| 【発明の名称】 |
排気ガス浄化装置、および排気ガスの浄化方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】柳原 弘道
【氏名】黒木 錬太郎
【氏名】加藤 善一郎
【氏名】杉山 敏久
【氏名】辺田 良光
【氏名】白谷 和彦
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| 【要約】 |
【課題】内燃機関の浮遊微粒子を捕集するフィルタの目詰まりを確実に回避する。
【解決手段】内燃機関の排気ガス中の浮遊微粒子をフィルタを用いて捕集する。捕集に際しては、排気ガス中に含まれる炭化水素系化合物および含炭素浮遊微粒子が、濾材に分散された状態で捕集する。該フィルタに捕集されている浮遊微粒子の捕集量が、所定の許容値を越えているか否かを判断して、所定の許容値を超えている場合には、排気ガスの酸素あるいは炭化水素系化合物を増量させる。こうすれば、フィルタ上で炭化水素系化合物および含炭素浮遊微粒子の燃焼が促進されるので、フィルタの目詰まりを回避することが可能となる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 内燃機関の排気ガス中に含まれる含炭素浮遊微粒子を浄化する排気ガス浄化装置において、前記排気ガス中に含まれる炭化水素系化合物および前記含炭素浮遊微粒子を、該排気ガス中の酸素と接触可能に分散して捕集することにより、流入時の温度が該含炭素浮遊微粒子の可燃温度よりも低温の排気ガスを用いて、該捕集した炭化水素系化合物と含炭素浮遊微粒子とを燃焼させる捕集フィルタと、前記捕集フィルタにおける前記含炭素浮遊微粒子の捕集量が、所定の許容値を越えているか否かを判断する捕集量判断手段と、前記含炭素浮遊微粒子の捕集量が前記所定の許容値を超えている場合に、前記捕集フィルタへの酸素の供給量を増量させる酸素供給量増量手段とを備えることを特徴とする排気ガス浄化装置。 【請求項2】 請求項1記載の排気ガス浄化装置であって、前記内燃機関は、排気ガスの一部を排気通路から取り出して吸気通路に還流させる還流通路と、前記還流通路上に設けられて排気ガスの還流を制御する排気ガス還流弁とを備えており、前記酸素供給量増量手段は、前記排気ガス還流弁を制御して、前記排気ガスの還流量を減少させる手段である排気ガス浄化装置。 【請求項3】 請求項1記載の排気ガス浄化装置であって、前記内燃機関は、前記排気ガスの流動エネルギを用いて該内燃機関が吸入する空気量を増量させる過給器を備えており、前記酸素供給量増量手段は、前記過給器の動作状態を制御して、前記内燃機関の吸入空気量を増量させる手段である排気ガス浄化装置。 【請求項4】 請求項3記載の排気ガス浄化装置であって、前記酸素供給量増量手段は、前記排気ガスの流動エネルギを増加させることによって、前記内燃機関の吸入空気量を増量させる手段である排気ガス浄化装置。 【請求項5】 前記排気ガスの温度を上昇させることによって、該排気ガスの流動エネルギを増加させる請求項4記載の排気ガス浄化装置。 【請求項6】 内燃機関の排気ガス中に含まれる含炭素浮遊微粒子を浄化する排気ガス浄化装置において、前記排気ガス中に含まれる炭化水素系化合物および前記含炭素浮遊微粒子を、該排気ガス中の酸素と接触可能に分散して捕集することにより、流入時の温度が該含炭素浮遊微粒子の可燃温度よりも低温の排気ガスを用いて、該捕集した炭化水素系化合物と含炭素浮遊微粒子とを燃焼させる捕集フィルタと、前記捕集フィルタにおける前記含炭素浮遊微粒子の捕集量が所定の許容値を越えているか否かを判断する捕集量判断手段と、前記含炭素浮遊微粒子の捕集量が前記所定の許容値を超えている場合に、前記捕集フィルタへの前記炭化水素系化合物の供給量を増量させる炭化水素系化合物供給量増量手段とを備えることを特徴とする排気ガス浄化装置。 【請求項7】 請求項6記載の排気ガス浄化装置であって、前記内燃機関は、機関出力の要求値に応じて定まる燃料量の過半にあたる主燃料と、残余分の副燃料とを燃焼室内に噴射する方式の機関であり、前記炭化水素系化合物供給量増量手段は、前記主燃料と前記副燃料とを所定値以上の期間を空けて噴射することにより、前記炭化水素系化合物の供給量を増量させる手段である排気ガス浄化装置。 【請求項8】 請求項7記載の排気ガス浄化装置であって、前記炭化水素系化合物供給量増量手段は、前記副燃料を前記主燃料よりも早い時期に噴射することによって、前記炭化水素系化合物の供給量を増量させる手段である排気ガス浄化装置。 【請求項9】 請求項7記載の排気ガス浄化装置であって、前記炭化水素系化合物供給量増量手段は、前記副燃料を前記主燃料よりも遅い時期に噴射することによって、前記炭化水素系化合物の供給量を増量させる手段である排気ガス浄化装置。 【請求項10】 請求項7記載の排気ガス浄化装置であって、前記炭化水素系化合物供給量増量手段は、前記副燃料を増量することによって、前記炭化水素系化合物の供給量を増量させる手段である排気ガス浄化装置。 【請求項11】 請求項1または請求項6に記載の排気ガス浄化装置であって、前記捕集量判断手段は、前記含炭素浮遊微粒子の捕集量が前記所定の許容値を超えているか否かを、前記捕集フィルタの上流側の排気通路における圧力に基づいて判断する手段である排気ガス浄化装置。 【請求項12】 請求項11記載の排気ガス浄化装置であって、前記捕集量判断手段は、前記捕集フィルタの上流側の排気通路における圧力に加えて、下流側の排気通路の圧力に基づいて判断する手段である排気ガス浄化装置。 【請求項13】 請求項11記載の排気ガス浄化装置であって、前記捕集量判断手段は、前記捕集フィルタの上流側の排気通路における圧力に加えて、前記内燃機関の運転条件に基づいて判断する手段である排気ガス浄化装置。 【請求項14】 内燃機関の排気ガス中に含まれる含炭素浮遊微粒子を浄化する排気ガス浄化方法において、前記内燃機関の排気通路内に捕集フィルタを設けて、前記排気ガス中に含まれる炭化水素系化合物および前記含炭素浮遊微粒子を、該排気ガス中の酸素と接触可能に分散した状態で捕集し、前記捕集フィルタに流入する温度が前記含炭素浮遊微粒子の可燃温度よりも低温の排気ガスを用いて、該捕集した炭化水素系化合物と含炭素浮遊微粒子とを燃焼させるとともに、前記捕集フィルタにおける前記含炭素浮遊微粒子の捕集量が所定の許容値を越えているか否かを判断して、前記捕集量が前記所定の許容値を超えている場合に、前記捕集フィルタへの酸素の供給量を増量することを特徴とする排気ガス浄化方法。 【請求項15】 内燃機関の排気ガス中に含まれる含炭素浮遊微粒子を浄化する排気ガス浄化方法において、前記内燃機関の排気通路内に捕集フィルタを設けて、前記排気ガス中に含まれる炭化水素系化合物および前記含炭素浮遊微粒子を、該排気ガス中の酸素と接触可能に分散した状態で捕集し、前記捕集フィルタに流入する温度が前記含炭素浮遊微粒子の可燃温度よりも低温の排気ガスを用いて、該捕集した炭化水素系化合物と含炭素浮遊微粒子とを燃焼させるとともに、前記捕集フィルタにおける前記含炭素浮遊微粒子の捕集量が所定の許容値を越えているか否かを判断して、前記捕集量が前記所定の許容値を超えている場合に、前記捕集フィルタへの前記炭化水素系化合物の供給量を増量することを特徴とする排気ガス浄化方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、内燃機関の排気ガスに含まれる含炭素浮遊微粒子を浄化する技術に関する。 【0002】 【従来の技術】内燃機関、特にディーゼル機関の排気ガス中には、黒煙(スス)などの含炭素浮遊微粒子が含まれており、大気の汚染を防ぐために、排出される微粒子の総量を低減させることが強く要請されている。また、燃焼室内に直接ガソリンを噴射する方式の、いわゆる筒内噴射ガソリン機関からも、運転条件によっては排気ガスとともに含炭素浮遊微粒子が排出される場合があるために、同様の要請が存在する。 【0003】これら内燃機関から排出される含炭素浮遊微粒子を大幅に低減可能性な技術として、機関の排気通路中に耐熱性のフィルタを設け、排気ガスとともに排出される含炭素浮遊微粒子を該フィルタで捕集する技術が提案されている。 【0004】かかる方法を用いて排気ガス中の含炭素浮遊微粒子を捕集すれば、ススなどの大気に排出される微粒子を大幅に低減することが可能となるが、捕集した微粒子は何らかの方法で処理してやらなければならない。捕集した含炭素浮遊微粒子を処理する代表的な手法としては、電気ヒータやバーナなどの補助的手段を用いて、捕集した含炭素浮遊微粒子を定期的に燃焼させる技術(特開平5−296027号)や、機関の排気ガス温度を意図的に上昇させることにより、微粒子を燃焼させる技術(特開2000−161044号)等が提案されている。これら技術を用いれば、捕集した含炭素浮遊微粒子を比較的簡便に処理することができる。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかし、捕集した含炭素浮遊微粒子が、何らかの要因で十分には燃焼しなかった場合、燃え残った微粒子の堆積によってフィルタが目詰まりし易くなる。あるいは、機関の異常等、何らかの要因で含炭素浮遊微粒子の排出量が急増した場合にも、フィルタが目詰まりし易くなる。フィルタが目詰まりしてしまうと、機関性能を低下させるだけでなく、フィルタに機関の排気圧力による過大な力が加わるおそれがあるという問題があった。 【0006】本発明は、従来技術における上述の課題を解決するためになされたものであり、何らかの要因でフィルタが目詰まりし易い条件においても、フィルタの目詰まりを確実に回避可能な技術の提供を目的とする。 【0007】 【課題を解決するための手段およびその作用・効果】上述の課題の少なくとも一部を解決するため、本発明の第1の排気ガス浄化装置は次の構成を採用した。すなわち、内燃機関の排気ガス中に含まれる含炭素浮遊微粒子を浄化する排気ガス浄化装置において、前記排気ガス中に含まれる炭化水素系化合物および前記含炭素浮遊微粒子を、該排気ガス中の酸素と接触可能に分散して捕集することにより、流入時の温度が該含炭素浮遊微粒子の可燃温度よりも低温の排気ガスを用いて、該捕集した炭化水素系化合物と含炭素浮遊微粒子とを燃焼させる捕集フィルタと、前記捕集フィルタにおける前記含炭素浮遊微粒子の捕集量が、所定の許容値を越えているか否かを判断する捕集量判断手段と、前記含炭素浮遊微粒子の捕集量が前記所定の許容値を超えている場合に、前記捕集フィルタへの酸素の供給量を増量させる酸素供給量増量手段とを備えることを特徴とする。 【0008】また、上記の第1の排気ガス浄化装置に対応する本発明の第1の排気ガス浄化方法は、内燃機関の排気ガス中に含まれる含炭素浮遊微粒子を浄化する排気ガス浄化方法において、前記内燃機関の排気通路内に捕集フィルタを設けて、前記排気ガス中に含まれる炭化水素系化合物および前記含炭素浮遊微粒子を、該排気ガス中の酸素と接触可能に分散した状態で捕集し、前記捕集フィルタに流入する温度が前記含炭素浮遊微粒子の可燃温度よりも低温の排気ガスを用いて、該捕集した炭化水素系化合物と含炭素浮遊微粒子とを燃焼させるとともに、前記捕集フィルタにおける前記含炭素浮遊微粒子の捕集量が所定の許容値を越えているか否かを判断して、前記捕集量が前記所定の許容値を超えている場合に、前記捕集フィルタへの酸素の供給量を増量させることを特徴とする。 