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【発明の名称】 タービン車室のシール装置
【発明者】 【氏名】一柳 卓

【要約】 【課題】簡単な手段によりスペースや強度に悪影響を与えることなく軸方向押付け方式のシールリングを容易に採用することができるタービン車室のシール装置を提供する。

【解決手段】外車室1及び内車室2の軸方向対向壁面間にばねによる軸方向押付け方式のシールリング3を介装したタービン車室のシール装置において、前記外車室1の組立の際に、前記シールリング3をばねの付勢力に抗して一時的に引っ込め保持する仮止め手段を設け、該仮止め手段は、シールリング3の背面に植設されてその先端部が車室壁を貫通して前記対向壁面と反対側の壁面から突出する複数本のピン7と、該ピン7の前記突出部にそれぞれ係合して同ピン7の前記ばねの付勢力による移動を阻止する掛け金8と、該掛け金8を外車室1の外からそれぞれ遠隔操作して前記ピン7との係合を解除する針金9と、を備えた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 外車室及び内車室の軸方向対向壁面間にばねによる軸方向押付け方式のシールリングを介装したタービン車室のシール装置において、前記外車室の組立の際に、前記シールリングをばねの付勢力に抗して一時的に引っ込め保持する仮止め手段を設けたことを特徴とするタービン車室のシール装置。
【請求項2】 前記仮止め手段は、シールリングの背面に植設されてその先端部が車室壁を貫通して前記対向壁面と反対側の壁面から突出する複数本のピン部材と、該ピン部材の前記突出部にそれぞれ係合して同ピン部材の前記ばねの付勢力による移動を阻止する係合部材と、該係合部材を外車室の外からそれぞれ遠隔操作して前記ピン部材との係合を解除する可撓性索条と、を備えたことを特徴とする請求項1記載のタービン車室のシール装置。
【請求項3】 前記可撓性索条は、外車室に形成された一以上の開口に複数本が集束されて挿通されることを特徴とする請求項2記載のタービン車室のシール装置。
【請求項4】 前記係合部材は、ピン部材の外周に形成された環状溝部に嵌合する二股状の掛け金であることを特徴とする請求項2記載のタービン車室のシール装置。
【請求項5】 前記係合部材は、ピン部材に径方向に貫通して形成された貫通孔に貫入される可撓性索条の端部部分であることを特徴とする請求項2記載のタービン車室のシール装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ガスタービン等のタービン車室のシール装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、ガスタービンにおいては、図8及び図9に示すように、上下に水平に二分割された外車室100 と内車室101 間の熱伸差や圧力変形による軸方向や半径方向の相対的な移動を許容しながら両者100 ,101 間のガス漏れを防ぐために、円周方向に複数個(図示例では16個)のセグメント102aに分割されたシールリング102 が多用される。
【0003】その場合、図示例のように、外車室100 と内車室101 の軸方向対向壁面間に図示しないばねによる軸方向押付け方式のシールリング102 を用いてシールを行う方法と、特開平9-195712号公報に開示されているように、半径方向対向壁面間にシールリングを介装してシールを行う方法とがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前述した何れのシール方法を採用するかは、全体の設計上何れが有利かを見て決定されるが、一般的には、図示例のように、軸方向押付け方式のシールリング102 を用いてシールを行う方法の方が相対移動量が小さくて採用しやすい。
【0005】ところが、軸方向押付け方式のシールリング102 を用いる場合にあっては、外車室100 の組立の際に、図10に示すように、シールリング102 がばねの付勢力で出っ張った状態のまま外車室100 を吊り下げることになるため、例えばシールリング102 が予め外車室100 側に組み付けられていると、外車室100 の下降によりシールリング102 の各セグメント102aの角部が内車室101 の外周に乗り上げて組立が不完全又は不能になるという虞があった。
