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【発明の名称】 LNG地下タンク屋根の架設工法
【発明者】 【氏名】上田 貴夫

【氏名】門中 章二

【氏名】前中 敏伸

【氏名】高橋 透

【要約】 【課題】LNG地下タンクの槽体と屋根構築工程のラップ度の高い屋根架設工法を提供する。

【解決手段】槽体外枠としての連続地中壁5完了後これに接して地上部に屋根躯体9構築所と構築された屋根躯体9のトラベリング面となるコンクリートマット7を敷設し、連続地中壁内部掘削、槽体側壁10構築作業と該マット7上での屋根外周構造部のテンションリング8と一体で内装をも済ませる屋根躯体9構築とを並行してとり行ない、該側壁10工事が完了した時点で前記の構築した屋根躯体9を水平トラベリングして該側壁10上に移動させ現場打設にて一体化するとした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 槽体外枠としての連続地中壁完了後これに接して地上部に屋根躯体構築所と構築された屋根躯体のトラベリング面となるコンクリートマットを敷設し、連続地中壁内部掘削、槽体側壁構築作業と該マット上での屋根外周構造部のテンションリングと一体で内装をも済ませる屋根躯体構築とを並行してとり行ない、該側壁工事が完了した時点で前記の構築した屋根躯体を水平トラベリングして該側壁上に移動させ現場打設接続にて一体化するとしたことを特徴とするLNG地下タンク屋根の架設工法。
【請求項2】 大径、大重量のドーム状の屋根躯体を均等若しくは不均等分割し、これ等を同一マット上で構築し、連続地中壁のコーピング上に確保した該マット上の直線ガイドと連絡の回転ガイドを用いて上記屋根躯体分割体の先行体を後続体の席を空ける所定位置に回転トラベリングしていって後続の分割体のセット部を確保し、該分割体相互を該セット位置にて接合するとした請求項1記載のLNG地下タンク屋根の架設工法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、タンク槽体内装構築工程と屋根躯体構築工程とを完全にラップさせることを可能としたLNG地下タンク屋根の架設工法に関する。
【0002】
【従来の技術】LNG地下タンクにおいては、地下に上部が開放された有底筒体状のコンクリート製槽体を構築した後、そのコンクリート製槽体の開口部にその周方向に沿って環状のナックルプレートを取り付けると共に槽体内(底で)において上記開口部を覆う鋼製のドーム状の屋根(該ナックルプレートより上位部のもの)を組み立てた後、この屋根をエアレイジングあるいはジャッキアップ工法によって槽体内を上昇させ上記ナックルプレートにその基端部を接続させて取り付け、かかる対雨養生のもとでコンクリート製槽体内側に保冷材層、さらにその表面にメンブレンを張設してタンクが完成する(容器としての該保冷材層繞囲完成のため、屋根内側には保冷材層を支持するための吊りデッキが吊り下げられる)。
【0003】この一連の工程において、屋根の構築期間はタンク全体の構築期間の約半分を占める。この間、前述の槽体内の作業(保冷材層、メンブレンパネルの張設)は一切し得ないため、工程的に槽体と屋根の構築はラップできるところがなく、長工期、ハイコストになり施工的にもタンク内部に多工種が集中し、施工効率、安全性においても不利となっている。
【0004】そこで、槽体と屋根の構築工程をラップし得るようにした提案が特許第2876803号になされている。
【0005】すなわち図19a、bに示す如く、「地下に有底筒体状の槽体1を埋設すると共に該槽体1の開口部にこれに沿ってリング状のナックルプレート2等の屋根外周構造部を設けた後、該屋根外周構造部に基端部を支持させて上記開口部を覆うドーム状の屋根3を構築する方法において、上記屋根外周構造部を取り付けると共に地上部で上記屋根3をその中央頂部を区画するセンター部分3aと、該センター部分3aの外周部を複数個に放射状に分割された扇状の分割屋根片3b、…とに分割成形すると共に上記センター部分3aに相対向させて少なくとも2つの上記分割屋根片3bを取り付けて基本屋根ブロック4を形成した後、該基本屋根ブロック4を上記屋根外周構造部に取り付けて上記槽体開口部上に掛け渡し、爾後上記センター部3aと屋根外周構造部とに順次残りの分割屋根片3bを掛け渡して接合して屋根3全体を構築する」とするものである。
