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【発明の名称】 建物の光環境評価方法
【発明者】 【氏名】百里 美和

【氏名】原 哲夫

【氏名】広川 純一

【氏名】山中 康弘

【要約】 【課題】事務所ビルなどの建物を設計する際に適用される光環境評価方法において、適度な室内照度が得られるか否かを素早く正確に判定でき、プランの完成に要する手間と時間を省き、省エネルギー効果を容易に得る。

【解決手段】建物の開口部に取り付ける光透過部材と光源に関するデータが入力されると(ステップS2、S3)、光源のスペクトル分布が複数の波長域に分割される(ステップS7〜S9)。光源の各波長域ごとのエネルギー量が算出され(ステップS10)、光透過部材の各波長域ごとの透過率と反射率が算出される(ステップS11)。エネルギー量、透過率、反射率を基に各波長域ごとの透過量と反射量が算出され、これらを光源の全波長域にわたって加算して室内照度が算出され(ステップS12)、表示される(ステップS13)。光透過部材の光学特性と透過率の波長依存性を考慮した正確な室内照度が瞬時に求まり、見やすく表示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 演算処理装置、表示装置、入力装置および記憶装置を備えたコンピュータによる建物の光環境評価方法であって、波長別光源エネルギー量データベースおよび波長別光透過部材屈折率データベースを前記記憶装置に読み出し自在に格納しておき、前記建物の開口部に取り付ける光透過部材および光源に関するデータが前記入力装置を介して入力されたとき、前記演算処理装置が、前記光源のスペクトル分布を複数の波長域に分割し、前記記憶装置に格納された波長別光源エネルギー量データベースに基づいて前記光源の各波長域ごとのエネルギー量を算出するとともに、前記記憶装置に格納された波長別光透過部材屈折率データベースに基づいて前記光透過部材の各波長域ごとの透過率および反射率を算出し、これらエネルギー量、透過率および反射率に基づいて各波長域ごとの透過量および反射量を算出し、これら透過量および反射量をそれぞれ前記光源の全波長域にわたって足し合わせて室内照度を算出し、この室内照度を前記表示装置に表示することを特徴とする建物の光環境評価方法。
【請求項2】 前記波長別光源エネルギー量データベースを天候別の自然光について作成しておき、前記光源の各波長域ごとのエネルギー量を天候別に算出することを特徴とする請求項1に記載の建物の光環境評価方法。
【請求項3】 地域ごとの気象データを前記記憶装置に読み出し自在に格納しておき、前記演算処理装置が、前記記憶装置に格納された気象データに基づいてトータルの室内照度を算出し、このトータルの室内照度と設計照度との差に基づいて人工光による補填量を算出し、この人工光による補填量の年間累計と設計照度の年間累計との差に基づいて年間の照明エネルギーの低減量を算出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の建物の光環境評価方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、事務所ビルや店舗ビル、一般住宅など各種の建物を設計する際に適用するに好適な光環境評価方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図1は建物の構成を示す模式図である。
【0003】従来、建物1の設計に当たっては、主に意匠面から、外壁3の開口部寸法やこの開口部に取り付ける透明ガラス、青色吸熱ガラスなどの光透過部材2を選定して仮プランを決めた後、この仮プランで室内に適度な照度が得られるか否かを検討し、室内照度が適度である場合にのみ本プランとして採用するようにしていた。
【0004】ここで、室内照度が適度であるか否かを検討する際には、自然光(太陽光)や人工光などの光源の透過率が入射エネルギーの波長に依存することなく一定値をとると仮定して、開口部の寸法および光透過部材2の材質(物性)から室内照度を簡便に算出していた。
