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【発明の名称】 エンジンのデコンプ構造
【発明者】 【氏名】海野 成夫

【氏名】米澤 篤

【要約】 【課題】部品点数が少なく、構造が簡単なエンジンのデコンプ構造を提供する。

【解決手段】排気バルブ用カム61の下方に隣接したジャーナル70に平坦部71を形成し、デコンプ装置66を設ける。デコンプ装置はデコンプカム67、デコンプボルト68、デコンプスプリング69とから構成され、デコンプカムはその取付部72が平坦部にデコンプボルトによりその軸回りに回動自在に取付けられると共に、カムシャフト56が停止状態のとき、デコンプスプリングの付勢力によってそのカム部73の端部が排気バルブ用カムのプロフィール面より径方向外側に突出するように構成する一方、カムシャフトが所定の回転数以上で回転しているとき、そのウェイト部74が遠心力でデコンプカムの端部を排気バルブ用カムのプロフィール面より径方向内側に移動させるように構成した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 クランクシャフトの回転によって回転駆動されるカムシャフト上に形成されたカムによってバルブを開閉操作する動弁装置を備えたエンジンにおいて、上記カムのうち、排気バルブ用カムの下方に隣接したジャーナルに平坦部を形成し、この平坦部にデコンプ装置を設ける一方、このデコンプ装置はデコンプカムと、デコンプボルトと、このデコンプボルトに巻装されるコイル状のデコンプスプリングとから構成され、上記デコンプカムはその取付部が上記ジャーナルの平坦部に上記デコンプボルトによりその軸回りに回動自在に取付けられると共に、上記カムシャフトが停止状態のとき、上記デコンプスプリングの付勢力によって上記デコンプカムはそのカム部の端部が上記排気バルブ用カムのプロフィール面より径方向外側に突出するように構成する一方、上記カムシャフトが所定の回転数以上で回転しているとき、上記デコンプカムはそのウェイト部が遠心力で上記デコンプカムの端部を上記排気バルブ用カムのプロフィール面より径方向内側に移動させるように構成したことを特徴とするエンジンのデコンプ構造。
【請求項2】 上記デコンプカムはその取付部を中心にカム部とウェイト部とを一体に形成した請求項1記載のエンジンのデコンプ構造。
【請求項3】 上記エンジンは内部にカムシャフトをほぼ鉛直方向に配置した二気筒エンジンであって、上記カムシャフト上に設けられるカムを上から上側気筒の排気バルブ用カム、同吸気バルブ用カム、下側気筒の吸気バルブ用カム、同排気バルブ用カムの順に配列した請求項1または2記載のエンジンのデコンプ構造。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンジンのデコンプ構造に関する。
【0002】
【従来の技術】エンジンには始動時に燃焼室41内の圧縮を抜いて始動性を容易にするデコンプ装置を備えたものがある。図11は従来のデコンプ装置を備えた一般的な4サイクルOHC形式エンジンに備えられる動弁装置の拡大図である。
【0003】図11に示すように、図示しないタイミングチェーン等を介して図示しないクランクシャフトの回転が伝達されるカムシャフト1上にはカム2が設けられており、カムシャフト1が回転することによりカム2のプロフィールがシリンダヘッド3内にロッカシャフト4によって揺動自在に支持されたロッカアーム5を揺動運動させる。そして、このロッカアーム5の揺動運動によってシリンダヘッド3内の例えばこの図においては排気バルブ6を開閉操作する。また、カムシャフト1上にはデコンプ装置7が設けられる。
【0004】図12は、カムシャフト1が停止した状態のデコンプ装置7を示す。図12に示すように、デコンプ装置7はカムシャフト1の排気バルブ6用カム2に隣接して取付けられたC字状のホルダ8の一端に、円弧状のデコンプアーム9の一端がアーム軸10によって回動自在に軸着されている。アーム軸10にはスプリング11が取付けられており、このスプリング11はデコンプアーム9をカムシャフト1外周面に常時当接させている。
【0005】一方、排気バルブ6用カム2にはデコンプカム13収納部12が凹設されており、この収納部12に断面が半月状のデコンプカム13が収納されている。
【0006】クランクシャフトが停止状態においては、デコンプアーム9の自由端部はアームピン14を介してデコンプカム13の一部をカム2のプロフィールより外方に突出させるように設定されており、この状態でカムシャフト1が回転すると、図13に示すように、排気バルブ6用のロッカアーム5はデコンプカム13の突出部分によって若干量押し上げられ、排気バルブ6が開いて燃焼室41内の圧縮が抜け、エンジン始動が容易になる。