【0006】しかして、まず地上部でドーム状の屋根3をその中央頂部を区画するセンター部分3aとこのセンター部分3aの外周部を複数個に放射状に分割された扇状の分割屋根片3bとに分割成形する(図示省略)ことで、槽体内作業を控えるタンク以外で屋根3を構築することができ、工場稼動率を高めると共にコンクリート製槽体1の構築作業と並行し得る。
【0007】また、基本屋根ブロック4を形成した後、これをナックルプレート2に取り付けて槽体開口部上に掛け渡されることでこの基本屋根ブロック4に順次残りの分割屋根片3bを接合させることになるので、上記掛け渡された基本屋根ブロック4が作業ベースとして利用することができ、屋根支持用の底部からの支柱や特別な足場等を用いることなく屋根を構築することができる。
【0008】さらに、屋根3は分割屋根片3bを順次接合することにより、コンクリート製槽体1の開口部が覆われることになり、覆われた部分に応じて槽体内壁に保冷材層を取り付けて内槽を組み立てることができ、タンク全体の建設工期を短縮することができる、としている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかるに、叙上提案にあっては、タンク槽体1の築造後の対雨養生のための屋根完成までの工程は決してすみやかでない。
【0010】すなわち、LNG地下タンク躯体としての重要構成部の屋根と側壁との間の取り合い部であるナックルプレート2等の屋根外周構造部は、槽体1の開口部に槽体1の完成を待って設けられるとされていて、これが完成しないと地上部で構築を完了して待機している基本屋根ブロック4等の吊り込み搬入ができないので、迅速性に欠けるものとなっている。さらに、基本ブロック4、分割屋根片3b…の接合作業は槽体1の開口内上空での槽体内作業を制約する慎重な長時間作業となる。また、開口部が覆われた部分に応じて槽体内壁に保冷材層を取り付けできるとしているが、細分化された単一の分割屋根片3bが確保する対雨養生範囲は狭く広い部分に渡って槽内作業の安全が保障されるには相当の接合作業の進展を待たねばならない。
【0011】本発明は叙上の事情に鑑みなされたもので、その目的とするところは、槽体構築後の屋根架設完成までの工程をすみやかなものとした、著しく短工期、ローコストな施工効率、安全性に優れる槽体と屋根の構築工程をラップし得るようにしたLNG地下タンク屋根の架設工法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明のLNG地下タンク屋根架設工方法は、槽体外枠としての連続地中壁完了後これに接して地上部に屋根構築所と屋根躯体のトラベリング面となるコンクリートマットを敷設し、連続地中壁内部掘削、槽体側壁構築作業と該マット上での屋根外周構造部のテンションリングと一体で内装をも済ませる屋根躯体構築とを並行してとり行ない、該側壁工事が完了した時点で前記の構築した屋根躯体を水平トラベリングして該側壁上に移動させ現場打設接続にて一体化するとしたものである。
【0013】大径、大重量のドーム屋根の場合には、ドーム状の屋根躯体を均等若しくは不均等分割し、これ等を同一マット上で構築し、連続地中壁のコーピング上に確保した該マット上の直線ガイドと連絡の回転ガイドを用いて上記屋根躯体分割体の先行体を後続体の席を空ける所定位置に回転トラベリングしていって後続の分割体のセット部を確保し、該分割体相互を該セット位置にて接合するとして、上記工法を施工する。
【0014】
【作用】別施工エリアのマット上にて屋根外周構造部を有して内装も済ませた屋根躯体がタンク側壁完成と同時に搬入されて直ちに接続されるので、槽体開口部の覆いは著しく迅速に完了してしまい槽内作業を可能とし、槽体と屋根の構築工程のラップに寸時の無駄もない究極のラップを実現する。
【0015】さらに、槽内保冷工事の対雨養生保障の範囲はトラベリング単位がトラベリング走行安定上分割体であっても細分化はなされず面積は大きく確保されるので、広範囲に渡り、覆い未完の状態でも槽内作業の許容度が高い。
【0016】コーピング上の回転ガイドに連絡のトラベリング機構は、屋根躯体の分割体を自在に側壁上の任意位置に移動させ得るので、マットの敷設を単一に済まし得て合理的である。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図1〜18に基づいて説明する。図1のa〜fは本発明架設工法によったタンク完成手順を示し、「a.遮水土留工事」にて、連続地中壁5の構築を行なう。
【0018】「b.掘削工事&屋根築造」にて、該壁5内の掘削工事6と該壁5に接して敷設のコンクリートマット7上にて高剛性のテンションリング8と一体の屋根躯体9(2分割)の構築とを並行して行なう。
