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【発明の名称】 ディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置
【発明者】 【氏名】齊藤 智明

【氏名】近藤 光徳

【要約】 【課題】燃費の悪化を抑制しつつ排気ガス中の煤を量を低減させることができるディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置を提供すること。

【解決手段】ディーゼルエンジンの燃焼室4内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁5と、圧縮行程上死点の近傍の所定時期に前記燃料噴射弁から燃料が噴射される主噴射を制御する主噴射制御手段36と、前記主噴射の後に、前記燃料噴射弁から追加の燃料が噴射される後噴射を制御する後噴射制御手段36とを備え、前記後噴射制御手段は、前記主噴射による燃焼が終了した時期に基づいて後噴射の噴射時期を制御すると共に、加速度合いが所定値より大きい加速状態のときには、加速度合いが所定値以下のときよりも前記後噴射による燃料噴射を増大させることを特徴とするディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ディーゼルエンジンの燃焼室内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁と、圧縮行程上死点の近傍の所定時期に前記燃料噴射弁から燃料が噴射される主噴射を制御する主噴射制御手段と、前記主噴射の後に、前記燃料噴射弁から追加の燃料が噴射される後噴射を制御する後噴射制御手段とを備え、前記後噴射制御手段は、前記主噴射による燃焼が終了した時期に基づいて後噴射の噴射時期を制御すると共に、加速度合いが所定値より大きい加速状態のときには、加速度合いが所定値以下のときよりも前記後噴射による燃料噴射を増大させることを特徴とするディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置。
【請求項2】 前記後噴射制御手段は、前記加速状態の加速初期には、後噴射を、前記加速初期以外の加速時よりも増大させる、請求項1に記載のディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置。
【請求項3】 前記ディーゼルエンジンがターボ過給機を備えている、請求項1または2に記載のディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置。
【請求項4】 排ガスの一部を吸気に還流させるEGR手段を制御するEGR制御手段を備えている、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置。
【請求項5】 前記EGR制御手段は、前記後噴射制御手段による燃料噴射増大中には、煤発生が低減するようにEGRを減少させる、請求項4に記載のディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置。
【請求項6】 前記主噴射に所定間隔だけ先立って予混合燃焼を行わせるために前記燃料噴射弁から燃料が噴射されるパイロット噴射を制御するパイロット噴射制御手段であって、前記後噴射制御手段による燃料噴射増大中には、前記間隔を、前記後噴射制御手段による燃料噴射増大が行われていないときに比べて小さくするように制御するパイロット噴射制御手段をさらに備えている、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置。
【請求項7】 前記主噴射に所定間隔だけ先立って予混合燃焼を行わせるために前記燃料噴射弁から燃料が噴射されるパイロット噴射を制御するパイロット噴射制御手段であって、前記後噴射制御手段による燃料噴射増大中には、前記パイロット噴射の噴射を、前記後噴射制御手段による燃料噴射増大が行われていないときに比べて増加させるように制御するパイロット噴射制御手段をさらに備えている、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置に関連し、詳細には、主噴射による燃料噴射後に追加の燃料が噴射される後噴射を制御する後噴射制御手段を備えたディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】ディーゼルエンジンの排気ガスに含まれるNOxを効率的に浄化する等の目的で、燃焼室内への通常の燃料噴射(主噴射)に引き続いて、所定のタイミングで追加の燃料を燃焼室内に噴射する後噴射を行うディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置が知られている(特開2000−170585号公報等)。