【0005】また、室内照度の算出に際しては、晴天か曇天かを特に考慮していなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これでは次のような不都合があった。
【0007】第1に、光源の透過率は実際には入射エネルギーの波長によっても変化するため、必ずしも正確な室内照度が算出されているとは言えず、室内照度に過不足が生じる恐れがある。
【0008】第2に、いかに意匠的に優れた仮プランであっても、室内照度が適度でなければ設計のやり直しを余儀なくされるので、本プランとなるまでに何度も設計し直さなければならないことが多く、プランの完成に手間と時間がかかる。
【0009】第3に、晴天か曇天かを考慮せずに室内照度を算出しているに過ぎないので、省エネルギー効果を算出することが困難となる。
【0010】本発明は、このような事情に鑑み、コンピュータにいくつかのデータを入力するだけで、適度な室内照度が得られるか否かを素早く正確に判定することができ、プランの完成に要する手間と時間を省くことが可能で、しかも省エネルギー効果を容易に得ることができる建物の光環境評価方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明では、光源のスペクトル分布をいくつかの波長域に分割し、各波長域ごとに光透過部材の光学特性を求めてから積分すれば、各種の建物における室内光環境をきめ細かく解析できることに着目した。
【0012】すなわち、請求項1に記載の本発明は、演算処理装置、表示装置、入力装置および記憶装置を備えたコンピュータによる建物の光環境評価方法であって、波長別光源エネルギー量データベースおよび波長別光透過部材屈折率データベースを前記記憶装置に読み出し自在に格納しておき、前記建物の開口部に取り付ける光透過部材および光源に関するデータが前記入力装置を介して入力されたとき、前記演算処理装置が、前記光源のスペクトル分布を複数の波長域に分割し、前記記憶装置に格納された波長別光源エネルギー量データベースに基づいて前記光源の各波長域ごとのエネルギー量を算出するとともに、前記記憶装置に格納された波長別光透過部材屈折率データベースに基づいて前記光透過部材の各波長域ごとの透過率および反射率を算出し、これらエネルギー量、透過率および反射率に基づいて各波長域ごとの透過量および反射量を算出し、これら透過量および反射量をそれぞれ前記光源の全波長域にわたって足し合わせて室内照度を算出し、この室内照度を前記表示装置に表示するようにして構成される。
【0013】こうした構成を採用することにより、建物の設計に当たって、光透過部材の光学特性および透過率の波長依存性を考慮した正確な室内照度が瞬時に求まり、見やすく表示されるように作用する。
【0014】また、請求項2に記載の本発明は、前記波長別光源エネルギー量データベースを天候別の自然光について作成しておき、前記光源の各波長域ごとのエネルギー量を天候別に算出するようにして構成される。
【0015】かかる構成により、室内照度が晴天や曇天などの天候に対応して算出され、きめ細かい光環境評価が可能となるように作用する。
【0016】さらに、請求項3に記載の本発明は、地域ごとの気象データを前記記憶装置に読み出し自在に格納しておき、前記演算処理装置が、前記記憶装置に格納された気象データに基づいてトータルの室内照度を算出し、このトータルの室内照度と設計照度との差に基づいて人工光による補填量を算出し、この人工光による補填量の年間累計と設計照度の年間累計との差に基づいて年間の照明エネルギーの低減量を算出するようにして構成される。
【0017】かかる構成により、年間を通じての照明エネルギーの低減量が晴天・曇天の別に応じて求まるように作用する。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】図1は建物の構成を示す模式図、図2は本発明に係る建物の光環境評価方法の一実施形態を適用するときに用いられる光解析プログラムの一例を示すフローチャート、図3は照明エネルギー低減量算出プログラムの一例を示すフローチャートである。