【0009】かかる第1の排気ガス浄化装置、および第1の排気ガス浄化方法においては、前記捕集フィルタ上の前記含炭素浮遊微粒子の捕集量が所定の許容値を超えている場合に、該捕集フィルタへの酸素の供給量を増量させる。こうすれば、該捕集フィルタ上の前記炭化水素系化合物の燃焼が促進され、延いては含炭素浮遊微粒子の燃焼が促進されるので、該含炭素浮遊微粒子の捕集量が減少する。その結果、捕集フィルタの目詰まりを容易に回避することが可能となる。 【0010】かかる第1の排気ガス浄化装置が適用される内燃機関に、排気ガスの一部を排気通路から取り出して吸気通路に還流させる還流通路と、該還流通路上に設けられて排気ガスの還流を制御する排気ガス還流弁とが設けられている場合には、該排気ガス還流弁を制御して、排気ガスの還流量を減少させることとしても良い。 【0011】排気ガスの還流量が減少すれば、その分だけ内燃機関の燃焼室に流入する吸入空気量が増加して、排気ガス中の酸素量が増加する。従って、かかる方法によれば、前記捕集フィルタへの酸素の供給量を簡便に増加させることが可能となるので好適である。 【0012】かかる第1の排気ガス浄化装置が適用される内燃機関に、排気ガスの流動エネルギを用いて該内燃機関が吸入する空気量を増量させる過給器が備えられている場合には、該過給器の動作状態を制御することによって、該内燃機関の吸入空気量を増量させることとしても良い。 【0013】過給器の動作状態を制御すれば、内燃機関の吸入空気量を簡便に増量させることができ、延いては捕集フィルタへの酸素の供給量を簡便に増加させることが可能となるので好適である。 【0014】かかる第1の排気ガス浄化装置においては、排気ガスの流動エネルギを増加させることによって、前記内燃機関の吸入空気量を増量させることとしても良い。特に、排気ガスの温度を上昇させることによって、流動エネルギを増加させることとしても良い。 【0015】前記過給器は、排気ガスの流動エネルギを用いて内燃機関の吸入空気量を増量させているので、排気ガスの流動エネルギを増加させれば、それだけ吸入空気量を増やすことができる。特に、排気ガスの温度は、例えば燃料の噴射時期を調整することで容易に上昇させることができるので、前記捕集フィルタに供給される酸素量を簡便に増加させることが可能となって好適である。 【0016】従来技術における前述の課題の少なくとも一部を解決するために、本発明の第2の排気ガス浄化装置は次の構成を採用した。すなわち、内燃機関の排気ガス中に含まれる含炭素浮遊微粒子を浄化する排気ガス浄化装置において、前記排気ガス中に含まれる炭化水素系化合物および前記含炭素浮遊微粒子を、該排気ガス中の酸素と接触可能に分散して捕集することにより、流入時の温度が該含炭素浮遊微粒子の可燃温度よりも低温の排気ガスを用いて、該捕集した炭化水素系化合物と含炭素浮遊微粒子とを燃焼させる捕集フィルタと、前記捕集フィルタにおける前記含炭素浮遊微粒子の捕集量が所定の許容値を越えているか否かを判断する捕集量判断手段と、前記含炭素浮遊微粒子の捕集量が前記所定の許容値を超えている場合に、前記捕集フィルタへの前記炭化水素系化合物の供給量を増量させる炭化水素系化合物供給量増量手段とを備えることを特徴とする。 【0017】また、上記の排気ガス浄化装置に対応する本発明の第2の排気ガス浄化方法は、内燃機関の排気ガス中に含まれる含炭素浮遊微粒子を浄化する排気ガス浄化方法において、前記内燃機関の排気通路内に捕集フィルタを設けて、前記排気ガス中に含まれる炭化水素系化合物および前記含炭素浮遊微粒子を、該排気ガス中の酸素と接触可能に分散した状態で捕集し、前記捕集フィルタに流入する温度が前記含炭素浮遊微粒子の可燃温度よりも低温の排気ガスを用いて、該捕集した炭化水素系化合物と含炭素浮遊微粒子とを燃焼させるとともに、前記捕集フィルタにおける前記含炭素浮遊微粒子の捕集量が所定の許容値を越えているか否かを判断して、前記捕集量が前記所定の許容値を超えている場合に、前記捕集フィルタへの前記炭化水素系化合物の供給量を増量させることを特徴とする。 【0018】かかる本発明の第2の排気ガス浄化装置および第2の排気ガス浄化方法においては、前記捕集フィルタ上の前記含炭素浮遊微粒子の捕集量が所定の許容値を超えている場合に、該捕集フィルタへの前記炭化水素系化合物の供給量を増量させる。こうすれば、該捕集フィルタ上の前記炭化水素系化合物の燃焼が促進され、延いては含炭素浮遊微粒子の燃焼が促進されるので、該含炭素浮遊微粒子の捕集量が減少する。その結果、捕集フィルタの目詰まりを容易に回避することが可能となる。 【0019】かかる第2の排気ガス浄化装置の適用される内燃機関が、機関出力の要求値に応じて定まる燃料量の過半にあたる主燃料と、残余分の副燃料とを燃焼室内に噴射する方式の機関である場合には、前記主燃料と前記副燃料とを所定値以上の期間を空けて噴射することにより、前記炭化水素系化合物の供給量を増量させることとしても良い。 【0020】こうすれば炭化水素系化合物の排出量を簡便に、かつ速やかに増量させることができるので好適である。また、副燃料と主燃料との比率を変更することで、炭化水素系化合物の供給量を容易に調整することが可能となるので好ましい。 【0021】かかる第2の排気ガス浄化装置においては、前記副燃料を前記主燃料よりも所定期間以上早い時期に噴射することによって、前記炭化水素系化合物の供給量を増量させることとしても良い。あるいは、前記副燃料を前記主燃料よりも所定期間以上遅い時期に噴射することによって、前記炭化水素系化合物の供給量を増量させることとしても良い。更には、前記副燃料を増量することによって、前記炭化水素系化合物の供給量を増量することとしても良い。 【0022】こうすれば、前記捕集フィルタへの炭化水素系化合物の供給量を簡便に増量することができるので好ましい。また、副燃料の割合を調整することで、炭化水素系化合物の供給量を簡便に、かつ精度良く調整することが可能となるので好ましい。 【0023】上述した本発明の第1あるいは第2の排気ガス浄化装置においては、前記捕集フィルタの上流側の排気通路における圧力に基づいて、前記含炭素浮遊微粒子の捕集量が前記所定の許容値を超えているか否かを判断することとしても良い。 【0024】前記捕集フィルタでの捕集量が増加すれば、それに伴って該フィルタ上流での排気管内圧力が増加するので、かかる圧力を利用すれば、前記捕集量が前記所定の許容値を超えているか否かを簡便に判断することができるので好ましい。 【0025】かかる排気ガス浄化装置においては、前記捕集フィルタの上流側の排気通路における圧力に加えて、下流側の排気通路の圧力に基づいて、前記捕集量が前記所定の許容値を超えているか否かを判断することとしても良い。 【0026】捕集フィルタ上の浮遊微粒子の捕集量が所定の許容値を超えれば、該捕集フィルタ前後の圧力差が増大するので、上流側での圧力に加えて下流側の圧力に基づいて判断すれば、該フィルタでの捕集量が所定の許容値を超えているか否かを確実に判断することが可能となって好適である。 【0027】かかる排気ガス浄化装置においては、前記捕集フィルタの上流側の排気通路における圧力に加えて、前記内燃機関の運転条件に基づいて、前記捕集量が前記所定の許容値を超えているか否かを判断することとしてもよい。 【0028】内燃機関の運転条件が定まれば、前記捕集フィルタ上の含炭素浮遊微粒子の捕集量が多くなると、該捕集フィルタ上流での排気管内圧力は増加する。このことから、該捕集フィルタ上流での排気管内の圧力に加えて、該内燃機関の運転条件に基づいて判断すれば、前記捕集量が所定の許容量を超えているか否かを確実に検出することができるので好適である。もちろん、内燃機関の運転条件に基づいて判断するために、予め定めておいた所定の運転条件における該捕集フィルタ上流の圧力に基づいて判断することとしても構わない。 【0029】 【発明の実施の形態】本発明の作用・効果をより明確に説明するために、次のような順序に従って、本発明の実施例を説明する。 A.装置構成:A−1.エンジンの構成:A−2.パティキュレートフィルタの概要:A−3.エンジン制御の概要:B.フィルタ再生促進処理:B−1.EGR制御:B−2.過給圧制御:B−3.燃料噴射制御:B−4.変形例:【0030】A.装置構成:以下、本発明の排気ガス浄化装置を、ディーゼルエンジンに適用した実施例について説明する。もちろん、ディーゼルエンジンに限らず、燃料をシリンダ内に直接噴射する方式のガソリンエンジンなど、他の内燃機関に適用することもできる。また、本発明は、車両や船舶搭載用あるいは定置用などのあらゆる内燃機関に適用することが可能である。 【0031】A−1.エンジンの構成:図1は、第1実施例の排気ガス浄化装置を装着したディーゼルエンジン10の概略構成を示した説明図である。ディーゼルエンジン10は、いわゆる4気筒エンジンであり、#1ないし#4の4つの燃焼室を有している。各燃焼室には吸気管12を介して空気が供給され、各燃焼室に設けられた燃料噴射弁14から燃料が噴射されると、燃焼室内で空気と燃料とが燃焼して、排気管16から排気ガスが排出される。 【0032】排気管16の途中には、過給器20が設けられている。過給器20は、排気管16内に設けられたタービン21と、吸気管12内に設けられたコンプレッサ22と、タービン21とコンプレッサ22とをつなぐシャフト23とから構成されている。燃焼室から排出された排気ガスが過給器20のタービン21を回すと、シャフト23を介してコンプレッサ22が回転し、空気を圧縮して各燃焼室内に供給する。本実施例の過給器20にはアクチュエータ70が設けられており、タービン21に排気ガスが流入する部分の開口面積(以下、タービン開口面積と呼ぶ)を変更することが可能となっている。排気ガス流量に応じてタービン開口面積を適切に制御することで、過給器20の効率を向上させることができる。また、タービン21の上流側には、ウエストゲートバルブ72と呼ばれるバイパス弁が設けられている。ウエストゲートアクチュエータ74を用いてウエストゲートバルブ72の開度を調整し、タービン21をバイパスする排気ガスの割合を制御することで、過給器20の性能を制御することも可能となっている。 【0033】コンプレッサ22の上流側にはエアクリーナ26が設けられており、コンプレッサ22はエアクリーナ26から取り入れた空気を圧縮して燃焼室内に供給する。コンプレッサ22で圧縮すると空気の温度が上昇するので、コンプレッサ22の下流には空気を冷却するためのインタークーラ24が設けられており、圧縮した空気をインタークーラ24で冷却してから燃焼室内に供給することも可能である。 【0034】タービン21の上流側の排気管16内には、#1ないし#4の各燃焼室毎にパティキュレートフィルタ100が設けられている。