【0003】また、従来技術には該当しない本件出願人の先願(特願2000−321699号)には、主噴射による拡散燃焼が終了時点を基準に後噴射の噴射時期を設定することにより、煤の排出を効果的に低減させることができる旨の記載がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本件の発明は、このような後噴射に関連するものであり、燃費の悪化を抑制しつつ排気ガス中の煤を量を低減させることができるディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明によれば、ディーゼルエンジンの燃焼室内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁と、圧縮行程上死点の近傍の所定時期に前記燃料噴射弁から燃料が噴射される主噴射を制御する主噴射制御手段と、前記主噴射の後に、前記燃料噴射弁から追加の燃料が噴射される後噴射を制御する後噴射制御手段とを備え、前記後噴射制御手段は、前記主噴射による燃焼が終了した時期(即ち主噴射による熱発生率が略0以下になった時期)に基づいて後噴射の噴射時期を制御すると共に、加速度合いが所定値より大きい加速状態ときには、加速度合いが所定値以下のときよりも前記後噴射による燃料噴射を増大させることを特徴とするディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置が提供される。
【0006】ここで「後噴射による燃料噴射を増大させる」とは、後噴射の燃料噴射の絶対量を増大させること、または、主噴射量に対する後噴射量の比率を増大させることを指す。また、「増大」させるとは、定常運転時等には後噴射を行わず、所定の加速状態の時のみ後噴射を実行することも含む。
【0007】このような構成によれば、主噴射による燃料噴射量が増加する一方で新気の吸入遅れが大きくなるため、空燃比(A/F)がリッチとなり煤の発生が増加してしまう加速状態では、後噴射が増大されて煤の発生を抑制できるので、煤の発生・排出が抑制される。また、定常時の運転状態では、このような加速状態に比べて後噴射が少なくなるので燃費が向上する。
【0008】本発明の好ましい態様では、前記後噴射制御手段は、前記加速状態の加速初期には、後噴射を、前記加速初期以外の加速時よりも増大させる。
【0009】上述した、主噴射による燃料噴射量の増加と新気の吸入遅れが大きくなることとに起因する煤の発生増加は、新気の遅れが顕著な加速初期において特に大きくなる。しかし、上記本発明の好ましい態様によれば、加速初期の後噴射が、初期以下の加速時より増大されるので、煤の発生が特に大きくなる領域で、煤の発生を効果的に抑制できる。
【0010】本発明の他の好ましい態様では、前記ディーゼルエンジンがターボ過給機を備えている。
【0011】ターボ過給機を備えたエンジンには、加速時に所謂ターボラグ(過給遅れ)による新気の遅れが生じ、この結果、空燃比がリッチとなり煤の発生が増加する傾向がある。 本発明の他の好ましい態様では、加速時に後噴射が増大させられるので、後噴射増大によって煤の発生が抑制される。さらに、加速時の後噴射増大により、排気圧が大きくなるため、ターボラグが小さくなり新気遅れが減少して、速やかな加速と更なる煤の抑制が達成される。
【0012】本発明のもう一つの好ましい態様は、排ガスの一部を吸気に還流させるEGR手段を制御するEGR制御手段を備えている。
【0013】EGR手段を備えた燃料噴射制御装置では、定常時に行われていたEGR制御により比較的多量の排気ガスが吸気側に還流させられているので、運転状態が加速に移行した際にもこの排気が吸気系に残留EGRガスとして存在してる。このため、加速時には、主噴射の増量と相まって、空燃比がよりリッチとなり、煤の発生が増大することになる。しかしながら、本発明のもう一つの好ましい態様によれば、加速時に、後噴射が増大されることにより、煤の発生が抑制されるので、加速時の煤を低減と、定常時のEGRによるNOx低減とを両立できる。
【0014】本発明のさらにもう一つの態様によれば、前記EGR制御手段は、前記後噴射制御手段による燃料噴射増大中には、煤発生が低減するようにEGRを減少させる。
【0015】上述したように、EGR制御を行うディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置では、加速時に、残留EGRガスにより、煤が増大するが、本発明のさらにもう一つの態様によれば、後噴射制御手段による燃料噴射増大中、即ち、加速度合いが所定値より大きい時には、EGRを減少させることにより、新気の吸入遅れが抑制され、煤発生が低減する。
【0016】本発明の他の態様によれば、前記主噴射に所定間隔だけ先立って予混合燃焼を行わせるために前記燃料噴射弁から燃料が噴射されるパイロット噴射を制御するパイロット噴射制御手段であって、前記後噴射制御手段による燃料噴射増大中には、前記間隔を、後噴射制御手段による燃料噴射増大が行われていないときに比べて小さくするように制御するパイロット噴射制御手段をさらに備えている。
【0017】パイロット噴射には、主噴射との間隔を短くしていくと、騒音は小さくなるが煤発生が増大していくという性質がある。しかしながら、本発明の他の態様によれば、後噴射制御手段による燃料噴射増大中には、後噴射の増大によって煤発生が抑制されるので、パイロット噴射と主噴射との間隔を短くして、煤が増大することなく、騒音を低減することが可能となる。
【0018】本発明の更に他の態様によれば、前記主噴射に所定間隔だけ先立って予混合燃焼を行わせるために前記燃料噴射弁から燃料が噴射されるパイロット噴射を制御するパイロット噴射制御手段であって、前記後噴射制御手段による燃料噴射増大中には、前記パイロット噴射の噴射を、後噴射制御手段による燃料噴射増大が行われていないときに比べて増加させるように制御するパイロット噴射制御手段をさらに備えている。