【0007】エンジンが始動してカムシャフト1が所定の回転数、例えばアイドリング回転数に達すると、図14の矢印に示すように、デコンプアーム9は遠心力によってアーム軸10を中心に、スプリング11に抗してカムシャフト1から遠ざかる方向に回動する。その結果、デコンプアーム9の自由端部はアームピン14を介してデコンプカム13の突出部分を収納部12に収納するように働き、図15に示すように、排気バルブ6は通常状態で作動する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した構造のデコンプ装置は部品点数が多く、構造も複雑である。その結果、組付け工程数も増え、コストアップの要因になる。
【0009】本発明は上述した事情を考慮してなされたもので、部品点数が少なく、構造が簡単なエンジンのデコンプ構造を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明に係るエンジンのデコンプ構造は、上述した課題を解決するために、請求項1に記載したように、クランクシャフトの回転によって回転駆動されるカムシャフト上に形成されたカムによってバルブを開閉操作する動弁装置を備えたエンジンにおいて、上記カムのうち、排気バルブ用カムの下方に隣接したジャーナルに平坦部を形成し、この平坦部にデコンプ装置を設ける一方、このデコンプ装置はデコンプカムと、デコンプボルトと、このデコンプボルトに巻装されるコイル状のデコンプスプリングとから構成され、上記デコンプカムはその取付部が上記ジャーナルの平坦部に上記デコンプボルトによりその軸回りに回動自在に取付けられると共に、上記カムシャフトが停止状態のとき、上記デコンプスプリングの付勢力によって上記デコンプカムはそのカム部の端部が上記排気バルブ用カムのプロフィール面より径方向外側に突出するように構成する一方、上記カムシャフトが所定の回転数以上で回転しているとき、上記デコンプカムはそのウェイト部が遠心力で上記デコンプカムの端部を上記排気バルブ用カムのプロフィール面より径方向内側に移動させるように構成したものである。
【0011】また、上述した課題を解決するために、請求項2に記載したように、上記デコンプカムはその取付部を中心にカム部とウェイト部とを一体に形成したものである。
【0012】さらに、上述した課題を解決するために、請求項3に記載したように、上記エンジンは内部にカムシャフトをほぼ鉛直方向に配置した二気筒エンジンであって、上記カムシャフト上に設けられるカムを上から上側気筒の排気バルブ用カム、同吸気バルブ用カム、下側気筒の吸気バルブ用カム、同排気バルブ用カムの順に配列したものである。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】図1は、本発明に係るエンジンのデコンプ構造が適用された船外機の一例を示す左側面図である。図1に示すように、この船外機21はその最上部に箱状のエンジンカバー22を有し、その内部にバーティカル型(縦形)エンジン23が収納される。エンジン23の前下部(図1における左側)にはステアリングハンドル24が取付けられ、その先端にエンジン23出力調整用のスロットルグリップ25が設けられる。
【0015】また、エンジンカバー22の下部にはシャフトハウジング26が設けられ、このシャフトハウジング26の下部にギヤケース27が設けられる。ギヤケース27の内部にはプロペラシャフト28が軸支され、その後端にプロペラ29が設けられる。
【0016】図2は、図1に示す船外機21のエンジン23部分の縦断面図であり、図3は図2のIII−III線に沿う断面図である。図1および図2に示すように、エンジン23内にはクランクシャフト30がほぼ鉛直方向を向くよう縦置き(バーティカル)に設けられる。
【0017】シャフトハウジング26内にはクランクシャフト30下端に連結されたドライブシャフト31が下方に向かって延び、ドライブシャフト31の下端がベベルギヤ32を介してプロペラシャフト28に連結される。エンジン23の出力、すなわちクランクシャフト30の回転はドライブシャフト31およびベベルギヤ32を経てプロペラシャフト28に伝達され、プロペラ29を回転させる。
【0018】シャフトハウジング26の上部はクランプブラケット33に回転自在に支持されると共に、このクランプブラケット33は図示しない船舶のトランサムに固定される。すなわち、船外機21は船舶に対しほぼ360°に亘って回転可能に設けられ、ステアリングハンドル24を水平方向に振ることにより船外機21全体の向きを変えて船舶の操舵を行うことができるように構成される。
【0019】一方、本実施形態に用いられるエンジン23は例えば4サイクルOHC形式の二気筒エンジンであり、図2および図3に示すように、エンジン23は前側(図における左側)のクランクケース34と、このクランクケース34の後側(図における右側)のシリンダブロック35と、このシリンダブロック35の後側(図における右側)のシリンダヘッド36とから構成される。
