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【発明の名称】 内燃機関
【発明者】 【氏名】伊藤 敏雄

【要約】 【課題】簡便な構造でピストン内部のオイル通路に確実にエンジンオイルを循環させると共に、エンジンオイルによる冷却効果を確実に得ることのできる内燃機関を提供する。

【解決手段】本発明の内燃機関は、シリンダ、ピストン1、コネクティングロッド2、クランクシャフト及びピストンピン4とを備えているもので、ピストン1の内部にエンジンオイルを循環させるオイル通路8が形成され、ピストンピン4がコネクティングロッド2に固定され、ピストン1が所定位置にあるときにピストン1の下面からピストンピン4を貫通してオイル通路8に達するオイル供給路9が形成され、シリンダの下方にピストンが所定位置にあるときのオイル供給路9に向けてオイルを噴射する噴射ノズルが配設されており、ピストン1の往復運動に伴ってオイル供給路9が開通・閉鎖されることを特徴としている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 シリンダと、前記シリンダ内を往復運動するピストンと、前記ピストンの往復運動を回転運動に変換するコネクティングロッド及びクランクシャフトと、前記ピストンと前記コネクティングロッドとを連結するピストンピンとを備えた内燃機関において、前記ピストンの内部にエンジンオイルを循環させるオイル通路が形成され、前記ピストンピンが前記コネクティングロッドに固定され、前記ピストンが所定位置にあるときにピストン下面から前記ピストンピンを貫通して前記オイル通路に達するオイル供給路が前記ピストン内部及び前記ピストンピン内部に形成され、前記シリンダの下方に前記ピストンが前記所定位置にあるときの前記オイル供給路に向けてオイルを噴射する噴射ノズルが配設されており、前記ピストンの往復運動に伴って前記オイル供給路が開通・閉鎖されることを特徴とする内燃機関。
【請求項2】 前記オイル通路が環状に形成され、前記オイル供給路が前記ピストンピンの一端側に形成されており、前記ピストンピンの他端側に、前記ピストンが前記所定位置にあるときに前記オイル通路から前記ピストンピンを貫通して前記ピストン下面に達するオイル排出路が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】 前記所定位置が、ピストン上死点及び下死点であることを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ピストンの冷却を効果的に行うことのできる構造を有する内燃機関に関する。
【0002】
【従来の技術】一般的なレシプロエンジン(内燃機関)ではシリンダ内の爆発によってピストンを往復運動させ、このピストンの往復運動をコネクティングロッド及びクランクシャフトによって回転運動に変換している。このようなエンジンにおいては、各部の冷却は重要な意味を持つ。特にピストンの温度が高温となるディーゼルエンジンなどでは、図4及び図5に示されるような機構を用いてピストンの冷却を行っている。
【0003】図4及び図5に示される機構においては、ピストン101の内部に環状のオイル通路(クーリングチャンネル)108が形成されると共に、ピストン101の下面からクーリングチャンネル108に達する一対のオイル供給路109とオイル排出路110とが形成される。また、シリンダ100の下方にはオイル供給路に対してオイルを噴射する噴射ノズル(オイルジェット)111も配設される。このような構成とすることにより、ピストン101の内部のクーリングチャンネル108にエンジンオイルを循環させて、エンジンオイルによってピストン101を冷却する。なお、図4中にはピストン101とピストンピンとの間にエンジンオイルを供給して潤滑を促進するためのオイル供給孔112も図示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】図4及び図5に示される機構においては、ピストン101が下死点にあるときにクーリングチャンネル108にエンジンオイルが供給される。しかし、ピストン101が下死点から上昇する際に、慣性力によってエンジンオイルがオイル供給路109やオイル排出路110から下方に排出されやすく、エンジンオイルがクーリングチャンネル108内を充分に循環せずに冷却効率が悪化することが懸念されていた。