パティキュレートフィルタ100は、排気ガス中に含まれる浮遊微粒子と炭化水素系化合物とを捕集するとともに、該炭化水素系化合物の反応熱を利用して、捕集した浮遊微粒子を比較的低温の排気ガス中で燃焼させることができる。パティキュレートフィルタ100については後述する。 【0035】各パティキュレートフィルタ100の上流側の排気管16と吸気管12とは、EGR通路60でつながっており、排気ガスの一部を吸気管12内に導入可能となっている。EGR通路60に設けられたEGR弁62の開度を調整することで、吸気管12内に導入する排気ガス量を制御することができる。 【0036】燃料供給ポンプ18および燃料噴射弁14は、エンジン制御用ECU30の制御のもとで、適切な量の燃料を適切なタイミングで燃焼室内に噴射する。 【0037】エンジン制御用ECU30は、エンジン回転速度Neや、アクセル開度θacといったエンジンの運転条件を検出し、運転条件に応じて、燃料供給ポンプ18や、燃料噴射弁14、EGR弁62、過給器20などを適切に制御する。また、排気管内圧力を検出して、パティキュレートフィルタ100が目詰まり気味なことを検出した場合には、後述するように、EGR弁62、過給器20、燃料供給ポンプ18、燃料噴射弁14などを制御することにより、フィルタ再生促進処理を行う。従って、本実施例のディーゼルエンジン10では、何らかの要因でフィルタが目詰まりし易い条件においても、フィルタの目詰まりが生じるおそれがない。 【0038】A−2.パティキュレートフィルタの概要:図2は、排気管16に装着されているパティキュレートフィルタ100の外観形状を示す斜視図である。理解を容易にするために、一部分の断面をとって内部構造を拡大して表示している。パティキュレートフィルタ100は、円筒状のケース102と、ケース102内に挿入されて外周をケースに溶接されたエレメント104とから構成されている。エレメント104は、耐熱金属製の不織布106と同じく耐熱金属製の波板108とを重ねて、中心棒110を芯にして円筒状に巻き付けたロール構造となっている。本実施例のパティキュレートフィルタ100で用いるエレメント104は、外径が約55mm、長さが約40mmのものを使用している。もちろん、これら寸法は、ディーゼルエンジンの排気量や排気管16の内径などにあわせて、適宜変更することができる。 【0039】不織布106は波板108とともに巻き付けられているので、不織布106同士の間隔は、波板108によって所定の間隔に保たれており、不織布106と波板108との間には、中心棒110の軸方向に沿って多数の通路が形成されている。エレメント104の両側には、封止板112が溶接されている。封止板112は、不織布106と波板108との間に形成された通路を互い違いに閉塞して、排気ガスが不織布106を通過する構造を形成する。図3を参照して、封止板112により排気ガスが不織布106を通過する構造が形成される様子を説明する。 【0040】図3は、パティキュレートフィルタ100の断面構造を概念的に示す説明図である。尚、図が煩雑になることを防ぐために、図3では、波板108の表示は省略している。図示するように、封止板112は、所定の間隔に保たれて隣接する不織布106の間に形成される通路を、互い違いになるように閉塞する。このため、図中に矢印で示したように、図の左側から排気ガスが流れてくると、封止板112で塞がれていない通路に一旦は流入するが、通路の出口側は封止板112で塞がれている。そこで排気ガスは、図中に太い矢印で示すように、通路側面を構成する不織布106を通って、出口側が塞がれていない通路に抜けていく。こうして排気ガスが不織布106を抜ける際に、排気ガス中に含まれているススなどの含炭素浮遊微粒子を不織布106によって捕集することができる。 【0041】ここで、不織布106は、図4に例示するような所定範囲の諸元を有する鉄系の耐熱合金製不織布が使用されており、このため、含炭素浮遊微粒子や炭化水素系化合物を、排気ガス中の酸素と接触可能に分散した状態で捕集することができる。このように、浮遊微粒子を3次元的に分散した状態で捕集すると、後述するように、捕集した微粒子がある程度の量に達した時点で自然に着火して燃焼させることができる。含炭素浮遊微粒子や炭化水素系化合物が分散した状態で捕集されるメカニズムおよび、分散して捕集することで捕集した含炭素浮遊微粒子が自然に燃焼するメカニズムについては後述する。 【0042】図4中に示す「繊維径」とは、不織布を形成する金属繊維の平均直径を示す。金属不織布は、無数の金属繊維が複雑に絡み合って形成されており、金属繊維の間には、複雑に分岐した3次元的な通路が形成されている。「細孔径」とは、金属繊維間に形成された通路断面の大きさを表す指標であり、等価な断面積を有する円形通路の内径(直径)を示している。「細孔径」の値は、もっとも簡便には、走査型電子顕微鏡で撮影した金属不織布表面あるいは断面の写真に基づいて、目視によって計測することができる。 【0043】尚、上述した本実施例のエレメント104は、エレメント104の両端に封止板112を溶接して形成されているものとして説明したが、以下に説明するように、封止板112を用いない構造としてもよい。 【0044】図5は、封止板を用いない構造のエレメントを備えるパティキュレートフィルタ100の断面図である。図5では、図が煩雑となることをさけるために、波板108の表示は省略している。前述した図3では、不織布106の両端に互い違いに封止板112を溶接したが、封止板を溶接する代わりに、図5に示すように、不織布同士を端部113で互いに溶接してもよい。こうすれば封止板112を省略することができるので、パティキュレートフィルタ100をより簡便に製造することができる。 【0045】尚、上述の図4に示した不織布の諸元はあくまでも例示であって、不織布の諸元は図中に例示された値に限定されるものではない。また、本実施例では、鉄系の耐熱合金製の金属不織布を用いているが、周知の他の耐熱性の金属不織布を用いても構わない。 【0046】上述したように、パティキュレートフィルタ100の不織布106は、排気ガス中の含炭素浮遊微粒子を不織布106の内部に3次元的に分散した状態で捕集することができるので、ある程度の量の微粒子を捕集すると、自然に着火させて微粒子を燃焼させることができる。このため、本実施例のパティキュレートフィルタ100は、意図的に排気ガス温度を上昇させるといった特別な操作を行わずとも、フィルタを自然に再生させることができる。本明細書中では、本実施例のパティキュレートフィルタ100が有するこのような機能を「自然再生機能」と呼ぶ。自然再生機能のメカニズムについては全てが解明されたわけではないが、現時点で推定されるメカニズムについて若干説明する。 【0047】ディーゼルエンジンの排気ガス中には、含炭素浮遊微粒子や炭化水素系化合物が、図6に示すような割合で含まれていることが分かっている。すなわち、おおまかに言えば、ススなどの浮遊微粒子と、燃料に起因する炭化水素系化合物と、潤滑油に起因する炭化水素系化合物とが、ほぼ同じ割合で含まれている。ススなどの浮遊微粒子は、酸素を含んだ排気ガス雰囲気中でも通常は550℃以上にならないと燃焼しないと言われている。これに対して、燃料や潤滑油に起因する炭化水素系化合物は、酸素さえ供給されれば、550℃より低い温度でも何らかの酸化反応が起こり得る。 【0048】本実施例のパティキュレートフィルタ100では、所定範囲の細孔径分布を有する金属不織布106を使用しており、排気ガス中の含炭素浮遊微粒子と炭化水素系化合物とを、不織布内部に3次元的に分散した状態で捕集する。このため、捕集された炭化水素系化合物の一部は、排気ガス中の酸素が十分に供給される状態で捕集されており、排気ガスの温度によってゆっくりとした酸化反応(発熱反応)を開始して、フィルタ温度を次第に上昇させる。この結果、含炭素浮遊微粒子および炭化水素系化合物がある程度フィルタに捕集された時点でフィルタ温度が550℃以上となり、フィルタ上の微粒子と炭化水素系化合物とを一気に燃焼させることができるのである。 【0049】図7は、本実施例のパティキュレートフィルタ100が自然再生を行う様子を概念的に示した説明図である。図7(a)は、ディーゼルエンジン10の排気管16内にパティキュレートフィルタ100が装着されている様子を模式的に示している。図7(b)は、ディーゼルエンジン10を一定条件で運転しながら、フィルタ前後の差圧dPおよびフィルタに流れ込む排気ガス温度Tg、フィルタ温度Tfを計測して得られた結果を概念的に示す説明図である。 【0050】ディーゼルエンジン10の運転を開始すると、排気ガス温度Tgおよびフィルタ温度Tfが直ちに上昇して定常温度に達する。このとき、実際には、フィルタ温度Tfは排気ガス温度Tgよりも高い値となるが、説明を簡明にする観点から、ここでは2つの温度に有意な差は無いものとして説明する。 【0051】パティキュレートフィルタ100が新品の場合、フィルタ前後の差圧dPは初めの間は次第に増加して行くが、やがて一定値に安定する。フィルタ前後の差圧が一定値に安定するのは、本実施例のパティキュレートフィルタ100が、排気ガス中の浮遊微粒子をフィルタ表面だけでなく、フィルタ内部に3次元的に捕集するためである。差圧が安定する値は主にフィルタの設計緒元によって変化するが、代表的には新品時差圧の3倍ないし4倍程度の値となることが多い。説明の便宜上、ディーゼルエンジン10の運転を開始してから、フィルタ前後の差圧が安定するまでの期間を、「第1期」と呼ぶことにする。 【0052】フィルタ前後の差圧が安定した後、ディーゼルエンジン10をしばらく運転していると、排気ガス温度Tgは変化しないにも関わらず、フィルタ温度Tfが少しずつ上昇し始める。フィルタ温度Tfと排気ガス温度Tgとの乖離は次第に大きくなり、ついにはフィルタ温度Tfが550℃前後に達する。この間、ススなどの含炭素浮遊微粒子および炭化水素系化合物がフィルタで捕集されることに伴って、フィルタ前後の差圧dPはごく僅かに増加する傾向にあるが、有意な増加量を計測できない場合もある。 【0053】フィルタ温度Tfが上昇して550℃付近に達すると、フィルタに捕集されたススなどの含炭素浮遊微粒子が燃焼し始め、捕集した微粒子が全て燃焼すると、フィルタ温度Tfは排気ガス温度Tg付近の温度まで速やかに低下する。排気ガス中のススなどが捕集されることによるフィルタ前後での差圧dPの増加を検出可能な場合には、フィルタ上でススなどが燃焼するときに差圧dPの低下を検出することができる。第1期が終了した後に、フィルタ温度Tfが排気ガス温度Tgから次第に乖離していき、再び排気ガス温度Tgに低下するまでの期間を「第2期」と呼ぶことにする。尚、第1期の期間は第2期の期間に比べてかなり短いが、図7では表示上の理由から、第1期の期間を第2期に対して実際よりも長く表示している。 【0054】フィルタに捕集されたススなどが燃焼し終わって、フィルタ温度Tfが排気ガス温度Tg付近の温度に低下しても、しばらくすると再びフィルタ温度Tfが上昇し始め、やがて550℃に達して捕集したススなどが燃焼する。