トップ :: E 固定構造物 :: E02 水工;基礎;土砂の移送




【発明の名称】 付着水堰
【発明者】 【氏名】南出 芳雄

【要約】 【課題】従来の取水堰は、設計上の必要落差に制約を受け、取水量も適用分野によって必ずしも十分に能力を発揮し得ないという問題があった。

【解決手段】そこで、堰の落差に応じて集水溝の位置と形状を一定の範囲で形成することによって、任意の低落差型付着水堰を得ることができたものである。すなわち、集水溝の開口端の位置を、越流部に続く上流側の緩い勾配平面を含む平面と下流側の俯角を構成する面との交差位置から垂直に構成される面と、該垂直面から俯角面側に12.5°傾斜した面との間の適宜位置に配設したものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 取水堰越流部を円弧状曲面に形成し、越流部に続く上流側を緩い勾配平面となし、越流部に続く下流側を俯角となし、越流部に続く上流側の緩い勾配平面と、勾配平面に続く水平平面とからなる取水堰において、集水溝の開口端の位置を、越流部に続く上流側の緩い勾配平面を含む平面と下流側の俯角を構成する面との交差位置から垂直に構成される面と、該垂直面から俯角面側に12.5°傾斜した面との間の適宜位置に配設することを特徴とする、付着水堰。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】 本発明は、水力発電や上水道等の取水設備に関し、除塵並びに防砂機能を備えかつ制水機能を有する堰の構造の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】 さて、水力発電や上水道の取水設備において、流れ込んでくる流木や塵芥の流入を阻止するために堰の上流においてスクリーンを設けてこれを防いでいたが、スクリーンに溜まった流木や塵芥を除去する作業が必要になる。そこで、スクリーンを設けることなく効果的に流木や塵芥を除去する堰の構造が既に提案されている。この技術は特許第53127号等で知見し得るところである。また、前記技術において、取水量が少ないという問題点を解決する技術を、本願発明者が案出し、実用新案登録第2130207号として実用化し、効果的に利用されているところである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】 ところが、これら従来の前記技術における取水堰は、設計上の必要落差(=越流部上端から開口部上端までの距離)が確保されればその機能を発揮して効果的に機能し得るが、既設改良の場合には、落差に制約を受けるので十分に機能し得ない場合が生ずる。また、取水量が上水道の分野では十分能力を発揮できるが、水力発電や灌漑の分野では取水量が少なく、十分に能力を発揮しているとは言えない。
【0004】
【課題を解決するための手段】 そこで本発明では、堰の落差に応じて集水溝の位置と形状を一定の範囲で形成することによって、任意の低落差型付着水堰を得ることができたものである。すなわち、取水堰越流部を円弧状曲面に形成し、越流部に続く上流側を緩い勾配平面となし、越流部に続く下流側を俯角となし、越流部に続く上流側の緩い勾配平面と、勾配平面に続く水平平面とからなる取水堰において、集水口の開口端の位置を、越流部に続く上流側の緩い勾配平面を含む平面と下流側の俯角を構成する面との交差位置から垂直に構成される面と、該垂直面から俯角面側に12.5°傾斜した面との間の適宜位置に配設することを特徴とする、付着水堰。
【0005】
【作用】 取水口の開口端の位置を、堰の落差に応じて適宜な値で設定することによって、堰本来の機能を損なうことなく、かつ、堰の用途に応じた水質を確保できるようになるものである。堰による取水の目的は、上水道用や発電所用の異物(土砂、落葉、流木等)の混入を極力少なく要求されるものと、灌漑用水や工業用水のように多少の異物が混入していてもさほど問題視されないものがあり、これにより使用目的に応じた付着水堰を設計・施工することが可能になったものである。
【0006】
【実施例】 図示の実施例に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係る堰の断面図を示したもので、1は越流部であって円弧状の曲面をなしている。2は、前記越流部1に続く上流に位置し上流側に向かって傾斜する緩い勾配平面である。3は、前記勾配平面2の上流で勾配平面2に続く水平平面である。4は、前記越流部1に続く下流に位置した俯角面であり、5は前記俯角面4に続く集水溝である。6は集水溝5の開口部で制水口として機能するもので、開口端7は下流側の隔壁である。
【0007】 勾配平面2は水平面に対して角度Uで緩く上流方向に傾斜しており、角度Uは前記先行技術からも知見し得るように4°〜8°程度が実用範囲であり、角度が小さいほど整流効果が大きくなる。一方、俯角面4は垂直面に対して角度Dの俯角をもって構成されており、前記先行技術から知見し得るように角度Dは13°〜17°の範囲が適当であり、水の付着性や混入物の排出性能から15°前後が実用的な角度である。堰の落差Hは、付着水堰の機能を最も良く発揮するには1300mm前後であることが本願発明者の実験により確認されており、このときの開口部6の開口幅Kは、70mm前後が異物の混入率が極めて小さくなる位置であることも実験的に確かめられている。
【0008】 さて、貯水池に溜められた水は水平平面3から勾配平面2を経て越流部1にさしかかり越流部1を越えた後は、水の一部は付着性によって越流部1に続く俯角面4に沿って斜めに流下して集水溝5に流れ込み、それ以外の水は越流部1を越える際の遠心力や慣性力によって垂直ないしは下流方向に流下して排水溝へ排水される。ここで、俯角面4に沿って集水溝5に流入する水の量は越流部1に流入する水の整流度合いに大きく影響され、整流度合いが大きければ集水溝5に導入できる水の量が多くなる。
【0009】 同時に、堰の落差が性能に大きく影響しており、効果的に堰の機能を発揮するには、集水口6の開口端7の位置を堰の機能に応じてずらしてやることが効果的であることを実験により確認したものである。
【0010】 落差が小さい場合は、俯角面4への水の付着状態での落下距離が小さいので、異物を分離できる開口端7が小さくなるであろうことは推測できるが、どの程度の開口が適切であるかは、従来は明確なものが提示されていなかった。また、堰の用途により、異物の混入度合いがどの程度許容されるのかにより、開口端7の位置を決めなければならず、設計・施工上、基準となる数値が提示されていなかった。
【0011】 図2に実験によって得られたデーターを示す。開口部6の最大値は付着水堰の機能を損なわない程度の限界位置であり、遠心力や慣性力が作用可能な位置である。具体的には、越流部に続く上流側の緩い勾配平面を含む平面と下流側の俯角を構成する面との交差位置から垂直に構成される面とに対応する位置である。また、最小値は、異物の混入がほとんど確認できない程度の水質を得られる位置で、具体的には、前記垂直面から俯角面側に12.5°傾斜した面に対応する位置である。
【発明の効果】 以上詳述したように本発明によれば、集水溝の開口端の位置を、越流部に続く上流側の緩い勾配平面を含む平面と下流側の俯角を構成する面との交差位置から垂直に構成される面と、該垂直面から俯角面側に12.5°傾斜した面との間の適宜位置に配設することで、用途に応じた効果的な付着水堰が得られるもので、必要に応じて流木や塵埃の除去が可能なことや、制水門スクリーンが不要である等の従来の堰の効果がそのまま維持できるもので、当該分野に大きく寄与するものである。
【出願人】 【識別番号】500431313
【氏名又は名称】有限会社リスコン
【出願日】 平成12年8月10日(2000.8.10)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−54124(P2002−54124A)
【公開日】 平成14年2月20日(2002.2.20)
【出願番号】 特願2000−278907(P2000−278907)