【0019】パイロット噴射には、噴射を増加させていくと、騒音を小さくできるが、煤発生が増大していくという性質がある。しかしながら、本発明の他の態様によれば、後噴射制御手段による燃料噴射増大中には、後噴射の増大によって煤発生が抑制されるので、パイロット噴射を増加させても煤は増大せず、さらに、騒音の低減も可能となる。
【0020】
【発明の実施の形態】次に、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態のディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置の構成を示す概略図である。
【0021】図1に示されているように、燃料噴射制御装置は、車両に搭載されるディーゼルエンジン1を備えている。ディーゼルエンジン1は、4本の気筒2、2…(1本のみを図示する。)を有し、各気筒2内を構成するシリンダ内には、ピストン3が往復動可能に配置され、ピストン3とシリンダの内周壁などによって、燃焼室4が形成されている。燃焼室4の上面のほぼ中央には、燃料噴射弁(インジェクタ)5が、その先端部の噴孔が燃焼室4に臨むように配置されている。燃料噴射弁5は、所定のタイミングで、気筒内すなわち燃焼室4に直接燃料を噴射するように構成されている。さらに、図示しないエンジン1のウォータージャケットに臨むように、冷却水の温度(エンジン水温)を測定する水温センサ18が設けられている。
【0022】各燃料噴射弁5は、高圧の燃料を蓄える共通のコモンレール(蓄圧室)6に接続されている。コモンレール6には、エンジンやモータによりエンジン始動後に駆動される噴射ポンプにより高圧燃料が供給され、内部の燃料圧(コモンレール圧)を検出する圧力センサ6aが配置されるとともに、クランク軸7により駆動される高圧供給ポンプ8が接続されている。この高圧供給ポンプ8は、圧力センサ6aにより検出されるコモンレール6内の燃圧を、例えばアイドル運転時に約20MPa以上に保持し、それ以外の運転時には50MPa以上に保持するように構成されている。
【0023】また、クランク軸7には、その回転角度を検出するクランク角センサ9が設けられている。クランク角センサ9は、クランク軸7の端部に設けられた被検出プレートと、その外周に相対応するように配置された電磁ピックアップとを含み、電磁ピックアップが被検出プレートの外周部全周に所定角度おきに形成された突起部の通過に応答してパルス信号を生成するように構成されている。
【0024】また、エンジン1は、図示しないエアークリーナで濾過された吸入空気を燃焼室4に導入する吸気通路10を備えている。吸気通路10の下流端部は、図示しないサージタンクを経て分岐し、それぞれが吸気ポートにより、各気筒2の燃焼室4に接続されている。また、サージタンク内で各気筒2に供給される加給圧力を検出する吸気圧センサ10aが設けられている。
【0025】この吸気通路10には、上流側から下流側に向かって順に、エンジン1に吸入される吸気流量を検出するエアーフローセンサ11と、後述のタービン21により駆動されて吸気を圧縮するブロワ12と、このブロワ12により圧縮された空気を冷却するインタークーラ13と、吸気通路10の断面積を絞る吸気絞り弁14とが設けられている。
【0026】この吸気絞り弁14は、全閉状態でも吸気が流通可能なように、切欠きが設けられたバタフライバルブからなり、後述のEGR弁24と同様、ダイヤフラム式アクチュエータ15に作用する負圧の大きさが負圧制御用の電磁弁16により調整されることで、弁の開度が制御されるように構成されている。また、前記吸気絞り弁14の開度を検出するセンサ(図示せず)も設けられている。
【0027】エンジン1には、各気筒2の燃焼室4から排気を排出するための排気通路20が接続されている。この排気通路20の上流側端は、分岐して、図示しない排気ポートにより、それぞれ各気筒2の燃焼室4に接続されている。この排気通路20は、上流側から下流側に向かって順に、排気の空燃比が略理論空燃比の時を境に出力が急変するO2センサ(図示せず)と、排気流により回転されるタービン21と、排気中の少なくともNOxを還元して浄化するNOx還元触媒22と、NOx還元触媒22を通過した排気ガス中のNOx濃度を検出するNOxセンサ19とが配置されている。
【0028】NOx還元触媒22であるNOx浄化触媒は、排気の流れ方向に沿って互いに平行に延びる多数の貫通孔を有するハニカム構造に形成されたコージェライト製担体を備え、その各貫通孔壁面に触媒層を2層に形成したものである。具体的には、白金(Pt)と、ロジウム(Rh)とが、多孔質材であるMFI型ゼオライト(ZSM5)等をサポート材として担持されることにより、上記触媒層が形成されている。
【0029】そして上記NOx浄化触媒22は、燃焼質4内の混合気がリーン状態となって排気ガス中の酸素濃度が高い場合、例えば酸素濃度が4%以上である場合に、NOxを還元剤と反応させて還元することにより、排気ガス中のNOxを浄化するように構成されている。なお、上記NOx浄化触媒22は、酸素濃度が低い場合には、三元触媒として機能する。
