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【発明の名称】 戸建て住宅の長寿化対応システム
【発明者】 【氏名】中村 孝之

【氏名】藤森 洋一郎

【氏名】梶田 秀之

【要約】 【課題】スケルトンとインフィルとが分割されていない戸建て住宅において、設計の段階にて、今後、高齢化社会で、100年経過後においても居住空間を簡単に変更可能とし、居住ができるという、戸建て住宅の長寿化対応システムを提供する。

【解決手段】居住者の経時的な生活状態の変化に伴い、戸建て住宅の住居空間を容易に変更可能とすべく、戸建て住宅の住宅枠組及び部材を、物理的変化への対応を構築するデュラブルシステム(D)と、空間変化への対応を構築するくジャスタブルシステム(A)の2つの部分に、大きく分けて構成した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 居住者の経時的な生活状態の変化に伴い、戸建て住宅の住居空間を容易に変更可能とすべく、戸建て住宅の住宅枠組及び部材を、物理的変化への対応を構築したデュラブルシステム(D)と、生活空間の要求変化への対応を可能とするアジャスタブルシステム(A)の2つシステムにより構成したことを特徴とする戸建て住宅の長寿化対応システム【請求項2】 請求項1記載の戸建て住宅の長寿化対応システムにおいて、デュラブルシステム(D)には、メンテナンスフリーで恒久的に耐用性を有するメンテナンスフリー部材群(D1)と、補修を加えることを前提とした上で目標耐用性を有する計画的メンテナンス部材群(D2)と、交換することを前提とした上で目標耐用性を有する計画的交換型部分部材群(D3)の3つの部材群に分けて構成したことを特徴とする戸建て住宅の長寿化対応システム。
【請求項3】 請求項1記載の戸建て住宅の長寿化対応システムにおいて、アジャスタブルシステム(A)は、空間変更を支える空間変更型部材群(A1と、生活環境系に関係して変更する環境対応型部材群(A2)と、新しい生活機能を付加する為の新機能付加型部材群(A3)と、内外装のイメージを更新するデザイン更新型部材群(A4)より構成したことを特徴とする戸建て住宅の長寿化対応システム。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、戸建て住宅の永年居住者が、経時的に種々の理由で、空間変化を要求するような状態となった場合に、この居住者の要求に応じて、バラエティ豊富に居住空間が変更可能な戸建て住宅を提供せんとするものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、マンション等の集合住宅を対象として、内部の住居空間を容易に変更可能とする為に、長期にわたり存続し、長持ちする柱等のスケルトン部分と、交換修理が必要で個人が変更可能な、間取り変更用の部分であるインフィル部分という、2つの部材群に分けて、設計するSIという思想が存在する。該SIについては、図11において図示している。図11は集合住宅におけるスケルトンとインフィルの思想を示す図面である。即ち、マンション等の集合住宅において、利用区分の観点から、共同で利用する部分と個人で利用する部分にわけ、また耐久性の区分の観点から、固定部分と、変更可能な部分にわけ、また所有区分の観点から、共用部分と専有部分にわけるという従来の考え方から、100年以上長持ちする建物の骨格としてのスケルトン部分と、10〜30年で取替え変更する間取りや内装のような、インフィル部分に分ける考え方である。これにより、従来の大量生産・大量消費のフローの住宅供給から、社会の財産として、ストックとしての長持ちする住宅を供給しようとするものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記、スケルトン部分とインフィル部分に分けて、マンション等を設計するというSIの思想やシステムは、部材の供給方法や、その所有形態が相違する戸建て住宅の場合には、適合しにくいのである。つまり、マンション等の集合住宅では、建物の構造体となるスケルトンが共通のものとして建設されており、内部の居住空間は、大体において、スケルトン部分とは独立しており、広い無柱の空間が最初から構成されており、この無柱空間に簡易的な部屋割り壁を設けている構造であるので、戸建て住宅の場合とは相違するのである。