このように、フィルタはいつまでも第2期の状態に保たれて、排気ガス中に含まれるススなどの捕集と燃焼とを繰り返す。以上が、パティキュレートフィルタ100の有する自然再生機能の第1の形態である。 【0055】排気ガス温度Tgが高い条件では、自然再生機能の第2の形態が発現する。図7(c)は、図7(b)の条件に対して排気ガス温度が若干高い(代表的には50℃)条件でディーゼルエンジン10を運転したときの、フィルタ温度Tfおよびフィルタ前後の差圧dPの推移を概念的に示した説明図である。排気ガス温度に限らず、図7(b)の条件に対してスス濃度が若干高くなるように変更した場合にも、同様の結果を得ることができる。 【0056】排気ガス温度Tgが高い条件では、図7(c)に示すように、第2期の終了後、フィルタ温度Tfが排気ガス温度Tg付近まで低下することなく、若干高い温度で安定する。第2期の終了後、フィルタ温度Tfが排気ガス温度Tgよりも高い温度で安定する期間を「第3期」と呼ぶことにする。第3期では、ススなどの捕集と燃焼とが局所的に繰り返されているか、あるいは同時進行的に行われているものと予想される。このように、自然再生機能の第2の形態では、浮遊微粒子の捕集と燃焼とが並行して行われている。 【0057】以上に説明したように、本実施例のパティキュレートフィルタ100は、所定諸元に不織布を使用しているために、排気ガス中の含炭素浮遊微粒子や炭化水素系化合物を分散した状態で捕集することができ、このため、捕集した微粒子を、特別な操作を行うことなく自然に燃焼させることが可能である。パティキュレートフィルタ100がススなどの微粒子を分散した状態で捕集することができるのは、以下に説明するメカニズムによって、微粒子を不織布内部に積極的に取り込みながら捕集するためと思われる。以下、現時点で推定される捕集メカニズムについて、簡単に説明する。 【0058】図8は、耐熱金属製の不織布断面の構造を概念的に示した説明図である。図中の斜線を付した丸印は、それぞれが不織布繊維の断面を示している。不織布は、無数の繊維が複雑に絡み合って形成されていて、内部には複雑に連通し合う3次元的な通路が無数に形成されている。 【0059】図8(a)は、未だ新しい不織布の断面構造を概念的に表示したものである。排気ガスは、上方から下方に向かって流れるものとする。繊維の分布に疎密があるために不織布表面には種々の大きさの開口部が形成されているが、小さな開口部であっても排気ガスの気体分子にとっては充分に大きいので、排気ガスは不織布全面をほぼ均等に通過すると考えられる。図8(a)では、不織布の繊維間を通過する排気ガスを、太い矢印を用いて模式的に表示している。 【0060】排気ガスが不織布を通過すると、排気ガス中に含まれるススなどの微粒子が繊維の間に捕捉されて、次第に不織布表面の開口部が閉塞していく。このため、図8(b)に示すように、不織布表面の小さな開口部はススなどの微粒子で閉塞されてしまい、排気ガスは閉塞されずに残っている比較的大きな開口部に集中する。この結果、不織布を通過する排気ガスの流れは、表面に閉塞されずに残った大きな開口部から始まる流れに集約されていく。図8(b)では、ススなどの微粒子を小さな黒丸で模式的に表示している。 【0061】排気ガスが集中して流れれば、それだけ流速が増加して、通路内に大きな圧力勾配が発生する。この現象を、流れが不織布の繊維と衝突して大きな圧力が発生していると考えてもよい。前述したように、不織布内部に形成されている通路は、複雑に連通し合っているので、集約されて流れる通路の圧力が高くなれば、直ぐに他の通路に分岐していく。このため、不織布前後の差圧は所定値以上に増加することなく一定範囲に保たれる。 【0062】図8(c)は、主流が他の通路に分岐して流れる様子を概念的に示している。このように、不織布内部で排気ガスの流れが分岐する結果、排気ガス中に含まれるススなどの含炭素浮遊微粒子は、不織布の内部全体で捕集されることになる。仮に、不織布内部のある箇所がススで閉塞されたとしても、通路は3次元的に複雑に連通し合っているので、直ぐに他の通路に分岐することが可能である。すなわち、不織布内部では、ある箇所がススなどによって閉塞しても、通路が自動的に切り替わって排気ガスが新たな通路を流れるために、ススなどが分散した状態で捕集されるものと考えられる。 【0063】以上説明したように、タービン21の上流側に設けられたパティキュレートフィルタ100は自然再生機能を有しており、捕集した排気ガス中の浮遊微粒子と炭化水素系化合物とを、特別な操作を行うことなく自然に燃焼させることができる。 【0064】以上説明したように、本実施例のパティキュレートフィルタ100は、捕集した排気ガス中の含炭素浮遊微粒子と炭化水素系化合物とを、特別な操作を行うことなく自然に燃焼させることができる。尚、本実施例のパティキュレートフィルタ100では、排気ガス中の含炭素浮遊微粒子などを金属不織布106を用いて捕集しているが、金属製の不織布に限らず、例えばコーディエライト製のハニカムフィルタのようなセッラミックスフィルタなどを用いても、同等の細孔径分布を有するフィルタであれば、本実施例のフィルタと同様の自然再生機能を発揮するものと考えられる。 【0065】A−3.エンジン制御の概要:図9は、エンジン制御用ECU30が行うエンジン制御ルーチンの概要を示すフローチャートである。かかる制御ルーチンは、エンジンに始動用キーが挿入されて電源が「オン」状態になると開始される。 【0066】エンジンに挿入されたキーが始動位置まで回されたことを検出すると、エンジン制御用ECU30はエンジン始動制御を開始する(ステップS10)。かかる処理では、スタータモータでエンジンをクランキングしつつ、適切なタイミングで燃料を噴射してエンジンを始動させる。エンジンの始動に際しては、吸気温度やエンジン水温を検出し、エンジンの始動が困難なほど温度が低い場合には、吸入空気や燃焼室をヒータで適宜加熱する。噴射した燃料が燃焼室内で燃焼すると、大きなトルクが発生してエンジン回転速度が上昇していき、エンジン制御用ECU30は、エンジン回転速度が所定の回転速度に達したことを検出してエンジン始動制御を終了する。 【0067】エンジンの始動制御が終了すると、エンジン運転条件を検出する(ステップS20)。エンジンの運転条件を規定する主なパラメータは、エンジン回転速度Neおよびアクセル開度θacであり、その他の補助的なパラメータとして、吸入空気温度やエンジン冷却水温、燃料温度、吸気圧力などを使用しており、ステップS20ではこれらパラメータを検出する。エンジン回転速度Neは、エンジンのクランクシャフトに装着されたクランク角センサ32によって検出することができる。また、アクセル開度θacは、アクセルペダルに装着されたアクセル開度センサ34によって検出する。詳細には後述するが、パティキュレートフィルタ100の前後差圧も、かかるエンジン運転条件検出処理の中で検出する。 【0068】エンジンの運転条件を検出すると、検出した運転条件に応じて、エンジンの制御モードを設定する処理を行う(ステップS30)。詳細には後述するが、本実施例のディーゼルエンジン10では、燃焼室内に燃料を噴射する制御や、排気ガスの一部を吸気通路に再循環させるEGR制御、あるいは過給器20の動作効率の制御など、各種の制御が行われているが、これら制御は独立して行われるのではなく、エンジンが最適な状態に保たれるよう、互いに関係し合いながら全体がまとまって一つのシステムを構成している。また、後述するように、パティキュレートフィルタ100前後での差圧が許容値を超える値に上昇している場合には、燃料噴射,EGR量,過給圧など各種要素が協調した制御を行うことで、本実施例のフィルタが有する自然再生機能を促進させて前後差圧を正常範囲に回復させることができる。本実施例のディーゼルエンジン10では、このように各要素が協調した制御を可能とするために、エンジンの運転条件に基づいて初めに制御モードを設定し、かかる制御モードに基づいて各要素を制御する方式を採用している。 【0069】こうして制御モードを設定すると、かかる制御モードに基づいて燃料噴射制御を行う(ステップS40)。燃料噴射制御は、エンジンの運転条件に応じて、適切な量の燃料を、適切なタイミングで噴射する制御であり、制御の概要は次のようなものである。先ず、エンジン回転速度Neとアクセル開度θacとに基づいて基本となる燃料噴射量および燃料噴射タイミングを算出する。次いで、この値に、吸入空気温度や、エンジン冷却水温、燃料温度などの影響を考慮した補正を行って、エンジン運転条件に応じた最適な噴射量と最適な噴射タイミングとを算出する。こうして算出した噴射量およびタイミングで燃料を噴射するよう、燃料供給ポンプ18と燃料噴射弁14とを制御する。 【0070】具体的には、基本燃料噴射量および基本燃料噴射タイミングが、エンジン回転速度Neおよびアクセル開度θacに対するマップとして、エンジン制御用ECU30に内蔵されたROMに記憶されている。また、吸入空気温度やエンジン冷却水温などの各種の補正係数も、エンジン制御用ECU30内のROMにマップとして記憶されている。エンジン制御用ECU30は、これらマップを参照することにより、基本となる燃料噴射量および噴射タイミング、各種補正係数を取得する。こうして得た燃料噴射量や噴射タイミング、各種補正係数に基づいて、最適な燃料噴射量および燃料噴射タイミングを算出し、燃料供給ポンプ18および燃料噴射弁14を制御する。 【0071】燃料噴射制御を終了すると、続いてEGR制御を開始する(ステップS50)。EGRとは、Exhaust Gas Recirculation(排気ガス再循環装置)の略語であって、排気ガス中に含まれる窒素酸化物の濃度を減少させるために、排気ガスの一部を吸気管内に意図的に戻してやることを言う。排気ガスの一部を吸気に還流させれば燃焼室内での燃焼速度が低下するので、燃焼最高温度が低くなって排気ガス中の窒素酸化物の濃度を減少させることができるが、反面、排気ガスの還流量が多くなると燃焼が不安定になる傾向がある。このため、エンジンの運転条件に応じて、排気ガスの還流量が最適となるように制御してやる必要がある。EGR制御ではこのような制御を行う。 【0072】燃料噴射制御を終了すると、続いて過給圧制御を行う(ステップS60)。図1を用いて前述したように、ディーゼルエンジン10には過給器20が設けられており、吸気管12内の圧力を大気圧よりも高くすることによって、多量の空気を燃焼室に供給することができる。このように、吸気管内の圧力を大気圧よりも高くすることを「過給する」と言い、過給前の吸気管内からの圧力上昇分を「過給圧」という。過給圧を上げれば、それだけ燃焼に使用し得る酸素量が増加するので、エンジンの最高出力を向上させたり、あるいは出力一定の条件においてもススなどの含炭素浮遊微粒子の排出量を減少させるといった効果が得られる。本実施例のディーゼルエンジン10では、エンジンの運転条件に応じた適切な過給圧を得ることができるように、過給器のタービン21に排気ガスが流入する部分の開口面積を制御している。