【0020】この建物の光環境評価方法は、演算処理装置(マイクロプロセッサ、CPUなど)、表示装置(液晶ディスプレイ、CRTディスプレイなど)、入力装置(キーボード、マウスなど)および記憶装置(ROM、ハードディスク、光磁気ディスクなど)を備えたパソコン等のコンピュータ(図示せず)を用い、その演算処理装置が、以下に述べるとおり、図2に示す光解析プログラムPRG1および図3に示す照明エネルギー低減量算出プログラムPRG2に基づいて実行する。なお、このコンピュータの記憶装置には、波長別光源エネルギー量データベース、波長別光透過部材屈折率データベースおよび地域ごとの気象データ(例えば、HASPやAMEDASなどのデータ)が読み出し自在に格納されており、波長別光源エネルギー量データベースは、光源の種類の違いによって波長別自然光エネルギー量データベースと波長別人工光エネルギー量データベースに二分されている。さらに、この波長別自然光エネルギー量データベースは、晴天や曇天などの天候別に作成されている。
【0021】まず最初に、光解析プログラムPRG1のステップS1で、建物の3次元形状(屋根、壁、天井、床、開口部など)に関するデータの入力を促すメッセージが表示装置に表示されるので、作業者はこれらのデータを入力装置を介して入力する。
【0022】次に、光解析プログラムPRG1のステップS2に入り、建物の外壁3の開口部に取り付けられた光透過部材2の光学特性(拡散反射、鏡面反射、透過、拡散透過、色など)に関するデータの入力を促すメッセージが表示装置に表示されるので、作業者はこれらのデータを入力装置を介して入力する。
【0023】その後、光解析プログラムPRG1のステップS3で、光源に関するデータ(自然光については晴天、曇天、場所、日時、方位など、人工光については光束、配光特性、色温度など)および建築地の地理データ(緯度、経度など)の入力を促すメッセージが表示装置に表示されるので、作業者はこれらのデータを入力装置を介して入力する。
【0024】次いで、光解析プログラムPRG1のステップS4に入り、解析精度の選択を促すメッセージが表示装置に表示されるので、作業者は「詳細」または「簡易」のいずれかを任意に選択し、入力装置を介して入力する。
【0025】ここで、作業者が「簡易」を選択して入力した場合には、光解析プログラムPRG1のステップS5で、可視光域を一括して計算対象に選んだ後、光解析プログラムPRG1のステップS6に入り、公知の手法で光解析計算を簡易に実行する。
【0026】一方、作業者が「詳細」を選択して入力した場合には、光解析プログラムPRG1のステップS7に入り、光源の波長ごとに詳細に計算すべく、光解析プログラムPRG1のステップS8で、波長帯域として所望の値(例えば、0.4〜0.7μm)を設定するとともに、光解析プログラムPRG1のステップS9で、波長分割数として所望の値(例えば、10)を設定する。
【0027】その後、光解析プログラムPRG1のステップS10に入り、光源の種類に応じて波長別の光源エネルギー量を求める。すなわち、自然光については、波長別自然光エネルギー量データベースを記憶装置から読み出し、この波長別自然光エネルギー量データベースに基づいて自然光エネルギー量を波長別に計算し、また人工光については、波長別人工光エネルギー量データベースを記憶装置から読み出し、この波長別人工光エネルギー量データベースに基づいて人工光エネルギー量を波長別に計算する。
【0028】次いで、光解析プログラムPRG1のステップS11に入り、光透過部材の波長別の透過率および反射率を求める。それには、波長別光透過部材屈折率データベースを記憶装置から読み出し、この波長別光透過部材屈折率データベースに基づき、数1〜数5に示す計算式を用いて透過率および反射率を波長別に計算する。これらの数式において、rは表面反射率、θ1は入射角、θ2は屈折角、aは吸収率、kは物質に特有な定数(例えば、普通透明板ガラスではk=0.02/mm)、dは光透過部材の厚さ、ρは反射率、τは透過率、nは屈折率をそれぞれ表す。
【数1】