【0004】本発明は、従来から、設計の段階において、スケルトンとインフィルとが分割されていない戸建て住宅において、今後、100年経過後においても、物理的耐久性と、生活要求変化の対応性の両面から適切な変更を行って居住ができるという、戸建て住宅の長寿化対応システムを提供せんとするものである。即ち、戸建て住宅において、住宅のストック価値の向上や実現するものであり、居住者の経時的な変化に伴う、居住空間の変更要求に、十分に対応可能な、戸建て住宅を提供するものである。住宅のストック価値を向上することを実現する為に、戸建て住宅を構成する不在群を、デュラブルシステムとアジャスタブルシステムとに分けて構成したものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明が解決しようとする課題は、以上の如くであり、次に該課題を解決する為の手段を説明する。請求項1においては、居住者の経時的な生活状態の変化に伴い、戸建て住宅の住居空間を容易に変更可能とすべく、戸建て住宅の住宅枠組及び部材を、物理的変化への対応を構築するデュラブルシステム(D)と、空間変化への対応を構築するアジャスタブルシステム(A)の2つの部分に、大きく分けて構成したものである。
【0006】請求項2においては、前記デュラブルシステム(D)には、メンテナンスフリーで恒久的に耐用性を有するメンテナンスフリー部材群(D1)と、補修を加えることを前提とした上で目標耐用性を有する計画的メンテナンス部材群(D2)と、交換することを前提とした上で目標耐用性を有する計画的交換型部分部材群(D3)の3つの部材群に分けて構成したものである。
【0007】請求項3においては、前記アジャスタブルシステム(A)は、空間変更を支える空間変更型部材群(A1)と、生活環境系に関係して変更する環境対応型部材群(A2)と、新しい生機能を付加する為の新機能付加型部材群(A3)と、内外装のイメージを更新するデザイン更新型部材群(A4)より構成したものである。
【0008】
【発明の実施の形態】次に本発明の実施の形態を説明する。図1は、多様化・複雑化する住み手の変化を表示した図面、図2は、住み手のライフステージの変化を示す図面、図3は、住み手の住宅に対する変化要求の発生源を示す図面、図4は、社会との関係性の変化に伴う空間変化対応実施例を示す図面、図5は、家族の関係性の変化に伴う空間変化対応実施例を示す図面、図6は、身体機能の変化に伴う空間変化対応実施例を示す図面、図7は、住み手の嗜好・価値観の変化に伴う空間変化対応実施例を示す図面、図8は、暮らしの基部の変化に伴う空間変化対応実施例を示す図面、図9は、環境の変化に伴う空間変化対応実施例を示す図面、図10は、本発明の戸建て住宅におけるデュラブルシステム(D)と、アジャスタブルシステム(A)の比較を示す図面、図11は、集合住宅におけるスケルトンとインフィルの考え方を示す図面である。
【0009】図2においては、戸建て住宅の住み手のライフステージの経時的変化が図示されている。それぞれの住み手の年齢により、『家族誕生期』→『家族成長期』→『家族自立期』→『家族成熟期』とに分類できる。それぞれの時期に応じて、戸建て住宅の間取りや空間は最適の状態が存在するのである。そして、特に、家族成熟期においては、子供世代が居なくなった時期であり、この時期が長く続くので、この時期にあった住居空間が求められるのである。
【0010】また図1に示す如く、住み手の生活様式が多様化・複雑化することによっても、従来の戸建て住宅の空間形式では対応できなくなっているのである。即ち、『人口の高齢化』、『家族の小子化』、『非婚率の増加』、『女性の社会進出の増加』等の要因である。また、『家族形態の多様化』、『ライフスタイルの多様化』等によっても空間の変化が求められる。このように、従来の画一的な戸建て住宅の空間形態では対応できないのである。