また、排気ガス流量が多く、過給圧が上がり過ぎる場合には、ウェストゲートバルブ72を開いて排気ガスの一部をバイパスさせることにより、過給圧が上がり過ぎないような制御も行う。 【0073】以上のようにして過給圧制御を終了したら、エンジンに挿入されている始動用キーが「オフ」位置まで戻されているか否かを検出し(ステップS70)、「オフ」位置まで戻されていなければ、再びステップS20に戻って続く一連の処理を繰り返す。エンジン制御用ECU30は、始動用キーが「オフ」位置に戻されるまで、上述した処理を繰り返す。その結果、エンジンは運転条件の変化に応じて、常に最適に制御されることになる。 【0074】また、詳細には後述するが、本実施例のディーゼルエンジン10では、パティキュレートフィルタ100の前後差圧が上昇して、フィルタの目詰まりが懸念される状況を検出すると、燃料噴射制御、EGR制御、過給圧制御などの各制御を適切に行って、本実施例のパティキュレートフィルタ100の有する自然再生機能を促進させ、フィルタの目詰まりを回避することが可能となっている。 【0075】B.フィルタ再生促進処理:上述したように、本実施例のディーゼルエンジン10は、パティキュレートフィルタ100前後での差圧を検出して、フィルタの目詰まりのおそれがある場合に、フィルタの自動再生機能を促進させる処理を行う。かかるフィルタ再生促進処理は、単一の処理ではなく、燃料噴射、EGR、過給圧などの各種制御を組み合わせたものであって、前述の制御モード設定処理中でフィルタ再生モードを設定すると、燃焼噴射、EGR制御、過給圧制御などでフィルタ再生促進制御が行われる。そこで、先ず、制御モード設定処理中でフィルタ再生モードを設定する処理について説明する。 【0076】B−1.制御モード設定処理:図10は、制御モード設定処理の流れを示すフローチャートである。かかる処理は、図9に示したエンジン制御ルーチン中のステップS20で、エンジン運転条件を検出した後に行われる。以下、図10に従って、処理の内容を説明する。 【0077】制御モード設定処理を開始すると、先ず初めに、エンジンの運転条件がユニバス燃焼可能領域か否かを判断する(ステップS100)。ユニバス燃焼とは、ディーゼルエンジンの1サイクル中に複数回の燃料を噴射することを前提とした特殊な燃焼方式であって、本実施例のディーゼルエンジン10はユニバス燃焼を行うことで、ススなどの含炭素浮遊微粒子や窒素酸化物などの排出量を抑制することが可能となっている。ユニバス燃焼については後述する。図11は、横軸にエンジン回転速度Ne、縦軸にアクセル開度θacを採って、ユニバス燃焼が可能なエンジン運転条件を概念的に示した説明図である。エンジンの採り得る運転条件、すなわちエンジン回転速度0rpmから最高回転速度MAX rpm、アクセル開度0%から100%の範囲内で、ハッチングを付した領域がユニバス燃焼の可能な領域である。図示するように、燃焼が不安定になり易い極低回転速度域や、エンジンの負荷が高くなる高回転速度域および高アクセル開度域を除いた残りの領域では、ユニバス燃焼制御を行っている。 【0078】エンジン運転条件がユニバス燃焼可能領域にあると判断した場合には(ステップS100:yes)、ユニバス燃焼制御を行うことを示すフラグFuを「ON」(高電圧状態)にする(ステップS102)。ここで、フラグFuについて説明する。エンジン制御用ECU30に内蔵されたRAMには、前述したエンジンの制御モードを表示するためのアドレスが設けられていて、かかるアドレスのデータは、ビットの各々がフラグに対応している。図12は、制御モードを表示するアドレスのデータを概念的に示した説明図である。図示するように、アドレスには1バイト(8ビット)分のメモリが割り当てられていて、先頭にあるビットがフラグFuに対応するビットとなっている。アドレスのフラグFuに続く2ビットは予備のフラグ用のビットである。残りの5つのビットは後述するフィルタ再生促進制御で使用するフラグであり、先頭のビットは、フィルタ再生促進制御を行うことを示すフラグFf、他のビットは、フィルタ再生レベルを示すフラグF1ないしフラグF4 を示すビットである。フラグFfないしフラグF4 については後述する。 【0079】図10のステップS100において、エンジンの運転条件がユニバス燃焼を行う領域であると判断された場合には、ステップS102で、フラグFuを「ON」(高電圧状態)に設定する。逆に、ユニバス燃焼を行う領域ではないと判断された場合には、フラグFuを「OFF」(低電圧状態)に設定する(ステップS104)。 【0080】尚、図10の制御モード設定処理においては、エンジンの運転条件がユニバス燃焼可能領域に入る度に、あるいはユニバス燃焼可能領域から出る度に、フラグFuの設定を変更するものとして説明したが、運転状態が切り替わっても即座にフラグFuを変更するのではなく、切り替わった状態が所定期間続いていることを確認して、初めてフラグFuの設定を変更することとしても良い。こうすれば、例えば、エンジンの運転条件がたまたまユニバス燃焼可能領域の境界付近にあるとき等に、僅かな運転条件の変化でエンジンの制御状態が頻繁に切り替わって、運転状態が不安定となるおそれがなくなるので好ましい。また、図12では、エンジンの制御モードを表示するアドレスには、1バイトのメモリが割り当てられているものとして説明したが、もちろん、より多くのメモリを割り当てることとしても構わない。 【0081】次いで、パティキュレートフィルタ100の前後差圧dPを算出する(ステップS106)。パティキュレートフィルタ100の上流側および下流側には、圧力センサ64,66が設けられている。ステップS106の処理では、前述したエンジン運転条件検出処理(図9のステップS20)において予め検出しておいたこれらセンサの出力から、フィルタ前後の差圧dPを算出する。 【0082】尚、ここでは、圧力センサ64,66を用いて検出したフィルタ前後の圧力から、フィルタ前後差圧dPを算出するものとしたが、必ずしもフィルタ前後での圧力値を検出せずともよい。例えば、フィルタ前後の圧力差で接点が閉じるような圧力スイッチを複数種類設けておき、いずれの接点が閉じているかによって、フィルタ前後差圧を検出しても良い。あるいは、フィルタ上流にのみ圧力センサを設けておき、エンジンを所定条件で運転しているときにフィルタ上流の圧力を検出しても良い。フィルタ前後の圧力差が大きくなれば、それに伴ってフィルタ上流の圧力も増加する。このことから、所定運転条件でフィルタ上流の圧力が増加したことを検出することによって、フィルタ前後差圧の増加を検出することも可能である。 【0083】フィルタ前後の差圧dPを算出したら、続いて、フィルタ前後差圧の許容差圧dPcと、復帰差圧dPrとを取得する(ステップS106)。許容差圧dPcとは、パティキュレートフィルタ100が目詰まりのおそれがあるか否かを判断するための基準として用いられる圧力値である。また、復帰差圧dPrとは、後述するフィルタ再生促進処理を終了するか否かの判断基準となる圧力値である。許容差圧dPcおよび復帰差圧dPrは、それぞれエンジン回転速度Neとアクセル開度θacとに対するマップの形式で、エンジン制御用ECU30内のROMに記憶されている。ステップS106の処理では、かかるマップを参照することにより、エンジン運転条件に応じた許容差圧dPcおよび復帰差圧dPrの値を取得する。 【0084】尚、本実施例においては、許容差圧dPcあるいは復帰差圧dPrは、マップを用いて、エンジン運転条件に応じた最適な値が設定されているものとしている。しかし、含炭素浮遊微粒子が堆積してフィルタが目詰まりし始めると、フィルタ前後差圧は急激に増加する傾向があるので、許容差圧dPcあるいは復帰差圧dPrの値を、エンジン運転条件によらず一定値とすることも可能である。こうすればマップが不要となるので、それだけROMの記憶容量を節約することが可能となって好適である。 【0085】次に、フィルタ前後の差圧dPと許容差圧dPcとの大小関係を比較する(ステップS108)。差圧dPが許容差圧dPcよりも大きい場合(ステップS108:no)は、含炭素浮遊微粒子の堆積量が多く、パティキュレートフィルタ100が目詰まりを起こすおそれがあると考えられる。そこで、このような場合は、フィルタの目詰まりを回避すべく、図12を用いて説明したフラグFfを「ON」状態に設定する。フラグFfが「ON」に設定されていると、後述するフィルタ再生促進制御が行われ、フィルタ上に堆積している含炭素浮遊微粒子が燃焼する結果、フィルタの目詰まりを回避することができる。 【0086】ステップS108において、フィルタ前後の差圧dPが許容差圧dPcよりも小さいと判断された場合には、フラグFfがセットされているか否かを判断する(ステップS110)。すなわち、フィルタ前後の差圧dPが許容差圧dPcを越えている場合(ステップSS108:no)、フィルタ再生促進制御が行われる結果としてフィルタ前後差圧dPが減少するが、差圧が許容差圧dPcより小さくなったからといって直ちにフィルタ再生促進制御を中止したのでは、フィルタ差圧dPが再び直ぐに許容差圧dPcを越えてしまう場合がある。このようなことを避けるために、フィルタ再生促進制御を開始したら、フィルタ前後差圧が許容差圧dPc以下になっても制御を中止せずに、復帰差圧dPrよりも小さな値となるまで継続することとしている。そこで、フィルタ前後差圧dPが許容差圧dPcよりも小さい場合には、フラグFfがセットされているか否かを判断し、フラグFfがセットされている場合(フィルタ再生制御中である場合)は、フィルタ前後差圧dPを復帰差圧dPrと比較するのである(ステップS114)。 【0087】前後差圧dPと復帰差圧dPrとを比較した結果、前後差圧dPが復帰差圧dPrよりも小さな値まで減少していない場合には(ステップS114:no)、フィルタ再生促進制御を継続することとして、フィルタ再生レベル設定処理を開始する(ステップS120)。詳細には後述するが、本実施例のフィルタ再生促進制御では、パティキュレートフィルタ100の自然再生機能を促進する程度を種々に設定することが可能であり、フィルタの前後差圧が大きくなった場合には、先ず促進の程度の軽い制御を行ってみて、差圧が減少しない場合に、次第に促進程度の重い制御へと制御内容を変更していく。このことと対応して、ステップS120では、パティキュレートフィルタ100の自然再生機能を促進させる程度を設定する処理を行うのである。 【0088】これに対して、フィルタ前後差圧dPが復帰差圧dPrよりも小さな値となっている場合には(ステップS114:yes)、フィルタ上に堆積している含炭素浮遊微粒子が燃焼し、フィルタが充分に再生されたものと判断して、フィルタ再生促進制御を示すフラグFfおよびフィルタ再生レベルを示すフラグF1ないしフラグF4 の値を「OFF」に設定する(ステップS116)。次いで、フィルタ再生レベル設定処理で使用するカウンタnをリセットしておく。