【0005】このような問題を解決するものとして、特開2000-54816号公報に記載のピストン冷却機構も提案されている。上記公報に記載の冷却機構においても、エンジンオイルをクーリングチャンネルに供給するようになされているが、コネクティングロッドの内部やピストンピンの内部に複雑な形態のオイル通路を形成させており、上記公報に記載の冷却機構は製造が困難で製造コストもかかるものであった。
【0006】また、上記公報に記載の冷却機構においては、コネクティングロッドの内部やピストンピンの内部に複雑な形態のオイル通路を形成させるので、上記公報に記載の冷却機構は耐久性への悪影響も懸念されるものであった。さらに、上記公報に記載の冷却機構においては、エンジンオイルの浸潤のみでエンジンオイルを循環させるので、上記公報に記載の冷却機構は充分な冷却効果を得られないことも懸念されるものであった。
【0007】本発明の目的は、簡便な構造でピストン内部のオイル通路に確実にエンジンオイルを循環させると共に、エンジンオイルによる冷却効果を確実に得ることのできる内燃機関を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の内燃機関は、シリンダと、シリンダ内を往復運動するピストンと、ピストンの往復運動を回転運動に変換するコネクティングロッド及びクランクシャフトと、ピストンとコネクティングロッドとを連結するピストンピンとを備えているもので、ピストンの内部にエンジンオイルを循環させるオイル通路が形成され、ピストンピンがコネクティングロッドに固定され、ピストンが所定位置にあるときにピストン下面からピストンピンを貫通してオイル通路に達するオイル供給路がピストン内部及びピストンピン内部に形成され、シリンダの下方にピストンが所定位置にあるときのオイル供給路に向けてオイルを噴射する噴射ノズルが配設されており、ピストンの往復運動に伴ってオイル供給路が開通・閉鎖されることを特徴としている。
【0009】請求項2に記載の内燃機関は、請求項1に記載の発明において、オイル通路が環状に形成され、オイル供給路がピストンピンの一端側に形成されており、ピストンピンの他端側に、ピストンが所定位置にあるときにオイル通路からピストンピンを貫通してピストン下面に達するオイル排出路が形成されていることを特徴としている。
【0010】請求項3に記載の内燃機関は、請求項1又は2に記載の発明において、上述した所定位置が、ピストン上死点及び下死点であることを特徴としている。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明の内燃機関の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1〜3に、本発明の内燃機関の一実施形態におけるピストン周辺の斜視図を示す。
【0012】図1には、本実施形態の内燃機関はディーゼルエンジンで、そのピストン1は、上面中央に燃焼を効果的に行わせるための凹部を有するものであるが、全体の形態は通常の一般的なピストンと変わるところはない。ピストン1は、全体が円柱形の形態を有しており、その内部はコネクティングロッド2の小端部を収容するために下方からえぐられている。ピストン1の外周面の上部には、一般的なピストンが有している複数のリング溝3が形成されており、ピストンリングが填め込まれる。
【0013】ピストン1の側面には、反対側の側面まで貫通するピン挿通孔5が形成されている。ピン挿通孔5は、ピストンピン4を挿通させるためのもので、ピストン1の内部空間と連通している。ピストン1の内部では、ピン挿通孔5を形成させるための一対のボス部6が互いに対向するように形成されている。本実施形態のピストンピン4は、コネクティングロッド2の小端部に形成されたリング部7に圧入され、コネクティングロッド2に対して固定される。
【0014】ピストン1の内部には、上述したピストン1の上面に形成された凹部を囲むように、環状のクーリングチャンネル(オイル通路)8が形成されている。また、図1に示されるように、ピストン1が上死点又は下死点にあるときに、ピストン1の下面からクーリングチャンネル8まで、ピストンピン4を貫通するオイル供給路9が形成されている。さらに、シリンダ(図示せず)内のピストン1の下方には、オイル供給路9の開口部に向けてエンジンオイルを噴出する、図5に示されるようなオイルジェット(噴射ノズル:図1〜図3には図示せず)が配設されている。
