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【発明の名称】 制震構造及び制震装置
【発明者】 【氏名】熊川 佳伸

【要約】 【課題】各種の金物との干渉を避けつつ接合部に容易に設けることができると共に、安価で効率良く耐震性能を向上させることのできる制震構造を提供する。

【解決手段】交差する方向に接合される上梁11と柱13の接合部21に設けられる制震構造であって、粘弾性材料16を挟み込んで重ね合わせた一対のプレート部材17を、接合部21の角部22に近接する部位において、角部22を挟んだ上梁11の内側側面23と柱13の内側側面24に各々片持ち状態で互い違いに固定することにより構成される。一対のプレート部材17は、角部22から離れて固定されることにより、プレート部材17の重ね合わせ部25と角部22との間に開口26が形成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 交差する方向に接合される一対の軸組部材の接合部に設けられる制震構造であって、粘弾性材料を挟み込んで重ね合わせた複数枚のプレート部材を、前記接合部の角部に近接する部位において、前記角部を挟んだ前記一対の軸組部材の内側側面に各々片持ち状態で互い違いに固定することにより構成され、かつ前記複数枚のプレート部材は、前記角部から離れて固定されることにより、前記複数枚のプレート部材の重ね合わせ部と前記角部との間に開口が形成されていることを特徴とする制震構造。
【請求項2】 粘弾性材料を挟み込んで重ね合わせた一対のプレート部材を、前記接合部の角部に近接する部位において、前記一対の軸組部材に各々片持ち状態で固定することにより構成される請求項1記載の制震構造。
【請求項3】 請求項1又は2に記載の制震構造に用いられる制震装置であって、粘弾性材料を挟み込みんで重ね合わせた複数枚のプレート部材からなり、各プレート部材は、屈曲又は湾曲した平面形状を有する帯状重ね合わせプレート部と、該帯状重ね合わせプレート部の一端部を垂直に折り曲げることにより形成されると共に、固定孔が設けられた固定プレート部とからなることを特徴とする制震装置。
【請求項4】 前記固定孔の周囲を囲む環状突起を前記固定プレート部の外側面に突出させて形成したことを特徴とする請求項3記載の制震装置。
【請求項5】 前記固定プレート部の側縁部と前記帯状重ね合わせプレート部の側縁部とを接続する補強リブが、帯状重ね合わせプレート部の基端部の両側に一体として設けられていることを特徴とする請求項3又は4に記載の制震装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、交差する方向に接合される一対の軸組部材の接合部に設けられる制震構造、及び該制震構造に用いられる制震装置に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】軸組部材は、建物の骨組み構造を構成する部材である。各軸組部材は交差する方向に互いに接合されて、フレームやその他の枠組を形成する。このような骨組み構造は、地震時等において建物を変形させる荷重を受ける場合には、接合部に大きな変形が生じやすい。このような変形に対処するために、接合部を剛接合として変形を抑えることが考えられるが、特に木造建物においては、仕口による接合部を剛接合とすることが困難である。
【0003】一方、変形し易い接合部の構造を利用したものとして、当該接合部にダンパーを取り付けることによって所定の剛性と減衰性を付与し、地震時の振動力を建物全体に分散させると共に建物の構造減衰を増加さることにより、耐震性能を向上させた制震構造が採用されている。
【0004】かかる制震構造に用いられるダンパーとして、三角形形状をしたプレート部材とプレート部材との間に粘弾性体を挟み込んでなる粘弾性ダンパーが知られている。この粘弾性ダンパーによれば、三角形形状の角部を一対の軸組部材による接合部の角部に配置しつつ当該接合部に取り付けられ、粘弾性体をせん断変形させることにより、地震荷重や風荷重による大振幅から小振幅までの振動エネルギーを安定して吸収することが可能になる。
【0005】しかしながら、軸組部材の接合部の角部付近には柱脚金物や筋交い金物等の各種の金物が取り付けられる場合が多いため、従来の粘弾性ダンパーを用いた制震構造によれば、これらの金物との干渉を避けるための工夫が必要であった。また、粘弾性ダンパーは高価な部材であることから、安価で効率良く耐震性能を向上させる制震構造の開発が望まれていた。
【0006】本発明は、これらの従来の課題に着目してなされたもので、各種の金物との干渉を避けつつ接合部に容易に設けることができると共に、安価で効率良く耐震性能を向上させることのできる制震構造及び該制震構造に用いられる制震装置を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、三角形形状をした粘弾性ダンパーを、これの角部を一対の軸組部材による接合部の角部に配置しつつ当該接合部に設置した場合、粘弾性ダンパーの角部に近い部分は、耐震性能に有効に寄与していないことを知見した。