【0020】シリンダブロック35は、その後方(図における右側)に向かってクランクシャフト30に直交する方向に延びる筒状のシリンダ37を備えると共に、シリンダヘッド36の後部は開口されてその内部に動弁室38を形成し、シリンダヘッドカバー39によって塞がれる。
【0021】シリンダ37の内側にはシリンダボア40が形成されると共に、シリンダヘッド36にはこのシリンダボア40に整合する燃焼室41が形成される。なお、燃焼室41には外方から点火プラグ42が結合される。
【0022】シリンダボア40内にはピストン43が摺動自在に挿入される。このピストン43とクランクシャフト30とはコンロッド44によって連結され、これによりシリンダボア40内におけるピストン43の往復運動がクランクシャフト30の回転運動に変換される。なお、クランクシャフト30の上端には発電用のフライホイール・マグネト装置45と、ロープ・リコイル式のエンジン始動装置46が設けられると共に、フライホイール47のリングギヤ47aにはクランクケース34前方に配置されたスタータモータ48が作動連結される。
【0023】シリンダヘッド36内には燃焼室41に繋がる排気ポート49と吸気ポート(図示せず)とが形成される。また、シリンダヘッド36内には両ポートを開閉する排気バルブ50および吸気バルブ51が配置される。
【0024】また、シリンダブロック35の側部、本実施形態においては右側部、には吸気装置を構成するキャブレタ52が配置され、その下流側がシリンダヘッド36に一体形成されたインレットパイプ53を介してシリンダヘッド36の吸気ポートに接続されると共に、キャブレタ52の上流側にはサイレンサ54が接続される。
【0025】シリンダヘッド36に形成される動弁室38内には動弁装置55が設けられる。動弁装置55はクランクシャフト30と平行に配置されたカムシャフト56を有し、このカムシャフト56にタイミングチェーン57等を介してクランクシャフト30の回転が伝達される(図2参照)。
【0026】図4は、動弁装置55の拡大図である。図4に示すように、カムシャフト56上にはカム58,59,60,61が設けられ、カムシャフト56が回転することによりカム58,59,60,61のプロフィールがシリンダヘッド36内にロッカシャフト62によって揺動自在に支持されたロッカアーム63を揺動運動させる。そして、このロッカアーム63の揺動運動によってシリンダヘッド36内の排気バルブ50および吸気バルブ51が開閉操作される。
【0027】図5はカムシャフト56の拡大図である。図5に示すように、カムシャフト56上に設けられるカム58,59,60,61は上から上側気筒の排気バルブ用カム58、同吸気バルブ用カム59、燃料ポンプ64(図2参照)駆動用のカム65を挟んで下側気筒の吸気バルブ用カム60、同排気バルブ用カム61の順に配列される。そして、各排気バルブ用カム58,61に隣接してデコンプ装置66が設けられる。
【0028】図6は、例えば下側気筒の排気バルブ用カム61に隣接して設けられたデコンプ装置66の拡大斜視図である。図6に示すように、デコンプ装置66は、デコンプカム67と、デコンプボルト68と、このデコンプボルト68に巻装されるコイル状のデコンプスプリング69との三点から構成され、カムシャフト56の排気バルブ用カム61下方に隣接したジャーナル70に形成される平坦部71に配置される。
【0029】デコンプカム67はその取付部72を中心に上側にカム部73、下側にウェイト部74が一体に形成され、ジャーナル70の平坦部71にデコンプボルト68により、その軸回りに回動自在に取付けられる。ジャーナル70の平坦部71にはデコンプボルト68螺着用のボルト穴75が穿設されており、このボルト穴75の近傍にデコンプスプリング69係止用のスプリング穴76が穿設される。
【0030】図7は、停止状態のカムシャフト56にデコンプ装置66を取付けた状態を示す図であり、図8は図7のVIII−VIII線に沿う断面図である。
【0031】図7および図8に示すように、デコンプカム67はジャーナル70の平坦部71に取付けられ、一端がスプリング穴76に、他端がデコンプカム67のウェイト部74にそれぞれ係止されたデコンプスプリング69によってデコンプボルト68を中心に例えば図7における時計回りの方向に常時付勢されてそのカム部73が排気バルブ用カム61の立ち上り部分61aに当接し、この状態でカム部73の端部が排気バルブ用カム61のプロフィール面より径方向外側に突出するように構成される。
【0032】図9は、カムシャフト56が所定の回転数、例えばアイドリング回転数、以上で回転している状態におけるデコンプ装置66を示す図であり、図10は図9のX−X線に沿う断面図である。図9および図10に示すように、デコンプスプリング69の付勢力はカムシャフト56が所定の回転数以上で回転してデコンプカム67のウェイト部74が遠心力でデコンプボルト68を中心に例えば図9に矢印で示す反時計回りの方向に回ろうとする力より弱く設定される。
