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【発明の名称】 構造物の制振装置
【発明者】 【氏名】孫 利民

【氏名】後藤 洋三

【氏名】林 正夫

【要約】 【課題】制振装置内の重泥水を上下に移動することによって混合攪拌効果を得られ、均一な粘度に保持出来ると同時に、生成した圧力空気による電力生成も兼用できる。

【解決手段】建物1の上部に設置された同調式液体制振装置2と、建物の下部ないしは地下部に設置された密封式貯蔵槽3と、装置2及び貯蔵槽3間を接続した連通管5,6と、装置2内部及び貯蔵槽3に封入された重泥水4と、前記連通管5,6を介して重泥水4を上下に循環する駆動手段7とを備え、貯蔵槽3内に発生した圧力空気を発電用ガスタービンの圧力源として用いるとともに、建物1の振動検知により循環を停止し、前記制振装置2を作動させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 建物の上部に設置された同調式液体制振装置と、建物の下部ないしは地下部に設置された密封式貯蔵槽と、装置及び貯蔵槽間を接続した連通管と、前記装置内部及び貯蔵槽に封入される重泥水を前記連通管を介して上下に循環する駆動手段とを備え、前記貯蔵槽内に発生した圧力空気を発電源として用いることを特徴とする構造物の制振装置。
【請求項2】 前記建物の振動検知により循環を停止し、前記制振装置を作動させることを特徴とする請求項1に記載の構造物の制振装置。
【請求項3】 前記循環駆動手段が揚水用ポンプであることを特徴とする請求項1または2に記載の構造物の制振装置。
【請求項4】 前記循環駆動手段が貯蔵槽内に発生した圧力空気の圧力を利用したものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の構造物の制振装置。
【請求項5】 前記循環駆動手段は、夜間電力利用により駆動されることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の構造物の制振装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、重泥水を用いた構造物の制振装置に関する。
【0002】
【従来の技術】高層ビル、高橋脚などの高層建築構造物にあっては、地震、あるいは強風時の揺れを抑制するために、制振装置が用いられている。制振装置のうち、流体のスロッシング現象を利用した装置としては、清水、及び水より比重の重い重泥水を用いた装置がある。前者の水を利用した装置では、飲用水の確保には好適であるものの、効果的なスロッシング現象を生じさせるためには大きなタンク容量を必要とする。これに対して、後者の重泥水を用いた装置は、粘性液体によるスロッシング現象であるため、同一効果を得るためのタンク容量が小さくて良い。従って、この種の装置では、飲用水の不要な高橋脚などの高層建築構造物の制振装置として好適である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この重泥水を用いた装置では、一日程度の周期で静置状態におかれると、泥水粒子が沈降して粒子と水とが分離状態となり、この状態で揺れが発生しても瞬時に粘性液体の機能を発揮できないため、定期的に攪拌装置を用いて攪拌混合する必要が生じ、不経済となっていた。
【0004】ところで、最近では、CAES方式と称し、夜間電力を利用したコンプレッサ駆動による圧縮空気を地下にあるタンク内に貯蔵し、昼間時にはこの圧縮空気を圧力源に利用してガスタービンを駆動し、電力を生成する方法が開発されている。
【0005】本発明は、以上の電力生成方式を、制振装置内に蓄えられた重泥水の保全に適用したものであり、その目的は、制振装置内の重泥水を上下に移動することによって混合攪拌を得られ、均一な粘度に保持すること及び、圧力空気を利用した電力生成も兼用できるようにした構造物の制振装置を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため、本発明は、建物の上部に設置された同調式液体制振装置と、建物の下部ないしは地下部に設置された密封式貯蔵槽と、装置及び貯蔵槽間を接続した連通管と、前記装置内部及び貯蔵槽に封入される重泥水を前記連通管を介して上下に循環する駆動手段とを備え、前記貯蔵槽内に発生した圧力空気を発電源として用いることを特徴とする。従って、この発明では、重泥水を上下に循環させることで、泥水粒子の沈降を防止し、常時、制振装置としての機能を維持できる。また、貯蔵槽内に発生した圧力空気を発電源として利用できるため、自家発電のためにかかるコストを低減できる。
【0007】この発明においては、前記建物の振動検知により循環を停止し、前記制振装置を作動させることが好ましい。また、前記循環駆動手段は揚水用ポンプであっても良いし、貯蔵槽内に発生した圧力空気の圧力を利用したものであっても良い。さらに、前記循環駆動手段は、夜間電力利用により駆動されることにより、維持コストを低減できる。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好ましい実施の形態につき、添付図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の第一実施形態を示すものである。図において、高層建物1の屋上部には、同調式液体制振装置2が設置され、同じく建物1の地下部には密閉式の貯蔵槽3が配置され、これら装置2及び貯蔵槽3の内部には所定水位で重泥水4がそれぞれ密封されている。
【0009】重泥水4は、ベントナイトなどの泥水材料、pH調整剤、界面活性剤その他添加物を水に均一に分散混合した比重1.4〜2.0、粘度30〜1000cpsの粘調な溶液であって、添加物の配合により粒子は沈降しにくいように調整されているものの、一日以上静置することによって沈降し、溶液の均一性が損われるものとなっている。