【0008】本発明は、このような知見に基づいてなされたもので、交差する方向に接合される一対の軸組部材の接合部に設けられる制震構造であって、粘弾性材料を挟み込んで重ね合わせた複数枚のプレート部材を、前記接合部の角部に近接する部位において、前記角部を挟んだ前記一対の軸組部材の内側側面に各々片持ち状態で互い違いに固定することにより構成され、かつ前記複数枚のプレート部材は、前記角部から離れて固定されることにより、前記複数枚のプレート部材の重ね合わせ部と前記角部との間に開口が形成されていることを特徴とする制震構造を提供することにより、上記目的を達成したものである(請求項1記載の発明)。
【0009】本発明の制震構造は、粘弾性材料を挟み込んで重ね合わせた一対のプレート部材を、前記接合部の角部に近接する部位において、前記一対の軸組部材に各々片持ち状態で固定することにより構成されることが好ましい(請求項2記載の発明)。
【0010】また、本発明は、上記いずれかの制震構造に用いられる制震装置であって、粘弾性材料を挟み込みんで重ね合わせた複数枚のプレート部材からなり、各プレート部材は、屈曲又は湾曲した平面形状を有する帯状重ね合わせプレート部と、該帯状重ね合わせプレート部の一端部を垂直に折り曲げることにより形成されると共に、固定孔が設けられた固定プレート部とからなることを特徴とする制震装置を提供することにより、上記目的を達成したものである(請求項3記載の発明)。
【0011】本発明の制震装置は、前記固定孔の周囲を囲む環状突起を前記固定プレート部の外側面に突出させて形成することが好ましい(請求項4記載の発明)。
【0012】ここで、上記記載におけるプレート部材は、例えばステンレス等による鋼板プレートや、樹脂プレート等からなるものである。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の好ましい実施形態を添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本実施形態の制震構造10は、図1に示すように、例えば木造建物において、軸組部材である上梁11、下梁12及び柱13によって構成される4角形状のフレーム構造14の耐震性能を向上させるべく採用されたものである。上梁11、下梁12及び柱13は、各々矩形断面を有する角材であって、柱13の上下の両端面を上梁11又は下梁12の下面又は上面に当接させた状態で、互いに垂直に交差する方向に接合することによって、4角形状の骨組であるフレーム構造14が形成される。本実施形態の制震構造10は、フレーム構造14の4隅に位置する軸組部材11,12,13の接合部21に後述する制震装置15を設置することにより構成される。
【0014】本実施形態によれば、図2及び図3に示すように、制震装置15は、粘弾性材料16を挟み込みんで重ね合わせた一対の鋼製プレート部材17からなり、各鋼製プレート部材17は、屈曲した平面形状を有する帯状重ね合わせプレート部18と、帯状重ね合わせプレート部18の一端部を垂直に折り曲げることにより形成されると共に、複数の固定孔19が設けられた固定プレート部20とからなる。
【0015】そして、粘弾性材料16を挟み込んで重ね合わせた一対の鋼製プレート部材17を、例えば上梁11と柱13との接合部21の角部22に近接する部位において、角部22を挟んだ上梁11の内側側面23と柱13の内側側面24に各々片持ち状態で互い違いに固定することによって、本実施形態の制震構造10が構成される。また、本実施形態の制震構造10によれば、一対の鋼製プレート部材17は、角部22から離れて固定されていることにより、一対の鋼製プレート部材17の重ね合わせ部25と角部22との間には開口26が形成される。
【0016】一対の鋼製プレート部材17は、対称な同一形状を有し、厚さ2〜10mm程度の例えばステンレスプレートを加工して形成される。各鋼製プレート部材17の帯状重ね合わせプレート部18は、先端側の略3/4の部分が45度の角度で屈曲した帯状プレートであって、その屈曲部分は幅100〜1000mm程度の帯状の重ね合わせ部25を構成する。各鋼製プレート部材17の固定プレート部20は、帯状重ね合わせプレート部18の基端部を25〜300mmの幅で垂直に折り曲げることにより、基端部に沿って100〜1000mmの長さで形成される。固定プレート部20には、その中央部に例えばラグスクリュー27等の固定用金具を打ち込んで固定するための固定孔19が3箇所に形成されている。
【0017】また、本実施形態によれば、固定孔19の周囲を囲む環状突起29が固定プレート部20の外側面に突出して形成されている(図3参照)。さらに、本実施形態によれば、固定プレート部20の側縁部と帯状重ね合わせプレート部18の側縁部とを接続するようにして、直角三角形状の補強リブ28が、帯状重ね合わせプレート部18の基端部の両側に一体として設けられている。この補強リブ28によって、垂直に折れ曲がった状態の固定プレート部20を強固に支持して地震時における振動力を軸組部材11,13から制震装置15に一層スムースに伝達させることが可能になり、また作用する方向に対して垂直な方向に制震装置15が振動するのを効果的に防止することが可能になる。
