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【発明の名称】 自然光を効果的に利用した照明システム
【発明者】 【氏名】海宝 幸一

【要約】 【課題】大規模な改修をすることなく容易に既存のビルに適用することができ、自然光を効果的に利用して省エネルギーを図ることができる照明システムを提供すること。

【解決手段】窓の中段にブラインドボックス2aを取り付け、スラット角自動調整式のブラインド2を設ける。また、ブラインドボックス2aの上部の窓面1aに光拡散フィルム4を貼り、太陽直射を和らげつつ、ブラインド閉鎖時においても上方よりの拡散光を取り込む。さらに、照明器具3に調光システム設け、照明器具群により照射される床面、机上の明るさが一定になるようにローカル調光を行う。以上のような改修を行うことにより,改修のために多くの費用を掛けることなく既存のオフィスにおいて、自然光を効果的に利用した照明システムを構成することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 窓から入射する自然光と人工光の複合光の輝度を測定する輝度センサと、太陽光を測定する太陽直射センサと、室内に設置された照明器具の照度を調整する調光手段と、窓に取り付けられたブライドの開閉を制御するとともにブラインドのスラット角を調整するブラインド制御手段とを備え、上記調光手段は、上記輝度センサの出力により上記照明器具の照度を調整して、室内の各部分の明るさが一定になるように制御し、上記ブラインド制御手段は、上記太陽直射センサの出力と、予めプログラムされた太陽軌道データによる太陽高度に基づき、直射光が室内に入らず、かつ、窓から入射する光量が最適になるように、ブラインドの上げ下げおよびブラインドのスラット角を調整する照明システムであって、上記ブラインドを収納するブラインドボックスを、上記窓の上端から所定の距離離れた位置に取り付け、ブラインドボックスより上側の窓部に、光拡散フィルムを貼り付けたことを特徴とする自然光を効果的に利用した照明システム。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自然光を効果的に利用した照明システムに関し、特に、既存のビルを大規模に改修することなく、オフイス内の執務空間において自然光の効果的な利用を図ることができる照明システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、省エネルギーが強く要望されるようになってきており、オフイスビル等の執務空間における自然光の利用は必要不可欠な要素となってきている。このため、新築ビル等においては、ライトシェルフ、2面採光等の建築手法により、自然光の取り込みを図った設計が行われるようになってきている。また、光ダクトを用いて、室内に自然光を導入し、室内を照明する光ダクト装置等も種々提案されている。また、自然光を効率的に利用するため、ビルの窓にスラット角の自動調整機構を備えたブラインドを設置することも提案されている(例えば、特開平4−44589号公報、特開平6−168786号公報等参照)。上記公報に記載されるものは、太陽の高度角と方位角に基づいてブラインドのスラット角の調整を行うことにより、窓から入射する太陽光が最適になるようにするものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】新築ビルにおいては、上記自然光を利用した建築手法を採用したり、光ダクト装置を導入をすることが可能であるが、既存のビルに適用するには、大幅な改修が必要となり、改修のために多くの費用を必要とする。既存のビルにおいて自然光の効果的な利用が可能となれば、都市全体の大きな省エネルギー化を図ることが可能となると考えられる。自然光を利用する上で既存のビルに容易に適用できる従来技術としては、例えば前記したスラット角の自動調整機能を備えたブラインドの設置等であるが、ブラインドのスラット角の調整だけでは自然光を効果的に取り込むことができず、自然光の効果的な利用という面では、満足のいくものではなかった。本発明は上記事情を考慮してなされたものであって、大規模な改修をすることなく容易に既存のビルに適用することができ、自然光を効果的に利用して省エネルギーを図ることができる照明システムを提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】オフィスビル等の執務空間に自然光を導入する場合には、太陽の直射光を防ぐとともに、室の奥まで届くようにまぶしさのない拡散光を室内に取り込み、かつ室内の明るさを一定に保つ必要がある。また、前記したように改修のために多くの費用を掛けることなく、自然光を効果的に利用する照明システムを構成することが望ましい。以上の条件を満足する照明システムを、本発明においては以下のようにして実現した。ブラインドを収納するブラインドボックスを、上記窓の上端から所定の距離離れた位置に取り付け、ブラインドボックスより上側の窓部に、光拡散フィルムを貼り付ける。