【0011】図3においては、このような『ライフステージ変化に沿った空間変化要求』、『ライフスタイル変化に沿った空間変化要求』、『環境変化に沿った空間変化要求』、『社会状況変化に沿った空間変化要求』に伴い、図4から図9までに記載した、それぞれの変化要求に伴う、『社会との関係性の変化に伴う空間変化対応実施例』、『家族の関係性の変化に伴う空間変化対応実施例』、『身体機能の変化に伴う空間変化対応実施例』、『住み手の嗜好・価値観の変化に伴う空間変化対応実施例』、『暮らしの基部の変化に伴う空間変化対応実施例』、『環境の変化に伴う空間変化対応実施例』、『空間変更の実施例要求』が図示されている。
【0012】図4に図示した『社会との関係性の変化』に伴う場合とは、夫が在宅勤務となり、デスク等がおける最低限のスペースの確保と仕事部屋の確保が問題となり、妻が趣味を活かした教室を開く場合には、教室内容に合わせた設備の追加やスペースの確保が必要となり、また夫婦ともに在宅時間が増加し、近所付き合いが活発となり、地域に対するオープンな場造りの為に、気軽な接客空間の確保が必要となる。その為に寝室を接客空間に、応接を仕事部屋の空間に変更している。
【0013】図5においては、『家族の関係性の変化』に伴う空間変更の実施例を図示している。この場合には、子供が誕生し、子育て中心の生活となる為に、安全性の高い育児スペースの確保、子供との遊びの空間の確保が必要となる。子供が成長した場合には、子供部屋としての独立の空間が必要となる。また、子供が独立した場合には、子供部屋が空き室となる。さらに、親を引き取って同居する場合には、パライバシーを守る独立部屋が必要となる。このように、家族に起因する空間要求が次々と出てくるのである。
【0014】図6においては、『身体機能の変化』に伴う空間変更の実施例を図示している。深夜に頻繁にトイレに立つことが多くなると、寝室とトイレの近接化が必要となる。また、住居の中での移動が億劫となると、居室に生活空間を近接・集中させる必要が出てくる。その為に、寝室を一階に移動する。毎日の布団の上げ下ろしが辛くなると、和風寝室からベッドにする。また、足腰が弱くなると移動に支えが必要となり、廊下や階段に手摺りが必要となり、玄関ベンチの設置も必要となる。介護が必要となった場合には、サニタリースペースやトイレの拡大が必要となる。
【0015】図7においては、『嗜好・価値観の変化』に伴う空間変更の実施例が図示されている。この場合には、夫婦での時間より、個人の時間を重視するようになり、夫婦それぞれの個室の確保や、主寝室を区切って夫婦分寝室化が必要となる。また、アットホームな持てなしよりも、フォーマルな接客を重視するようになり、独立した応接室や接客座敷の確保が必要となる。また、法事等の『家』としての行事を重視するようになり、大勢が集まれる行事スペースの確保が必要となる。
【0016】図8においては、『暮らしの気分の変化』に伴う空間変更の実施例を図示している。この場合には、家族が揃う週末の夕食では、雰囲気を変えて楽しむ為に、ムードを変える演出効果のある照明が必要となる。また、天気の良い日は庭で過ごしたいとの要求から、ガーデンファニチュアの設置や、室内と庭との一体感や連続性が必要となる。大勢の友人を招いた場合には、パーティルームのように使いたいので、リビングやダイニングの家具の移動によるスペース確保が必要となる。
【0017】図9においては、『環境の変化』に伴う空間変更の実施例が図示されている。この場合には、季節の変化に合わせて、自然を感じながら快適に過ごしたいという場合には、夏座敷・冬座敷的な外部とのオープンな空間が必要となる。また、隣家の建て替えによって、眺望や採光が遮られた場合には、開口の大きさや方向の変更が必要となる。また近隣に商業施設が新設され、人通りや車の交通量が増加した場合には、通りからの目隠し壁やクローズドスタイルへの外構の変更が必要となる。