【0018】一対の鋼製プレート部材17に挟まれる粘弾性材料16は、例えば粘弾性ゴムやアクリル系等の高分子材料による粘弾性体からなる。粘弾性材料16は、例えば1〜10mm程度の厚さで、両面を各鋼製プレート部材17に密着接合させた状態で挟み込まれ、一対の鋼製プレート部材17のせん断方向のズレに応じてせん断変形することにより、地震荷重や風荷重等による振動エネルギーを効果的に吸収する。
【0019】上述の構成を有する制震装置15は、工場で予め製造され、建設現場に搬入して、例えば上梁11と柱13との接合部21に設置される。すなわち、角部22に近接する部位において、角部22を挟んだ上梁11の内側側面23と柱13の内側側面24に対して、固定プレート部20の先端縁部が例えば各内側側面23,24の中心線に沿うように位置決めしつつ、一対の鋼製プレート部材17を各々片持ち状態で上梁11と柱13に固定する。かかる固定作業は、位置決めした後、固定プレート部20の外側面に突出する環状突起29を上梁11や柱13の内側側面23,24に食い込ませつつ、ラグスクリュー27をねじ込むようにして固定孔19に打ち込むことにより行われる。これにより鋼製プレート部材17は位置ズレを生じることなく各々強固に固定されて、本実施形態の制震構造10が設けられることになる。
【0020】本実施形態の制震構造10によれば、一対の鋼製プレート部材17の各帯状重ね合わせプレート部18は45度の角度で角部22側に屈曲するものであり、固定プレート部20は、上梁11や柱13の内側側面23,24において角部22から例えば100〜400mm離れて固定される。これによって、一対の鋼製プレート部材17の重ね合わせ部25と角部22との間には相当の大きさの開口26が形成されることになり、この開口26には、例えば筋交い金物30等の各種の金物を制震装置15と干渉させることなく取り付けることが可能になる。
【0021】また、本実施形態の制震構造10によれば、地震荷重や風荷重による振動力を受けた場合に、一対の鋼製プレート部材17がズレるのに伴って粘弾性材料16がせん断変形することにより、エネルギーを効果的に吸収すると共にこれらの荷重を建物全体に分散させる。ここで、一対の鋼製プレート部材17の重ね合わせ部25と角部22との間には相当の大きさの開口26が形成されているが、角部22に近い部分においては、粘弾性材料16を挟み込んだ重ね合わせ部25を配置しても、この部分は耐震性能に有効に寄与しないことから、この部分を開口26としても、効率良く耐震性能を向上させることが可能である。したがって、本実施形態によれば、角部22に近い部分を開口26とすることにより、粘弾性材料16の使用面積、及び鋼製プレート部材17を構成するプレートの使用量を少なくして施工コストを低減できると共に、制震装置15の軽量化によって施工性を向上させることも可能になる。
【0022】すなわち、本実施形態の制震構造10及び制震装置15によれば、各種の金物30との干渉を避けつつ接合部21に容易に設けることができると共に、安価で効率良く耐震性能を向上させることができる。
【0023】なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、本発明の制震構造及び制震装置は、図4に示すように3枚又は4枚のプレート部材31を粘弾性材料32を挟み込みつつ重ね合わせて構成することもできる。また、図5(a),(b)に示すように、プレート部材33,34の帯状重ね合わせプレート部35,36の平面形状を、例えば角部37を中心として円弧状に湾曲する形状としたり((a))、直角に屈曲する形状((b))とすることもできる。円弧状に湾曲する形状とすることによって、振動力に対して特に効率の良い制震構造とすることが可能になる。直角に屈曲する形状とすることにより、プレート部材の製造を効率良く行うことが可能になる。さらに、本発明の制震構造及び制震装置は、梁と柱の接合部だけでなく、その他の軸組部材の接合部に設けることもできる。さらにまた、本発明は木造建物の軸組部材に限定されることなく鋼製の軸組部材等に対しても採用することができる。
【0024】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明の制震構造及び制震装置によれば、各種の金物との干渉を避けつつ接合部に容易に設けることができると共に、安価で効率良く耐震性能を向上させることができる。
【出願人】 【識別番号】000183428
【氏名又は名称】住友林業株式会社
【出願日】 平成12年6月15日(2000.6.15)
【代理人】 【識別番号】100076532
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 修 (外3名)
【公開番号】 特開2002−4634(P2002−4634A)
【公開日】 平成14年1月9日(2002.1.9)
【出願番号】 特願2000−180082(P2000−180082)