そして、窓から入射する自然光と人工光の複合光の輝度を測定する輝度センサと、太陽光を測定する太陽直射センサと、室内に設置された照明器具の照度を調整する調光手段と、窓に取り付けられたブラインドの上げ下げを制御するとともにブラインドのスラット角を調整するブラインド制御手段とを設ける。そして、上記調光手段により、上記輝度センサの出力に応じて上記照明器具の照度を調整して、室内の各部分の明るさが一定になるように制御し、また、上記ブラインド制御手段により、上記太陽直射センサの出力と、予めプログラムされた太陽軌道データによる太陽高度に基づき、直射光が室内に入らず、かつ、窓から入射する光量が最適となるように、ブラインドの上げ下げおよびブラインドのスラット角を調整する。上記のように窓の上部に光拡散フィルムを貼り付け、窓のできるだけ高い位置からの採光により室内に拡散光を導入することにより、室の奥まで自然光を到達させることができる。また、上方からの光はまぶしさが少ないので、自然光を取り込んでもまぶしさを感じることが少ない。さらに、ブラインドが完全に閉じた状態でも、自然光を室内に取り込むことができ、人工照明のみに頼ることなく室内を照明することができる。また、窓の一部に光拡散フィルムを貼り付け、スラット角自動調整機構を備えたブラインドを設置するとともに調光手段を設けるだけでよいので、改修のために多くの費用を掛けることなく既存のオフィスに容易に適用することができる。
【0005】
【発明の実施の形態】図1は本発明の実施例の既存オフィスの改修手法を説明する図であり、同図(a)は改修前の状態を示し、同図(b)は改修後の状態を示している。同図(a)に示すように、改修前は、透明ガラス窓1にブラインド2が設けられ、ブラインドボックス2aが天井面に取付けられ、また、天井面には点滅のみを行うことができる照明器具3が取付けられている。上記既存オフイスの執務室について、以下の改修を行う。
(1)ブラインドの交換天井面に取り付けられているブラインドボックス2aを取り外し、図1(b)に示すように窓の中段(高さ2100程度)にブラインドボックス2aを取り付け、スラット角自動調整式のブラインド2を設ける。
(2)拡散フィルムの貼り付けブラインドボックス2aの上部の窓面1aに光拡散フィルム4を貼り(好ましくは窓の上端から40cm〜80cm)、太陽直射を和らげつつ、ブラインド閉鎖時においても、上方よりの拡散光を取り込む。
(3)自動調光システムの採用照明器具3に調光システム設け、人工照明を完全ローカル調光とする。すなわち、4〜12台程度の照明器具群を調光制御の単位として、自動調光コンテローラにより、各照明器具群により照射される床面、机上の明るさが一定になるように制御する。なお、調光の単位をこれ以上広くすると室内の照度差が大きくなるので、調光の単位はできるだけ小さい方が望ましい。
【0006】以上のような改修を行うことにより,以下の効果を得ることができる。
(A)窓の上部の高い位置から拡散光を取り込むので、まぶしさを和らげることができ、また、室内の奥まで自然光を到達させることができる。さらに、開口部周辺の輝度を高くしているので、窓面との輝度対比を和らげることができる。
(B)スラット角自動調整機構を備えたブラインド2を設置することにより、不快な太陽直射を避けながら、ブラインド2を介して入射する光量を大きくすることができる。
(C)照明器具3に自動調光システムを設けたので、人に頼ることなしに、理想的な照明制御を行うことができる。特に、ローカル調光とすることにより、自然光が届きにくい室の奥と、窓際での明るさをほぼ一定に保つことができ、快適な執務環境を得ることができる。
【0007】図2は図1(b)に示した自動調光システムとブラインド制御システムの構成例を示す図である。同図において、1は透明窓、2はブラインド、2aはブラインドボックスであり、ブランイドボックス2aの上部の窓部1aには、前記したように光拡散フィルム4が貼り付けられている。ブラインドコントローラ11は、太陽光を検出する太陽直射センサ11aの出力と、予めプログラムされた太陽軌道データによる太陽高度に基づき、ブラインド2の上げ下げおよびスラット角の調整を行う。天井面等に取り付けられた輝度センサ22−1〜22−nは、自然光と人工光の複合光による床、机上面の輝度を測定する。自動調光コントローラ21は、上記輝度センサ22−1〜22−nにより測定される床、机上面の輝度に基づき、床、机上面の明るさが一定になるように照明器具群3−1〜3−nをフィードバック制御する。
【0008】自動調光コントローラ21による調光制御は、前記したように4〜12台程度の照明器具単位で調光制御を行うローカル調光である。すなわち、輝度センサ22−1の出力に基づき照明器具群3−1の明るさを制御し、輝度センサ22−2の出力に基づき照明器具群21−2の明るさを制御し、以下同様に輝度センサ22−1〜22−nの出力に基づき各照明器具群3−1〜3−nを制御する。窓から入射する自然光は室の奥に行くほど減衰するので、室の奥に行くほど人工照明の明るさを大きくする必要がある。調光制御を上記のようにローカル制御とし、各輝度センサ22−1〜22−nにより測定される床、机上面の明るさに応じて、各照明器具群3−1〜3−nの明るさを制御することにより、窓際と室の奥の明るさをほぼ一定に制御することができる。上記自動調光コントローラ21としては、例えば、輝度センサ22−1〜22−nの出力と予め定められた設定値を比較し、その偏差に応じて各照明器具群3−1〜3−nの明るさをフィードバック制御する周知の自動調光コントローラを使用することができる。