【0015】オイル供給路9の開口部は、噴出されたエンジンオイルをその内部に導入しやすくするため、テーパー状に拡径されている。このように、オイル供給路9は、一方のボス部6近傍のピストン1の下面からピストンピン4の一端を貫通して形成される。これに対して、オイル排出路10は、他方のボス部6近傍のピストン1の下面からピストンピン4の他端を貫通して形成される。オイル排出路10は、オイル供給路9と同様の形態を有しており、ピストン1が上死点又は下死点にあるときに、クーリングチャンネル8からピストン1の下面まで、ピストンピン4を貫通して形成されている。
【0016】オイル供給路9とオイル排出路10の中間部分は、ピストンピン4の長さ方向に対して直角な方向に形成されており、互いに平行である。また、それらのクーリングチャンネル8との連通位置は、環状のクーリングチャンネル8の中心に対してほぼ180°離れた場所に形成されている。ピストンピン4は、コネクティングロッド2に対して固定されるため、ピストン1が上下運動することによってボス部6の中で回転する。ピストンピン4のボス部6内部での回転に伴って、オイル供給路9及びオイル排出路10は開通・閉鎖される。
【0017】本実施形態では、ピストン1が所定位置、即ち、上死点又は下死点にあるときに、オイル供給路9とオイル排出路10とはそれぞれ開通状態となり、クーリングチャンネル8の内部にエンジンオイルを供給、あるいは、クーリングチャンネル8内部のエンジンオイルを排出することができる状態となる。一方、ピストン1が所定位置、即ち、上死点又は下死点にないときは、オイル供給路9とオイル排出路10とは遮断状態となり、クーリングチャンネル8の内部にエンジンオイルは保持された状態となる。
【0018】以下、ピストン1の動きに伴うピストン1の冷却について、以下に説明する。まず、ピストン1が下死点に来たとき、オイル供給路9とオイル排出路10とは開通状態となり、かつ、オイルジェットからオイル供給路9に対してオイルが噴出される。この結果、ピストン1の熱を受け取ったクーリングチャンネル8内のエンジンオイルがオイル排出路10から排出されつつ、新たなエンジンオイルがオイル供給路9からクーリングチャンネル8内に供給される。なお、オイルジェットからは、内燃機関自体の出力で駆動されるオイルポンプが発生する油圧によってエンジンオイルが常時噴出されている。
【0019】ピストン1が下死点から上昇するときは、ピストン1に対してピストンピン4が回転してオイル供給路9とオイル排出路10とが遮断状態となる。このため、新たにクーリングチャンネル8内に供給されたエンジンオイルは、クーリングチャンネル8から排出されることなく、確実に保持される。そして、ピストン1が上死点に達したときに、オイル供給路9とオイル排出路10とは再度開通状態となるが、ピストン1の移動による慣性力で、クーリングチャンネル8内のエンジンオイルはその内部に留まる。
【0020】そして、ピストン1が上死点から下降する間も、上昇時と同様に、ピストン1に対してピストンピン4が回転してオイル供給路9とオイル排出路10とが遮断状態となる。そして、ピストン1が再度下死点に達したときに、オイル供給路9とオイル排出路10とは開通状態となり、オイルジェットからオイル供給路9に対してオイルが噴出され、オイル排出路10からクーリングチャンネル8内のエンジンオイルが排出される。また、ピストン1が下死点に達したときには、ピストン1の移動による慣性力で、クーリングチャンネル8内のエンジンオイルはオイル排出路10からより一層排出されやすくなる。
【0021】この結果、ピストン1が下死点から上昇して上死点に達し、さらに下降して下死点に達する間に、クーリングチャンネル8内のエンジンオイルはピストン1の熱を吸収する。そして、熱を吸収したクーリングチャンネル8内のエンジンオイルがオイルジェットから噴出されたエンジンオイルによってオイル排出路10から排出されることによって、ピストン1が冷却される。
【0022】ここで、オイル供給路9とオイル排出路10とは、ピストン1とピストンピン4との間の摺動面にエンジンオイルを供給する手段としても機能しており、ピストン運動を円滑に行わせることにも寄与している。なお、4サイクルエンジンなどの場合は、ピストン1が上死点近傍に達しても、シリンダ内で燃焼が行われない場合(排気行程)もあるが、それでもピストン1を冷却する効果はあり、上死点近傍で燃焼が行われる場合は、その燃焼によって発生した熱を直ぐにクーリングチャンネル8内のエンジンオイルに吸熱させることができる。
【0023】このように、本実施形態によれば、ピストン1内部のクーリングチャンネル8にエンジンオイルを確実に循環させ、ピストン1を効率よく冷却することができる。本実施形態においては、クーリングチャンネル8内へのエンジンオイルの供給と、クーリングチャンネル8からのエンジンオイルの排出を、オイルジェットを用いて強制的に行うので、クーリングチャンネル8内のエンジンオイルは確実に循環され、冷却効率が高い。