カウンタnおよびフィルタ再生レベルを示すフラグF1ないしフラグF4 については後述する。 【0089】図13は、上述したフィルタ再生レベル設定処理の流れを示すフローチャートである。処理を開始すると、先ず初めにカウンタnの値を「1」だけ増加させる(ステップS200)。ここで、カウンタnの意味するところについて説明する。前述したように、エンジン制御用ECU30は図9のエンジン制御ルーチンを繰り返し実行することによって、エンジンの運転状態が最適になるように制御している。カウンタnは、フィルタ再生促進制御を行いながらエンジン制御ルーチンを実行した回数を計数するために用いられる変数である。すなわち、図10を用いて前述したように、フィルタ再生促進制御を行わない場合(フラグFf:OFF)には、カウンタnは常にリセットされており、一方、フィルタ再生促進制御を行う場合(フラグFf:ON)には、フィルタ再生レベル設定処理を1回実行する度に、図13のステップS200においてカウンタnの値が「1」ずつ加算されていく。このことから明らかなようにフィルタ再生促進制御を行いながらエンジン制御ルーチンが何回実行されたかを、カウンタnの値に基づいて検出することが可能である。 【0090】カウンタnの値を「1」増加させたら、カウンタnが、所定の第1の閾値回数th1に達したか否かを判断する(ステップS202)。カウンタnが第1の閾値回数th1に達していない場合(ステップS202:no)は、フラグF1を「ON」にセットした後(ステップS204)、そのままフィルタ再生レベル設定処理を抜けて、図10の制御モード設定処理を経由してエンジン制御ルーチンに復帰する。エンジン制御ルーチン中で、制御モード設定処理に続いて行われるEGR制御では、フラグF1が設定されていることに対応して、EGR量を減少させる処理を行う。詳細には後述するが、かかる制御を行うことによって、パティキュレートフィルタ100の自然再生機能を促進して、フィルタ上に堆積した含炭素浮遊微粒子を燃焼させることができる。かかる制御は、フィルタの再生促進制御の中で最も促進程度の軽い制御であって、カウンタnの値が、所定の閾値回数th1に達するまではこのような制御を行う。 【0091】通常であれば、フラグF1に対応したフィルタ再生促進制御を行いながら、しばらくの間、エンジン制御ルーチンを実行することで、フィルタの前後差圧dPは復帰差圧dPr以下の値に低下し、その結果としてフィルタ再生促進制御を示すフラグFfおよびフィルタ再生レベルを示すフラグF1ないしフラグF4 がリセットされる(図10のステップS116参照)。 【0092】カウンタnの値が第1の閾値回数th1に達しても、フィルタの前後差圧dPが復帰差圧dPr以下の値に低下しない場合(図13のステップS202:yes)は、カウンタnと第2の閾値回数th2とを比較する(ステップS206)。カウンタnが第2の閾値回数th2に達していない場合はフラグF2を「ON」にセットした後(ステップS208)、そのままフィルタ再生レベル設定処理を抜けて、図10の制御モード設定処理を経由してエンジン制御ルーチンに復帰する。フラグF1についてはステップS204で既に「ON」にセットされているから、カウンタnが第1の閾値回数th1以上の値となった場合は、フラグF1に加えてフラグF2が「ON」にセットされることになる。 【0093】フラグF1が「ON」の場合は、エンジン制御ルーチンではEGR量を減少させる制御を行うが、フラグF2が「ON」にセットされている場合は、過給圧を高めの値に設定する制御を行う。詳細には後述するが、過給圧を高めに制御することで、パティキュレートフィルタ100の自然再生機能を促進することができる。このようにカウンタnが第1の閾値回数th1に達してもフィルタの前後差圧が十分に低下しない場合には、EGR制御に加えて過給圧も制御することで、フィルタの自然再生機能をより一層促進させ、フィルタ上に堆積した含炭素浮遊微粒子を燃焼させる。 【0094】こうして、フラグF1とフラグF2とがセットされていることに対応して、EGR制御と過給圧制御と行いながら、しばらくの間、エンジン制御ルーチンを実行すれば、フィルタの前後差圧dPが復帰差圧dPr以下の値に低下するので、フィルタ再生促進制御を示すフラグFfおよびフィルタ再生レベルを示すフラグF1ないしフラグF4がリセットされる(図10のステップS116参照)。 【0095】カウンタnの値が第2の閾値回数th2に達しても、フィルタの前後差圧dPが復帰差圧dPr以下の値に低下しない場合(ステップS206:yes)は、カウンタnと第3の閾値回数th3とを比較する(ステップS210)。カウンタnが第3の閾値回数th3に達していない場合は、フラグF3を「ON」にセットした後(ステップS212)、そのままフィルタ再生レベル設定処理を抜けて、エンジン制御ルーチンに復帰する。フラグF3が「ON」にセットされている場合は、エンジン制御ルーチンにおいては燃料の噴射時期を遅角させる制御を行う。詳細には後述するが、かかる制御を行うことによって、パティキュレートフィルタ100の自然再生機能を促進することができる。カウンタnが第2の閾値回数th2に達してもフィルタの前後差圧が十分には低下しない場合には、EGR制御および過給圧制御に加えて燃料噴射時期が遅角することで、フィルタの自然再生機能をより一層促進させ、フィルタ上に堆積した含炭素浮遊微粒子を燃焼させる。すなわち、燃料噴射時期を遅角すれば排気ガスの温度が上昇するために過給圧制御の効果が表れやすくなり、その分だけフィルタの自然再生機能を促進することができるのである。 【0096】カウンタnの値が第3の閾値回数th3に達しても、フィルタの前後差圧dPが復帰差圧dPr以下の値に低下しない場合(ステップS210:yes)は、カウンタnと第4の閾値回数th4とを比較する(ステップS214)。カウンタnが第4の閾値回数th4に達していない場合は、フラグF4を「ON」にセットし(ステップS212)、次いでフラグF1ないしF3を「OFF」に設定して、エンジン制御ルーチンに復帰する。フラグF4が「ON」にセットされている場合は、エンジン制御ルーチンにおいては後述するユニバス燃焼を行いながらフィルタの自然再生機能を促進する制御を行う。詳細には後述するが、特殊なユニバス燃焼制御を行うことによって、パティキュレートフィルタ100の自然再生機能を促進することができる。 【0097】カウンタnの値が第4の閾値回数th4に達しても、フィルタの前後差圧dPが復帰差圧dPr以下の値に低下しない場合(ステップS214:yes)は、フラグF4を「ON」にセットしたまま、これに加えてフラグF2を「ON」にする(ステップS218)。すなわち、フィルタ再生のためのユニバス燃焼制御を行いながら、過給圧を増大させることにより、パティキュレートフィルタ100の自然再生機能をより一層促進する。 【0098】以上のようにして、フラグF1ないしフラグF4が「ON」、「OFF」のいずれかの状態にセットされたら、図13に示すフィルタ再生レベル設定処理を終了し、図10の制御モード設定処理を経由して、エンジン制御ルーチンに復帰する。前述したように、制御モード設定処理に続いて行われる燃料噴射制御,EGR制御,過給圧制御などの各種制御では、制御モードに応じた処理が行われる。すなわち、図12に示した制御モードを表すアドレス中の、フラグFuが「ON」になっている場合は、これら各要素を適切に制御してユニバス燃焼制御を行う。また、フィルタ再生促進制御を行うことを示すフラグFfが「ON」になっている場合には、フラグF1ないしフラグF4の設定内容に応じてフィルタ再生促進制御を行う。以下では、これらフラグの設定に応じて行われる各種制御について説明する。 【0099】B−2.EGR制御:前述したようにフィルタ再生促進制御では、複数の制御を段階的に組み合わせて行うが、フィルタ前後差圧の上昇を検出した直後の段階では、先ずEGR制御の中で次のような制御を行うことにより、パティキュレートフィルタ100上に堆積した含炭素浮遊微粒子の燃焼を試みる。 【0100】図14は、前述のエンジン制御ルーチンの中で行われるEGR制御の処理の流れを示すフローチャートである。EGR制御処理を開始すると、先ず初めにフラグF1が「ON」に設定されているか否かを判断する(ステップS300)。すなわち、前述したように、EGR制御処理に先立って行われる制御モード設定処理(図10参照)においてフィルタの再生促進制御を行う旨が設定されると、フィルタ再生レベル設定処理(図13参照)中で再生促進制御の内容が設定され、EGR制御を利用する場合には、フラグF1が設定される。そこで、EGR制御処理を開始したら、先ず初めにフラグF1が「ON」に設定されているか否かを判断するのである。 【0101】フラグF1が「ON」に設定されていなければ(ステップS300:no)、通常のEGR制御を行うものと判断して、EGR弁62の弁開度θegr をエンジンの運転条件によって定まる値に設定する(ステップS302)。EGR弁の弁開度θegr は、エンジン制御用ECU内のROMに、エンジン回転速度Neとアクセル開度θacとをパラメータとするマップとして記憶されている。こうしてマップに設定された弁開度θegr をEGR弁62に対して出力することで、エンジン運転条件に応じて、最適なEGR量に制御することができる。 【0102】これに対してフラグF1が「ON」になっている場合(ステップS300:yes)は、EGR弁開度θegr の値を「0」に設定し、EGR弁62を全閉状態とする(ステップS304)。こうすれば、次の理由から、パティキュレートフィルタ100の自然再生機能を促進して、フィルタ上に堆積している含炭素浮遊微粒子を燃焼させることができる。 【0103】EGR弁62を閉じると吸気管内に還流するEGR量が減少する。ディーゼルエンジンでは、通常、毎回の吸気によって、燃焼室内に吸い込まれるEGR量および空気量の合計値は一定なので、EGR量が減少すれば、その分だけ吸入空気量が増加する。ここで、燃焼室内の噴射する燃料量は同一なので、吸入空気量が増加すれば燃焼に使用されずに排出される酸素量が増加して、結局は排気ガス中の酸素量が増加する。図7を用いて前述したように、本実施例のパティキュレートフィルタ100は、排気ガス中の含炭素浮遊微粒子と炭化水素系化合物とを、排気ガス中の酸素と接触可能に分散捕集して、比較的低温の排気ガス中で炭化水素系化合物を比較的穏やかな酸化反応を利用して、含炭素浮遊微粒子を燃焼させている。従って、EGR弁開度を閉じることで排気ガス中の酸素量が増加すれば、フィルタ上に捕集されている炭化水素系化合物の酸化反応が促進され、延いては含炭素浮遊微粒子の燃焼を促進することができるのである。 【0104】尚、以上の説明では、フラグF1が「ON」となっている場合は、EGR弁62を全閉状態にするものとしたが、EGR量が減少して空気量が増加しさえすれば、上述のフィルタ再生促進効果を得ることができる。従って、EGR弁62は必ずしも全閉にする必要はなく、例えば、所定開度だけEGR弁62を閉じることとしても良い。 