【0030】排気通路20は、タービン21より上流側の位置で、排気の一部を吸気側に還流させる排気還流通路(EGR通路)23の上流端に分岐接続されている。このEGR通路23の下流端は、吸気絞り弁14より下流側位置で吸気通路10に接続されている。また、EGR通路23の下流側寄りの位置には、開度調整可能な負圧作動式の排気還流量調整弁(EGR弁)24が設けられている。この実施形態では、排気通路20の排気の一部が、EGR弁24により流量調整されながら、排気通路10に還流されるように構成され、このEGR弁24と、EGR通路23とにより排ガス還流(EGR)手段33が構成されている。
【0031】EGR弁24は、図示しない弁本体がスプリングによって閉方向に付勢されている一方、ダイヤフラム24aにより開方向に作動されて、EGR通路23の開度をリニアに調整するものである。すなわち、ダイヤフラム24aには、負圧通路27が接続され、この負圧通路27が負圧制御用の電磁弁28を介してバキュームポンプ(負圧源)29に接続されていて、その電磁弁28が後述のECU35からの制御信号によって負圧通路27を連通または遮断することにより、EGR弁駆動負圧が調整され、EGR弁24が開閉作動されるように構成されている。また、EGR弁24の弁本体の位置を検出するリフトセンサ26が設けられている。
【0032】各燃料噴射弁5、高圧供給ポンプ8、吸気絞り弁14、EGR弁24、およびターボ過給機25などは、コントロールユニット(Engine Control Unit:ECU)35からの制御信号によって作動するように構成されている。
【0033】一方、ECU35は、圧力センサ6aの出力信号、クランク角センサ9の出力信号、エアーフローセンサ11の出力信号、水温センサ18の出力信号、EGR弁24のリフトセンサ26の出力信号、車両の運転者による図示しないアクセルペダルの操作量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ32からの出力信号などが入力されるように構成されている。
【0034】この実施形態では、ECU35は、エンジンの運転を制御するものであり、圧縮行程上死点の近傍の所定時期に燃料噴射弁5から燃料が噴射される主噴射を制御する主噴射制御と、主噴射による燃焼が終了した時期に基づいて、燃料噴射弁5から噴射された追加の燃料が主噴射による燃焼が終了した時期(即ち、主噴射による熱発生率が略0以下となったとき)に燃焼を開始するように、後噴射の噴射時期を制御する後噴射制御と、主噴射に所定間隔だけ先立って予混合燃焼を行わせるために燃料噴射弁5から燃料が噴射されるパイロット噴射を制御するパイロット噴射制御等を行う噴射制御手段36と、EGR弁24を制御して排気還流量を制御するEGR制御手段37とを備えている。即ち、本実施形態の噴射制御手段36は、主噴射制御手段と後噴射制御手段とパイロット噴射制御手段との機能を有する。
【0035】次に、ECU35において実行される燃料噴射制御について、図2のフローチャートに沿って説明する。
【0036】まず、スタート後のステップS1で、クランク角センサ9からクランク角信号、アクセル開度センサ32からのアクセル開度、エアフローセンサ11からの吸入空気量などのデータが入力される。次に、ステップS2で、アクセル開度から求められた目標トルクTrとクランク角信号から求められたエンジン回転数Neとに基づいて設定されている基本噴射量マップから、基本の燃料噴射量Qbを読み込むとともに、その噴射時期Ibを予め設定されているマップから読み込む。
【0037】次に、ステップS3で、後噴射の基本の噴射量Qfuおよび噴射時期Ifuが設定される。後噴射の噴射量Qfuおよび噴射時期Ifuは、目標トルクTrとエンジン回転数Neに応じた量が予め設定されているマップから読み出して設定される。
【0038】このマップにおいて、後噴射の噴射量Qfuは、主噴射による燃焼によって発生する煤が所定量以上となる運転状態のときには、煤の量が所定量未満のときよりも後噴射による燃料噴射(量又は率)を増大させ、煤の発生を抑制するように設定されている。ここで、後噴射による燃料噴射量とは後噴射によって噴射される燃料の絶対量を指し、後噴射による燃料噴射率とは後噴射の噴射量の主噴射の噴射量に対する比率を指す。
【0039】本実施形態では、後噴射の基本の噴射量Qfuは、図3のマップに示されているように、低回転・低負荷領域、全負荷領域等の周辺領域から、斜線で示された高回転(例えば2500rpm)高負荷領域(Z領域)に向かって徐々に増大していくように設定されている。従って、エンジンの運転状態が高回転・高負荷のときには、後噴射による燃料噴射量Qfuが他の運転状態に比して増大させられる。
【0040】本実施形態では、主噴射の噴射量に対する後噴射の噴射量の割合が、低回転低負荷時には10〜20%とされており、高回転高負荷時には20〜50%以上に増加させられる。
【0041】また、変型例として、高回転高負荷時以外の煤が多くなる領域、例えば、A/Fリッチ時、パイロット噴射実行時、主噴射リタード時等にも、後噴射による燃料噴射量Qfuを他の運転状態に比して増大させてもよい。
【0042】更に、煤の発生状態とは無関係に後噴射の噴射量Qfuを設定するマップを使用して、煤噴射の噴射量Qfuを設定してもよい。また、アイドリング等の低回転・低負荷時には後噴射を実行せず、低回転・低負荷時以外の領域で後噴射を実行するような構成でもよい。さらに、定常運転時には後噴射量が0となるマップを使用し、所定の加速時にのみ、0である後噴射量に後述するような所定値を加え、後噴射を実行するような構成でもよい。