【0009】図3は上記ブラインドコントローラ11の構成例を示す図であり、同図は、CPU等の演算装置を使用して、ブラインド2の開閉とスラット角を制御するシステムの構成例を示す。同図において、太陽直射センサ11aは太陽直射光があるか無いか(晴天であるか、曇天であるか)を検出する。太陽直射センサ11aは、太陽直射光を検出できる適当な位置に設置することができる。太陽直射センサ11aの出力は、入力インタフェース11bを介して演算装置11cに入力される。記憶装置11dには、各季節、各時間帯における太陽の軌道データが予め格納されており、演算装置11cは、上記太陽直射センサ11aの出力、記憶装置11dに格納された太陽軌道データ、および、演算装置11cの内部時計の日時データに基づき、ブラインド2を上げるか、下げるかを判断するとともに、ブラインド2を下げているときのブラインドのスラット角を求める。そして、出力インタフェース11eを介して、ブラインド上げ下げ制御機構11f、スラット角制御機構11gに制御信号を送出し、ブラインドの上げ下げ、スラット角を以下のように制御する。
【0010】(a) 昼間演算装置11cは、太陽直射センサ11aの出力に基づき、太陽直射があるか否かを判断し、太陽直射がないとき(曇天時)にはブラインド2を上げ、太陽直射があるとき(晴天時)には、ブラインド2を下げる。そして、ブラインド2が下がっているとき、記憶装置11dに格納された各時間帯における太陽高度から、直射光が室内に入らず、かつブランイドを介して窓から入射する光量が最適となるようなスラット角を求め、ブラインド2のスラット角を制御する。例えば、太陽高度が高いときには、図4(a)に示すようにブラインド2のスラット角度を小さくし、太陽高度が低い時には、図4(b)に示すようにスラット角度を大きくする。また、一時的に日差しが弱くなると、図4(c)に示すようにスラット角度を開く。
(b) 夜間演算装置11cは内部時計により昼間であるか夜間であるかを判断し、夜間には、図4(d)に示すようにブラインド2を下ろし、ブラインド2を前閉とする。
【0011】上記実施例で説明した手法によりオフィスの執務室を改修した場合について、、以下の条件によりシミュレーションを行い、改修前と改修後を比較した。
(i) 試験期間1月から12月までの各一日(各月の22日)について、9:00〜17:00の毎時に計算を行った。
(ii)天候各月、各日時における平均雲量(気象データによる)に基づく天候輝度分布を使用した。
(iii) ブラインドの制御太陽直射が窓面から0.2m以上侵入した場合に、完全閉鎖とした。
(iv)シミュレーション空間既設の施設を想定し、天井高さ2.6m、室の奥行き12.8m、南向き開口、窓台の高さ0.75m・改修前開口高さ0.75m〜2.6m(全て透明ガラス)
ブラインドは天井面まで(高さ2.6m)
・改修後開口高さ0.75m〜2.1m(透明ガラス)
2.2m〜2.6m(拡散フィルム貼り付け)
高さ2.1mの所にブラインド取付け【0012】上記シミュレーションの結果、本実施例で説明した改修をすることにより、庇のない施設において、室内における設定照度が500ルックスの場合、改修後は年間昼光有効率が23%となった(設定照度が750ルックスでは15%、300ルックスでは33%)。一方、改修前においては(照明は点滅制御、ブラインド制御せず)では、昼光有効率は0%であり、本発明の手法によれば、9:00〜17:00までの照明電力の削減率は30%程度となり、自然光の利用する上で顕著な効果が得られることが確認された。
【0013】
【発明の効果】以上説明したように、本発明においては、以下の効果を得ることができる。
(1)ブラインドの上部の窓部に貼り付けた光拡散フィルムを介した自然光の導入と、ブラインドの制御と、室内の調光制御を効果的に組み合わせたので、自然光を効果的に利用した照明システムを構築することができ、従来のものに比べ、室内照明用の電力を大幅に削減することができる。また、既存のビルを大規模に改修することなく、自然光の効果的な利用を図ることができ、省エネルギーに寄与することができる。
(2)ブラインドの上部の窓部に光拡散フィルムを貼り付けるとともに、ブラインドを自動調整しているので、直射日光が執務室内に入ることがなく、まぶしさを感じることがない快適な執務環境を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000152424
【氏名又は名称】株式会社日建設計
【出願日】 平成13年3月14日(2001.3.14)
【代理人】 【識別番号】100100930
【弁理士】
【氏名又は名称】長澤 俊一郎
【公開番号】 特開2002−270015(P2002−270015A)
【公開日】 平成14年9月20日(2002.9.20)
【出願番号】 特願2001−72247(P2001−72247)