【0105】B−3.過給圧制御:上述のEGR制御を所定時間行っても、パティキュレートフィルタ100の前後差圧dPが充分に低下しない場合には、以下に説明する過給圧制御の中で次のような制御を行うことにより、パティキュレートフィルタ100に堆積した含炭素浮遊微粒子の燃焼を試みる。 【0106】図15は、前述のエンジン制御ルーチンの中で行われる過給圧制御の処理の流れを示すフローチャートである。図1を用いて前述したように、本実施例のディーゼルエンジン10は、排気ガスがタービン21に流れ込む開口部の面積(タービン開口面積)をアクチュエータ70によって制御可能な過給器20が搭載されている。過給圧制御処理を開始すると、先ず初めに過給器20のタービン開口面積をエンジン運転条件に応じた最適値に設定する(ステップS400)。エンジン制御用ECU内のROMには、エンジン運転条件に応じた最適なタービン開口面積が、エンジン回転速度Neおよびアクセル開度θacをパラメータとするマップとして記憶されている。このマップに設定されている値を読み出して、過給器20のアクチュエータ70に対して出力することで、タービン開口面積をエンジン運転条件に応じた最適値に制御することができる。 【0107】次いで、フラグF2が「ON」に設定されているか否かを判断する(ステップS402)。前述したように、フィルタ再生レベル設定処理(図13参照)中で、過給圧制御を利用してフィルタ再生促進制御を行う旨が判断されると、フラグF2は「ON」に設定される。そこで、フラグF2の設定に基づいて、過給圧制御を利用したフィルタ再生促進制御を行うか否かを判断するのである。 【0108】フラグF2が「ON」に設定されていない場合(ステップS402:no)は、通常の制御を行うものと判断し、そのまま過給圧制御を抜けて、図9に示したエンジン制御ルーチンに復帰する。 【0109】これに対して、フラグF2が「ON」に設定されている場合(ステップS402:yes)は、過給圧制御を利用したフィルタ再生促進制御を行うべく、タービン開口面積の設定値を修正する処理を行う(ステップS404)。かかる処理の内容について説明する準備として、通常の過給圧制御で使用するタービン開口面積の設定値について説明する。 【0110】一般に、タービン開口面積を小さくすると、タービン21に流れ込む排気ガスの流速が速くなるので、タービン21の回転速度が高くなり、その分だけ過給圧が上昇する。しかし、タービン開口面積を小さくすればそれだけ排気抵抗が増大するので、タービン開口面積にはエンジン運転条件に応じて定まる最適値が存在している。エンジン制御用ECU内のROMには、このようなタービン開口面積の最適値が、マップの形式でエンジンの運転条件に応じて記憶されており、通常の過給圧制御ではかかるマップを読み出すことにより、タービン開口面積を適切な値に制御している。 【0111】ステップS404の処理では、マップに設定されているタービン開口面積を所定量だけ小さな値に修正し、過給圧を上昇させるような制御を行う。もちろん、タービン開口面積の修正量を、エンジン回転速度Neとアクセル開度θacとをパラメータとするマップに設定しておき、かかるマップに設定されている値を用いてタービン開口面積を修正することとしても良い。こうすれば、エンジン運転条件に応じて修正量を最適化することができるので好適である。こうして過給圧制御を終了したら、図9に示したエンジン制御ルーチンに復帰する。 【0112】以上に説明したように、フラグF2が「ON」に設定されると、過給圧が高めの値に設定される。過給圧が高くなると、燃焼室内に吸入される空気量がその分だけ増大する。フラグF2の設定によっては、噴射する燃料量は変わらないので、吸入空気量が増加すれば、それだけ排気ガス中の酸素量は増加する。その結果、パティキュレートフィルタ100の自然再生機能が促進され、フィルタ上に堆積した含炭素浮遊微粒子が燃焼することになる。 【0113】尚、以上の説明では、アクチュエータ70を用いてタービン開口面積を制御可能な過給器20を使用し、フラグF2が「ON」になっている場合は、タービン開口面積を減少させて過給圧を上昇させるものとしたが、必ずしもタービン開口面積を制御可能な過給器を搭載している場合に限られるものではない。例えば、排気ガス量が所定量を超えるエンジン運転条件では、ウエストゲートバルブ72を僅かに開いて常に一部排気ガスがタービン21をバイパスするようにしておき、フラグF2が「ON」になった場合には、ウエストゲートバルブ72を全閉にすることで過給圧を上昇させることとしても構わない。 【0114】B−4.燃料噴射制御:上述の過給圧制御を所定時間行っても、パティキュレートフィルタ100の前後差圧dPが充分に低下しない場合には、燃料噴射制御の中で次のような制御を行うことにより、パティキュレートフィルタ100に堆積した含炭素浮遊微粒子を燃焼させる。すなわち、本実施例のディーゼルエンジン10ではユニバス燃焼と呼ばれる燃焼方式を採用しており、ユニバス燃焼の制御パラメータを変更することによって、パティキュレートフィルタ100の自然再生機能を促進するのである。 【0115】ここで、ユニバス燃焼と呼ばれる燃焼方式について、ディーゼルエンジンで一般的に採用されている燃焼方式と比較しながら説明する。ディーゼルエンジンでは、燃焼室内に吸い込んだ吸入空気をピストンで断熱圧縮し、得られた高温高圧の圧縮空気の中に燃料を噴射して燃焼させる方式を採用している。噴射された燃料は、噴霧となって空気中を拡散しながら進行するとともに、噴霧を構成する燃料の微粒子が温度によって気化していく結果、燃料の各微粒子の周囲には燃料混合気が形成される。吸入空気は圧縮されて充分高温になっているので、燃料微粒子の周辺に形成された燃料混合気が可燃濃度に達すると、自然に着火して燃焼が開始される。このように、ディーゼルエンジンの燃焼形態は、燃料噴霧の拡散と、それに続く気化および自着火という形態を採ることから、拡散燃焼方式とも呼ばれる。拡散燃焼においては、燃料混合気が可燃濃度に達すると速やかに自着火することが望ましいので、いわゆるセタン価の高い燃料が使用されることが多い。 【0116】また、近年では、いわゆるパイロット噴射と称して、複数回に分けて燃料を噴射する場合も多い。すなわち、燃料を1度に噴射すると、噴射した燃料が同時に着火して急激に燃焼圧力が上昇する結果、ディーゼルエンジンに特有の燃焼音が発生するといった弊害が生じる場合があるので、複数回に分けて燃料を噴射することで、これらを回避しようとするものである。パイロット噴射を行う場合でも、高温高圧に圧縮した空気中に燃料を噴射しているので、個々の噴射燃料については拡散燃焼が行われている。 【0117】これに対してユニバス燃焼と呼ばれる燃焼方式は、可燃混合気が自着火し得ないような圧縮途中の空気中に、燃料の一部を噴射し、残りの燃料は、圧縮して高温高圧となった空気中に噴射する燃焼方式である。このような燃焼方式を採用すると、以下に説明するように、排気ガス中に含まれるススなどの含炭素浮遊微粒子や窒素酸化物の排出量を大幅に低下させることが可能となる。 【0118】図16は、ユニバス燃焼を行うことによって、ススなどの含炭素浮遊微粒子や窒素酸化物の排出量を低減可能な原理を概念的に示す説明図である。図中の大きな円形は燃焼室を上方から見た様子を模式的に表したものであり、燃焼室のほぼ中央にある小さな円形は、燃焼室内に設けられた燃料噴射弁14の先端部分(ノズル部分)を模式的に表したものである。燃料噴射弁14のノズル部分には、燃料を噴射するための小さな噴口が複数設けられており、燃料噴霧はノズルの各噴口から放射状に噴出される。ここでは、ノズルには4つの噴口が設けられているとする。 【0119】図16(a)は、吸入空気の圧縮の途中で、燃料の一部を燃焼室内に噴射した様子を模式的に表した説明図である。噴口から高圧で噴出された燃料噴霧は、図示するように少しずつ拡散しながら燃焼室内を直進する。ユニバス燃焼において圧縮の途中に行われる燃料噴射を、以下では「補助噴射」と呼び、補助噴射によって形成される燃料噴霧を補助燃料噴霧80と呼ぶことにする。これに対して、圧縮後半の高温高圧の空気中に行われる燃料噴射を「主噴射」と呼び、主噴射によって形成される燃料噴霧を主燃料噴霧84と呼ぶことにする。ユニバス燃焼では、補助噴射は圧縮途中の比較的低温の吸入空気中に行われるので、補助燃料噴霧80は自着火することなく、燃焼室内で拡散および気化されていく。図16(b)は、燃焼室内で補助燃料噴霧80の拡散および気化が進行することにより、燃料混合気82が形成されていく様子を模式的に示している。もちろん、燃料噴霧が拡散および気化している間にも、吸入空気の圧縮に伴って混合気の温度は上昇していくが、自着火可能な温度に達した時点では、燃料の拡散が進んで可燃濃度よりも燃料濃度が低くなっているため、補助燃料噴霧80が自着火することはない。 【0120】図16(c)は、主噴射を行って主燃料噴霧84が形成されている様子を模式的に示した説明図である。図示するように、主燃料噴霧84は、補助噴射によって形成された燃料混合気82と重なった位置に形成される。また、主噴射は圧縮が進んで高温高圧となっている燃料混合気82中に行われるので、噴射された燃料噴霧は速やかに拡散するとともに、気化して自着火する。こうして、主燃料噴霧84が自着火すると、この火炎を火種として、補助噴射によって形成された燃料混合気82も燃焼を開始し、最終的には、噴射した全ての燃料が燃焼することになる。 【0121】以上に説明したユニバス燃焼方式を採用すれば、通常のディーゼルエンジンで採用されている燃焼方式に比べて、排気ガス中に含まれるススなどの含炭素浮遊微粒子や窒素酸化物を大幅に低減することが可能である。以下、この理由について説明する。 【0122】ユニバス燃焼では、噴射する燃料を補助噴射と主噴射との2回に分けて噴射しており、このうち補助噴射で噴射された燃料は、充分に拡散および気化された後に燃焼する。一般に、充分に気化した状態で燃焼すればススなどの含炭素浮遊微粒子はほとんど発生しないが、燃料粒子が気化した端から燃焼する形態のいわゆる拡散燃焼では、ススなどの含炭素浮遊微粒子を発生させずに燃焼させることは困難である。このことから、ユニバス燃焼では、燃料の一部を補助噴射して充分に拡散・気化してから燃焼させることにより、拡散燃焼する燃料の割合が減少する結果、ススなどの含炭素浮遊微粒子の発生量を大幅に抑制することができるのである。 【0123】また、補助噴射によって形成された燃料混合気82は、主噴射を行って火種を供給してやらなければ自着火しないほどに、燃料濃度の低い混合気となっている。一般に、燃料混合気の燃焼速度は燃料濃度に大きく依存し、混合気の燃料濃度が高くなるほど燃焼速度は増加する。このことから、補助噴射によって形成された燃料混合気82は、燃料濃度が低い分だけ燃焼速度が小さくなっている。燃焼速度が小さければ、その分だけ火炎温度も低くなる。排気ガス中に含まれる窒素酸化物の大部分は、空気中の窒素が火炎の中で高温にさらされて酸化することによって発生すると考えられているので、火炎温度を僅かに低くするだけでも窒素酸化物の排出量を大幅に減少させることが可能となるのである。 