【0043】後噴射の噴射時期Ifuは、主噴射による熱発生率が略0以下となったとき(主噴射による燃焼が終了したとき)に後噴射による燃料の燃焼が開始されるように、後噴射の着火遅れ(0.4〜0.7ms)と、無効噴射時間とを考慮して、マップ上に設定されている。このように設定することにより、熱発生率が略0以下となったとき、即ち、燃焼室内に主噴射された燃料が予混合燃焼した後に生じる拡散燃焼が終了したときに、後噴射による燃料の燃焼が開始されることになる。このため、燃焼室4内に存在する煤と酸素との混合が促進された状態で、後噴射による燃焼が開始することになり、煤の発生が低減すると考えられる。
【0044】また、主噴射による熱発生率が略0以下となった時点付近(クランク角にして、好ましくは±10°、より好ましくは±5°の範囲内)で後噴射による燃焼が開始するように、後噴射の噴射時期を設定してもよい。
【0045】ここで、熱発生率dQ/dθは、「内燃機関講義」(長尾不二夫著、株式会社養賢堂)によれば、下記の式(1)のように表わされる。
【0046】
dQ/dθ=A/(K(θ)−1)×[V(θ)・(dP(θ)/dθ)+K(θ)・P(θ)・(dV(θ)/dθ)]…(1)
ここで、Aは熱の仕事当量、K(θ)は比熱比、V(θ)は行程容積、P(θ)は筒内圧力、θはクランク角である。
【0047】小野測器株式会社製の燃焼解析装置CB566のマニュアルによれば、上記比熱比K(θ)は、下記式(2)〜(5)に基づいて表される。
【0048】
(θ)=Cp/Cv…(2)
Cp=ap+b(T(θ)/100)+c(T(θ)/100)2+d(100/T(θ)…(3)
Cv=Cp−(A・Ro)/M…(4)
(θ)=(P(θ)・V(θ))/29.27・G…(5)
ここで、Cpは定圧比熱、Cvは定容比熱、Roはガス定数、Mは空気の分子量、T(θ)はガス温度、Gはガス重量、ap、b、c、dはその他の定数である。
【0049】上記式(2)〜(5)より、式(1)で示す熱発生率dQ/dθは、筒内圧力P(θ)と行程容積V(θ)との関数f(P(θ)、V(θ))になる。また、上記行程容積V(θ)を、ボア径BおよびストロークSに基づいて表すと、下記式(6)に示すようになるため、上記熱発生率dQ/dθは、下記式(7)に示すようになる。
【0050】
(θ)=(π・B2S/8)・(1−cosθ)…(6)
dQ/dθ=[f(P(θ+Δθ)、V(θ+Δθ))−f(P(θ)、V(θ))]/Δθ…(7)
従って、クランク角度毎の筒内圧力データがあれば、これに基づいて、上記熱発生率を計算することができる。本実施形態では、このようにして求めた熱発生率から、拡散燃焼の終了時点(即ち熱発生率が略0以下になる時点)を算出し、この終了時点から後噴射の着火遅れ時間等の遅れ分だけ前の時点を後噴射の噴射時期Ifuとしたマップを用いている。
【0051】拡散燃焼の終了時期は、エンジンの運転状態に応じて変化し、エンジン負荷および回転数が上昇するほど、拡散燃焼の終了時期が遅れる傾向がある。例えば、エンジン回転数が2000rpm、平均有効圧力Peが0.57Mpaである中回転中負荷時には、上述したよう手法で算出した結果のグラフである図4(b)に示されるように、ピストンの圧縮上死点近傍で主噴射された燃料が予混合燃焼することによる熱発生Yと、ほぼ同程度の拡散燃焼による熱発生Kが生じ、圧縮上死点後の約35°(CA)より着火遅れτf2(約0.5ms)だけ遅れた時点t2で拡散燃焼が終了する。
【0052】また、エンジン回転数が2500rpm、平均有効圧力Peが0.9Mpaである高回転高負荷時には、図4(c)に示されるように、予混合燃焼による熱発生Yに比べ、かなり長期にわたり拡散燃焼による熱発生Kが生じ、圧縮上死点後の約48°(CA)より着火遅れτf3(約0.7ms)遅れたかなり遅い時点t3で拡散燃焼が終了することがわかる。
【0053】また、エンジン回転数が1500rpm、平均有効圧力Peが0.3Mpaである低回転低負荷時には、図4(a)に示されるように、燃料の予混合燃焼と拡散燃焼を熱発生によって区別することは困難であるが、圧縮上死点後の約30°(CA)より着火遅れτf1(約0.6ms)遅れたの比較的早い時点t1で拡散燃焼が終了することがわかる。
【0054】したがって、この拡散燃焼の終了時点の近傍、即ち、低回転低負荷時には圧縮上死点後の25乃至35°(CA)で、中回転中負荷時には圧縮上死点後の33乃至40°(CA)で、高回転高負荷時には圧縮上死点後の45乃至48°(CA)で、後噴射を実行するように後噴射時期を設定することが好ましい。
【0055】このことは、低回転低負荷、中回転中負荷および高回転高負荷のそれぞれにおける、後噴射時期と煤発生量との関係を実験したグラフである、図5(a)、(b)、(c)からも明らかである。
【0056】本実施形態では、図4のニードルリフト量で示すように、低回転低負荷時には圧縮上死点後の30°(CA)で、中回転中負荷時には圧縮上死点後の35°(CA)で、高回転高負荷時には圧縮上死点後の48°(CA)で、後噴射が実行されるように後噴射時期を設定し、それぞれの運転状態で拡散燃焼が終了するt1、t2、およびt3で後噴射による燃焼を開始させ、図4に点線で示される熱発生が生じるようにしている。