【0024】また、ピストン1に対するピストンピン4の回転によって、オイル供給路9とオイル排出路10とが開通・遮断されるので、ピストン1が下死点から上昇して再度下死点に戻ってくるまで、エンジンオイルはクーリングチャンネル8内に確実に留まり、ピストン1の熱を確実に吸熱するので、この点からも冷却効率を向上させることができる。
【0025】また、本実施形態においては、ピストン1が上死点と下死点とにあるときに、オイル供給路9とオイル排出路10とは開通状態となるようになされているが、このようにすると、ピストン1の移動に伴う慣性力によって、下死点ではクーリングチャンネル8からのエンジンオイルの排出を促進することができると共に、上死点ではクーリングチャンネル8内のエンジンオイルの抜けを防止することができる。
【0026】さらに、本実施形態によれば、ピストンピン4の回転によって開通・遮断状態となるオイル供給路9及びオイル排出路10を、ピストン1とピストンピン4の一部に形成させるという非常に簡単な構造で実現できる。このため、製造が容易で製造コストの増加はほとんどなく、オイル供給路9及びオイル排出路10の形成による耐久性や強度の低下もほとんどないという利点もある。さらに、従来の冷却機構に対して、オイル供給路9及びオイル排出路10の形成形態以外はほとんど構造変更がないため、容易に実現が可能である。
【0027】本発明の内燃機関は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態においては、比較的熱負荷が大きいとされるディーゼルエンジンに対して適用したと説明したが、ガソリンエンジンに適用してももちろん構わない。また、請求項1に関しては、必ずしもピストンピンによって開閉遮断されるオイル排出路を有していなくても良い。例えば、クーリングチャンネルから外周面にかけて複数の微細孔を放射状に形成し、オイルジェットによってエンジンオイルがオイル供給路に噴射されたときの圧力や、ピストン1の移動に伴う慣性力を利用して、吸熱したエンジンオイルをピストンとシリンダとの摺動面に排出し、ピストン-シリンダ間の潤滑を行うようにしても良い。
【0028】
【発明の効果】請求項1に記載の発明によれば、シリンダ内部に形成されたオイル通路内へのエンジンオイルの供給を、噴射ノズルを用いて強制的に行うので、オイル通路内のエンジンオイルは確実に循環される。このとき、ピストンに対するピストンピンの回転によって、オイル供給路が開通・遮断されるので、エンジンオイルはオイル通路内に確実に留まり、ピストンの熱を確実に吸熱することができる。この結果、ピストン内部のオイル通路にエンジンオイルを確実に循環させて、エンジンオイルに確実に吸熱させ、ピストンを効率よく冷却することができる。
【0029】請求項2に記載の発明によれば、環状のオイル通路に、ピストンピンによって開通・遮断されるオイル供給路に加えて、ピストンピンによって開通・遮断されるオイル排出路をも形成されることで、ピストンが所定位置にないときにはエンジンオイルをさらに確実にクーリングチャンネル内に保持しておくことができる。また、同時に、ピストンが所定位置にあるときは、クーリングチャンネルからのエンジンオイルの排出をより円滑に行うことができ、エンジンオイルの循環効率向上によってピストンの冷却効率を向上させることができる。
【0030】請求項3に記載の発明によれば、ピストンが上死点及び下死点にあるときに、オイル供給路が開通された状態となるので、ピストンの往復運動に伴う慣性力によって、上死点でのオイル通路内からのエンジンオイルの抜けを防止することができる。また、ピストンピン4によって開通・遮断されるオイル排出路も形成されている場合は、下死点でのオイル通路からのエンジンオイルの排出を促進することもできる。
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成12年12月4日(2000.12.4)
【代理人】 【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹 (外1名)
【公開番号】 特開2002−168122(P2002−168122A)
【公開日】 平成14年6月14日(2002.6.14)
【出願番号】 特願2000−368728(P2000−368728)