【0019】「c.躯体工事&屋根工事」にて、該掘削工事6の終了後の底版、側壁10構築作業と該屋根躯体9への吊りデッキ11取り付けとを並行作業する。
【0020】「d.屋根工事(トラベリング)」にて、該側壁10工事完了と同時に該2分割の屋根躯体9を直線、回転トラベリングにてタンク開口対向部に搬入し、さらにマット7上にて構築された残り半分の屋根躯体9′をトラベリング(直線)にて搬入して屋根を完成させる。屋根外周構造部(テンションリング8)と一体に構築される屋根躯体9、9′は、トラベリングに際し、極めて安定である。
【0021】「e.保冷工事」にて、保冷材層12の取り付けを行なう。
【0022】「f.完成」にて、メンブレン工事をとりおこない、タンクを完成する。
【0023】なお、本発明にあっては上述の如く屋根躯体を吊り込みすることなくコンクリートマット7上でトラベリングするものであるために、重量体であっても差し支えない。
【0024】よって、既存の軽量の金製屋根に代えて重量の嵩むRC屋根にすることも可能である。この場合、タンクが地下水レベルの影響を受けて浮力相殺のために重量を稼がねばならない場合のタンク底版厚層化を回避できる等の利点が生じる。
【0025】しかして、RC屋根も場合をもって図2イ〜ヘは前記「d.屋根工事(トラベリング)」に至る2分割屋根躯体9、9′の構築、トラベリング搬入、接続工事の手順を示す。
【0026】すなわち、「イ.トラベリング仮設工事にて、」ガイドウォール9を介して施工の地中連続壁1の当該ガイドウォール13に接して地盤改良14のうえコンクリートマット7の敷設がなされる。地中連続壁5内の掘削工事6も並行して行なわれる。
【0027】「ロ.テンションリング構築にて、」マット7上にてテンションリング8の構築がなされる。当該テンションリング8は2分割屋根躯体の先行躯体9のものを示す。側壁10が並行して構築される。
【0028】「ハ.屋根構築、保冷工事にて、」該テンションリング8に連続してシェル部の躯体9の保冷(保冷材層の貼設)を含めた構築がなされる。躯体9は縦断にて示されている。
【0029】「ニ.トラベリングにて、」完成した屋根躯体9を掘削孔に向けてトラベリングさせる。
【0030】「ホ.トラベリング完了にて、」掘削孔の半分を覆う態様に移送された先行の屋根躯体9は、回転トラベリングでもって対向部に移動させられ(図示省略)、後行の屋根躯体9′が先行体の元位置に搬入される。
【0031】「ヘ.接続工事にて、」躯体9と9′との接合とテンションリング8′(8は図示省略)と側壁10の現場打設による接合15を行なう。
【0032】図3は上記ニ、ホ、ヘの工程を平面、正面図で示す。
【0033】すなわち、「a.1基目トラベリングにて、」先行の躯体9がトラベリングされる。
【0034】「b.1基目回転にて、」到達の躯体9を回転トラベリングに付する準備がなされる。
【0035】「c.2基目トラベリングにて、」躯体9の回転トラベリングを完了すると共に後行の躯体9′のトラベリングがなされる。
【0036】「d.接続(完了)にて、」互いに突き合う躯体9と9′とを接合して一体化する(テンションリング8と側壁10との接合15もなされる)。
【0037】図4に分割屋根躯体の補強措置を示す。
【0038】図示の如く円未完のテンションリングの強度不足によるトラベリング中の変形防止のためにテンションワイヤー若しくは補剛トラス16を補強用弦材として手当てしてトラベリング時の強度不足を補うと良い。これは、分割体接合完了で回収する。
【0039】前記図3a〜cに渡るトラベリング手順を、図5〜8の平面図はトラベリング機構を開示した態様で示す。
【0040】すなわち、マット7には直線状のガイド溝路17、…が連続地下壁10のコーピング10′には該直線状のガイド溝路17と連絡する回転ガイド溝路18が設けられ、該ガイド溝路17間並びに外側には敷き鉄板の支承レール部19、…(テンションリング8下面の相当部にはすべり材19′が貼着されている)が並設され、さらに当該溝路17、支承レール部19間さらにコーピング5′上にはジャッキ取り付け用のアンカーボルト挿嵌孔列20、…が穿孔されている。
【0041】図5〜8は2分割体9、9′のトラベリング経過を示し、マット起点での構築(図5)、トラベリングでタンク槽開口に過半を推進させた態様(図6)、直線トラベリング終点に到達した態様(図7)、左回りにて半工程の回転トラベリングをした態様(図8)を夫々示す。
【0042】図9a、bは該溝路17、18を滑走する支承脚21の説明図である。