【0057】これら以外の運転状態においても、拡散燃焼が終了した時点で、後噴射による燃焼が開始するように、後噴射の噴射時期がマップ上に設定されている。
【0058】図6は、後噴射量(主噴射に対する割合)と煤発生量の関係を示すグラフである。エンジン回転数1500rpm、平均有効圧力Pe0.3MPaの低回転低負荷状態で、燃料の主噴射による拡散燃料が終了した時点t1で後噴射による燃焼が開始するように圧縮上死点後30°(CA)で後噴射を行い、後噴射量の主噴射量に対する比率(P/T)を10〜45%に範囲で変化させて煤の発生量を測定する実験を行ったところ、図6(a)に実線で示されるように、後噴射の比率(P/T)の増大に応じて煤発生量が減少した。これに対して、拡散燃焼終了前の時点で後噴射による燃焼が開始するように圧縮上死点後8°で後噴射を行った場合には、図6(b)に点線で示されるように、後噴射量の比率(P/T)の増大に応じて煤発生量が増加した。
【0059】また、エンジン回転数2000rpm、平均有効圧力Pe0.57MPaの中回転中負荷状態で、燃料の主噴射による拡散燃料が終了した時点t2で後噴射による燃焼が開始するように圧縮上死点後35°(CA)で後噴射を行う同様の実験を行ったところ、図6(b)に実線で示されるように、後噴射の比率(P/T)の増大に応じて煤発生量が減少し、拡散燃焼終了前の時点で後噴射による燃焼が開始するように圧縮上死点後20°で後噴射を行った場合には、図6(b)に点線で示されるように、後噴射量の比率(P/T)が増大しても煤発生量の大きな変化が見られなかった。
【0060】さらに、エンジン回転数2500rpm、平均有効圧力Pe0.9MPaの高回転高負荷状態で、燃料の主噴射による拡散燃料が終了した時点t3で後噴射による燃焼が開始するように圧縮上死点後48°(CA)で後噴射を行う同様の実験を行ったところ、図6(c)の実線で示されるように、後噴射の比率(P/T)の増大に応じて煤発生量が減少し、拡散燃焼終了前の時点で後噴射による燃焼が開始するように圧縮上死点後20°で後噴射を行った場合には、図6(c)に点線で示されるように、後噴射量の比率(P/T)が増大しても煤発生量の大きな変化が見られなかった。
【0061】このことから、燃料の主噴射による拡散燃料が終了した時点に後噴射による燃焼が開始するように後噴射を行うと、後噴射による燃料噴射量Qfuを増加させることにより、煤の発生量が減少することがわかる。
【0062】図7は、後噴射量の主噴射量に対する比率(P/T)と燃費率との関係を示すグラフである。図7(a)、(b)、(c)は、それぞれ、図6(a)、(b)、(c)と同様の低回転低負荷、中回転中負荷、および、高回転高負荷で、後噴射量の主噴射量に対する比率(P/T)を10〜45%に範囲で変化させて測定した燃費率のグラフであり、図6と同様に、実線は、燃料の主噴射による拡散燃料が終了した時点t1に後噴射による燃焼が開始するように、それぞれ、圧縮上死点後30°、35°、48°(CA)で後噴射を行った結果を示し、点線は、拡散燃焼終了前の時点で後噴射による燃焼が開始するように、それぞれ、圧縮上死点後8°、20°、20°で後噴射を行った結果を示す。
【0063】図7(a)、(b)、(c)に実線で示されているように、燃料の主噴射による拡散燃料が終了した時点に後噴射による燃焼が開始するように後噴射を行う場合には、後噴射の主噴射に対する比率の増加に伴って燃費が悪化する。しかし、上記実施形態では、低回転低負荷および中回転中負荷時には、後噴射量の主噴射量に対する比率(P/T)を約20%以下としているので、この領域での燃費の悪化は抑制されている。
【0064】次に、ステップS4に進み、パイロット噴射の噴射量Qpと、噴射時期Ipとが、設定される。本実施形態では、パイロット噴射の噴射量Qpは、例えば、低負荷時の主噴射量Qbの30乃至50%に範囲内で決定された固定値である。一方、噴射時期Ipは、目標トルクTrおよびエンジン回転数Neに基づいて、所定のマップから引き出される。
【0065】図8は、本実施形態のパイロット噴射の噴射時期Ip設定用マップ(b)と、後噴射の噴射量設定マップ(a)との関係を示す図面である。この図面では、パイロット噴射の噴射時期Ipを、パイロット噴射と主噴射との差(進角:クランクアングル)で示している。本実施形態のパイロット噴射の噴射時期Ipは、図8(b)に実線で示されているように、後噴射を行わない場合のパイロット噴射の噴射時期(点線)比べて、主噴射との間隔が短くなるように設定されている。
【0066】パイロット噴射は、主噴射に先立って一定量の燃料を噴射し燃焼室内で予混合燃焼を生じさせ、主噴射による燃焼時の騒音(爆発音)の低下を図らんとするものであり、その噴射時期が主噴射の噴射時期に近いほうが騒音低下の効果が大きいことが知られている。しかしながら、パイロット噴射を主噴射に近づけると、煤の発生が増加する傾向があるので、特に、煤の発生が顕著な領域、例えば高回転高負荷領域では、煤の発生を抑制を優先するためパイロット噴射の噴射時期を主噴射の噴射時期から離さざるを得なかった。
【0067】これに対し、本実施形態では、後噴射によって煤の発生を抑制しているので、略全ての運転領域で、後噴射を行わない場合よりパイロット噴射の時期を主噴射の近く設定して、騒音の低下を図り、煤発生と騒音との両者を抑制できる。