【0018】図10においては、本発明の要部を示すデュラブルシステム(D)とアジャスタブルシステム(A)の分類が図示している。該物理的変化への対応を可能とする部材群であるデュラブルシステム(D)の中を、メンテナンスフリー部材群(D1)と計画的メンテナンス部材群(D2)と計画的交換型部分部材群(D3)に分類している。メンテナンスフリー部材群(D1)を構成する部材は、メンテナンスフリーで恒久的に目標性能を維持する部材群であり、戸建て住宅において、基礎や骨組や床下構造材や屋根下地構造材や壁下地材や天井下地材やサッシや玄関ドア枠や配線や配管やダクトなどである。計画的メンテナンス部材群(D2)を構成する部材は、補修を加えることを前提に、目標性能を維持する部材群であり、外壁や床や配管や愛着のある家具等である。計画的交換型部分部材群(D3)は、補修交換することを前提に、目標性能を維持する部材群であり、屋根葺き材や防水材や樋や外部付帯材や網戸や玄関ドアやシャッターや庇やバルコニー構成材や内装仕上材や内装造作材や水回り設備建材や、設備機器や家具や内装仕上材やウインドウトリートメントや可変間仕切り等により構成されている。
【0019】生活空間の要求変化への対応を可能とする、戸建て住宅における変更適合性を具備したインフィルシステムとしてのアジャスタブルシステム(A)には、空間変更型部材群(A1)と環境対応型部材群(A2)と新機能付加型部材群(A3)とデザイン更新型部材群(A4)の4部材群に分けられている。空間変更型部材群(A1)は、空間の大きさや形状変更・形状追加・空間同志の関係性の変更など空間変更を支える仕組である。空間変更型部材群(A1)には、増改築構造材や外壁や可変壁や間仕切り家具等が存在する。環境対応型部材群(A2)は、光・熱・音等の生活環境系の制御及び享受の関係性を変更向上させる仕組である。環境対応型部材群(A2)には、開口部材や外構や設備や造作等が含まれる。新機能付加型部材群(A3)は、生活の利便性や快適性等の新しい生活機能を付加していく為の仕組である。新機能付加型部材群(A3)としては、配線・配管・家具・設備機器・内装造作等が含まれる。デザイン更新型部材群(A4)は、素材や仕上等の内外装のイメージを更新する仕組である。デザイン更新型部材群(A4)としては、外壁や内装仕上材や家具や外構やカーテン等が含まれる。
【0020】
【発明の効果】本発明は以上の如く構成したので、次のような効果を発揮するものである。第1に、居住者自身の手によって、戸建て住宅の居住空間の変更が出来るのである。即ち、生活者参加型のシステムを構築したものである。軽量化と作業の容易性と作業における安全性を図ることが出来たものである。第2に、用途機能に合わせた、間仕切り形態を選ぶことが出来るのである。また接続か分離かといった2者択一ではなくて、フアジーな仕切りを含めた検討ができるのである。第3に、間仕切り部材に合わせた空間可変提案を提供でき、実際の生活において有用なプラン展開を踏まえて、部材の開発と可変提案が出来るのである。第4に、長期間に渡り、空間変更の関連部材及びサービスを提供することがてき、関連部材の継続的生産や長期ストック、陳腐化しない基本システムの開発が出来るのである。第5に、居住空間として求められる基本性能が保持でき、遮音や遮熱や遮光や遮臭や、強度や安定性等の間仕切り基本性能を確保することが出来るのである。第6に、納まりが美しく、かつインテリア性に優れた間仕切り壁や内装材が提供でき、インテリア性の向上を図ることが出来たものである。第7に、設備配線・照明・コンセント等の配慮が成されているので、間仕切りの変更によって、各空間ごとに発生する配線や照明やコンセントの適切な確保と工事不要の配慮が出来るのである。
【出願人】 【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
【出願日】 平成12年6月22日(2000.6.22)
【代理人】 【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
【公開番号】 特開2002−4602(P2002−4602A)
【公開日】 平成14年1月9日(2002.1.9)
【出願番号】 特願2000−187105(P2000−187105)