【0124】本実施例のディーゼルエンジン10では、前述した過給圧制御を所定時間行っても、パティキュレートフィルタ100の前後差圧dPが充分に低下しない場合には、ユニバス燃焼の制御パラメータを変更することによって、パティキュレートフィルタ100の自然再生機能を促進し、フィルタに堆積した含炭素浮遊微粒子を燃焼させる。 【0125】図17は、前述のエンジン制御ルーチンの中で行われる燃料噴射制御の処理の流れを示すフローチャートである。燃料噴射制御処理を開始すると、先ず初めに、マップを参照して基本燃料噴射量を取得する(ステップS500)。前述したように、基本燃料噴射量は、エンジン回転速度Neおよびアクセル開度θacに対するマップとして、エンジン制御用ECU30に内蔵されたROMに記憶されている。次いで、吸入空気温度やエンジン冷却水温などの各種補正係数をマップから取得する(ステップS502)。これらマップもエンジン制御用ECU内のROMに記憶されている。こうして取得した基本燃料噴射量と各種補正係数とを用いて実燃料噴射量を算出する(ステップS504)。 【0126】次いで、ユニバス燃焼制御を行うことを示すフラグFfが「ON」になっているか否かを判断する(ステップS506)。すなわち、図12に示したように、ユニバス燃焼は全ての運転条件で可能というわけではないので、フラグFuを参照することにより、エンジンがユニバス燃焼可能領域で運転されているか否かを判断するのである。 【0127】フラグFuが「ON」となっていない場合(ステップS506:no)は、通常のディーゼルエンジンと同様の燃料噴射を行うものと判断し、マップを参照して燃料噴射タイミングを取得する(ステップS508)。次いで、フラグF3が「ON」となっているか否か判断する(ステップS510)。すなわち、フィルタ再生レベル設定処理において前述したように、過給圧を上昇させながら燃料噴射タイミングを遅角することで、パティキュレートフィルタ100の自然再生機能を促進する場合があるので、かかる制御を行うか否かを、フラグF3の設定によって判断するのである。フラグF3が「ON」になっている場合は、燃料の噴射タイミングを所定量だけ遅角させる処理を行い(ステップS512)、フラグF3が「ON」になっていなければ、そのまま燃料噴射制御を抜けて、図9に示したエンジン制御ルーチンに復帰する。 【0128】これに対して、フラグFuが「ON」となっている場合(ステップS506:yes)は、ユニバス燃焼制御を行うものと判断して、補助噴射の燃料量と主噴射の燃料量とを算出する(ステップS514)。すなわち、補助噴射の燃料量と主噴射の燃料量の割合が、エンジン運転条件に応じてマップに設定されているので、実燃料噴射量をかかる割合で分配することにより、補助噴射の燃料量と主噴射の燃料量とを算出するのである。もちろん、簡易的には、補助噴射の燃料量と主噴射の燃料量の割合を一定値としておいてもよい。 【0129】次いで、補助噴射の噴射タイミングと主噴射の噴射タイミングとを取得する(ステップS516)。これら噴射タイミングもエンジン運転条件に対するマップとして、エンジン制御用ECU内のROMに設定されている。こうして補助噴射および主噴射の各々について算出した燃料量および噴射タイミングで燃料を噴射すればユニバス燃焼を行うことができる。 【0130】ここで、本実施例のディーゼルエンジン10では、ユニバス燃焼の制御パラメータを変更することで、パティキュレートフィルタ100の自然再生機能を促進することが可能であり、このことに対応して、フラグF4が「ON」となっているか否かを判断する(ステップS518)。フラグF4は、ユニバス燃焼を利用してフィルタ再生促進制御を行うか否かを示すフラグである。 【0131】フラグF4が「ON」となっている場合(ステップS518:yes)は、補助噴射タイミングを補正して、所定量だけ進角させる(ステップS520)。補助噴射タイミングを進角させれば、後述する理由から、炭化水素系化合物の排出量が増大する。前述したように、パティキュレートフィルタ100は捕集した炭化水素系化合物の酸化反応を利用して、含炭素浮遊微粒子を燃焼させるので、炭化水素系化合物の排出量が増加すれば、それだけフィルタの自然再生機能を促進させることができる。尚、補助噴射タイミングを進角させる代わりに、主噴射のタイミングを遅角させても同様の効果を得ることができる。この理由についても後述する。また、噴射タイミングの変更に併せて、補助噴射する燃料量を増加させることも好適である。 【0132】フラグF4が「ON」となっていない場合(ステップS518:no)は、ステップS514およびステップS516で算出した値を変更することなく、燃料噴射制御を抜けて、図9に示したエンジン制御ルーチンに復帰する。 【0133】ここで、補助噴射のタイミングを進角させ、あるいは主噴射のタイミングを遅角させることで、炭化水素系化合物の排出量が増加する理由について説明する。図18は、進角したタイミングで補助噴射を行ってから主噴射している様子を模式的に示した説明図である。補助噴射時期を進角している分だけ主噴射までの期間が長くなり、補助噴射で形成した燃料噴霧は広い範囲に拡散する。燃料の拡散範囲が広くなれば、それだけ燃料濃度は低くなり、あまりに濃度が低くなると、たとえ主噴射した燃料が着火して火種が供給されても燃焼しない領域ができてしまう。図18では、燃焼可能な燃料濃度の混合気86の外側に、可燃限界よりも低い燃料濃度の不燃混合気88が形成されている様子を示している。尚、実際に燃焼室内では吸入空気が流動していることから、図18に概念的に示したように、燃焼できない濃度の低い混合気88が可燃範囲の混合気86の外周に存在しているわけではないが、理解を容易とするために、便宜上、薄い不燃混合気88は外周部分に存在するものとして表示している。 【0134】また、補助噴射した燃料の拡散範囲が広くなれば、主噴射による火炎が伝播し得ない孤立して存在する孤立混合気89も発生しやすくなる。すなわち、燃料が拡散途中で混合気が狭い範囲に留まっていれば、このような孤立した燃料混合気は発生しにくいが、拡散範囲が広くなれば、燃料室内に流入した空気の流動の影響で、このような孤立して存在する燃料混合気がそれだけ発生しやすくなるのである。 【0135】図18に示すように、補助噴射のタイミングを進角させて、主噴射を行っても、可燃限界よりも燃料濃度の低い不燃混合気88や、孤立して存在するために火炎が伝播し得ない孤立混合気89は、燃焼することなく排気ガスとともに排出される。このような理由から、補助噴射タイミングを進角すると、炭化水素系化合物の排出量が増加するのである。以上に説明した原理は、補助噴射タイミングを進角する代わりに、主噴射タイミングを遅角する場合にも全く同様に成立する。このことから、主噴射タイミングを遅角しても、炭化水素系化合物の排出量を増加させることができる。 【0136】また、補助噴射する燃料量を増加すると、図18に示したような孤立混合気89の燃料濃度が高くなるので、それだけ炭化水素系化合物の排出量が増加する傾向にある。 【0137】以上に説明したように、ユニバス燃焼制御時には、補助噴射や主噴射のタイミングを変更することで、排気ガス中の炭化水素系化合物量を直ちに増加させることができる。前述したように、パティキュレートフィルタ100は、排気ガス中の炭化水素系化合物の酸化反応を利用して、捕集した含炭素浮遊微粒子を燃焼させているので、炭化水素系化合物の排出量を速やかに増加させることができれば、パティキュレートフィルタ100の自然再生機能を速やかに促進することができるので好適である。 【0138】また、上述した方法では、補助噴射あるいは主噴射のタイミング等のパラメータを調整することで、排気ガス中の炭化水素系化合物量を、精度良く制御することが可能である。従って、パティキュレートフィルタ100の自然再生機能を促進させるに必要、かつ充分な量を供給することができるので好ましい。 【0139】上述したようにユニバス燃焼の制御パラメータを変更して炭化水素系化合物の排出量を増加させることに加えて、例えば過給圧を上昇させることにより、排気ガス中の酸素量も増加させれば、パティキュレートフィルタ100の自然再生機能を更に促進することが可能である。過給圧を上昇させる代わりに、例えば空気ポンプやリードバルブを利用して、排気管中に空気を導入しても構わないのはもちろんである。 【0140】また、ユニバス燃焼の制御パラメータを変更することによって排出された炭化水素系化合物は、燃焼室内に噴射されて、高温高圧の環境に晒された後に排出される。それだけ燃料が分解されて、燃焼しやすくなっていることから、パティキュレートフィルタ100の自然再生機能を、効果的に促進することが可能である。 【0141】もちろん、上述したようにユニバス燃焼の制御パラメータを変更する代わりに、いわゆるポストインジェクションと呼ばれる方法、すなわち燃料の噴射タイミングを正規のタイミングから大幅に遅角することにより、炭化水素系化合物の排出量を増加させることも可能である。 【0142】B−5.変形例:以上、各種の実施例について説明してきたが、本発明は上記すべての実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することができる。 【0143】例えば、上述の実施例においては、パティキュレートフィルタは金属不織布を備えたものとして説明したが、セラミックス製のフィルタのような、他の周知のフィルタに適用することも可能である。 【0144】また、上述した実施例では、EGR制御において、EGR弁62の全閉とすることで、排気ガス中の酸素量を増加させていたが、例えば、過給圧が高い運転条件では、EGR弁62を開くこととしても構わない。過給圧が高い場合にEGR弁62を開けば、EGR通路60を通って、吸気側から排気側に空気を直接供給して、パティキュレートフィルタ100に供給される酸素量を増加させることが可能である。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003207 【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年12月4日(2000.12.4) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100096817 【弁理士】 【氏名又は名称】五十嵐 孝雄 (外3名)
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| 【公開番号】 |
特開2002−168112(P2002−168112A) |
| 【公開日】 |
平成14年6月14日(2002.6.14) |
| 【出願番号】 |
特願2000−368296(P2000−368296) |
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