【0068】また、高回転高負荷の運転領域(Z領域)では、図8(b)に一点鎖線および二点鎖線で示す変型例のように、パイロット噴射の噴射時期をより遅くするような設定をおこなってもよい。これにより、後噴射の噴射増大中(Z領域)には、高回転または高負荷側への運転状態変化に応じたパイロット噴射の噴射時期の遅らせ度合いを、比較的類似している運転状態であるZ領域周辺で後噴射による燃料噴射が増大が行われていない状態での遅らせ度合いより小さくなるように制御する。高回転高負荷の運転領域(Z領域)への過渡領域でて、噴射時期の変動が階段状ではなく連続的に変化しているのは、音質の急激な変化を回避するためである。
【0069】この領域では、後噴射の噴射量(率)が最大とされ煤の発生が最も抑制されるので、煤の発生が多くなる領域(Z領域)であっても、従来では煤の発生抑制を優先するため主噴射から離さざるを得なかったパイロット噴射の噴射時期を、主噴射から離す度合いを減少させ、積極的な騒音低減を可能としている。
【0070】ステップS5で、アクセルセンサ32からの信号に基づいて、アクセル開度αの変化率Δαが所定値Δα0より大きいか否か、即ち、加速状態が所定値より大きいか否かを判定する。ステップS5でYES、即ち、加速状態が所定値より大きいときには、ステップS6でタイマの値Tに1を加算し、ステップS7に進んでタイマの値Tが所定値T0より小さいか否かを判定する。ここで、タイマの値Tが所定値T0より小さいとき(YES)には加速状態の初期であることを意味し、タイマの値Tが所定値T0以上のとき(NO)には加速状態の初期ではないことを意味する。
【0071】ステップS7でYES、即ち、加速状態の初期であると判定されたときには、ステップS8においてステップS3で設定された後噴射の基本の噴射量Qfuに所定値βが加えられ加速初期用の後噴射の噴射量Qfuが設定され、さらに、ステップS9においてステップS4で設定されたパイロット噴射の基本の噴射時期Ipに所定値aが加えられ加速初期用のパイロット噴射の噴射時期Ipが設定されステップS10に進む。
【0072】一方、ステップS7でNO、即ち、加速状態の初期ではないと判定されたときには、ステップS11においてステップS3で設定された後噴射の基本の噴射量Qfuに所定値γが加えられて初期以外の加速時用後噴射の噴射量Qfuが設定され、さらに、ステップS12においてステップS4で設定されたパイロット噴射の噴射時期Ipに所定値bが加えられ初期以外の加速時用後噴射のパイロット噴射の噴射時期Ipが設定され、ステップS10に進む。
【0073】さらに、ステップS5でNO即ち加速度合いが所定値以下であると判定されたときには、ステップS12でタイマTの値が0とされ、ステップS10に進む。
【0074】ステップS11では、ステップS2、S3、S4、S8、S9、S11またはS12で設定された量Qb、Qfu、Qpおよび時期Ib、Ifu、Ipに従って、燃料噴射弁5を作動させられ、燃焼室へのパイロット噴射、主噴射、および後噴射が実行される。
【0075】ここで、上記β、γ、aおよびbには、β>γ、a>bの関係があるの。従って、所定の加速時には、後噴射の噴射量Qfuが多くなり、且つ、パイロット噴射Iqの噴射時期が遅く(リタード)され主噴射との噴射間隔が短くなるが、その加速の初期には、後噴射の噴射量Qfuがより多くなり、さらに、パイロット噴射Iqの噴射時期がより遅く(リタード)され主噴射との噴射間隔が短くなる。従って、所定の加速時には、後噴射の噴射量Qfuの増加により煤発生が抑制され、パイロット噴射Iqのリタードにより騒音が抑制され、さらに、加速初期には、後噴射の噴射量Qfuのより大きな増加により煤発生が効果的に抑制され、パイロット噴射Iqの大きなリタードにより騒音が効果的に抑制される。このように、煤の発生量に応じて後噴射の噴射量Qfuが制御が実行される、煤の発生防止と燃費向上とが両立される。
【0076】本実施形態では、加速時の後噴射の噴射量は、加速前の、主噴射に対する後噴射の噴射量比に対し5〜20%程度増量される。
【0077】次に、ECU35の排気還流制御手段37において実行されるEGR制御を、図9のフローチャートに沿って説明する。
【0078】まず、ステップS14で、エンジン回転数、アクセル開度等のデータが入力され、ステップS15に進み、アクセル開度とエンジン回転数とに基づいて、例えば図10に示されているような予め設定されたマップから、エンジンの運転状態に対応した基本目標新気量Airbを設定する。これにより、高回転高負荷側になるほど、EGR量(弁開度)が小さくなるように設定されることになる。尚、図10の例では、斜線で示されたアイドル領域では、エンジンの中負荷時よりも基本目標新気量Airbが多くなるように設定されている。これにより、アイドル状態からの高回転高負荷領域への加速時や、アイドル以外での加速時には、EGR量が減少されることにより、A/Fがリッチになることを抑制でき且つ後噴射量の増量も行われるため、これらの相乗効果により、煤をより減少させることができる。
