トップ :: E 固定構造物 :: E04 建築物

【発明の名称】 建 物
【発明者】 【氏名】金屋 芳樹

【氏名】古越 拓男

【氏名】馬渕 順三

【氏名】村上 勇治

【氏名】三嶋 志郎

【要約】 【課題】将来的な設備計画の変更に容易に対応することが可能な建物を提供する。

【解決手段】内部が中空のメカニカルウォール2の一方の壁面2a側に輪転機室4を設け、輪転機室4に対して接続される設備配管及び配線をメカニカルウォール2の内部に収納した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 内部が中空の壁状体の少なくとも一方の壁面側に居室空間を設け、該居室空間に対して接続される設備配管及び配線を前記壁状体内部に収納したことを特徴とする建物。
【請求項2】 請求項1記載の建物であって、前記壁状体の内部空間全体が、空調用ダクトとして利用されることを特徴とする建物。
【請求項3】 請求項2記載の建物であって、前記居室空間から前記壁状体を隔てて反対側の位置に、空調設備が配置されることを特徴とする建物。
【請求項4】 請求項3記載の建物であって、前記空調設備は、熱源器と空調機とを同一の架台上に搭載した屋外配置可能な空調ユニットから構成されていることを特徴とする建物。
【請求項5】 請求項3または4記載の建物であって、前記空調設備は、竪型成層蓄熱槽を備えた構成とされていることを特徴とする建物。
【請求項6】 請求項5記載の建物であって、前記竪型成層蓄熱槽は、鋼管を鉛直配置することにより形成されていることを特徴とする建物。
【請求項7】 請求項1から6のいずれかに記載の建物であって、前記壁状体は、平行配置された一対の耐震壁を互いに接続した構成とされ、なおかつ、前記壁状体は、建物全体を平面視した場合にその略中央部に配置されるとともに、複数階に亘って設けられていることを特徴とする建物。
【請求項8】 請求項7記載の建物であって、前記居室空間は、前記複数階を吹き抜けとした構成とされていることを特徴とする建物。
【請求項9】 請求項8記載の建物であって、前記居室空間の床スラブは、鉄廃材を利用した機械基礎として形成されていることを特徴とする建物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、工場等に用いられて好適な建物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の建物は、内部に収容すべき機器類等の配置計画に合わせて、建築計画を設定し、これに基づいて設備計画を設定するようにしていた。また、このような建物における設備計画は、通常、各室毎に室内全体の空調を行うように設定されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、工場の建物においては、将来的な機器類の増設や更新に伴い、各室ごとの空調能力、あるいはエネルギー供給能力を変更する必要が生じることが想定される。このような場合、あらためて設備計画を変更する必要があるが、その変更の自由度は、建物の建築計画により制約されてしまい、必ずしも最も効率のよい計画が策定できるとは限らない。また、工場において、設備配管や空調機械の更新、増強を行うには、機器類の稼働を停止させて工事を行わなければならず、工事費用だけでなく、工場の稼働停止に伴う損失を含めたコストが嵩むものとなってしまう。
【0004】さらに、工場においては、人の居住域が限定されている場合が多く、この場合に、上述のように部屋全体を空調するようにしたのでは、建物のランニングコストが必要以上に増大してしまう。
【0005】本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、将来的な設備計画の変更に容易に対応することが可能であり、なおかつ、従来に比較してランニングコストの面においても有利な建物を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために本発明においては以下の手段を採用した。すなわち、請求項1記載の発明は、内部が中空の壁状体の少なくとも一方の壁面側に居室空間を設け、該居室空間に対して接続される設備配管及び配線を前記壁状体内部に収納したことを特徴としている。
【0007】このような構成により、壁状体内に、設備配管あるいは配線を自由に配置することが可能となり、したがって、居室空間内の任意の位置に、エネルギー供給あるいは空調吹き出しを行うことができる。また、将来的にも、建築計画に影響されず、設備の更新・増強を行うことができる。
【0008】請求項2記載の発明は、請求項1記載の建物であって、前記壁状体の内部空間全体が、空調用ダクトとして利用されることを特徴としている。