【0006】この対策として、各セグメント102aの角部を丸めたり、内車室101 の当り面の外周に大きな逃げを設けることが考えられるが、これらはスペース上困難であり採用し難い。また、シールリング102 を一時的に引っ込めておく仕掛けも考えられるが、組立後に仕掛けを外す作業のための十分なスペースや開口を外車室100等に設けることは、耐圧を要する外車室100 等にあっては強度上困難で、その仕掛け設計が非常に面倒である。これらの理由から、従来では、軸方向押付け方式のシールリング102 の採用が制限されていた。
【0007】本発明は、前述した状況に鑑みてなされたもので、簡単な手段によりスペースや強度に悪影響を与えることなく軸方向押付け方式のシールリングを容易に採用することができるタービン車室のシール装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】斯かる目的を達成するための本発明に係るタービン車室のシール装置は、外車室及び内車室の軸方向対向壁面間にばねによる軸方向押付け方式のシールリングを介装したタービン車室のシール装置において、前記外車室の組立の際に、前記シールリングをばねの付勢力に抗して一時的に引っ込め保持する仮止め手段を設けたことを特徴とする。
【0009】また、前記仮止め手段は、シールリングの背面に植設されてその先端部が車室壁を貫通して前記対向壁面と反対側の壁面から突出する複数本のピン部材と、該ピン部材の前記突出部にそれぞれ係合して同ピン部材の前記ばねの付勢力による移動を阻止する係合部材と、該係合部材を外車室の外からそれぞれ遠隔操作して前記ピン部材との係合を解除する可撓性索条と、を備えたことを特徴とする。
【0010】また、前記可撓性索条は、外車室に形成された一以上の開口に複数本が集束されて挿通されることを特徴とする。
【0011】また、前記係合部材は、ピン部材の外周に形成された環状溝部に嵌合する二股状の掛け金であることを特徴とする。
【0012】また、前記係合部材は、ピン部材に径方向に貫通して形成された貫通孔に貫入される可撓性索条の端部部分であることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係るタービン車室のシール装置を実施例により図面を用いて詳細に説明する。
【0014】[第1実施例]図1は本発明の第1実施例を示す、シール装置の組立前の断面図、図2は同じくセグメントの斜視図、図3は同じくピンと掛け金の斜視図、図4は同じく針金の集束状態の説明図、図5は同じくシール装置の組立後の断面図である。
【0015】図1に示すように、ガスタービンの外車室1及び内車室2の軸方向対向壁面間に、ばねによる軸方向押付け方式のシールリング3が介装され、図示例では、前記シールリング3が外車室1側に環状溝4を介して組み付けられている。
【0016】前記シールリング3は、図2に示すように、円周方向に複数個のセグメント3aに分割され(図9参照)、各セグメント3aの背面には複数個(図示例では4個)のばね5が穴6を介してそれぞれ収装されると共に、長手方向中央部に1個(複数個でも良い)のピン(仮止め手段を構成する)7が植設(図示例ではねじ込み)されている。
【0017】前記ピン7は、その先端部が外車室壁を貫通して前記対向壁面と反対側の壁面から突出すると共に、その先端部寄りの外周に環状の係合溝7aが形成される。そして、前記係合溝7aには、図3に示すように、二股状の掛け金(係合部材として仮止め手段を構成する)8が係合可能になっており、図1に示した係合状態では、前記シールリング3(各セグメント3a)をばね5の付勢力に抗して一時的に引っ込め保持し得るようになっている。
【0018】前記掛け金8には、当該掛け金8を外車室1の外からそれぞれ遠隔操作して前記ピン7との係合を解除する可撓性索条としての針金(仮止め手段を構成する)9が連結される。この針金9は、図4に示すように、外車室1に形成された一以上の開口10(図示例では、上下に水平に分割された外車室1の上半部に1個形成される)に、各セグメント3aの複数本(図示例では、8本)が集束されて挿通される。
【0019】このように構成されるため、外車室1の組立前は、図1に示すように、ピン7が掛け金8によりばね5の付勢力に抗して引っ張られた状態で保持されるため、このピン7と一体のシールリング3の各セグメント3aも環状溝4内に引っ込め保持される。
【0020】これにより、前記組立の際に、外車室1の上半部を吊り降ろしても、シールリング3の各セグメント3aの出っ張り量は小さく或いはゼロであることから、従来例のようにシールリング3の各セグメント3aの角部が内車室2の外周に乗り上げるようなことはなく、円滑に外車室1を組み立てられる。
【0021】外車室1の組立後は、図4に示すように、開口10を通して外車室1の外に延出された各針金9を適宜の手段で引き抜くと、掛け金8がピン7の係合溝7aから自動的に外れる。