【0043】b図に示される如く、テンションリング8下面に鋼管22を突出脚として埋設し、そのあげ底の底蓋22a下部に円状のベアリングプレート(高力黄銅支承板)22bを嵌着させて成る。
【0044】しかして、a図に示す如く円柱状の支承脚21は直線から円方向への方向転換に対応自在である。
【0045】当該支承脚21は直線から円への転換がなし得れば良く、転換に支障なければ多角形でもよい。
【0046】以上、最小分割の2分割で説明しているが、3以上または不均等分割であっても差し支えない。
【0047】また、小さい屋根(直径40m程度)の場合には分割の要はない。かかる場合には該回転ガイド溝路は不要となり、直線状のガイド溝路17は地下連続壁10上を突き抜け、かつ、対向辺上には受け入れ溝路を確保すれば良い。当然のことながら、円完成のテンションリングの全下面について該支承脚21が配される。
【0048】図10〜12は直線トラベリングを説明しており、テンションリング8の中央部(図10)、端部(図11、図12)の側面にはジャッキ23の一方の取付基盤が取り付けられ、他方の取付基盤は該アンカーボルト挿嵌孔20に締結される。
【0049】図13〜14は回転トラベリングを説明しており、テンションリング8の周側面にはジャッキ23、…が取り付けられる。
【0050】ストローク時刻々変位する回転トラベリングに適応すべく図14に示す如く、ジャッキ23の対テンションリング8への取り付きは球座を介したものとなっている。
【0051】図15はRC屋根躯体9をもってトラベリング完了態様を縦断図で示す。
【0052】側壁10上端に現場打設による接合15用の空隙が確保されており、側壁10と屋根躯体9のテンションリング8とは現場打設によって理想的な強固な一体化がなされる。
【0053】図16は鋼板屋根の場合の屋根躯体9の直線トラベリング終点直前の態様を示す。
【0054】終点にての処理は図15と同じである。
【0055】図17、18は、RC2分割屋根躯体9、9′の場合における相互接合、現場打設を説明する。
【0056】図17において、躯体9、9′の接合部25については、予め夫々に作業用に設置してあったところのローリング足場26、26′を利用する(図中27、…は足場レールを示す)。
【0057】すなわち、図18aに示す如く、回動可能な足場26、26′を接合部25に沿わせ、渡り足場28を渡架し、底型枠29をセパレータ30、ボルト止め31で支持しつつ鉄筋32、32′連結のうえコンクリートを打設して接合をなす。
【0058】図18cは該接合部25のテンションリング8部の手当てを示し、底型枠25をパイプサポート33で支持しつつ、コンクリートを打設する。
【0059】図18bは前記図18cを側方から見ているが、この空隙24は視認されるパイプサポート33を撤去して側型枠34を当てがって該現場打設接合15にて側壁10とテンションリング8との一体化を果たす。
【0060】
【発明の効果】本発明は叙上の如く構成されるので、以下列挙の諸効果を奏する。
(1)タンクの側壁が完了後、直ちにトラベリングを行い屋根架設を行なうため、対雨養生のための屋根架設完了が大幅に早まる。そのため、タンク内の機械工事が早期に着手することができるので、全体工期も早まる。
【0061】しかして、工期短縮によるコストダウン及び全体工期の短縮によるタンクの使用開始時間を早めることができる。
(2)地上で屋根外周構造部を含む屋根構築を行なうため、安全性、施工効率が向上する。そして、屋根に係わる機械設備工事を先行して施工できる。
(3)ほぼ完成体の屋根のトラベリング持ち込みのため、高所作業が非常に少なくなるため安全性が高い。
(4)トラベリングをジャッキ推進とした場合、トラブルの発生要因が少なく安全性が高い。
(5)回転トラベリングは複数の分割屋根躯体の単一マット上での構築を可能とし、悪条件のエリアでも工事を可能とするので好ましい。
【出願人】 【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
【識別番号】000150110
【氏名又は名称】株式会社竹中土木
【出願日】 平成12年6月16日(2000.6.16)
【代理人】 【識別番号】100076598
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一豊
【公開番号】 特開2002−4627(P2002−4627A)
【公開日】 平成14年1月9日(2002.1.9)
【出願番号】 特願2000−180817(P2000−180817)