【0010】そして、制振装置2と貯蔵槽3間は一対の連通管5,6で接続され、その一方を昇水管5、他方を降水管6としている。昇水管5の管路中には揚水用ポンプ7及びソレノイド式ストップ弁8が配置され、降水管6の管路中には逆止弁9及び同じくソレノイド式ストップ弁10が配置され、ポンプ7の駆動によりそれぞれに封入された重泥水4を矢印のごとく循環させるようになっている。
【0011】また、貯蔵槽3の上部には空気抜き用の配管11が配置され、逆止機構付のソレノイド式の空気抜き弁14により開閉可能としているほか、内部には圧力センサ16が配置されている。なお、空気抜き用配管12は図示しないが、発電用ガスタービンの圧力源に接続され、内部が昇圧した状態で空気抜き弁14を開いて、圧力空気を供給するようになっている。
【0012】さらに、符号17は建物1の屋上部に配置された振動センサ17であり、以上の各センサ16,17の検出信号は、制御部18に入力される。制御部18は内蔵されたタイマ及びこれらセンサの出力に応じて各弁8,10,14の開閉制御及びポンプ7の駆動停止制御を行うものである。
【0013】先ず、昼間時にはポンプ7は停止し、ストップ弁8,10は閉じられ、これによって制振装置2は建物1に加わる振動に対する待機状態に保持され、この間に建物1に揺が生ずると、制振装置2内の重泥水4はスロッシングし、通常の制振効果を発揮する。
【0014】次いで、夜間電力使用時間帯になった時点で、振動センサ17からの信号が入力されない状態で、空気抜き弁14をあけ、ストップ弁7を開けるとともに、ポンプ7を駆動することで、貯蔵槽3内の重泥水4を一旦制振装置側2側に揚泥し、次いで、空気抜き弁14を閉じストップ弁10を開けるサイクルを繰返すことで、装置2側に蓄められた重泥水4を貯蔵槽3側に降泥させ、この循環による攪拌作用により、重泥水の粒子を均一に分散し、スロッシング用液体に再生する。また、以上のサイクルを繰返すことで、貯蔵槽3内の空気は給気−圧縮を繰返し、順次高圧となる。
【0015】なお、このサイクルの間に、振動センサ17が振動をピックアップすると、昼間時と同様、ポンプ7を停止し、ストップ弁8,10を閉止状態に切替えることで、制振効果を発揮する。振動が停止したならば、夜間電力使用時間帯が終るまで前記と同様のサイクルを繰返し、時間帯を過ぎたなら、昼間時の待機状態に戻す。また、貯蔵槽3内に蓄えられた高圧空気は、発電用ガスタービン側に供給することで、自家発電用補助動力として有効活用できる。図2は本発明の第二実施形態を示す。なお、符号は第一実施形態と同一であるが、ポンプ7の移送方向及び逆止弁9の方向が異なり、また装置2側は待機に解放されているほかは、基本的構造は同一である。この場合、ポンプ7の駆動により、装置2内の重泥水4を貯蔵槽3内に移送することで、貯蔵槽3の内圧を高め、次いでその空気圧により、ストップ弁10を開くことにより、貯蔵槽3内に一旦蓄えられた重泥水4を装置内に循環させるサイクルを繰返す。
【0016】なお、以上の各実施形態では、重泥水の移送手段としてポンプを用いたが、貯蔵槽3内にコンプレッサ動力による圧力空気を導入し、この空気圧により、重泥水4を循環させることも可能である。
【0017】図3(a)〜(c)は以上のコンプレッサ動力を利用した第三実施形態における原理的構成を示すものである。図において、貯蔵槽3の両側には空気導入管20及び空気放出管21が配管され、それぞれ、供給用及び放出用の空気弁22,23で開閉可能としている。空気導入管20は夜間電力によって作動する図示しないコンプレッサに接続され、空気放出管21は同じく図示しないガスタービンの高圧空気源に接続されている。また、装置2と貯蔵槽3とは、一本の連通管24で接続され、管路中に設けたストップ弁25により管路を開閉可能としている。
【0018】そして、(a)に示すように、コンプレッサを駆動しつつ、供給側空気弁22をあけ、放出側空気弁23を閉じ、内部が昇圧した状態でストップ弁25を開けると、連通管24を通じて貯蔵槽3内に蓄えられた重泥水4は上昇し、装置2側へ供給される。次いでコンプレッサの駆動を停止し、供給側空気弁22を閉じ、放出側空気弁23を開けると、貯蔵槽3の内部は減圧し、(b)に示すように、装置2側の重泥水14は降下し、再び貯蔵槽3側に戻される。
【0019】以上のサイクルを繰返すことで、重泥水14は攪拌され、均一な混合溶液となる。放出された空気は、ガスタービン用の空気圧源として利用される。さらに、昼間時、あるいは、夜間時であっても振動センサが振動を感知すると、(c)に示すように、ストップ弁25が閉じられ、両空気弁22,23が閉じられることで、装置2は通常のスロッシング動作による制振作用を行う。
【0020】
【発明の効果】以上の説明により明らかなように、本発明による構造物の制振装置によれば、制振装置内の重泥水を上下に移動させることにより混合攪拌効果を得られ、均一な粘度に保持出来ると同時に、生成した圧力空気による電力生成も兼用できる。またその作業を夜間電力を利用して行うことで、維持コストも低減できる。
【出願人】 【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
【識別番号】591224700
【氏名又は名称】林 正夫
【出願日】 平成12年6月21日(2000.6.21)
【代理人】 【識別番号】100071283
【弁理士】
【氏名又は名称】一色 健輔 (外3名)
【公開番号】 特開2002−4633(P2002−4633A)
【公開日】 平成14年1月9日(2002.1.9)
【出願番号】 特願2000−186490(P2000−186490)