【0009】このような構成により、空調用ダクトの費用を削減することができるとともに、ダクトの付け替えを伴わずに、空調吹き出し箇所を変更することができる。
【0010】請求項3記載の発明は、請求項2記載の建物であって、前記居室空間から前記壁状体を隔てて反対側の位置に、空調設備が配置されることを特徴としている。
【0011】このような構成により、効率よく、空調設備を居室空間に対して壁状体を介して接続することができる。
【0012】請求項4記載の発明は、請求項3記載の建物であって、前記空調設備は、熱源器と空調機とを同一の架台上に搭載した屋外配置可能な空調ユニットから構成されていることを特徴としている。
【0013】このような構成により、空調ユニットを容易に設置することが可能となるとともに、将来的な設備の更新増設に対しては、空調ユニットの更新・増設による対応が可能となる。
【0014】請求項5記載の発明は、請求項3または4記載の建物であって、前記空調設備は、竪型成層蓄熱槽を備えた構成とされていることを特徴としている。
【0015】このような構成により、工場の機器類の稼働時間が限定されている場合に、その時間のみに効率よく空調を行うことができる。
【0016】請求項6記載の発明は、請求項5記載の建物であって、前記竪型成層蓄熱槽は、鋼管を鉛直配置することにより形成されていることを特徴としている。
【0017】このような構成により、蓄熱槽を低コストおよび短工期で設置することができる。
【0018】請求項7記載の発明は、請求項1から6のいずれかに記載の建物であって、前記壁状体は、平行配置された一対の耐震壁を互いに接続した構成とされ、なおかつ、前記壁状体は、建物全体を平面視した場合にその略中央部に配置されるとともに、複数階に亘って設けられていることを特徴としている。
【0019】このような構成により、壁状体により建物の耐震性を向上させることができる。
【0020】請求項8記載の発明は、請求項7記載の建物であって、前記居室空間は、前記複数階を吹き抜けとした構成とされていることを特徴としている。
【0021】このような構成により、居室空間内に大型の機器類を配置することができるとともに、その場合に、居住域のみを成層空調することができる。
【0022】請求項9記載の発明は、請求項8記載の建物であって、前記居室空間の床スラブは、鉄廃材を利用した機械基礎として形成されていることを特徴としている。
【0023】このような構成により、居室空間内に大型の機器類を設置したとしても、基礎の体積を小さくすることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。図1から5は、本発明の一実施の形態である建物1を模式的に示す図であり、図1は、建物1の外観斜視図、図2は、側断面図、図3は、建物1の1階平面図、図4は、建物1の2階平面図、図5は、建物1の3階平面図である。
【0025】この建物1は、印刷工場として計画されたものであり、その中央部に桁行方向に延在するようにメカニカルウォール(壁状体)2が配置されるとともに、メカニカルウォール2の一方の壁面2a側に、輪転機3が収容される複数階吹き抜けの輪転機室(居室空間)4が形成され、他方の壁面2b側に、トラックが到着可能な発着所5、および、印刷物の発送梱包に使用される作業室6が形成された構成となっている。
【0026】メカニカルウォール2は、互いに平行配置されるとともにブレース7,7,…を内蔵した一対の耐震壁8,8を接続することにより形成されており、建物の基礎部9から屋根10にまで亘って設けられ、建物1の躯体の耐震性を向上させるように機能する。
【0027】また、建物1を支持する基礎部9のうち、輪転機室4の下方に位置する床スラブは、機械基礎Mとされており、その内部に鉄廃材が埋め込まれ、これにより、少ない体積で、輪転機3と同程度の重量を有するようになっている。
【0028】また、建物1のうち、メカニカルウォール2の壁面2b側における作業室6の上方の位置は、屋根10が部分的に切り欠かれて形成されており、この部分が屋上11として形成された構成となっている。そして、屋上11には、空調設備12が、屋外に露出した状態で配置されている。空調設備12は、複数の空調ユニット13,13,…からなるものであり、この場合、輪転機室4側から見て、メカニカルウォール2を隔てて反対側の位置に配置される。
【0029】空調ユニット13は、チラー(熱源器)14とAHU15(Air Handling Unit:空調機)とを同一の架台16上に搭載したものであり、各架台16ごとにユニット化されて、運搬・設置可能な構成となっている。