【数2】

【数3】

【数4】

【数5】

【0029】こうして、光透過部材の波長別の透過率および反射率が求まったところで、光解析プログラムPRG1のステップS12に入り、モンテカルロ法やレイトレーシング法を用いて光解析計算を実行する。すなわち、光解析プログラムPRG1のステップS10で算出した波長別の光源エネルギー量と、光解析プログラムPRG1のステップS11で算出した光透過部材の波長別の透過率および反射率とを基に、光源の各波長域ごとの透過量および反射量を算出した後、これら透過量および反射量をそれぞれ光源の全波長域にわたって足し合わせて室内照度を算出する。
【0030】そして、光解析プログラムPRG1のステップS13で、こうして求まった室内照度を表示装置に表示する。この際、室内照度を視覚的にわかりやすくするため、ビジュアル化されてカラーコンタ表示されたり、任意平面メッシュ交点の計算値データとして表示される。
【0031】最後に、光解析プログラムPRG1のステップS14に入り、この表示装置に表示された室内照度を見て分析・評価し、その結果が肯定的であれば、ここで光解析プログラムPRG1に基づく建物の光環境評価方法が終了するが、その結果が否定的であれば、光解析プログラムPRG1のステップS2に戻り、同じ手順が繰り返される。
【0032】このように、建物の設計に当たっては、作業者がその建物の3次元形状、光透過部材の光学特性および光源に関するデータを入力し、解析精度として「詳細」を選択すると、光透過部材の光学特性および透過率の波長依存性を考慮した正確な室内照度が瞬時に求まり、見やすく表示されるため、適度な室内照度が得られるか否かを素早く正確に判定することができ、プランの完成に要する手間と時間を省くことが可能となる。しかも、波長別自然光エネルギー量データベースは天候別に作成されているので、室内照度が天候に対応して算出され、きめ細かい光環境評価が可能となる。
【0033】このようにして、図2に示す光解析プログラムPRG1に基づく光解析作業が終了したところで、図3に示す照明エネルギー低減量算出プログラムPRG2に基づく照明エネルギー低減量の算出作業に移行する。
【0034】すなわち、まず照明エネルギー低減量算出プログラムPRG2のステップS1で、先ほど入力された地理データに基づいて太陽高度が10°以上であるか否かを判定する。その結果、太陽高度が10°未満である場合は、太陽光による照度獲得がほとんど期待できないので、照明エネルギー低減量算出プログラムPRG2のステップS2に入り、計算対象から除外するのに対し、太陽高度が10°以上である場合には、照明エネルギー低減量算出プログラムPRG2のステップS3に入り、地域ごとの気象データを記憶装置から読み出し、雲量が8.5以上であるか否かによって曇天か晴天かを判定する。
【0035】その結果、雲量が8.5未満である場合は曇天と判定し、照明エネルギー低減量算出プログラムPRG2のステップS4で、地域ごとの気象データに基づいて天空日射量を算出した後、照明エネルギー低減量算出プログラムPRG2のステップS7に入る。他方、雲量が8.5以上である場合は晴天と判定し、照明エネルギー低減量算出プログラムPRG2のステップS4における天空日射量の算出作業に加えて、照明エネルギー低減量算出プログラムPRG2のステップS5に入り、地域ごとの気象データに基づいて法線面直達日射量を算出し、照明エネルギー低減量算出プログラムPRG2のステップS6で、この法線面直達日射量を水平面直達日射量に換算した後、照明エネルギー低減量算出プログラムPRG2のステップS7に入る。
【0036】こうして、照明エネルギー低減量算出プログラムPRG2のステップS7に入ったところで、先ほど入力された建物の3次元形状に関するデータおよび光透過部材2の光学特性に関するデータに基づいて昼光率を算出する。そして、曇天の場合は、照明エネルギー低減量算出プログラムPRG2のステップS8で、天空光による室内照度を算出した後、照明エネルギー低減量算出プログラムPRG2のステップS10に入る。また、晴天の場合は、照明エネルギー低減量算出プログラムPRG2のステップS8における天空光による室内照度の算出作業に加えて、照明エネルギー低減量算出プログラムPRG2のステップS9に入り、直達光による室内照度を算出した後、照明エネルギー低減量算出プログラムPRG2のステップS10に入る。
【0037】こうして、照明エネルギー低減量算出プログラムPRG2のステップS10に入ったところで、天空光および直達光による室内照度を足し合わせてトータルの室内照度を算出する。次いで、照明エネルギー低減量算出プログラムPRG2のステップS11で、このトータルの室内照度を設計照度から減じることにより、人工光による補填量を算出する。具体的には、トータルの室内照度が750lxを下回るときに、750lxとの差を積算することになる。
【0038】最後に、照明エネルギー低減量算出プログラムPRG2のステップS12に入り、人工光による補填量の年間累計を設計照度の年間累計から減じ、電力換算することにより、年間の照明エネルギーの低減量を算出する。
【0039】ここで、照明エネルギー低減量算出プログラムPRG2に基づく照明エネルギー低減量の算出作業が終了し、省エネルギー効果を容易に算出することが可能となる。
【0040】なお、上述の実施形態においては、室内照度を算出することを目的として可視光域のみを対象としたが、可視光域のみならず自然光の全波長域(紫外線や赤外線など)に拡張することにより、建物の熱環境評価を行うこともできる。
【0041】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1に記載の本発明によれば、建物の設計に当たっては、コンピュータにいくつかのデータを入力するだけで、光透過部材の光学特性および透過率の波長依存性を考慮した正確な室内照度が瞬時に求まり、見やすく表示されることから、適度な室内照度が得られるか否かを素早く正確に判定することができ、プランの完成に要する手間と時間を省くことが可能な建物の光環境評価方法を提供することができる。
【0042】また、請求項2に記載の本発明によれば、晴天や曇天などの天候に対応して室内照度が算出され、きめ細かい光環境評価が可能となることから、建物の実状に即した有益な光環境評価を得ることができ、利便性が向上する。
【0043】さらに、請求項3に記載の本発明によれば、年間を通じての照明エネルギーの低減量が晴天・曇天の別に応じて求まることから、省エネルギー効果を容易に得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
【出願日】 平成12年11月20日(2000.11.20)
【代理人】 【識別番号】100096862
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 千春 (外1名)
【公開番号】 特開2002−42510(P2002−42510A)
【公開日】 平成14年2月8日(2002.2.8)
【出願番号】 特願2000−352128(P2000−352128)