【0079】次いで、ステップS16で、基準新気量Airrefを基本目標新気量Airbに設定して、ステップS17に進む。ステップS17では、今回の基準新気量Airref(今回)から前回の基準新気量Airrefにεを乗じた値を減じて、さらに、(1−ε)で除することにより目標新気量Airjを求める。これは、所謂一次進み補正であり、このような処理によれば、新気の吸入遅れが補正されるため、加速度合いが所定値より大きく後噴射制御手段による燃料噴射が増大されているときには、EGRの減少遅れがないよう、早急かつ積極的に、EGRが減少させられ、空燃比がリーン側に移行し、煤発生が低減することになる。尚、εは、EGR弁から吸気経路を介して燃焼室に至る吸気管形状によって定まる係数である。
【0080】さらに、ステップS18で、この目標新気量Airjから、エアフローセンサ11での検出した値に基づいた実新気量Airを減算して、ΔAirを得る。なお、新気量は、エアフローセンサと吸気圧センサ10aとにより算出される。この実施形態では、逆流を検出できるエアフローセンサ11を使用している。このようなエアフローセンサによれば、低吸入空気量時にEGRによる脈動が検出でき、この脈動に基づいて、新気量を正確に算出することができる。
【0081】次いで、ステップS19に進み、ΔAirにPID制御を行って、EGR量を決定し、ステップS20で、このEGR量に基づいて、EGR弁を駆動させ、EGRを実行する。
【0082】本発明は、上記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された技術事項の範囲内で種々の変更又は変形が可能である。
【0083】例えば、上記実施形態では、アクセル開度αの変化率Δαに基づいて加速状態が所定値より大きいか否かを判定していた(図2のS5、S6)が、図11のフローチャートのS6’、S7’に示されているように、エアフローセンサの検出値に対し所謂一次遅れ補正を行って算出した新気変化量を考慮した実際の新気量(Airi)に基づいて、加速状態が所定値より大きいか否かを判定してもよい。
【0084】この構成では、ステップS4でパイロット噴射の量及び時期を設定した後、ステップS6’で、吸気系の伝達関数によって定まる係数θを今回の検出された実新気量Airに乗じた値に、検出された前回の実新気量Airに(1−θ)を乗じた値を加えた値を、エンジンに実際に吸入される新気量Airiとし、(Airi=θAir(今回)+(1−θ)Air(前回))
さらに、Air(今回)から新気量Airi(前回)を引いた値を、新気変化量(DAiri)と推定している。
【0085】さらに、ステップ7’で、新気変化量(DAiri)が所定の新気変化量(DAir0より大きいか否かを判定し、YES、即ち、大きい場合には加速状態が所定値より大きいとしてステップS8に進み、NO、即ち、小さい場合には加速状態が所定値より小さいので、そのままステップS10に進む。なお、この構成では、ステップS8、S9での係数β、aを上記実施形態の係数β、aとは異なった値にしてもよい。
【0086】また、上記実施形態では、加速初期か否かに応じて、パイロット噴射の噴射時期Ipに異なった係数を加え、加速初期にはパイロット噴射の噴射時期をより大きく遅らせる制御を行っていた(図2のS9、S12)が、図12のフローチャートのS9’、S12’に示されているように、加速初期か否かに応じて、パイロット噴射の噴射量Qpに異なった係数を加え、加速初期にはパイロット噴射の噴射量をより多くする制御を行っても良い。
【0087】この構成では、ステップS7でYES、即ち、加速状態の初期であると判定されたときには、ステップS9’において、ステップS4で設定されたパイロット噴射の噴射量Qpに所定値Qpaが加えられる。一方、ステップS7でNO、即ち、加速状態の初期ではないと判定されたときには、ステップS12’において、ステップS4で設定されたパイロット噴射の噴射量Qpに所定値Qpbが加えられる。ここで、Qpa>Qpbの関係があるので、加速状態の初期には、パイロットの噴射量Qpがより多くなり、騒音がより効率的に抑制される。また、図2のS9、S12の処理と、図12ののS9’、S12’の処理の両方を行う構成であってもよい。
【0088】例えば、上記実施形態は、EGR制御、パイロット噴射を行うディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置であったが、本発明は、これらの一方又は両方を実行しない燃料噴射制御装置であってもよい。
【0089】また、上記実施形態では、パイロット噴射、主噴射、後噴射は、それぞれ、一回だけ実行されるものとしていたが、本発明は、これらが、多段噴射であるものにも適用できる。
【0090】
【発明の効果】以上のように、本件発明によれば、燃費の悪化を抑制しつつ排気ガス中の煤を量を低減させることができるディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置が提供される。
【出願人】 【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
【出願日】 平成12年12月1日(2000.12.1)
【代理人】 【識別番号】100059959
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 稔 (外10名)
【公開番号】 特開2002−168142(P2002−168142A)
【公開日】 平成14年6月14日(2002.6.14)
【出願番号】 特願2000−366777(P2000−366777)