【0030】また、メカニカルウォール2は、その内部に、内部空間Sを有した中空の構造とされるとともに、内部空間Sに電気配線や通信回線、その他空調配管以外の配管を収納した構成となっている。さらに、メカニカルウォール2の内部空間Sは、AHU15に接続されてAHU15から冷暖房された空気が供給されるようになっている。これにより、メカニカルウォール2の壁面2aまたは2bに空調吹出口を設けることによって、AHU15からの空調空気を輪転機室4または作業室6に供給できるようになっている。この場合、メカニカルウォール2は、その内部空間S全体が、空調用ダクトとして機能することとなる。
【0031】また、この建物1においては、竪型成層蓄熱槽18が、空調設備12に隣接した状態で、建物1の躯体の外側に位置させて設けられている。この竪型成層蓄熱槽18は、鋼管を地上に立設したものであり、それぞれのチラー14,14,…に対して接続されている。
【0032】ここに、竪型成層蓄熱槽18、空調ユニット13、およびメカニカルウォール2は、図6に示すように互いに接続されている。すなわち、竪型成層蓄熱18は、チラー14,14,…に接続されて、特に夜間に、チラー14によって内部の貯蔵水を、冷水または温水とすることができるようになっており、また、昼間、あるいは、輪転機の運転時に、AHU15,15,…に貯蔵水を供給できるようになっている。そして、竪型成層蓄熱槽18の冷水または温水とされた貯蔵水を利用して、あるいは、チラー14から供給された温水または冷水を利用して、AHU15,15,…において熱交換を行い、暖気または冷気をメカニカルウォール2内に供給することができるようになっている。
【0033】また、メカニカルウォール2と輪転機室4との間には、複数の吹出口19,19,…が設けられている。これら吹出口19,19,…は、開閉制御可能に構成されており、これにより、輪転機室4内の所望の位置を冷暖房することが可能となっている。また、吹出口19,19,…は、上下複数段に亘って設けられており、これにより、輪転機室4のうち、作業員が存在する居住域のみを成層空調することが可能となっている。
【0034】上述の建物1においては、内部が中空のメカニカルウォール2の壁面2a,2bに接して、空調対象の輪転機室4あるいは作業室6が設けられ、なおかつ、メカニカルウォール2の内部に、電気配線や通信回線、あるいは、空調配管以外の配管が収納された構成となっているために、メカニカルウォール2内において、設備配管あるいは配線を自由に配置することが可能となる。したがって、輪転機室4あるいは作業室6などの任意の位置に、エネルギー供給等を行うことができ、設備計画の自由度が高い。また、将来的にも、建築計画に影響されることなく、容易に設備の更新・増強を行うことができるため、建物1の長寿命化を図ることができるとともに、この際に、輪転機3の稼働停止時間を最小限として、損失の発生の抑制を図ることができる。
【0035】また、この場合、メカニカルウォール2の内部空間S全体が、空調用ダクトとして利用されているために、従来に比較して、空調用ダクトの費用を削減することができるとともに、ダクトの付け替えを伴わずに、空調吹き出し箇所を変更することができ、設備の更新・増強に良好に対応することができる。
【0036】また、上述の建物1においては、主な空調対象である輪転機室4からメカニカルウォール2を隔てて反対側の位置に、空調設備12を配置するようにしたために、AHU15から空調対象の輪転機室4までの距離が長くならず、空調効率がよい。また、AHU15とメカニカルウォール2との間に、長いダクト等を設置する必要も無いため、空間利用効率が優れているだけでなく、設備コストを抑制することができる。
【0037】さらに、上述の建物1においては、空調設備12が、チラー14とAHU15とをパッケージ化して、同一の架台16上に搭載した屋外配置可能な空調ユニット13により構成されているために、空調設備12の容易な設置が可能であり、施工性がよい。また、将来的な設備の更新増設に対しては、空調ユニット12の更新・増設による対応が可能となり、容易に対応できる。
【0038】さらに、上述の建物1においては、竪型成層蓄熱槽18が備えられた構成となっているので、輪転機3の稼働時間が限定されている場合に、その時間のみに効率よく空調を行うことができ、深夜電力等を利用した低コストの空調が可能となる。
【0039】さらに、この場合、竪型成層蓄熱槽18が、鋼管を鉛直配置することにより形成されているために、蓄熱槽を低コストおよび短工期で設置することができ、建物施工費用の削減および施工期間の短縮化に貢献することができる。
【0040】また、上述の建物1においては、メカニカルウォール2が、平行配置された一対の耐震壁8,8を互いに接続した構成とされ、なおかつ、メカニカルウォール2が、建物1全体を平面視した場合にその略中央部に配置されるとともに、複数階に亘って設けられているために、耐震機能を良好に発揮することが可能であり、建物全体の耐震性を向上させることができる。
