な反射板(25)の誘電反射層は、誘電体の材質や屈折率、1/4波長層の厚さや屈折率等を、熱線を透過し、かつ可視光(特に好ましくは、熱線カットフィルターの透過波長帯域の光)を有効に反射する様に設計されたものを用いる。
【0058】 冷光照明装置に利用される光源としては、キセノンランプ、ハロゲンランプ、フラッシュランプ等の高輝度ランプが有利である。ランプの消費電力は、通常100〜1,000Wである。
【0059】 本発明の熱線カットフィルターは、熱線カット窓ガラスとしても用いることができる。この場合、光源は太陽であり、ガラス板が支持体である。たとえば、建物の室内や、自動車、航空機、船舶等の乗り物の室内(車内や機内)に位置する、人や物を太陽光で照明する場合であって、人や物に熱線を照射したくない場合に、本発明の熱線カットフィルターを熱線カット窓ガラスとして用いる。
【0060】
【実施例】(実施例)本実施例は、本発明の熱線カットフィルターを、医療用無影灯の光源を被覆するカバーガラスとして用いた例である。透明支持体として、厚み2mmのアクリル樹脂板(三菱レーヨン社製、光透過率は約100%)を用意した。この透明支持体の上に、厚みが55μm(平面寸法は上記支持体と同じ)の誘電反射フィルムを、アクリル系粘着剤(イソオクチルアクリレート−アクリル酸共重合体、光透過率は約98%)からなる接着層を介して密着させた。
【0061】 接着層は、上記粘着剤を含む溶液を、ナイフコータを用いて誘電反射フィルムの一方の表面に厚み25μmで塗布して形成した。また、誘電反射フィルムは、第1のポリマーとしてポリエチレンナフタレート(屈折率=1.64)をかつ第2のポリマーとしてポリメチルメタクリレート(屈折率=1.49)をそれぞれ用い、先に参照した国際特許公開(WO)第95/17303号公報に開示の方法により作製した。得られた誘電反射フィルムは、図3に示すような透過分光スペクトルを有していた。なお、図示のスペクトルは、誘電反射フィルムの表面の法線に沿って入射した光に対する測定結果である。また、この誘電反射フィルムでは、透過しない光は実質的にすべて反射され、反射波長帯域の光(約630〜1,100nmの範囲)の透過率は低く、その帯域の光の反射率は80%以上であった。
【0062】 一方、上記誘電反射層付き支持体の裏面に、金属蒸着ポリエステルフィルムを、接着層を介して固定し、本実施例の熱線カットフィルターを完成させた。上記金属蒸着ポリエステルフィルムは、金属含有薄膜としてITO蒸着膜を含むフィルムであった。また、接着層は、上記と同じアクリル系粘着剤と、紫外線吸収剤とを含有するものであった。上記金属蒸着ポリエステルフィルムと接着層とからなる積層体全体の厚さは40μmであった。
【0063】 なお、本実施例における光透過率及び反射率は、日立(株)製の磁気分光光度計「(形式)U−4000」を用いて測定した値である。本実施例の熱線カットフィルターを、市販の医療用無影灯に予め備え付けられている、熱線吸収ガラスからなるカバーガラスと交換し、次の様にして冷光照明効果を確認した。なお、熱線カットフィルターを用いる場合、その裏面(金属蒸着フィルムを固定した受光面)を光源側に向けて医療用無影灯に備え付けた。
【0064】 ここで使用した医療用無影灯は、山田医療照明(株)社製のHalley(商標)、モデルNo.84SCを用いた。この無影灯に使用されていた熱線吸収ガラスは、図3(グラフ)に示された透過分光スペクトルからもわかる様に、700nm以上の可視光帯域、及びそれに近い波長帯域の近赤外線を透過する。
【0065】 まず、図2(a)のように、上記医療用無影灯(20)を、手術台(30)の上方1mから手術台(30)を照明する様に設置し、光源(ランプ)(22)を点灯させ、照明の焦点を手術台(30)上に合う様にした。光源(22)を点灯させてから10分後に手術台(30)の照明箇所の温度を、熱電対(31)を用いて測定した。なお、(32)は温度計である。
【0066】 本実施例の熱線カットフィルターを用いた場合、熱線吸収ガラスからなるカバーガラスを用いた場合と比較して、測定温度が4℃下がることが分った。これは、本発明の熱線カットフィルターが、支持体が赤外線を直接受光することによる熱線2次放射を抑制し、しかも、近赤外から中遠赤外帯域の光を効果的にカットできたためと考えられる。また、視覚的な感温性も効果的に低減された冷光を作り出すことができた。
【0067】
【発明の効果】 以上説明したように、本発明によれば、可視光帯域の一部と赤外帯域を含む熱線を効果的に反射し、熱線を含まない光を効果的に透過し、しかも支持体の熱線2次放射を効果的に防止し、冷光を効果的に作り出すことが可能な熱線カットフィルターを提供することができる。
【出願人】 【識別番号】599056437
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
【出願日】 平成13年1月24日(2001.1.24)
【代理人】 【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平 (外1名)
【公開番号】 特開2002−231038(P2002−231038A)
【公開日】 平成14年8月16日(2002.8.16)
【出願番号】 特願2001−15341(P2001−15341)