【0033】次に、本実施形態の作用について説明する。
【0034】エンジン23が停止した状態、すなわちカムシャフト56が停止した状態では、図7および図8に示すように、デコンプカム67はデコンプスプリング69の付勢力およびウェイト部74の重さによってデコンプボルト68を中心に例えば図7における時計回りの方向に回ろうとしてそのカム部73が排気バルブ用カム61の立ち上り部分61aに当接し、カム部73の端部が排気バルブ用カム61のプロフィール面より径方向に突出する。この状態でカムシャフト56が回転すると、例えばピストン43の上死点近くで排気バルブ用のロッカアーム63はデコンプカム67の突出部分によって若干量押し上げられ、排気バルブ50が開いて燃焼室41内の圧縮が抜け、クランキング力が軽減されてエンジン23の始動が容易になる。
【0035】エンジン23が始動してカムシャフト56が所定の回転数、例えばアイドリング回転数に達すると、図9の矢印に示すように、デコンプカム67はそのウェイト部74の遠心力によってデコンプボルト68を中心に、デコンプスプリング69に抗して反時計回りの方向に回動する。その結果、デコンプカム67の突出端部は排気バルブ用カム61のプロフィール面より径方向内側に移動してロッカアーム63との当接面から離れ、排気バルブ50は通常状態で作動する。
【0036】そして、デコンプカム67はその取付部72を中心にカム部73とウェイト部74とを一体に形成したので、デコンプ装置66は従来のものに比べて部品点数が減り、また、構造もシンプルとなって、組付け工程数が減りコストも低下する。
【0037】一方、上記デコンプ装置66は各気筒に必要であるが、カムシャフト56上に設けられるカム58,59,60,61を上から上側気筒の排気バルブ用カム58、同吸気バルブ用カム59、下側気筒の吸気バルブ用カム60、同排気バルブ用カム61の順に配列すれば、デコンプ装置66はカムシャフト56の両端に配置されることになり、間に燃料ポンプ64等の補器の配置スペースが形成できてレイアウト性が向上する。
【0038】なお、上述した実施形態おいてはカムシャフト56上の吸・排気バルブ用カム58,59,60,61がロッカアーム63を介して吸気バルブ51および排気バルブ50を開閉操作している例を示したが、吸・排気バルブ用カムが直接吸気バルブおよび排気バルブを開閉操作する形式のエンジンにも適用できる。
【0039】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係るエンジンのデコンプ構造によれば、クランクシャフトの回転によって回転駆動されるカムシャフト上に形成されたカムによってバルブを開閉操作する動弁装置を備えたエンジンにおいて、上記カムのうち、排気バルブ用カムの下方に隣接したジャーナルに平坦部を形成し、この平坦部にデコンプ装置を設ける一方、このデコンプ装置はデコンプカムと、デコンプボルトと、このデコンプボルトに巻装されるコイル状のデコンプスプリングとから構成され、上記デコンプカムはその取付部が上記ジャーナルの平坦部に上記デコンプボルトによりその軸回りに回動自在に取付けられると共に、上記カムシャフトが停止状態のとき、上記デコンプスプリングの付勢力によって上記デコンプカムはそのカム部の端部が上記排気バルブ用カムのプロフィール面より径方向外側に突出するように構成する一方、上記カムシャフトが所定の回転数以上で回転しているとき、上記デコンプカムはそのウェイト部が遠心力で上記デコンプカムの端部を上記排気バルブ用カムのプロフィール面より径方向内側に移動させるように構成したため、構造が簡素化し、組付け工程数やコストの削減を図れる。
【0040】また、上記デコンプカムはその取付部を中心にカム部とウェイト部とを一体に形成したため、部品点数の削減を図れる。
【0041】さらに、上記エンジンは内部にカムシャフトをほぼ鉛直方向に配置した二気筒エンジンであって、上記カムシャフト上に設けられるカムを上から上側気筒の排気バルブ用カム、同吸気バルブ用カム、下側気筒の吸気バルブ用カム、同排気バルブ用カムの順に配列したため、補器の配置スペースが確保できてレイアウト性の向上を図れる。
【出願人】 【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
【出願日】 平成12年10月10日(2000.10.10)
【代理人】 【識別番号】100078765
【弁理士】
【氏名又は名称】波多野 久 (外1名)
【公開番号】 特開2002−115518(P2002−115518A)
【公開日】 平成14年4月19日(2002.4.19)
【出願番号】 特願2000−309348(P2000−309348)