【0041】さらに、輪転機室4を複数階吹き抜けとしたために、輪転機室4内に大型の輪転機3を配置することができるとともに、この場合に、輪転機室4内の居住域のみを成層空調するようにすれば、ランニングコストの低減化を図ることができる。
【0042】また、上述の建物1においては、輪転機室の床スラブが、鉄廃材を利用した機械基礎Mとして形成されているために、大型の輪転機3を設置したとしても、基礎部9の体積を小さくすることができる。これにより、基礎部9を設置する上での掘削土量を削減して、施工費用の削減を図ることができる。
【0043】なお、上記実施の形態において、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で他の構成を採用するようにしてもよい。例えば、上記実施の形態において、建物1は印刷工場として形成されているが、これに限定されず、大型機器の組立工場、あるいは、他の用途の建物であってもよい。
【0044】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1に係る建物においては、内部が中空の壁状体のの壁面に接して、居室空間を設けた構成とされ、なおかつ、壁状体の内部に、設備配管および配線が収納された構成となっているために、壁状体内において、設備配管あるいは配線を自由に配置することが可能となり、したがって、居室空間の任意の位置に、エネルギー供給や空調吹き出しを行うことができ、設備計画の自由度が高い。また、将来的にも、建築計画に影響されることなく、容易に設備の更新・増強を行うことができるため、建物の長寿命化を図ることができる。
【0045】請求項2に係る建物においては、壁状体の内部空間全体が、空調用ダクトとして利用されているために、従来に比較して、空調用ダクトの費用を削減することができるとともに、ダクトの付け替えを伴わずに、空調吹き出し箇所を変更することができ、設備の更新・増強に容易に対応することができる。
【0046】請求項3に係る建物においては、居室空間から壁状体を隔てて反対側の位置に空調設備を配置するようにしたために、空調設備から居室空間までの距離が長くならず、空調効率がよい。また、空調設備と壁状体との間に、長いダクト等を設置する必要が無く、空間利用効率が優れているだけでなく、コストを低減化することができる。
【0047】請求項4に係る建物においては、、空調設備が、熱源器と空調機とを同一の架台上に搭載した屋外配置可能な空調ユニットにより構成されているために、空調設備を容易に設置することが可能となり、施工性がよい。また、将来的な設備の更新増設に対しては、空調ユニットの更新・増設による対応が可能となり、設備機能の更新に良好に対応することが可能となる。
【0048】請求項5に係る建物においては、空調設備として、竪型成層蓄熱槽を備えた構成となっているので、輪転機の稼働時間が限定されている場合に、その時間のみに効率よく空調を行うことができ、深夜電力等を利用した低コストの空調が可能となる。
【0049】請求項6に係る建物においては、竪型成層蓄熱槽が、鋼管を鉛直配置することにより形成されているために、蓄熱槽を低コストおよび短工期で設置することができ、建物施工費用の削減および施工期間の短縮化に貢献することができる。
【0050】請求項7に係る建物においては、壁状体が、平行配置された一対の耐震壁を互いに接続した構成とされ、なおかつ、壁状体が、建物全体を平面視した場合にその略中央部に配置されるとともに、複数階に亘って設けられているために、耐震壁がその耐震機能を発揮することにより、建物全体の耐震性を向上させることが可能となる。
【0051】請求項8に係る建物においては、居室空間を複数階吹き抜けとしたために、居室空間内に大型の機器類を配置することができ、工場として好適な建物を実現することができる。また、この場合に、居住域のみを成層空調するようにすることによって、ランニングコストの低減化を図ることができる。
【0052】請求項9に係る建物においては、居室空間の床スラブが、鉄廃材を利用した機械基礎として形成されているために、大型の機器類を設置したとしても、基礎の体積を大きくする必要が無く、これにより、掘削土量を削減して、施工費用の削減を図ることができる。
【出願人】 【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
【出願日】 平成12年6月26日(2000.6.26)
【代理人】 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武 (外3名)
【公開番号】 特開2002−4614(P2002−4614A)
【公開日】 平成14年1月9日(2002.1.9)
【出願番号】 特願2000−191746(P2000−191746)