【0022】これにより、図5に示すように、ピン7及びこれと一体のシールリング3の各セグメント3aはばね5の付勢力で内車室2側に押圧され、各セグメント3aが環状溝4内から大きく伸び出されてその先端面が内車室2の当り面に圧接される。
【0023】この結果、ばねによる軸方向押付け方式のシールリング3により、外車室1と内車室2との熱伸差や圧力変形による軸方向や半径方向の相対的な移動を許容しながら両者1,2間のガス漏れが良好に防止される。
【0024】そして、本実施例では、針金9及び掛け金8を引き抜くための前記開口10は少なくとも数個あれば良く、しかも細い針金9及び小形の掛け金8を複数本通すだけなので小径で良く、外車室1の設計強度上何ら問題は生じない。
【0025】また、外車室1内では、針金9を介して掛け金8を引き抜ければ良く、その作業スペースも特に必要とせず、省スペース化が図れる。また、ピン7,掛け金8及び針金9等の仮止め手段は構造が簡単で済む。
【0026】また、前記可撓性のある針金8を滑らかに引き抜くために、外車室1の壁面に適宜ガイドを設けると好適である。
【0027】[第2実施例]図6は本発明の第2実施例を示すシール装置の組立前の断面図、図2は同じくピンと針金の斜視図である。
【0028】これは、第1実施例における係合部材としての掛け金8に代えて、ピン7に径方向に貫通して形成された貫通孔7bに、針金9の端部をそのまま貫入するようにした例である。その他の構成は第1実施例と同様である。
【0029】これによれば、第1実施例と同様の作用・効果に加えて、第1実施例の掛け金8が不要となり、部品点数削減によりコストダウンが図れると共に、開口10(図4参照)のより一層の小径化が図れるという利点が得られる。
【0030】尚、本発明は上記各実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、シールリングを内車室側に設けたり、仮止め手段として形状記憶合金,プラスチック及び低融点金属等を用いてシールリングを一時的に引っ込め保持させる等各種変更が可能であることはいうまでもない。
【0031】
【発明の効果】以上、実施例に基づいて詳細に説明したように、本発明の請求項1に係る発明は、外車室及び内車室の軸方向対向壁面間にばねによる軸方向押付け方式のシールリングを介装したタービン車室のシール装置において、前記外車室の組立の際に、前記シールリングをばねの付勢力に抗して一時的に引っ込め保持する仮止め手段を設けたことを特徴とするので、簡単な手段によりスペースや強度に悪影響を与えることなく軸方向押付け方式のシールリングを容易に採用することができる。
【0032】本発明の請求項2に係る発明は、前記仮止め手段は、シールリングの背面に植設されてその先端部が車室壁を貫通して前記対向壁面と反対側の壁面から突出する複数本のピン部材と、該ピン部材の前記突出部にそれぞれ係合して同ピン部材の前記ばねの付勢力による移動を阻止する係合部材と、該係合部材を外車室の外からそれぞれ遠隔操作して前記ピン部材との係合を解除する可撓性索条と、を備えたことを特徴とするので、請求項1に係る発明の作用・効果に加えて、仮止め手段の構造がより一層簡単で済むという利点がある。
【0033】本発明の請求項3に係る発明は、前記可撓性索条は、外車室に形成された一以上の開口に複数本が集束されて挿通されることを特徴とするので、請求項1に係る発明の作用・効果に加えて、開口の数が可及的に少なくて済み、外車室の設計強度上有利であるという利点がある。
【0034】本発明の請求項4に係る発明は、前記係合部材は、ピン部材の外周に形成された環状溝部に嵌合する二股状の掛け金であることを特徴とするので、請求項1に係る発明の作用・効果に加えて、係合部材の構造簡素化が図れるという利点がある。
【0035】本発明の請求項5に係る発明は、前記係合部材は、ピン部材に径方向に貫通して形成された貫通孔に貫入される可撓性索条の端部部分であることを特徴とするので、請求項1に係る発明の作用・効果に加えて、係合部材の構造簡素化がより一層図れると共にコストダウンが図れるという利点がある。
【出願人】 【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
【出願日】 平成12年11月27日(2000.11.27)
【代理人】 【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎 (外2名)
【公開番号】 特開2002−161712(P2002−161712A)
【公開日】 平成14年6月7日(2002.6.7)
【出願番号】 特願2000−358793(P2000−358793)